説明

III族窒化物半導体結晶基板および半導体デバイス

【課題】抵抗率を低くでき、かつ抵抗率の面内分布の悪化を防止できるIII族窒化物半導体結晶基板を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体結晶基板は、25mm以上160mm以下の直径を有するIII族窒化物半導体結晶基板20aである。III族窒化物半導体結晶基板20aの抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下である。III族窒化物半導体結晶基板20aの直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下である。III族窒化物半導体結晶基板20aの厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体結晶基板および半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系半導体材料はシリコン(Si)の約3倍の大きなバンドギャップ、シリコンの約10倍の高い絶縁破壊電界、さらに大きな飽和電子速度などの優れた特性を有することから、無線通信分野における高周波・高出力デバイス用材料として活発に研究開発が進められており、既に携帯電話基地局用デバイスでは実用化の段階に入っている。また最近では、従来のSiパワーデバイスでは困難な高耐圧化と低損失化、つまり低オン抵抗化との両立が期待できるため、電力用パワーデバイスへの応用についても着目されている。オン抵抗の理論値は絶縁破壊電界の3乗に反比例することから、窒化ガリウムを用いたパワーデバイスではシリコンを用いたデバイスの約1/1000の超低オン抵抗化の可能性がある。このため、窒化ガリウム結晶などのIII族窒化物半導体結晶は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光デバイスやトランジスタ等の電子デバイスの材料として注目されている。
【0003】
このようなIII族窒化物半導体結晶として、たとえば、特開2006−193348号公報(特許文献1)には、比抵抗が1×104Ω・cm以上のIII族窒化物半導体基板が開示されている。このIII族窒化物半導体基板の製造方法において、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法などの気相成長法により、不純物元素としてシリコン(Si)のドーピング原料として、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、テトラクロロシラン(SiCl4:四塩化珪素)を用いてIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させることが記載されている。
【0004】
また、特表2007−519591号公報(特許文献2)には、1×106cm-2未満の平均密度と、25%未満の転位密度標準偏差比率とを有する単結晶窒化ガリウムが開示されている。この単結晶窒化ガリウムの製造方法において、シリコンのドーピング原料としてシラン(SiH4)などが用いられていることが記載されている。
【0005】
また、特開2005−101475号公報(特許文献3)には、少なくとも基板の最表面ではキャリア濃度分布が実質的に均一であることを特徴としたIII−V族窒化物系半導体基板が開示されている。このIII−V族窒化物系半導体基板の製造方法において、HVPE法によって、ドーピング原料としてジクロロシランが用いられていることが記載されている。
【特許文献1】特開2006−193348号公報
【特許文献2】特表2007−519591号公報
【特許文献3】特開2005−101475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
III族窒化物半導体結晶をHVPE法、MOCVD法、MBE法などの気相成長法で成長させる際に、III族窒化物半導体結晶のn型導電性を制御するためには、III族窒化物半導体結晶中のn型不純物(ドーパント)の濃度を制御する必要がある。n型不純物としてのシリコンをドーピングするために上記特許文献1〜3でドーピングガスとして用いられているシラン、ジクロロシランは、III族窒化物半導体結晶の成長温度では、下地基板に到達する前に分解して、反応管に吸着される場合がある。
【0007】
また、上記特許文献1〜3で用いられているドーピングガスは、窒素ガスやアンモニアガスと反応してSixy(窒化シリコン)系化合物(xおよびyは任意の整数)を生成してしまう場合がある。
【0008】
シリコンを供給するためのドーピングガスが下地基板に到達する前に上記のように分解または反応すると、ドーピングガス中のシリコンの濃度を制御することが困難であった。その結果、III族窒化物半導体結晶に取り込まれるシリコンの濃度が変動してしまい、III族窒化物半導体結晶に取り込まれるシリコンの濃度を調整できなかった。したがって、シリコンをドーパントとしたIII族窒化物半導体結晶の抵抗率を制御することが困難であるという問題があった。特に、HVPE法の場合には、反応管全体が加熱されるため、ドーピングガスの分解や他のガスとの反応が著しく生じるので、この問題はさらに顕著であった。
【0009】
また、ドーピングガスの熱分解や原料ガスなどとの反応を防止するために、ドーピングガスを高速で供給することが考えられる。しかし、高速でドーピングガスを供給すると、下地基板に供給されるドーピングガスの濃度分布が悪くなり、成長させるIII族窒化物半導体結晶の抵抗率の面内分布が著しく悪くなるという問題があった。
【0010】
このように、抵抗率が制御されず、抵抗率の高いIII族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを製造すると、オン抵抗などの特性が悪くなるという問題がある。
【0011】
