説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】例えば、SOQ基板を用いてTFT等の半導体素子を形成することによってデジタル駆動方式の利点を生かし、高品位の画像を表示する。
【解決手段】液晶装置1によれば、1フレームを分割する複数のサブフレーム毎にHighおよびLowの一方の電位を有するデジタル信号である画像信号Snの電位Vsigに応じて、理想波形に近い波形を有する駆動電圧Viを各画素部の液晶に印加できる。したがって、画像信号に応じた駆動電圧で液晶を駆動でき、画素スイッチング用TFT等の半導体素子における光リーク電流の影響を低減し、画像信号に含まれる階調データに応じて高品位で画像を表示できる。このようなデジタル駆動方式は、単結晶シリコン基板を用いて高速駆動が可能な半導体素子によって可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、SOQ(Silicon On Quartz)基板を用いて形成された液晶装置等の電気光学装置、及びそのような電気光学装置をライトバルブとして備えたプロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、複数の画素から構成される表示領域に縦横に配列された多数の走査線およびデータ線、並びにこれらの各交点に対応して多数の画素電極が基板上に設けられている。このような液晶装置は、例えば各画素に設けられた画素スイッチング用TFT(Thin Film Transistor)の動作、即ちオンオフを走査信号によって切り換えることによって、画像信号を各画素に供給するアクティブマトリクス駆動方式を採用しており、サンプルホールド回路、プリチャージ回路、走査線駆動回路、データ線駆動回路、検査回路等のTFTを構成要素とする各種の周辺回路も基板上に設けられる。各回路部を構成するTFT等の半導体素子は、例えば、基板上に形成されたポリシリコン層をパターニングすることによって加工された半導体層を含んでおり、当該半導体層にチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域が形成されている。
【0003】
サンプルホールド回路は、例えば、基板上に形成されたTFT等のスイッチング素子によって構成されたサンプリングスイッチを有しており、アナログ信号である画像信号をサンプリング信号に応じてサンプリングし、サンプリングされた画像信号を各データ線に供給する。データ線に供給された画像信号は、各画素に形成された画素スイッチング用TFTのスイッチング動作に応じて画素電極に供給され、表示領域に画像が表示される。
【0004】
このようにサンプルホールド回路によってサンプリングされる画像信号は、通常アナログ信号である。アナログ信号である画像信号を用いて液晶装置等の電気光学装置を駆動するアナログ駆動方式(アナログ階調方式)は、画像信号の電位の大きさに応じた画素電極の電位と、対向電極の電位との電位差によって画素の階調制御を行う駆動方式である。したがって、アナログ駆動方式によれば、基本的に各画素の階調は、画像信号の電位の大きさ(即ち、電位が連続的に設定可能なアナログ信号である駆動信号)によって設定されることになる。
【0005】
また、アナログ駆動方式として、直流電圧印加による液晶等の電気光学物質の劣化防止、表示画像におけるクロストークやフリッカの防止などのために、各画素電極に印加される電圧極性を所定規則で反転させる反転駆動方式が採用される場合もある。加えて、反転駆動方式の一例であって、画素電極に対向配置された対向電極及び画素電極の夫々の電位の極性を任意の基準電位を基準として相互に反転させることによって液晶の配向を規制するコモン反転駆動方式によれば、伝統的な反転駆動方式に比べて、各回路に印加される電圧を半減できる利点がある。
【0006】
この種の電気光学装置の駆動方法は、上述したアナログ信号である画像信号を用いて画像を表示する駆動方法(以下、アナログ駆動方式と称す。)の他に、デジタル信号である画像信号を用いて画像を表示するデジタル駆動方式もある。デジタル駆動方式とは、2つの電位(例えば、Low及びHigh)のみによって特定される2値信号(即ち、デジタル信号)である画像信号を用いて画像を表示する駆動方式をいう。このため、単純なデジタル駆動方式によれば、液晶等の電気光学物質が取り得る配向状態は、画像信号の電位に応じて2つの状態のみである。したがって、通常用いられるデジタル駆動方式は、上述した単純なデジタル駆動方式と、時分割階調方式或いは面積階調方式とを組み合わせることによって多階調の画像表示を可能としている。ここで、時分割階調方式とは、1フレームを分割してなる複数のサブフレームの夫々において、液晶に加える電圧の印加時間に重みをつけ、その選択によって階調表示を行う駆動方式をいう。また、面積階調方式とは、画素内にサブ画素を設け、各サブ画素の面積に重みを付けて、その選択により階調表示を行う方法である。このようなデジタル駆動方式によれば、アナログ駆動方式に比べて、画素スイッチング用TFT等の半導体素子に生じるリーク電流を低減でき、高品位の画像表示が可能となる。
【0007】
一方、画素スイッチング用TFT、及び周辺回路部を構成するTFT等の半導体素子の動作性能を高めるために、絶縁体層上に単結晶シリコン層からなる半導体層を形成し、その半導体層にトランジスタ素子等の半導体素子を形成するSOI(Silicon on Insulator)技術が知られている(特許文献1及び2参照。)。SOI技術によれば、半導体素子の高速化や低消費電力化、高集積化が可能となり、例えば、液晶装置等の電気光学装置の表示性能を高めることが可能である。また、SOI基板の製造技術を応用することによって、透明な石英基板(クォーツ)上に単結晶シリコン基板が形成されたSOQ(Silicon On Quartz)基板の開発も進められている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−243668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種の電気光学装置では、ポロシリコン層を用いて形成されたTFTを用いて画素回路を形成し、画像信号を2V乃至12Vのアナログ信号として供給した場合、画素回路或いは表示領域の周辺に形成された周辺回路に含まれるTFT等の半導体素子の素子特性のばらつきにより、フリッカ、画素の輝度ムラ、及び画像信号を供給する供給系列の違いによって発生する筋状の表示不良、及び液晶の焼き付き等の不具合が発生する虞がある。
