説明

電動ブレーキシステム及びそれに用いる電動ブレーキ装置

【課題】
駐車ブレーキに故障が発生した場合にも停車を保持できる電動ブレーキシステム及びそれに用いる電動ブレーキ装置を提供することにある。
【解決手段】
電動ブレーキアクチュエータ6は、ブレーキパッドをディスクロータ7に押圧して各車輪の制動力を独立に制動する。電動ブレーキアクチュエータ6を駆動するモータのモータロータ10に取り付けられた爪部10aとラッチ21aにより駐車ブレーキを構成する。メインコントローラ3は、モータ電流を低減したときのモータ変位から駐車ブレーキの故障を検知し、駐車ブレーキが一輪以上失陥した場合に、残りの正常な駐車ブレーキにおける押圧力を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ブレーキシステム及びそれに用いる電動ブレーキ装置に係り、特に、駐車ブレーキ機能を備えるものに用いるに好適な電動ブレーキシステム及びそれに用いる電動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2系統のブレーキライン系を有する電動ブレーキシステムにおいて、ブレーキライン系が故障した場合に正常なブレーキライン系を特定し、片系統のブレーキライン系でブレーキ制御を継続する制御方法としては、特開2001−206209号公報に記載されたものが知られている。この例では、1つの調圧部に合流されて接続されている2系統のブレーキライン系を有する電子制御ブレーキシステムであって、増圧制御時にブレーキ圧の上昇が検出されない場合には、各ブレーキライン系を1つずつ調圧部に連結して、連結したブレーキライン系のブレーキ圧が上昇したかどうかを検出する。これにより、ブレーキ圧の上昇が確認されたブレーキライン系を正常と判断し、正常なブレーキライン系のみでブレーキ制御を継続する。この方法により、ブレーキライン系の故障発生時にも、人力によるブレーキ動作ではなく、電子制御によりブレーキを制御することができ操作性の悪化および安全性の悪化を回避することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−206209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2001−206209号公報のものでは、駐車ブレーキが故障した場合に安全性については何ら開示されてないものである。一般に、駐車ブレーキが故障した場合には、マニュアルトランスミッションを有する車両においてはトランスミッションを低速ギアに、オートマチックトランスミッションを有する車両においてはトランスミッションをパーキングレンジに入れることにより、駐車ブレーキの代替とすることができる。しかしながら、(1)運転者が通常ブレーキを解除した状態で駐車ブレーキ作動指令を発して駐車ブレーキの故障が判明する場合、あるいは、(2)運転者が通常ブレーキをかけた状態で駐車ブレーキ作動指令を発してから通常ブレーキを解除した後に駐車ブレーキの故障が判明する場合には、車両の停止が保持されない可能性があり危険である。
【0005】
また、モータが発生する動力によって制動部材を動作させ、制動部材と被制動部材との間に発生する摩擦力によって制動力を発生し、パッドの押付力保持手段により車両の停車を保持する電動駐車ブレーキ装置では、駐車ブレーキ作動スイッチが操作されてから、押付力保持手段の動作および動作確認終了後に駐車ブレーキ作動状態となる。したがって、駐車ブレーキ作動スイッチが操作されてから駐車ブレーキ作動状態となるまでに要する時間はワイヤ式の駐車ブレーキ装置に比べて長くなる。このため、上記(1),(2)の状態が発生する確率が高くなる可能性があり、駐車ブレーキ故障発生時のブレーキ制御が必要である。
【0006】
本発明の目的は、駐車ブレーキに故障が発生した場合にも停車を保持できる電動ブレーキシステム及びそれに用いる電動ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、制動部材を被制動部材に押圧して各車輪の制動力を独立に制動するブレーキ装置と、駐車ブレーキと、前記駐車ブレーキの故障を検知する駐車ブレーキ故障検出手段とを有する電動ブレーキシステムであって、前記駐車ブレーキ故障検出手段により前記駐車ブレーキが一輪以上失陥した場合に、残りの正常な駐車ブレーキにおける制動部材と被制動部材の間の押圧力を大きくする制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、駐車ブレーキに故障が発生した場合にも停車を保持できるものとなり、安全性を向上し得るものとなる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記制御手段は、駐車ブレーキ動作指令が発生した場合に、駐車ブレーキの動作を開始するとともに、駐車ブレーキの機能を使用しないブレーキ装置で一時的に停車を保持できる制動力を発生するようにしたものである。
かかる構成により、駐車ブレーキの失陥が検出された場合にも一時的には確実に停車を保持し得るものとなる。
【0009】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記制御手段は、駐車ブレーキ動作指令発生後に駐車ブレーキ機能が発揮された場合には、駐車ブレーキ機能を使用しないブレーキ装置による制動を解除するようにしたものである。
かかる構成により、制動によるエネルギー消費を抑制し、モータに流れるコイルの発熱を防止し得るものとなる。
【0010】
(4)上記(1)において、好ましくは、運転者の操作に拘束されずに動作可能なトランスミッションを備え、前記制御手段は、一輪以上の駐車ブレーキ機能失陥時に他の正常な駐車ブレーキを動作させるとともに、前記トランスミッションに所定の低速の変速比を選択させる動作指令を発するようにしたものである。
