説明

車両の動力伝達装置及びその制御装置

【課題】変速機のフリクションによる回生量の低下を防止する。
【解決手段】車両において、内燃機関1と、モータジェネレータ5と、クランクシャフト15の回転速度を任意の回転速度に変速する変速装置3と、変速装置3によって変速されたクランクシャフト15の回転を左右の駆動輪41に伝達するドライブシャフト4と、クランクシャフト15とモータジェネレータ5の回転軸との間に設けられた第1動力伝達機構11,13,51と、第1動力伝達機構11,13,51の動力伝達を断接する第1クラッチ12と、ドライブシャフト4とモータジェネレータ5の回転軸との間に設けられた第2動力伝達機構42,52,53と、第2動力伝達機構42,52,53の動力伝達を断接する第2クラッチ54と、変速装置3からドライブシャフト4への動力伝達を断接する第3クラッチ43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の動力伝達装置及びその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両として、エンジンとクラッチとの間にワンウエイクラッチを介在させ、ワンウエイクラッチのクラッチ側から回転電機を含む補機を駆動するものがある。このものは、減速時やアイドルストップ時にはワンウエイクラッチの解離により慣性走行エネルギがエンジンに伝達されるのを防止し、慣性走行エネルギ又は回転電機で補機を駆動していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−130273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両の構成では、慣性走行エネルギがエンジンのフリクションやポンピングによって消費されるのを防止できるが、変速機のフリクションによって消費されるのを防止できないという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、慣性走行エネルギが変速機のフリクションによって消費されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。本発明は、クランクシャフトを有する内燃機関と、発電機を兼ねるモータジェネレータと、クランクシャフトの回転速度を任意の回転速度に変速する変速装置と、変速装置によって変速されたクランクシャフトの回転を左右の駆動輪に伝達するドライブシャフトと、を備える車両である。そして、クランクシャフトとモータジェネレータの回転軸との間に設けられた第1動力伝達機構と、第1動力伝達機構の動力伝達を断接する第1クラッチと、ドライブシャフトと前記モータジェネレータの回転軸との間に設けられた第2動力伝達機構と、第2動力伝達機構の動力伝達を断接する第2クラッチと、変速装置から前記ドライブシャフトへの動力伝達を断接する第3クラッチと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第3クラッチによって、変速装置からドライブシャフトへの動力伝達を遮断することができるので、慣性走行エネルギが変速装置のフリクションによって消費されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による車両の制御装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両の制御装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による車両の制御装置の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるトランスアクスルのファイナルギア及びディファレンシャルギアの部分を抜き出して示した図である。
【図5】本発明の一実施形態による車両の制御ついて説明するフローチャートである。
【図6】回生処理について説明するフローチャートである。
【図7】再加速処理について説明するフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による車両の制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
まず図1から図4を参照して本実施形態による車両の制御装置について説明する。図1は、本実施形態による車両の制御装置の平面図である。図2は、本実施形態による車両の制御装置の側面図である。図3は、本実施形態による車両の制御装置の正面図である。
【0011】
車両の制御装置は、エンジン1と、トルクコンバータ2と、トランスアクスル3と、ドライブシャフト4と、モータジェネレータ5と、バッテリ6と、スタータ7と、エアコンコンプレッサ8と、コントローラ9と、を備える。
【0012】
エンジン1は、車両の駆動力を発生する。エンジン1のクランクシャフト15の一端部には、クランクプーリ11が取り付けられる。クランクプーリ11には電磁クラッチ12が内蔵されており、電磁クラッチ12をオン(締結)するとクランクプーリ11がクランクシャフト15と一体に回転する。一方で、電磁クラッチ12をオフ(解放)するとクランクプーリ11はクランクシャフト15に対して空回りする。
【0013】
トルクコンバータ2は、エンジン1の駆動力を流体を介してトランスアクスル3に伝達する。トルクコンバータ2の内部には、トルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチが設けられる。
【0014】
トランスアクスル3は、自動変速機、ファイナルギア31及びディファレンシャルギア32を一体化したユニットである。トランスアクスル3に関しては、図4も参照して説明する。図4は、トランスアクスル3のファイナルギア31及びディファレンシャルギア32の部分を抜き出して示した図である。