【0010】
加えて、基板上に形成されたポリシリコン層を加工することによって当該基板上にTFT等の半導体素子を作り込んだ場合、上述したデジタル駆動方式の利点を生かすことが可能な動作速度を有する半導体素子を形成することは困難であり、デジタル駆動方式の利点を生かして高速且つ高品位の画像を表示できる電気光学装置を製造することが困難であった。したがって、アナログ駆動方式に比べて高品位の画像表示が可能となると考えられるデジタル駆動方式を電気光学装置に実践的に応用する発想が生じ得ない実情であった。
【0011】
しかしながら、本願発明者は、SOQ基板の製造プロセスの改善等により、ポリシリコンに比べて、動作速度の向上が期待できる高品位の単結晶シリコンを利用してTFT等の半導体素子を形成可能なSOQ基板を製造する技術が確立されつつあると考えている。
【0012】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、デジタル駆動方式を用いて高品位の画像を表示できる電気光学装置、及びそのような電気光学装置を具備してなるプロジェクタ等の電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、下地基板と単結晶シリコン基板とが絶縁層を介して貼り合わされた素子基板を備え、前記素子基板上に、単結晶シリコン層を半導体層とする半導体素子であって、フレームを分割する複数のサブフレーム毎にデジタル信号として供給された画像信号を前記素子基板上の表示領域を構成する複数の画素部の夫々に設けられた画素電極に供給する半導体素子が形成されている。
【0014】
本発明の第1の発明に係る電気光学装置によれば、素子基板は、例えば、石英基板、ガラス基板、或いはシリコン基板等である下地基板上に、単結晶シリコン基板を配置してなる、所謂SOQ基板である。
【0015】
画素電極は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜であり、素子基板上の表示領域にマトリクス状に配置された画素部毎に設けられている。
【0016】
半導体素子は、画素電極に電気的に接続されており、画像信号を当該画素電極に供給する。ここで、「電気的に接続されている」とは、他の回路或いは素子を介すことなく半導体素子が配線或いはコンタクトホール等の導電部を介して画素電極に直接電気的に接続されている場合のみをいうに限らず、配線或いは各種素子、若しくは回路を介して半導体素子及び画素電極が間接的に互いに電気的に接続されている広い意味をいう。したがって、本発明の第1の発明に係る電気光学装置では、半導体素子は、電気光学装置、或いは当該電気光学装置の外部に設けられた画像信号供給源から画像信号を画素電極に供給するための電気的な供給経路に設けられていればよい。
【0017】
半導体素子は、フレームを分割する複数のサブフレーム毎にデジタル信号として供給された画像信号を画素電極に供給する。画像信号は、デジタル信号であるため、画像信号が取り得る電位は2つの電位(例えば、High電位、及び当該High電位より相対的に低いLow電位)である。したがって、本発明の第1の発明に係る電気光学装置は、デジタル駆動方式によって駆動され、その駆動時には、画素部における階調がデジタル信号である画像信号に応じて制御される。このような画像信号は、半導体素子の動作に応じてサブフレーム毎に画素電極に供給されるため、デジタル駆動方式では、上述したアナログ駆動方式のようにフレーム毎に画像信号が供給される場合に比べて、駆動周波数が必然的に大きくなる。したがって、デジタル駆動方式では、画像信号を供給する半導体素子に要求される動作速度も、アナログ駆動方式に比べて格段に高くなる。
【0018】
そこで、本発明の第1の発明に係る電気光学装置によれば、単結晶シリコン基板の一部である半導体層を有する半導体素子を用いることによって、ポリシリコン等の半導体を用いる場合に比べて、高い動作速度を実現でき、デジタル駆動方式に応じて相対的に高い周波数で供給される画像信号を画素電極に供給可能である。
【0019】
加えて、単結晶シリコン基板の一部を半導体素子の構成要素にすることによって、膜質ばらつきが大きいポリシリコン等の半導体層を用いる場合に比べて、素子基板に形成される複数の半導体素子の素子特性のばらつきを低減でき、均一な表示性能を有する電気光学装置を量産することが可能となる。
【0020】
このように、本発明の第1の発明に係る電気光学装置によれば、半導体素子の動作速度を高め、且つ均一にすることが可能であり、デジタル駆動方式の利点を生かして、例えばフリッカ等の表示不良が低減された高品位の画像を表示できる。
【0021】
本発明の第2の発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、下地基板と単結晶シリコン基板とが絶縁層を介して貼り合わされた素子基板を備え、前記素子基板上に形成され、単結晶シリコン層を半導体層とする半導体素子であって、デジタル信号である画像信号を前記素子基板上の表示領域を構成する複数の画素部の夫々に設けられた画素電極に供給する半導体素子と、前記画素電極に対応するように配置された対向電極とを備え、
前記画像電極及び前記対向電極の夫々の電位は、所定の基準電位を基準として相互に逆の極性を有している。
【0022】
本発明の第2の発明に係る電気光学装置によれば、上述した本発明の第1の発明に係る電気光学装置と同様に、素子基板、画素電極及び半導体素子を有しており、ITO等の透明導電膜で形成された画素電極に対向するように配置された対向電極を有している。
【0023】
本発明の第2の発明に係る電気光学装置によれば、その駆動時に、画像電極及び対向電極の夫々は、所定の基準電位を基準として相互に逆の極性の電位を有している。より具体的には、例えば、対向電極に供給される対向電極電位と、画素電極に供給される画像信号に応じた電位とは、所定の基準電位を基準として互いに逆極性となるように供給される。したがって、対向電極に供給される対向電極電位を固定電位とし、当該固定電位を基準として画素電極の電位の極性を反転させる反転駆動方式を採用する場合に比べて、液晶等の電気光学物質に印加させる駆動電圧の大きさを変更することなく、半導体素子及び各種回路部に印加される電圧を半減させることが可能である。
