説明

車両の制御装置

【課題】 路面状況による走行性能の低下を防止する。
【解決手段】 車両10において、ECU100は、アシストトルク制御処理を実行する。アシストトルク制御処理では、左右前輪に備わる車輪速センサの出力値に基づいて、スリップ率SLが算出される。運転者がハンドル11を操作して車両を操舵するに際し、操舵方向に対してスリップ率が増加特性となる場合には、ECU100はEPS500を制御して操舵トルクをアシストするためのアシストトルクTAを減少させる。一方で、操舵方向に対してスリップ率が減少特性となる場合には、ECU100はEPS500を制御してアシストトルクTAを増加させる。この結果、車輪のグリップ度が増加する方向へ車両10が誘われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、車速を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたクリープ走行制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、坂路勾配において車両をクリープ速度程度の低速度で走行させることによって、坂路での発進走行を容易にすることが可能であるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−90679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両が摩擦係数の低い路面や岩山などの起伏の激しい路面を走行する場合、車輪と路面との接地状態は不安定になり易い。従って、このような走行条件下では、車輪のスリップなどに起因して、車速を維持することが困難になり易い。即ち、従来の技術には、悪路での走行性能が顕著に低下し易いという技術的な問題点がある。更には、接地状態が不安定な場合、車速の維持のみならず、より基本的な走行性能の低下も懸念されるという技術的な問題点もある。
【0005】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、路面状況による走行性能の低下を防止し得る車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る車両の制御装置は、操舵手段に対し操舵トルクを補助するための補助トルクを付与する操舵トルク補助手段を備える車両を制御する車両の制御装置であって、前記車両における車輪のグリップ度を特定するグリップ度特定手段と、前記車両の操舵方向を特定する操舵方向特定手段と、前記特定されるグリップ度に基づいて、前記特定された操舵方向に対する前記車輪のグリップ度の変化特性を特定する変化特性特定手段と、前記特定された変化特性が増加特性である場合に前記補助トルクが増加するように前記操舵トルク補助手段を制御する第1制御及び前記特定された変化特性が減少特性である場合に前記補助トルクが減少するように前記操舵トルク補助手段を制御する第2制御のうち少なくとも一方を実行する補助トルク制御手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る「操舵手段」とは、車両を操舵するための機構、装置及びシステムなどを包括する概念である。従って、操舵手段には、例えば、ステアリングホイール(以下、適宜「ハンドル」と称する)、ステアリングシャフト及びギア機構などの少なくとも一部が含まれてもよい。
【0008】
係る操舵手段に付与される補助トルクとは、車両の運転者によって操舵手段に加えられる操舵トルクを補助するためのトルクであり、典型的には操舵トルクと同一の方向(即ち、同一の回転方向)に付与されるトルクを指す。補助トルク(アシストトルクとも称される)を付与するための操舵トルク補助手段の態様は、最終的に操舵トルクが補助される限りにおいて何ら限定されない。但し、補助トルクが、モータなどの電気的なトルク発生手段を介して与えられる場合には、車両のエンジン出力とは無関係に補助トルクを付与することが可能となるため好適である。このような操舵トルク補助手段とは、好適には、EPS(Electronic Power Steering:電動パワーステアリング)装置などの形態を採る。尚、操舵トルク補助手段は、操舵手段の一部として構成されていてもよいし、相互に個別に構成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る車両の制御装置によれば、その動作時には、グリップ度特定手段によって、車両における車輪のグリップ度が特定される。
【0010】
ここで、「車輪のグリップ度」とは、車輪と路面との間のグリップ状態を規定する指標値を包括する概念であり、増加する程グリップ状態が向上し(即ち、グリップする側に推移し)、低下する程グリップ状態が悪化する(即ち、グリップしない側に推移する)値として定義される。グリップ度は、係る概念が担保される限りにおいてどのような値であってもよい。例えば、車輪のグリップ状態は、車輪に加わる接地荷重に影響される。即ち、接地荷重が不十分な(即ち、接地荷重が抜けている)場合、グリップ状態は相対的に悪化する。従って、グリップ度は、係る接地荷重の値そのもの或いは接地荷重の値から何らかの規則又はアルゴリズムに従って導き出される値によって表されてもよい。また、グリップ度は、車両のセルフアライニングトルク及び横力などに基づいて導き出される値であってもよい。或いは、グリップ度は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、グリップ状態を規定し得ると決定された値であってもよい。
