説明

非平面形状ディスプレイ及びその製造方法

【課題】製造コストの増大を抑制することが可能な非平面形状ディスプレイ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 非ガラス素材によって形成された非平面形状の絶縁基板、前記絶縁基板に接着された下地絶縁層、前記下地絶縁層上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成され、前記アレイ基板に貼り合わせられた対向基板と、を備えたことを特徴とする非平面形状ディスプレイ及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非平面形状ディスプレイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される平面表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、パーソナルコンピュータなどのOA機器、情報端末、時計、テレビなどの表示装置として各種分野で利用されている。近年では、平面表示装置は、携帯電話やPDA(personal digital assistant)などの携帯情報端末機器の表示装置としても利用されている。このような各種分野で利用される平面表示装置には、性能面もさることながら、デザイン性、携帯性などの観点から、より薄く、しかもより軽い表示装置の要求が高まっている。
【0003】
例えば、より一層の薄型化構造を実現とする液晶表示装置が提案されている。一般的に、薄膜トランジスタを形成する基板材料は、耐熱性などの観点から、石英基板やガラス基板が用いられており、これらの基板を機械的または化学的に研磨するなどの処理を行うことで、薄板化や軽量化が図られている。さらに軽量化を狙う方法として、これらのガラス基板を一旦除去して、薄膜トランジスタなどを含むTFT薄膜を別の軽量な樹脂基板などに転写する新たな試みも検討されている。
【0004】
しかしながら、TFT薄膜を転写するためには、TFT薄膜が残留応力などによってカールしないようにすること、及び、製造プロセスにおける耐薬品性の改善やハンドリング性を容易にすることを目的として、支持基板、薬品シールド膜、仮着用接着剤などの間接部材が増加することによるコストアップが懸念される。さらには、フィルム化した基板を用いて液晶表示パネルなどの各種表示パネルを組み立てる新たな設備も必要となることから、従来の製造プロセスの大規模な変更なども必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−265396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、製造コストの増大を抑制することが可能な非平面形状ディスプレイ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
ガラス基板、前記ガラス基板上に形成された研磨ストッパー層、前記研磨ストッパー層上に形成された下地絶縁層、前記下地絶縁層上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成された対向基板と、を貼り合わせて表示セルを形成し、前記表示セルから前記アレイ基板の前記ガラス基板を除去し、前記アレイ基板の前記研磨ストッパー層を除去し、前記表示セルの前記アレイ基板で露出した前記下地絶縁層と、非ガラス素材によって形成された絶縁基板とを接着し、非平面形状ディスプレイを製造する、ことを特徴とする非平面形状ディスプレイの製造方法が提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
ガラス基板、前記ガラス基板上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成された対向基板と、を貼り合わせて表示セルを形成し、前記アレイ基板の前記ガラス基板を薄板化し、前記アレイ基板の前記ガラス基板と、非ガラス素材によって形成された絶縁基板とを接着し、非平面形状ディスプレイを製造する、ことを特徴とする非平面形状ディスプレイの製造方法が提供される。
【0009】
本実施形態によれば、
非ガラス素材によって形成された非平面形状の絶縁基板、前記絶縁基板に接着された下地絶縁層、前記下地絶縁層上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成され、前記アレイ基板に貼り合わせられた対向基板と、を備えたことを特徴とする非平面形状ディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態における非平面形状ディスプレイの構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示パネルの第1構成例を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、表示セルを形成する工程を説明するための断面図である。