【0024】
加えて、本発明の第2の発明に係る電気光学装置は、デジタル信号である画像信号を用いてデジタル駆動方式を採用するため、上述した電気光学装置と同様に、アナログ駆動方式に比べて高品位の画像を表示できる。
【0025】
本発明の第1及び第2の発明に係る電気光学装置の一の態様では、前記半導体素子は、前記半導体層にチャネル領域を含むトランジスタ素子であってもよい。
【0026】
この態様によれば、トランジスタ素子は、単結晶シリコンを用いて構成されたチャネル領域を有しているため、ポリシリコン等の半導体層にチャネル領域を形成する場合に比べて、チャネル領域における電子等の電荷の移動度が高められている。したがって、デジタル信号である画像信号がサブフレームの周期に応じて高周波数で供給された場合でも、トランジスタ素子の動作速度は、当該画像信号の供給タイミングに追従可能である。
【0027】
この態様では、前記トランジスタ素子は、前記画素電極に電気的に接続された画素スイッチング用トランジスタであってもよい。
【0028】
この態様によれば、例えば、ゲートに印加された走査信号に応じて画素スイッチング用トランジスタがオンオフされ、データ線を介して供給された画像信号を画素電極に供給可能である。
【0029】
この態様では、前記画素スイッチング用トランジスタに電気的に接続されており、前記画像信号に応じた画素電極電位を保持する保持容量とを備えていてもよい。
【0030】
この態様によれば、画素スイッチング用トランジスタ素子及び保持容量によって、所謂
DRAM(Dynamic Random Access Memory)を構成できる。保持容量は、サブフレーム毎に供給される画像信号に応じた画素電極電位を当該サブフレーム期間において維持できるため、サブフレーム毎に画像信号に応じた駆動電圧を液晶等の電気光学物質に印加し続けることが可能である。したがって、この態様によれば、サブフレーム期間において駆動電圧が低下することによって生じる画質の劣化を低減可能である。加えて、後述するSRAMに比べて回路構成を簡便、且つ小型化できるため、画素において実質的に光が透過する領域の割合を示す開口率を高めることが可能である。
【0031】
本発明に係る第1及び第2の発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記トランジスタ素子は、前記画素電極に電気的に接続されたSRAM(Static Random Access Memory)の一部を構成していてもよい。
【0032】
この態様によれば、SRAMは、上述したDRAMに比べて高速駆動が可能であるため、例えば、サブフレーム数を増大させ、デジタル信号である画像信号が供給される周期が短くなった場合でも、SRAMの動作速度は、当該画像信号の供給タイミングに追従できる。
【0033】
本発明に係る第1及び第2の発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記トランジスタ素子は、前記素子基板上における前記表示領域の周辺に位置する周辺領域に配置された周辺回路部に含まれていてもよい。
【0034】
この態様によれば、例えば、画像信号をサンプリングするためのサンプリング信号を生成するデータ線駆動回路、サンプリング信号に応じて画像信号線から画像信号をサンプリングし、データ線に供給するサンプリング回路、或いは画素スイッチング用TFTのオンオフを切り換えるための走査信号を走査線に供給する走査線駆動回路等の各種回路部に含まれるトランジスタ素子を単結晶シリコン基板の一部を用いて形成できる。
【0035】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0036】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、単板式或いは複板式のプロジェクタ等の投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、上述した電気光学装置を電子ビューファインダ(EVF;Electrical View Finder)に応用したデジタルカメラ等の電子機器も実現可能である。
【0037】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明の第1及び第2の発明に係る電気光学装置、及びそのような電気光学装置を具備してなる、本発明に係る電子機器の各実施形態を説明する。
【0039】
<第1実施形態>
先ず、図1乃至図9を参照しながら、本発明の第1の発明に係る電気光学装置の実施形態を説明する。
【0040】
<1−1:電気光学装置の全体構成>
図1及び図2を参照しながら本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。本実施形態では、電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例に挙げる。
【0041】
図1及び図2において、液晶装置1では、本発明の「素子基板」の一例であるTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20には、複数の画素部が設けられる、本発明の「表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0042】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
【0043】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。尚、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。言い換えれば、本実施形態においては特に、TFTアレイ基板10の中心から見て、この額縁遮光膜53より以遠が周辺領域として規定されている。