【0011】
尚、本発明において「特定する」とは、物理的、電気的、機械的、機構的又は化学的に特定対象の値を検出することの他に、物理的、電気的、機械的、機構的又は化学的に検出された、特定対象の値と何らかの対応関係を有する値に基づいて、何らかの規則若しくはアルゴリズムに従って推定又は推測することを含む概念である。或いは、「特定する」とは、特定対象の値を測定する手段、例えば、各種センサ装置などから電気信号として測定結果を受け取る形態を有していてもよい。
【0012】
尚、グリップ度が特定される車輪は、車両に備わる車輪である限りにおいて何ら限定されないが、好適には操舵輪、例えば左右前輪の少なくとも一方を指す。尚、車両が悪路を走行する場合、左右前輪でグリップ状態が大きく異なる場合が多いから、好適には、グリップ度は左右前輪で特定されるのが好ましい。この場合、特定されるグリップ度は、左右前輪の平均値であってもよいし、左右前輪に付与される相応の重み付けに基づいて決定されてもよい。或いは左右前輪のグリップ度として夫々個別に利用されてもよい。
【0013】
一方、本発明に係る車両の制御装置によれば、操舵方向特定手段によって、車両の操舵方向が特定される。ここで、「車両の操舵方向」とは、操舵トルクの発生する方向であり、車輪の舵角の変化方向を指す。従って、車輪がその時点で左右いずれの方向に向いているかとは無関係な概念である。尚、車輪の舵角は、例えば、操舵角センサ又はハンドル角センサなど何らかの操舵角検出手段の出力に基づいて取得されてもよい。
【0014】
更に、本発明に係る車両の制御装置によれば、変化特性特定手段によって、操舵方向に対するグリップ度の変化特性が特定される。
【0015】
ここで、操舵方向に対するグリップ度の変化特性を特定する態様は、操舵方向特定手段によって特定される操舵方向に車輪が操舵された場合におけるグリップ度の変化特性、例えば、グリップ度が増加するのか、減少するのか或いは変化しないのかといった特性を特定可能である限りにおいて何ら限定されない。例えば、グリップ度を車両の操舵角に対応付けて記憶しておくことによって、係る変化特性は比較的容易に特定される。或いは、操舵角に対応付けてグリップ度を記憶せずに、現時点の操舵角を含む微小な舵角領域についてグリップ度がどのように変化するのかを推定してもよい。
【0016】
尚、このような変化特性の特定は、実際に車輪の操舵操作に伴ってリアルタイムに行われてもよいし、予め操舵方向に対してグリップ度がどのように変化するのかが判明している或いは推定可能である場合には、係る操舵操作以前に行われていてもよい。
【0017】
ここで、本発明に係る車両の制御装置では、補助トルク制御手段によって、(i)係る変化特性が増加特性である場合に補助トルクが増加するように操舵トルク補助手段を制御する第1制御及び(ii)係る変化特性が減少特性である場合に補助トルクが減少するように操舵トルク補助手段を制御する第2制御のうち少なくとも一方が実行される。
【0018】
第1制御が実行される場合、補助トルクが増加するように操舵トルク補助手段が制御されるため、運転者は、グリップ度が増加する操舵方向へ操舵操作を行い易くなる。即ち、グリップ度が増加する方向へステアリング操作が誘われることによって、結果的に、車両を相対的にグリップ度の高い路面に導くことが可能となる。
【0019】
また、第2制御が実行される場合、補助トルクが減少されるように操舵トルク補助手段が制御されるため、運転者は、グリップ度が低下する操舵方向へ操舵操作を行い難くなる。即ち、グリップ度が低下する方向へのステアリング操作が阻害されることによって、結果的に、車両を相対的にグリップ度の高い路面に導くことが可能となる。
【0020】
このように第1制御及び第2制御のいずれかが、好ましくは両方が実行されることによって、車両はグリップ度の高い路面に誘われる。即ち、低μ路や岩山など路面状況による走行性能の低下を効果的に防止することが可能となるのである。
【0021】
尚、「増加特性である場合に」及び「減少特性である場合に」とは、必ずしも、増加特性又は減少特性である場合の全てでなくともよい趣旨である。例えば、増加特性における増加率や減少特性における減少率など変化特性を規定する値に何らかの閾値が設定されてもよい。即ち、比較的大きくグリップ率が変化する場合に限って、第1又は第2制御が実行されてもよい。
【0022】
尚、補助トルクの増加量及び減少量は、このような車両の走行性能の低下を防止し得る限りにおいて何ら限定されない。例えば、補助トルクは、操舵方向に対して、換言すれば操舵トルクの方向に対して付与されるトルクであるから、「補助トルクが減少する」とは、操舵方向とは逆向きの、言わば操舵トルクを打ち消す方向にトルクが付与されることを含む概念である。但し、運転者の操舵意思を反映した車両の制御を実行する観点からは、補助トルクは、操舵方向に限定して付与されるトルクであるのが望ましい。従って、補助トルクの下限値は、ゼロ又はゼロとみなし得る程度に小さい値、或いは運転者が車両を操舵するのに必要な最低限度の(即ち、運転者の感覚としては、操舵トルクが十分に大きい)トルクに設定されるのが好適である。一方で、補助トルクの上限値は、同様に運転者の操舵意思を尊重する観点から、補助トルクのみで車両が操舵される事態が生じない程度の値に設定されるのが好ましい。また、補助トルクの増加量及び減少量は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、走行性能の低下を効果的に防止し得るように設定されていてもよい。
