説明

過給機付リーンバーンエンジン

【課題】低速領域において過給限界を高負荷側に移動することにより、RawNOxの生成抑制と低燃費との両立に有利な運転領域を拡大させた過給機付リーンバーンエンジンを実現する。
【解決手段】制御器(PCM10)は、エンジン本体1が少なくとも暖機後でかつ、運転状態が低速領域にあるときにおいて、第1負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定し、第2負荷領域にあるときには、EGR手段による既燃ガスの導入を停止すると共に、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、空気燃料比を理論空燃比に設定すると共に、EGR手段による既燃ガスの導入を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、過給機付リーンバーンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ターボ過給機付エンジンの制御に関する技術が記載されており、この技術は、エンジンの運転状態が低速低負荷から中速中負荷の運転領域にあるときには、外部EGR制御を行い、運転状態が低速高負荷から中速高負荷の運転領域にあるときには、掃気制御を行い、そして、高速高負荷の運転領域にあるときには、掃気制御及び外部EGR制御を行うようにしている。これにより高速高負荷の運転領域では、気筒内の高温の残留ガスを低減した上で、冷却された外部EGRガスを気筒内に導入して、異常燃焼を抑制しながらトルクの向上及び燃費の向上が図られる。このように特許文献1の制御は、ターボ過給機付エンジンのノッキング対策として、エンジンの負荷に応じてEGR制御の実行、非実行を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−24974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作動ガス燃料比G/Fを30以上、又は空気燃料比A/Fを30以上に設定するリーンバーンエンジンは、RawNOxの生成抑制と、低燃費との両立に有効である。そうした超リーンな混合気で運転されるリーンバーンエンジンにおいて、所望のトルクを確保するためには、例えばターボ過給機が組みあわせられる。
【0005】
しかしながら、本願発明者らは、こうしたターボ過給機付リーンバーンエンジンでは、特に低速領域において、エンジン負荷の増大に伴い、G/F≧30又はA/F≧30を達成することが難しくなる点に気づいた。これは、ターボ過給機の過給限界に起因しており、低速領域では排気エネルギが小さくターボ過給機のコンプレッサ効率がもともと低いため、エンジン負荷が高まるに伴い燃料量が増量したときに、G/F≧30又はA/F≧30を達成するだけの過給能力が得られないのである。逆に、エンジン負荷が高まってもG/F≧30又はA/F≧30を維持しようとすれば、所望のトルクが得られなくなる。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低速領域において過給限界を高負荷側に移動することにより、RawNOxの生成抑制と低燃費との両立に有利な運転領域を拡大させた過給機付リーンバーンエンジンを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、低速域においてエンジン負荷が高まったときには、排気エネルギを増大させてコンプレッサ効率を高める点に着目した。つまり、低負荷領域では、ターボ過給機による過給と共に、ポンピングロスの低減を目的の一つとしてEGR手段による気筒内への既燃ガスの導入を行いG/Fを30以上に設定する一方、その低負荷領域よりも負荷の高い中負荷領域では、EGR手段による既燃ガスの導入を停止することにより排気エネルギを増大させてターボ過給機のコンプレッサ効率を高め、そのことにより、所望のトルクを確保しつつ、A/Fを30以上に設定することを可能にした。
【0008】
具体的に、ここに開示する過給機付リーンバーンエンジンは、理論空燃比よりもリーンな混合気で運転される運転領域を有するように構成されたエンジン本体と、前記エンジン本体の気筒内に導入するガスの過給を行うように構成されたターボ過給機と、前記気筒内に既燃ガスを導入するように構成されたEGR手段と、前記エンジンの運転を制御するように構成された制御器と、を備える。
【0009】
前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、エンジン負荷が低負荷である第1負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定し、前記エンジン負荷が前記第1負荷領域よりも高い第2負荷領域にあるときには、前記EGR手段による既燃ガスの導入を停止すると共に、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、前記エンジン負荷が前記第2負荷領域よりも高くかつ、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、空気燃料比を理論空燃比に設定すると共に、前記EGR手段による既燃ガスの導入を行う。
【0010】
ここで、EGR手段は、EGR通路を介して還流させた既燃ガスを気筒内に導入する外部EGRシステムとすればよいが、特に低負荷領域において、吸排気弁の作動制御を行うことにより既燃ガスを気筒内に導入する内部EGRシステムをさらに含んでもよい。