【図4】図4は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、表示セルを形成する工程を説明するための平面図である。
【図5】図5は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、アレイ基板のガラス基板を除去する工程を説明するための断面図である。
【図6】図6は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、アレイ基板の研磨ストッパー層を除去する工程を説明するための断面図である。
【図7】図7は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、第1絶縁基板を接着する工程を説明するための断面図である。
【図8】図8は、図2に示した第1構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、第1絶縁基板を接着する他の工程を説明するための断面図である。
【図9】図9は、図1に示した液晶表示パネルの第2構成例を概略的に示す断面図である。
【図10】図10は、図9に示した第2構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、表示セルを形成する工程を説明するための断面図である。
【図11】図11は、図9に示した第2構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、アレイ基板のガラス基板を薄板化する工程を説明するための断面図である。
【図12】図12は、図9に示した第2構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、第1絶縁基板を接着する工程を説明するための断面図である。
【図13】図13は、図9に示した第2構成例の液晶表示パネルの製造方法を説明するための図であり、第1絶縁基板を接着する他の工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態における非平面形状ディスプレイの構成を概略的に示す図である。なお、ここでは、非平面形状ディスプレイの一例として液晶表示装置を例に説明するが、自己発光素子を備えた有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示装置などの自己発光型表示装置であっても良い。
【0013】
液晶表示装置1は、液晶表示パネル100を備えて構成されている。すなわち、液晶表示パネル100は、アレイ基板200と、対向基板400と、アレイ基板200と対向基板400との間に保持された液晶層300と、を備えている。この液晶表示パネル100は、画像を表示する有効表示部102を有している。
【0014】
この有効表示部102は、アレイ基板200と対向基板400とを所定のギャップをもって貼り合わせる本シール材104によって囲まれた内部に形成されている。このような有効表示部102は、マトリクス状に配置された複数の表示画素PXを備えて構成されている。なお、ここに示した例では、本シール材104は閉ループ状に形成されており、液晶材料を注入するための注入口は形成されていない。
【0015】
アレイ基板200は、0.2mm以下の厚さを有する(本実施形態では0.1mmの厚さを有する)第1絶縁基板201を用いて形成されている。このアレイ基板200は、有効表示部102において、第1主面(内面)上に、マトリクス状に配置された複数の信号線X及び複数の走査線Yと、信号線Xと走査線Yとの交点近傍に配置された薄膜トランジスタなどによって構成されたスイッチング素子211と、スイッチング素子211に接続された画素電極213と、を備えている。
【0016】
対向基板400は、0.2mm以下の厚さを有する(本実施形態では0.1mmの厚さを有する)第2絶縁基板401を用いて形成されている。この対向基板400は、有効表示部102において、第1主面(内面)上に、画素電極213に対向して配置された対向電極411を備えている。
【0017】
有効表示部102の周辺に位置する駆動回路部110は、複数の走査線Yに接続された走査線駆動回路部251、及び、複数の信号線Xに接続された信号線駆動回路部261を備えている。走査線駆動回路部251は、各走査線Yに駆動信号(走査信号)を供給する。また、信号線駆動回路部261は、各信号線Xに駆動信号(映像信号)を供給する。
【0018】
図2は、図1に示した液晶表示パネル100の第1構成例を概略的に示す断面図である。
