説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】 ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象についても音声案内を行なう車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 案内経路に基づく案内の情報またはそれ以外の所定の情報を音声で出力する音声出力手段が出力を行なう際に、ハンズフリー携帯電話機が使用中であると判断された場合は音声出力手段による音声出力を行なわないように保留する音声出力保留手段と、ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したと判断された場合は、保留した音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する保留解除出力手段と、を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて用いられ、車両を設定された経路に沿って誘導すべく、車両の乗員に対して、設定された経路についての音声案内を行なう機能を備えた車両用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、現在地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、運転者の効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
車両用ナビゲーション装置では、従来、経路案内を行なうナビゲーション装置においては、出発地点から目的地点までの経路を探索し、探索した経路に沿って案内する際には、右左折する交差点等の注意点では音声や表示により案内を行っている。例えば、交差点から700m手前、300m手前、交差点直前というように複数回の音声案内を行い、目印となる施設を報知することにより、運転者がより確実に右左折できるように案内している。まず「700m先右折です。」と報知し、次いで「300m先右折です。」と報知し、右折直前には「間もなく右折です。○○が目印です。」のように案内して、運転者が間違いなく右折できるように案内している。
【0004】
近年、携帯電話機の普及率が高くなり、それに伴って運転中の携帯電話機の使用が原因となる交通事故も増大している。そこで、現在の道路交通法では、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行なうことができないものに限る)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行なうものを除く)のために車両運転中に使用することが禁止されている。このため、車両の運転中に手で受話器を持つことなく通話できるハンズフリー装置が利用されている。
【0005】
車両用ナビゲーション装置では、音声案内が行われるべき区間として選択された走行経路区間においては、その中における特定地点に関する音声案内が、自動車の乗員が会話中の状態にあるか否かにはかかわりなく行なわれることになる。従って、自動車の乗員が会話中に突然音声案内を受け、それにより、会話が中断されてしまう事態が生じ得ることになり、特に、その際の音声案内の内容が乗員にとってさして重要でないものであるときには、乗員が不愉快さを覚えることになってしまう。
【0006】
そこで、自動車を設定された走行経路に沿って誘導するための、自動車の乗員に対する、設定された走行経路における各特定地点に関しての音声案内を、それを受ける乗員の会話状態が考慮されて設定される適切なタイミングのもとに行なわれるものとし、それにより、乗員による会話が音声案内によって不所望に中断されてしまう事態を効果的に抑制することができるようにした自動車の音声による経路誘導装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、音声案内時期の重複を避けるため、音声案内を行なうに際して、案内の重要度を考慮して音声案内を行なうことができ、重要な音声案内があまり重要でない音声案内の出力終了まで待ってから出力することにより、音声案内が遅れる等によって不適切な音声案内が行われることがないようにした音声案内装置が考案されている(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平06−103497号公報
【特許文献2】特開2002−236029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の例では、会話重要度を決定するために、自動車内の乗員の会話状態を監視して会話の途切れたタイミングで音声案内を行なっているが、ハンズフリー通話中の場合は、相手の声を聞いているときを会話が途切れたものと誤判定して、音声案内を行なってしまい通話の妨げとなる問題がある。また、運転者の発声については常に会話重要度が「最も重要」と判定され、重要度の低い音声案内は行なわれない問題もある。
【0010】
また、運転者の声しか発生されないハンズフリー通話の終了と、運転者と同乗者による会話の途切れたタイミングとを区別して会話が途切れたこと判定する場合は、音声認識装置を用いて単に会話すなわち発生の有無、あるいは話者認識を行なうだけではなく、会話の解析をも行なう必要があり、会話の解析のためのプログラム開発費などの分のコストが余分にかかる。
【0011】
特許文献2の例では、音声案内時期の重複を避けることは可能であるが、ハンズフリー通話との重複を避けることはできない。さらに、ハンズフリー通話と重複した音声案内をハンズフリー通話後に行なうこともできない。
【0012】