【0015】
自動変速機は、トルクコンバータ2を介して伝達されたエンジン1の駆動力を、運転状態によって選択される変速段に応じて増減させて出力する。自動変速機は、複数組の遊星歯車機構及びそれらの構成要素(サンギア、ピニオンギア及びリングギア)の動作を許容又は規制するクラッチやブレーキ類を備える。自動変速機は、これらのクラッチやブレーキの係合状態を油圧源から供給される作動油(ATF;Automatic Transmission Fluid)によって適宜切り換えて、所望の変速段を達成する。
【0016】
ファイナルギア31は、自動変速機で増減された駆動力を増大させて出力する。
【0017】
ディファレンシャルギア32は、左右の駆動輪41の回転速度差を吸収する。
【0018】
ドライブシャフト4は、左右の駆動輪41に連結しており、左右の駆動輪41にファイナルギア31の回転を伝達する。ドライブシャフト4には、スプロケット42と、ドッグクラッチ43と、が設けられる。
【0019】
スプロケット42は、ドライブシャフト4の等速ジョイント44の間のインナシャフト部4aに設けられ、ドライブシャフト4と一体となって回転する。
【0020】
ドッグクラッチ43は、ファイナルギア31とディファレンシャルギア32との間のドライブシャフト4に設けられる。ドッグクラッチ43を図示しないアクチュエータによって中立位置から移動させてファイナルギア31に締結させることで、ファイナルギア31とドライブシャフト4とが結合し、ドライブシャフト4がファイナルギア31と同期して回転する。一方で、ドッグクラッチ43が中立位置にあるときは、ファイナルギア31が回転してもドライブシャフト4は回転しない。
【0021】
モータジェネレータ5は、エンジン1によって駆動されて発電するジェネレータとしての機能と、バッテリ6の電力によって駆動するモータとしての機能と、を有する。モータジェネレータ5は、エンジン1の側面に設けられる。エンジン1のフロント側となるモータジェネレータ5のロータの一端部にはフロントプーリ51が設けられる。エンジン1のリア側となるモータジェネレータ5のロータの他端部にはリアプーリ52が設けられる。
【0022】
フロントプーリ51は、ベルト13を介してクランクプーリ11と連係しており、クランクプーリ11の回転に同期して回転する。
【0023】
リアプーリ52は、チェーン53を介してドライブシャフト4のスプロケット42と連係している。リアプーリ52には、電磁クラッチ54が内蔵されており、電磁クラッチ54をオンするとドライブシャフト4と一体に回転する。一方で電磁クラッチ54をオフするとリアプーリ52はドライブシャフト4に対して空回りする。
【0024】
バッテリ6は、モータジェネレータ5によって発電された電力を蓄電する一方で、モータジェネレータ5に電力を供給して駆動する。電力の蓄電及び供給は、それぞれインバータを介して行われる。
【0025】
スタータ7は、必要があればエンジン1を始動させるときにクランクシャフト15を回転させる。
【0026】
エアコンコンプレッサ8は、コンデンサやエバポレータが配置される冷媒ガス循環通路内のエアコン用冷媒ガスを循環させる。エアコンコンプレッサ8は、回転軸の一端部に設けられたコンプレッサプーリ81を介して、ベルト13でエンジン1のクランクプーリ11と機械的に連結される。
【0027】
コントローラ9は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ9には、車速センサ91、エンジン1回転速度を検出するクランク角センサ92及びアクセルペダル踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ93などのエンジン1の運転状態を検出する種々のセンサ類からの信号が入力される。そして、検出したエンジン1の運転状態に応じてドッグクラッチ43、クランクプーリ11の電磁クラッチ12及びリアプーリ52の電磁クラッチ54のオンオフを制御して燃費の向上を図る。以下、この運転状態に応じた車両の制御について説明する。
【0028】
図5は、本実施形態による車両の制御、特に、エンジン1の駆動力で走行しているときにおける減速時の回生処理と減速から再加速処理とについて説明するフローチャートである。コントローラ9は、本ルーチンをエンジン1の運転中に所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0029】
ステップS1において、コントローラ9は、回生処理フラグが1にセットされているか否かを判定する。コントローラ9は、回生処理フラグが1にセットされていればステップS6に処理を移行する。一方で、回生処理フラグが0にセットされていればステップS2に処理を移行する。
【0030】
ステップS2において、コントローラ9は、回生処理を実施するか否かを判定する。具体的には、減速中であって、エンジン回転速度が第1所定回転速度(1000rpm)以上及び車速が所定速度(15km/h)以上の場合に回生処理を実施する。コントローラ9は、回生処理を実施すると判定したときはステップS4に処理を移行する。一方で、回生処理を実施しないと判定したときはステップS3に処理を移行する。
【0031】
ステップS3において、コントローラ9は、ドッグクラッチ43をオンにして、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチをオフにする。クランクプーリ11の電磁クラッチは運転状態に応じてオンオフする。
【0032】
ステップS4において、コントローラ9は、回生処理フラグを1にセットする。
【0033】
