電源回路およびその制御回路
【課題】昇圧チョッパ回路を用いた力率改善もしくは高調波抑制回路において、部分スイッチング動作によるスイッチング損失の低減と直流電圧の安定制御化(適用システムの安定制御化)の両立である。
【解決手段】平滑回路に接続された負荷の状態を示す負荷状態情報を生成する負荷状態生成手段と、負荷状態情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段とを備えた昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源電圧や負荷の変化に応じて、昇圧比を補正もしくは変更することを特徴とする。
【解決手段】平滑回路に接続された負荷の状態を示す負荷状態情報を生成する負荷状態生成手段と、負荷状態情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段とを備えた昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源電圧や負荷の変化に応じて、昇圧比を補正もしくは変更することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相交流電源の力率改善回路もしくは高調波電流抑制回路の制御方法及び、それを用いたモータ駆動装置,空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
単相交流電源の力率改善もしくは高調波電流抑制を行う電源回路は広く使用されている。中でも、リアクトルとスイッチング素子とダイオードから構成される昇圧チョッパ回路を用いた電源回路は、回路構成及び制御構成が簡単であるため、電源への回生が必要でないインバータ制御装置など(インバータエアコンなど)の電源回路として使用されている。
【0003】
昇圧チョッパ回路を用いた力率改善方法もしくは高調波電流抑制方法は多数報告されている。中でも、特許文献1は、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出することなく、電源電流瞬時値と比例ゲインのみを用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波波形に制御する方式(これを基本方式と呼ぶ)が記載されている。また、特許文献2には、上記技術を応用した内容が記載されている。
【0004】
特許文献2は、昇圧チョッパ回路の高効率化を目的に、入力電流のピーク付近のスイッチング動作を停止させる昇圧比一定制御方式(部分スイッチング方式)が提案されている。
【0005】
前記特許文献1は、電源周期の全域でスイッチング動作(全域スイッチング方式)を行うことが前提に記載されているが、この全域スイッチング方式では、スイッチング損失が増加して回路効率が低下してしまう。そこで、特許文献2記載の昇圧比一定制御方式は上記基本方式の考え方(基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出しない)を踏襲しながら、電源電流のピーク付近のスイッチング動作を停止する部分スイッチング方式とし、スイッチング損失の低減を図っている。
【0006】
また、特許文献2で開示された発明は、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出しないで、部分スイッチングする方式であり、優れた制御方法であるが、昇圧比を一定に設定しているため、電源回路に接続された電源電圧や負荷に応じて直流電圧が変化してしまう。
【0007】
ここで、昇圧チョッパ回路を用いた電源回路において直流電圧を制御する例として、特許文献3〜7等で提案されているが、これらは、全域スイッチング方式を用いた方式であり、スイッチング損失の低減と直流電圧の安定制御の両立は考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−114372号公報
【特許文献2】特許第2796340号公報
【特許文献3】特開2003−289696号公報
【特許文献4】特開2000−350442号公報
【特許文献5】特開平09−149690号公報
【特許文献6】特開2003−189689号公報
【特許文献7】特開2001−231262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した直流電圧の変化は、部分スイッチングさせるためには必要不可欠な現象であり、本方式の特徴(長所)でもあるが、電源電圧や負荷が大きく変化した場合、直流電圧も大きく変化して、本方式(電源回路)を適用しているシステムの動作維持ができなくなる可能性がある。例えばインバータエアコンの圧縮機駆動用モータの駆動装置に適用した場合、モータ駆動が一旦停止すると、圧縮機の負荷をバランスさせるために一定時間システムが停止してしまい、エアコンとしての能力を低下させてしまう恐れがある。
【0010】
以上の通り、本発明が解決しようとする課題は、部分スイッチング動作によるスイッチング損失の低減(高効率化)と直流電圧の安定制御化(適用システムの安定制御化)の両立である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源電圧や負荷が大きく変化した場合に昇圧比を補正もしくは変更することを特徴とする。
【0012】
具体的には、昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源回路の直流電圧を検出し、検出した直流電圧値が予め設定した設定値を超えた場合に、その偏差を用いて、昇圧比を補正する構成とすることを特徴とする。
【0013】
さらに、電源回路の負荷状態に応じて、設定する昇圧比自体を変更する構成とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電源電圧や負荷状態が変動しても直流電圧の変動を抑制(過電圧,電圧低下)でき、適用システムの高効率化と安定制御化の両立が図れる。
【0015】
また、本発明を用いた制御基板(ハイブリッドICやモジュール)を制作することにより電源回路の制御が簡単になり高力率もしくは高調波電流抑制が可能な電源回路の製品適用が増進される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電源回路の実施方法を示した全体構成図である。(実施例1)
【図2】電源回路の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例1)
【図3】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例1)
【図4】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例1)
【図5】電源回路の制御回路の利用形態の一例を示す説明図である。(実施例1)
【図6】電源回路の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例2)
【図7】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例2)
【図8】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例2)
【図9】モータ駆動装置の実施方法を示した全体構成図である。(実施例3)
【図10】モータ駆動装置の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例3)
【図11】モータ駆動装置の実施方法を示した動作説明図である。(実施例3)
【図12】モータ駆動装置の実施方法を示した動作説明図である。(実施例3)
【図13】モータ駆動装置の実施方法を示した動作波形図である。(実施例3)
【図14】モータ駆動装置の実施方法を示した動作波形図である。(実施例3)
【図15】モータ駆動装置の制御回路の利用形態の一例を示す説明図である。(実施例3)
【図16】インバータエアコンの実施方法を示した外観図である。(実施例4)
【図17】インバータエアコンの実施方法の動作説明図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2の係数を生成し、第2の係数と前記入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいてスイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、平滑回路に接続された負荷の状態を示す負荷状態情報を生成する負荷状態生成手段と、負荷状態情報を用いて前記第1の係数を補正する係数補正手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また、負荷状態生成手段は前記平滑回路の直流電圧情報を負荷状態情報として用いることを特徴とし、電源電圧状態生成手段は前記平滑回路の直流電圧情報を電源電圧状態情報として用いることを特徴とする。
【0019】
さらに、電源回路の負荷としてモータを駆動するインバータ回路と、電源回路とインバータ回路を制御する制御回路を同一基板上に備えるモジュールであって、第1の係数を前記モータの回転数、負荷状態もしくは外部信号の少なくとも一つの情報に応じて変更することを特徴とする。
【0020】
次に、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2係数を生成し、第2の係数と前記入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいてスイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、整流回路に接続された電源の状態を示す電源電圧状態情報を生成する電源電圧状態生成手段と、電源電圧状態情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えることを特徴とする。
【0021】
また、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2係数を生成し、第2の係数と入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいて前記スイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、平滑回路の直流電圧の状態を示す直流電圧情報を生成する直流電圧生成手段と、直流電圧情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、直流電圧情報と設定された基準値との偏差に基づいて前記第1の係数を補正する係数補正手段を備え、その補正を比例・積分補償器を用いて行うことを特徴とする。