上記問題を背景として、本発明の課題は、ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象についても音声案内を行なう車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための車両用ナビゲーション装置を提供するものである。即ち、請求項1によれば、電子地図上で案内経路および車両の現在位置を示して車両を目的地に案内する車両用ナビゲーション装置において、案内経路に基づく案内の情報またはそれ以外の所定の情報を音声で出力する音声出力手段と、手で保持する必要のないハンズフリー通話が可能なハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかの情報を受け取る携帯電話機連携手段と、音声出力手段が出力を行なう際にハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかを携帯電話機連携手段からの情報に基づき判断する使用判断手段と、ハンズフリー携帯電話機が使用中であると判断された場合は音声出力手段による音声出力を行なわないように保留する音声出力保留手段と、ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したかどうかを携帯電話連携手段からの情報に基づき判断する使用終了判断手段と、ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したと判断された場合は、保留した音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する保留解除出力手段と、を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置として構成される。
【0014】
本発明は、ハンズフリー携帯電話機の使用を監視し、ハンズフリー通話中に発生した案内事象に対して、ハンズフリー通話終了時に案内する必要の可否を判断し、必要であれば案内を行なうというものである。上記構成によって、会話を解析することなく会話とハンズフリー通話の判別が可能となるとともに、ハンズフリー通話の終了を正確に検出することが可能となるので、コスト上昇を伴わずに上記課題を解決することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するための車両用ナビゲーション装置は、請求項2によれば、電子地図上で案内経路および車両の現在位置を示して車両を目的地に案内する車両用ナビゲーション装置において、案内経路に基づく案内の情報またはそれ以外の所定の情報を音声で出力する音声出力手段と、手で保持する必要のないハンズフリー通話が可能なハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかの情報を受け取る携帯電話機連携手段と、音声出力手段が出力を行なう際にハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかを携帯電話機連携手段からの情報に基づき判断する使用判断手段と、ハンズフリー携帯電話が使用中であると判断された場合は音声出力手段による音声出力を行なわないように保留する音声出力保留手段と、ハンズフリー携帯電話の使用が終了したかどうかを携帯電話連携手段からの情報に基づき判断する使用終了判断手段と、ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したと判断されたことに応じて、保留されていた音声出力を保留解除して実施する必要があるかどうかを判断する保留解除要否判断手段と、その必要があると判断された場合に保留された音声出力をハンズフリー通話機の使用終了後に実施する保留解除出力手段と、を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置として構成される。
【0016】
上記構成も、ハンズフリー携帯電話機の使用を監視し、ハンズフリー通話中に発生した案内事象に対して、ハンズフリー通話終了時に案内する必要の可否を判断し、必要であれば案内を行なうというものである。上記構成によって、会話を解析することなく会話とハンズフリー通話の判別が可能となるとともに、ハンズフリー通話の終了を正確に検出することが可能となるので、コスト上昇を伴わずに上記課題を解決することができる。さらに、ハンズフリー携帯電話機の使用を監視し、ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象に対して、ハンズフリー通話終了後、通話中発生した音声案内を通話終了後にも音声案内すべき内容かどうか判断し、案内すべき内容を報知することができる。よって、通り過ぎた案内地点に関する音声案内を行なってしまい使用者が走行経路を誤ったり、不正確な案内に対して煩わしく思うこともない。
【0017】
請求項3によれば、請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置における保留解除要否判断手段は、保留された経路案内のための音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に行なうべきかどうかの基準として地理的な保留音声出力実施領域を車両の現在位置との関係で定める実施領域設定手段と、車両の現在位置が保留音声出力実施領域内に存在するかどうかを判断する位置判断手段とを含み、車両の現在位置がその保留音声出力実施領域内にあると判断された場合には保留された音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する必要があると判断し、そうでなければその必要がないと判断する構成をとることができる。
【0018】