ステップS5において、コントローラ9は、回生処理を実施する。具体的な内容については図6を参照して説明する。
【0034】
ステップS6において、コントローラ9は、加速要求があるか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル踏み込み量が所定量以上か否かを判定する。コントローラ9は、加速要求があればステップS7に処理を移行する。一方で、加速要求がなければステップS5に処理を移行する。
【0035】
ステップS7において、コントローラ9は、再加速処理を実施する。具体的な内容については図7を参照して説明する。
【0036】
図6は、回生処理について説明するフローチャートである。
【0037】
ステップS51において、コントローラ9は、モータジェネレータ5をジェネレータモードとする。
【0038】
ステップS52において、コントローラ9は、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオフにして、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにする。
【0039】
ステップS53において、燃料カットを実施して、減速中の慣性走行エネルギを電力や冷力等に回生する。
【0040】
図7は、再加速処理について説明するフローチャートである。
【0041】
ステップS71において、コントローラ9は、モータジェネレータ5をモータモードとする。
【0042】
ステップS72において、コントローラ9は、クランクプーリ11の電磁クラッチ12をオンにする。
【0043】
ステップS73において、コントローラ9は、モータジェネレータ5によってエンジン1のクランクシャフト15を回転させてエンジン1を再始動させる。
【0044】
ステップS74において、コントローラ9は、エンジン回転速度が第2所定回転速度(エンジン1が始動したと確認できる回転速度)まで上昇したか否かを判定する。コントローラ9は、エンジン回転速度が第2所定回転速度まで上昇していればステップS75に処理を移行する。エンジン回転速度が第2所定回転速度まで上昇していなければ今回の処理を終了する。
【0045】
ステップS75において、コントローラ9は、ドッグクラッチ43をオンにするとともに、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにする。
【0046】
ステップS76において、コントローラ9は、回生処理フラグを0にセットする。
【0047】
図8は、本実施形態による車両の制御、特に、停止からの発進処理について説明するフローチャートである。コントローラ9は、本ルーチンをエンジン1の運転中に所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0048】
ステップS11において、コントローラ9は、運転者に発進意図があるか否かを判定する。具体的には、ブレーキスイッチがオフになっている否かを判定する。ブレーキスイッチは、ブレーキペダルが踏み込まれているときにオンになる。コントローラ9は、ブレーキスイッチがオフになっていればステップS12に処理を移行する。一方で、ブレーキスイッチがオンになっていれば今回の処理を終了する。
【0049】
ステップS12において、コントローラ9は、バッテリ6の充電量が所定充電量(80%)以上か否かを判定する。コントローラ9は、バッテリ6の充電量が所定充電量以上であればステップS16に処理を移行する。一方で、バッテリ6の充電量が所定充電量未満であればステップS13に処理を移行する。
【0050】
ステップS13において、コントローラ9は、モータジェネレータ5をジェネレータモードとする。
【0051】
ステップS14において、コントローラ9は、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオンにして、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにする。
【0052】
ステップS15において、コントローラ9は、スタータ7によってエンジン1を始動させ、エンジン1の駆動力によって車両を発進、走行させる。
【0053】
ステップS16において、コントローラ9は、モータジェネレータ5をモータモードとする。
【0054】
ステップS17において、コントローラ9は、モータジェネレータ5の駆動力のみによって車両を発進、走行させることができるか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル踏み込み量などから推定した車両の負荷が所定負荷より小さいか否かを判定する。コントローラ9は、モータジェネレータ5の駆動力のみによって車両を発進、走行させることができると判定したときはステップS20に処理を移行する。一方で、モータジェネレータ5の駆動力のみによって車両を発進、走行させることができないと判定したときはステップS18に処理を移行する。
【0055】
ステップS18において、コントローラ9は、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオンにして、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにする。
【0056】
ステップS19において、コントローラ9は、モータジェネレータ5によってエンジン1を始動させ、エンジン1の駆動力によって車両を発進させる。
【0057】
ステップS20において、コントローラ9は、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにする。
【0058】