【0023】
さらに、直流電圧情報と設定された第1の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第1の補正値を算出し、直流電圧情報と設定された第2の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第2の補正値を算出し、第1の補正値と第2の補正値を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
また、上記電源回路において、第1の係数を補正する補正値にリミッタを設けることを特徴とする。
【0025】
さらに、直流電圧情報と設定された第1の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第1の補正値を算出し、直流電圧情報と設定された第2の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第2の補正値を算出し、第1の補正値と前記第2の補正値を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
第1の基準値を電源回路もしくはモータ駆動装置のシステムとしての過電圧値以下に設定し、第2の基準値を前記電源回路もしくはモータ駆動装置のシステムの最低電圧値以上に設定することを特徴とする。
【0027】
モータ駆動装置を空調機の圧縮機駆動用モータの駆動に適用し、モータの回転数もしくは負荷状態に応じて、第1の係数を変更するとともに、第1の係数を前記直流電圧と基準値を用いて補正することを特徴とする。
【0028】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、交流電源から流入する入力電流情報と、平滑回路の直流電圧情報を入力として通流率信号を出力し、入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化し、又はその変化と同時に直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする。
【0029】
また、入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化し、又はその変化と同時に、直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする。
【0030】
さらに、電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、直流電圧が変化する領域と、直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる信号であり、直流電圧が所定値に制御されている時に、通流率信号のスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる期間が変化することを特徴とする。
【0031】
また、電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、直流電圧が変化する領域と、直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、直流電圧が所定値に制御されている時に、電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない期間が変化することを特徴とする。
【0032】
さらに、電源装置もしくはその制御回路において、入力電流が16A時の通流率信号のスイッチング動作停止、もしくは、最少パルス幅となる期間は、入力電流が2A時の90%以下になることを特徴とする。
【0033】
また、電源装置もしくはその制御回路において、入力電流が16A時の電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らなくなる期間は、入力電流が2A時の90%以下になることを特徴とする。
【実施例1】
【0034】
図1から図5を用いて本発明の第1の実施例を説明する。図1は本実施例の電源回路の全体構成図、図2は制御内容を示す制御ブロック図、図3,図4は本実施例の動作説明図、図5は図1に示す電源回路を動作させる制御回路の利用形態の一例を示す概観図である。
【0035】
図1を用いて電源回路の構成と動作について説明する。本電源回路は、交流電源1に接続された整流回路2,昇圧チョッパ回路3,平滑コンデンサ4及び、制御回路5を備え、前記平滑コンデンサ4の出力端子に接続された負荷6に直流電力を供給する。
【0036】
前記昇圧チョッパ回路3は、リアクトル32と、前記交流電源1を前記リアクトル32を介して短絡するスイッチング素子31及び、前記スイッチング素子31の端子電圧を前記平滑コンデンサ4に供給するダイオード33から構成され、前記スイッチング素子31のスイッチング動作と前記リアクトル32によるエネルギー蓄積効果を利用して直流電圧を昇圧する回路である。ここで、前記スイッチング素子31はIGBTやトランジスタなどの自己消己形素子を使用し、前記制御回路5からのドライブ信号51aに従って駆動される。
【0037】
前記制御回路5は、シャント抵抗53と増幅回路52を用いて前記交流電源1から流入する入力電流を検出し入力電流値5bを出力する電源電流検出回路と、前記平滑コンデンサ4の端子電圧である直流電圧を検出し直流電圧値5cを出力する直流電圧検出回路と、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cに従って前記スイッチング素子31を制御する通流率信号5aを演算する演算手段50及び、前記通流率信号5aを増幅して前記スイッチング素子31を駆動するドライブ信号51aを出力するドライブ回路51から構成されている。ここで、直流電圧検出回路の詳細は図示していないが、抵抗を用いた分圧回路を用いれば簡単な回路構成で実現できる。
【0038】
演算手段50は、シングルチップマイクロコンピュータに代表される半導体演算素子(以後マイコンと称す)を用いており、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cはマイコン内蔵のA/D変換器を用いてデジタル値に変換して演算を行っている。前記通流率信号5aはマイコン内蔵のPWMタイマを用いてPWMパルス信号の形で出力している。
【0039】
ここで、本実施例ではマイコンを用いたデジタル演算で説明するが、トランジスタやオペアンプやコンパレータなどのアナログ演算回路等を利用した演算手段を用いても同様の効果が得られる。
【0040】
次に前記演算手段50内で行われる演算の内容に関して図2を用いて説明する。本説明では、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cを用いて前記通流率信号5aを算出する部分について述べる。算出した通流率信号5aからPWMタイマを用いてPWMパルス信号を作成する部分はマイコンの機能であるため省略する。
【0041】
図2の制御ブロック図は、従来技術である昇圧比一定制御部50Aと本発明である昇圧比補正部50Bから構成されている。
【0042】
昇圧比一定制御部50Aは、基準となる正弦波電流指令や電源位相を検出することなく入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積を用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波波形に制御する基本方式と、スイッチング損失低減のため入力電流のピーク付近のスイッチング動作を停止させる昇圧比一定制御方式から構成されている。
【0043】
ここで、基本方式と昇圧比一定制御方式について簡単に説明する。
【0044】
図1に示す昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子31の通流率信号(オン時間の比率)dを式(1)の通り与えると、入力電流isは式(2)の通りとなる。(導出の詳細は省略)式(2)からわかる通り、電源電圧波形などの基準波形が無くても入力電流isは電源電圧Vsに同期した正弦波になる。これが、基本方式の原理である。
【0045】
【数1】
ここで、1:100%通流率,Kp:電流制御ゲイン,is:入力電流(瞬時値)
【0046】
【数2】
ここで、Vs:電源電圧実効値,Ed:直流電圧,ω:電気角周波数
【0047】
基本方式では、上記比例ゲインKpを直流電圧偏差より決定することにより、直流電圧Edの制御が可能である。
【0048】
ここで、式(2)を変形すると
【0049】
【数3】
となり、式(3)は、瞬時の昇圧比を示している。
【0050】
ここで、実効値ベースで昇圧比aを考えると
【0051】
【数4】
ここで、Is:入力電流(実効値)
となり、Kp・Isを一定に制御すれば、直流電圧Edは電源電圧Vsのa倍に制御できる。
【0052】
以上の方法に基づき、通流率信号dを次式により与えれば
【0053】
【数5】
【0054】
通流率信号dは、入力電流|is|がa・Isを超えると0%となり、スイッチング動作が停止する。これにより、入力電流は電源電圧のピーク付近(入力電流がa・Isを超える領域)でチョッパが入らない波形となり、スイッチング損失の低減が図れる。これが昇圧比一定制御の原理である。
【0055】
上記の通り制御することにより、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出することなく、入力電流瞬時値と比例ゲインのみを用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御でき、入力電流のピーク値付近のスイッチング動作を停止(部分スイッチング動作)することが可能である。
【0056】
上記式をブロック図にすると図2の50Aの通りとなる。ここで、入力電流実効値Isは前記入力電流値5bをフィルタ手段500を用いて算出しているが平均値や実効値を算出し、その値で制御しても良い。また、昇圧比aは予め設定された値を使用している。
【0057】
また、本ブロック図では通流率信号dの演算において、式(1)及び式(5)の通り、最大通流率である1(100%)から入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積を差し引いて算出しているが、実際のPWMタイマ設定では、入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積の値をオフ時間の比率と考えて設定すれば最大通流率である1から差し引く必要はない。
【0058】
昇圧比補正部50Bは、予め設定してある制限値EdLim1と検出した前記直流電圧値5cとの偏差から比例・積分補償器501を用いて昇圧比aの補正値を演算し昇圧比aの補正を行う構成となっている。