【0023】
本発明に係る車両の制御装置の一の態様では、前記車両は、前記車両を制動するための制動装置及び前記車両を駆動するための駆動装置を更に具備し、前記車両の制御装置は、前記車両の速度が所定値に維持されるように前記制動装置及び前記駆動装置を制御する車速制御手段を更に具備し、前記補助トルク制御手段は、前記車両の速度が前記所定値に維持される場合に前記少なくとも一方を実行する。
【0024】
車両に備わる制動手段とは、車両を制動するための機構、装置及びシステムを包括する概念であり、例えば、ブレーキ装置又はブレーキシステムなどを指す。また、制動手段は、その機能の少なくとも一部が、例えば、ABS(Antilock Braking System)やVSC(Vehicle Stability Control)装置など、車両の安定化を図るための各種装置と協調的に制御されてもよい。或いはこれら各種装置の一部として一体に構成されていてもよい。
【0025】
一方、駆動手段とは、車両を駆動するための機構、装置及びシステムを包括する概念であり、例えば、エンジン、エンジンに対し空気を供給するためのスロットルバルブ、又はスロットルバルブを駆動するスロットルバルブモータなどを指す。
【0026】
この態様によれば、車速制御手段によって、車両の速度(以下、適宜「車速」と称する)が所定値(以下、適宜「所定車速」と称する)に維持されるようにこれら制動装置及び駆動装置が制御される。
【0027】
尚、車速を維持する際の所定車速とは、必ずしも固定値でなくともよく、予め設定される上限値と下限値とによって規定される一定又は不定の車速範囲を含む趣旨である。即ち、
このような車速領域に車速が収まっている状態も、本発明に係る「車速が維持される」範疇である。
【0028】
尚、制動装置及び駆動装置の制御態様は、車両を所定車速に維持し得る限りにおいて何ら限定されない。また、係る車速の維持は、平坦路で行われてもよいし、坂路で行われてもよい。坂路(主として降板路)で車速が維持される場合、例えば車速が目標値を超えた場合に、各車輪に備わるホイールシリンダの油圧を運転者のブレーキペダル操作とは無関係に制御することによって所定車速が維持されてもよい。平坦路で車速が維持される場合、例えばスロットルバルブの開閉状態とホイールシリンダの油圧とを協調的に制御して車速が維持されてもよい。
【0029】
また、補助トルク制御手段は、車速制御手段によって車速が所定値に維持される場合に第1制御及び第2制御の少なくとも一方を実行する。車速を維持する場合、車輪は正常とみなし得る程度のグリップ状態を保っている必要がある。従って、例えば悪路においては顕著に車速の維持が困難になり易い。この態様によれば、車速を所定値に維持する場合に、第1及び第2制御の少なくとも一方が実行されるため、好適に車速の維持が実現される。
【0030】
尚、「車速が所定値に維持される場合に」とは、必ずしも実際の車速が所定値に維持されている期間のみを表すものではなく、例えば、車速を維持する旨の入力がなされ、車速を維持するための制御モードが起動している期間などを含む概念である。即ち、車速を維持すべく制動手段及び駆動手段が制御されていても、路面の状況によっては、例えば、岩山を走行しているような場合には特に、車両は頻繁に停止する。そのような場合も、車速を維持すべく制御がなされているのであり、「車速が所定値に維持される場合」の範疇である。
【0031】
本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記グリップ度特定手段は、前記車輪のグリップ度の増加及び低下に応じて夫々低下及び増加する前記車輪のスリップ度を特定することによって前記車輪のグリップ度を特定する。
【0032】
この態様によれば、スリップ度に基づいてグリップ度が特定される。本発明に係るスリップ度とは、車輪のスリップ状態を規定する値を包括する概念である。車輪の接地荷重が減少すると、グリップ度は低下するのであるが、この際、接地荷重が減少するのに伴って車輪はスリップを開始する。即ち、スリップ度とは、その低下及び増加が夫々グリップ度の増加及び低下に対応する、グリップ度と相反する概念である。
【0033】
従って、スリップ度に基づいて間接的にグリップ度を特定することが可能となる。尚、スリップ度とグリップ度との対応関係が、又はスリップ度と補助トルクの増加又は減少量との対応関係が予め規定されている場合には、スリップ度が特定されることによって間接的にグリップ度が特定されることになるから、実際に補助トルクを増減制御するに際して必ずしもグリップ度を特定する必要は生じない。尚、スリップ現象は、グリップ度の不足によって副次的に発生する現象であるが、スリップ度は、グリップ度よりも簡便に特定され得るから、第1又は第2制御を好適に実行することが可能となる。
【0034】