【0044】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0045】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0046】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング素子としてのTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶を含む液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0047】
TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、或いはガラス基板等の透明基板を下地基板として、当該下地基板と単結晶シリコン基板とを絶縁層を介して貼り合わせたSOQ基板を用いて形成されている。より具体的には、後述するように、TFTアレイ基板10は、SOQ基板に含まれる単結晶シリコン基板に各種回路及び素子が形成されてなる。対向基板20もTFTアレイ基板10と同様に透明基板を用いて形成されている。
【0048】
TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。例えば、画素電極9aはITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性膜からなり、配向膜は、ポリイミド膜などの有機膜である。配向膜は斜方蒸着法を用いて形成された無機配向膜であってもよい。
【0049】
対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性膜からなる。配向膜22は、配向膜16と同様の材料及び膜形成方法によって形成されている。
【0050】
対向基板20には、格子状又はストライプ状の遮光膜を設けるようにしてもよい。このような構成を採ることで、TFTアレイ基板10に設けられたTFT等の半導体素子を遮光できる。
【0051】
画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成されている。液晶層50は、画素電極9aから電界が印加されていない状態で配向膜により所定の配向状態をとる。
【0052】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0053】
<1−2:電気光学装置の電気的構成>
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の電気的構成を説明する。図3は、液晶装置1の電気的構成を、当該液晶装置1に各種信号を供給する信号供給部の電気的構成と共に示したブロック図である。
【0054】
図3において、液晶装置1は、複数の画素部10pを含む表示パネル部100p、走査線駆動回路104、及びデータ線駆動回路101を備えている。データ線駆動回路101は、シフトレジスタ101a、第1ラッチ回路101b及び第2ラッチ回路101cを有している。液晶装置1は、画像信号源201、デジタル信号処理IC202、フレームメモリ203及びフレーム分割回路204からなる信号供給回路に電気的に接続されている。
【0055】
表示パネル部100pは、データ線駆動回路101に電気的に接続された複数のデータ線6a、及び走査線駆動回路104に電気的に接続された複数の走査線11aを有している。データ線6a及び走査線11aは、表示パネル部100の画像表示領域10aにおいて図中縦横に沿って相互に交差している。複数の画素部10pの夫々は、走査線11a及びデータ線6aの交差に対応してマトリクス状に画像表示領域10aに配置されている。
【0056】
画素部10pに含まれる液晶は、データ線6aを介してデータ線駆動回路101から供給された画像信号に応じて駆動される。後述するように、液晶装置1は、デジタル駆動方式を採用しているため、各画素における光の透過率、即ち輝度は、1フレームを分割する複数のサブフィールド毎に供給される画像信号に含まれる階調データによって規定される。
【0057】
画像信号源201は、デジタル信号処理IC202に水平同期信号HSYNC、垂直同期信号VSYNC、ドットクロックDOTCLK、アナログ信号である画像信号DIV−aを供給する。
【0058】
デジタル信号処理IC202は、タイミング制御回路(不図示)を含む制御部を含んでおり、最小単位のクロックであり各画素を走査するためのドットクロックDOTCLKに基づいて、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXinv、YスタートパルスDY及びXスタートパルスDX、並びに複数系列のイネーブル信号ENB1及びENB2、並びにデジタル信号に変換された画像信号DIV−dを生成する。デジタル信号処理IC202は、水平同期信号HSYNC、垂直同期信号VSYNC、及びドットクロックDOTCLKをフレーム分割回路204に供給すると共に、画像信号DIV−dをフレームメモリ203に供給する。フレーム分割回路204は、フレームメモリ203から画像信号DIV−dを読み出すと共に、各フレームを分割する複数のサブフレームに対応する画像信号DIV−d´を不図示の画像信号線を介してデータ線駆動回路101に供給する。
【0059】
加えて、フレーム分割回路204は、シフトレジスタ101aにXクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXinv、及びXスタートパルスDXを供給すると共に、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、YスタートパルスDY、並びにイネーブル信号ENB1及びENB2を一対の走査線駆動回路104に供給する。
【0060】
第1ラッチ回路101b及び第2ラッチ回路101cは、シフトレジスタ101aから供給された転送信号Pに応じて、サンプリング信号を生成し、当該サンプリング信号に応じて画像信号DIV−d´をサンプリングし、データ線6a毎に画像信号Si(i=1,2,・・・,n)を供給する。
【0061】
走査線駆動回路104は、ドットクロックDOTCLK及び垂直同期信号VSYNCに応じたタイミングで、走査信号ScL1〜ScLnを走査線11aに送り出す。走査信号ScL1〜ScLnによって、ある1本の走査線11aに電気的に接続された画素部10pに画像信号Si(i=1,2,・・・,n)が供給可能となる。
【0062】
<1−3:画素部の電気的な接続構成>