【0019】
アレイ基板200を構成する第1絶縁基板201は、光透過性を有する基板であり、非ガラス素材によって形成されている。この第1絶縁基板201は、接着剤202により下地絶縁層203に接着されている。接着剤202は、紫外線硬化型樹脂などである。下地絶縁層203は、例えば、シリコン酸化物(SiO)によって形成されている。この下地絶縁層203の上には、スイッチング素子211や画素電極213などが形成されている。
【0020】
スイッチング素子211は、半導体層212を備えている。この半導体層212は、例えば、多結晶シリコンやアモルファスシリコンなどによって形成されている。ここでは、スイッチング素子211が多結晶シリコン半導体層を備えたトップゲート型の薄膜トランジスタである場合について説明するが、この例に限らず、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであっても良い。
【0021】
この半導体層212は、チャネル領域212C、及び、このチャネル領域212Cを挟んで両側に配置されたソース領域212S及びドレイン領域212Dを有している。半導体層212は、ゲート絶縁膜214によって覆われている。また、このゲート絶縁膜214は、下地絶縁層203の上にも配置されている。
【0022】
スイッチング素子211のゲート電極Gは、ゲート絶縁膜214の上に形成され、チャネル領域212Cの直上に配置されている。このゲート電極Gは、図示しない走査線Yに電気的に接続されている。ゲート電極Gは、層間絶縁膜217によって覆われている。また、この層間絶縁膜217は、ゲート絶縁膜214の上に配置されている。
【0023】
スイッチング素子211のソース電極S及びドレイン電極Dは、層間絶縁膜217の上に形成されている。ソース電極Sは、ソース領域212Sに電気的に接続されている。このソース電極Sは、図示しない信号線Xに電気的に接続されている。ドレイン電極Dは、ドレイン領域212Dに電気的に接続されている。このような構成のスイッチング素子211は、カラーフィルタ層CFによって覆われている。また、このカラーフィルタ層CFは、層間絶縁膜217の上にも配置されている。
【0024】
画素電極213は、カラーフィルタ層CFの上に形成されている。この画素電極213は、例えば、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)やIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などによって形成されている。このような画素電極213は、スイッチング素子211のドレイン電極Dに電気的に接続されている。配向膜219は、すべての画素電極213を覆うように有効表示部102の略全面に配置されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、アレイ基板200において、下地絶縁層203よりも液晶層300の側に形成されたスイッチング素子211、ゲート絶縁膜214、層間絶縁膜217、カラーフィルタ層CF、画素電極213、及び、配向膜219をまとめて『第1画素形成部220』と称する。
【0026】
対向基板400を構成する第2絶縁基板401は、光透過性を有する基板であり、第1絶縁基板201と同様に、非ガラス素材によって形成されている。この第2絶縁基板401のアレイ基板200と対向する側には、対向電極411が形成されている。この対向電極411は、例えば、ITOやIZOなどによって形成されている。配向膜405は、対向電極411の全体を覆うように有効表示部102の略全面に配置されている。
【0027】
なお、本実施形態においては、対向基板400において、第2絶縁基板401よりも液晶層300の側に形成された対向電極411及び配向膜405をまとめて『第2画素形成部420』と称する。
【0028】
アレイ基板200と対向基板400との間には、所定のセルギャップを形成するための図示しない柱状スペーサが配置されている。液晶層300は、アレイ基板200と対向基板400との間のセルギャップに封入された液晶材料によって形成されている。このような液晶層300は、後述する滴下注入方式によって形成されている。
【0029】
なお、図示しないが、アレイ基板200を構成する第1絶縁基板201の第2主面(外面)及び対向基板400を構成する第2絶縁基板401の第2主面(外面)には、それぞれ偏光板などを含む光学素子が接着されている。
【0030】
ここで述べた非ガラス素材としては、例えば、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなるフィルム単体、前記した樹脂材料とガラス繊維とのハイブリッド樹脂基板などの各種ハイブリッド基板といった高耐熱性基板が適用可能である。製品名としてはPES、PEN、ネオプリムなどが有名であるが、液晶表示パネルなどの表示セルを構成する基板としての所望の透過率、耐熱性、耐薬品性を備えた材料であれば概ね使用可能である。
