説明

車両用の車軸部および自動車の推進方法

【課題】コストを低減し性能を高めるといった燃焼エンジンの利点だけでなく、効率を増加させるという電気エンジンの利点を提供する。
【解決手段】車両用車軸部であって、キャリア筐体40と、キャリア筐体40に回転可能に取り付けている差動装置42とを備えており、差動装置42にはリングギア82が取り付けられている。第一入力歯車110はリングギア82とかみ合っており、燃焼エンジンにより駆動され、リングギア82を駆動させることができる。キャリア筐体40には電気駆動装置26が取り付けられており、電気駆動装置26は電気モータ162と第二歯車160とを備えている。第二歯車160は、リングギア82とかみ合っており、電気モータ162により駆動され、リングギア82を駆動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の車軸部および自動車の推進方法に関し、特に電気駆動装置を有する差動キャリア部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーは、電気モータを動力源とした自動車を売りに出す傾向にある。この電気モータは従来技術の燃焼エンジンに比べ非常に多くの利点を提供するものである。例えば、電気モータは通常、より効果的に機能し、かつ周囲への不快な排気の放出も少ない。
【本発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、他の多くの性能において燃焼エンジンは通常電気モータよりも効率が良く、またバッテリの重量を考慮すると1ポンドあたりの馬力が高い。また、一般に電気モータにより推進される自動車は、燃焼エンジンにより推進される自動車よりも高価であり、燃焼エンジンにより推進される自動車に燃料を補給するよりも頻繁に再充電する必要がある。したがって、このような電気モータの利点にもかかわらず、消費者は電気モータにより推進される自動車を買い渋っている。
【0004】
したがって、当該技術分野において、コストを低減し性能を高めるといった燃焼エンジンの利点だけでなく、効率を増加させるという電気エンジンの利点を提供する自動車が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用の車軸部は、上記課題を解決するために、キャリア筐体と、該キャリア筐体に回転可能に取り付けられる差動装置と、該差動装置に取り付けられ、該差動装置とともに回転するリングギアと、該リングギアとかみ合っており、燃焼エンジンにより駆動され、該リングギアを駆動させることができる第一歯車と、該リングギアとかみ合っており、電気モータにより選択的に駆動され、リングギアを駆動させることができる第二歯車と電気モータとを備え、キャリア筐体に取り付けられている電気駆動装置と、を含むことを特徴としている。
【0006】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気駆動装置は、上記電気モータと上記第二歯車とを選択可能かつ駆動可能に相互に連結させるクラッチ部を含むことが好ましい。
【0007】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータと上記第二歯車とを駆動可能に連結させる該クラッチ部に、作動力を選択可能に提供するアクチュエーターを含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記第一歯車と上記第二歯車とが同じ回転軸の周りを回転することが好ましい。
【0009】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気駆動装置は上記キャリア筐体のカバーパン開口部に取り付けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータの操作を制御可能なコントローラを含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータは電気を生成する発電機として選択可能に機能することが好ましい。
【0012】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータは上記第二歯車に取り付けるための部材を有していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記第二歯車は、上記第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、上記第二歯車がリングギアから間隔をあけて配された第二の位置との間を移動できるようになっていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記差動装置と駆動可能に接続されている第一の出力軸および第二の出力軸を有し、上記電気駆動装置が上記電気モータから第一の出力軸および第二の出力軸へ回転力を伝達可能であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の車両用の車軸部は、上記課題を解決するために、キャリア筐体と、該キャリア筐体に回転可能に取り付けられるリングギアと、該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる第一歯車と、該キャリア筐体に取り付けられる電気モータと、該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる第二歯車と、自動車の駆動パラメータを監視し、該駆動パラメータの状況に応じて電気モータの始動および停止を選択して行うコントローラとを含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記第二歯車は上記電気モータにより直接駆動されることが好ましい。
