説明

電気自動車およびプログラム

【課題】様々な路面や走行条件下で安定した走行性を確保し、旋回性能を改善することができる電気自動車およびプログラムを提供する。
【解決手段】この電気自動車1は、前輪側の左右輪に第1の差動装置4fを介して制駆動力を伝達する第1の電気モータ3fと、後輪側の左右輪に第2の差動装置4rを介して制駆動力を伝達する第2の電気モータ3rと、第1および第2の電気モータ3f、3rの制駆動力を制御する制御部とを備え、第1および第2の差動装置4f、4rは、制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪を2つの電気モータで独立に駆動する電気自動車およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4輪それぞれをモータにより駆動する電気自動車や前後輪をそれぞれモータで駆動する電気自動車が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1の電気自動車は、4輪それぞれを駆動する4つのモータと、Z軸の回りの回転加速度、すなわち車体の旋回速度を検出するヨーレートセンサと、ヨーレートセンサによって検出された車体の旋回速度に基づいて操舵角に応じた旋回加速度が得られるように4つのモータのトルクを制御する制御装置とを備える。
【0004】
特許文献2の電気自動車は前後輪のスリップ率に応じて前後輪駆動トルクを制御する制御装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−184911号公報
【特許文献2】特開2008−228407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の電気自動車によれば、4輪の各モータを独立に制御するため、車両安定性に欠けるという問題や、特許文献2の電気自動車によれば、車両直進時の横風等の外乱発生時は、前後輪の制駆動力制御だけでは、車両の乱れが修正できない、また、旋回時の路面及び走行条件の変化が大きい場合は、前後輪駆動力の制御だけでは、操舵角に応じた旋回加速度に近づけることが難しいという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、様々な路面や走行条件下で安定した走行性を確保し、旋回性能を改善することができる電気自動車およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、前輪側の左右輪に第1の差動装置を介して制駆動力を伝達する第1の電気モータと、後輪側の左右輪に第2の差動装置を介して制駆動力を伝達する第2の電気モータと、前記第1および第2の電気モータの制駆動力を制御する制御部とを備え、前記第1および第2の差動装置の一方の差動装置は、前記制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する電気自動車を提供する。
【0009】
また、本発明の他の態様は、上記目的を達成するため、前輪側の左右輪に第1の差動装置を介して制駆動力を伝達する第1の電気モータと、後輪側の左右輪に第2の差動装置を介して制駆動力を伝達する第2の電気モータと、前記第1および第2の差動装置の一方の差動装置は、前記制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する電気自動車に含まれるコンピュータに、操舵角に応じた車体の向きとなるように、前記第1および第2の電気モータの制駆動力、および動力配分比率の制御が可能な前記差動装置の動力配分比率を制御するステップを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な路面や走行条件下で安定した走行性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電気自動車の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図2は、制御装置を機能的に示すブロック図である。
【図3】図3は、駆動力および制動力とスリップ率との関係を示す図である。
【図4】図4は、電気自動車における制動力の前輪及び後輪ヘの分配方法を説明するための図である。
【図5】図5は、直進性制御を説明するための図である。
【図6】図6(a)は、駆動時に車体が横方向に動こうとしている状態を示す平面図、図6(b)は、駆動時に車体が旋回しようとしている状態を示す平面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、駆動時の旋回制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る電気自動車の構成を概念的に示すブロック図である。なお、同図では、構成要素の位置が前輪側か後輪側か、前輪側の右側か左側か、後輪側の右側か左側かを示す付加記号f、r、fr、fl、rr、rlを構成要素に付している。また、構成要素の位置を特に区別する必要がない場合には、上記付加記号や位置を示す「前輪用」、「後輪用」の語を省略することもある。
【0013】