次に、図2に示した第1構成例の液晶表示パネル100の製造方法について説明する。ここでは、大判の表示セル1000から複数の液晶表示パネル100を形成する多面取りセルの製造方法を例に説明する。
【0031】
まず、図3及び図4に示すように、大判の表示セル1000を形成する。
【0032】
ここでは、ガラス基板1205の上に研磨ストッパー層1206を形成し、この研磨ストッパー層1206の上に下地絶縁層1203を形成した後に、下地絶縁層1203の上に第1画素形成部1220を形成し、大判のアレイ基板1200が製造される。研磨ストッパー層1206としては、例えば、アモルファスシリコン(a−Si)などの耐フッ酸性を有する材料によって形成された薄膜を用いることが好ましい。
【0033】
一方で、非ガラス素材によって形成された第2絶縁基板1401の上に第2画素形成部1420を形成し、大判の対向基板1400が製造される。
【0034】
そして、各有効表示部を囲むように本シール材1104と、アレイ基板1200及び対向基板1400の外縁に沿ってすべての有効表示部を囲むように配置された仮シール材1106とを塗布した後に、各有効表示部に液晶材料を滴下し、アレイ基板1200と対向基板1400とを所定のセルギャップをもって貼り合わせ、各有効表示部に液晶材料を封入した表示セル1000が製造される。
【0035】
本シール材1104及び仮シール材1106としては、光(例えば紫外線)硬化型等の種々の接着剤を用いることができ、所定波長の光を照射することにより硬化させ、アレイ基板1200及び対向基板1400を接着する。
【0036】
続いて、図5に示すように、表示セル1000からアレイ基板1200のガラス基板1205を除去する。ここでは、一体化されたアレイ基板1200及び対向基板1400を化学的研磨処理によりアレイ基板1200のガラス基板1205を研磨する。すなわち、研磨溶液として例えばフッ酸溶液を用意し、表示セル1000を研磨溶液に浸漬することでアレイ基板1200のガラス基板1205を研磨する。これにより、アレイ基板1200の表面が溶解し、水ガラスへと化学変化する。このとき、水ガラスによってアレイ基板1200の表面が保護されるため、随時アレイ基板1200を揺動して水ガラスを剥離し、新しい基板表面を露出させるようにする。
【0037】
そして、予め形成した研磨ストッパー層1206が露出するまで研磨したところで、表示セル1000をフッ酸溶液から取り出し、流水によって洗浄し、表面の水ガラス及びフッ酸溶液を除去する。このとき、仮シール材1106によってすべてのセルが密封されているため、このような化学的研磨処理を行った際に研磨溶液がセルの周辺回路に浸入することはない。
【0038】
続いて、図6に示すように、アレイ基板1200の研磨ストッパー層1206を除去する。ここでは、ガラス基板が全て研磨によって除去されたアレイ基板1200からアルカリ溶液(例えば、TMAH)を用いて研磨ストッパー層1206を除去する。これにより、アレイ基板1200において、下地絶縁層1203が露出する。
【0039】
続いて、有効表示部及び周辺回路部を残す設計で個々のセル状態に分断する。この分断には、第1画素形成部1220などを備えたアレイ基板1200や非ガラス素材ベースの対向基板1400を一括で切断が可能な、COレーザや2次乃至4次の高調波YAGレーザなどの割断装置を利用してスクライブ処理を行う。
【0040】
単個状態となった個々の表示セル(ここでは液晶表示パネル100)は、図7に示すように、アレイ基板1200から切り出された下地絶縁層203及び第1画素形成部220と、対向基板1400から切り出された第2絶縁基板401及び第2画素形成部420と、これらの第1画素形成部220と第2画素形成部420との間に保持された液晶層300と、本シール材104とを備えている。
【0041】
そして、露出した下地絶縁層203及び非ガラス素材によって形成された第1絶縁基板201の少なくとも一方に接着剤202を塗布した後に、この接着剤202により、下地絶縁層203と第1絶縁基板201とを接着する。この第1絶縁基板201は、第2絶縁基板401と同一材質である。また、図7に示した例では、第1絶縁基板201としては、予め非平面形状に加工されたものを適用している。つまり、ここで適用される第1絶縁基板201は、非平面状態であるときにその内部自由エネルギーが最小となる状態にある。
【0042】
その後、液晶表示パネル100に対して、偏光板などの光学素子を貼りあわせることで、非平面形状例えば円筒面状に湾曲した非平面形状ディスプレイである液晶表示装置1が製造される。
【0043】