尚、グリップ度とスリップ度は、必ずしも相互に一対一に対応しなくてもよい。例えば、車輪がある程度路面をグリップしている状態(即ち、グリップ度が所定値以上である状態)では、車輪はスリップしないのであり、スリップ度は、例えばゼロとなって変化しない。然るに、車両の走行性能を担保する目的に鑑みれば、スリップが生じていない領域では補助トルクを制御する必要は小さく、問題となるのは、スリップが生じて走行性能が低下する場合である。即ち、スリップ度を特定することによってグリップ度が特定される場合には、効率的に車両を制御することが可能となる。
【0035】
尚、この態様では、前記グリップ度特定手段は、前記車両の車輪速度に基づいて前記車輪のスリップ度を特定してもよい。
【0036】
この場合、スリップ度が車輪速度に基づいて特定されるので効率的である。車輪速度に基づいてスリップ度を特定する態様は何ら限定されない。例えば、車輪速度に基づいて得られる車速の目標車速に対する超過量(速度の次元である)と、目標車速との比率として規定されるスリップ率が、スリップ度の一形態として特定されてもよい。この場合、比較的正確にスリップ度を特定することが可能となる。尚、この際、車輪速度は、車両の各車輪に備わる車輪速センサなどの車輪速度検出手段の出力値に基づいて特定されてもよい。
【0037】
本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記補助トルク制御手段は、前記第1又は第2制御における前記補助トルクの増加又は減少量を、前記特定されるグリップ度に応じて決定する。
【0038】
例えば、グリップ度が極端に小さい場合、係る操舵位置では、車両の走行性能が比較的大きく低下する可能性が高いから、比較的大きい補助トルクによって、グリップ度が増加傾向となる操舵方向への操舵操作を促すのが好適である。反対に、グリップ度が減少する操舵方向へは、更なる走行性能の低下を防止する観点から、補助トルクを比較的大きく減じて操舵操作を阻害するのが好適である。この態様によれば、補助トルクの増加又は減少量がグリップ度に応じて決定されるため、効率的且つ効果的に車両の走行性能低下を防止することが可能となる。
【0039】
本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記補助トルク制御手段は、前記第1又は第2制御における前記補助トルクの増加又は減少量を、前記変化特性を規定する値に応じて決定する。
【0040】
この態様によれば、前述したグリップ度ではなく或いはグリップ度に加えて、グリップ度の変化特性を規定する値、例えば、変化特性を表すプロファイル(特性曲線)の傾き、即ちグリップ度の変化率などに応じて補助トルクの増加又は減少量が決定されるため、グリップ度の総体的な変化特性に鑑みた補助トルクの制御が可能となる。尚、変化特性を規定する値に応じた増加又は減少量の設定態様は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて決定されていてもよい。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
<実施形態>
以下、適宜図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0043】
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の模式構成図である。尚、ここでは、車両10の構成を、その動作の一部を交えて説明することとする。
【0044】
図1において、車両10は、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRを備え、不図示のエンジンの動力によって走行する車両である。
【0045】
車両10は、ハンドル11、シャフト12及び操舵装置13を備える。
【0046】
ハンドル11は、不図示の運転者による操舵操作(以下、適宜「ハンドル操作」と称する)をシャフト12に伝達するための装置であり、運転者によるハンドル操作は、シャフト12に対し回転動力として伝達される。シャフト12が受けた回転動力は、操舵装置13に伝達される。
【0047】
操舵装置13は、ラックアンドピニオン形式の操舵装置であり、シャフト12の先端部分に備わる不図示のピニオンギアの回転運動を、係るピニオンギアと噛み合った不図示のラックの図示左右方向への往復運動に変換することによって、駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRの舵角を、運転者のハンドル操作に応じて制御している。尚、ハンドル11、シャフト12及び操舵装置13は、本発明に係る「操舵手段」の一例を構成している。
【0048】
図1において、車両10は更に、ECU100、スロットルバルブモータ200、起動スイッチ300、ブレーキアクチュエータ400、EPS500、ハンドル角センサ600、制動装置700FL、700FR、700RL及び700RR、ホイールシリンダ710FL、710FR、710RL及び710RR並びに車輪速センサ800FL及び800FRを備える。
【0049】
ECU100は、不図示のROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備えると共に、車両10の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納されるプログラムに従って、後述するアシストトルク制御処理を実行することが可能に構成されており、係るアシストトルク制御処理の実行過程で生じる各種データをRAMに一時的に格納することが可能に構成されている。
【0050】