【0011】
この構成によると、エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、エンジンの負荷状態が比較的低負荷である第1負荷領域にあるときには、EGR手段により気筒内に既燃ガスを導入しつつ、ターボ過給機による過給によって、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定する。これによって、RawNOxの生成抑制と低燃費とが両立する。また、EGR手段による既燃ガスの導入は、ポンピングロスを低減し、燃費の向上に有利である。
【0012】
エンジン本体の運転状態が、第1負荷領域よりも負荷の高い第2負荷領域にあるときには、EGR手段による気筒内への既燃ガスの導入を停止する。低速領域においてEGR制御を停止することによって、排気エネルギが増大し、ターボ過給機のコンプレッサ効率が高まる。その結果、相対的に負荷の高い第2負荷領域(つまり、中負荷領域)において、所望のトルクを確保しつつ、空気燃料比A/Fを30以上に設定することが実現する。このことは、ターボ過給機の過給限界を高負荷側に移動させて、RawNOxの生成を抑制と低燃費とが両立する運転領域を、第2負荷領域まで拡大させたことと等価である。
【0013】
そうして、エンジン本体の運転状態が、第2負荷領域よりも負荷の高い第3負荷領域にあるときには、空気燃料比を理論空燃比に設定すると共に、EGR手段による既燃ガスの導入を行う。このことにより、全開負荷を含む第3負荷領域において所望のトルクを確保しつつ、既燃ガスの導入によってノッキング等の異常燃焼が回避される。
【0014】
ここで、前記第2負荷領域と第3負荷領域との境界は、前記ターボ過給機の過給限界によって定まる、としてもよい。
【0015】
つまり、ターボ過給機の過給限界を超える第3領域では、所望のトルク確保と、超リーンな混合気とが両立しないため、空気燃料比を理論空燃比に設定して、必要トルクを確保すればよい。
【0016】
ここに開示する別の過給機付リーンバーンエンジンは、その過給機として、排気エネルギにより駆動されるターボ過給機と、前記ターボ過給機とは異なる駆動源を有する補助過給機と、を備えており、前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、エンジン負荷が低負荷である第1負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定し、前記エンジン負荷が前記第1負荷領域よりも高い第2負荷領域にあるときには、前記EGR手段による既燃ガスの導入を停止すると共に、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、前記エンジン負荷が前記第2負荷領域よりも高くかつ、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、前記補助過給機を駆動することによって、前記G/Fを30以上に、又は、前記A/Fを30以上に設定する。
【0017】
この構成によると、前述した構成の過給機付リーンバーンエンジンと同様に、エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、第1負荷領域にあるときには、EGR手段により気筒内に既燃ガスを導入しながら、G/F≧30以上に設定する。このことにより、RawNOxの生成抑制と低燃費とが両立する。
【0018】
また、エンジン本体の運転状態が第2負荷領域にあるときには、EGR手段を停止することによって排気エネルギを高めて、ターボ過給機のコンプレッサ効率を向上し、所望のトルクを確保しつつ、A/F≧30を可能にする。こうして、RawNOxの生成抑制と低燃費とが両立する運転領域が高負荷側に拡大する。
【0019】
そうして、エンジン本体の運転状態が、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、補助過給機を駆動することによって、G/F≧30(EGR手段による既燃ガスの導入を行う場合に対応)又はA/F≧30(EGR手段による既燃ガスの導入を行わない場合に対応)を実現する。つまり、ターボ過給機の過給限界を超える第3負荷領域では、補助過給機を駆動することによって、所望のトルクを確保しつつ、G/F≧30又はA/F≧30を実現する。これにより、全開負荷を含む第3負荷領域においても、RawNOxの生成抑制と低燃費とが両立する。
【0020】
前記補助過給機は、電動ブースト、又は、電動ターボ過給機である、としてもよい。電動ブースト又は電動ターボ過給機は、ターボ過給機の過給限界を超える第3負荷領域において、G/F≧30又はA/F≧30を実現する上で有効である。
【0021】
前記制御器は、少なくとも前記第1負荷領域及び第2負荷領域においては、圧縮着火燃焼を実行する、としてもよい。圧縮着火燃焼は、排気エミッションの向上と熱効率の向上とを両立することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、この過給機付リーンバーンエンジンは、低速領域における中負荷領域に相当する第2負荷領域では、EGR手段による既燃ガスの導入を停止することによって、ターボ過給機のコンプレッサ効率を高めるから、所望のトルクを確保しつつ、A/F≧30が実現可能になり、RawNOxの生成抑制と低燃費との両立に有利な運転領域を、高負荷側に拡大させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】過給機付リーンバーンエンジンの構成を示す概略図である。