このように、下地絶縁層203に接着される第1絶縁基板201は、非平面形状を保った状態にあるとき、第1絶縁基板201の内部自由エネルギーが最小となる様に設計されている。したがって、このような第1絶縁基板201に下地絶縁層203を接着することにより、下地絶縁層203から第2絶縁基板401までの表示セルに対して外力を加えることなく、第1絶縁基板201が記憶している非平面形状と同等の非平面形状を呈するディスプレイを製造することが可能となる。
【0044】
また、このような構成によれば、液晶表示パネル100を構成するアレイ基板200、対向基板400、カラーフィルタ層CF、液晶材料などの殆どの部材は、平面形状ディスプレイを製造するためのプロセスで流品することが可能となり、平面状態で既に組み立てられた表示セルに非ガラス素材の第1絶縁基板201を付与することになるため、液晶表示パネル100の信頼性や量産性に殆んど影響することなく、非平面形状ディスプレイを容易に提供することが可能となる。
【0045】
なお、非平面形状ディスプレイを製造するに際して、予め非平面形状に加工された第1絶縁基板201を適用する例に限らない。
【0046】
例えば、図8に示すように、下地絶縁層203及び略平板状の第1絶縁基板201の少なくとも一方に接着剤202を塗布した後に、下地絶縁層203と第1絶縁基板201とを貼り合わせ、接着剤202が未硬化の状態でこれらを非平面形状となるように固定し、接着剤202を硬化させることにより、非平面形状ディスプレイである液晶表示装置1が製造されてもよい。固定に際しては、型枠を利用するなどして適当な外力が付与される。ここに示した例では、接着剤202が非平面状態を保とうとするエネルギーと、平板状の第1絶縁基板201などが元の形状に戻ろうとするエネルギーとのバランスを考慮して設計される。
【0047】
このように、平板状の第1絶縁基板201と下地絶縁層203から第2絶縁基板401までの表示セルとを接着する際に、外力を加えることによって非平面形状で固定された状態で接着剤202を硬化させる。非平面形状で硬化した接着剤202は、この非平面形状を保とうとする。一方、平板状の第1絶縁基板201及び表示セルは、湾曲した状態から元の平板形状に戻ろうとする。つまり、第1絶縁基板201及び表示セルは、相対する方向の力を有する接着剤202を狭持した状態で積層されるため、一般的な平面形状ディスプレイを外力によって無理やり変形させることによって形成した非平面形状ディスプレイに比べて、自身の内部応力が低減され信頼性を向上することが可能となる。
【0048】
図9は、図1に示した液晶表示パネル100の第2構成例を概略的に示す断面図である。
【0049】
この第2構成例は、第1構成例と比較して、アレイ基板200において接着剤202を介して第1絶縁基板201と薄板状のガラス基板205とが接着されている点で相違している。他の構成については第1構成例と同一であり、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
ガラス基板205の厚さは、0.15mmから0.1mmの範囲内とする。図示した例では、ガラス基板205の上にスイッチング素子211などの第1画素形成部220が形成されているが、ガラス基板205と第1画素形成部220との間に第1構成例で説明した下地絶縁層203が介在していても良い。
【0051】
次に、図9に示した第2構成例の液晶表示パネル100の製造方法について説明する。ここでは、大判の表示セル1000から複数の液晶表示パネル100を形成する多面取りセルの製造方法を例に説明する。
【0052】
まず、図10に示すように、大判の表示セル1000を形成する。
【0053】
ここでは、従来TFTアレイ製造プロセスなどを用いて、ガラス基板1205の上に第1画素形成部1220を形成し、大判のアレイ基板1200が製造される。このアレイ基板1200には、第1構成例で説明した研磨ストッパー層は形成されていない。一方で、非ガラス素材によって形成された第2絶縁基板1401の上に第2画素形成部1420を形成し、大判の対向基板1400が製造される。
【0054】
そして、各有効表示部を囲むように本シール材1104と、アレイ基板1200及び対向基板1400の外縁に沿ってすべての有効表示部を囲むように配置された仮シール材1106とを塗布した後に、各有効表示部に液晶材料を滴下し、アレイ基板1200と対向基板1400とを所定のセルギャップをもって貼り合わせ、各有効表示部に液晶材料を封入した表示セル1000が製造される。
【0055】