この電気自動車1は、前輪2fr、2flを第1の差動装置としての前輪用差動装置4fおよび車軸5fr、5flを介して駆動する第1の電気モータとしての前輪用モータ3fと、後輪2rr、2rlを第2の差動装置としての後輪用差動装置4rおよび車軸5rr、5rlを介して駆動する第2の電気モータとしての後輪用モータ3rと、電気自動車1の駆動エネルギー源としての電源部7と、電源部7からの電力を交流電力に変換する前輪用インバータ8fおよび後輪用インバータ8rと、目標トルクに応じた信号をインバータ8f、8rに出力する第1の駆動回路としての前輪用駆動回路9fおよび第2の駆動回路としての後輪用駆動回路9rと、駆動回路9f、9rに指令信号を出力して前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rを互いに独立に制御する制御装置10とを備えた、前後輪独立駆動型電気自動車である。
【0014】
また、この電気自動車1は、運転者が操作するアクセルペダル12、ブレーキペダル13、および前進や後進を指定するためのシフトレバー14等の操作手段と、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rの回転数をそれぞれ検出するエンコーダ16f、16rと、車軸5fr、5fl、5rr、5rlの回転を制動する機械ブレーキ18fr、18fl、18rr、18rlと、車体25の前方側に設けられた2つのカメラ20fr、20rlと、車体25の後方側に設けられたカメラ21と、アクセルペダル12の踏み込み量を検出するアクセルセンサ22と、ブレーキペダル13の踏み込み量を検出するブレーキセンサ23と、シフトレバー14の位置を検出するシフトセンサ24と、車体25の加速度を検出する加速度センサ(加速度検出部)26と、モータ3f、3rの温度をそれぞれ検出する温度センサ27f、27rと、車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ28fr、28fl、28rr、28rlと、ステアリングホイール19の操舵角を検出する操舵角センサ(操舵角検出部)29とを備える。
【0015】
なお、本明細書において、「電気自動車」は、前輪および後輪を駆動する電気モータを有する自動車や、車輪の動力源として電気モータとエンジンの両方を有し、電気モータによる回生制動が可能なハイブリッドカーを含む概念である。ここで、「自動車」とは乗用自動車に限らず、バスや貨物自動車を含む概念であり、普通車、大型車、特大車を問わない。また、本明細書において、「制駆動力」は、自動車を減速させる制動力と、自動車を加速させる駆動力の両方を意味する場合や一方のみを意味する場合がある。
【0016】
次に、上記各部の詳細を説明する。
【0017】
(電源系)
電源部7は、バッテリ70と、前輪用平滑コンデンサ71fと、後輪用平滑コンデンタ71rと、前輪用平滑コンデンサ71fの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72fと、後輪用平滑コンデンサ71rの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72rと、バッテリ70の蓄電容量を検出するバッテリ容量センサ73とを備える。
【0018】
バッテリ70は、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rを駆動するための電力を出力することができる高電圧バッテリである。なお、電気自動車1の駆動エネルギー源として、バッテリ70の他に、乾電池等の一次電池、燃料電池等を用いてもよい。
【0019】
(駆動系)
前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rは、例えば同期モータ(Synchronous Motor)、誘導モータ(Induction Motor)等の各種のモータを用いることができる。前輪側および後輪側それぞれにおいて、モータ3の回転は、差動装置4を介して車軸5に伝達される。車軸5は車輪2と一体的に回転する。すなわち、電気自動車1は、前輪2fr、2flと、後輪2rr、rlを互いに独立に制御可能に前輪2fr、2flおよび後輪2rr、rlに対応して2つのトルク発生源を有している。なお、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rが発生する出力トルク(モータ容量)は、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
【0020】
インバータ8は、バッテリ70からの電力を交流電力に変換し、駆動回路9からの信号に応じた電流をモータ3に出力してモータ3を駆動する。また、インバータ8は、モータ3により発電された交流電力を直流電力に変換してコンデンサ71f、71rを介してバッテリ70を充電する。
【0021】
前輪用駆動回路9fは、前輪用モータ3fの1次巻線の電流を検出する電流センサ15a、15b、15cからの電流検出信号を受信する。後輪用駆動回路9rは、後輪用モータ3rの1次巻線の電流を検出する電流センサ17a、17b、17cからの電流検出信号を受信する。駆動回路9f、9rは、制御装置10から指令された目標トルクに応じた信号をインバータ8に出力する。