上記構成によって、ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象に対して、ハンズフリー通話終了後、通話中発生した音声案内を通話終了後にも音声案内すべき内容かどうか判断し、案内すべき内容を報知することができる。よって、通り過ぎた案内地点に関する音声案内を行なってしまい使用者が走行経路を誤ったり、不正確な案内に対して煩わしく思うこともない。
【0019】
請求項4によれば、請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置における保留解除要否判断手段は、経路案内以外の所定の情報についての保留音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に行なうべきかどうかの基準として所定の情報の種別または重要度を定める情報種別等設定手段と、保留された所定の情報が保留音声出力を行なうべき種別または重要度のものであるかどうかを判断する情報種別等判断手段とを含み、所定の情報が種別または重要度のものであると判断された場合は保留された音声出力をハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する必要があると判断し、そうでなければその必要はないと判断する構成をとることができる。
【0020】
上記構成によって、ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象に対して、ハンズフリー通話終了後、通話中発生した音声案内を通話終了後にも音声案内すべき内容かどうか判断し、案内すべき内容を報知することができる。よって、通り過ぎた案内地点に関する音声案内を行なってしまい使用者が走行経路を誤ったり、不正確な案内に対して煩わしく思うこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象についても音声案内を行なう車両用ナビゲーション装置を提供するという目的を、ハンズフリー通話中に発生した音声案内事象に対しハンズフリー通話終了時に案内する必要の可否を判断し、必要であれば音声案内を行なう車両用ナビゲーション装置により実現した。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態である車両用ナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称する)100の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行なう音声合成回路24およびスピーカ15,半導体記憶装置9,表示装置10,ハードディスク装置(HDD)21,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12を備えている。
【0023】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,ジャイロスコープ3,距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部センサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0024】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む各種データを記憶媒体20から入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0025】
地図データは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶すると共に、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点あるいは分岐路等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。
【0026】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられる。タッチスイッチは、表示装置10の画面上に縦横に微細に配置された赤外線センサ、赤外線センサが検出した指等の接触を電気信号に変えるパネル部分、電気信号を外部機器へ送るための信号処理回路、および、これらを制御するコントローラを含んで構成される。例えば指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置が2次元座標値(X,Y)として検出される。タッチスイッチとして、ガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線し、フィルム上を使用者がタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X,Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式を用いてもよい。あるいは、透明な導電性基盤のガラス面に電気信号を受ける物質を塗布し、指をガラス面に近づけると静電容量の変化を電気信号としてセンサで検知する、いわゆる静電容量方式を用いてもよい。
【0027】
タッチスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット30に接続されるマイク31から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。音声認識ユニット30は、マイク31から入力された音声信号を適切なレベルに増幅する増幅器と、増幅後の音声信号をA/D変換した後、周知の隠れマルコフモデル等の音声認識アルゴリズムにより音声を識別するための音声信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、音声を識別するための基準データが記憶されているメモリ等で構成されており、DSPにより音声信号がその音声に対応した数値情報に変換された後、制御回路8に送られる。これら操作スイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30,マイク31により種々の指示を入力することが可能である。また、操作スイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30,マイク31が本発明の実施領域設定手段に相当する。
【0028】
送受信機13は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ14から道路交通情報を受信するための装置である。
【0029】
また、通信ユニット19に携帯電話機17あるいは自動車電話機等の移動体通信機器を接続することによっても、外部ネットワークとの接続が可能で、インターネット等に接続することができる。さらに、ETC(自動料金収受システム,ETC:Electronic Toll Collection)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器から受信した料金情報などを本ナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワークと接続することも可能である。これら携帯電話機17あるいはETC車載器16を介してVICSセンタ14との通信を行なう構成をとってもよい。
【0030】
本発明の携帯電話機連携手段である通信ユニット19は、携帯電話機17とデータ伝送可能に接続されており、制御回路8は通話状態などの携帯電話機17の動作状態を取得可能となっている。また、ハンズフリーユニット25は、キーあるいはスイッチを含む操作部,CPUおよびそのCPUにより動作するプログラムによりハンズフリーユニット全体の制御を行なう制御部,適切な通話音量を確保するためのアンプ部などからなるハンズフリーユニット本体と、通話を行なうためのスピーカ,マイクと、携帯電話機17と電気接続するためのケーブルを含んで構成される。ハンズフリーユニット25は周知のものであるため、詳細な説明は割愛する。
【0031】
本発明の使用判断手段,音声出力保留手段,使用終了判断手段,保留解除出力手段,保留解除要否判断手段,位置判断手段,情報種別等設定手段,情報種別等判断手段に相当する制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行なわれる。
【0032】
A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えは位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0033】
HDD21に地図データを記憶する構成をとってもよい。また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができる。これらのデータは、操作スイッチ群7およびリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、地図データ入力器6を用いて記憶媒体20から地図データ等を読み込んでHDD21の内容を更新することも可能である。また、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なう車内LAN(Local Area Network)22を介して受信したデータを記録する構成をとってもよい。
【0034】
半導体記憶装置9はフラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体によって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、半導体記憶装置9は、車両のアクセサリスイッチがオフ状態すなわち、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても、記憶内容が保持されるようになっている。
【0035】
また、半導体記憶装置9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータを半導体記憶装置9とHDD21に分けて記憶してもよい。この場合、HDD21よりも半導体記憶装置9へのアクセス速度の方が速いため、読み書きの頻度が比較的多いものを半導体記憶装置9に記憶し、読み書きの頻度が比較的少ないものをHDD21に記憶するとよい。半導体記憶装置9に記憶された内容をHDD21にバックアップ保存するようにしてもよい。
【0036】
表示装置10は周知のカラー液晶表示器で、例えばドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうためのドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8から送られる表示指示および表示画面データに基づいて表示を行なう。表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置マークと、記憶媒体20から入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示すると共に、本画面に経路案内の設定および経路誘導中の案内や画面の切り換え操作を行なうためのメニューボタンが表示される。
【0037】