【図2】過給機付リーンバーンエンジンの制御に係るブロック図である。
【図3】エンジンの運転領域を例示する図である。
【図4】エンジン回転数とコンプレッサ効率との関係の一例を示す図である。
【図5】電動ブーストをさらに備えた、エンジンシステムの構成例を示す図である。
【図6】エンジントルクと燃費率との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、過給機付リーンバーンエンジンの実施形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、例示である。図1,2は、エンジン(エンジン本体)1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されると共に、少なくともガソリンを含有する燃料が供給される火花点火式ガソリンエンジンである。エンジン1は、複数の気筒18(一つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。各気筒18内には、コンロッド142を介してクランクシャフト15と連結されているピストン14が往復動可能に嵌挿されている。ピストン14の頂面には、リエントラント形のようなキャビティ141が形成されている。キャビティ141は、ピストン14が圧縮上死点付近に位置するときには、後述する直噴インジェクタ67に相対する。シリンダヘッド12と、気筒18と、キャビティ141を有するピストン14とは、燃焼室19を区画する。尚、燃焼室19の形状は、図示する形状に限定されるものではない。例えばキャビティ141の形状、ピストン14の頂面形状、及び、燃焼室19の天井部の形状等は、適宜変更することが可能である。
【0025】
このエンジン1は、理論熱効率の向上や、後述する圧縮着火燃焼の安定化等を目的として、14以上の比較的高い幾何学的圧縮比に設定されている。尚、幾何学的圧縮比は14以上20以下程度の範囲で、適宜設定すればよい。但し、エンジン1の幾何学的圧縮比は、この範囲に限定されるものではない。
【0026】
シリンダヘッド12には、気筒18毎に、吸気ポート16及び排気ポート17が形成されていると共に、これら吸気ポート16及び排気ポート17には、燃焼室19側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。
【0027】
吸気弁21及び排気弁22をそれぞれ駆動する動弁系の内、排気側には、排気弁22の作動モードを通常モードと特殊モードとに切り替える、例えば油圧作動式の可変機構(図2参照。以下、VVL(Variable Valve Lift)と称する)71が設けられている。VVL71は、その構成の詳細な図示は省略するが、カム山を一つ有する第1カムとカム山を二つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁に伝達するロストモーション機構を含んで構成されている。第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22は、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードで作動するのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードで作動する。VVL71の通常モードと特殊モードとは、エンジンの運転状態に応じて切り替えられる。具体的に、特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用される。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁22を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。また、内部EGRの実行は、排気の二度開きのみによって実現されるのではない。例えば吸気弁21を二回開く、吸気の二度開きによって内部EGR制御を行ってもよいし、排気行程乃至吸気行程において吸気弁21及び排気弁22の双方を閉じるネガティブオーバーラップ期間を設けて既燃ガスを気筒18内に残留させる内部EGR制御を行ってもよい。
【0028】
VVL71を備えた排気側の動弁系に対し、吸気側には、図2に示すように、クランクシャフト15に対する吸気カムシャフトの回転位相を変更することが可能な位相可変機構(以下、VVT(Variable Valve Timing)と称する)72と、吸気弁21のリフト量を連続的に変更することが可能なリフト量可変機構(以下、CVVL(Continuously Variable Valve Lift)と称する)73とが設けられている。VVT72は、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての図示は省略する。また、CVVL73も、公知の種々の構造を適宜採用することが可能であり、その詳細な構造についての図示は省略する。VVT72及びCVVL73によって、吸気弁21は、その開弁タイミング及び閉弁タイミング、並びに、リフト量をそれぞれ変更することが可能である。
【0029】
シリンダヘッド12にはまた、気筒18毎に、気筒18内に燃料を直接噴射する直噴インジェクタ67と、吸気ポート16内に燃料を噴射するポートインジェクタ68とがそれぞれ取り付けられている。
【0030】