【0022】
差動装置4f、4rは、前輪側の車軸5fr、5flへの制駆動力の配分率、および後輪側の車軸5rr、5rlへの制駆動力の配分率を制御装置10により制御可能な機構を備えたものである。前輪用モータ3fの制駆動力は、制御装置10により制御された配分率で前輪用差動装置4fにより右後前輪2fr及び左前輪2flに配分される。また、後輪用モータ3rの制駆動力は、制御装置10により制御された配分率で後輪用差動装置4rにより右後輪2rr及び左後輪2rlに配分される。
【0023】
(センサ系)
エンコーダ16f、16rは、前輪側および後輪側のそれぞれにおいて、モータ3の回転数を検出し、検出した回転数に応じた信号を制御装置10に出力する。
【0024】
アクセルセンサ22は、アクセルペダル12の踏み込み量を検出し、検出した踏み込み量に応じた信号xaを制御装置10に出力する。
【0025】
ブレーキセンサ23は、ブレーキペダル13の踏み込み量を検出し、検出した踏み込み量に応じた信号xbを制御装置10に出力する。
【0026】
シフトセンサ24は、シフトレバー14の位置を検出し、検出した位置に応じた信号S制御装置10に出力する。
【0027】
加速度センサ26は、車体25の推進前後方向、横方向、重心軸回りの回転方向(旋回方向)の3方向の加速度a、a、aθを検出する3軸加速度センサであり、検出したそれぞれの加速度a、a、aθに応じた信号を制御装置10に出力する。
【0028】
車輪速センサ28fr、28fl、28rr、28rlは、車輪の回転速度ωを検出し、検出した回転速度ωに応じた信号を制御装置10に出力する。
【0029】
操舵角センサ29は、ステアリングホイール19の操舵角γを検出し、検出した操舵角γに応じた信号を制御装置10に出力する。
【0030】
電圧センサ72f、72rは、コンデンサ71f、71rの電圧(インバータ入力電圧)を検出し、検出したインバータ入力電圧に応じた信号を制御装置10に出力する。
【0031】
バッテリ容量センサ73は、バッテリ70の蓄電容量(残容量)を検出し、検出した蓄電容量に応じた信号を制御装置10に出力する。バッテリ容量センサ73は、例えば、バッテリ端子電圧(オープン電圧)に基づいて求める方法、バッテリ内部抵抗に基づいて求める方法、バッテリ充放電電流の積算値に基づいて求める方法、あるいはこれらの組み合わせた方法等により、バッテリ70の蓄電容量を検出する。
【0032】
(ブレーキ系)
電気自動車1では、電気ブレーキと機械ブレーキとが併用される。すなわち、電気自動車1では、駆動源としてのモータ3により制動力を発生可能である。電気ブレーキは、例えば、制動エネルギーを熱エネルギーに変換する発電ブレーキ、および制動により発生する電気を回生する回生ブレーキである。本実施の形態では、主として回生ブレーキを用いるが、低速領域では発電ブレーキを用いる場合もある。回生ブレーキは、モータ3が発電した電力をコンデンサ71を介してバッテリ70に回生し、これにより制動力を発生させる。
【0033】
機械ブレーキ18は、例えばドラムブレーキやディスクブレーキであり、圧力調整ユニット11からの加圧液体によりブレーキシューを被制動部材に押し付けて摩擦力による摩擦制動を得るものである。機械ブレーキ18の動作は、制御装置10により各車輪2に対して独立に制御される。なお、ブレーキシューをモータ等のアクチュエータにより被制動部材に押し付けてもよい。
【0034】
圧力調整ユニット11は、制御装置10からの信号により機械ブレーキ18に加圧液体を分配して機械ブレーキ18毎に異なる制動力を付与可能に構成されている。なお、圧力調整ユニット11および機械ブレーキ18は、摩擦ブレーキ機構を構成する。
【0035】
(撮像系)
前方のカメラ20fr、20flは、電気自動車1の前方側の路面を撮像し、撮像した画像を制御装置10に出力する。制御装置10は、カメラ20fr、20flから取得した画像に基づいて路面の変化を検出して、制駆動に関する処理を実行する。前方のカメラ20fr、20flは、その撮像領域は互いに少なくとも一部が重複している。カメラ20fr、20flは、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成されている。
【0036】
後方のカメラ21は、電気自動車1の後方側の路面を撮像し、撮像した画像を制御装置10に出力する。制御装置10は、カメラ21から取得した画像に基づいて路面の変化を検出して、制駆動に関する処理を実行する。カメラ21は、例えばCCDカメラにより構成されている。
【0037】
(制御系)
図2は、制御装置10を機能的に示すブロック図である。制御装置10は、例えばコンピュータにより構成され、CPU100と、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶部110とを有する。
【0038】
制御装置10は、運転者がアクセルペダル12、ブレーキペダル13等の操作手段を操作することによって発生する操作入力情報に応じた加速、減速等の動作を行うための動作指令を前輪用駆動回路9f、後輪用駆動回路9r、機械ブレーキ18に出力し、前輪駆動系および後輪駆動系の駆動トルク(駆動力)および制動トルク(制動力)を制御する。これにより、電気自動車1は、運転者の操作に従って走行することができる。