また、抵抗率の面内分布の悪いIII族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを製造すると、この半導体デバイスのオン抵抗などの特性がばらつくため、歩留まりが悪いという問題があった。
【0012】
したがって、本発明の一の目的は、抵抗率を低くでき、かつ抵抗率の面内分布の悪化を防止できるIII族窒化物半導体結晶基板を提供することである。
【0013】
また本発明の他の目的は、特性の悪化を防止でき、かつ歩留まりを向上できる半導体デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、シリコンのドーピング条件を鋭意研究した結果、ドーピングガスとして四フッ化珪素ガスを用いること、または、ドーピングガスとして四塩化珪素ガスを用いてIII族窒化物半導体結晶基板の成長速度を200μm/h以上2000μm/h以下とすること等により、シリコンをドーピングする際に、ドーピングガスが分解することを防止し、かつ、ドーピングガスが他のガスとの反応自体を抑制する、または反応の影響を小さくできることを見出した。このため、下記のように、抵抗率の制御を容易にすることにより抵抗率を低くでき、かつ抵抗率の面内分布の悪化を防止できるIII族窒化物半導体結晶基板を得た。
【0015】
すなわち、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板は、25mm以上160mm以下の直径を有するIII族窒化物半導体結晶基板である。III族窒化物半導体結晶基板の抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下である。III族窒化物半導体結晶基板の直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下である。III族窒化物半導体結晶基板の厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である。
【0016】
本発明のIII族窒化物半導体結晶基板によれば、抵抗率が0.1Ωcm以下であるので、低オン抵抗、高耐圧などの特性を向上した電子デバイス、発光デバイスなどの半導体デバイスに用いられるn型基板として好適に用いられる。一方、抵抗率が1×10-4Ωcm以上であるので、高濃度のシリコンがドーピングされる必要がないので、III族窒化物半導体結晶の成長時におけるピットや欠陥の発生が抑制され、かつ割れの発生が抑制されている。また、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下で、かつIII族窒化物半導体結晶基板の厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である場合、このIII族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを作製するときの特性のばらつきが抑制できるので、歩留まりを向上できる。
【0017】
なお、直径が25mm以上の場合、成長された面において異なる面方位の発生が防止されるので、III族窒化物半導体結晶基板の結晶性が良好である。また160mm以下の直径を有する下地基板の入手が容易であるため、160mm以下の直径を有する窒化物半導体結晶基板が容易に得られる。
【0018】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、直径方向の抵抗率の分布が−20%以上20%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−10%以上10%以下である。
【0019】
これにより、III族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを作製したときの特性のばらつきをより抑制できるので、歩留まりをより向上できる。
【0020】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、2mm以上160mm以下の厚さを有する。
【0021】
厚さが2mm以上の場合、このIII族窒化物半導体結晶基板を必要な厚さにスライスすることによって、所望の厚さを有する複数のIII族窒化物半導体結晶基板が得られる。厚さが160mm以下の場合、設備上の理由からIII族窒化物半導体結晶基板が容易に製造されるため、コストを低減できる。
【0022】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、100μm以上1000μm以下の厚さを有する。
【0023】
厚さが100μm以上の場合、ハンドリングする際に割れが発生することが防止されたIII族窒化物半導体結晶基板が得られる。厚さが1000μm以下の場合、半導体デバイスに好適に用いることができ、III族窒化物半導体結晶基板1枚当たりの製造コストを低減できる。
【0024】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上8×10-3Ωcm以下である。
【0025】
抵抗率が1×10-3Ωcm以上の場合、シリコンが高濃度にドーピングされる必要がないので、III族窒化物半導体結晶の成長時におけるピットや欠陥の発生がより抑制され、かつ割れの発生がより抑制されている。抵抗率が8×10-3Ωcm以下の場合、電子デバイス、発光デバイスなどの半導体デバイスに用いられるn型基板としてより好適に用いられる。
【0026】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、シリコンの濃度が5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下であり、より好ましくは3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である。
【0027】