直噴インジェクタ67は、その噴口が燃焼室19の天井面の中央部分から、その燃焼室19内に臨むように配設されている。直噴インジェクタ67は、エンジン1の運転状態に応じた噴射タイミングでかつ、エンジン1の運転状態に応じた量の燃料を、燃焼室19内に直接噴射する。この例において、直噴インジェクタ67は、詳細な図示は省略するが、複数の噴口を有する多噴口型のインジェクタである。これによって、直噴インジェクタ67は、燃料噴霧が放射状に広がるように、燃料を噴射する。ピストン14が圧縮上死点付近に位置するタイミングで、燃焼室19の中央部分から放射状に広がるように噴射された燃料噴霧は、ピストン頂面に形成されたキャビティ141の壁面に沿って流動することにより、後述する点火プラグ25の周囲に到達するようになる。キャビティ141は、ピストン14が圧縮上死点付近に位置するタイミングで噴射された燃料噴霧を、その内部に収めるように形成されている、と言い換えることが可能である。この多噴口型のインジェクタ67とキャビティ141との組み合わせは、燃料の噴射後、点火プラグ25の周りに燃料噴霧が到達するまでの時間を短くすると共に、燃焼期間を短くする上で有利な構成である。尚、直噴インジェクタ67は、多噴口型のインジェクタに限定されず、外開弁タイプのインジェクタを、直噴インジェクタに採用してもよい。
【0031】
ポートインジェクタ68は、図1に示すように、吸気ポート16乃至吸気ポート16に連通する独立通路に臨んで配置されかつ、吸気ポート16内に燃料を噴射する。ポートインジェクタ68は、一つの気筒18に対して一つ設けてもよいし、一つの気筒18に対し二つの吸気ポート16が設けられているのであれば、二つの吸気ポート16のそれぞれに設けてもよい。ポートインジェクタ68の形式は特定の形式に限定されるものではなく、種々の形式のインジェクタを、適宜採用することが可能である。
【0032】
図外の燃料タンクと直噴インジェクタ67との間は、高圧燃料供給経路によって互いに連結されている。この高圧燃料供給経路上には、高圧燃料ポンプ63とコモンレール64とを含みかつ、直噴インジェクタ67に、相対的に高い燃料圧力で燃料を供給する高圧燃料供給システム62が介設されている。高圧燃料ポンプ63は、燃料タンクからコモンレール64に燃料を圧送し、コモンレール64は圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄える。直噴インジェクタ67が開弁することによって、コモンレール64に蓄えられている燃料が直噴インジェクタ67の噴口から噴射される。ここで、高圧燃料ポンプ63は、図示は省略するが、プランジャー式のポンプであり、例えばクランク軸とカム軸との間のタイミングベルトに連結されることにより、エンジン1によって駆動される。このエンジン駆動のポンプを含む構成の高圧燃料供給システム62は、40MPa以上の高い燃料圧力の燃料を、直噴インジェクタ67に供給することを可能にする。直噴インジェクタ67に供給される燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更される。尚、高圧燃料供給システム62は、これに限定されるものではない。
【0033】
同様に、図外の燃料タンクとポートインジェクタ68との間は、低圧燃料供給経路によって互いに連結されている。この低圧燃料供給経路上には、ポートインジェクタ68に対し、相対的に低い燃料圧力の燃料を供給する低圧燃料供給システム66が介設されている。低圧燃料供給システム66は、詳細な図示は省略するが、電動又はエンジン駆動の低圧燃料ポンプとレギュレータとを備えており、所定圧力の燃料を、各ポートインジェクタ68に供給するように構成されている。ポートインジェクタ68は、吸気ポートに燃料を噴射するため、低圧燃料供給システム66が供給する燃料の圧力は、高圧燃料供給システム62が供給する燃料の圧力に比べて、低い圧力に設定されている。尚、ここでは、直噴インジェクタ67とポートインジェクタ68との、2種類のインジェクタを備えているが、ポートインジェクタ68を省略することも可能である。
【0034】
シリンダヘッド12にはまた、燃焼室19内の混合気に点火する点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、エンジン1の排気側から斜め下向きに延びるように、シリンダヘッド12内を貫通して配置されている。点火プラグ25の先端は、燃焼室19の中央部分に配置された直噴インジェクタ67の先端近傍で、燃焼室19内に臨んで配置されている。
【0035】
エンジン1の一側面には、各気筒18の吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、エンジン1の他側面には、各気筒18の燃焼室19からの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、詳しくは後述するが、吸入空気の過給を行うターボ過給機61が配設されている。
【0036】
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。また、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒18毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒18の吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
【0037】