スピーカ15は制御回路8のI/O34に接続される周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によって半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データを音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき、必要に応じて繋ぎあわせる録音編集方式、音声波形を分析してパラメータに変換された形で蓄積し、それを繋ぎ合せて音声合成回路を駆動し音声を作り出すパラメータ編集方式、文字列あるいは音素記号列から、音声学的・言語学的規則に基づいて、音声を作り出す規則合成方式などがある。スピーカ15および音声合成回路24が本発明の音声出力手段に相当する。
【0038】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置と所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。車速データを車内LAN(Local Area Network)22を介して他の車載機器から取得する方法をとってもよい。
【0039】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、運転者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから目的地経路を表示装置10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0040】
即ち、運転者が表示装置10上の地図に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機5から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示装置10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示装置10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0041】
ダイクストラ法では、リンク情報,ノード情報,リンク間接続情報を用いて、現在地から各ノードに至るまでの経路評価値すなわち経路計算コストを算出し、目的地までの全ての経路評価値の計算が終了した段階で、総評価値が最小となるリンクを接続して目的地までの経路を設定している。この場合の評価値は、道路長・道路種別・道路幅員・車線数・交差点での右左折・信号機の有無などに応じて設定されている。例えば、道路幅員が広いほど評価値が低く、車線数が多いほど評価値が低い。
【0042】
各リンクでの経路計算コストの計算は、例えば次式を用いて行われる。経路計算コスト=リンク長×道路幅員係数×道路種別係数×渋滞度。ここで、道路幅員係数とは道路幅に応じて設定される係数であり、道路種別係数とは有料道路等の道路種別に応じて設定される係数である。そして、渋滞度とは、その道路の渋滞度合に応じて設定される係数である。
【0043】
燃料センサ26は燃料タンク内の燃料の液面の位置にしたがって上下する浮きの位置によって浮きの取り付け部に設けられた周知のポテンショメータの抵抗値が変化するもので、その抵抗値に応じて発生する電圧値が制御回路8に送られる。制御回路8では、その電圧値をA/D変換部86によりデジタル値にするとともに演算により燃料の残量を求める。燃料の残量データを車内LAN22を介して、計器パネルにおける残燃料表示を含む表示制御を行なう計器パネルECU等の他の車載機器から取得する方法をとってもよい。
【0044】
ナビゲーション装置100は前述のように操作スイッチ群7,リモコン端末12あるいは音声認識ユニット30により使用者が目的地の位置を入力すると、現在地からその目的地までの案内経路を形成し表示装置10の表示画面上に表示する。同時に、経路上の交差点等の分岐点等に対し、使用者を案内経路どおりに走行させるための案内対象点として設定する。制御回路8は設定された案内対象点に対し、車両がある一定距離まで近づいたときに音声により案内すべきポイントとして、案内実施点を決定する。案内実施点は、例えば案内対象点に対し、700m手前、300m手前、100m手前といったように複数設定することができる。さらに、案内対象点に対し音声案内を実施すべき範囲を案内実施範囲として設定する。
【0045】
案内実施範囲は、音声案内を行なった際に使用者が対処可能な地点の範囲で、例えば案内対象点の直前もしくは通過後のように音声案内を行っても運転者が対処不可能な領域は案内実施範囲外とする。使用者が案内対象点,案内実施点,案内実施範囲を設定可能としてもよい。
【0046】
図2のフロー図を用いて、ハンズフリー通話中の音声案内保留処理について説明する。なお、本処理はCPU81により実行されるナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。
【0047】
位置検出器1によって算出される車両の現在位置と案内実施点を比較し、自車が案内実施点に到達したかを判定する。車両が案内実施点に到達した場合(S1:Yes)、通信ユニット19を介して携帯電話機17の状態を取得し、ハンズフリー通話中であるかを判定する。ハンズフリーユニット25が接続されているかどうかを携帯電話機17が検出可能であり、ハンズフリーユニット25の接続の有無の情報および携帯電話機17が通話中かどうかの情報を通信ユニット19により取得可能な構成となっていれば、ハンズフリー通話中であるかを判定可能である。ハンズフリー通話中でない場合(S2:No)、音声案内を行なう(S5)。
【0048】
一方、ハンズフリー通話中であると判定された場合(S2:Yes)、してRAM82あるいは半導体記憶装置9に領域が確保されている案内出力保留フラグをセットし(S3)、音声案内を行なわない。そして、今回の案内対象であった案内対象点を保留案内対象点としてRAM82あるいは半導体記憶装置9の所定の領域に記憶しておく(S4)。