ステップS21において、コントローラ9は、モータジェネレータ5の駆動力のみによって車両を発進させる。
【0059】
次に本実施形態による車両の制御の作用効果について説明する。
【0060】
エンジン1が駆動力を発生している加速時は、ドッグクラッチ43をオン、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにして、エンジン1の駆動力をトランスアクスル3及びドライブシャフト4を介して駆動輪41に伝達する。クランクプーリ11の電磁クラッチ12は、バッテリ6の充電状態やエアコンの使用状況、走行状態などに応じてオンオフされる。
【0061】
減速時に回生条件が成立すると、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオフにして燃料カットを実施し、エンジン1を停止させる。一方で、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにして回生を実施する。
【0062】
このように、ドッグクラッチ43をオフにして回生を実施することで、トランスアクスル3の自動変速機のフリクションによる慣性走行エネルギの損失を無くすことができる。そのため、慣性走行エネルギの回生量を多くすることができる。これにより、バテッリ充電量やエアコンシステムのエバポレータ蓄冷量などが増加するので、走行中に充電や蓄冷を実施する頻度が減り、エンジン負荷を低減することができる。したがって燃費を向上させることができる。
【0063】
減速時に再加速要求があると、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにしたまま、クランクプーリ11の電磁クラッチ12をオンにする。そして、モータジェネレータ5をモータとして駆動してエンジン1をクランキングして始動させる。このように、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにしておくことでモータジェネレータ5の駆動を補助することができ、素早くエンジン1を始動させることができる。そして、エンジン1が始動してエンジン1の回転速度が所定速度まで高くなったらモータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにするとともに、ドッグクラッチ43をオンにしてエンジン1の駆動力によって走行する。
【0064】
エンジン1が停止している状態での停車時に発進要求があると、バッテリ6の充電状態及びアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジン1の駆動力によって発進するか、モータジェネレータ5の駆動力によって発進するかを選択する。
【0065】
バッテリ6の充電量が十分でないときは、ドッグクラッチ43をオン、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにして、エンジン1をスタータ7によって始動させてエンジン1の駆動力によって発進させる。
【0066】
一方でバッテリ6の充電量が十分なときは、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオフ、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオンにして、モータジェネレータ5の駆動力によって発進させる。
【0067】
なお、バッテリ6の充電量が十分でもアクセルペダルの踏み込み量が大きいとき、すなわちモータのみの駆動力では要求駆動力を満足できないときはエンジン1の駆動力によって発進させる。このときはバッテリ6の充電量が十分なので、ドッグクラッチ43及びクランクプーリ11の電磁クラッチ12をオン、モータジェネレータ5のリアプーリ52の電磁クラッチ54をオフにして、エンジン1をモータジェネレータ5によって始動させてエンジン1の駆動力によって発進させる。
【0068】
このように、要求駆動力の大きい発進時にエンジン1を停止させたままモータジェネレータ5の駆動力によって車両を発進させることで、燃費の向上を図ることができる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、ドッグクラッチ43によってファイナルギア31とディファレンシャルギア32との締結開放を自在に実施できるようにした。また、ドライブシャフト4の回転を、チェーンを介してドライブシャフト4に設けたスプロケット42からモータジェネレータ5のリアプーリ52に伝達できるようにした。
【0070】
これにより、ドライブシャフト4の回転によってモータジェネレータ5を駆動する回生処理実施時に、ファイナルギア31とディファレンシャルギア32との締結を解除することで、慣性走行エネルギが自動変速機のフリクションによって消費されるのを抑制できる。そのため、回生量を多くできるので、バテッリ充電量などが増加して走行中に充電を実施する頻度が減り、エンジン負荷を低減することができる。したがって燃費を向上させることができる。
【0071】
また、モータジェネレータ5の両端にプーリを設け、エンジン1のフロント側のフロントプーリ51をクランクシャフト15と連係させ、リア側のリアプーリ52をドライブシャフト4と連係させるように構成した。
【0072】
これにより、駆動輪41の上下左右の動きの影響を受けないドライブシャフト4の等速ジョイント44間のインナシャフト部4aにスプロケット42を設けてドライブシャフト4の回転をチェーンを介してリアプーリ52に伝達することができる。
【0073】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0074】