次に、図4を参照しながら、液晶装置1の画素部の電気的な接続構成を詳細に説明する。図4は、液晶装置1の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0063】
図4において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部10pの夫々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0064】
TFT30のゲートに走査線11aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。
【0065】
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間、即ちサブフィールドに対応する期間だけ保持される。なお、各画素部10pにおける透過率、即ち輝度は、画像信号Snが供給されたサブフィールド数によって規定される。ノーマリーホワイトモードであれば、各フレームにおいて画素に供給された画像信号の時間幅、即ちサブフィールド数に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、ノーマリーホワイトとは逆に透過率が増加され、全体として液晶装置1から画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に保持容量70が付加されている。したがって、画素部10pは、TFT30及び保持容量70からなるDRAMを有していることになり、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラストやフリッカといった表示特性の向上が可能となる。
【0066】
加えて、TFT30及び保持容量70からなるDRAMによれば、SRAMに比べてサイズを小さくできるため、SRAMを設ける場合に比べて画素の開口率を大きくできる。尚、液晶装置1は、保持容量70及びTFT30の代わりに、単結晶シリコンを用いて形成された半導体層を有するTFTを複数備えたSRAMが設けられていてもよい。SRAMは、DRAMに比べて動作速度が高いため、デジタル駆動方式の利点をより一層生かすことが可能である。
【0067】
<1−4:電気光学装置の駆動方法>
次に、図5及び図6を参照しながら、液晶装置1の駆動方法を説明する。図5は、1フレーム期間において画素部に印加される駆動電圧の理想波形(図5(a))、アナログ駆動方式において画素部に印加される駆動電圧の波形(図5(b)、及び液晶装置1が採用するデジタル駆動方式において画素部に印加される駆動電圧の波形(図5(c)を比較した概念図である。
【0068】
先ず、図5を参照しながら、画素部に印加される駆動電圧の波形について検討する。図5において、対向電極電位Vcomが固定電位である場合、図5(a)に示すように、画像信号に応じて任意の画素部に印加された画素電極電位Vsigは、理想的には1フレーム期間で一定である。画素部に含まれる液晶には、画素電極電位Vsig及び対向電極電位Vcomの差である駆動電圧Viが印加され、1フレーム期間に渡って駆動電圧Viに応じた透過率、即ち輝度が当該画素部において維持される。
【0069】
一方、図5(b)に示すように、アナログ駆動方式によれば、画素スイッチング用TFTにおいて発生する光リーク電流の影響等により、1フレーム期間において液晶に印加される駆動電圧が低下してしまい、当該画素部に供給された画像信号に応じた透過率、即ち輝度が実現されないことが困難となる。より具体的には、1フレーム期間において、時間経過に伴い駆動電圧ViよりΔViだけ低下してしまい、駆動電圧Viに応じた透過率で画像が表示されないことになる。
【0070】
そこで、図5(c)に示すように、本実施形態に係る液晶装置1によれば、1フレームを分割する複数のサブフレーム毎にHighおよびLowの一方の電位を有するデジタル信号である画像信号に応じて、理想波形に近い波形を有する駆動電圧Viを各画素部の液晶に印加できる。したがって、画像信号に応じた駆動電圧で液晶を駆動でき、画素スイッチング用TFT等の半導体素子における光リーク電流の影響を低減し、画像信号に含まれる階調データに応じて高品位で画像を表示できる。尚、図5(c)では、サブフィールド毎に供給された画像信号Snの電位Vsigは全てHighの電位を有しているため、例えば、ノーマリーブラックモードでは、画素の透過率、即ち輝度は最大となる。
【0071】
次に、図6を参照しながら、デジタル信号である画像信号Snが画素部に供給されるタイミングを説明する。図6は、16階調(4ビット)で画素部の階調が制御される場合において、走査信号に応じて画像信号が画素部に供給されるタイミングを示したタイミングチャートである。ここでは、走査線の本数が27本である場合を例に挙げ、1つのフレームを分割する複数のサブフレームのうち1から7サブフレーム(SF)までの範囲において画像信号が画素部に供給されるタイミング(図中黒丸で示したタイミング)を示している。
【0072】
図6に示すように、1SF期間において、27本の走査線に順位走査信号が供給され、当該走査信号が供給された画素部に画像信号が供給される。そして、同じ手順で7SFまで順次走査信号が供給され、画素部に画像信号が供給される。これにより、図5(c)に示したように、サブフレーム毎に画素部に画像信号が供給され、アナログ駆動方式に比べて高品位の画像が表示可能になる。
【0073】
<1−5:電気光学装置の具体的構成>
次に、図7乃至図9を参照しながら、上述の動作が実現される液晶装置1の具体的な構成を説明する。
【0074】
図7乃至図9において、上述の回路要素及び画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に形成されている。TFTアレイ基板10は、例えば、ガラス基板、或いは石英基板と単結晶シリコン基板とを絶縁層を介して貼り合わせたSOQ基板を用いて形成されており、例えばガラス基板や石英基板からなる対向基板20と対向配置されている。回路要素は画素電極9aを駆動するために設けられ、ここでは、TFTアレイ基板10の直上から画素電極9aの直下までの範囲内に積層された、TFT30から第4層間絶縁膜44までを指している(図9参照)。画素電極9a(図8中、太い点線9a´で輪郭が示されている)は縦横に区画配列された画素の各々に配置され、その境界にデータ線6a及び走査線11aが格子状に配列するように形成されている(図7及び図8参照)。
