説明

金属配線形成方法、アクティブマトリクス基板の製造方法、デバイス及び電気光学装置並びに電子機器

【課題】膜パターンの密着力を高めることができる膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】基板P上に設けられたバンクBによって区画された配線形成領域34に液相
法により金属配線11、12が形成される。金属配線11、12は、配線形成領域の底部
、及び配線形成領域に臨むバンクBの側面に沿って成膜された第1膜F1と、第1膜F1
上に積層して成膜された第2膜F2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線形成方法、アクティブマトリクス基板の製造方法、デバイス及び電
気光学装置並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子装置の製造過程に用いられる塗布技術として、液体吐出方式の利用が拡大す
る傾向にある。液体吐出方式による塗布技術は、一般に、基板と液体吐出ヘッドとを相対
的に移動させながら、液体吐出ヘッドに設けられた複数のノズルから液状体を液滴として
吐出し、その液滴を基板上に繰り返し付着させて塗布膜を形成するものであり、液状体の
消費に無駄が少なく、任意のパターンをフォトリソグラフィーなどの手段を用いず直接塗
布することが出来るといった利点を有する。例えば、特許文献1などには、パターン形成
用材料を含んだ機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成
面に材料を配置(塗布)して半導体集積回路などの微細な配線パターンを形成する技術が
開示されている。
【0003】
また、基板上に配線パターン等の膜パターンを形成する際、基板と膜パターンとの密着
力を向上させるために、例えば下記特許文献2に開示されているような中間層を形成する
技術が提案されている。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2003−315813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
【0005】
予め金属配線に対応したバンクを形成し、バンクに囲まれた金属配線形成領域に機能液
を塗布して金属配線を形成する場合、バンク表面に塗布された液滴を配線形成領域に導く
ために、CFプラズマ処理等の撥液化処理を施してバンク表面に撥液性を付与する技術
が用いられる。このとき、配線形成領域に臨むバンク側面も、フッ素基が生じて撥液性を
有するため、特許文献2に記載された中間層を設けた場合でも金属配線の密着性が充分と
は言えなかった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、金属配線の密着力を高めること
ができる金属配線形成方法、アクティブマトリクス基板の製造方法、デバイス及び電気光
学装置並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
【0008】
本発明のデバイスは、基板上に設けられたバンクによって区画された配線形成領域に液
相法により金属配線が形成されたデバイスであって、前記金属配線は、前記配線形成領域
の底部、及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの側面に沿って成膜された第1膜と、該
第1膜上に積層して成膜された第2膜とを有することを特徴とするものである。
【0009】
この構成においては、前記第2膜は、配線本体であり、前記第1膜は、前記第2膜と前
記配線形成領域の底部、及び前記第2膜と前記バンクの前記側面との密着力を向上させる
中間層であることが好ましい。
【0010】
従って、本発明のデバイスでは、配線本体と配線形成領域の底部との密着力を向上させ
る中間層が配線形成領域に臨むバンクの側面にも成膜されているため、配線本体の配線形
成領域の底部への密着力が向上することに加えて、配線本体のバンクの側面への密着力も
向上させることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、前記第2膜を覆って保護する第3膜が前記第2膜上に積層して成膜
される構成も好適に採用できる。
【0012】
これにより、本発明では、第2膜(配線本体)の(エレクトロ)マイグレーション現象
、拡散、耐CVD性等を抑制することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、前記バンクの前記側面が、前記第1膜の形成材料を含む機能液に対
する親液性を有し、前記バンクの上面が前記機能液に対する撥液性を有する構成を好適に
採用できる。
【0014】
これにより、本発明では、第1膜形成材料を含む機能液を塗布した際に、機能液がバン
ク上面に乗った場合でも、機能液がはじかれて配線形成領域に導くことができる。また、
本発明では、バンクの側面が親液性を有しているため、機能液が側面に対しても良好に濡
れることになり、バンク側面に沿って第1膜を容易に成膜することが可能になる。
【0015】
そして、本発明の電気光学装置は、先に記載のデバイスを備えることを特徴とするもの
である。
【0016】
また、本発明の電子機器は、先に記載の電気光学装置を備えることを特徴とするもので
ある。
【0017】
従って、本発明では、上記のデバイスを備えていることから、金属配線の密着力が向上
した高品質の電気光学装置及び電子機器を得ることができる。
【0018】
一方、本発明の金属配線形成方法は、基板上に設けられたバンクによって区画された配
線形成領域に液相法により金属配線を形成する方法であって、前記配線形成領域の底部、
及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの側面に親液性を付与する工程と、前記配線形成
領域の底部、及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの側面に沿って第1膜を成膜する工
程と、前記第1膜上に積層して第2膜を成膜する工程とを有することを特徴とするもので
ある。
【0019】
この構成においては、前記第2膜は、配線本体であり、前記第1膜は、前記第2膜と前
記配線形成領域の底部、及び前記第2膜と前記バンクの前記側面との密着力を向上させる
中間層であることが好ましい。
【0020】
従って、本発明の金属配線形成方法では、第2膜である配線本体と配線形成領域の底部
との密着力を向上させる第1膜の中間層が配線形成領域に臨むバンクの側面にも成膜され
ているため、配線本体の配線形成領域の底部への密着力が向上することに加えて、配線本
体のバンクの側面への密着力も向上させることが可能になる。
【0021】
また、本発明では、前記第2膜を覆って保護する第3膜を前記第2膜上に積層して成膜
する工程を有する手順も好適に採用できる。
【0022】
これにより、本発明では、第2膜(配線本体)の(エレクトロ)マイグレーション現象
、拡散、耐CVD性等を抑制することが可能になる。
【0023】
そして、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、基板上にゲート配線を形成
する第1の工程と、前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、前記ゲー
ト絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、前記ゲート絶縁膜の上にソース電極
及びドレイン電極を形成する第4の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶
縁材料を配置する第5の工程と、前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の
工程と、を有し、前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一
つの工程において、先に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、基板上にソース電極及びドレ
イン電極を形成する第1の工程と、前記ソース電極及びドレイン電極の上に半導体層を形
成する第2の工程と、前記半導体層の上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第
3の工程と、前記ドレイン電極と接続する画素電極を形成する第4の工程と、を有し、前
記第1の工程及び前記第3の工程及び前記第4の工程の少なくとも一つの工程において、
先に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とするものである。
【0025】
さらに、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、基板上に半導体層を形成す
る第1の工程と、前記半導体層上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第2の工
程と、前記ゲート絶縁膜に形成したコンタクトホールを介して、前記半導体層のソース領
域に接続するソース電極と、前記半導体層のドレイン領域に接続するドレイン電極とを形
成する第3の工程と、前記ドレイン電極と接続する画素電極を形成する第4の工程と、を
有し、前記第2の工程及び前記第3の工程及び前記第4の工程の少なくとも一つの工程に
おいて、先に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とするものである。
【0026】
従って、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法では、上述の金属配線形成方法
を採用して電極を形成するものとしているため、金属配線の密着力が高い高品質のアクテ
ィブマトリクス基板を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の金属配線形成方法、アクティブマトリクス基板の製造方法、デバイス及
び電気光学装置並びに電子機器の実施の形態を、図1ないし図19を参照して説明する。
【0028】
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材
の縮尺を適宜変更している。
【0029】
まず、本発明の金属配線形成方法を、液滴吐出法によって液滴吐出ヘッドの吐出ノズル