【0039】
制御装置10は、各センサ22、23、24、26、29からの信号等に応じて前輪用モータ3fの目標トルクおよび後輪用モータ3rの目標トルクをそれぞれ算出し、前輪用駆動回路9f、後輪用駆動回路9rに出力する。前輪側および後輪側それぞれにおいて、駆動回路9は、制御装置10から指令された目標トルクに応じた信号をインバータ8に出力する。
【0040】
記憶部110には、路面パターン111、μ−SrLimitテーブル112、後述する図3に示すような制駆動力とスリップ率の関係情報等の各種のデータと、制駆動プログラム113等の各種のプログラムが格納されている。
【0041】
CPU100は、制駆動プログラム113に従って動作することにより、路面摩擦係数μ推定手段(推定部)101、スリップ率上限値設定手段(設定部)102、スリップ率演算手段(演算部)103、制駆動力制御手段(制御部)104等として機能する。
【0042】
(路面摩擦係数μ推定手段)
路面摩擦係数μ推定手段101は、前方のカメラ20fr、fl(車両後退時は後方のカメラ21)が撮像した画像に基づいて、自動車1の走行する路面が、乾燥路面、湿潤路面、凍結・雪路路面況等のいずれかであるかを判定し、路面の摩擦係数μを推定する。これらの路面は、摩擦係数μが大きく異なる代表的な路面である。当該判定は、撮像した画像と、予め各路面状況において撮像された路面パターン111とのパターンマッチングにより行う。路面パターン111は、路面の摩擦係数μに関連付けて記憶部110に記憶されている。なお、当該判定を輝度等が所定の閾値を超えたか否かの判断により行うなど、公知の技術を適宜用いて行ってよい。
【0043】
(スリップ率上限値設定手段)
図3は、駆動力および制動力とスリップ率との関係を示す図である。実線L1は、乾路路面、実線L2は湿潤路面、実線L3は凍結・雪路路面の場合を示している。これらの各路面は、摩擦係数が大きく異なる代表的な路面である。摩擦係数は、例えば、乾路路面では0.75、湿潤路面では0.4、凍結・雪路路面では0.2である。記憶部110には、図2に示すように、路面の摩擦係数μとスリップ率上限値SrLimitとの関係を示すμ−SrLimitテーブル112が記憶されている。μ−SrLimitテーブル112には、例えば、乾路路面(μ=0.75)に対応してスリップ率上限値SrLimit1(|Sr|=0.16)が記憶され、湿潤路面(μ=0.4)に対応してスリップ率上限値SrLimit2(|Sr|=0.14)が記憶され、凍結・雪路路面(μ=0.2)に対応してスリップ率上限値SrLimit3(|Sr|=0.12)が記憶されている。
【0044】
スリップ率上限値設定手段102は、路面摩擦係数μ推定手段101が推定した路面の摩擦係数に基づいて、記憶部110内のμ−SrLimitテーブル112を参照し、所定の値としてのスリップ率上限値SrLimitを設定する。スリップ率上限値SrLimitは、例えば、図3における各路面状況に応じて発揮し得る制動力の最大値付近の値に設定されるが、最大値付近の値に限られない。スリップ率上限値SrLimitは、例えば路面の摩擦係数に応じて発揮し得る最大制動力の70〜90%よりも高い制動力が発揮されるスリップ率に設定することができる。
【0045】
スリップ率上限値設定手段102は、前方のカメラ20fr、20fl(車両後退時は後方のカメラ21)が路面を撮像し、その撮像した路面に前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlが進入するタイミングで前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlのスリップ率上限値をそれぞれ設定するように構成されている。例えば、乾路路面を走行中に前輪2fr、2flが湿潤路面に進入した場合、前輪2fr、2flについては、湿潤路面に対応したスリップ率上限値(例えば、|Sr|=0.14)が設定され、後輪2rr、2rlについては、乾路路面に対応したスリップ率上限値(例えば、|Sr|=0.16)が設定される。なお、車両前進時に、前方のカメラ20fr、20flが撮像した画像から推定される摩擦係数と後方のカメラ21が撮像した画像から推定される摩擦係数との中間値を後輪の摩擦係数やスリップ率上限値として用いてもよく、車両後退時に、その中間値を前輪の摩擦係数やスリップ率上限値として用いてもよい。
【0046】
(スリップ率演算手段)
スリップ率演算手段103は、車体速度をV、車輪2の回転速度をω、車輪2の半径をRとしたとき、駆動時の車輪2のスリップ率Srを以下の式により算出する。
Sr=(Rω−V)/Rω ・・・・式(1)
【0047】
また、スリップ率演算手段103は、制動時の車輪2のスリップ率Srを以下の式により算出する。
Sr=(Rω−V)/V ・・・・式(2)
【0048】