【0075】
各回路要素を構成するパターニングされた導電膜は、ゲート電極3aを含む第1層、保持容量70の固定電位側容量電極を含む第2層、データ線6a等を含む第3層、容量配線400等を含む第4層からなる。第1層からTFTアレイ基板10までには、TFT30が形成される前段階で単結晶シリコン基板が形成されており、当該単結晶シリコン基板を所定の形状にパターニングすることによってTFT30の半導体層1aが形成されている。
第1層−第2層間には第1層間絶縁膜41、第2層−第3層間には第2層間絶縁膜42、第3層−第4層間には第3層間絶縁膜43、第4層と画素電極9aとの間には第4層間絶縁膜44が夫々設けられ、前述の各要素間が短絡することを防止している。尚、このうち、第1層から第2層が下層部分として図7に示され、第3層、第4層及び画素電極9aが上層部分として図8に示されている。
【0076】
<第1層の構成−TFT等−>
第1層は、TFT30及び中継電極719で構成されている。TFT30は、例えばLDD(Lightly Doped Drain)構造とされ、ゲート電極3a、半導体層1a、ゲート電極3aと半導体層1aを絶縁するゲート絶縁膜を含んだ絶縁膜2を備えている。ゲート電極3aは、例えば導電性ポリシリコンで形成される。半導体層1aは、チャネル領域1a´、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eからなり、TFTアレイ基板10上に当初形成されていた単結晶シリコン基板を加工することによって形成されている。したがって、TFT30によれば、ポリシリコン等の半導体層を用いてTFT30を形成する場合に比べて、デジタル駆動方式に対応しうる高速駆動が可能になる。
【0077】
尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極3aをマスクとして不純物を高濃度に打ち込んで高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。また、中継電極719は、例えばゲート電極3aと同一膜として形成される。加えて、データ線駆動回路部101等の周辺回路部に含まれるTFT等の半導体素子も、単結晶シリコン基板を加工して形成されていてもよい。
【0078】
TFT30のゲート電極3aは、コンタクトホール12cvを介して走査線11aに電気的に接続されている。尚、第1層と同層、或いは異なる層には走査線11aが形成されている。走査線11aは、図7のX方向に沿って延びる本線部と、データ線6a或いは容量配線400が延在する図7のY方向に延びる突出部とからなる形状にパターニングされている。このような走査線11aは、例えば導電性ポリシリコン、単結晶シリコン、或いはTi、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド又はこれらの積層体等により形成することができる。
【0079】
<第2層の構成−保持容量等−>
第2層は、保持容量70で構成されている。保持容量70は、容量電極300と下部電極71とが誘電体層を介して対向配置された構成となっている。容量電極300は、容量配線400に電気的に接続されている。下部電極71は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aの夫々に電気的に接続されている。
【0080】
下部電極71と高濃度ドレイン領域1eとは、第1層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール83を介して接続されている。また、下部電極71と画素電極9aとは、コンタクトホール881、882、804、及び中継電極719、第2中継電極6a2、第3中継電極402により各層を中継し、コンタクトホール89において電気的に接続されている。
【0081】
このような容量電極300、及び下部電極71には、例えば導電性のポリシリコンが用いられ、誘電体層には酸化シリコンが用いられる。第1層間絶縁膜41は、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)によって形成されている。その他、第1層間絶縁膜41には、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。
【0082】
尚、この場合の保持容量70は、図7に示すように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する画素領域に至らないように(遮光領域内に収まるように)形成されているので、画素の開口率が比較的大きく維持されている。
【0083】
<第3層の構成−データ線等−>
第3層は、データ線6aで構成されている。データ線6aは、下から順にアルミニウム、窒化チタン、窒化シリコンの三層膜として形成されている。窒化シリコン層は、その下層のアルミニウム層と窒化チタン層を覆うように少し大きなサイズにパターニングされている。また、第4層には、データ線6aと同一膜として、容量配線用中継層6a1及び第2中継電極6a2が形成されている。これらは、図8に示すように互いに分断されるように形成されている。
【0084】
データ線6aは、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。
【0085】
容量配線用中継層6a1は、第2層間絶縁膜42に開孔されたコンタクトホール801を介して容量電極300と電気的に接続され、容量電極300と容量配線400との間を中継している。容量配線用中継層6a2は、前述したように、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール882を介して中継電極719に電気的に接続されている。このような層間絶縁膜42は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成することができる。
【0086】
<第4層の構成−容量配線等−>