スロットルバルブモータ200は、不図示のエンジンに対し、吸気系を介して吸気された空気を供給するための不図示のスロットルバルブを駆動するモータであり、本発明に係る「駆動装置」の一例である。スロットルバルブモータ200は、ECU100と電気的に接続されることによってECU100に上位制御される。
【0051】
起動スイッチ300は、車両10の車室内の所定箇所(例えば、コンソールパネルなど)に設置された、運転者などによって操作される入力装置であり、ECU100と電気的に接続されている。本実施形態において起動スイッチ300が操作された場合には、ECU100に対し車速維持制御の実行を促す起動入力信号が出力される構成となっている。ここで、車速維持制御とは、車両10の車速を予め設定された値又は範囲に維持するための制御である。尚、本実施形態では、係る起動入力信号に応じて、即ち、車速維持制御の実行に伴って、後述するアシストトルク制御処理が実行される構成となっている。
【0052】
ブレーキアクチュエータ400は、ECU100と電気的に接続され、ECU100による上位制御に従って、各ホイールシリンダの油圧を制御することが可能に構成された、本発明に係る「制動手段」の一例である。
【0053】
EPS500は、電子制御式のパワーステアリング装置であり、本発明に係る「操舵トルク補助手段」の一例である。EPS500は、不図示のモータを備え、係るモータによるアシストトルクTA(即ち、本発明に係る「補助トルク」の一例)によって操舵装置13のピニオンギア(実質的にはピニオンギアが固定されたシャフト12)を回転させ、ハンドル11を介してシャフト12に加えられる操舵トルクTSをアシストすることが可能に構成されている。EPS500は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によって上位制御されている。尚、EPS500には、シャフト12の捩れを検出することによって操舵トルクTSを検出する操舵トルクセンサ(不図示)が備わっている。
【0054】
ハンドル角センサ600は、ハンドル11の回転角(即ち、ハンドル角)を検出するセンサである。検出されたハンドル角は、ハンドル角センサ600と電気的に接続されたECU100に、係るハンドル角を表す電気信号として出力される構成となっている。尚、ECU100は、検出されたハンドル角と、操舵装置13におけるステアリングギア比とに基づいて、操舵輪たる車輪FL及びFRの操舵角DSを取得することが可能に構成されている。
【0055】
制動装置700FLは、左前輪FLに備わり、ホイールシリンダ710FLの油圧に応じて不図示のブレーキパットが不図示のディスクを押圧することによって左前輪FLを制動するディスクブレーキ装置である。同様に制動装置700FR、700RL及び700RRは、夫々ホイールシリンダ710FR、710RL及び710RRと協調して夫々右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRを制動するディスクブレーキ装置である。
【0056】
尚、各ホイールシリンダには、マスタシリンダ(不図示)及びブレーキアクチュエータ400を介してブレーキオイルの油圧が伝達される構成となっている。通常、運転者によって不図示のブレーキペダルが踏下された際に、その踏下量に応じた油圧がマスタシリンダを介して各ホイールシリンダに伝達される。その一方で、ECU100は、ブレーキアクチュエータ400を制御することによって、運転者のブレーキペダル操作とは無関係に、各ホイールシリンダの油圧を制御することも可能である。各制動装置及び各ホイールシリンダは、ブレーキアクチュエータ400と共に、本発明に係る「制動手段」の一例を構成する。
【0057】
車輪速センサ800FL及び800FRは、夫々車輪FL及びFRの回転速度を検出するセンサである。各車輪速センサは、ECU100と電気的に接続されており、検出された車輪速がECU100に出力される構成となっている。ECU100は、係る車輪速に基づいて、車両10の後述するスリップ率SLを取得することが可能に構成されている。
【0058】
<実施形態の動作>
次に、図2を参照し、本実施形態の動作として、ECU100が実行するアシストトルク制御処理の詳細について説明する。ここに、図2は、アシストトルク制御処理のフローチャートである。
【0059】
アシストトルク制御処理は、既に述べた通り、車速維持制御が実行されるのに伴って実行される処理である。車速維持制御は、起動スイッチ300の操作によって発生する起動入力信号に応じて実行される。例えば、運転者によって起動スイッチ300が操作された場合、ECU100は、目標車速(例えば、3〜4km/h程度)が維持されるように、スロットルバルブモータ200及びブレーキアクチュエータ400を制御する。
【0060】
具体的には、ECU100は、一方でスロットルバルブモータ200を駆動することによってスロットルバルブの開閉を制御して車両10の駆動力を制御しつつ、他方でブレーキアクチュエータ400を介して運転者によるブレーキペダル操作とは無関係に各ホイールシリンダの油圧を制御することによって車両10を制動し、係る目標車速を維持する。
【0061】