から導電性微粒子を含有する配線パターン(金属配線)用インク(機能液)を液滴状に吐
出し、配線パターンに対応して基板上に形成されたバンクの凹部内、すなわちバンクに区
画された領域に、配線パターン(膜パターン)を形成するようにした場合の実施形態につ
いて説明する。
【0030】
ここで、前記の配線パターン用インク(機能液)は、導電性微粒子を分散媒に分散した
分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅
、アルミニウム、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、パラジウム、タングステン及
びニッケルのうちの少なくとも一種を含有する金属微粒子の他、これらの金属化合物、酸
化物、有機金属化合物、金属塩、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いら
れる。これら導電性微粒子については、分散性を向上するため、表面に有機物などをコー
ティングして用いることもできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であ
ることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰
まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティン
グ剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0031】
分散媒としては、前記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれ
ば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデ
カン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナ
フタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、ま
たエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレ
ングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレ
ングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−
ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテ
ル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピ
ロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性
化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法
への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好
ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0032】
前記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲
内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N
/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやす
くなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐
出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、前記分散液には、
基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系など
の表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板へ
の濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役
立つものである。前記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステ
ル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0033】
前記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴
吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には
ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大き
い場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0034】
配線パターンを形成するための基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラ
スチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素
材基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたも
のを用いることもできる。
【0035】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換
式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極
で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるもので
ある。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズ
ル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐
出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散
して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)
がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形するこ
とによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し
出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0036】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に
気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるも
のである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料
のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。ま
た、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式など
の技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置
に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出
される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0037】
本実施形態では、このような液滴吐出をなす装置として、ピエゾ素子(圧電素子)を用
いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0038】
図1は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0039】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5
と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15
とを備えている。
【0040】
ステージ7は、この液滴吐出装置IJにより液体材料(配線パターン用インク)を配置
される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を
備えている。
【0041】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッド
であり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド
1の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ
7に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが
吐出されるようになっている。
【0042】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。このX軸方向駆動モ
ータ2は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動
信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、
液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
【0043】
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は
、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等で
あり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向
に移動する。
【0044】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、