式(1)から理解されるように、駆動時においてスリップ率Srが1.0になる場合は、V=0であり、ホイールスピンが生じている状態である。式(2)から理解されるように、制動時においてスリップ率Srが−1.0になる場合は、ω=0であり、ホイールロックが生じている状態である。すなわち、スリップ率Srの絶対値が1である状態は、いずれも路面に制駆動力(駆動力又は制動力)を伝えられない状態である。また、スリップ率Srが0である状態は、車輪2と路面との間に滑りがない状態である。なお、スリップ率演算手段103は、加速度センサ26からの車体25の推進前後方向の加速度aに応じた信号に基づいて、車体25の推進前後方向の加速度aを積分して車体速度Vを求める。また、スリップ率演算手段103は、車輪速センサ28からの車輪2の回転速度ωに応じた信号に基づいて、車輪2の回転速度ωを求める。
【0049】
(制駆動力制御手段)
制駆動力制御手段104は、スリップ率演算手段103が算出したスリップ率Srがスリップ率上限値SrLimit以下であるか否かを判断する。なお、制駆動力制御手段104がスリップ率の比較を行うときは、絶対値で行う。そして、制駆動力制御手段104は、μ−SrLimitテーブル112、図3に示すような制駆動力とスリップ率の関係情報等に基づいて、スリップ率をある目標値に制御するスリップ率制御、荷重移動に伴うホイールロック、ホイールスピンの抑制制御、直進性を保持する直進性制御、横風等の外乱の影響を抑制する外乱抑制制御、旋回性能を向上させるための旋回制御等を行う。以下、それらの制御について説明する。なお、これらの制御は、単独で行われ場合もあり、いくつかの制御が同時に行われる場合もある。
【0050】
<スリップ率制御>
制駆動力制御手段104は、各車輪2のスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下のときは、アクセルペダル12の踏み込み量に応じてモータ3の駆動力を発揮させ、ブレーキペダル13の踏み込み量に応じて機械ブレーキ18による制動力、および駆動回路9による電気ブレーキの制動力を共に発揮させる。また、制駆動力制御手段104は、例えば摩擦係数が小さい低μ路において、各車輪2のスリップ率のいずれか(複数の車輪2が同時の場合も含む。)が、スリップ率上限値SrLimitを超えたとき、アクセルペダル12の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるようにモータ3の駆動力を制御し、ブレーキペダル13の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるように、電気ブレーキによる制動力を制御するとともに、機械ブレーキ18による制動力を制御する。なお、制駆動力制御手段104は、制駆動力の制御を左右輪のスリップ率のうちいずれかが大きい方かを判断し、大きい方のスリップ率に基づいて行ってもよい。
【0051】
<荷重移動に伴うホイールロック、ホイールスピンの抑制制御>
図4は、電気自動車1における制動力の前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlヘの分配方法を説明するための図である。
【0052】
図4に示すように、電気自動車1が加速度aで減速するときの制動力Fcarは、
Fcar=M×a ・・・式(3)
となる。ここで、Mは、電気自動車1全体の質量(車体質量)である。
【0053】
そのときの荷重移動量Zは、制動力Fcarによって生じる電気自動車1の重心G回りのモーメントを前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlの接地点における垂直荷重に換算した次式(4)により得られる。
Z=Fcar×Hcar/Lcar ・・・式(4)
ここで、Hcarは、電気自動車1の重心Gの接地面からの高さであり、Lcarは、電気自動車1のホイールベースである。
【0054】
また、電気自動車1が停止しているときの前輪荷重をWf、後輪荷重をWr、路面の摩擦係数をμとすると、摩擦力と釣り合う前輪及び後輪の制動力、すなわち、前輪2fr、2flの最大制動力Ffmax及び後輪2rr、2rlの最大制動力Frmaxは、それぞれ次式(5)、(6)により表される。
Ffmax=μ(Wf+Z) ・・・式(5)
Frmax=μ(Wr−Z) ・・・式(6)
【0055】
従って、前輪側及び後輪側のそれぞれにおけるモータ3及び機械ブレーキ18による制動力が、最大制動力Ffmax及び最大制動力Frmaxとなるように、モータ3及び機械ブレーキ18の動作を制御すれば、電気自動車1全体として最も制動力が大きくなり、ホイールロックを抑制することができる。以上は減速時についての説明であるが、加速時も同様であり、荷重移動に基づいて最適な駆動力となるように制御することにより、ホイールスピンを抑制することができる。
【0056】
<直進性制御>
図5は、直進性制御を説明するための図である。同図中、25a、25b、25c、25dは、車体が紙面の下方から上方に向かって直進している様子を示している。
【0057】
制駆動力制御手段104は、直進性制御を行う際、検出された操舵角に応じた車体25の向きとなるように、モータ3の制駆動力、および差動装置4の動力配分比率を制御する。これは、旋回制御でも同様である。
【0058】
制駆動力制御手段104は、操舵角センサ29からの操舵角γに応じた信号に基づいて、車体25が直進走行しているか、旋回走行しているかを判定する。例えば、検出された操舵角γが一定の角度範囲内(例えば±2°以内)である場合には、直進走行していると判定し、それ以外は旋回走行していると判定する。直進走行していると判定した場合は、以下に説明するように直進性制御を行う。