【0049】
図3のフロー図を用いて、ハンズフリー通話終了時の音声案内保留解除処理について説明する。なお、本処理はCPU81により実行されるナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。
【0050】
通信ユニット19から取得した携帯電話機17の状態より、ハンズフリー通話の状態が変化したかを監視する(S11)。ハンズフリー通話の状態が変化してハンズフリー通話が終了したと判定された場合(S12:Yes)、RAM82あるいは半導体記憶装置9の所定の領域を参照し、案内出力保留フラグがセットされているかを確認する。案内出力保留フラグがセットされていた場合(S13:Yes)、車両の現在位置が保留案内対象点の案内実施範囲内に含まれるかを判定する。車両の現在位置が案内実施範囲内に含まれる場合(S14:Yes)、音声合成回路24を介して音声案内を行なう(S15)。そして、音声案内を行なうかどうかによらず案内出力保留フラグをクリアする(S16)。
【0051】
保留案内対象点の案内実施範囲は、例えば案内対象点を中心とする50m以内の範囲であるが、使用者によって設定可能としてもよい。また、案内対象点の種別毎に設定可能としてもよい。
【0052】
例えば、目的地の100m手前ではハンズフリー通話中のため「目的地周辺です。音声案内を終了します」という音声案内ができなかったが、目的地到着直前にハンズフリー通話が終了した場合は、「目的地周辺です。音声案内を終了します」という音声案内を行なうことができる。一方、ハンズフリー通話終了時に既に目的地に到着していた場合には、「目的地周辺です。音声案内を終了します」という音声案内は行なわない。また、ハンズフリー通話中に走行経路前方の渋滞情報の案内を行なうタイミングが発生した場合は、ハンズフリー通話終了時渋滞情報の案内を行なうことができ、使用者は渋滞情報の案内を聞いて経路を変更する等の必要な処置をとることが可能となる。
【0053】
上記実施の形態では案内対象点を案内経路上の分岐点等のユーザを案内経路どおりに走行させるための地点としたが、案内経路とは関係なく地図上に予め存在するメモリ地点、県境、カーブ、踏切などの地点あるいは施設や、送受信機13を介してVICSセンタ14から受信した渋滞情報をもとにした渋滞、工事中等の道路状況を案内対象点としてもよい。これらも上記と同じく案内実施範囲を持っており、ハンズフリー通話中で音声案内できなかった場合はハンズフリー通話終了後に車両の現在位置が案内実施範囲内にあれば音声案内を行なう。
【0054】
また、案内対象として地点あるいは施設ではなく、燃料センサ26から取得した燃料残量、故障等の車両情報や、送受信機13を介してVICSセンタ14から受信した雨や雪などの天候情報、時報・アラーム等のある状態になった場合にユーザに対して通知を行なうもので音声による通知を行なうものを対象に含めてもよい。この場合は、案内実施範囲の代わりに案内実施状態を判定し、ハンズフリー通話終了後に音声案内すべき状態であれば案内音声出力する。
【0055】
例えば、燃料残量の場合は所定の残量を下回ったとき、車両情報の場合は直ちに停車して処置を行なわなければならない重大故障が発生したとき、天候情報の場合は天候の急激な悪化が予想される、あるいは車両の走行経路上で警報が発令されたとき、が音声案内すべき状態として設定される。
【0056】
車両の故障の判定は車両に設置されている他のECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)に接続されたエンジン回転,ブレーキ,変速機,タイヤ空気圧,エンジンオイル,水温,バッテリ電圧等の状態を検出するセンサの情報、あるいは各部の故障情報を車内LAN22を経由して取得する。
【0057】
ハンズフリー通話中に車両の現在位置が案内実施範囲内にある場合、表示装置10の画面上に案内メッセージを表示したり、ハンズフリー通話中のため音声案内ができない旨を表示してもよい。
【0058】
音声案内保留の対象を経路案内に直接関係するもの、および車両情報,天候情報のように経路案内に直接関係しないもののいずれにするかを使用者により設定可能としてもよい。図2のフロー図のステップS2:YESの後で、音声案内の内容が音声案内保留の対象である場合にのみ案内出力保留フラグをセットする条件が追加される。このようにすれば、使用者が不要な音声案内によって煩わしさを感じることはなくなる。
【0059】
また、音声案内の種別あるいは内容毎に重要度を設定し、よりも高い音声案内のみを音声案内保留の対象としてもよい。例えば、経路案内に直接関係する案内を重要度4、車両情報のうち走行に支障のある情報の案内を重要度5、案内経路とは関係なく地図上に予め存在するメモリ地点、県境、カーブ、踏切などの地点あるいは施設に関する案内を2、所定の重要度を3とするものである。重要度および所定の重要度は使用者により設定可能としてもよい。図2のフロー図のステップS2:YESの後で、音声案内の重要度が所定の重要度よりも高い場合にのみ案内出力保留フラグをセットする条件が追加される。このようにすれば、使用者が不要な音声案内によって煩わしさを感じることはなくなる。
【0060】
上記の実施の形態において、使用者による各種設定は以下のように行なう。使用者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから機能設定メニューを表示装置10に表示させ、その中からハンズフリー通話中の音声案内に関する設定画面を選択して表示させる。そして、それぞれの項目について選択・設定を行なう。選択・設定された内容は、半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に記憶される。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図2】音声案内保留処理について説明するためのフロー図。