X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を
、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給
する。
【0045】
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニン
グ機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動
モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリ
ーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0046】
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P
上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の
投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0047】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走
査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に配列された複数の吐出
ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0048】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
【0049】
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣
接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タン
クを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路
24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエ
ゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料
が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み
量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪
み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成
に影響を与えにくいという利点を有する。
【0050】
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて製造される半導体装置の一例であ
る、薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))について説明する。図3は、
TFTアレイ基板のTFT1個を含む一部分の概略構成を示した平面図であり、図4は、
バンク構造体の概略構成を示す平面図であり、図5(a)はTFTの断面図、図5(b)
は、ゲート配線とソース配線とが平面的に交差する部分の断面図である。
【0051】
図3に示すように、TFT30を有するTFTアレイ基板10上には、ゲート配線(金
属配線)12と、ソース配線16と、ドレイン電極14と、ドレイン電極14に電気的に
接続する画素電極19とを備えている。ゲート配線12はX軸方向に延びるように形成さ
れ、その一部がY軸方向に延びるように形成されている。そして、Y軸方向に伸びるゲー
ト配線12の一部がゲート電極(金属配線)11として用いられている。なお、ゲート電
極11の幅はゲート配線12の幅よりも狭くなっている(後述)。そして、このゲート電
極11及びゲート配線12が、本実施形態の金属配線形成方法で形成されている。また、
Y軸方向に伸びるように形成されたソース配線16の一部は幅広に形成されており、この
ソース配線16の一部がソース電極17として用いられている。
【0052】
本実施形態のバンク構造体は、図4に示すように、基板P上にバンクBが形成された構
成を備えている。このバンクBにより区画された領域が、機能液を配置してゲート配線1
2及びゲート電極11を形成するための領域となる配線形成領域13である。配線形成領
域13は、ゲート配線12に対応する溝状の配線形成領域55と、この配線形成領域55
に接続し、ゲート電極11に対応する配線形成領域56とから構成されている。ここで、
対応するとは、前記配線形成領域55、又は前記配線形成領域56内に配置された機能液
を硬化処理等を施すことで、それぞれがゲート配線、又はゲート電極となることを意味し
ている。
【0053】
具体的には、図4に示すように、配線形成領域55は、図3中Y軸方向に延在して形成
されている。そして、配線形成領域56は、配線形成領域55に対して略垂直方向(図3
中、X軸方向)に形成され、かつ前記配線形成領域55に連続(接続)して設けられてい
る。また、前記配線形成領域55の幅は、前記配線形成領域56の幅よりも広く形成され
ている。本実施形態では、配線形成領域55の幅は、前記液滴吐出装置IJから吐出され
る機能液の飛翔径と略等しいか、あるいは、僅かに大きくなるように形成されている。こ
のようなバンク構造を採用することにより、前記配線形成領域55に吐出した機能液を毛
細管現象を利用して、微細なパターンである配線形成領域56に機能液を流入させること
ができるようになっている。
【0054】
なお、各配線形成領域55,56における幅とは、各配線形成領域55、56が延在す
る方向(X,Y)に対して直交する方向の各配線形成領域55、56の端部間の長さを表
している。図4に示すように、前記配線形成領域55の幅は長さH1、前記配線形成領域
56の幅は、長さH1よりも小さい長さH2である。
【0055】
図5(a)、(b)に示すように、ゲート配線12及びゲート電極11並びにバンクB
は、絶縁膜28に覆われており、絶縁膜28の上に、半導体層である活性層63と、ソー
ス配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14と、バンクB1とが形成されている
。活性層63は、概ねゲート電極11に対向する位置に設けられており、活性層63のゲ
ート電極11に対向する部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、接合層6
4a及び64bが積層されており、ソース電極17は接合層64aを介して、ドレイン電
極14は接合層64bを介して、活性層63と接合されている。ソース電極17及び接合
層64aと、ドレイン電極14及び接合層64bとは、活性層63上に設けられたバンク
67によって、互いに絶縁されている。ゲート配線12は、絶縁膜28によって、ソース
配線16と絶縁されており、ゲート電極11は、絶縁膜28によって、ソース電極17及
びドレイン電極14と絶縁されている。ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン
電極14とは、絶縁膜29で覆われている。絶縁膜29のドレイン電極14を覆う部分に
は、コンタクトホールが形成されており、コンタクトホールを介してドレイン電極14と
接続する画素電極14が、絶縁膜29の上面に形成されている。
【0056】
また、図5(a)、(b)に示すように、本実施形態では、ゲート配線12、ゲート電
極11、ソース配線16、ソース電極17及びドレイン電極14は、三層構造で配線パタ
ーンを形成する。
【0057】
具体的には、本実施形態では、ゲート配線12、ゲート電極11、ソース配線16、ソ
ース電極17及びドレイン電極14は下層から、下地層としてのマンガン層(第1膜)F
1、配線本体としての銀層(第2膜)F2、保護層としてのニッケル層(第3膜)F3の
三層で構成される。
【0058】
マンガン層F1は、下地層(中間層)として銀層F2の基板Pに対する密着性向上に作
用するものであって、配線形成領域55、56の底部、及び配線形成領域55、56に臨
むバンクBの側面に沿って略コ字状に成膜されている。銀層F2は、導電層としてマンガ
ン層F1上に積層して成膜されている。ニッケル層F3は、銀や銅等からなる導電性膜の
(エレクトロ)マイグレーション現象等を抑制するための薄膜として作用するものであり
、銀層F2を覆って成膜されている。
【0059】
下地層F1を形成する材料としては、マンガンの他にTi、Cu、Ni、In、Crの
酸化物を用いることができる。
【0060】
また、保護層F3を形成する材料としては、ニッケルの他に、Ti,TiN、W,Mn
等から選ばれる1種又は2種以上の金属材料を用いることができる。
【0061】
続いて、本実施形態の金属配線形成方法を用いて、TFT30のゲート配線12(ゲー
ト電極11)の配線パターンを形成する過程について図6乃至図9を参照して説明する。
【0062】
本実施形態では、前述したように、配線パターンに対応するバンクをガラス基板上に形
成するが、これに先立ち、基板に対して親液化処理を施す。この親液化処理は、後述する
インク(機能液)の吐出による配置において、吐出されたインクに対する基板Pの濡れ性
を良好にしておくためのもので、例えば図6(a)に示すように、基板Pの表面にTiO
等の親液性(親水性)の高い膜32を形成する。または、HMDS(ヘキサメチルジシ
ラザン)を蒸気状にして基板Pの被処理面に付着させ(HMDS処理)、親液性の高い膜
32を形成するようにしてもよい。また、基板Pの表面を粗面化することにより、この基
板Pの表面を親液化してもよい。
(バンク形成工程)
このようにして親液化処理を行ったら、この基板P上にバンクを形成する。
【0063】
バンクは、仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はリソグラフィ法や印刷
法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、まず
、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の
方法で、図6(b)に示すように、基板P上に所望のバンク高さに合わせて親液性のバン
クの形成材料となるレジスト液、例えばポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサン
のいずれかと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかと、を含有し、ポジ型レジスト
として機能する感光性の材料を塗布し、バンク膜31を形成する。本実施形態では、感光
性の材料としてポリシラザン液を用いる。また、バンク形成材料の親液性の程度としては
、機能液の接触角が20°以下であることが好ましい。
【0064】
ここで、バンクの形成材料となるポリシラザン液(レジスト液)としては、ポリシラザ
ンを主成分とするもので、特にポリシラザンと光酸発生剤とを含む感光性ポリシラザン液
が好適に用いられ、本実施形態ではこの感光性ポリシラザン液を用いるものとする。この
感光性ポリシラザン液は、ポジ型レジストとして機能するようになるもので、露光処理と
現像処理とによって直接パターニングすることができるものである。なお、このような感
光性ポリシラザンとしては、例えば特開2002−72504号公報に記載された感光性
ポリシラザンを例示することができる。また、この感光性ポリシラザン中に含有される光
酸発生剤についても、特開2002−72504号公報に記載されたものが用いられる。
なお、感光性ポリシラザン液等の感光性の材料については、光酸発生剤に代えて、光塩基
発生剤を含有したものであってもよい。
【0065】
このようなポリシラザンは、例えばポリシラザンが以下の化学式(1)に示すポリメチ
ルシラザンである場合、後述するように加湿処理を行うことで化学式(2)または化学式
(3)に示すように一部加水分解し、さらに400℃未満の加熱処理を行うことにより、
化学式(4)〜化学式(6)に示すように縮合してポリメチルシロキサン[−(SiCH
1.5)n−]となる。なお、化学式(2)〜化学式(6)においては、反応機構を
説明するため、化学式を簡略化して化合物中の基本構成単位(繰り返し単位)のみを示し
ている。
このようにして形成されるポリメチルシロキサンは、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖に
メチル基を有したものとなる。したがって、その主成分となる骨格が無機質であることに
より、熱処理に対し高い耐性を有するものとなることから、バンク材料として好適なもの
となる。
・化学式(1);−(SiCH(NH)1.5)n−
・化学式(2);SiCH(NH)1.5+H
→SiCH(NH)(OH)+0.5NH
・化学式(3);SiCH(NH)1.5+2H
→SiCH(NH)0.5(OH)+NH
・化学式(4);SiCH(NH)(OH)+SiCH(NH)(OH)+H
→2SiCH1.5+2NH
・化学式(5);SiCH(NH)(OH)+SiCH(NH)0.5(OH)
→2SiCH1.5+1.5NH
・化学式(6);SiCH(NH)0.5(OH)+SiCH(NH)0.5(O
H)
→2SiCH1.5+NH+H
続いて、得られたバンク膜31を、例えばホットプレート上にて110℃で3分程度プ
レベークする。
【0066】
次いで、バンク膜31に対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液
化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を撥液化処理ガスとするプラズ
マ処理法(CFプラズマ処理法)が好適に採用される。CFプラズマ処理の条件とし
ては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素ガス流量が50〜100
mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec
、基体温度が70〜90℃とされる。なお、撥液化処理ガスとしては、テトラフルオロメ
タンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SFやSFCFなどのガ
スを用いることもできる。
【0067】
図7はCFプラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図で
ある。図7に示すプラズマ処理装置は、交流電源41に接続された電極42と、接地電極
である試料テーブル40とを備えて構成されたものである。試料テーブル40は、試料で
ある基板Pを支持しつつ、Y軸方向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動
方向と直交するX軸方向に延在する2本の平行な放電発生部44,44が突設されている
とともに、放電発生部44を囲むようにして誘電体部材45が設けられている。誘電体部
材45は、放電発生部44の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材45を
含む電極42の下面は略平面状となっており、放電発生部44及び誘電体部材45と基板
Pとの間には僅かな空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極4
2の中央には、X軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口
46が設けられている。ガス噴出口46は、電極内部のガス通路47及び中間チャンバ4
8を介してガス導入口49に接続している。
【0068】
ガス通路47を通ってガス噴出口46から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、前記
空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材45の前端
及び後端から外部に排気される。これと同時に、交流電源41から電極42に所定の電圧
が印加され、放電発生部44,44と試料テーブル40との間で気体放電が発生する。そ
して、この気体放電により生成されるプラズマで前記所定ガスの励起活性種が生成され、
放電領域を通過する基板Pの上に形成されたバンク膜31の表面全体が連続的に処理され
る。
【0069】
前記所定ガスは、処理ガスである四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)と、大気圧近
傍の圧力下で放電を容易に開始させかつ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴ
ン(Ar)等の希ガスや窒素(N)等の不活性ガスとを混合したものである。
【0070】
このような撥液化処理を行うと、バンク膜31を構成するポリメチルシラザンのメチル
基中にフッ素基が導入される。これにより、機能液に対する高い撥液性がバンク膜31の
表面に付与され、図6(b)に示したようにバンク膜31の表面に撥液処理層37が形成
される。撥液処理層37の撥液性の程度は、機能液の接触角が50°以上であることが好
ましい。接触角が50°未満の場合、得られるバンクBの上面に機能液が残存し易くなっ
てしまうからである。
【0071】
次いで、図6(c)に示すようにマスクMを用いてバンク膜31に対し選択的に紫外線
を照射し、照射箇所での撥液処理層37の撥液性を低下させる。ここで、マスクMにより
選択的に紫外線を照射する箇所については、配線パターン(金属配線)の配線形成領域と
なる部分と対応する部分であり、後述する現像処理によって除去する箇所である。照射す
る紫外線としては、波長が172nm、185nm、254nmといった短波長域のもの
が好適に用いられる。本実施形態では、マスクMを用いてエキシマUVを選択的に照射す
る。すると、先の撥液化処理によって導入されたフッ素基が、UV照射によって脱離する
ことなどにより、その撥液性が失われ、あるいは著しく低下する。したがって、このUV
照射箇所では、撥液処理層37による撥液性がほとんど機能しないようになる。
【0072】
続いて、図6(d)に示すように前記のマスクMをそのまま用いてバンク膜31を露光
する。なお、バンク膜31は前述したようにポジ型レジストとして機能するので、マスク
Mにより選択的に露光した箇所が、後の現像処理によって除去されるようになる。露光光
源としては、前記感光性ポリシラザン液の組成や感光特性に応じ、従来のフォトレジスト
の露光で用いられている高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンラン
プ、エキシマレーザー、X線、電子線等から適宜選択され用いられる。照射光のエネルギ
ー量については、光源や膜厚にもよるものの、通常は0.05mJ/cm以上、望まし
くは0.1mJ/cm以上とされる。上限は特にないものの、あまりに照射量を多く設
定すると処理時間の関係から実用的でなく、通常は10000mJ/cm以下とされる
。本実施形態では、エネルギー量を40mJ/cmとしている。露光は、一般に周囲雰
囲気(大気中)あるいは窒素雰囲気とすればよいが、ポリシラザンの分解を促進するため
、酸素含有量を富化した雰囲気を採用してもよい。
【0073】
このような露光処理により、光酸発生剤を含有する感光性ポリシラザンからなるバンク
膜31は、特に露光部分において膜内で選択的に酸が発生し、これによりポリシラザンの
Si−N結合が解裂する。そして、雰囲気中の水分と反応し、前記の化学式(2)または
化学式(3)に示したようにバンク膜31は一部加水分解し、最終的にシラノール(Si
−OH)結合が生成し、ポリシラザンが分解する。
【0074】
次いで、このようなシラノール(Si−OH)結合の生成、ポリシラザンの分解をより
進めるため、図8(a)に示すように露光後のバンク膜31を、例えば25℃、相対湿度
85%の環境下にて5分程度加湿処理する。このようにしてバンク膜31内に水分を継続
的に供給すると、一旦ポリシラザンのSi−N結合の解裂に寄与した酸が繰り返し解裂触
媒として働く。このSi−OH結合は露光中においても起こるが、露光後、露光された膜
を加湿処理することにより、ポリシラザンのSi−OH化がより一層促進される。
【0075】
なお、このような加湿処理における処理雰囲気の湿度については、高ければ高いほどS
iOH化速度を速くすることができる。ただし、あまり高くなると膜表面に結露してしま
うおそれがあり、したがってこの観点から相対湿度90%以下とするのが実用的である。
また、このような加湿処理については、水分を含有した気体を、バンク膜31に接触させ
るようにしてやればよく、したがって、加湿処理装置内に露光された基板Pを置き、水分
含有気体をこの加湿処理装置に連続的に導入するようにすればよい。または、予め水分含