【0059】
直進走行中に、各車輪2のスリップ率Srのうちいずれか1つのスリップ率Srがスリップ率上限値SrLimitを超えたとき、制駆動力制御手段104は、当該車輪2(例えば右輪2fr)の制駆動力を減らすとともに、反対側の車輪2(例えば左輪2fl)の制駆動力をスリップ率が所定の値、例えばスリップ率上限値SrLimitを超えない範囲で増やす制御を行う。これにより、ホイールスピンやホイールロックを防止し、推進力を確保することができる。
【0060】
このとき、加速度センサ26からの旋回加速度aθに応じた信号に基づいて、旋回加速度aθが閾値aθthを超えたか否かを判断し。閾値aθthを超えた場合には、旋回加速度aθが抑制されるように、前後方向の反対側の車軸の左右輪(例えば右輪2rr、左輪2rl)の制駆動力を制御する。すなわち、右輪2rrの制駆動力を増やし、左輪2rlの制駆動力を減らす制御を行う。これにより、旋回が抑制され、直進走行を継続することができる。
【0061】
<外乱抑制制御>
図6(a)は、駆動時に車体25が横方向に動こうとしている状態を示す平面図、図6(b)は、駆動時に車体25が旋回しようとしている状態を示す平面図である。制駆動力制御手段104は、例えば、直進性制御を行っている間に外乱によって横ズレや旋回が生じたときに横ズレや旋回を抑制する。なお、旋回制御を行っている場合でも外乱抑制制御を行ってもよい。
【0062】
制駆動力制御手段104は、加速度センサ26によって検出された横方向加速度a、旋回加速度aθのうちいずれの加速度が大きいかを判断する。この判断は、例えば各加速度a、aθを正規化して行う。加速度a、aθの正規化後の加速度をそれぞれaNX、aNθとすると、aNX、aNθは、以下の式によって求めることができる。
NX=a×k、aNθ=aθ×kθ×g
ここで、k、kθは係数、gは重力加速度である。係数k、kθは、安定走行の観点から定めることができる。
【0063】
正規化後の横方向加速度aNXの方が大きいと判断した場合には、制駆動力制御手段104は、以下のように制御を行う。横方向加速度aの方向を判定し、横方向加速度aの方向が右方向の場合、例えば、図6(a)に示すように、右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように所定のスリップ率、例えばスリップ率上限値SrLimitを超えない範囲で制御する。すなわち、前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御するか、後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を所定のスリップ率、例えばスリップ率上限値SrLimitを超えない範囲で右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。
【0064】
横方向加速度aの方向が左方向の場合、左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。例えば、前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御するか、後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。
【0065】
正規化後の旋回加速度aNθの方が大きいと判断した場合には、制駆動力制御手段104は、以下の制御を行う。旋回加速度aθの方向を判定し、旋回加速度aθの方向が右回転の場合、例えば、図6(b)に示すように、右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。例えば、前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御するか、後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。
【0066】
旋回加速度aθの方向が左回転の場合、左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。例えば、前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御するか、後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。以上は、駆動時における制御であるが、制動時は駆動時とは反対の制御を行う。なお、前後の差動装置4f、4rを同じように制御してもよい。
【0067】
<旋回制御>
図7(a)〜(c)は、駆動時の旋回制御を説明するための図である。
【0068】
制駆動力制御手段104は、旋回制御を行う際、検出された操舵角に応じた車体25の向きとなるように、モータ3の制駆動力、および差動装置4の動力配分比率を制御する。
【0069】
制駆動力制御手段104は、操舵角センサ29からの操舵角γに応じた信号に基づいて、車体25が直進走行しているか、旋回走行しているかを判定する。例えば、検出された操舵角γが一定の角度範囲内(例えば±2°以内)である場合には、直進走行していると判定し、それ以外は旋回走行していると判定する。旋回走行していると判定した場合は、以下に説明するように旋回制御を行う。