【図3】音声案内保留解除処理について説明するためのフロー図。
【符号の説明】
【0063】
1 位置検出器
7 操作スイッチ群(実施領域設定手段)
8 制御回路(使用判断手段,音声出力保留手段,使用終了判断手段,保留解除出力手段,保留解除要否判断手段,位置判断手段,情報種別等設定手段,情報種別等判断手段)
9 半導体記憶装置
12 リモコン端末(実施領域設定手段)
15 スピーカ(音声出力手段)
17 携帯電話機
19 通信ユニット(携帯電話機連携手段)
20 記憶媒体
21 ハードディスク装置
24 音声合成回路(音声出力手段)
25 ハンズフリーユニット
30 音声認識ユニット(実施領域設定手段)
31 マイク(実施領域設定手段)
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子地図上で案内経路および車両の現在位置を示して車両を目的地に案内する車両用ナビゲーション装置において、
前記案内経路に基づく案内の情報またはそれ以外の所定の情報を音声で出力する音声出力手段と、
手で保持する必要のないハンズフリー通話が可能なハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかの情報を受け取る携帯電話機連携手段と、
前記音声出力手段が出力を行う際に前記ハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかを前記携帯電話機連携手段からの情報に基づき判断する使用判断手段と、
前記ハンズフリー携帯電話機が使用中であると判断された場合は前記音声出力手段による音声出力を行わないように保留する音声出力保留手段と、
前記ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したかどうかを前記携帯電話連携手段からの情報に基づき判断する使用終了判断手段と、
前記ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したと判断された場合は、前記保留した音声出力を前記ハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する保留解除出力手段と、
を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
電子地図上で案内経路および車両の現在位置を示して車両を目的地に案内する車両用ナビゲーション装置において、
前記案内経路に基づく案内の情報またはそれ以外の所定の情報を音声で出力する音声出力手段と、
手で保持する必要のないハンズフリー通話が可能なハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかの情報を受け取る携帯電話機連携手段と、
前記音声出力手段が出力を行う際に前記ハンズフリー携帯電話機が使用中であるかどうかを前記携帯電話機連携手段からの情報に基づき判断する使用判断手段と、
前記ハンズフリー携帯電話が使用中であると判断された場合は前記音声出力手段による音声出力を行わないように保留する音声出力保留手段と、
前記ハンズフリー携帯電話の使用が終了したかどうかを前記携帯電話連携手段からの情報に基づき判断する使用終了判断手段と、
前記ハンズフリー携帯電話機の使用が終了したと判断されたことに応じて、前記保留されていた音声出力を保留解除して実施する必要があるかどうかを判断する保留解除要否判断手段と、
その必要があると判断された場合に前記保留された音声出力を前記ハンズフリー通話機の使用終了後に実施する保留解除出力手段と、
を含むことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記保留解除要否判断手段は、
前記保留された前記経路案内のための音声出力を前記ハンズフリー携帯電話機の使用終了後に行うべきかどうかの基準として地理的な保留音声出力実施領域を車両の現在位置との関係で定める実施領域設定手段と、
前記車両の現在位置が前記保留音声出力実施領域内に存在するかどうかを判断する位置判断手段とを含み、
車両の現在位置がその保留音声出力実施領域内にあると判断された場合には前記保留された音声出力を前記ハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する必要があると判断し、そうでなければその必要がないと判断する請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記保留解除要否判断手段は、
前記経路案内以外の所定の情報についての保留音声出力を前記ハンズフリー携帯電話機の使用終了後に行うべきかどうかの基準として前記所定の情報の種別または重要度を定める情報種別等設定手段と、
保留された前記所定の情報が保留音声出力を行うべき種別または重要度のものであるかどうかを判断する情報種別等判断手段とを含み、
前記所定の情報が前記種別または重要度のものであると判断された場合は前記保留された音声出力を前記ハンズフリー携帯電話機の使用終了後に実施する必要があると判断し、そうでなければその必要はないと判断する請求項2に記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−237735(P2006−237735A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45999(P2005−45999)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】