【0017】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記第一歯車および上記第二歯車は同じ軸の周りを回転することが好ましい。
【0018】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータが、上記キャリア筐体のカバーパン開口部に取り付けられたケーシングに備え付けられることが好ましい。
【0019】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータと第二歯車とを選択可能にかつ駆動可能に相互に連結させるクラッチ部を含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明の車両用の車軸部では、第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、第二歯車がリングギアと間隔をあけて配された第二の位置との間で、上記第二歯車を動かすことができるアクチュエーターを含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明の車両用の車軸部では、上記電気モータは上記第二歯車に取り付けるための部材を有していることが好ましい
また、本発明の自動車の推進方法は、上記課題を解決するために、キャリア筐体内に回転可能に取り付けられたリングギアに駆動回転力を選択的に提供することができる内部の燃焼エンジンと、該リングギアに駆動回転力を選択的に提供できる電気モータとを有す自動車の推進方法であって、当該推進方法は、該リングギアと該燃焼エンジンとを駆動可能に相互に連結し、該リングギアと該電気モータとを駆動可能に相互に連結し、コントローラを使用して自動車の駆動パラメータを監視し、駆動パラメータの状況に基づいて該電気モータの始動および停止を選択して行うことを特徴としている。
【0022】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記燃焼エンジンによって駆動可能である第一歯車と上記リングギアとを連結することが好ましい。
【0023】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記電気モータによって駆動可能である第二歯車と上記リングギアとを連結することが好ましい。
【0024】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記第二歯車と上記電気モータとを駆動可能に連結するために、クラッチ部を選択的に操作可能にすることが好ましい。
【0025】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、上記第二歯車が上記リングギアと間隔をあけて配された第二の位置との間で、上記第二歯車は平行移動することが好ましい。
【0026】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記モータを発電機として機能させるために、上記リングギアで上記第二歯車を駆動することが好ましい。
【0027】
また、本発明の自動車の推進方法では、上記第一歯車で上記リングギアを駆動するために、上記燃焼エンジンを始動する一方、上記第一歯車で上記リングギアを駆動するために電気モータを始動することが好ましい。
【0028】
また、本発明の自動車の推進方法では、自動車が少なくとも高速道路走行時のための一般道路法定最高速度以上の走行速度にある場合、上記燃焼エンジンの速度を遊休状態まで低減し、リングギアを駆動させるために上記電気モータを始動させることが好ましい。
【0029】
本発明を要約すれば、ある形態において、本発明は車両用の車軸部を以下のように規定している。該車軸部はキャリア筐体と、該キャリア筐体に回転可能に取り付けている差動装置とを備えており、差動装置にはそれとともに回転するようにリングギアが取り付けられている。第一歯車は該リングギアとかみ合っており、燃焼エンジンにより駆動され、該リングギアを駆動させることができるよう構成されている。キャリア筐体には電気駆動装置が取り付けており、該電気駆動装置は電気モータと第二歯車とを備えている。第二歯車は、該リングギアとかみ合っており、該電気モータにより選択的に駆動され、該リングギアを駆動させることができる。
【0030】