【0070】
操舵角が右旋回を示しているとき、図7(a)〜(c)のいずれかの制御を行うことができる。図7(a)に示す場合は、前輪側の左輪2flの制駆動力を増やすとともに、前輪側の右輪2frの制駆動力を減らすように制御する。また、図7(b)に示す場合は、後輪側の左輪2rlの制駆動力を増やすとともに、後輪側の右輪2rrの制駆動力を減らすように制御する。また、図7(c)に示す場合は、前輪側の左輪2flの制駆動力を増やすとともに、前輪側の右輪2frの制駆動力を減らすように制御し、さらに後輪側の左輪2rlの制駆動力を増やすとともに、後輪側の右輪2rrの制駆動力を減らすように制御する。以上は、駆動時における制御であるが、制動時は駆動時とは反対の制御を行う。
【0071】
なお、制駆動力制御手段104は、前輪2fr、2flの横力を確保するため、前輪2fr、2flへの制駆動力を路面摩擦係数に応じて制御し、各車輪1への制駆動力の合計が変化しないように、前輪2fr、2flへの制駆動力の変化分を後輪2rr、2rlへの制駆動力で補償してもよい。また、制駆動力制御手段104は、検出された操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、旋回走行していると判定した場合、旋回加速度が操舵角に応じた所定の閾値を超えたときは、前後輪の各内輪側の車輪への制駆動力をスリップ率が所定の値を超えない範囲で増減し、前後輪の各外輪側の車輪への制駆動力をスリップ率が所定の値を超えない範囲で減増する制御を行い、旋回加速度が所定の閾値より小さいときは、前後輪の各内輪側の車輪への制駆動力をスリップ率が所定の値を超えない範囲で減増し、前後輪の各外側の車輪の駆動力をスリップ率が所定の値を超えない範囲で増減する制御を行ってもよい。これにより、旋回加速度の所定の閾値を越えたとき、車両の挙動が不安定領域に変化したと判断し、姿勢を安定化するように制御することができる。
【0072】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、スリップ率および加速度に基づいて、前後輪への制駆動力を前後のモータ3f、3rで制御するとともに、左右輪への制駆動力配分を前後の差動装置4f、4rで行うことで、様々な路面や走行条件下で安定した走行性を確保することができ、旋回性能を改善することができる。
【0073】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々に変形実施が可能である。
【0074】
例えば、各手段101〜104をCPU100と制駆動プログラム113によって実現したが、ASIC(Application Specific IC)等のハードウエアによって実現してもよい。
【0075】
また、制駆動プログラム113は、CD−ROM等の記録媒体から制御装置10内に取り込んでもよく、サーバ装置等からネットワークを介して制御装置10内に取り込んでもよい。
【0076】
また、前後の差動装置4f、4rのうち一方の差動装置を左右への動力配分率が制御可能なものとしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…電気自動車、2…車輪、2fr、2fl…前輪、2rr、rl…後輪、3f…前輪用モータ、3r…後輪用モータ、4f、4r…差動装置、5fr、5fl、5rr、5rl…車軸、7…電源部、8f…前輪用インバータ、8r…後輪用インバータ、9f…前輪用駆動回路、9r…後輪用駆動回路、10…制御装置、11…圧力調整ユニット、12…アクセルペダル、13…ブレーキペダル、14…シフトレバー、15a〜15c…電流センサ、16f、16r…エンコーダ、17a〜17c…電流センサ、18fr、18fl、18rr、18rl…機械ブレーキ、19…ステアリングホイール、20fr、20fl…カメラ、21…カメラ、22…アクセルセンサ、23…ブレーキセンサ、24…シフトセンサ、25…車体、26…加速度センサ、27f、27r…温度センサ、28…車輪速センサ、29…操舵角センサ、70…バッテリ、71f…前輪用平滑コンデンサ、71r…後輪用平滑コンデンタ、72f、72r…電圧センサ、73…バッテリ容量センサ、100…CPU、101…路面摩擦係数μ推定手段、102…スリップ率上限値設定手段、103…スリップ率演算手段、104…制駆動力制御手段、105…障害検出手段、110…記憶部、111…路面パターン、112…μ−SrLimitテーブル、113…制駆動プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪側の左右輪に第1の差動装置を介して制駆動力を伝達する第1の電気モータと、
後輪側の左右輪に第2の差動装置を介して制駆動力を伝達する第2の電気モータと、
前記第1および第2の電気モータの制駆動力を制御する制御部とを備え、
前記第1および第2の差動装置の一方の差動装置は、前記制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する電気自動車。
【請求項2】
前輪側の左右輪に第1の差動装置を介して制駆動力を伝達する第1の電気モータと、