【0011】
かかる構成により、駐車ブレーキ機能失陥時でも低速に設定されたトランスミッションを駐車ブレーキの代替とすることにより、停車を保持し得るものとなる。また、車両が有するすべての駐車ブレーキが失陥した場合にもトランスミッションの作用により、駐車を持続させ得るものとなる。
【0012】
(5)上記(4)において、好ましくは、路面傾斜の状態を検知する路面傾斜状態検知手段を備え、前記制御手段は、駐車ブレーキ機能失陥発生時に前記路面傾斜状態検知手段により検知された路面の傾斜状態に基づいて、前記トランスミッションを動作させるための動作指令を変化させるようにしたものである。
かかる構成により、坂道における停車時に駐車ブレーキを動作させて駐車ブレーキ機能失陥が判明し、トランスミッションを駐車ブレーキの代替とする場合においても、停車の安全性を向上し得るものとなる。また、車両が有するすべての駐車ブレーキが失陥した場合にもトランスミッションの作用により、駐車を持続させ得るものとなる。
【0013】
(6)上記(5)において、好ましくは、運転者の操作に拘束されずに動作可能なステアリングを備え、前記制御手段は、一輪以上の駐車ブレーキ機能失陥時に、前記路面傾斜状態検知手段により路面の勾配が所定値よりも急であると判断した場合には、正常な駐車ブレーキおよび前記トランスミッションを動作させるとともに、前記ステアリングを操作するための指令を発するようにしたものである。
かかる構成により、急勾配の坂道における停車時に駐車ブレーキを動作させて駐車ブレーキ機能失陥が判明した場合にも、ステアリングを操作することにより、路面とタイヤの間に働く摩擦力を大きくすることができ、停車の安全性を向上し得るものとなる。
【0014】
(7)また、上記目的を達成するために、本発明は、モータの動力により、制動部材を被制動部材に押圧して車輪を制動するブレーキ装置と、前記モータとともに動作する爪部と、この爪部に係合して前記モータの動作を規制するラッチ機構と、このラッチ機構を動作させるためのラッチ動作手段とを有する駐車ブレーキと、前記ラッチ機構の動作後に、前記モータのコイルに流れる電流値を低下させ、前記制動部材と前期被制動部材の間の押圧力が規定量以上低下する場合に、前記ラッチ機構を動作させた時の押圧力よりも大きな押圧力に調節して再びラッチ機構を動作させる制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、爪部に故障が生じた場合でも、より大きな押付力を出すことで爪部を動作させてラッチをかける爪部の場所を変更することにより、より確実に駐車ブレーキをかけ得るものとなる。
【0015】
(8)上記(7)において、好ましくは、前記制御手段は、ラッチ機構の動作後に、前記モータのコイルに流れる電流値を低下させ、前記制動部材と前記被制動部材の間の押圧力が規定量以上低下した場合に駐車ブレーキ機構の故障を示す警告を発するものである。
かかる構成により、駐車ブレーキの故障を判別して安全を確保し得るものとなる。
【0016】
(9)上記(7)において、好ましくは、前記制御手段は、前記ラッチ機構を再び動作させる回数が規定回数に達した場合に、駐車ブレーキ機能の失陥であると判断するようにしたものである。
かかる構成により、単に駐車ブレーキ作動に失敗した場合を故障として検出することなく、駐車ブレーキの故障を確実に検出し得るものとなる。
【0017】
(10)上記(7)において、好ましくは、前記制御手段は、前記モータの通電電流と、前記ラッチ動作手段の通電電流を監視し、前記モータ若しくは前記ラッチ動作手段の失陥を検出した場合には、警告を発するようにしたものである。
【0018】
かかる構成により、運転者が駐車ブレーキ作動スイッチを操作するときに事前に駐車ブレーキ機能の失陥を知ら得るものとなる。
【0019】
(11)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、モータと、このモータの回転を直動運動へ変換して得られる直動力により、制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置において、前記モータのロータに固定された爪部と、一方向ソレノイドと、このソレノイドによって駆動されるソレノイドロッドと、このソレノイドロッドと係合して動作するとともに、ラッチを有するラッチロッドとから構成されるリンク機構とからなり、前記ラッチで前記ロータの動きを規制することにより制動力を保持する駐車ブレーキを備えるようにしたものである。
かかる構成により、既存のモータによって動作する電動ブレーキ装置に簡単なラッチ機構を設けるだけで安価に駐車ブレーキ機能を追加し得るものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、駐車ブレーキに故障が発生した場合にも停車を保持できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による電動ブレーキシステムのシステム構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムのシステム構成を示すシステムブロック図である。
【0022】
エンジン(EG)40の駆動力は、変速機(TM)42により変速され、差動機(DF)44を介して、前輪8a,8bにそれぞれ伝達され、前輪8a,8bを回転駆動する。なお、動力源としては、エンジン40に代えて、モータでもよく、また、エンジンとモータのハイブリットシステムでもよいものである。変速機42は、自動変速機や手動変速機のいずれでもよいものである。ただし、後述する第2実施形態を適用する際には、変速機42は、変速操作を電子的に行うアクチュエータを備えた電子制御の自動変速機若しくは変速ギアの切替をアクチュエータにより制御する自動MT等を用いる必要がある。