別の形態において、本発明は車両用の車軸部を以下のように規定している。該車軸部はキャリア筐体と、該キャリア筐体に回転可能に取り付けているリングギアとを備えている。第一歯車は該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる。第二歯車もまた該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる。電気モータは該キャリア筐体に取り付けられており、コントローラは自動車の駆動パラメータを監視し、該駆動パラメータの状況に応じて該電気モータの始動および停止を選択して行う。
【0031】
さらに別の形態において、本発明は燃焼エンジンと電機モータの両方を有する自動車を推進する方法を規定している。該燃焼エンジンはリングギアに選択可能に接続され、該リングギアはキャリア筐体内に回転可能に取り付けられている。該電気モータは選択的に該リングギアに駆動回転力を提供できる。この自動車を推進する方法は、該リングギアと該燃焼エンジンとを駆動可能に相互に接続し、該リングギアと該電気モータとを駆動可能に相互に接続すし、コントローラを使用して自動車の所定の駆動パラメータを監視し、所定の駆動パラメータの状況に基づいて該電気モータの始動および停止を選択して行う自動車を推進する方法である。
【0032】
本発明の他の応用範囲は以下の詳細な説明により明らかにされる。以下の詳細な説明と具体例とは、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、あくまで説明を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に説明される好ましい実施形態はあくまで例であり、本発明およびその実施を限定するものではない。
【0034】
図1において、本発明の車軸部を有する車両10が概略的に示されている。車両10は、伝導機構14への接続部を介して駆動可能な動力伝達装置12を含み、伝導機構14は燃焼エンジン16と変速機18とを含む。動力伝達装置12は駆動シャフト20と、後方車軸22と、複数の車輪24とを含む。後方車軸22は電気駆動装置26を含む。交流発電機28およびバッテリ29のような電源装置が電気駆動装置26に電力を供給する。コントローラ30はセンサー32からの入力を監視し、例えば車両速度、エンジンの1分当たりの回転数(RPM)、リングギアの速度、アクセルペダル31の位置により示されるスロットル位置、後述するその他のパラメータといったような車両10の複数の駆動パラメータを決定する。コントローラ30は、センサー32を用いて得た情報を処理し、この情報に基づいて、以下に説明するように電気駆動装置26を操作する。
【0035】
図2および図3には、後方車軸22が非常に詳細に描かれている。後方車軸22は、キャリア部34と、左車軸シャフト部36と、右車軸シャフト部38とを含む。該キャリア部34は、キャリア筐体40と、差動装置42と、入力シャフト部44とを有している。該キャリア筐体40は、差動装置42が第一の軸46の周りを回転するよう支持する。また、該キャリア筐体40は、入力シャフト部44が第一の軸46に垂直な第二の軸48の周りを回転するよう支持する。
【0036】
まず、上記キャリア筐体40は適切な鋳造法により形成され、その後必要に応じて機械加工される。該キャリア筐体40は、本体50と、該本体50から延びる歯車突出部52とを含む。キャリア筐体40はさらに、左車軸開口部58を有する中央空洞部56を規定する壁部材54と、右車軸開口部60と、第一歯車開口部62とを含む。
【0037】
左車軸シャフト部36は、左車軸開口部58に取り付けられた第一車軸管70と、第一の軸46の周りを回転するように第一車軸管70により支持されている第一車軸半シャフト72とを含む。同様に、右車軸シャフト部38は右車軸開口部60に取り付けられ、第一の軸46の周りを回転するように第二車軸半シャフト76を支持する第二車軸管74を含む。
【0038】
図3は、キャリア筐体40の本体50の中央空洞部56内に配置された差動装置42を非常に詳細に示している。差動装置42は、ケース80と、ケース80とともに回転するよう取り付けられたリングギア82と、ケース80内に配置されたギアセット84とを含む。該リングギア82は複数の歯83を有す。該ギアセット84は、第一サイドギア86および第二サイドギア88と、一対の差動歯車90とを含む。該差動歯車90は、ケース80に取り付けた歯車シャフト92上に回転可能に支持されている。ケース80は、一対の筒耳94・96と、ギア穴98とを含む。一対の軸受け部100・102は、第一の軸46の周りを回転するように、筒耳94・96をそれぞれ支持する。
【0039】
第一車軸半シャフト72および第二車軸半シャフト76は左車軸開口部58および右車軸開口部60からそれぞれ延びており、第一サイドギア86および第二サイドギア88とともに第一の軸46の周りを回転するように接続される。ケース80は、ギア穴98内において、差動歯車90を、第一の軸46に垂直な1つ以上の軸の周りを回転するように支持することができる。第一サイドギア86および第二サイドギア88は、差動歯車90上に形成された歯106とかみ合う複数の歯108を含む。