例えば、ファイナルギア31とディファレンシャルギア32とを断接できるものであれば本実施形態のようなドッグクラッチ43に限られるものではない。
【0075】
また、ドライブシャフト4の回転をスプロケット42とチェーンを介してリアプーリ52に伝達したが、ドライブシャフト4にプーリを設けてベルトを介してドライブシャフト4の回転を伝達してもよい。また、歯車をかみ合わせて伝達してもよい。
【0076】
さらに、自動変速機として、ベルト式無段変速機(CVT;Continuously Variable Transmission)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン(内燃機関)
3 トランスアクスル(変速装置)
4 ドライブシャフト
5 モータジェネレータ
6 バッテリ(蓄電器)
11 クランクプーリ(第1動力伝達機構)
12 電磁クラッチ(第1クラッチ)
13 ベルト(第1動力伝達機構)
15 クランクシャフト
31 ファイナルギア
41 駆動輪
42 スプロケット(第2動力伝達機構)
43 ドッグクラッチ(第3クラッチ)
51 フロントプーリ(第1動力伝達機構)
52 リアプーリ(第2動力伝達機構)
53 チェーン(第2動力伝達機構)
54 電磁クラッチ(第2クラッチ)
S5 回生手段
S7 再加速手段
S20 モータ走行手段
S21 モータ走行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトを有する内燃機関と、
発電機を兼ねるモータジェネレータと、
前記クランクシャフトの回転速度を任意の回転速度に変速する変速装置と、
前記変速装置によって変速された前記クランクシャフトの回転を左右の駆動輪に伝達するドライブシャフトと、
前記クランクシャフトと前記モータジェネレータの回転軸との間に設けられた第1動力伝達機構と、
前記第1動力伝達機構の動力伝達を断接する第1クラッチと、
前記ドライブシャフトと前記モータジェネレータの回転軸との間に設けられた第2動力伝達機構と、
前記第2動力伝達機構の動力伝達を断接する第2クラッチと、
前記変速装置から前記ドライブシャフトへの動力伝達を断接する第3クラッチと、
を備える車両の動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の動力伝達装置において、
前記変速装置は、
前記クランクシャフトの回転速度を変速段に応じて増減速させる変速機と、
前記変速機から出力された回転を減速するファイナルギアと、
を有し、
前記第3クラッチは、
前記ドライブシャフトに設けられ、前記ファイナルギアと前記ドライブシャフトとを締結解放するドッグクラッチである
ことを特徴とする車両の動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された車両の動力伝達装置において、
前記第1駆動力伝達機構は、
前記クランクシャフトの一端部に設けられたクランクプーリと、
前記モータジェネレータの回転軸の一端部に設けられたフロントプーリと、
前記クランクプーリと前記フロントプーリとに掛け回されたベルトと、
を有し、
前記第2動力伝達機構は、
前記ドライブシャフトに設けられたスプロケットと、
前記モータジェネレータの回転軸の他端部に設けられたリアプーリと、
前記スプロケットと前記リアプーリとに掛け回されたチェーンと、
を有することを特徴する車両の動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両の動力伝達装置において、
前記第1クラッチは、前記クランクプーリに内蔵された電磁クラッチであり、
前記第2クラッチは、前記リアプーリに内蔵された電磁クラッチである
ことを特徴とする車両の動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の車両の動力伝達装置を制御する車両制御装置において、
前記モータジェネレータによって発電された電力を充電する蓄電器と、
車両減速中かつ燃料カット中に前記第1クラッチ及び前記第3クラッチを開放し、前記第2クラッチを締結して前記モータジェネレータをジェネレータとして駆動させて車両の走行エネルギを回生する回生手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御装置において、
車両の走行エネルギを回生しているときに加速要求があったときは、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチを締結して前記クランクシャフトを回転させて前記内燃機関を再始動させ、その後、前記第2クラッチを解放し、前記第3クラッチを締結して車両を加速させる再加速手段を備える
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の車両の動力伝達装置を制御する車両制御装置において、
前記モータジェネレータによって発電された電力を充電する蓄電器と、
前記内燃機関が停止している状態のときに発進要求があった場合に、前記蓄電器の充電量が所定量より多かったときは、前記第1クラッチ及び前記第3クラッチを解放し、前記第2クラッチを締結して前記モータジェネレータをモータとして駆動させて車両を前記モータジェネレータの駆動力によって走行させるモータ走行手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11573(P2011−11573A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154893(P2009−154893)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】