続いて、図11に示すように、表示セル1000を構成するアレイ基板1200のガラス基板1205を薄板化する。ここでは、一体化されたアレイ基板1200及び対向基板1400を化学的研磨処理によりアレイ基板1200のガラス基板1205を研磨する。すなわち、研磨溶液として例えばフッ酸溶液を用意し、表示セル1000を研磨溶液に浸漬することでアレイ基板1200のガラス基板1205の表面を研磨する。これにより、アレイ基板1200の表面が溶解し、水ガラスへと化学変化する。このとき、水ガラスによってアレイ基板1200の表面が保護されるため、随時アレイ基板1200を揺動して水ガラスを剥離し、新しい基板表面を露出させるようにする。
【0056】
そして、ガラス基板1205の厚さが0.015mmから0.1mmの範囲内、ここでは、例えば、0.05mmになるまで研磨したところで、表示セル1000をフッ酸溶液から取り出し、流水によって洗浄し、表面の水ガラス及びフッ酸溶液を除去する。このとき、仮シール材1106によってすべてのセルが密封されているため、このような化学的研磨処理を行った際に研磨溶液がセルの周辺回路に浸入することはない。
【0057】
この場合、研磨ストッパー層が不要となるため、アルカリ溶液を用いて研磨ストッパー層を除去する工程は省くことができる。
【0058】
続いて、有効表示部及び周辺回路部を残す設計で個々のセル状態に分断する。この分断には、第1画素形成部1220などを備えたアレイ基板1200や非ガラス素材ベースの対向基板1400を一括で切断が可能な、COレーザや2次乃至4次の高調波YAGレーザなどの割断装置を利用してスクライブ処理を行う。
【0059】
単個状態となった個々の表示セル(ここでは液晶表示パネル100)は、図12に示すように、アレイ基板1200から切り出されたガラス基板205及び第1画素形成部220と、対向基板1400から切り出された第2絶縁基板401及び第2画素形成部420と、これらの第1画素形成部220と第2画素形成部420との間に保持された液晶層300と、本シール材104とを備えている。
【0060】
そして、薄板状のガラス基板205及び非ガラス素材によって形成された第1絶縁基板201の少なくとも一方に接着剤202を塗布した後に、この接着剤202により、ガラス基板205と第1絶縁基板201とを接着する。この第1絶縁基板201は、第2絶縁基板401と同一材質である。また、図12に示した例では、第1絶縁基板201としては、予め非平面形状に加工されたものを適用している。つまり、ここで適用される第1絶縁基板201は、非平面状態であるときその内部自由エネルギーが最小となる状態にある。
【0061】
その後、液晶表示パネル100に対して、偏光板などの光学素子を貼りあわせることで、非平面形状例えば円筒面状に湾曲した非平面形状ディスプレイである液晶表示装置1が製造される。
【0062】
なお、非平面形状ディスプレイを製造するに際して、予め非平面形状に加工された第1絶縁基板201を適用する例に限らない。
【0063】
例えば、図13に示すように、ガラス基板205及び略平板状の第1絶縁基板201の少なくとも一方に接着剤202を塗布した後に、ガラス基板205と第1絶縁基板201とを貼り合わせ、接着剤202が未硬化の状態でこれらを非平面形状となるように固定し、接着剤202を硬化させることにより、非平面形状ディスプレイである液晶表示装置1が製造されてもよい。固定に際しては、型枠を利用するなどして適当な外力が付与される。ここに示した例では、接着剤202が非平面状態を保とうとするエネルギーと、平板状の第1絶縁基板201などが元の形状に戻ろうとするエネルギーとのバランスを考慮して設計される。
【0064】
このような第2構成例においても第1構成例と同様の効果が得られる。
【0065】
上述したような各構成例においては、非平面形状ディスプレイを製造するに際して、製造コストの増大を抑制することが可能である。
【0066】
すなわち、表示装置の非平面化への要望に対して、平板状の表示セルを形成した後に、この表示セルの全体に外力を加えることで強制的に非平面化する手法では、加えられた外力に起因して表示セルを破壊してしまうといった問題がある。また、予め湾曲したような非平面形状を持つ基板を用いて、従来の成膜とパターニングとを繰り返し行い、外力無しで形状を保てるような非平面形状の表示セルを形成する場合には、非平面形状の基板を取り扱う工業的な難しさなどがあり、量産に適さないといった問題がある。
【0067】
そこで、本実施形態においては、非平面形状ディスプレイを製造するに当たり、アレイ基板側については、平板状のガラス基板上に順次成膜やパターニングなどを行う平面形状ディスプレイを製造するのと同様の製造プロセスを適用し、また、対向基板側については、非ガラス素材の絶縁基板に変更した以外は、平面形状ディスプレイを製造するのと同様の製造プロセスを適用し、これらのアレイ基板と対向基板との間の液晶層についても、平面形状ディスプレイを製造する際に適用されている滴下注入法を適用している。
【0068】