【0040】
一般に、入力シャフト部44は、第一入力歯車110と、プロペラ軸継手フランジ部112と、一対の従来技術の軸受け部114・116とを含む。該軸受け部114・116は、圧入法によって上記キャリア筐体40とかみ合っている外側案内溝をそれぞれ有している。該軸受け部114・116は上記キャリア筐体40と連携し、第一入力歯車110を第二の軸48の周りを回転するよう支持する。
【0041】
上記第一入力歯車110は、互いに一体となって形成されている尾部118と頭部120とを含む。頭部120は複数の歯122を含む。該歯122はリングギア82の歯83とかみ合っており、伝導機構14から差動装置42まで回転力を伝える複数の外側スプライン119は尾部118に形成され、外ねじ部121は尾部118の端より直径が小さい部分に形成される。
【0042】
一般に、プロペラ軸継手フランジ部112は、歯車フランジ124およびシール126を含む。歯車フランジ124は、第一入力歯車110の外側スプライン119とかみ合っている内側スプライン128を含む。ナット130は、歯車フランジ124を尾部118の上記外ねじ部121に固定して取り付ける。該歯車フランジ124の少なくとも一部分は歯車突出部52内に位置する。
【0043】
シール126は、なんらかの好適な手段で第一歯車開口部62に取り付けられており、第一入力歯車110を通す開口部132を含む。該シール126は、上記キャリア筐体40からごみや水分のような異物の通過を防ぐことに適しているなら、どんなシールでもよい。
【0044】
電気駆動装置26は、補助ケーシング150を含む。該補助ケーシング150は、キャリア筐体40と一体とすることも、何らかの好適な固定手段を使用してキャリア筐体40に取り付けることも可能である。例えば、図3から図5に示すように、補助ケーシング150の外壁154を貫通して延び、キャリア筐体40の壁部材54とかみ合っているボルト152によって、補助ケーシング150をキャリア筐体40に取り付けることができる。該電気駆動装置26の構成部材とリングギア82とが連携できれば、様々な状況において、補助ケーシング150をキャリア筐体40に取り付けることができる。補助ケーシング150は、アルミニウムやスチールまたは複合材料など、いくらでも多くの好適な原料から製造できる。
【0045】
上記キャリア筐体40は、電気駆動装置26の構成部材とリングギア82とを連携させる開口部156を含む。具体的には、該開口部156を電気駆動装置26の位置に合わせて形成することもできるし、もしくは開口部156は、図示されている従来技術のキャリアカバーパン開口部のようなもともと存在する開口部であってもよい。開口部156が従来技術の該キャリアカバーパン開口部と同一である場合には、従来技術のカバーパン(図示せず)を該キャリアカバーパン開口部に取り付けるのに使用されたのと同じボルト穴を使用して補助ケーシング150をキャリア筐体40に固定することができる。
【0046】
図3に示された電気駆動装置26は、第二歯車160と、電気モータ162と、クラッチ部164とを含む。該第二歯車160は、第二歯車尾部170と第二歯車頭部172とを有しており、第二歯車160の第二歯車尾部170と第二歯車頭部172とは互いに一体となって形成されている。該第二歯車頭部172は複数のギア歯174を含む。図3に示されているように、第二歯車尾部170は、補助ケーシング150内に一つ以上の軸受け上に回転可能に取り付けられ、第二の軸48と一列に配置できる第三の軸175の周りを第二歯車160が回転することを可能にする。第二歯車160は、該第二歯車160の歯174がリングギア82の歯83とかみ合うような位置に取り付けられている。該ギア歯174は、リングギア82の歯83とかみ合うようなどんな形状、サイズでもよい。リングギア82の歯83もギア歯174とかみ合うようなどんな形状、サイズでもよい。さらに、図示されているように、第三の軸175は、第一の軸46からある角度を成して配置され、ハイポイドギア配列を形成してもよい。
【0047】
電気モータ162およびクラッチ部164は、モータ筐体178内に位置する。モータ筐体178は、補助ケーシング150内部に好適な方法で強固に接続されているが、補助ケーシング150と一体となることもできる。モータ筐体178は、モータ筐体178のほぼ中央を通って延びる内部開口部180を含み、第二歯車尾部170は内部開口部180を通って延びる。モータ筐体178は、また冷却羽根182を含む。冷却羽根182はモータ筐体178の外面に位置し、モータ筐体178の表面積を拡大し、例えば、電気モータ162およびクラッチ部164のようなモータ筐体178の構成部材の冷却を助ける。
【0048】
上記電気モータ162は、モータ筐体178と一体となっているか、または好適な取り付け手段によりその内部に取り付けられる。該電気モータ162はどんな好適な電気モータであってもよい。該電気モータ162はロータ184を含み、一般にロータ184は円筒形であり中央開口部を有する。該ロータ184は、該モータ筐体178に回転可能に取り付けられ、第三の軸175の周りを回転する。第二歯車尾部170はロータ184の中央開口部を通って延びる。したがって、ロータ184は第二歯車尾部170の周りを回転してもよい。電気モータ162は、バッテリ29または交流発電機28のようなどんな好適な電源からでも動力を供給される。