係る車速維持制御は、ダート道路や岩山など各車輪のグリップを担保し難い、即ち比較的高い運転技術が要求される悪路状況下において効果的に作用する。一方で、このような悪路状況下では、とりわけ岩山など起伏の激しい路面状況下では、車両10の走行ルートを適切に選択しないと、車輪がスリップするなどして走行性能が低下し易い。そこで、本実施形態では、車速維持制御中には、アシストトルク制御処理が実行され、走行性能の低下が防止されている。
【0062】
図2において、ECU100は、車輪のスリップ率SLを算出する(ステップA10)。本実施形態において、スリップ率SLは、目標車速及び車輪速度から得られる車速に基づいて算出される。尚、車輪速度から得られる車速とは、実際の車両10の車速とは異なり、各車輪速センサの出力値に基づいて算出される車速を指す。目標車速が4km/hであって、各車輪速センサの出力値たる車輪速度から得られる車速が8km/hである場合には、車輪速度から得られる車速は目標車速の倍であり、スリップ率は100%となる。尚、スリップ率は、本発明に係る「スリップ度」の一例である。尚、車輪速センサが左右前輪に備わる点に鑑みれば、スリップ率SLは、左右前輪各々において得られる値となるが、本実施形態では、左右前輪のスリップ率SLの平均値が最終的なスリップ率SLとして使用されるものとする。
【0063】
アシストトルク制御処理の実行中、ECU100は、所定のクロックに基づいた周期毎にスリップ率SLを算出している。また、この算出されたスリップ率SLは、ECU100のRAMに所定数量バッファリングされる。
【0064】
スリップ率SLが算出されるのと同期したタイミングで、ECU100は、運転者によるハンドル操作の有無を判別する(ステップA11)。ハンドル操作が無い場合(ステップA11:NO)、ECU100は、ステップA11を繰り返す。一方で、ハンドル操作が有った場合(ステップA11:YES)、ECU100は、最新のスリップ率SLが、予め設定されたスリップ率SLの閾値SLthよりも大きいか否かを判別する(ステップA12)。
【0065】
ここで、閾値SLthは、予め、実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、何らの対策を施さなくても走行性能の低下を招かないと推定し得る程度の値に設定されている。
【0066】
スリップ率SLが閾値SLth以下である場合(ステップA12:NO)、ECU100は、処理をステップA11に戻し、EPS500のアシストトルクTAを通常のアシスト特性に基づいて設定する。ここで、図3を参照して、通常のアシスト特性について説明する。ここに、図3は、EPS500の通常のアシスト特性を表す模式図である。
【0067】
図3において、EPS500は、操舵装置13に対し、図示アシストプロファイルに基づいてアシストトルクTAを付与し、操舵トルクTSをアシストする。例えば、操舵トルクTS0に対しては、アシストトルクTA0が対応しており、EPS500は、操舵トルクセンサによって検出される操舵トルクTSがTS0である場合には、アシストトルクTAがTA0となるようにモータ出力を制御する。尚、図3において、アシストプロファイルは、操舵トルクTSがゼロとなる点に対し対照な形状を有しているが、これは、操舵トルクTS及びそれと対応するアシストトルクTAの作用する方向が、操舵方向に応じて正反対となることを表している。
【0068】
図2に戻り、スリップ率SLが閾値SLthよりも大きい場合(ステップA12:YES)、ECU100は、操舵方向に対してスリップ率SLが増加特性を有するか否かを判別する(ステップA13)。また、スリップ率SLが操舵方向に対して増加特性を有さない場合(ステップA13:NO)、ECU100は、スリップ率SLが操舵方向に対して減少特性を有するか否かを判別する(ステップA15)。
【0069】
ここで、図4を参照して、スリップ率SLの変化特性について説明する。ここに、図4は、スリップ率SLの変化特性を表す模式図である。
【0070】
図4において、縦軸及び横軸は、夫々スリップ率SL及び操舵角DSを表す。操舵角DSは、操舵装置13の中立(ニュートラル)位置に対応する操舵角度が基準角度(即ち、ゼロ)となっている。尚、基準角度は、如何なる操舵角に設定されていてもよい。尚、図4は、ハンドル11を左に切る程、即ち車輪が左に操舵される程、操舵角DSが図示左方向へ大きくなり、ハンドル11を右に切る程、即ち車輪が右に操舵される程、操舵角DSが図示右方向へ大きくなることを表している。
【0071】
図4において、操舵角DSがゼロである場合のスリップ率(図示白丸)が示される。この操舵位置において、操舵方向が左操舵の方向(図示矢線A方向)である場合、スリップ率SLは増加する。また、操舵方向が右操舵の方向(図示矢線B方向)である場合、スリップ率SLは減少する。即ち、図4では、操舵角DSがゼロである操舵位置において、操舵方向が左であればスリップ率SLは増加特性、操舵方向が右であればスリップ率SLは減少特性となる。
【0072】
図2のステップA13及びステップA15に係る処理では、ECU100が、一定周期毎に算出されるスリップ率SLの値を監視し、スリップ率SLの値がRAMにバッファリングされる従前のスリップ率SLの値よりも増加したか或いは減少したかに基づいて操舵方向に対し如何なる変化特性であるのかを判別する。尚、操舵方向とは、操舵角DSの変化方向であり、ハンドル角センサ600の出力値に基づいて容易に特定される。
【0073】