【0059】
ここで、本実施例は、電源電圧や負荷の変動により直流電圧が過電圧保護値を超えて動作が停止することを防止することを目的としているので、制限値EdLim1は電源回路の過電圧保護値より低い値に設定してある。また、昇圧比aの補正動作は直流電圧値が制限値EdLim1を超えた時のみ動作するように、リミッタ503が設定されている(昇圧比を下げる方向にのみ動作する)。
【0060】
以上のように、本実施例は従来技術の前記昇圧比一定制御部50Aと本発明の昇圧比補正部50Bを組み合わせることにより実現している。
【0061】
図3,図4の動作説明図を用いて本実施例の動作及び効果について述べる。なお、本明細書では説明および図の簡単化のため、各値の変化は理想的な応答で示している。実際には制御遅れ等の影響があり、本図のような特性とはならない。また、その特性は、比例・積分補償器の制御ゲインの設定により異なる。
【0062】
図3は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、電源電圧Vsを取り、時間t1及びt2で電源電圧Vsが大きく変動した場合の動作を示した図である。
【0063】
ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、従来技術(昇圧比一定制御部50Aのみ)の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0064】
t1で、電源電圧Vsが急上昇すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、過電圧設定値EdMAXを超えてしまい、過電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧は急低下する)。
【0065】
これに対して、本発明では、直流電圧が制限値EdLim1を超えると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim1に維持する。これにより、過電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作維持が可能となる。また、t2で、電源電圧Vsが正常値に戻れば、昇圧比aの補正も通常値(設定値)に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0066】
図4は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、負荷Lを取り、時間t1及びt2で負荷Lが大きく変化した場合の動作を示した図である。
【0067】
ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、図3同様に、従来技術の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0068】
t1で、負荷Lが急低下すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、過電圧設定値EdMAXを超えてしまい、過電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧は急低下する)。
【0069】
これに対して、本発明では、図3同様に、直流電圧が制限値EdLim1を超えると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim1に維持する。これにより、過電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作の維持が可能となる。また、t2で、負荷Lが元の値に戻れば、昇圧比aの補正も設定値に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0070】
以上のように、電源電圧や負荷が過渡的に大きく変動しても直流電圧の上昇を制限値以下に抑制し、システムの過電圧保護停止を防止できる。また、通常状態では、予め設定されている昇圧比aで動作するので、最適な効率,力率及び、高調波電流での動作が可能である。
【0071】
ここで、上記特性(応答)は、比例・積分補償器に設定するゲインにより変化することは言うまでもない。実際のシステムでは、制限値EdLim1と設定ゲインをシステムが要求する特性に合わせて設定する必要がある。
【0072】
次に図5を用いて本実施例の電源回路を動作させる制御回路の利用形態の一例を説明する。
【0073】
本利用形態は図1に示す制御回路5をハイブリッドIC化した概観図である。但し、前記シャント抵抗53は部品の変更やノイズ対策上ハイブリッドIC内に設置するのではなく、スイッチング素子31等パワー回路部品と同様のスペースに設置することが望ましい。
【0074】
図1に示した制御回路5の入出力端子は、入力電流検出端子,直流電圧検出端子及び、ドライブ信号出力端子の3つであるが、これ以外に、昇圧比設定端子,直流電圧制限値設定端子,接続した負荷の状態を検出する負荷状態情報検出端子及び機能などを設置することにより、より汎用性が増したハイブリッドICを実現できる。
【実施例2】
【0075】
図6から図8を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。図6は本実施例の制御ブロック図、図7,図8は本実施例の動作説明図である。全体回路構成は図1と同様である。
【0076】
図6は、第1の実施例同様、従来技術である昇圧比一定制御部50Aと本発明である昇圧比補正部50Cから構成されている。昇圧比補正部50Cは、第1の実施例で説明した昇圧比補正部50Bと同様の構成であり、異なる部分は、制限値EdLim2とリミッタ504のみである。なお、比例・積分補償器502は図2に示す比例・積分補償器501と同様の動作を行うものである。
【0077】
第1の実施例では、直流電圧の過電圧を抑制する動作であったが、本実施例は、直流電圧の低下を防止する構成である。このため、リミッタ504は、直流電圧値が制限値EdLim2を下まわった時のみ昇圧比aを補正するように設定されている(昇圧比を上げる方向にのみ動作する)。
【0078】
図7の動作説明図は、第1の実施例同様、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、電源電圧Vsを取り、時間t1及びt2で電源電圧Vsが大きく変動した場合の動作を示した図である。ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、従来技術の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0079】
t1で、電源電圧が急低下した場合、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edも電源電圧同様に急低下する。ここで、電源回路システムとして低電圧保護設定値EdMINが設定されていると低電圧保護が働き電源回路システムが停止して、システムの動作維持ができなくなる。
【0080】
これに対して、本発明では、直流電圧が制限値EdLim2以下になると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim2に維持する。これにより、低電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作維持が可能となる。また、t2で、電源電圧Vsが正常値に戻れば、昇圧比aの補正も通常値(設定値)に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0081】
図8は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、負荷Lを取り、時間t1及びt2で負荷Lが大きく変化した場合の動作を示した図である。
【0082】
t1で、負荷Lが急上昇すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、低電圧保護設定値EdMIN以下となり、低電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧はさらに急低下する)。
【0083】
これに対して、本発明では、図7同様に、直流電圧が制限値EdLim2以下となると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim2に維持する。これにより、低電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作の維持が可能である。また、t2で、負荷Lが元の値に戻れば、昇圧比aの補正も設定値に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0084】
以上のように、電源電圧や負荷が過渡的に大きく変動しても直流電圧の低下を制限値に抑制し、システムの低電圧保護停止を防止できる。また、通常状態では、予め設定されている昇圧比aで動作するので、最適な効率,力率及び、高調波電流での動作が可能である。
【0085】
ここで、第1及び第2の実施例では、過渡的な変動を例に動作説明を行って来たが、電源及び負荷の変動は必ずしも過渡的な場合だけでなく、ゆっくりとした変動に対しても同様の構成で対応可能である。
【実施例3】
【0086】
図9から図15を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第1の実施例,第2の実施例と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。
【0087】
図9は本実施例のモータ駆動装置の全体構成図、図10は制御内容を示す制御ブロック図、図11,図12は本実施例の動作説明図、図13,図14は電源回路に流入する入力電流波形、図15は本実施例の利用形態の一例を示すモジュール外観図である。
【0088】
図9は、本発明の電源回路の負荷としてモータ9及びインバータ回路8からなるモータ駆動回路を接続し、本発明の電源回路の制御回路と前記インバータ回路8の制御回路を一体化させた構成となっている。言い換えると、図9に示す制御回路7はマイコンを使用し、1つのマイコンで電源回路とインバータ回路を制御する構成となっている。
【0089】
第1及び第2の実施例と異なる部分のみ説明する。インバータ回路8はIGBTとダイオードから構成されているインバータ回路であり、モータ9は永久磁石同期モータである。
【0090】