有気体が導入されて調湿された状態の加湿処理装置内に、露光された基板Pを入れ、所望
時間放置するようにしてもよい。
【0076】
次いで、例えば濃度2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)
液によって加湿処理後のバンク膜31を28℃で1分程度現像処理し、被露光部を選択的
に除去する。このとき、被現像箇所、すなわち被露光箇所を、予め紫外線照射処理してそ
の部分における撥液性を低下させているので、この現像により、除去する箇所の面に現像
液が容易に濡れてここに浸透するようになる。したがって、除去する箇所が現像によって
確実に除去され、図8(b)に示すようにバンク膜31を所望のバンク形状にすることが
できる。これにより、目的とする配線パターン(膜パターン)の形成領域を区画するバン
クB、Bを形成するとともに、この配線パターンに対応する溝状の凹部34(配線形成領
域13)を形成する。この凹部34は、図4に示した配線形成領域13(配線形成領域5
5、56)に相当するものである。
【0077】
なお、現像液としては、TMAH以外の他のアルカリ現像液、例えばコリン、珪酸ナト
リウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることもできる。
【0078】
また、上記のように感光性の材料を用いてバンク膜31をパターニングする以外にも、
バンク膜31上にレジスト層を形成し、このレジスト層をフォトリソにより現像、エッチ
ングしてバンク膜31をパターニングする手順としてもよい。
【0079】
次いで、必要に応じて純水でリンスした後、得られたバンクB、B間の残渣処理を行う
。残渣処理としては、フッ酸溶液で残渣部をエッチングするフッ酸処理や、紫外線を照射
することによる紫外線(UV)照射処理、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラ
ズマ処理などが用いられる。本実施形態では、例えば濃度0.2%のフッ酸水溶液によっ
て20秒程度接触処理を行う、フッ酸処理を採用する。このような残渣処理を行うと、バ
ンクB、Bがマスクとして機能することにより、バンクB、B間の凹部34の底部35が
選択的にエッチングされ、ここに残ったバンク材料等が除去される。
【0080】
基板Pとして用いられるガラスや石英ガラスは、機能液に対して親液性を有しており、
基板Pが露出した底部35は機能液に対して親液性となる。
【0081】
また、バンクB、Bの上面には撥液処理層37が形成されており、バンクB、Bの上面
は機能液に対して撥液性となっている。対照的に、凹部34に臨むバンクBの側面36は
、機能液に対して親液性を有するバンクBの形成材料が直接露出しているため、機能液に
対して親液性となっている。従って、凹部34は、機能液に対して親液性の底部35及び
側面36で構成されることになる。
【0082】
次に、前記の液滴吐出装置IJを用い、図8(c)に示すように配線パターン用インク
(機能液)の液滴を、バンクB、B間の凹部34内に露出した基板P上に吐出し配置する
。ここで、図4に示した微細配線パターンである配線形成領域56には、機能液を直接配
置することが難しい。よって、配線形成領域56への機能液の配置を、配線形成領域55
に配置した機能液を、毛細管現象により配線形成領域56に流入させる方法により行う。
【0083】
まず、液滴吐出装置IJにより、配線形成領域55にマンガン層F1を構成する有機系
の分散媒に導電性微粒子としてマンガン(Mn)を分散させた機能液L1を吐出する。液
滴吐出装置IJによって配線形成領域55に配置された機能液L1は、配線形成領域55
内を濡れ広がる。なお、バンクBの上面に機能液L1が乗っても、当該上面は撥液性を有
するため、弾かれて配線形成領域55に流入することとなる。
【0084】
また、バンクBの側面36は、親液性を示すため、吐出配置された機能液L1が配線形
成領域13の全域において好適に流動することとなり、図8(d)に示すように、機能液
L1は配線形成領域55に充填されるとともに、毛細管現象により配線形成領域56に円
滑に流入する。
【0085】
凹部34(配線形成領域55、56)に機能液L1を塗布した後には、分散媒(有機分
)の除去のため、これら機能液L1(マンガン層F1)の乾燥処理、焼成処理を行う。こ
のような乾燥・焼成処理により、導電性微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変
換される。
【0086】
乾燥処理としては、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる
加熱処理によって行うことができる。この乾燥処理は、主に膜厚のムラを低減させるため
に行うものであり、ここでは120℃で2分間加熱する。焼成処理の処理温度としては、
分散媒の沸点(蒸気圧)、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無
や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。例えば、有機物からなるコーティ
ング剤を除去するために、ここでは220℃で30分間加熱する。
【0087】
これにより、図8(e)に示すように、凹部34(配線形成領域55、56)にはマン
ガン層F1が成膜される。このとき、凹部34の底部35及びバンクBの側面36は親液
性を有しており、液滴L1が良好に濡れるため、焼成後のマンガン層F1は、図のように
、凹部34の底部35及びバンクBの側面36を覆うように、断面視略コ字状に成膜され
る。
【0088】
次に、銀層F2を形成するために、図9(a)に示すように、有機系の分散媒に導電性
微粒子として銀(Ag)のナノ粒子を分散させた機能液L2の液滴を、マンガン層F1が
形成された凹部34(配線形成領域55、56)内に塗布する。そして、配置された機能
液に対しては、分散媒の除去のため、乾燥処理、焼成処理を行う。
【0089】
この焼成処理としては、まず大気雰囲気下で予備焼成して分散媒(有機分)を除去(酸
化)した後に、窒素ガス雰囲気下で本焼成を行う。有機分を酸化させる予備焼成としては
、130℃以上の温度で行うことが好ましく、また、銀は酸素のある環境で加熱すると粒
子が成長する性質を有するため、この粒成長を抑えるためには230℃以下の温度で行う
ことが好ましい。本実施形態では、大気雰囲気下で約220℃、30分で予備焼成を行っ
ている。また、本焼成としては、例えば230〜350℃の温度で行うことが好ましく、
本実施形態では、窒素雰囲気下で約300℃、30分で本焼成を行う。本実施形態では窒
素ガス雰囲気下で本焼成を行うため粒成長が抑制される。
【0090】
この焼成処理より、図9(b)に示すように、マンガン層F1上に沿って積層状態で配
置される配線本体の銀層F2が成膜される。
【0091】
続いて、ニッケル層F3を形成するために、図9(c)に示すように、有機系の分散媒
に導電性微粒子としてニッケルを分散させた機能液L3の液滴を凹部34(配線形成領域
55、56)内の銀層F2上に塗布・配置する。そして、配置された機能液に対しては、
分散媒の除去のため、乾燥処理、焼成処理を行う。
【0092】
この処理としては、まず乾燥むらを防止するために大気雰囲気下で約70℃、10分で
乾燥処理した後に、銀層F2を形成する場合と同様に、分散媒(有機分)を除去(酸化)
するために大気雰囲気下で約220℃、30分で予備焼成した後に、銀の粒成長を抑制す
るために窒素ガス雰囲気下で約300℃、30分で本焼成を行う。
【0093】
この乾燥・焼成処理より、図9(d)に示すように、銀層F2上に積層状態で配置され
るニッケル層F3が保護層として成膜され、凹部34(配線形成領域55、56)内にゲ
ート電極11及びゲート配線12が形成される。
【0094】
なお、上記の焼成処理を施すことにより、先に加湿処理され、さらに露光処理されてS
iOH化されたポリシラザンからなるバンクBは、焼成により前記の化学式(4)〜化学
式(6)に示したように容易に(SiOSi)化し、SiNH結合がほとんど(又は全く
)存在しないシリカ系セラミックス膜、例えばポリメチルシロキサンに転化される。する
と、このポリメチルシロキサン(シリカ系セラミックス膜)からなるバンクBは、前述し
たようにポリシロキサンを骨格としたものとなることから、熱処理に対し高い耐性を有し
たものとなり、この配線パターンの焼成処理に十分耐え得るようになる。
【0095】
この後、基板PのバンクBを形成した側の面に対し、全面露光を行う。露光条件につい
ては、図6(d)に示した工程での露光処理条件と同様とする。このようにして全面露光
を行うことにより、先の露光処理では露光されなかったバンクBが露光される。これによ
り、バンクBを形成するポリシラザンは一部加水分解し、最終的にシラノール(Si−O
H)結合が生成してポリシラザンが分解する。
【0096】
以上の工程により、吐出工程後の機能液からなる乾燥膜(配線パターン)は、微粒子間
の電気的接触が確保され、導電性膜、すなわち図3及び図5に示したゲート配線12及び
ゲート電極11となる。
【0097】
このように、本実施形態では、配線本体の銀層F2の密着力を高めるマンガン層F1を
、凹部34の底部35に加えてバンクBの側面36に沿って成膜しているので、基板Pに
対するゲート電極11及びゲート配線12の密着力を大幅に高めることが可能になり、結
果として、金属配線の離脱等が生じづらい高品質のTFTアレイ基板10を得ることが可
能になる。
【0098】
また、本実施形態では、側面36を親液性にしているため、容易に側面36に沿ってマ
ンガン層F1を成膜することができるとともに、配線形成領域55から配線形成領域56
に円滑に機能液を導入することができ、微細幅の金属配線を容易に形成することが可能に
なる。
【0099】
さらに、本実施形態では、銀層F2をニッケル層F3により覆っているため、銀層F2
のマイグレーション現象等を抑制でき、より高品質の金蔵配線を形成することが可能であ
る。
【0100】
なお、前記実施形態では、バンクの形成材料としてのレジスト液として、光酸発生剤を
含む感光性ポリシラザン液を用いたが、本発明はこれに限定されることなく、例えばこれ
以外のポリシラザン液や、ポリシラン液、ポリシロキサン液、さらには有機材料からなる
一般的なレジスト材料(レジスト液)を用いることもできる。
【0101】
また、前記実施形態では、特に加湿処理を行うことでシラノール(Si−OH)結合の
生成、およびポリシラザンの分解を促進するようにしたが、本発明はこれに限定されるこ