尚、図4に例示するスリップ率SLの変化特性は、説明の簡略化のために、比較的広範囲の操舵角についてスリップ率SLを表したものである。実際には、ECU100が、スリップ率SLをRAMにバッファリングする過程で係る広範囲の変化特性を取得できることは稀であり、上述したように操舵操作に対しリアルタイムに変化特性が判別されるのが好適である。但し、事前に図4の如き変化特性が取得可能である場合には、或いは、スリップ率SLの変化特性が推定可能である場合には、勿論実際のハンドル操作以前に、スリップ率の変化特性が特定されてもよい。
【0074】
図2に戻り、操舵方向に対しスリップ率SLが増加特性である場合(ステップA13:YES)、ECU100は、EPS500を制御して、アシストトルクTAを減少させる(ステップA14)。一方、操舵方向に対し、スリップ率SLが減少特性である場合(ステップA15:YES)、ECU100は、EPS500を制御して、アシストトルクTAを増加させる(ステップA16)。また、操舵方向に対しスリップ率SLが減少特性ではない場合(ステップA15:NO)、ECU100は、アシストトルクTAを、増減制御することなく図3に示すアシストプロファイルに基づいて決定する。
【0075】
尚、スリップ率SLが操舵方向に対し増加特性であるか減少特性であるかは、スリップ率SLの変化率(スリップ率SLの操舵角DSに対する変化勾配)が予めROMに格納される閾値以上であるか否かによって決定される。即ち、係る閾値(正負両方に設定される)の範囲内であれば、スリップ率SLは増加特性でも減少特性でもないと判別される。
【0076】
ステップA16に係る処理によってアシストトルクTAが増加する場合、運転者はハンドルが相対的に軽くなったように感じるため、操舵方向へのハンドル操作が容易になる。一方、ステップA14に係る処理によってアシストトルクTAが減少する場合、運転者はハンドルが相対的に重くなったように感じるため、操舵方向へのハンドル操舵が阻害される。従って、結果的に、車両10は、スリップ率が小さくなる方向へ、即ち、グリップ度が高まる方向へ誘われ、車速維持制御が効果的に実行される。即ち、車両の走行性能の低下が効果的に防止されるのである。
【0077】
尚、アシストトルクTAを増加又は減少させる態様は、本発明に係る効果が担保される限りにおいて自由に決定されてよい。ここで、図5及び図6を参照して、アシストトルクTAの増加及び減少量の決定態様について説明する。ここに、図5は、アシストトルクTAを補正するための補正係数マップの一例であり、図6は、同様に補正係数マップの他の一例である。
【0078】
図5において、ECU100のROMに格納される補正係数マップ900Aが示される。補正係数マップ900Aにおいて、縦軸及び横軸は、夫々補正係数P及びスリップ率SLを表している。ここで、補正係数Pとは、図3に示すアシストプロファイルに基づいて決定されるアシストトルクTAに乗じる係数であり、即ち、補正係数が「1」である場合とは、アシストトルクTAには何らかの補正もなされないことを意味する。
【0079】
補正係数マップ900Aにおいて、スリップ率SLが前述のSLth以下の範囲は不感帯に設定されており、補正係数Pは1に設定され、アシストトルクTAには何らの補正もなされない。即ち、アシストプロファイルに従ってアシストトルクTAが決定される。一方、スリップ率SLが閾値SLthより大きい領域では、2種類のアシストトルク補正用のプロファイルが規定される。即ち、プロファイルPri0(図示実線)及びPrd0(図示鎖線)である。
【0080】
プロファイルPri0は、スリップ率SLの増加に伴って補正係数Pを増加させるプロファイルである。従って、図2におけるステップA16では、このプロファイルPri0が選択される。この場合、スリップ率SLが相対的に大きければ、相対的にアシストトルクTAは大きく設定される。
【0081】
プロファイルPrd0は、スリップ率SLの増加に伴って補正係数Pを減少させるプロファイルである。従って、図2におけるステップA14では、このプロファイルPrd0が選択される。この場合、スリップ率SLが相対的に大きければ、相対的にアシストトルクTAは小さく設定される。
【0082】
例えば、あるスリップ率SL0(SL0>SLth)において、スリップ率SLが操舵方向に対し減少特性であれば、プロファイルPri0に従って補正係数P1(P1>1)が、スリップ率SLが操舵方向に対し増加特性であれば、プロファイルPrd0に従って補正係数P2(P2<1)が、夫々補正係数として設定される。
【0083】
一方、図6には、ROMに格納される補正係数マップ900Bが示される。補正係数マップ900Bにおいて、縦軸及び横軸は、夫々前述した補正係数P及びスリップ率変化勾配GSLの絶対値を表している。ここで、スリップ率変化勾配GSLとは、スリップ率SLが変化する際の傾きであり、正負いずれの方向にも定義し得る値である。即ち、図示右方向へ向う程、スリップ率SLは急激に変化することを表す。補正係数マップ900Bには、補正係数マップ900Aと同様に不感帯が設定される。補正係数マップ900Bにおける不感帯は、スリップ率変化勾配GSLの絶対値が|GSLth|以内となる範囲である。尚、係る不感帯に属する変化勾配とは、即ち図2において操舵方向に対し増加特性でも減少特性でもないと判別される変化勾配と等価である。補正係数マップ900Bでは、不感帯を超えた領域に2種類のアシストトルク補正用のプロファイルが規定される。即ち、プロファイルPri1及びプロファイルPrd1である。
【0084】