【0023】
ステアリング50を回転させると、その回転駆動力はステアリングギア52を介して、前輪8a,8bに伝達され、前輪8a,8bを操舵する。ステアリング操作をアシストする機構として、電動パワーステアリングを備えている。電動パワーステアリングは、モータ54と、モータ54を駆動するモータドライバ56とからなる。なお、パワーステアリングとしては、電動機構の他に、油圧機構を用いるものでもよいものである。
【0024】
前輪8a,8b及び後輪8c,8dには、それぞれ、ディスクロータ7a,7b,7c,7dが備えられている。ディスクロータ7a,7b,7c,7dは、それぞれ、前輪8a,8b,後輪8c,8dとともに回転する。電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dは、ディスクロータ7a,7b,7c,7dを押圧し、摺動する。ここで、後輪に備えられた電動ブレーキアクチュエータ6c,6dは、駐車ブレーキ機能を備えている。
【0025】
ブレーキペダル1の変位量は、ストロークセンサ2によって電気信号に変換され、メインコントローラ3に入力する。また、駐車ブレーキ操作スイッチ9が操作された場合に出力する駐車ブレーキ信号も、メインコントローラ3に入力する。路面傾斜センサ60は、車両が位置している路面の傾斜角を検出し、検出された路面傾斜信号をメインコントローラ3に入力する。なお、路面傾斜センサ60は、後述する第2実施形態,第3実施形態において用いられるものであり、第1実施形態においては必須のものではない。
【0026】
メインコントローラ3は、ストロークセンサ2からの電気信号に基づいて4輪の各制動力を統括的に制御し、また、駐車ブレーキ操作スイッチ9からの駐車ブレーキ信号に基づいて、後輪の電動ブレーキアクチュエータ6c,6dは、駐車ブレーキ機能を制御する。
【0027】
電動ブレーキコントローラ4a,4b,4c,4dは、メインコントローラ3から出力される電気信号に基づいて各輪の電動ブレーキを制御する。ドライバ5a,5b,5c,5dは、電動ブレーキコントローラ4a,4b,4c,4dから出力される電気信号に基づいて、各車輪の電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dのモータに電流を入力し、モータを動作させ、また、後輪の電動ブレーキアクチュエータ6c,6dに備えられたソレノイドを動作させて、駐車ブレーキ機能を動作させる。
【0028】
バッテリ(BA)24の電力は、メインコントローラ3に供給されるとともに、ドライバ5a,5b,5c,5dを介して、電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dのモータや、電動ブレーキアクチュエータ6c,6dのソレノイドや、モータドライバ56を介して、モータ54などに供給される。
【0029】
次に、図2を用いて、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dの構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる電動ブレーキアクチュエータの構成を示す要部断面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0030】
図2に示した電動ブレーキアクチュエータ6は、駐車ブレーキ機能を有する後輪の電動ブレーキアクチュエータ6c,6dの構成である。前輪の電動ブレーキアクチュエータ6a,6bは、図2に示した電動ブレーキアクチュエータ6から駐車ブレーキ機能を除去したものである。
【0031】
電動ブレーキアクチュエータ6のモータ部は、モータステータ29の内周側に固定されたモータコイル11と、モータコイル11の磁界変化に伴って回転するモータロータ10と、モータロータ10に固定されている磁石12と、モータロータ10の回転変位を検出するためのレゾルバ18とからなる。電動ブレーキコントローラ4によって制御されるモータドライバ5からの電流は、モータコイル11に入力され、モータコイル11が発生する磁界を変化させ、モータロータ10を回転させる。レゾルバ18は、モータの回転制御に用いられるとともに、モータの変位の測定にも用いられる。レゾルバ18によって検出されたモータの変位情報は、メインコントローラ3に入力する。
【0032】
モータのモータロータ10の回転速度は、減速機13によって減速されるとともに、モータロータ10の回転トルクは増幅されて、回転−直動変換機構に伝達される。回転−直動変換機構は、減速機13によって減速された回転運動を直動運動に変換するものであり、ボールねじ14と、ボールねじロッド15により直動運動させられるピストン16とからなる。ボールねじ14の回転運動は、ボールねじロッド15によって直動に変換され、ボールねじロッド15に固定されたピストン16が直動運動する。回転−直動変換機構であるボールねじ14は、ボールランプなどの他の機構を使用してもよいものである。
【0033】
制動部材であるブレーキパッド17a,17bは、それぞれ、支持材28a,28bに固定されている。ブレーキパッド17bは、ピストン16に固定されており、ピストン16が図示の左方向に移動すると、被制動部材であるディスクロータ7に押圧される。ブレーキパッド17a,17bの押付力は、押付力センサ19によって測定され、メインコントローラ3に入力する。モータコイル11に流れる電流は、モータ電流センサ23によって測定され、メインコントローラ3に入力する。
【0034】