また、昇圧チョッパ回路の構成が第1及び第2の実施例と異なっているが、本回路構成でも第1及び第2の実施例同様の動作が可能である。ここで、整流回路2内のダイオード21,22は電源の整流動作以外に、第1及び第2の実施例の昇圧チョッパ回路3のダイオード33と同様の動作を行う。言い換えると、前記ダイオード21,22は上記2つの動作を行っており、この回路構成にすることにより、ダイオード1個分の損失を低減できる効果がある。
【0091】
制御回路7は上述のようにマイコンを使用し本発明の電源回路とインバータ回路を制御しており、マイコン(演算手段70)では、第1及び第2の実施例で説明した電源回路の制御演算とインバータ回路の制御演算を行っている。
【0092】
図10に示す電源回路部の制御回路の構成については第1及び第2の実施例で説明した内容を合わせた構成(50Bと50Cを合わせて50Dとしている)となっているので説明は省略する。ここでは、インバータ回路部の制御回路の構成について簡単に説明する。
【0093】
本実施例のモータ制御では、モータ電流センサレス,位置センサレスベクトル制御を行っているため、インバータ回路から検出するものは直流側に設置したシャント抵抗73に流れる直流電流のみである。具体的には、図9に示す通り、前記シャント抵抗73に発生する電圧を増幅回路72で増幅し、直流電流検出値7bとしてマイコンのA/D変換器を用いて取り込む。また、インバータ回路のスイッチング素子に与えるPWM信号7aはドライブ回路71を介してドライブ信号71aとしてインバータ回路に与えている。
【0094】
ここで、図示してないが演算手段70内には、第1及び第2の実施例で説明した電源回路の制御手段とモータ電流センサレス,位置センサレスベクトル制御手段が内蔵されており、お互いに内部値の情報交換が可能である。上記構成で電源回路は第1及び第2の実施例同様の動作を行う。
【0095】
次に図11,図12を用いて本実施例の動作を説明する。第1及び第2の実施例では動的(過渡的)な動作で説明したが、本実施例では静的な動作で説明する。
【0096】
図11は、負荷に対する昇圧比aと直流電圧Edを示したものである。本実施例は、図10に示す通り、第1及び第2の実施例で説明した制御構成が一緒になった構成となっており、制限値EdLim1と制限値EdLim2の間で直流電圧が変化する動作となる。
【0097】
例えば、負荷が負荷L1以下の軽負荷となると、昇圧比補正部50Bが動作し、昇圧比aが補正され(減少)、直流電圧は制限値EdLim1に制御される。反対に、負荷が負荷L2以上の高負荷になると、昇圧比補正部50Cが動作し、昇圧比aが補正され(増加)、直流電圧は制限値EdLim2に制御される。
【0098】
図12は、電源電圧に対する昇圧比aと直流電圧Edを示したものであり、昇圧比aと直流電圧Edの動きは、図11と同様であるので説明は省略する。
【0099】
ここで、図13,図14に電源電圧を一定として負荷を変化させた時の電源回路に流入する入力電流(リアクトル電流)と電源電圧の波形の実験結果を示す。
【0100】
図13は従来技術(昇圧比一定制御部50Aのみ)を用いた場合、図14は本発明を用いた場合の実験結果である。図13,図14とも(a)は入力電流2A、(b)は入力電流16Aでの結果である。また、部分スイッチング動作でのスイッチングOFF期間も合わせて示している。
【0101】
この図より、従来技術では、負荷が変化しても昇圧比aを調整(変更)しないので、スイッチングOFF期間もほぼ同一の時間間隔であり、負荷が増加するに従って、入力電流波形もひずみ率が大きな波形となっている。ここでは、図示しないが、図13(b)の電流波形では、高調波電流も増加する。
【0102】
これに対して、本発明を用いた入力電流波形は、図14に示すように、スイッチングOFF期間が変化(約15%減少)し、ひずみ率の少ない波形となっている。高調波電流値は図示しないが、図14(b)の波形は高調波電流値も減少する。
【0103】
図15は本実施例の利用形態の一例として電源回路とインバータ回路及び制御回路を一体化したモジュールの概観図である。
【0104】
本モジュールは、IGBTやダイオードなどのパワー系半導体を下部にベアチップ実装し、制御回路を上部の基板に配置した一体モジュールである。モジュール化することにより、本発明の適用が容易となり、コスト的にも安価なシステムが構築できる。
【0105】
ここで、本実施例は、ベクトル制御を用いたインバータ回路で説明したが、従来から広く使われている120度通制御形インバータ回路を用いても同様の効果が得られる。
【0106】
また、本実施例では、直流電圧を検出することにより、電源電圧及び負荷の状態(変化)を検出したが、負荷状態情報としては、例えば、モータ回転数,入力電流,直流電流,直流電圧,直流電力,直流電圧脈動幅,入力電力,トルク,インバータ回路の波高値比率及びインバータ通流率などの負荷の状態で変化する値なら良い。また、上記値を二つ以上併用しても良い。
【0107】
以上の通り、本発明を適用すると、電源電圧や負荷が変動しても運転を継続でき、通常時は最適な効率で動作させることができるシステムを構築できる。また、昇圧比及び制限値の設定を最適化すれば、高効率動作と同時に高調波電流の抑制も自動的に可能となる。
【実施例4】
【0108】
図16,図17を用いて本発明の第4の実施例を説明する。前述した実施例(1〜3)と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。
【0109】
図16は第3の実施例で説明したモータ駆動装置をインバータエアコンの圧縮機駆動用モータ駆動装置に適用した場合のインバータエアコンの外観図、図17は昇圧比aをインバータエアコンの負荷(回転数)に応じて変更した場合の動作説明図である。
【0110】
前述の実施例では、直流電圧が制限値以上もしくは以下になった時に、昇圧比aを補正する内容について説明したが、更なる効率向上と高出力化の両立を図るためには、昇圧比aの設定値自体もシステム(インバータエアコン)の負荷に応じて変更する必要がある。
【0111】
図16は一例として、セパレート型のインバータエアコンの外観図を示しており、室外機600と室内機400で構成されている。室外機600内には、モータと一体となった圧縮機300や室外ファン100及び圧縮機300や室外ファン100を駆動するモータ駆動装置200が設置されている。
【0112】
本実施例では、図17を用いて昇圧比aをインバータエアコンの圧縮機駆動用モータの回転数の状態に応じて変更する方法を説明する。
【0113】
基本的には、前述の実施例同様昇圧比aを固定でも良いのであるが、更なる効率向上やモータ制御の安定化及び高出力化を考慮して負荷の状態で昇圧比aを変更する。
【0114】
図17は横軸にモータ回転数、縦軸に昇圧比a及び直流電圧Edを示す。図17に示す通り、モータの回転数が低い領域、言い換えると、負荷が軽い状態では昇圧比aを下げて運転する。この場合、直流電圧を低く押さえることが出来るため、電源回路のスイッチング損失等が低下し、さらにインバータ回路及びモータの損失も低減でき、高効率動作が可能となる。
【0115】
但し、この場合、入力電流波形は高調波成分が増加し、電源力率も低下する。そのため、昇圧比aの設定は、上記を考慮して設定する必要がある。
【0116】
モータの回転数(負荷)がさらに増加すると入力電流の高調波成分が規格値に入らなくなったり、力率が大きく低下する可能性がある。また、直流電圧Edも低下して行く。そこで、モータ回転数(負荷)が増加するに従って、昇圧比aを増加させていけば、モータの回転数(負荷)に応じて常に高効率な運転が可能となる。
【0117】
本実施例では、モータ回転数に従って階段状に昇圧比aを変更しているが、実動作ではヒステリシスを設ける必要がある(図示を省略した)。また、昇圧比aの変更は、直線的に変更したり、ある関数を用いて変更しても良い。さらに、昇圧比aを用いて回転数制御をすることも可能である。言い換えると、昇圧比aを変更して直流電圧を可変としてモータの回転数制御をすることも可能である。
【0118】
ここで、負荷状態情報としては、例えば、モータ回転数,入力電流,直流電流,直流電圧,直流電力,直流電圧脈動幅,入力電力,トルク,インバータ回路の波高値比率及びインバータ通流率などの負荷の状態で変化する値なら良い。また、上記値を二つ以上併用しても良い。
【0119】
以上の通り、インバータエアコンの負荷に応じて設定する昇圧比aを変更することにより、更なる効率向上と高出力化の両立が可能となり、(想定外の)電源変動や負荷変動があっても、システム停止を防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 交流電源
2 整流回路
3 昇圧チョッパ回路
4 平滑コンデンサ
5,7 制御回路
6 負荷
8 インバータ回路
9 モータ
50,70 演算手段
50A 昇圧比一定制御部
50B,50C,50D 昇圧比補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相交流電源の力率改善回路もしくは高調波電流抑制回路の制御方法及び、それを用いたモータ駆動装置,空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
単相交流電源の力率改善もしくは高調波電流抑制を行う電源回路は広く使用されている。中でも、リアクトルとスイッチング素子とダイオードから構成される昇圧チョッパ回路を用いた電源回路は、回路構成及び制御構成が簡単であるため、電源への回生が必要でないインバータ制御装置など(インバータエアコンなど)の電源回路として使用されている。
【0003】
昇圧チョッパ回路を用いた力率改善方法もしくは高調波電流抑制方法は多数報告されている。中でも、特許文献1は、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出することなく、電源電流瞬時値と比例ゲインのみを用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波波形に制御する方式(これを基本方式と呼ぶ)が記載されている。また、特許文献2には、上記技術を応用した内容が記載されている。
【0004】
特許文献2は、昇圧チョッパ回路の高効率化を目的に、入力電流のピーク付近のスイッチング動作を停止させる昇圧比一定制御方式(部分スイッチング方式)が提案されている。
【0005】
前記特許文献1は、電源周期の全域でスイッチング動作(全域スイッチング方式)を行うことが前提に記載されているが、この全域スイッチング方式では、スイッチング損失が増加して回路効率が低下してしまう。そこで、特許文献2記載の昇圧比一定制御方式は上記基本方式の考え方(基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出しない)を踏襲しながら、電源電流のピーク付近のスイッチング動作を停止する部分スイッチング方式とし、スイッチング損失の低減を図っている。
【0006】