プロファイルPri1は、スリップ率SLが操舵方向に対し減少特性である場合のプロファイルであり、スリップ率変化勾配GSLの絶対値が増加するのに伴って補正係数Pを増加させるプロファイルである。従って、図2におけるステップA16では、例えば、このプロファイルPri1が選択される。この場合、スリップ率SLの変化勾配が相対的に大きければ、相対的にアシストトルクTAは大きく設定される。
【0085】
プロファイルPrd1は、スリップ率SLが操舵方向に対し増加特性である場合のプロファイルであり、スリップ率変化勾配GSLの絶対値が増加するのに伴って補正係数Pを減少させるプロファイルである。従って、図2におけるステップA14では、例えばこのプロファイルPrd1が選択される。この場合、スリップ率SLの変化勾配GSLが相対的に大きければ、相対的にアシストトルクTAは小さく設定される。
【0086】
例えば、あるスリップ率変化勾配の絶対値|GSL0|(|GSL0|>|GSLth|)において、スリップ率SLが操舵方向に対し減少特性であれば、プロファイルPri1に従って補正係数P3(P3>1)が、スリップ率SLが操舵方向に対し増加特性であれば、プロファイルPrd1に従って補正係数P4(P4<1)が、夫々補正係数として設定される。
【0087】
図2に戻り、ステップA14又はステップA16に係る処理が実行されるか、又はステップA15においてスリップ率SLが操舵方向に対し減少特性ではないと判別されると、ECU100は、処理をステップA11に移行し、速度維持制御が終了するまで一連の処理が繰り返される。
【0088】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の模式構成図である。
【図2】図1の車両においてECUが実行するアシストトルク制御処理のフローチャートである。
【図3】図1の車両に備わるEPSの通常のアシスト特性を表す模式図である。
【図4】図1の車両における車輪のスリップ率の変化特性を表す模式図である。
【図5】図2のアシストトルク制御処理において参照される補正係数マップの模式図である。
【図6】図2のアシストトルク制御処理において参照される補正係数マップの他の模式図である。
【符号の説明】
【0090】
10…車両、100…ECU、200…スロットルバルブモータ、300…起動スイッチ、400…ブレーキアクチュエータ、500…EPS、600…ハンドル角センサ、FL700、700FR、700RL、700RR…制動装置、710FL、710FR、710RL、710RR…ホイールシリンダ、800FL、800FR…車輪速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵手段に対し操舵トルクを補助するための補助トルクを付与する操舵トルク補助手段を備える車両を制御する車両の制御装置であって、
前記車両における車輪のグリップ度を特定するグリップ度特定手段と、
前記車両の操舵方向を特定する操舵方向特定手段と、
前記特定されるグリップ度に基づいて、前記特定された操舵方向に対する前記車輪のグリップ度の変化特性を特定する変化特性特定手段と、
前記特定された変化特性が増加特性である場合に前記補助トルクが増加するように前記操舵トルク補助手段を制御する第1制御及び前記特定された変化特性が減少特性である場合に前記補助トルクが減少するように前記操舵トルク補助手段を制御する第2制御のうち少なくとも一方を実行する補助トルク制御手段と
を具備することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記車両を制動するための制動装置及び前記車両を駆動するための駆動装置を更に具備し、
前記車両の制御装置は、前記車両の速度が所定値に維持されるように前記制動装置及び前記駆動装置を制御する車速制御手段を更に具備し、
前記補助トルク制御手段は、前記車両の速度が前記所定値に維持される場合に前記少なくとも一方を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記グリップ度特定手段は、前記車輪のグリップ度の増加及び低下に応じて夫々低下及び増加する前記車輪のスリップ度を特定することによって前記車輪のグリップ度を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記グリップ度特定手段は、前記車両の車輪速度に基づいて前記車輪のスリップ度を特定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記補助トルク制御手段は、前記第1又は第2制御における前記補助トルクの増加又は減少量を、前記特定されるグリップ度に応じて決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記補助トルク制御手段は、前記第1又は第2制御における前記補助トルクの増加又は減少量を、前記変化特性を規定する値に応じて決定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−45205(P2007−45205A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229218(P2005−229218)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】