次に、駐車ブレーキ機構について説明する。駐車ブレーキ機構は、モータロータ10の回転運動を拘束するためのラッチ21と、ラッチ21を駆動するためのソレノイド20とからなる。駐車ブレーキ機構は、後輪用の電動ブレーキアクチュエータ6c,6dに備えられており、前輪用の電動ブレーキアクチュエータ6a,6bには備えられていないものである。駐車ブレーキ機構の構成及び動作については、図3を用いて後述する。
【0035】
図2に示した電動ブレーキ装置によるパッド押圧力の制御メカニズムについて説明する。メインコントローラ3は、運転者のペダル踏み込み量などから必要な制動力を算出し、それに基づいてパッド押付力指令を作成する。パッド押付力指令はCAN(Controller Area Network)通信を介して電動ブレーキコントローラ4に送信さる。電動ブレーキコントローラ4は、パッド押付力指令と、押付力センサ19で測定した実際の押付力の偏差を計算し、この押付力偏差を減少させるために必要なモータ電流指令信号を作成する。モータドライバ5は、モータ電流指令信号に応じた電流をモータコイル11に流す。モータコイル11に電流が流れてモータロータ10がトルクを発生すると、モータロータ10とともに減速機13が回転し、ボールねじ14を動作させる。ボールねじ14の動作によりピストン16が直動運動を行い、ブレーキパッド17をディスクロータ7に押し付けたり、ディスクロータ7から離したりする。ブレーキパッド17がディスクロータ7に押し付けられた場合にブレーキパッド17が変形し、押付力が発生する。
【0036】
本実施形態による電動ブレーキ装置の駆動源であるモータは、モータステータ29と、モータコイル11と、モータロータ10と、モータロータ10に固定されている磁石12および軸受けから構成されるブラシレスモータである。ブラシレスモータは、モータロータ10の回転変位を検出するためのレゾルバ18の測定値と、モータコイル11に流れる電流の値を測定するモータ電流センサ23の測定値を使用して、モータドライバ5により制御される。
【0037】
次に、図3を用いて、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の構成及び動作について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の構成を示す側面図である。なお、図3(A)は駐車ブレーキの解除状態を示し、図3(B)は駐車ブレーキのON状態を示している。また、図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0038】
図3に示すように、本実施形態の駐車ブレーキ機構は、外周に複数の爪部10aを備えたモータロータ10と、モータロータ10の爪部10aを係止することによりモータロータの回転を拘束するラッチ21aと、ラッチ21aを駆動するためのソレノイド20とにより構成される。ラッチ21aは、ラッチロッド21に設けられている。
【0039】
ラッチロッド21とソレノイドロッド25により、リンク機構が形成される。ラッチロッド21の一端は、支点Oを中心に回動可能である。ラッチロッド21の他端は、ソレノイドロット25の一端と回動可能に係合されている。ソレノイドロット25の他端は、ソレノイド20により動作される。
【0040】
ソレノイド20は、ソレノイドコイル26と、ソレノイドばね27と、ソレノイドロッド25により概略構成される。ソレノイドコイル26に電流が流れていない場合には、ソレノイドロッド25はソレノイドばね27の付勢力により押し出された状態となるが、ソレノイドコイル26に電流を流すと、ソレノイドコイル26が発生する磁界によりソレノイドロッド25は吸引され、ソレノイドばね27を圧縮する。
【0041】
図3(A)は、モータロータ10の爪車にラッチ21がかかっていない状態、すなわち駐車ブレーキ解除時の状態を示している。この場合、ソレノイドコイル26には通電されておらず、ソレノイドロッド25は押し出されているため、モータロータ10は自由に回転することができる。
【0042】
図3(B)は、ラッチ21がモータロータ10の爪10aにかかり、モータロータ10の動きが拘束された駐車ブレーキ作動状態を示している。図3のモータロータ10は時計回り方向をピストン後退側方向(ブレーキ解除方向)、反時計回り方向をピストン前進方向(パッド押付力増加方向)とする。押付力が発生している状態では、押付力の反力はボールねじ14および減速機13を介してモータロータ10にトルクTrfとして伝わるが、このトルクTrfは、図3における時計回り方向である。したがって、図3(B)において、モータコイル11に電流が流れておらず、モータ自身がトルクを発生していない場合には、ラッチ21は矢印Trf方向の力をモータロータ10の爪部10aから受ける。この力により、ラッチ21とモータロータ10の爪部10aの間には摩擦力が発生しているため、ソレノイドコイル26に電流が流れていなくても、ソレノイドばね27の付勢力によってソレノイドロッド25が押し出されることはなく、モータロータ10が拘束された状態、すなわち駐車ブレーキ作動状態を維持することができる。
【0043】
駐車ブレーキ作動状態から駐車ブレーキを解除する場合には、図3(B)の状態で、モータロータ10を反時計回り方向に爪部10aの爪1つ分回転させると、ラッチ21と爪部10aの間に働いている摩擦力がなくなり、ソレノイドばね27の付勢力により、ラッチ21は解除される。図3(B)において、ラッチ21はモータロータ10の時計回り方向の回転のみを拘束しているため、駐車ブレーキ作動状態でモータロータ10を反時計回り方向に回転することが可能である。
【0044】
次に、図4を用いて、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の故障時の制御動作について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の故障時の制御内容を示すフローチャートである。本実施形態の制御は、メインコントローラ3によって実行される。なお、電動ブレーキコントローラ4によって実行するようにすることも可能である。