第4層は、容量配線400及び第3中継電極402により構成されている。容量配線400は、表示パネルの画像表示領域の周囲にまで延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。図8に示すように、容量配線400は、図中X方向及びY方向の夫々に沿って延在する格子状に形成され、X方向に延在する部分には、第3中継電極402の形成領域を確保するために切り欠きが設けられている。また、容量配線400は、その下層のデータ線6a、走査線11a、TFT30等を覆うように、これら回路要素の構造よりも幅広に形成されている。これにより、各回路要素は遮光され、入射光を反射させて投射画像における画素の輪郭がぼやける等の悪影響が防止されている。
【0087】
更に、容量配線400のX方向延在部分とY方向延在部分とが丁度交差する角部は、略三角形の庇部がわずかに突き出すような形状となっている。この庇部により、TFT30の半導体層1aに対する光の遮蔽を効果的に行うことができる。即ち、半導体層1aに対して斜め上方から進入する光を、庇部が反射又は吸収することにより、TFT30における光リーク電流の発生を抑制し、フリッカ等のない、より高品質な画像を表示することが可能となる。
【0088】
容量配線400は、第3層間絶縁膜43に開孔されたコンタクトホール803を介して、容量配線用中継層6a1と電気的に接続されている。また、第4層には、容量配線400と同一膜として、第3中継電極402が形成されている。第3中継電極402は、前述のように、コンタクトホール804及びコンタクトホール89を介して、第2中継電極6a2及び画素電極9a間を中継している。尚、これら容量配線400及び第3中継電極402は、例えばアルミニウム、窒化チタンを積層した二層構造となっている。
【0089】
第4層の上には、全面に第4層間絶縁膜44が形成されている。第4層間絶縁膜44には、画素電極9a及び第3中継電極402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されている。
【0090】
以上、説明したように、本実施形態に係る液晶装置1によれば、TFTアレイ基板10の一部として当初形成されていた単結晶シリコン基板を用いて、TFTアレイ基板10上に設けられるべきTFT30等の半導体素子を形成することによって、デジタル駆動方式に対応しうるTFT30等の半導体素子を形成可能である。このような半導体素子によれば、アナログ駆動方式に比べて、駆動周波数が高いデジタル駆動方式によって高品位の画像を表示可能である。
【0091】
<第2実施形態>
次に、図10及び図11を参照しながら、本発明の第2の発明に係る電気光学装置の実施形態を説明する。本実施形態に係る電気光学装置は、上述の第1実施形態に係る電気光学装置に比べて、対向電極電位の電位と、画素電極電位の電位とが基準電位を基準として互いに逆極性となるように駆動される点に特徴を有している。したがって、以下で説明する本実施形態に係る液晶装置1Aのうち第1実施形態に係る液晶装置1と共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0092】
図10を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1Aの電気的な構成を説明する。図10は、液晶装置1Aの電気的な構成を当該液晶装置1Aに各種信号を供給する信号供給部の電気的な構成と共に示したブロック図である。
【0093】
図10において、データ線駆動回路401は、シフトレジスタ401a、第1ラッチ回路401b及び第2ラッチ回路401cを有しており、図11に示す基準電位V0を基準として対向電極電位Vcomと逆極性の画像信号Sn´がデータ線6aに供給されるように、対向電極電位に対して画像信号DIV−d´の極性を反転させた後、データ線6aに供給する。
【0094】
尚、液晶装置1Aは、第1実施形態に係る液晶装置1と同様に、単結晶シリコン基板を用いて形成された画素スイッチング用素子を有している。また、液晶装置1Aでは、データ線駆動回路401に含まれるTFT等の半導体素子が単結晶シリコン基板を用いて形成されていてもよい。
【0095】
次に、図11を参照しながら、画素部に供給される画像信号Si´(i=1,2,・・・,n)の電位と、対向電極に供給される対向電極電位との相対的な電位の高低関係を説明する。図11は、対向電極に供給される対向電極電位信号(図中、対向電極電位Vcom1で示す波形)及び、画像信号Si´(図中画素電極電位Vsig1で示す波形)を概念的に示したタイミングチャートである。
【0096】
図11において、液晶装置1Aによれば、その駆動時に、画像電極9a及び対向電極21の夫々は、所定の基準電位V0を基準として相互に逆の極性の電位(画素電極電位Vsig1及び対向電極電位Vcom1)が供給される。したがって、対向電極21に供給される対向電極電位を固定電位とし、当該固定電位を基準として画素電極9aの電位の極性を反転させる反転駆動方式を採用する場合に比べて、液晶等の電気光学物質に印加させる駆動電圧の大きさを変更することなく、半導体素子及び各回路部に印加される電圧を半減させることが可能である。より具体的には、駆動電圧Vi1を液晶に印加する際に、画素電極9aの電位を、従来の反転駆動方式を採用した場合に比べて半減させることができる。これにより、画像信号によって液晶装置1Aの各回路部が加わる負荷を低減できる。加えて、液晶装置1Aは、デジタル駆動方式を採用しているため、アナログ駆動方式を採用した場合に比べてフリッカ等の表示不良が低減された高品位の画像を表示可能である。
【0097】
<電子機器>
次に、以上詳細に説明した電気光学装置を電子機器に適用する場合について説明する。
【0098】
ここでは、上述した電気光学装置たる液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図12は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。図12に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶装置100R、100Bおよび100Gに入射される。液晶装置100R、100Bおよび100Gの構成は上述した液晶装置と同等であり、それぞれにおいて画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号が変調される。これらの液晶装置によって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。ダイクロイックプリズム1112では、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。これにより各色の画像が合成され、投射レンズ1114を介して、スクリーン1120等に高品位のカラー画像が投写される。