このため、非ガラス基板専用のセル工程を備えた新規製造ラインを新たに構築する必要がなく、ラインの立ち上げや工程の変更に伴う製造コストの増大を抑制できるとともに、平面形状ディスプレイを製造するセル工程で培われた信頼性も継承することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態においては、アレイ基板側のガラス基板を除去する、あるいは、ガラス基板を薄板化する工程を経た後に、非ガラス素材の絶縁基板を接着している。このとき、予め非平面形状に加工された絶縁基板に接着する、あるいは、接着剤が硬化する前に非平面形状に固定し、接着剤を硬化させることによって非平面形状ディスプレイを製造している。
【0070】
このため、非平面形状を持つ基板上に順次成膜やパターニングなどを行う必要はなく、非平面形状の基板を取り扱う困難さを低減することが可能となる。また、ガラス基板の少なくとも一部を除去する際の保護層などの間接材料の使用を極力削減できることにより、製造コストの削減が可能となるとともに、製造歩留まりの低下を抑制することも可能となる。
【0071】
本実施形態において、表示セルが液晶表示パネル100である場合、その組み立てプロセスとしては、予めパネル内に液晶材料が充填された状態でアレイ基板のガラス基板の少なくとも一部を除去する必要があるため、一般的な滴下注入法(あるいはOne Drop fillプロセス)を用いることが好ましい。この方法によれば、ガラス基板を除去する過程において、アレイ基板側の第1画素形成部220と対向基板側の第2画素形成部420との間に空隙がある構造と比較して、第1画素形成部220の自己支持性が向上し、第1画素形成部220と第2画素形成部420との間の距離(セルギャップ)を均一に保つことが容易になる。
【0072】
アレイ基板側のガラス基板を除去するプロセスとしては、上述した薬液を用いた化学研磨の他に、機械研磨であっても良く、機械研磨と化学研磨とを交互に用いた複合研磨なども適用することが可能である。第1画素形成部220の厚さが非常に薄い構造(例えば、1μm〜5μm程度の厚さ)の場合、機械研磨による粗削りで研磨プロセスのスループットを上げた後、化学研磨でガラス部位を一部除去、または、完全に除去する方法が本実施形態のプロセスとしては好ましい。
【0073】
アレイ基板側のガラス基板を化学研磨により完全に除去する場合、ガラス基板と第1画素形成部220との間には、化学研磨に用いられる薬液(フッ化アンモンなど)に第1画素形成部220が耐えられるように、予めアモルファスシリコン薄膜などの耐フッ酸性薄膜である研磨ストッパー層が形成されている。なお、アレイ基板側のガラス基板を完全に除去しない場合(ガラス基板を薄板化する場合)には、研磨ストッパー層は不要である。
【0074】
第1画素形成部220の構造としては、アルミニウム(Al)、シリコン窒化物(SiNx)、ITO(Indium Tin Oxide)、ポリシリコン(p−Si)、アモルファスシリコン(a−Si)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、シリコン酸化物(SiOx)などにより、全層無機膜によって構成することが可能であるが、ガラス基板の研磨時の自己支持性を考慮した場合、上記の無機膜に加えて、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの柔軟性を有する有機薄膜を積層構造内に含む無機有機ハイブリッド薄膜構造であることが好ましい。
【0075】
特に、無機有機ハイブリッド薄膜の構成例としては、アレイ基板がカラーフィルタ層CFを具備したCOA(Color filter On Array)構造や、透明レジスト材料によって画素電極213とスイッチング素子211との間を分離して開口率アップを図った画素上置き構造などを挙げることが出来る。さらに、スイッチング素子211などの自己支持性を改善するためには、周辺回路上にも上記のカラーフィルタ層CFを形成するための着色レジスト材料や透明レジスト材料によりオーバーコートを施す構造が好ましい。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、製造コストの増大を抑制することが可能な非平面形状ディスプレイ及びその製造方法を提供することができる。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0078】
上述した本実施形態においては、非平面形状ディスプレイとして、液晶表示装置を例に説明したが、液晶表示パネル100の構成は、上記した構成に限らず、対向電極411は画素電極213と同一の基板であるアレイ基板200に備えられても良い。また、液晶モードについて特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、VA(Vertical Aligned)モードなどの主として縦電界を利用するモードや、IPS(In−Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モードなどの主として横電界を利用するモードなどが適用可能である。