【0045】
ここでは、4輪の車両を例とし、図2にて説明したように、左右後輪に駐車ブレーキ機能を有する電動ブレーキ装置を、左右前輪には駐車ブレーキ機能を持たない電動ブレーキ装置を装着した場合について説明する。
【0046】
まず、運転者が駐車ブレーキ操作スイッチ9を操作することで、メインコントローラ3には駐車ブレーキ作動指令が入力する。すると、ステップs10において、コントローラ3は、前輪の電動ブレーキ6a,6bで車両停車を確実に保持できる制動力を発生させ、また、ステップs15において、後輪の電動ブレーキ6c,6dで車両停車を確実に保持できる制動力を発生させる。
【0047】
次に、ステップs20において、コントローラ3は、図3に示したソレノイド20に通電して、後輪の電動ブレーキ6c,6dの中の駐車ブレーキを作動させる。
【0048】
次に、ステップs25において、コントローラ3は、駐車ブレーキ作動確認を行い、ステップs30において、駐車ブレーキ異常の有無を判断する。
【0049】
ここで、図5を用いて、本実施形態による電動ブレーキシステムにおける駐車ブレーキ異常の判断方法について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムにおける駐車ブレーキ異常の判断方法の説明図である。図5(A)は、電動ブレーキ6c,6dのモータに流れるモータ電流を示し、図5(B)は、電動ブレーキ6c,6dのモータのモータ変位を示し、図5(C)は、電動ブレーキ6c,6dのモータの押付力を示し、それぞれ横軸を時間として時間履歴を示している。また、図5(B),(C)において、実線B1,C1は駐車ブレーキが正常時の時間履歴を示し、破線B2,C2は駐車ブレーキが異常時の時間履歴を示している。
【0050】
図8において、時刻t1において、ソレノイド20によるラッチ21の駆動が完了した状態であるとする。時刻t1から、コントローラ3が駐車ブレーキ作動確認のために、図5(A)に示すように、モータ電流を徐々に減少させると、モータロータ10はパッド押付力の反力に起因するトルクを受けているため、押付力が低下する方向に回転する。
【0051】
ラッチ21aおよび爪車が正常であれば、図5(A)に示すようにモータ電流を減少させても、やがてラッチ21aが爪部10aにかかり、図5(B)にて実線B1で示すように、モータロータ10の回転は止まる。モータ変位は、図2に示したレゾルバ18によって検出できる。
【0052】
逆に、ラッチ21aが正常に動作しない場合や、爪部10aの爪が破損している場合には、モータ電流を減少させた場合、図5(B)にて破線B2で示すように、モータロータ10は大きく回転し、図5(C)に破線C2で示すように、押付力は大幅に低下する。
【0053】
以上の動作により、図1に記載の電動ブレーキシステムでは、ラッチ21の駆動完了後に、コントローラ3は、モータ電流の減少を開始し、規定量以上モータが回転した場合には駐車ブレーキ作動の失敗と判断する。
【0054】
モータ電流を減少させても押付力低下が規定量未満に収まった場合には、時刻t2において、コントローラ3は、図5(A)に示すように、モータ電流をカットし、また、ソレノイドコイル26への通電をカットする。その後、コントローラ3は、時間Tだけモータ変位を監視し、モータ変位が動かないことを確認してから、時刻t3において、駐車ブレーキ作動完了の信号を作成する。これにより、ラッチが爪の頂上部分などの不安定な場所に引っ掛かっていて、モータおよびソレノイドコイルの電流をカットした瞬間の衝撃でラッチが外れた場合にも駐車ブレーキ作動の失敗として認識することができる。
【0055】
以上は、ラッチと爪部の係合の不具合による駐車ブレーキの作動異常の検出方法であるが、モータやソレノイドの異常は次のようにして検出することができる。すなわち、コントローラ3は、電動ブレーキの制御に大きな影響を与えないように適宜モータコイルとソレノイドコイルに電圧をかけ、図2に示した電流計22,23により、ソレノイドへの通電電流及びモータコイルへの通電電流を検出する。コイルに電圧をかけているのにもかかわらず、電流計22,23で電流を検出できない場合には、モータコイルやソレノイドコイルの断線などの動力機構失陥であるとして、駐車ブレーキ異常の判断できる。駐車ブレーキ異常の際には、運転者に対して警告を発する。この警告はブレーキあるいは駐車ブレーキを動作させていない場合でも発することができるため、運転者がブレーキを使用する事前に故障を知らせることができる。これにより、運転者はブレーキの使用を回避する対応を実施できる可能性がある。
【0056】
次に、図4に戻り、ステップs30の判定で異常がない場合には、ステップ35に進み、異常がある場合にはステップs50に進む。
【0057】
異常がない場合には、ステップs35において、コントローラ3は、前輪の制動力を解除し、次に、ステップs40において、後輪の駐車ブレーキ押付力を押付力センサにより監視する。前輪の制動力を解除するのは、制動に伴いモータに電流を流し続けるエネルギー消費を抑え、モータコイルの発熱を防止するためである。
【0058】
そして、ステップs45において、コントローラ3は、後輪の押付力の異常の有無を判定し、異常が無い場合には、ステップs40における押付力の監視を継続し、異常があると、ステップs50に進む。
【0059】
ステップs30において、コントローラ3は、左右いずれかの駐車ブレーキに異常ありと判断すると、ステップs50において、正常な駐車ブレーキの制動力を増加させ、ステップs55において、コントローラ3は、再度ソレノイド26に通電して、駐車ブレーキ作動を行う。
【0060】