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、ターボ過給機61のコンプレッサ611と、コンプレッサ611により圧縮された空気を冷却するインタークーラ34と、各気筒18への吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。
【0038】
排気通路40の上流側の部分は、各気筒18毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、ターボ過給機61のタービン612が配設されていると共に、その下流には、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置として、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42とがそれぞれ接続されている。直キャタリスト41及びアンダーフットキャタリスト42はそれぞれ、筒状ケースと、そのケース内の流路に配置した、例えば三元触媒とを備えて構成されている。後述するように、このエンジンシステムでは、少なくとも一部の運転領域において、作動ガス燃料比G/F≧30、又は、空気燃料比A/F≧30に設定することでRawNOxの生成を抑制している。このことにより、このエンジンシステムでは、NOx浄化触媒が不要なシステムに構成されている。
【0039】
吸気通路30におけるサージタンク33とスロットル弁36との間の部分と、排気通路40におけるタービン612よりも上流側の部分とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するためのEGR通路50を介して接続されている。このEGR通路50は、排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52が配設された主通路51と、EGRクーラ52をバイパスするためのEGRクーラバイパス通路53と、を含んで構成されている。主通路51には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するためのEGR弁511が配設され、EGRクーラバイパス通路53には、EGRクーラバイパス通路53を流通する排気ガスの流量を調整するためのEGRクーラバイパス弁531が配設されている。吸気通路30におけるコンプレッサ611よりも下流側と、排気通路40におけるタービン612よりも上流側とを連通させるEGR通路50を含むEGRシステムを、以下においては高圧EGRシステムと呼ぶ場合がある。
【0040】
このエンジン1はまた、高圧EGRシステムとは別に、低圧EGRシステムを備えている。低圧EGRシステムは、排気通路40におけるアンダーフットキャタリスト42よりも下流側部分と吸気通路30におけるターボ過給機61のコンプレッサ611よりも上流側部分とを互いに接続するL/P(Low Pressure)EGR通路54と、このL/P EGR通路54上に介設されて、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するためのL/P EGR弁541とを含んで構成されている。
【0041】
ターボ過給機61は、吸気通路30に配設されたコンプレッサ611と、排気通路40に配設されたタービン612とを有している。コンプレッサ611は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ34との間に配設されている。一方、タービン612は、排気通路40における排気マニホールドと直キャタリスト41との間に配設されている。タービン612が排気ガス流により回転し、このタービン612の回転により、タービン612と連結されたコンプレッサ611が作動する。
【0042】
排気通路40には、タービン612をバイパスする排気バイパス通路43が接続されている。排気バイパス通路43には、排気バイパス通路43へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ431が配設されている。
【0043】
このように構成されたエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。このPCM10が制御器を構成する。
【0044】
PCM10には、図1,2に示すように、各種のセンサSW1〜SW16の検出信号が入力される。この各種のセンサには、次のセンサが含まれる。すなわち、エアクリーナ31の下流側で、新気の流量を検出するエアフローセンサSW1及び新気の温度を検出する吸気温度センサSW2、インタークーラ34の下流側に配置されかつ、インタークーラ34を通過した後のガスの温度を検出する、第2吸気温度センサSW3、EGR通路50における吸気通路30との接続部近傍に配置されかつ、外部EGRガスの温度を検出するEGRガス温センサSW4、吸気ポート16に取り付けられかつ、気筒18内に流入する直前の吸気の温度を検出する吸気ポート温度センサSW5、シリンダヘッド12に取り付けられかつ、気筒18内の圧力を検出する筒内圧センサSW6、排気通路40におけるEGR通路50の接続部近傍に配置されかつ、それぞれ排気温度及び排気圧力を検出する排気温センサSW7及び排気圧センサSW8、直キャタリスト41の上流側に配置されかつ、排気中の酸素濃度を検出するリニアOセンサSW9、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42との間に配置されかつ、排気中の酸素濃度を検出するラムダOセンサSW10、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW11、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW12、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW13、吸気側及び排気側のカム角センサSW14,SW15、及び、高圧燃料供給システム62のコモンレール64に取り付けられかつ、直噴インジェクタ67に供給する燃料圧力を検出する燃圧センサSW16である。