また、特許文献2で開示された発明は、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出しないで、部分スイッチングする方式であり、優れた制御方法であるが、昇圧比を一定に設定しているため、電源回路に接続された電源電圧や負荷に応じて直流電圧が変化してしまう。
【0007】
ここで、昇圧チョッパ回路を用いた電源回路において直流電圧を制御する例として、特許文献3〜7等で提案されているが、これらは、全域スイッチング方式を用いた方式であり、スイッチング損失の低減と直流電圧の安定制御の両立は考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−114372号公報
【特許文献2】特許第2796340号公報
【特許文献3】特開2003−289696号公報
【特許文献4】特開2000−350442号公報
【特許文献5】特開平09−149690号公報
【特許文献6】特開2003−189689号公報
【特許文献7】特開2001−231262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した直流電圧の変化は、部分スイッチングさせるためには必要不可欠な現象であり、本方式の特徴(長所)でもあるが、電源電圧や負荷が大きく変化した場合、直流電圧も大きく変化して、本方式(電源回路)を適用しているシステムの動作維持ができなくなる可能性がある。例えばインバータエアコンの圧縮機駆動用モータの駆動装置に適用した場合、モータ駆動が一旦停止すると、圧縮機の負荷をバランスさせるために一定時間システムが停止してしまい、エアコンとしての能力を低下させてしまう恐れがある。
【0010】
以上の通り、本発明が解決しようとする課題は、部分スイッチング動作によるスイッチング損失の低減(高効率化)と直流電圧の安定制御化(適用システムの安定制御化)の両立である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源電圧や負荷が大きく変化した場合に昇圧比を補正もしくは変更することを特徴とする。
【0012】
具体的には、昇圧比一定制御方式を用いた電源回路において、電源回路の直流電圧を検出し、検出した直流電圧値が予め設定した設定値を超えた場合に、その偏差を用いて、昇圧比を補正する構成とすることを特徴とする。
【0013】
さらに、電源回路の負荷状態に応じて、設定する昇圧比自体を変更する構成とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電源電圧や負荷状態が変動しても直流電圧の変動を抑制(過電圧,電圧低下)でき、適用システムの高効率化と安定制御化の両立が図れる。
【0015】
また、本発明を用いた制御基板(ハイブリッドICやモジュール)を制作することにより電源回路の制御が簡単になり高力率もしくは高調波電流抑制が可能な電源回路の製品適用が増進される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電源回路の実施方法を示した全体構成図である。(実施例1)
【図2】電源回路の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例1)
【図3】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例1)
【図4】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例1)
【図5】電源回路の制御回路の利用形態の一例を示す説明図である。(実施例1)
【図6】電源回路の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例2)
【図7】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例2)
【図8】電源回路の実施方法の動作説明図である。(実施例2)
【図9】モータ駆動装置の実施方法を示した全体構成図である。(実施例3)
【図10】モータ駆動装置の実施方法を示した制御ブロック図である。(実施例3)
【図11】モータ駆動装置の実施方法を示した動作説明図である。(実施例3)
【図12】モータ駆動装置の実施方法を示した動作説明図である。(実施例3)
【図13】モータ駆動装置の実施方法を示した動作波形図である。(実施例3)
【図14】モータ駆動装置の実施方法を示した動作波形図である。(実施例3)
【図15】モータ駆動装置の制御回路の利用形態の一例を示す説明図である。(実施例3)
【図16】インバータエアコンの実施方法を示した外観図である。(実施例4)
【図17】インバータエアコンの実施方法の動作説明図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2の係数を生成し、第2の係数と前記入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいてスイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、平滑回路に接続された負荷の状態を示す負荷状態情報を生成する負荷状態生成手段と、負荷状態情報を用いて前記第1の係数を補正する係数補正手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また、負荷状態生成手段は前記平滑回路の直流電圧情報を負荷状態情報として用いることを特徴とし、電源電圧状態生成手段は前記平滑回路の直流電圧情報を電源電圧状態情報として用いることを特徴とする。
【0019】
さらに、電源回路の負荷としてモータを駆動するインバータ回路と、電源回路とインバータ回路を制御する制御回路を同一基板上に備えるモジュールであって、第1の係数を前記モータの回転数、負荷状態もしくは外部信号の少なくとも一つの情報に応じて変更することを特徴とする。
【0020】
次に、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2係数を生成し、第2の係数と前記入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいてスイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、整流回路に接続された電源の状態を示す電源電圧状態情報を生成する電源電圧状態生成手段と、電源電圧状態情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えることを特徴とする。
【0021】
また、交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路と、交流電源から流入する入力電流情報を生成する入力電流情報生成手段と、入力電流情報と設定された第1の係数より第2係数を生成し、第2の係数と入力電流情報との積を求め、少なくとも、この積に基づいて前記スイッチング素子の動作を規定する通流率信号を作成する制御手段を備えた電源回路において、平滑回路の直流電圧の状態を示す直流電圧情報を生成する直流電圧生成手段と、直流電圧情報を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、直流電圧情報と設定された基準値との偏差に基づいて前記第1の係数を補正する係数補正手段を備え、その補正を比例・積分補償器を用いて行うことを特徴とする。
【0023】
さらに、直流電圧情報と設定された第1の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第1の補正値を算出し、直流電圧情報と設定された第2の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第2の補正値を算出し、第1の補正値と第2の補正値を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
また、上記電源回路において、第1の係数を補正する補正値にリミッタを設けることを特徴とする。
【0025】
さらに、直流電圧情報と設定された第1の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第1の補正値を算出し、直流電圧情報と設定された第2の基準値との偏差から比例・積分補償器を用いて第1の係数を補正する第2の補正値を算出し、第1の補正値と前記第2の補正値を用いて第1の係数を補正する係数補正手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
第1の基準値を電源回路もしくはモータ駆動装置のシステムとしての過電圧値以下に設定し、第2の基準値を前記電源回路もしくはモータ駆動装置のシステムの最低電圧値以上に設定することを特徴とする。
【0027】
モータ駆動装置を空調機の圧縮機駆動用モータの駆動に適用し、モータの回転数もしくは負荷状態に応じて、第1の係数を変更するとともに、第1の係数を前記直流電圧と基準値を用いて補正することを特徴とする。
【0028】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、交流電源から流入する入力電流情報と、平滑回路の直流電圧情報を入力として通流率信号を出力し、入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化し、又はその変化と同時に直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする。
【0029】
また、入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化し、又はその変化と同時に、直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする。
【0030】
さらに、電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、直流電圧が変化する領域と、直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる信号であり、直流電圧が所定値に制御されている時に、通流率信号のスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる期間が変化することを特徴とする。
【0031】
また、電源電圧の大きさ、もしくは、負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、直流電圧が変化する領域と、直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、直流電圧が所定値に制御されている時に、電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない期間が変化することを特徴とする。