この場合、正常な駐車ブレーキの制動力は停車を確実に保持するために、左右輪の駐車ブレーキとも正常な場合の各駐車ブレーキが発生する押付力の合計値相当とするとよいものである。ただし、電動ブレーキ装置の耐久時間を確保するために駐車ブレーキ作動時の押付力に上限を設けてある場合には、この制限を無視して作動させるものとする。
【0061】
駐車ブレーキ作動の失敗の原因が、特定の爪の破損や摩耗に起因するものであった場合、前回と同等の押付力が出るモータ変位においてラッチを作動させても再び失敗する可能性が大きい。そこで、本実施形態では、駐車ブレーキ作動の失敗と判断した場合には押圧力をモータロータ10の爪と爪の間隔分程度以上増力してから再びラッチ21を動作させるようにしている。押付力を増力してラッチをかける爪を変更することにより、正常に駐車ブレーキ作動が完了する可能性が高まるだけでなく、爪の破損、摩耗に対しても安定に動作する駐車ブレーキを提供できる。
【0062】
次に、ステップs55の実施後、ステップs60において、コントローラ3は、運転者に対して駐車ブレーキ故障を示す警告を発する。
【0063】
さらに、本実施形態では、駐車ブレーキ作動失敗と判断して再びラッチを動作させる回数をカウントし、この回数が規定回数Cに達した場合に駐車ブレーキ機能の失陥であると判断する。これにより、無限に押付力を増加してラッチを動作する状態を回避することができる。なお、規定回数Cの値をゼロとした場合には、押付力を増加してラッチを再び動作させる操作を実施しない場合であり、図5の時刻t1〜時刻t2間もしくは時刻t2〜時刻t3間において押付力が規定量以上低下した場合にすぐに駐車ブレーキ機能の失陥であると判断することを意味する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、電動ブレーキを搭載した車両において、駐車ブレーキ機能に失陥が生じた場合にも、駐車ブレーキの機能を持たないブレーキ装置で制動力を確保した後に、正常な駐車ブレーキのパッド押付力を通常の駐車ブレーキ時のパッド押付力以上にして作動させることにより、運転者が通常ブレーキを解除した状態で駐車ブレーキ作動指令を発して駐車ブレーキの故障が判明する場合、あるいは、運転者が通常ブレーキをかけた状態で駐車ブレーキ作動指令を発してから通常ブレーキを解除した後に駐車ブレーキの故障が判明する場合でも、車両の停車を保持することができ、安全性を向上させることができる。
【0065】
次に、図6を用いて、本発明の第2の実施形態による電動ブレーキシステムの構成及び動作について説明する。本実施形態による電動ブレーキシステムのシステム構成は、図1に示したものと同様である。なお、図1に示した路面傾斜センサ60及び変速機42が変速操作を電子的に行うアクチュエータを備えた電子制御の自動変速機若しくは変速ギアの切替をアクチュエータにより制御する自動MT等であることが必要である。また、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dの構成は、図2に示したものと同様である。さらに、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の構成及び動作は、図3に示したものと同様である。
図6は、本発明の第2の実施形態による電動ブレーキシステムの動作を示すフローチャートである。なお、図4と同一ステップ番号は、同一の処理を示している。
【0066】
本実施形態では、前述したように、運転者の操作に拘束されずに動作可能な変速機,変速操作を電子的に行うアクチュエータを備えた電子制御の自動変速機若しくは変速ギアの切替をアクチュエータにより制御する自動MTを用いる。また、路面傾斜の状態を検知する路面傾斜センサ60を有している。そして、駐車ブレーキの故障が判明した場合にトランスミッションを利用して安全性を確保するための制御処理を実行するようにしている。
【0067】
図6のステップs30において、駐車ブレーキに異常があると判断した場合には、ステップs72において、コントローラ3は、路面傾斜センサ60の出力により、車両に対して上り坂かそうでないかを判定する。
【0068】
ここで、路面が車両に対して上り坂であると判断した場合には、ステップs74において、コントローラ3は、図1に示した変速機42のギアを、低速前進ギアに設定する指令を作成し、変速機42のアクチュエータを制御して、低速前進ギアに設定する。一方、上り坂でないと判断した場合には、ステップs76において、コントローラ3は、図1に示した変速機42のギアを、後退ギアに設定する指令を作成し、変速機42のアクチュエータを制御して、低速前進ギアに設定する。なお、オートマチックトランスミッションを有する車両においては、ステップs74,s76において、パーキングレンジに設定する指令を作成し、変速機をパーキングレンジに設定するようにしてもよいものである。
【0069】
ステップs74,s76の終了後、ステップs50において、コントローラ3は、正常な駐車ブレーキの制動力を増加させ、ステップs55において、駐車ブレーキ作動を行う。これにより、坂道においても確実に車両の停車を保持することができ、安全を確保することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、電動ブレーキを搭載した車両において、駐車ブレーキ機能に失陥が生じた場合にも、車両の停車を保持することができ、安全性を向上させることができる。
【0071】
また、運転者の操作に拘束されないトランスミッションを有する車両においては、駐車ブレーキ機能失陥時にトランスミッションを利用することにより、確実に停車を保持することができる。
【0072】