【0049】
一般に、クラッチ部164は、クラッチパック190および作動装置192を含む。該クラッチパック190は、一続きの第一クラッチ板194および第二クラッチ板196を含む。第一クラッチ板194は、第二歯車160の第二歯車尾部170にスプライン嵌合され、第二クラッチ板196はロータ184にスプライン嵌合されている。第一クラッチ板194および第二クラッチ板196は交互に配置されており、第三の軸175に沿って軸方向に滑らせることができる。作動装置192は、第二クラッチ板196を軸方向に滑らせ、第一クラッチ板194とかみ合わせることができる。作動装置192は、従来技術のどんな作動装置であってもよく、例えば、交流発電機28またはバッテリ29から動力を供給される油圧作動装置または電気式作動装置であってもよい。第一クラッチ板194と第二クラッチ板196とがかみ合っている場合には、ロータ184の回転により第二歯車160を回転させることができる。
【0050】
コントローラ30は、車両10の様々な駆動パラメータを監視し、電気駆動装置26の作動を制御する。該コントローラ30は、マイクロコンピュータのようなどんな好適な信号処理装置または制御装置であってもよい。コントローラ30は、車両10の別の駆動パラメータを監視する様々なセンサー32からの入力を受信する。センサー32は、従来技術のどんな好適な検出装置であってもよい。具体的には、図1から図3に示すように、センサー32Aは燃焼エンジン16の速度を監視する。センサー32Bは駆動シャフト20の回転を監視し、車両10の対地速度を決定する。センサー32Cはリングギア82の回転速度を、センサー32Dは第二歯車160の回転速度を監視する。センサー32Eは電気モータ162の操作と、クラッチ部164の位置と、作動装置192の位置とを監視する。センサー32Fは、運転者が所望する加速量を示すスロットル位置を監視する。また、コントローラ30は、燃焼エンジン16および電気駆動装置26に指示を送り、それらの作動を制御することができる。
【0051】
車両10が所定の作動状態になると、コントローラ30は電気駆動装置26を始動させる。車両10が停止状態から加速される場合、例えば、毎時0km(0mile)から毎時16.1km(10miles)に加速する場合や、高速道路走行時のための一般道路法定最高速度(毎時88.5km(55miles):日本では毎時60km)以上の速度で道路走行する場合において、電気駆動装置26を始動させるようコントローラ30がプログラム化された応用例もある。しかしながら、コントローラ30に様々な異なった状況の発生に応じて電気駆動装置26を始動させるようプログラムすることもできる。
【0052】
低速度(例えば、毎時16.1km(10miles)未満の速度)および高速道路走行時のための一般道路法定最高速度(例えば、毎時88.5km(55miles):日本では毎時60km)以上の速度で、電気モータ162を始動させるようにコントローラ30がプログラム化されている場合の電気駆動装置26の操作について、以下に詳細に説明する。車両10が静止位置にあるかまたは毎時16.1km(10miles)未満の速度で進んでいる場合、センサー32Bはコントローラ30にそのような信号を送る。また、コントローラ30は、センサー32Fからスロットル位置を示す信号を受信する。次に、車両10の加速が要求されると、コントローラ30は電気モータ162および作動装置192に指示を送り、電気モータ162および作動装置192を始動させる。電気モータ162を始動させることにより、ロータ184を第三の軸175の周りで回転させる。始動された作動装置192により、第一クラッチ板194および第二クラッチ板196を軸方向に滑らせてかみ合わせ、ロータ184と第二歯車尾部170とを駆動可能に相互に連結する。したがって、ロータ184の回転により第二歯車160を回転させることができる。
【0053】
また、上記コントローラ30は、ロータ184と第二歯車160とが回転する速度を制御する。車両10を加速させる間に、第二歯車160はリングギア82に駆動力を与え、第一入力歯車110がリングギア82に与える駆動力を補う。このような状況により、燃焼エンジン16が必要とする出力が低減される。電気モータ162を適切に作動するために、コントローラ30は燃焼エンジン16の速度と、リングギア82の速度と、スロットル位置とを特定する。燃焼エンジン16の負担を低減するために、このような方法で電気モータ162を使用することは、車両10の燃料を有効に節約し、燃焼エンジン16の寿命を延ばすことができる。
【0054】