【0032】
さらに、電源装置もしくはその制御回路において、入力電流が16A時の通流率信号のスイッチング動作停止、もしくは、最少パルス幅となる期間は、入力電流が2A時の90%以下になることを特徴とする。
【0033】
また、電源装置もしくはその制御回路において、入力電流が16A時の電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らなくなる期間は、入力電流が2A時の90%以下になることを特徴とする。
【実施例1】
【0034】
図1から図5を用いて本発明の第1の実施例を説明する。図1は本実施例の電源回路の全体構成図、図2は制御内容を示す制御ブロック図、図3,図4は本実施例の動作説明図、図5は図1に示す電源回路を動作させる制御回路の利用形態の一例を示す概観図である。
【0035】
図1を用いて電源回路の構成と動作について説明する。本電源回路は、交流電源1に接続された整流回路2,昇圧チョッパ回路3,平滑コンデンサ4及び、制御回路5を備え、前記平滑コンデンサ4の出力端子に接続された負荷6に直流電力を供給する。
【0036】
前記昇圧チョッパ回路3は、リアクトル32と、前記交流電源1を前記リアクトル32を介して短絡するスイッチング素子31及び、前記スイッチング素子31の端子電圧を前記平滑コンデンサ4に供給するダイオード33から構成され、前記スイッチング素子31のスイッチング動作と前記リアクトル32によるエネルギー蓄積効果を利用して直流電圧を昇圧する回路である。ここで、前記スイッチング素子31はIGBTやトランジスタなどの自己消己形素子を使用し、前記制御回路5からのドライブ信号51aに従って駆動される。
【0037】
前記制御回路5は、シャント抵抗53と増幅回路52を用いて前記交流電源1から流入する入力電流を検出し入力電流値5bを出力する電源電流検出回路と、前記平滑コンデンサ4の端子電圧である直流電圧を検出し直流電圧値5cを出力する直流電圧検出回路と、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cに従って前記スイッチング素子31を制御する通流率信号5aを演算する演算手段50及び、前記通流率信号5aを増幅して前記スイッチング素子31を駆動するドライブ信号51aを出力するドライブ回路51から構成されている。ここで、直流電圧検出回路の詳細は図示していないが、抵抗を用いた分圧回路を用いれば簡単な回路構成で実現できる。
【0038】
演算手段50は、シングルチップマイクロコンピュータに代表される半導体演算素子(以後マイコンと称す)を用いており、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cはマイコン内蔵のA/D変換器を用いてデジタル値に変換して演算を行っている。前記通流率信号5aはマイコン内蔵のPWMタイマを用いてPWMパルス信号の形で出力している。
【0039】
ここで、本実施例ではマイコンを用いたデジタル演算で説明するが、トランジスタやオペアンプやコンパレータなどのアナログ演算回路等を利用した演算手段を用いても同様の効果が得られる。
【0040】
次に前記演算手段50内で行われる演算の内容に関して図2を用いて説明する。本説明では、前記入力電流値5bと前記直流電圧値5cを用いて前記通流率信号5aを算出する部分について述べる。算出した通流率信号5aからPWMタイマを用いてPWMパルス信号を作成する部分はマイコンの機能であるため省略する。
【0041】
図2の制御ブロック図は、従来技術である昇圧比一定制御部50Aと本発明である昇圧比補正部50Bから構成されている。
【0042】
昇圧比一定制御部50Aは、基準となる正弦波電流指令や電源位相を検出することなく入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積を用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波波形に制御する基本方式と、スイッチング損失低減のため入力電流のピーク付近のスイッチング動作を停止させる昇圧比一定制御方式から構成されている。
【0043】
ここで、基本方式と昇圧比一定制御方式について簡単に説明する。
【0044】
図1に示す昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子31の通流率信号(オン時間の比率)dを式(1)の通り与えると、入力電流isは式(2)の通りとなる。(導出の詳細は省略)式(2)からわかる通り、電源電圧波形などの基準波形が無くても入力電流isは電源電圧Vsに同期した正弦波になる。これが、基本方式の原理である。
【0045】
【数1】
ここで、1:100%通流率,Kp:電流制御ゲイン,is:入力電流(瞬時値)
【0046】
【数2】
ここで、Vs:電源電圧実効値,Ed:直流電圧,ω:電気角周波数
【0047】
基本方式では、上記比例ゲインKpを直流電圧偏差より決定することにより、直流電圧Edの制御が可能である。
【0048】
ここで、式(2)を変形すると
【0049】
【数3】
となり、式(3)は、瞬時の昇圧比を示している。
【0050】
ここで、実効値ベースで昇圧比aを考えると
【0051】
【数4】
ここで、Is:入力電流(実効値)
となり、Kp・Isを一定に制御すれば、直流電圧Edは電源電圧Vsのa倍に制御できる。
【0052】
以上の方法に基づき、通流率信号dを次式により与えれば
【0053】
【数5】
【0054】
通流率信号dは、入力電流|is|がa・Isを超えると0%となり、スイッチング動作が停止する。これにより、入力電流は電源電圧のピーク付近(入力電流がa・Isを超える領域)でチョッパが入らない波形となり、スイッチング損失の低減が図れる。これが昇圧比一定制御の原理である。
【0055】
上記の通り制御することにより、基準となる正弦波電流指令波形や電源位相を検出することなく、入力電流瞬時値と比例ゲインのみを用いて入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御でき、入力電流のピーク値付近のスイッチング動作を停止(部分スイッチング動作)することが可能である。
【0056】
上記式をブロック図にすると図2の50Aの通りとなる。ここで、入力電流実効値Isは前記入力電流値5bをフィルタ手段500を用いて算出しているが平均値や実効値を算出し、その値で制御しても良い。また、昇圧比aは予め設定された値を使用している。
【0057】
また、本ブロック図では通流率信号dの演算において、式(1)及び式(5)の通り、最大通流率である1(100%)から入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積を差し引いて算出しているが、実際のPWMタイマ設定では、入力電流瞬時値(絶対値)|is|と比例ゲインKpの積の値をオフ時間の比率と考えて設定すれば最大通流率である1から差し引く必要はない。
【0058】
昇圧比補正部50Bは、予め設定してある制限値EdLim1と検出した前記直流電圧値5cとの偏差から比例・積分補償器501を用いて昇圧比aの補正値を演算し昇圧比aの補正を行う構成となっている。
【0059】
ここで、本実施例は、電源電圧や負荷の変動により直流電圧が過電圧保護値を超えて動作が停止することを防止することを目的としているので、制限値EdLim1は電源回路の過電圧保護値より低い値に設定してある。また、昇圧比aの補正動作は直流電圧値が制限値EdLim1を超えた時のみ動作するように、リミッタ503が設定されている(昇圧比を下げる方向にのみ動作する)。
【0060】
以上のように、本実施例は従来技術の前記昇圧比一定制御部50Aと本発明の昇圧比補正部50Bを組み合わせることにより実現している。
【0061】
図3,図4の動作説明図を用いて本実施例の動作及び効果について述べる。なお、本明細書では説明および図の簡単化のため、各値の変化は理想的な応答で示している。実際には制御遅れ等の影響があり、本図のような特性とはならない。また、その特性は、比例・積分補償器の制御ゲインの設定により異なる。
【0062】
図3は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、電源電圧Vsを取り、時間t1及びt2で電源電圧Vsが大きく変動した場合の動作を示した図である。
【0063】
ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、従来技術(昇圧比一定制御部50Aのみ)の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0064】
t1で、電源電圧Vsが急上昇すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、過電圧設定値EdMAXを超えてしまい、過電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧は急低下する)。
【0065】
これに対して、本発明では、直流電圧が制限値EdLim1を超えると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim1に維持する。これにより、過電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作維持が可能となる。また、t2で、電源電圧Vsが正常値に戻れば、昇圧比aの補正も通常値(設定値)に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0066】
図4は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、負荷Lを取り、時間t1及びt2で負荷Lが大きく変化した場合の動作を示した図である。
【0067】
ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、図3同様に、従来技術の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0068】
t1で、負荷Lが急低下すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、過電圧設定値EdMAXを超えてしまい、過電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧は急低下する)。
【0069】