【0045】
PCM10は、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じて直噴インジェクタ67、ポートインジェクタ68、点火プラグ25、吸気弁側のVVT72及びCVVL73、排気弁側のVVL71、高圧燃料供給システム62、並びに、各種の弁(スロットル弁36、EGR弁511、及びEGRクーラバイパス弁531、L/P EGR弁541、ウエストゲートバルブ431)のアクチュエータへ制御信号を出力する。こうしてPCM10は、エンジン1を運転する。
【0046】
図3は、エンジン1の運転領域の一例を示している。この運転領域は、エンジン暖機後の運転領域を示しており、このエンジン1は、RawNOxの生成抑制と、低燃費との両立を図るために、一部の運転領域である第1及び第2領域では、作動ガス燃料比G/Fが30以上に、又は、空気燃料比A/Fが30以上に設定されるリーンバーンエンジンである。一方、詳しくは後述するが、低速かつ高負荷の第3領域では、空気燃料比が理論空燃比に設定される。
【0047】
また、このエンジン1は、燃費の向上や排気エミッションの向上を目的として、エンジン1の暖機後は、一部の運転領域、具体的には第1及び第2領域において、点火プラグ25による点火を行わずに、圧縮自己着火によって燃焼を行う圧縮着火燃焼を行うように構成されている。しかしながら、圧縮着火燃焼は、例えばエンジン1の負荷が高いときには燃焼が急峻になりすぎてしまい、燃焼騒音等の問題を引き起こすことになる。そのため、このエンジン1では、エンジン負荷が相対的に高い第3領域では、点火プラグ25を利用した火花点火燃焼を行う。尚、以下においては、圧縮着火燃焼を行うモードを、CI(Compression Ignition)モードと呼び、火花点火燃焼を行うモードをSI(Spark Ignition)モードと呼ぶ場合がある。
【0048】
第1領域は、図3に示すように、エンジン負荷が相対的に低い領域であり、特に高速側(エンジン回転数が所定回転数N1よりも高い側、但し、回転数N1はエンジン1の回転数領域についての、おおよそ中間に相当する)では、低負荷から高負荷までの全ての負荷領域に相当する。尚、正確には、中速領域の全開負荷付近は、後述する第2領域となる。第1領域はCIモードに設定される。CIモードでは基本的に、例えば吸気行程乃至圧縮行程中の、比較的早いタイミングで、直噴インジェクタ67又はポートインジェクタ68が燃料を噴射することにより、比較的均質なリーン混合気を形成すると共に、その混合気を圧縮上死点付近において圧縮自己着火させる。
【0049】
CIモードである第1領域内の、相対的に負荷の低い領域では、気筒内温度を高めて圧縮着火燃焼を安定化させる観点から、内部EGR制御が併用される。つまり、VVL71の制御によって、排気弁22を吸気行程中に開弁する排気の二度開きを行い、そのことによって内部EGRガスを気筒18内に導入する。一方、第1領域内の、相対的に負荷の高い領域では、エンジン負荷の増大に伴い、気筒内温度が高まり、圧縮着火燃焼が急峻になることから、内部EGR制御を止めて、高圧EGRシステムや低圧EGRシステムにより、相対的に低温のEGRガスを気筒18内に導入する外部EGR制御に切り替える。尚、一部の領域、例えば中負荷の領域では、内部EGR制御と外部EGR制御とを併用してもよい。また、第1領域内において、エンジン負荷が高い上に、エンジン冷却水温度または外気温度が高く、気筒内温度が高くなり過ぎる環境下にあっては、前記外部EGR制御によっても急峻な圧縮着火燃焼が抑制し難い場合もあり、このようなエンジン運転状態のときは、火花点火燃焼による超リーン燃焼を実行するようにしても良い。
【0050】
そうして、第1領域では、ターボ過給機61による吸気の過給と共に、内部EGR制御及び/又は外部EGR制御の実行により、既燃ガスを気筒18内に導入することによって、G/Fが30以上の超リーンに設定する。超リーンな混合気は、RawNOxの生成を抑制する上で有効であると共に、燃費の向上にも有利になる。既燃ガスを気筒18内に導入することはまた、ポンピングロスの低減にも有利である。
【0051】
第2領域は、図3に示すように、おおよそ低速側(エンジン回転数がN1以下の側)において、第1領域よりも負荷の高い領域である。但し、第2領域の一部は、エンジン回転数がN1よりも高い側になる。この第2領域も、第1領域と同様に、CIモードに設定される。しかしながら、第2領域は、負荷が相対的に高いため燃料噴射量が増大する一方で、低速側であることから排気エネルギが低く、G/Fを30以上に設定するには、ターボ過給機61の過給能力が不足する。そこで、この第2領域では、第1領域で行っていた内部EGR制御及び外部EGR制御を共に、停止することによって、排気エネルギを高めるようにしている。
【0052】