【0099】
以上では、本発明の第1及び第2の発明に係る電気光学装置の一具体例として液晶装置を挙げて説明したが、本発明の第1及び第2の発明に係る電気光学装置は、その他にも例えば電子ペーパなどの電気泳動装置や、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等として実現することができる。また、本発明に係る電気光学装置は、先に説明した複板式のプロジェクタの他にも、単板式のプロジェクタ、テレビジョン受像機や、ビューファインダ型或いはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種の電子機器に適用可能である。また、本発明に係る電気光学装置は、デジタルカメラの電子ビューファインダにも応用可能である。
【0100】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及びそのような電気光学装置を具備してなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置を各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】第1実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成を、当該電気光学装置に各種信号を供給する信号供給部の電気的な構成と共に示したブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【図5】1フレーム期間において画素部に印加される駆動電圧の波形を示した概念図である。
【図6】走査信号に応じて画像信号が画素部に供給されるタイミングを示したタイミングチャートの一例である。
【図7】第1実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成を表す部分平面図(その1)である。
【図8】第1実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成を表す部分平面図(その2)である。
【図9】図7及び図8のIX−IX´線断面図である。
【図10】第2実施形態に係る電気光学装置の電気的な構成を、当該電気光学装置に各種信号を供給する信号供給部の電気的な構成と共に示したブロック図である。
【図11】第2実施形態に係る電気光学装置において画素部に印加される駆動電圧の波形を示した概念図である。
【図12】本発明に係る電子機器の一実施形態である液晶プロジェクタの構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1,1A・・・液晶装置、9a・・・画素電極、10・・・TFTアレイ基板、20・・・対向基板、21・・・対向電極、30・・・TFT、50・・・液晶層、70・・・保持容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板と単結晶シリコン基板とが絶縁層を介して貼り合わされた素子基板を備え、
前記素子基板上に、単結晶シリコン層を半導体層とする半導体素子であって、フレームを分割する複数のサブフレーム毎にデジタル信号として供給された画像信号を前記素子基板上の表示領域を構成する複数の画素部の夫々に設けられた画素電極に供給する半導体素子が形成されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
下地基板と単結晶シリコン基板とが絶縁層を介して貼り合わされた素子基板を備え、
前記素子基板上に形成され、単結晶シリコン層を半導体層とする半導体素子であって、デジタル信号である画像信号を前記素子基板上の表示領域を構成する複数の画素部の夫々に設けられた画素電極に供給する半導体素子と、
前記画素電極に対応するように配置された対向電極とを備え、
前記画像電極及び前記対向電極の夫々の電位は、所定の基準電位を基準として相互に逆の極性を有すること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
前記半導体素子は、前記半導体層にチャネル領域を含むトランジスタ素子であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記トランジスタ素子は、前記画素電極に電気的に接続された画素スイッチング用トランジスタであること
を特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記画素スイッチング用トランジスタに電気的に接続されており、前記画像信号に応じた画素電極電位を保持する保持容量とを備えたこと
を特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記トランジスタ素子は、前記画素電極に電気的に接続されたSRAM(Static Random Access Memory)の一部を構成していること
を特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記トランジスタ素子は、前記素子基板上における前記表示領域の周辺に位置する周辺領域に配置された周辺回路部に含まれていること
を特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の電気光学装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−145484(P2008−145484A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329223(P2006−329223)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】