次に、図7及び図8を用いて、本発明の第3の実施形態による電動ブレーキシステムの構成及び動作について説明する。本実施形態による電動ブレーキシステムのシステム構成は、図1に示したものと同様である。なお、図1に示した路面傾斜センサ60及び変速機42が変速操作を電子的に行うアクチュエータを備えた電子制御の自動変速機若しくは変速ギアの切替をアクチュエータにより制御する自動MT等であり、車体の動作方向を制御することができるステアリング50を備えることが必要である。また、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる電動ブレーキアクチュエータ6a,6b,6c,6dの構成は、図2に示したものと同様である。さらに、本実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の構成及び動作は、図3に示したものと同様である。
図7は、本発明の第3の実施形態による電動ブレーキシステムの動作を示すフローチャートである。なお、図4と同一ステップ番号は、同一の処理を示している。図8は、本発明の第3の実施形態による電動ブレーキシステムにおけるステアリング操作の動作説明図である。
【0073】
本実施形態では、前述したように、運転者の操作に拘束されずに動作可能な変速機,変速操作を電子的に行うアクチュエータを備えた電子制御の自動変速機若しくは変速ギアの切替をアクチュエータにより制御する自動MTを用いる。また、路面傾斜の状態を検知する路面傾斜センサ60を有している。さらに、車体の動作方向を制御することができるステアリング50を有している。そして、駐車ブレーキの故障が判明した場合にトランスミッション及びステアリングを利用して安全性を確保するための制御処理を実行するようにしている。
【0074】
図7のステップs30において、駐車ブレーキに異常があると判断した場合には、ステップs70において、コントローラ3は、低速ギア指令を作成する。オートマティックトランスミッションの場合には、パーキングレンジに設定するようにしてもよいものである。ステップs70の内容は、図6におけるステップs72,s74,s76と同じ制御内容である。
【0075】
次に、ステップs80において、コントローラ3は、路面傾斜センサ60により、路面の傾斜が規定値以上の急勾配であるか否かを判定する。急勾配と判定されると、ステップs85において、コントローラ3は、ステアリングを操作する指令を作成する。ステアリングを操作することにより,路面と車輪の摩擦力を高め、より安定に停車を保持することができる。
【0076】
ステップs85の終了後、ステップs50において、コントローラ3は、正常な駐車ブレーキの制動力を増加させ、ステップs55において、駐車ブレーキ作動を行う。これにより、坂道においても確実に車両の停車を保持することができ、安全を確保することができる。
【0077】
ここで、図8を用いて、ステアリングの操作指令作成方法を説明する。ここでは、図8(A)のように上り坂で、図8(B)に示す右後輪8cの駐車ブレーキ機能が失陥し、左後輪8dの駐車ブレーキのみで停車を保持する場合を例にして説明する。
【0078】
図8(B)に示すように、上り坂では車体の重心に重力の坂道斜面方向成分Fgが作用する。このため、駐車ブレーキで制動している左後輪8cを中心に時計回り方向のモーメント(図中破線)が発生する。傾斜勾配が急な場合にはこのモーメントにより、図8(C)に示すように車体が傾くことになる。ここで、このような場合、本実施形態では、図8(D)に示すように、前輪のステアリングを右方向に回転させ、前輪を右方向に傾けることで、前輪と路面の間に左前方方向の摩擦力が発生し、前記のモーメントを打ち消すモーメント(実線矢印)を発生させることができる。これにより、図8(C)のように車体が傾くのを回避することができる。逆に右後輪の駐車ブレーキ機能が正常で、左後輪の駐車ブレーキが故障した場合には上記と逆の操作を実施することにより、車体が傾くのを回避することができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、電動ブレーキを搭載した車両において、駐車ブレーキ機能に失陥が生じた場合にも、車両の停車を保持することができ、安全性を向上させることができる。
【0080】
また、運転者の操作に拘束されないトランスミッション及びステアリングを有する車両においては、駐車ブレーキ機能失陥時にトランスミッション及びステアリングを利用することにより、確実に停車を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムのシステム構成を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる電動ブレーキアクチュエータの構成を示す要部断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムに用いる駐車ブレーキ機構の故障時の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態による電動ブレーキシステムにおける駐車ブレーキ異常の判断方法の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による電動ブレーキシステムの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態による電動ブレーキシステムの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態による電動ブレーキシステムにおけるステアリング操作の動作説明図である。
【符号の説明】
【0082】
3…メインコントローラ
4a,4b,4c,4d…電動ブレーキコントローラ
5a,5b,5c,5d…モータドライバ
6a,6b,6c,6d…電動ブレーキアクチュエータ