これに対して、本発明では、図3同様に、直流電圧が制限値EdLim1を超えると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim1に維持する。これにより、過電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作の維持が可能となる。また、t2で、負荷Lが元の値に戻れば、昇圧比aの補正も設定値に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0070】
以上のように、電源電圧や負荷が過渡的に大きく変動しても直流電圧の上昇を制限値以下に抑制し、システムの過電圧保護停止を防止できる。また、通常状態では、予め設定されている昇圧比aで動作するので、最適な効率,力率及び、高調波電流での動作が可能である。
【0071】
ここで、上記特性(応答)は、比例・積分補償器に設定するゲインにより変化することは言うまでもない。実際のシステムでは、制限値EdLim1と設定ゲインをシステムが要求する特性に合わせて設定する必要がある。
【0072】
次に図5を用いて本実施例の電源回路を動作させる制御回路の利用形態の一例を説明する。
【0073】
本利用形態は図1に示す制御回路5をハイブリッドIC化した概観図である。但し、前記シャント抵抗53は部品の変更やノイズ対策上ハイブリッドIC内に設置するのではなく、スイッチング素子31等パワー回路部品と同様のスペースに設置することが望ましい。
【0074】
図1に示した制御回路5の入出力端子は、入力電流検出端子,直流電圧検出端子及び、ドライブ信号出力端子の3つであるが、これ以外に、昇圧比設定端子,直流電圧制限値設定端子,接続した負荷の状態を検出する負荷状態情報検出端子及び機能などを設置することにより、より汎用性が増したハイブリッドICを実現できる。
【実施例2】
【0075】
図6から図8を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。図6は本実施例の制御ブロック図、図7,図8は本実施例の動作説明図である。全体回路構成は図1と同様である。
【0076】
図6は、第1の実施例同様、従来技術である昇圧比一定制御部50Aと本発明である昇圧比補正部50Cから構成されている。昇圧比補正部50Cは、第1の実施例で説明した昇圧比補正部50Bと同様の構成であり、異なる部分は、制限値EdLim2とリミッタ504のみである。なお、比例・積分補償器502は図2に示す比例・積分補償器501と同様の動作を行うものである。
【0077】
第1の実施例では、直流電圧の過電圧を抑制する動作であったが、本実施例は、直流電圧の低下を防止する構成である。このため、リミッタ504は、直流電圧値が制限値EdLim2を下まわった時のみ昇圧比aを補正するように設定されている(昇圧比を上げる方向にのみ動作する)。
【0078】
図7の動作説明図は、第1の実施例同様、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、電源電圧Vsを取り、時間t1及びt2で電源電圧Vsが大きく変動した場合の動作を示した図である。ここで、昇圧比aと直流電圧Edは、従来技術の場合(点線で表示)と本発明(実線で表示)での動作を合わせて示している。
【0079】
t1で、電源電圧が急低下した場合、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edも電源電圧同様に急低下する。ここで、電源回路システムとして低電圧保護設定値EdMINが設定されていると低電圧保護が働き電源回路システムが停止して、システムの動作維持ができなくなる。
【0080】
これに対して、本発明では、直流電圧が制限値EdLim2以下になると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim2に維持する。これにより、低電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作維持が可能となる。また、t2で、電源電圧Vsが正常値に戻れば、昇圧比aの補正も通常値(設定値)に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0081】
図8は、横軸に時間、縦軸に昇圧比a、直流電圧Ed及び、負荷Lを取り、時間t1及びt2で負荷Lが大きく変化した場合の動作を示した図である。
【0082】
t1で、負荷Lが急上昇すると、従来技術では昇圧比aが固定のため直流電圧Edは、低電圧保護設定値EdMIN以下となり、低電圧保護が働き、スイッチング動作を停止する(直流電圧はさらに急低下する)。
【0083】
これに対して、本発明では、図7同様に、直流電圧が制限値EdLim2以下となると昇圧比aの補正が行われ、直流電圧を制限値EdLim2に維持する。これにより、低電圧保護が動作するのを防止でき、システムの動作の維持が可能である。また、t2で、負荷Lが元の値に戻れば、昇圧比aの補正も設定値に戻り、通常の直流電圧を維持する。
【0084】
以上のように、電源電圧や負荷が過渡的に大きく変動しても直流電圧の低下を制限値に抑制し、システムの低電圧保護停止を防止できる。また、通常状態では、予め設定されている昇圧比aで動作するので、最適な効率,力率及び、高調波電流での動作が可能である。
【0085】
ここで、第1及び第2の実施例では、過渡的な変動を例に動作説明を行って来たが、電源及び負荷の変動は必ずしも過渡的な場合だけでなく、ゆっくりとした変動に対しても同様の構成で対応可能である。
【実施例3】
【0086】
図9から図15を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第1の実施例,第2の実施例と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。
【0087】
図9は本実施例のモータ駆動装置の全体構成図、図10は制御内容を示す制御ブロック図、図11,図12は本実施例の動作説明図、図13,図14は電源回路に流入する入力電流波形、図15は本実施例の利用形態の一例を示すモジュール外観図である。
【0088】
図9は、本発明の電源回路の負荷としてモータ9及びインバータ回路8からなるモータ駆動回路を接続し、本発明の電源回路の制御回路と前記インバータ回路8の制御回路を一体化させた構成となっている。言い換えると、図9に示す制御回路7はマイコンを使用し、1つのマイコンで電源回路とインバータ回路を制御する構成となっている。
【0089】
第1及び第2の実施例と異なる部分のみ説明する。インバータ回路8はIGBTとダイオードから構成されているインバータ回路であり、モータ9は永久磁石同期モータである。
【0090】
また、昇圧チョッパ回路の構成が第1及び第2の実施例と異なっているが、本回路構成でも第1及び第2の実施例同様の動作が可能である。ここで、整流回路2内のダイオード21,22は電源の整流動作以外に、第1及び第2の実施例の昇圧チョッパ回路3のダイオード33と同様の動作を行う。言い換えると、前記ダイオード21,22は上記2つの動作を行っており、この回路構成にすることにより、ダイオード1個分の損失を低減できる効果がある。
【0091】
制御回路7は上述のようにマイコンを使用し本発明の電源回路とインバータ回路を制御しており、マイコン(演算手段70)では、第1及び第2の実施例で説明した電源回路の制御演算とインバータ回路の制御演算を行っている。
【0092】
図10に示す電源回路部の制御回路の構成については第1及び第2の実施例で説明した内容を合わせた構成(50Bと50Cを合わせて50Dとしている)となっているので説明は省略する。ここでは、インバータ回路部の制御回路の構成について簡単に説明する。
【0093】
本実施例のモータ制御では、モータ電流センサレス,位置センサレスベクトル制御を行っているため、インバータ回路から検出するものは直流側に設置したシャント抵抗73に流れる直流電流のみである。具体的には、図9に示す通り、前記シャント抵抗73に発生する電圧を増幅回路72で増幅し、直流電流検出値7bとしてマイコンのA/D変換器を用いて取り込む。また、インバータ回路のスイッチング素子に与えるPWM信号7aはドライブ回路71を介してドライブ信号71aとしてインバータ回路に与えている。
【0094】
ここで、図示してないが演算手段70内には、第1及び第2の実施例で説明した電源回路の制御手段とモータ電流センサレス,位置センサレスベクトル制御手段が内蔵されており、お互いに内部値の情報交換が可能である。上記構成で電源回路は第1及び第2の実施例同様の動作を行う。
【0095】
次に図11,図12を用いて本実施例の動作を説明する。第1及び第2の実施例では動的(過渡的)な動作で説明したが、本実施例では静的な動作で説明する。
【0096】
図11は、負荷に対する昇圧比aと直流電圧Edを示したものである。本実施例は、図10に示す通り、第1及び第2の実施例で説明した制御構成が一緒になった構成となっており、制限値EdLim1と制限値EdLim2の間で直流電圧が変化する動作となる。
【0097】
例えば、負荷が負荷L1以下の軽負荷となると、昇圧比補正部50Bが動作し、昇圧比aが補正され(減少)、直流電圧は制限値EdLim1に制御される。反対に、負荷が負荷L2以上の高負荷になると、昇圧比補正部50Cが動作し、昇圧比aが補正され(増加)、直流電圧は制限値EdLim2に制御される。
【0098】
図12は、電源電圧に対する昇圧比aと直流電圧Edを示したものであり、昇圧比aと直流電圧Edの動きは、図11と同様であるので説明は省略する。
【0099】
ここで、図13,図14に電源電圧を一定として負荷を変化させた時の電源回路に流入する入力電流(リアクトル電流)と電源電圧の波形の実験結果を示す。
【0100】
図13は従来技術(昇圧比一定制御部50Aのみ)を用いた場合、図14は本発明を用いた場合の実験結果である。図13,図14とも(a)は入力電流2A、(b)は入力電流16Aでの結果である。また、部分スイッチング動作でのスイッチングOFF期間も合わせて示している。
【0101】
この図より、従来技術では、負荷が変化しても昇圧比aを調整(変更)しないので、スイッチングOFF期間もほぼ同一の時間間隔であり、負荷が増加するに従って、入力電流波形もひずみ率が大きな波形となっている。ここでは、図示しないが、図13(b)の電流波形では、高調波電流も増加する。
【0102】
これに対して、本発明を用いた入力電流波形は、図14に示すように、スイッチングOFF期間が変化(約15%減少)し、ひずみ率の少ない波形となっている。高調波電流値は図示しないが、図14(b)の波形は高調波電流値も減少する。
【0103】
図15は本実施例の利用形態の一例として電源回路とインバータ回路及び制御回路を一体化したモジュールの概観図である。
【0104】
本モジュールは、IGBTやダイオードなどのパワー系半導体を下部にベアチップ実装し、制御回路を上部の基板に配置した一体モジュールである。モジュール化することにより、本発明の適用が容易となり、コスト的にも安価なシステムが構築できる。