図4は、エンジン回転数と、ターボ過給機61のコンプレッサ効率との関係の一例を示す図である。同図において実線は、外部EGR制御を停止してA/F=30としたときの過給限界を示し、破線は、外部EGR制御を実行してG/F=30としたときの過給限界を示している。この図によると、エンジン回転数が相対的に低回転のときには、外部EGR制御を停止しているときの方が、外部EGR制御を実行しているときよりもコンプレッサ効率が高まる。これは、外部EGR制御を停止することによって、排気側で抜き取られる既燃ガスが無くなる分、ターボ過給機61のタービン612に供給される排気エネルギが高まるためである。尚、エンジン回転数が相対的に高回転のときには、外部EGR制御を実行しているときの方が、外部EGR制御を停止しているときよりもコンプレッサ効率が高まる。
【0053】
従って、低速かつ中負荷に相当する第2領域では、内部EGR制御及び外部EGR制御を共に停止して、ターボ過給機61のコンプレッサ効率を高めることにより、所望のトルクを確保しつつ、A/F≧30を実現することが可能になる。その結果、この相対的に負荷の高い第2領域においても、RawNOxの生成が抑制されると共に、低燃費が実現する。
【0054】
第3領域は、図3に示すように、低速側において、第2領域よりも負荷の高い領域である。全開領域を含む第3領域では、所望のトルクを確保しつつ、G/F≧30及びA/F≧30にするだけのターボ過給機61の過給能力が得られない。そのため、第3領域では、空気燃料比を理論空燃比(λ=1)に設定する。
【0055】
また、エンジン負荷が相対的に高くかつ、空気燃料比も理論空燃比に設定される第3領域では、圧縮着火燃焼が急峻な燃焼になってしまう。そこで、この第3領域は、第1及び第2領域とは異なり、SIモードに設定される。SIモードでは基本的に、例えば吸気行程乃至圧縮行程中に、直噴インジェクタ67が気筒18内に燃料を噴射することにより、均質乃至成層化した混合気を形成すると共に、圧縮上死点付近において点火を実行することによってその混合気に着火する。
【0056】
第3領域ではさらに、ポンピングロスの低減や、過剰なエンジントルクの低減のために、高圧EGRシステム又は低圧EGRシステムによる既燃ガスの導入を行う。外部EGR制御の実行はまた、比較的ノッキングが発生しやすい低速かつ高負荷の第3領域において、ノッキングの回避にも有利になる。
【0057】
このように、このリーンバーンエンジン1では、エンジン回転数がN1以下の低速領域において、低負荷である第1領域では、ターボ過給機61による吸気の過給と共に、内部EGR制御及び/又は外部EGR制御の実行により、既燃ガスを気筒18内に導入することによって、G/Fを30以上に設定している。これに対し、第1領域よりも負荷が高い、中負荷に相当する第2領域では、内部EGR制御及び外部EGR制御を共に停止することによって、ターボ過給機61のコンプレッサ効率を高めて、所望のトルクを確保しつつも、A/Fを30以上に設定することを可能にしている。つまり、EGR制御を行う場合はターボ過給機61の過給限界は、第1領域と第2領域との境界になるものの、EGR制御を停止することによってターボ過給機61の過給限界を高負荷側に移動させ、そのことにより、第1領域だけでなく、第2領域もRawNOxの生成抑制及び低燃費に優れた超リーンの運転領域としている。
【0058】
そうして、第2領域よりも負荷の高い、高負荷に相当する第3領域(但し、全開負荷を含む)では、空気燃料比を理論空燃比に設定すると共に、外部EGR制御を行うことで、所望のトルクの確保とノッキング等の異常燃焼の回避とが可能になる。従って、第2領域と第3領域との境界は、ターボ過給機61による過給限界によって定まることになる。
【0059】
このように、低速かつ高負荷である第3領域においては、ターボ過給機61による過給限界から、空気燃料比を理論空燃比に設定しているが、ターボ過給機61に加えて補助過給機を備えるようにすれば、ターボ過給機61の過給限界に制限されることなく、第3領域においてもG/F≧30又はA/F≧30の超リーンな運転を実現することが可能である。
【0060】
例えば図5は、補助過給機の一例としての電動ブースト91を備えたエンジンシステムの構成を概略的に示している。尚、図1のエンジンシステムにおける構成要素と対応する構成要素については、同じ符号を付す。このエンジンシステムでは、吸気通路30における、ターボ過給機61のコンプレッサ611よりも上流側に電動ブースト91を配設している。電動ブースト91とコンプレッサ611との間には、電動ブースト91により圧縮されたガスを冷却する、第2のインタークーラ92が介設されている。
【0061】
電動ブースト91を備えることによって、ターボ過給機61の過給限界を超える負荷領域(第3領域)においても、電動ブースト91を駆動することによって吸気の過給を行うことが可能になり、所望のトルクを確保しつつ、G/F≧30又はA/F≧30を実現することが可能になる。尚、第3領域において電動ブースト91を駆動する場合、外部EGR制御の実行及び非実行は、適宜設定すればよい。
【0062】
ここで、図6は、エンジントルクと燃費率との関係を示している。同図において実線は、ターボ過給機61による過給を行ってA/F=30とした場合の、エンジントルクと燃費率との関係を示している。前述の通り、ターボ過給機61による過給でかつA/F=30とした場合、所定のトルクで過給限界となる。図6において、過給限界を示す縦の点線よりも左側は第2領域に対応し、右側は第3領域に対応する。これに対し、同図における一点鎖線は、空気燃料比を理論空燃比(λ=1)としかつ、外部EGR制御を行った場合のトルクと燃費率との関係である。従って、第2領域においては、ターボ過給機61による過給かつA/F=30とし、第3領域において空気燃料比を理論空燃比(λ=1)としかつ、外部EGR制御を行った場合は、図6における実線から一点鎖線へと移行し、第3領域においては、燃費が若干悪化することになる。