となく、例えば使用したポリシラザン液の種類によってはこの加湿処理工程を省略するこ
ともできる。さらに、前記実施形態では、図6(c)に示した紫外線照射処理(紫外線照
射工程)と、図6(d)に示した露光処理(露光工程)とをこの順に連続して行ったが、
逆に、露光処理(露光工程)、紫外線照射処理(紫外線照射工程)の順で、これらの処理
を連続して行ってもよい。その場合にも、同じマスクを用いて連続して処理を行うことが
できるので、生産性の向上を図ることができる。
【0102】
続いて、上記ゲート配線12及びゲート電極11が成膜された基板P上にTFT30を
形成する手順について説明する。
【0103】
なお、本実施形態で使用する液滴吐出法や液滴吐出装置、さらには製造する半導体装置
等は、上記実施形態における液滴吐出法や液滴吐出装置、半導体装置と基本的に同一であ
る。
【0104】
本実施形態では、まず、図10(a)に示すように上記実施形態で形成した配線パター
ン(金属配線)としてのゲート配線12(ゲート電極11)の上に、プラズマCVD法に
よりゲート絶縁膜(絶縁膜28)、半導体層である活性層63、接合層64の連続成膜を
行う。絶縁膜28としては窒化シリコン膜を、活性層63としてはアモルファスシリコン
膜を、接合層64としてはn+型シリコン膜を、それぞれ原料ガスやプラズマ条件を変化
させることで形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要に
なるものの、前記のバンクBが、ポリシロキサンを骨格とする無機質のものからなってお
り、高い耐熱性を有しているので、耐熱性に関する問題を回避することができる。
【0105】
次に、前記絶縁膜28、及び活性層63、接合層64を覆ってバンクの形成材料を配し
、図10(b)に示すようにバンク膜71を形成する。このバンク膜71については、特
に限定されないものの、本実施形態では前記の感光性ポリシラザン液を用いるものとする

【0106】
続いて、得られたバンク膜71を、例えばホットプレート上にて110℃で3分程度プ
レベークした後、上記実施形態と同様にしてバンク膜71に対し撥液化処理を行い、バン
ク膜71の表面に撥液処理層77を形成する。
【0107】
次いで、バンク膜71をパターニングするべく、上記実施形態と同様にして、図6(c
)に示した紫外線照射処理(紫外線照射工程)と図6(d)に示した露光処理(露光工程
)とを連続して行う。この場合にも、同一のマスクを用いて所望箇所に対し選択的に処理
を行うのはもちろんである。
【0108】
次いで、必要に応じて加湿処理を行った後、現像処理を行うことにより、図10(c)
に示すようにバンク膜71を所望のバンク形状のバンクB1及びバンクB2とし、さらに
バンクB1及びバンクB2に囲まれた溝状の凹部74を形成する。ここで、凹部74は、
その底部に絶縁膜28を露出させ、さらに活性層63と接合層64の一部とを露出させる
ものとなる。このとき、被現像箇所、すなわち被露光箇所を、予め紫外線照射処理してそ
の部分における撥液性を低下させているので、前記実施形態と同様に、この現像処理によ
って除去する箇所の面に現像液が容易に濡れ、ここに浸透するようになる。したがって、
除去する箇所が現像によって確実に除去され、図10(c)に示したように所望のバンク
形状のバンクB1及びバンクB2を形成することができる。
【0109】
次いで、必要に応じて純水でリンスした後、得られたバンクB1、バンクB2間の残渣
処理を行う。残渣処理としては、フッ酸溶液で残渣部をエッチングするフッ酸処理や、紫
外線を照射することによる紫外線(UV)照射処理、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとす
るO2プラズマ処理などが用いられる。
【0110】
次いで、上記実施形態における図8(c)〜図8(d)に示した工程と同様にして、図
11(a)に示すようにバンクB1、バンクB2間に配線パターン形成用インク81の液
滴を吐出し配置する。この配線パターン形成用インクとしては、例えばゲート配線12及
びゲート電極11の形成に用いたものと同様のものが用いられる。
【0111】
次いで、上記実施形態で示した全面露光処理および焼成処理を行い、バンクB1、バン
クB2を、前述したようにポリシロキサンを骨格とする。また、これと同時に、図11(
b)に示すように配線パターンを形成する配線膜である回路配線膜73を形成する。本実
施形態において、回路配線膜73によって形成される配線パターンは、図3及び図5に示
したソース配線16、ソース電極17及びドレイン電極14である。
【0112】
次いで、バンクB2を取り除き、さらに、接合層64をエッチングして、図11(c)
に示すようにソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に接合する接
合層64bと、に分離する。バンクB2が取り除かれた部分と、接合層64がエッチング
されて取り除かれた部分とに、ソース電極17と、ドレイン電極14とを絶縁するバンク
67を形成する。また、ソース電極17及びドレイン電極14を配置した溝部74を埋め
るように絶縁膜29を配置する。以上の工程により、バンクB1とバンク67と絶縁膜2
9からなる平坦な上面が形成される。なお、バンク67と絶縁膜29とを同じ材料で形成
し、凹部74を埋めるように絶縁膜29を配置することにより、ソース電極17と、ドレ
イン電極14との絶縁を行ってもよい。また、バンク膜71を形成する前に、予め接合層
64をエッチングして、ソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に
接合する接合層64bと、に分離しておいてもよい。
【0113】
その後、凹部74を埋めるように配置された絶縁膜29のドレイン電極14を覆う部分
にコンタクトホールを形成するとともに、上面上にパターニングされた画素電極(ITO
)19を形成し、コンタクトホールを介してドレイン電極14と画素電極19とを接続す
る。
【0114】
上記実施形態で説明したようにゲート電極11、ゲート配線12を形成し、本実施形態
で説明したようにソース電極17と、ドレイン電極14とを形成することで、半導体装置
としてのTFT30を形成することができ、さらにはこのTFT30を多数有するTFT
アレイ基板10を製造することができる。
【0115】
このようなTFT30(半導体装置)の製造方法にあっては、良好な密着力で形成され
た配線パターン(金属配線)を有しているので、この配線パターンによって得られるトラ
ンジスタ特性も安定したものとなる。また、配線パターンの微細化も実現できるため、T
FT30も小型化も実現することができる。
【0116】
なお、本実施形態で示した回路配線膜73(ソース配線16、ソース電極17及びドレ
イン電極14)についても、上記実施形態で示したゲート配線12及びゲート電極11と
同様に、マンガン等からなる下地層、ニッケル等からなる保護層を設ける構成としてもよ
いことは言うまでもない。
(液晶表示装置)
次に、本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。本実施
形態の液晶表示装置は、上記実施形態で説明した配線パターン(金属配線)の形成方法を
用いて形成された回路配線を有するTFTを備えた液晶表示装置である。
【0117】
図12は本実施形態に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側
から見た平面図であり、図13は図12のH−H'線に沿う断面図である。図14は液晶
表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子
、配線等の等価回路図で、図15は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下
の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとする
ため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0118】
図12及び図13において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、
対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52
によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、
保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されて
いる。
【0119】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成
されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子20
2がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿
って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画
像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線2
05が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては
、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材2
06が配設されている。
【0120】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上
に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bondi
ng)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して
電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、
使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super T
wisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラック
モードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置される(図示省略)。また
、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、
TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G
)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0121】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図14に示す
ように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素1
00aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されて
おり、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電
気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この
順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎
に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続
されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、G
mをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0122】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子で
あるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される
画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして
画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは
、図13に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持
された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向
電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば
、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容
量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高
い液晶表示装置100を実現することができる。
【0123】
図15はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であ
って、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、前記実施形態の金属配線形成
方法により、マンガン層F1、銀層F2及びニッケル層F3からなるゲート配線(金属配
線)61がガラス基板P上のバンクB、B間に形成されている。
【0124】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリ
コン(a−Si)層からなる半導体層である活性層63が積層されている。このゲート配
線部分に対向する活性層63の部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、オ
ーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積
層されており、チャネル領域の中央部における活性層63上には、チャネルを保護するた
めのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲ
ート絶縁膜62、活性層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジス
ト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニン
グされる。
【0125】
さらに、接合層64a、64b及びITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極19
も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパター
ニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上に
それぞれバンク66を突設し、これらバンク66間に前述した液滴吐出装置IJを用いて
銀化合物の液滴を吐出することで、ソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0126】
前記実施形態では、本発明におけるデバイスの一実施形態であるTFT30を、液晶表
示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置
以外にも、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに適用することが
できる。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と
陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させ
ることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出
(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、前記のTFT30を有する基
板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色
を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインク
とし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することが
できる。本発明における電気光学装置の範囲には、このような有機ELデバイスも含まれ
る。
【0127】
なお、本発明に係る電気光学装置としては、前記の他に、PDP(プラズマディスプレ
イパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、
電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0128】
このような電気光学装置にあっては、高品質で小型化が実現された半導体装置を備えて
いるので、これら電気光学装置自体も高品質で小型化が実現されたものとなる。
【0129】
半導体装置を形成する以外の他の実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態につ
いて説明する。図16に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)
400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チ
ップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または
静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行
うようになっている。前記アンテナ回路412が、前記実施形態に係る金属配線形成方法
によって形成されている。
【0130】
従って、この非接触型カード媒体についても、高品質で小型化が実現されたものとなる

【0131】
図17(a)は電子機器の一例である携帯電話の一例を示した斜視図である。図17(
a)において、600は携帯電話本体を示し、601は前記実施形態の液晶表示装置10
0を備えた液晶表示部を示している。
【0132】
図17(b)はワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図で
ある。図17(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部
、703は情報処理本体、702は前記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示
部を示している。
【0133】
図17(c)は腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図17(c)において
、800は時計本体を示し、801は前記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表
示部を示している。
【0134】
図17(a)〜(c)に示す電子機器は、前述した、高品質で小型化が実現された液晶
表示装置100(電気光学装置)を備えているので、この電子機器自体も高品質で小型化
が実現されたものとなる。
【0135】
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネ
ッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とするこ
ともできる。
【0136】
また、上述した電子機器以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液
晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニア
リング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビュー
ファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カ
ーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用す
ることが可能である。
【0137】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発
明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材