【0079】
また、本実施形態において、非平面形状ディスプレイが有機EL表示装置である場合、表示セルを形成する工程では、アレイ基板の画素電極上に有機発光層を形成し、この有機発光層上に対向電極を形成した後に、アレイ基板と対向基板とを本シール材及び仮シール材により貼り合わせる。このようにして表示セルを形成した後の工程については、上記の第1構成例及び第2構成例と同様である。
【符号の説明】
【0080】
1…液晶表示装置 100…液晶表示パネル(表示セル)
200…アレイ基板
201…第1絶縁基板 202…接着剤 203…下地絶縁層 205…ガラス基板
211…スイッチング素子 213…画素電極
220…第1画素形成部
300…液晶層
400…対向基板
401…第2絶縁基板 411…対向電極
420…第2画素形成部
1000…表示セル 1104…本シール材 1106…仮シール材
1200…アレイ基板 1203…下地絶縁層 1205…ガラス基板
1206…研磨ストッパー層 1220…第1画素形成部
1400…対向基板 1401…第2絶縁基板 1420…第2画素形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板、前記ガラス基板上に形成された研磨ストッパー層、前記研磨ストッパー層上に形成された下地絶縁層、前記下地絶縁層上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成された対向基板と、を貼り合わせて表示セルを形成し、
前記表示セルから前記アレイ基板の前記ガラス基板を除去し、
前記アレイ基板の前記研磨ストッパー層を除去し、
前記表示セルの前記アレイ基板で露出した前記下地絶縁層と、非ガラス素材によって形成された絶縁基板とを接着し、非平面形状ディスプレイを製造する、ことを特徴とする非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項2】
ガラス基板、前記ガラス基板上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、非ガラス素材によって形成された対向基板と、を貼り合わせて表示セルを形成し、
前記アレイ基板の前記ガラス基板を薄板化し、
前記アレイ基板の前記ガラス基板と、非ガラス素材によって形成された絶縁基板とを接着し、非平面形状ディスプレイを製造する、ことを特徴とする非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記ガラス基板を薄板化する際、前記ガラス基板の厚さは0.15mmから0.1mmの範囲内とすることを特徴とする請求項2に記載の非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記絶縁基板は、予め非平面形状に加工されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁基板は略平板状であり、接着剤が未硬化の状態で非平面形状となるように固定し、前記接着剤を硬化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項6】
前記表示セルを形成する際、前記アレイ基板と前記対向基板とを貼り合わせる前に液晶材料を滴下することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項7】
前記表示セルを形成する際、前記アレイ基板の画素電極上に有機発光層を形成し、前記有機発光層上に対向電極を形成した後に、前記アレイ基板と前記対向基板とを貼り合わせることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非平面形状ディスプレイの製造方法。
【請求項8】
非ガラス素材によって形成された非平面形状の絶縁基板、前記絶縁基板に接着された下地絶縁層、前記下地絶縁層上に形成されたスイッチング素子、及び、前記スイッチング素子に接続された画素電極を備えたアレイ基板と、
非ガラス素材によって形成され、前記アレイ基板に貼り合わせられた対向基板と、
を備えたことを特徴とする非平面形状ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−108310(P2012−108310A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256987(P2010−256987)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】