【0105】
ここで、本実施例は、ベクトル制御を用いたインバータ回路で説明したが、従来から広く使われている120度通制御形インバータ回路を用いても同様の効果が得られる。
【0106】
また、本実施例では、直流電圧を検出することにより、電源電圧及び負荷の状態(変化)を検出したが、負荷状態情報としては、例えば、モータ回転数,入力電流,直流電流,直流電圧,直流電力,直流電圧脈動幅,入力電力,トルク,インバータ回路の波高値比率及びインバータ通流率などの負荷の状態で変化する値なら良い。また、上記値を二つ以上併用しても良い。
【0107】
以上の通り、本発明を適用すると、電源電圧や負荷が変動しても運転を継続でき、通常時は最適な効率で動作させることができるシステムを構築できる。また、昇圧比及び制限値の設定を最適化すれば、高効率動作と同時に高調波電流の抑制も自動的に可能となる。
【実施例4】
【0108】
図16,図17を用いて本発明の第4の実施例を説明する。前述した実施例(1〜3)と同一符号は同一動作をするものであり説明は省略する。
【0109】
図16は第3の実施例で説明したモータ駆動装置をインバータエアコンの圧縮機駆動用モータ駆動装置に適用した場合のインバータエアコンの外観図、図17は昇圧比aをインバータエアコンの負荷(回転数)に応じて変更した場合の動作説明図である。
【0110】
前述の実施例では、直流電圧が制限値以上もしくは以下になった時に、昇圧比aを補正する内容について説明したが、更なる効率向上と高出力化の両立を図るためには、昇圧比aの設定値自体もシステム(インバータエアコン)の負荷に応じて変更する必要がある。
【0111】
図16は一例として、セパレート型のインバータエアコンの外観図を示しており、室外機600と室内機400で構成されている。室外機600内には、モータと一体となった圧縮機300や室外ファン100及び圧縮機300や室外ファン100を駆動するモータ駆動装置200が設置されている。
【0112】
本実施例では、図17を用いて昇圧比aをインバータエアコンの圧縮機駆動用モータの回転数の状態に応じて変更する方法を説明する。
【0113】
基本的には、前述の実施例同様昇圧比aを固定でも良いのであるが、更なる効率向上やモータ制御の安定化及び高出力化を考慮して負荷の状態で昇圧比aを変更する。
【0114】
図17は横軸にモータ回転数、縦軸に昇圧比a及び直流電圧Edを示す。図17に示す通り、モータの回転数が低い領域、言い換えると、負荷が軽い状態では昇圧比aを下げて運転する。この場合、直流電圧を低く押さえることが出来るため、電源回路のスイッチング損失等が低下し、さらにインバータ回路及びモータの損失も低減でき、高効率動作が可能となる。
【0115】
但し、この場合、入力電流波形は高調波成分が増加し、電源力率も低下する。そのため、昇圧比aの設定は、上記を考慮して設定する必要がある。
【0116】
モータの回転数(負荷)がさらに増加すると入力電流の高調波成分が規格値に入らなくなったり、力率が大きく低下する可能性がある。また、直流電圧Edも低下して行く。そこで、モータ回転数(負荷)が増加するに従って、昇圧比aを増加させていけば、モータの回転数(負荷)に応じて常に高効率な運転が可能となる。
【0117】
本実施例では、モータ回転数に従って階段状に昇圧比aを変更しているが、実動作ではヒステリシスを設ける必要がある(図示を省略した)。また、昇圧比aの変更は、直線的に変更したり、ある関数を用いて変更しても良い。さらに、昇圧比aを用いて回転数制御をすることも可能である。言い換えると、昇圧比aを変更して直流電圧を可変としてモータの回転数制御をすることも可能である。
【0118】
ここで、負荷状態情報としては、例えば、モータ回転数,入力電流,直流電流,直流電圧,直流電力,直流電圧脈動幅,入力電力,トルク,インバータ回路の波高値比率及びインバータ通流率などの負荷の状態で変化する値なら良い。また、上記値を二つ以上併用しても良い。
【0119】
以上の通り、インバータエアコンの負荷に応じて設定する昇圧比aを変更することにより、更なる効率向上と高出力化の両立が可能となり、(想定外の)電源変動や負荷変動があっても、システム停止を防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 交流電源
2 整流回路
3 昇圧チョッパ回路
4 平滑コンデンサ
5,7 制御回路
6 負荷
8 インバータ回路
9 モータ
50,70 演算手段
50A 昇圧比一定制御部
50B,50C,50D 昇圧比補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項2】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化すると同時に、前記直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項3】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項4】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化すると同時に、前記直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項5】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記直流電圧が変化する領域と、前記直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる信号であり、前記直流電圧が所定値に制御されている時に、前記通流率信号のスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる期間が変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項6】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記直流電圧が変化する領域と、前記直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、前記電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、前記直流電圧が所定値に制御されている時に、前記電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない期間が変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項1】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項2】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅の信号となり、その期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化すると同時に、前記直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項3】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項4】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記入力電流波形は、電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、そのスイッチング動作が入らない期間が前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方に応じて変化すると同時に、前記直流電圧がある値以上、もしくは、別のある値以下にならないことを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項5】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記交流電源から流入する入力電流情報と、前記平滑回路の直流電圧情報を入力として前記通流率信号を出力し、前記入力電流波形を電源電圧に同期した正弦波状に制御する制御手段を有し、
前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記直流電圧が変化する領域と、前記直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、前記通流率信号は、電源電圧の半周期の中心付近でスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる信号であり、前記直流電圧が所定値に制御されている時に、前記通流率信号のスイッチング動作を停止、もしくは、最少パルス幅となる期間が変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【請求項6】
交流電源を直流に変換する整流回路と平滑回路からなる電源回路であって、通流率信号に基づいてスイッチング動作するスイッチング素子とインダクタンス及びダイオードからなる昇圧チョッパ回路を備え、前記平滑回路に接続された負荷に直流電力を供給する電源装置もしくはその制御回路において、
前記電源電圧の大きさ、もしくは、前記負荷の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記直流電圧が変化する領域と、前記直流電圧が所定値に制御される領域が存在し、前記電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない波形となり、前記直流電圧が所定値に制御されている時に、前記電流波形は電流波形のピーク付近でスイッチング動作が入らない期間が変化することを特徴とする電源装置もしくはその制御回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−124690(P2010−124690A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48565(P2010−48565)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2008−47029(P2008−47029)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2008−47029(P2008−47029)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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