の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計
要求等に基づき種々変更可能である。
【0138】
例えば、上記実施形態では、下地層、配線本体及び保護層の三層構造の金属配線を形成
する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、下地層及び配線本体から
なる二層構造や、四層以上の金属配線に対しても本発明を適用可能である。
【0139】
また、上記本実施形態の金属配線形成方法は、図18や図19に示すようなアクティブ
マトリクス基板の製造時に適用することができる。具体的には、図18はコプレナー構造
のトランジスタを備えるアクティブマトリクス基板の一例を示す断面模式図であって、基
板P上に半導体層80が形成され、半導体層80上にはゲート絶縁膜62を介してゲート
電極61が形成されている。ゲート電極61はバンクBによって囲まれてパターンが形成
されてなり、当該バンクBは層間絶縁層としても機能している。
【0140】
そして、ゲート電極61が上記の金属配線形成方法により形成される。
【0141】
また、バンクB及びゲート絶縁膜62にはコンタクトホールが形成され、当該コンタク
トホールを介して半導体層80のソース領域に接続されるソース電極17と、半導体層8
0のドレイン領域に接続されるドレイン電極14とが形成されている。なお、ドレイン電
極14には画素電極が接続される。
【0142】
一方、図19はスタガー構造のトランジスタを備えるアクティブマトリクス基板の一例
を示す断面模式図であって、基板P上にソース電極17とドレイン電極14とが形成され
、当該ソース電極17とドレイン電極14上には半導体層80が形成されている。また、
半導体層80上にはゲート絶縁膜62を介してゲート電極61が形成されている。ゲート
電極61はバンクBによって囲まれてパターンが形成されてなり、当該バンクBは層間絶
縁層としても機能している。そして、ゲート電極61が上記の金属配線形成方法により形
成される。
【0143】
なお、ドレイン電極14には画素電極が接続される。
【0144】
以上のようなアクティブマトリクス基板の製造時には、上述した金属配線形成方法を適
用することができる。つまり、例えばバンクBによって囲まれた領域にゲート電極61を
形成する際には、本発明に係る上記金属配線形成方法を採用すれば、密着力が高く安定し
て特性を発現するゲート電極を形成することが可能となる。なお、当該金属配線形成方法
は、ゲート電極の形成工程に限らず、例えばソース電極やドレイン電極、さらには画素電
極の形成工程においても採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明する模式断面図である。
【図3】TFTアレイ基板の要部の概略構成を示した平面図である。
【図4】バンク構造体の概略構成を示す平面図である。
【図5】(a)(b)はTFTの要部を示す側断面図である。
【図6】(a)〜(d)はバンク形成方法を説明するための模式図である。
【図7】プラズマ処理装置の概略構成図である。
【図8】(a)〜(e)は配線パターン形成方法を説明するための模式図である。
【図9】(a)〜(d)は配線パターン形成方法を説明するための模式図である。
【図10】TFTを形成する手順を示す図である。
【図11】TFTを形成する手順を示す図である。
【図12】液晶表示装置を対向基板側から見た平面図である。
【図13】図12のH−H'線に沿う断面図である。
【図14】液晶表示装置の等価回路図である。
【図15】液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図16】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【図17】電子機器の具体例を示す外観図である。
【図18】アクティブマトリクス基板の一例を模式的に示す断面図である。
【図19】アクティブマトリクス基板の異なる例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0146】
B…バンク、 F1…マンガン層(第1膜、中間層)、 F2…銀層(第2膜)、 F
3…ニッケル層(第3膜)、 IJ…液滴吐出装置(インクジェット装置)、 P…基板
、 11…ゲート電極(金属配線)、 12、61…ゲート配線(金属配線)、 13、
55、56…配線形成領域、 34…凹部(配線形成領域)、 35…底部、 36…側
面、 100…液晶表示装置(電気光学装置)、 400…非接触型カード媒体(電子機
器)、 600…携帯電話本体(電子機器)、 700…情報処理装置(電子機器)、
800…時計本体(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられたバンクによって区画された配線形成領域に液相法により金属配線が
形成されたデバイスであって、
前記金属配線は、前記配線形成領域の底部、及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの
側面に沿って成膜された第1膜と、該第1膜上に積層して成膜された第2膜とを有するこ
とを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のデバイスにおいて、
前記第2膜は、配線本体であり、
前記第1膜は、前記第2膜と前記配線形成領域の底部、及び前記第2膜と前記バンクの
前記側面との密着力を向上させる中間層であることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1または2記載のデバイスにおいて、
前記第2膜を覆って保護する第3膜が前記第2膜上に積層して成膜されることを特徴と
するデバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のデバイスにおいて、
前記バンクの前記側面は、前記第1膜の形成材料を含む機能液に対する親液性を有し、
前記バンクの上面は前記機能液に対する撥液性を有することを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のデバイスを備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上に設けられたバンクによって区画された配線形成領域に液相法により金属配線を
形成する方法であって、
前記配線形成領域の底部、及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの側面に親液性を付
与する工程と、
前記配線形成領域の底部、及び前記配線形成領域に臨む前記バンクの側面に沿って第1
膜を成膜する工程と、
前記第1膜上に積層して第2膜を成膜する工程とを有することを特徴とする金属配線形
成方法。
【請求項8】
請求項7記載の金属配線形成方法において、
前記第2膜は、配線本体であり、
前記第1膜は、前記第2膜と前記配線形成領域の底部、及び前記第2膜と前記バンクの
前記側面との密着力を向上させる中間層であることを特徴とする金属配線形成方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の金属配線形成方法において、
前記第2膜を覆って保護する第3膜を前記第2膜上に積層して成膜する工程を有するこ
とを特徴とする金属配線形成方法。
【請求項10】
アクティブマトリクス基板の製造方法であって、
基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、
前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、
前記ゲート絶縁膜の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、
前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、
前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程におい
て、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とす
るアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項11】
アクティブマトリクス基板の製造方法であって、
基板上にソース電極及びドレイン電極を形成する第1の工程と、
前記ソース電極及びドレイン電極の上に半導体層を形成する第2の工程と、
前記半導体層の上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第3の工程と、
前記ドレイン電極と接続する画素電極を形成する第4の工程と、を有し、
前記第1の工程及び前記第3の工程及び前記第4の工程の少なくとも一つの工程におい
て、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とす
るアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項12】
アクティブマトリクス基板の製造方法であって、
基板上に半導体層を形成する第1の工程と、
前記半導体層上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第2の工程と、
前記ゲート絶縁膜に形成したコンタクトホールを介して、前記半導体層のソース領域に
接続するソース電極と、前記半導体層のドレイン領域に接続するドレイン電極とを形成す
る第3の工程と、
前記ドレイン電極と接続する画素電極を形成する第4の工程と、を有し、
前記第2の工程及び前記第3の工程及び前記第4の工程の少なくとも一つの工程におい
て、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の金属配線形成方法を用いることを特徴とす
るアクティブマトリクス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−300012(P2007−300012A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128160(P2006−128160)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】