【0063】
これに対し、図6における破線は、実線で示すターボ過給機61の特性線が延長されるように、高負荷側において電動ブースト91を駆動することによりA/F=30を満足させたときのトルクと燃費率との関係を示している。つまり、第3領域において電動ブースト91を利用することは、燃費の向上に有利である。
【0064】
尚、ここでは補助過給機の一例として、電動ブースト91を備えるようにしたが、例えばターボ過給機61のシャフトに電動モータを取り付けた電動ターボ過給機を採用し、第3領域において、この電動モータを駆動するようにしてもよい。
【0065】
また、前記の構成では、第3領域をSIモードとしているが、第3領域をCIモードとしてもよい。また、第2及び第3領域をSIモードとしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン(エンジン本体)
10 PCM(制御器)
18 気筒
21 吸気弁
22 排気弁
50 EGR通路(EGR手段)
54 L/P EGR通路(EGR手段)
531 EGR弁(EGR手段)
541 L/P EGR弁(EGR手段)
61 ターボ過給機
611 タービン
612 コンプレッサ
71 VVL(EGR手段)
91 電動ブースト(補助過給機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
理論空燃比よりもリーンな混合気で運転される運転領域を有するように構成されたエンジン本体と、
前記エンジン本体の気筒内に導入するガスの過給を行うように構成されたターボ過給機と、
前記気筒内に既燃ガスを導入するように構成されたEGR手段と、
前記エンジンの運転を制御するように構成された制御器と、を備え、
前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、
エンジン負荷が低負荷である第1負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定し、
前記エンジン負荷が前記第1負荷領域よりも高い第2負荷領域にあるときには、前記EGR手段による既燃ガスの導入を停止すると共に、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、
前記エンジン負荷が前記第2負荷領域よりも高くかつ、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、空気燃料比を理論空燃比に設定すると共に、前記EGR手段による既燃ガスの導入を行う過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項2】
理論空燃比よりもリーンな混合気で運転される運転領域を有するように構成されたエンジン本体と、
それぞれ前記エンジン本体の気筒内に導入するガスの過給を行うように構成された、排気エネルギにより駆動されるターボ過給機と、前記ターボ過給機とは異なる駆動源を有する補助過給機と、
前記気筒内に既燃ガスを導入するように構成されたEGR手段と、
前記エンジンの運転を制御するように構成された制御器と、を備え、
前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後でかつ、その運転状態が低速領域にあるときにおいて、
エンジン負荷が低負荷である第1負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fを30以上に設定し、
前記エンジン負荷が前記第1負荷領域よりも高い第2負荷領域にあるときには、前記EGR手段による既燃ガスの導入を停止すると共に、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、
前記エンジン負荷が前記第2負荷領域よりも高くかつ、全開負荷を含む第3負荷領域にあるときには、前記補助過給機を駆動することによって、前記G/Fを30以上に、又は、前記A/Fを30以上に設定する過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過給機付リーンバーンエンジンにおいて、
前記第2負荷領域と第3負荷領域との境界は、前記ターボ過給機の過給限界によって定まる過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項4】
請求項2に記載の過給機付リーンバーンエンジンにおいて、
前記補助過給機は、電動ブースト、又は、電動ターボ過給機である過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の過給機付リーンバーンエンジンにおいて、
前記制御器は、少なくとも前記第1負荷領域及び第2負荷領域においては、圧縮着火燃焼を実行する過給機付リーンバーンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7352(P2013−7352A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141447(P2011−141447)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】