上記コントローラ30がセンサー32Bからの入力を処理することにより車両10の速度が毎時16.1km(10miles)以上であると判断すると、コントローラ30は電気モータ162に信号を送り、電気モータ162を停止させる。電気モータ162が停止された後でも、第二歯車頭部172とリングギア82との連携によって第二歯車160は回転し続ける。このとき、電気モータ162は第二歯車160から切り離されていてもよいし、制動のために連結されたままでもよい。例えば、コントローラ30が作動装置192を停止させて、第二歯車160をロータ184から切り離すようプログラムされていてもよい。あるいは、第二歯車160とロータ184とが連結されたままである場合には、リングギア82の回転によって第二歯車160が回転しているため、結果としてロータ184が回転し、電気モータ162が発電機となる。電気モータ162で生成された電気は、充電運転中にバッテリ29に伝送可能である。第二歯車160とロータ184とが切り離されている場合には、第二歯車160は自由に回転し、電気は生成されない。
【0055】
電気駆動装置26はまた、車両10の唯一の推進力源となることができる。例えば、車両10が燃焼エンジン16によって、高速道路走行時のための一般道路法定最高速度(毎時88.5km(55miles):日本では毎時60km)以上の速度など所定の走行速度まで推進された後、コントローラ30は電気モータ162を始動させ、上述したように第二歯車160を回転させることができる。コントローラ30は次に、燃焼エンジン16にRPM出力を遊休状態まで低減するよう指示し、リングギア82を駆動させ車両10を推進するのに必要なすべての駆動力を提供するよう第二歯車160の回転速度を設定する。燃焼エンジン16は遊休状態でもパワーステアリングやパワーブレーキ、および他の車両付属品を維持することができるが、使用される燃料がかなり少ないので燃料が節約される。燃焼エンジン16が遊休状態になった後に車両10を加速させるために、コントローラ30は第二歯車160の回転速度を増加させ、および/または燃焼エンジン16の速度を増加させて第一入力歯車110の回転速度を増加させることができる。また、電気モータ162を使用し、リングギア82を駆動させ車両10を停止状態から推進するのに必要なすべての駆動力を提供することもできる。
【0056】
図4には、さらなる実施形態に係る電気駆動装置200が示されている。該電気駆動装置200は電気駆動装置26と類似しており、プライム(′)記号を付された電気駆動装置200の類似の部材と本実施の形態の類似の部材とを一致させるために、同じ参照番号が用いられている。類似の部材およびその作動についての上記の記述は、該電気駆動装置200にも同様にあてはまる。
【0057】
上記電気駆動装置200は、電気駆動装置26を簡略化したものであり、クラッチ部164を含んでいない。該電気駆動装置200では、電気モータ162′のロータ184′は第二歯車160′の第二歯車尾部170′に回転可能に取り付けられる。したがって、電気モータ162′が始動していないときにリングギア82によって第二歯車160′が回転すると、ロータ184′が回転することになる。コントローラ30は電気モータ162′を自由に回転させたり、または発電機として機能させ、電気を生成させたりすることができる。
【0058】
図5には、さらに他の実施形態に係る電気駆動装置300が示されている。該電気駆動装置300は上記電気駆動装置26および上記電気駆動装置200と類似しており、ダブルプライム(″)記号を付された、該電気駆動装置300の類似の部材と本実施の形態の類似の部材とを一致させるために、同じ参照番号が用いられている。類似した部材およびその作動についての上記の記述は、該電気駆動装置300にも同様にあてはまる。
【0059】
上記電気駆動装置300が歯車作動装置302を含むという点を除いて、該電気駆動装置300は、実質上、上記電気駆動装置200に類似している。該歯車作動装置302は、第二歯車頭部172″とリングギア82とがかみ合っているAの位置と第二歯車頭部172″とリングギア82とが間隔をあけて配されたBの位置との間で、第三の軸175″に沿って第二歯車160″を滑らせることができる従来技術のどんな作動装置でもよい。本実施の形態においては、電気モータ162″が回転力を要求すると、コントローラ30はセンサー32Eを使用して歯車作動装置302の位置を調べ、第二歯車160″がAの位置にあることを確認する。第二歯車160″がAの位置にない場合は、歯車作動装置302を始動させ、第二歯車160″をAの位置に移動させる。
【0060】
コントローラ30は、電気モータ162″を使用する必要がないと判断した場合、電気モータ162″を停止させる。コントローラ30が、バッテリ29または他の装置が再充電される必要があると判断した場合、コントローラ30は、第二歯車160″をAの位置に保つ。それゆえ、リングギア82による第二歯車160″の回転がロータ184″を回転させる。そして、バッテリ29に蓄積可能な電気を電気モータ162″に生成させる。コントローラ30が電気モータ162″を使用して電気を生成する必要がないと判断した場合、コントローラ30は歯車作動装置302に、第二歯車160″がリングギア82と駆動可能にかみ合わないように第二歯車160″をBの位置に動かすよう信号で伝える。上記電気駆動装置300を使用すると、第二歯車160″が使用されていない場合、第二歯車160″をリングギア82とかみ合った状態から動かすことができる。したがって、第二歯車160″がリングギア82と接触して、不必要な抗力を引き起こすことがなく、燃料節約に悪影響を及ぼさなくてもすむため、電気駆動装置300を使用することは有利である。また、電気駆動装置300の歯車作動装置302を上述した電気駆動装置26および電気駆動装置200に提供し、要望どおりに第二歯車160・160′をリングギア82とかみ合わせたりはずしたりすることもできる。