7a,7b,7c,7d…ディスクロータ
8a,8b,8c,8d…車輪
9…駐車ブレーキ操作スイッチ
10…モータロータ
11…モータコイル
16…ピストン
17…ブレーキパッド
18…レゾルバ
19…押付力センサ
20…ソレノイド
21a…ラッチ
22…ソレノイドコイル電流センサ
23…モータ電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動部材を被制動部材に押圧して各車輪の制動力を独立に制動するブレーキ装置と、
駐車ブレーキと、
前記駐車ブレーキの故障を検知する駐車ブレーキ故障検出手段とを有する電動ブレーキシステムであって、
前記駐車ブレーキ故障検出手段により前記駐車ブレーキが一輪以上失陥した場合に、残りの正常な駐車ブレーキにおける制動部材と被制動部材の間の押圧力を大きくする制御手段を備えたことを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1記載の電動ブレーキシステムにおいて、
前記制御手段は、駐車ブレーキ動作指令が発生した場合に、駐車ブレーキの動作を開始するとともに、駐車ブレーキの機能を使用しないブレーキ装置で一時的に停車を保持できる制動力を発生することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項2記載の電動ブレーキシステムにおいて、
前記制御手段は、駐車ブレーキ動作指令発生後に駐車ブレーキ機能が発揮された場合には、駐車ブレーキ機能を使用しないブレーキ装置による制動を解除することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項1記載の電動ブレーキシステムにおいて、
運転者の操作に拘束されずに動作可能なトランスミッションを備え、
前記制御手段は、一輪以上の駐車ブレーキ機能失陥時に他の正常な駐車ブレーキを動作させるとともに、前記トランスミッションに所定の低速の変速比を選択させる動作指令を発することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の電動ブレーキシステムにおいて、
路面傾斜の状態を検知する路面傾斜状態検知手段を備え、
前記制御手段は、駐車ブレーキ機能失陥発生時に前記路面傾斜状態検知手段により検知された路面の傾斜状態に基づいて、前記トランスミッションを動作させるための動作指令を変化させることを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の電動ブレーキシステムにおいて、
運転者の操作に拘束されずに動作可能なステアリングを備え、
前記制御手段は、一輪以上の駐車ブレーキ機能失陥時に、前記路面傾斜状態検知手段により路面の勾配が所定値よりも急であると判断した場合には、正常な駐車ブレーキおよび前記トランスミッションを動作させるとともに、前記ステアリングを操作するための指令を発することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項7】
モータの動力により、制動部材を被制動部材に押圧して車輪を制動するブレーキ装置と、
前記モータとともに動作する爪部と、この爪部に係合して前記モータの動作を規制するラッチ機構と、このラッチ機構を動作させるためのラッチ動作手段とを有する駐車ブレーキと、
前記ラッチ機構の動作後に、前記モータのコイルに流れる電流値を低下させ、前記制動部材と前期被制動部材の間の押圧力が規定量以上低下する場合に、前記ラッチ機構を動作させた時の押圧力よりも大きな押圧力に調節して再びラッチ機構を動作させる制御手段を備えたことを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項8】
請求項7記載の電動ブレーキシステムにおいて、
前記制御手段は、ラッチ機構の動作後に、前記モータのコイルに流れる電流値を低下させ、前記制動部材と前記被制動部材の間の押圧力が規定量以上低下した場合に駐車ブレーキ機構の故障を示す警告を発することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項9】
請求項7に記載の電動ブレーキシステムにおいて、
前記制御手段は、前記ラッチ機構を再び動作させる回数が規定回数に達した場合に、駐車ブレーキ機能の失陥であると判断することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項10】
請求項7記載の電動ブレーキシステムにおいて、
前記制御手段は、前記モータの通電電流と、前記ラッチ動作手段の通電電流を監視し、前記モータ若しくは前記ラッチ動作手段の失陥を検出した場合には、警告を発することを特徴とする電動ブレーキシステム。
【請求項11】
モータと、このモータの回転を直動運動へ変換して得られる直動力により、制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置において、
前記モータのロータに固定された爪部と、
一方向ソレノイドと、
このソレノイドによって駆動されるソレノイドロッドと、このソレノイドロッドと係合して動作するとともに、ラッチを有するラッチロッドとから構成されるリンク機構とからなり、
前記ラッチで前記ロータの動きを規制することにより制動力を保持する駐車ブレーキを備えることを特徴とした電動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−137182(P2007−137182A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331863(P2005−331863)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】