後輪側の左右輪に第2の差動装置を介して制駆動力を伝達する第2の電気モータと、
前記第1および第2の電気モータの制駆動力を制御する制御部とを備え、
前記第1および第2の差動装置は、前記制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する電気自動車。
【請求項3】
操舵角を検出する操舵角検出部を備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に応じた車体の向きとなるように、前記第1および第2の電気モータの制駆動力、および動力配分比率の制御が可能な前記差動装置の動力配分比率を制御する請求項1又は2に記載の電気自動車。
【請求項4】
各車輪のスリップ率を演算する演算部と、
車体の旋回加速度を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、直進走行していると判定した場合、前記各車輪のスリップ率のうちの1つの車輪のスリップ率が所定の値を超えたとき、前記1つの車輪への制駆動力を減らし、前記1つの車輪の反対側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で増やす制御を行い、検出された前記旋回加速度が所定の閾値を超えたとき、前後方向において前記1つの車輪の反対側の左右輪への制駆動力を制御する請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
各車輪のスリップ率を演算する演算部と、
車体の横方向加速度および旋回加速度を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、車両が直進走行していると判断した場合、車両の横力の発生及び旋回加速度が発生した場合、前記第1および第2の電気モータの制駆動力を制御すると共に、各左右輪のトルク配分を制御して、横方向及び旋回方向の加速度変化率を減少させる請求項3に記載の電気自動車。
【請求項6】
各車輪のスリップ率を演算する演算部と、
車体の横方向加速度および旋回加速度を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、旋回走行していると判定した場合、前記前後輪の外側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で増減し、又は前記前後輪の内側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で減増する制御を行う請求項3に記載の電気自動車。
【請求項7】
車体の横方向加速度および旋回加速度を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、旋回走行していると判定した場合、前輪の横力を確保するため、前輪への制駆動力を路面摩擦係数に応じて制御し、各車輪への制駆動力の合計が変化しないように、前輪への制駆動力の変化分を後輪への制駆動力で補償する請求項3に記載の電気自動車。
【請求項8】
各車輪のスリップ率を演算する演算部と、
車体の旋回加速度を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、検出された前記操舵角に基づいて直進走行しているか、旋回走行しているかを判定し、旋回走行していると判定した場合、前記旋回加速度が操舵角に応じた所定の閾値を超えたときは、前記前後輪の各内輪側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で増減し、前記前後輪の各外輪側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で減増する制御を行い、前記旋回加速度が前記所定の閾値より小さいときは、前記前後輪の各内輪側の車輪への制駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で減増し、前記前後輪の各外側の車輪の駆動力を前記スリップ率が所定の値を超えない範囲で増減する制御を行う請求項3に記載の電気自動車。
【請求項9】
前輪側の左右輪に第1の差動装置を介して制駆動力を伝達する第1の電気モータと、後輪側の左右輪に第2の差動装置を介して制駆動力を伝達する第2の電気モータと、前記第1および第2の差動装置の一方の差動装置は、前記制御部により左右への動力配分率が制御可能な構成を有する電気自動車に含まれるコンピュータに、
操舵角に応じた車体の向きとなるように、前記第1および第2の電気モータの制駆動力、および動力配分比率の制御が可能な前記差動装置の動力配分比率を制御するステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251579(P2011−251579A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125085(P2010−125085)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(510073383)
【出願人】(000154347)株式会社ユニバンス (132)
【Fターム(参考)】