【0061】
本発明の電気駆動装置26・200・300は、ほとんど全ての種類の車両に適用可能であることが当技術において当たり前の技術の一つであることは、当業者に理解されよう。例えば、電気駆動装置26・200・300は前輪駆動車、後輪駆動車、二輪駆動車、四輪駆動車、および全輪駆動車に適用することができる。また、電気駆動装置26・200・300は、すでに製造された車両の従来のキャリア部に取り付けられてもよいし、新しい車両の新しいキャリア部に取り付けられてもよい。
【0062】
したがって、本発明の電気駆動装置26・200・300は、車両10の燃料節約を促進させ、リングギア82と連携している第二歯車160の駆動によって燃焼エンジン16にかかる負担を低減できる。第二歯車160が与える駆動力は、第一入力歯車110の駆動力に取って代わるかまたはそれを補う。したがって、燃焼エンジン16が必要とする出力が低減される。電気モータ162は常時作動していてもよいし、選択されたときにのみ作動していてもよい。電気モータ162が選択されたときにのみ作動する場合とは、例えば、加速中、燃焼エンジン16の需要が最大である場合、もしくは高速道路走行速度にある間、最小限の動作浪費で電気モータ162が単独で車両10を推進できる場合などといった場合である。上記電気駆動装置26・200・300は従来の燃焼エンジン16の性能優位性を提供する一方で、上記のような利点を使用者に提供できる。
【0063】
また、前述の議論は単に本発明の実施形態の例を開示し、説明したものであり、該議論、付属図面および特許請求の範囲により、特許請求の範囲に規定されているように、様々な変更と修正とが本発明の精神と範囲内でなされてもよいことが当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の教示に従って構成された車両の概略図である。
【図2】図1の車両の一部分を部分的に非常に詳細に示した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電気駆動装置を備えた図1の車両のキャリア部の断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る電気駆動装置を備えた図1の車両のキャリア部の断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る電気駆動装置を備えた図1の車両のキャリア部の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア筐体と、
該キャリア筐体に回転可能に取り付けられる差動装置と、
該差動装置に取り付けられ、該差動装置とともに回転するリングギアと、
該リングギアとかみ合い、燃焼エンジンにより駆動され、該リングギアを駆動させることができる第一歯車と、
キャリア筐体に取り付けられ、該リングギアとかみ合い、電気モータにより選択可能に駆動され、該リングギアを駆動させることができる第二歯車と電気モータとを備えた電気駆動装置とを含むことを特徴とする車両用の車軸部。
【請求項2】
上記電気駆動装置は、上記電気モータと上記第二歯車とを選択可能かつ駆動可能に相互に連結させるクラッチ部を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項3】
上記電気モータと上記第二歯車とを駆動可能に連結させる該クラッチ部へ作動力を選択可能に提供する、アクチュエーターを含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用の車軸部。
【請求項4】
上記第一歯車と上記第二歯車とが同じ回転軸の周りを回転することを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項5】
上記電気駆動装置は上記キャリア筐体のカバーパン開口部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項6】
上記電気モータの操作を制御可能なコントローラを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項7】
上記電気モータは電気を生成する発電機として選択可能に機能することを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項8】
上記電気モータは、上記第二歯車に取り付けるための部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項9】
上記第二歯車は、
上記第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、
上記第二歯車がリングギアから間隔をあけて配された第二の位置との間を移動できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項10】
上記差動装置と駆動可能に接続されている第一の出力軸および第二の出力軸を有し、上記電気駆動装置が上記電気モータから第一の出力軸および第二の出力軸へ回転力を伝達可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用の車軸部。
【請求項11】
キャリア筐体と、
該キャリア筐体に回転可能に取り付けられるリングギアと、
該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる第一歯車と、
該キャリア筐体に取り付けられる電気モータと、
該リングギアとかみ合っており、該リングギアを駆動させることができる第二歯車と、
自動車の駆動パラメータを監視し、該駆動パラメータの状況に応じて電気モータの始動および停止を選択して行うコントローラとを含むことを特徴とする車両用の車軸部。
【請求項12】
上記第二歯車は上記電気モータにより直接駆動されることを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項13】
上記第一歯車および上記第二歯車は同じ軸の周りを回転することを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項14】
上記電気モータが、上記キャリア筐体のカバーパン開口部に取り付けられたケーシングに備え付けられることを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項15】
上記電気モータと第二歯車とを選択可能にかつ駆動可能に相互に連結させるクラッチ部を含むことを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項16】
第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、第二歯車がリングギアと間隔をあけて配された第二の位置との間で、上記第二歯車を動かすことができるアクチュエーターを含むことを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項17】
上記電気モータは、上記第二歯車に取り付けるための部材を有していることを特徴とする請求項11に記載の車両用の車軸部。
【請求項18】
キャリア筐体内に回転可能に取り付けられたリングギアに駆動回転力を選択的に提供することができる内部の燃焼エンジンと、
該リングギアに駆動回転力を選択的に提供できる電気モータとを有す自動車の推進方法であって、
当該推進方法は、
該リングギアと該燃焼エンジンとを駆動可能に相互に連結し、
該リングギアと該電気モータとを駆動可能に相互に連結し、
コントローラを使用して自動車の所定の駆動パラメータを監視し、
所定の駆動パラメータの状況に基づいて該電気モータの始動および停止を選択して行うことを特徴とする自動車の推進方法。
【請求項19】
上記燃焼エンジンによって駆動可能である第一歯車と上記リングギアとを連結することを特徴とする請求項18に記載の自動車の推進方法。
【請求項20】
上記電気モータによって駆動可能である第二歯車と上記リングギアとを連結することを特徴とする請求項19に記載の自動車の推進方法。
【請求項21】
上記第二歯車と上記電気モータとを駆動可能に連結するために、クラッチ部を選択可能に操作することを特徴とする請求項20に記載の自動車の推進方法。
【請求項22】
上記第二歯車が上記リングギアと駆動可能にかみ合っている第一の位置と、上記第二歯車が上記リングギアと間隔をあけて配された第二の位置との間で、上記第二歯車は平行移動することを特徴とする請求項20に記載の自動車の推進方法。
【請求項23】
上記モータを発電機として機能させるために、上記リングギアで上記第二歯車を駆動することを特徴とする請求項20に記載の自動車の推進方法。
【請求項24】
上記第一歯車で上記リングギアを駆動するために上記燃焼エンジンを始動する一方、上記第二歯車で上記リングギアを駆動するために電気モータを始動することを特徴とする請求項20に記載の自動車の推進方法。
【請求項25】
自動車が少なくとも高速道路走行時のための一般道路法定最高速度以上の走行速度にある場合、上記燃焼エンジンの速度を遊休状態まで低減し、リングギアを駆動させるために上記電気モータを始動させることを特徴とする請求項18に記載の自動車の推進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123896(P2006−123896A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307169(P2005−307169)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(504091968)アメリカン アクスル アンド マニュファクチャリング,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】