シリコンの濃度が5×1016cm-3以上の場合、取り込まれるシリコンの濃度が制御されやすい。シリコンの濃度が3×1018cm-3以上の場合、取り込まれるシリコンの濃度をより容易に制御できる。一方、シリコンの濃度が5×1020cm-3以下の場合、III族窒化物半導体結晶の成長時におけるピットや欠陥の発生が抑制され、かつ割れの発生が抑制され得る。シリコンの濃度が5×1019cm-3以下の場合、結晶性のより良好なIII族窒化物半導体結晶基板が得られる。
【0028】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、転位密度が1×107cm-2以下である。
【0029】
これにより、III族窒化物半導体結晶基板を電子デバイス、発光デバイスなどの半導体デバイスに用いると、電気特性および光特性などの特性を安定させることができる。
【0030】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、主面が(0001)面、(1−100)面、(11−20)面および(11−22)面のうちのいずれか1つの面に対して−5度以上5度以下の角度を有する。
【0031】
これにより、この主面上に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができる。そのため、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。
【0032】
上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、X線回折におけるロッキングカーブの半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が10arcsec以上500arcsec以下である。
【0033】
これにより、III族窒化物半導体結晶基板上に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができる。そのため、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。
【0034】
上記IIII族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、IIII族窒化物半導体結晶基板はAlxInyGa(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)結晶よりなる。また、上記III族窒化物半導体結晶基板において好ましくは、III族窒化物半導体結晶基板は窒化ガリウム結晶よりなる。
【0035】
これにより、非常に有用な第1のIII族窒化物半導体結晶を成長させることができる。
【0036】
本発明の半導体デバイスは、上記いずれかのIII族窒化物半導体結晶基板と、このIII族窒化物半導体結晶基板上に形成されたエピタキシャル層とを備えている。
【0037】
本発明の半導体デバイスによれば、抵抗率の面内分布が抑制されたIII族窒化物半導体結晶基板を用いているので、特性のばらつきを抑制できることから、歩留まりを向上できる。また、低い抵抗率を有するIII族窒化物半導体結晶基板を用いているので、低オン抵抗、高耐圧などの特性を悪化を防止できる。
【0038】
なお、本明細書において、「III族」とは、旧IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)方式のIIIB族を意味する。すなわち、III族窒化物半導体結晶とは、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)およびTI(タリウム)の少なくとも1つの元素と、窒素とを含む半導体結晶を意味する。また、「ドーピングガス」とは、不純物(ドーパント)をドーピングするためのガスを意味する。
【発明の効果】
【0039】
本発明のIII族窒化物半導体結晶基板によれば、抵抗率を低くでき、かつ抵抗率の面内分布の悪化を防止できる。
【0040】
また本発明の半導体デバイスによれば、特性の悪化を防止でき、かつ歩留まりを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0042】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶基板を示す概略斜視図であり、図2は概略上面図である。図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板を説明する。図1および図2に示すように、III族窒化物半導体結晶基板10は、シリコンが不純物としてドーピングされたIII族窒化物半導体結晶12(図4参照)からなり、主面10aを有している。
【0043】
図1および図2に示すように、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板10は、25mm以上160mm以下、好ましくは45mm以上130mm以下の直径Rを有している。直径Rが25mm以上の場合、主面10aにおいて異なる面方位の発生が防止されているので、III族窒化物半導体結晶基板10の結晶性が良好になる。直径Rが45mm以上の場合、III族窒化物半導体結晶基板10の結晶性がより良好になる。一方、直径Rが160mmの場合、下地基板の入手が容易であるため、コストを低減できる。直径Rが130mm以下の場合、コストをより低減できる。
【0044】
III族窒化物半導体結晶基板10は、2mm以上160mm以下、好ましくは6mm以上50mm以下の厚さD10を有している。厚さD10が2mm以上の場合、III族窒化物半導体結晶基板10を所望の厚さにスライス加工することによって、所望の厚さを有する複数のIII族窒化物半導体結晶基板が得られる。厚さD10が6mm以上の場合、1枚のIII族窒化物半導体結晶基板10から所望の厚さを有するより多くの枚数のIII族窒化物半導体結晶基板が得られるので、コストを低減できる。一方、厚さD10が160mm以下の場合、設備上の理由からIII族窒化物半導体結晶が容易に成長されるため、コストを低減できる。厚さD10が50mm以上の場合、コストをより低減できる。
【0045】
III族窒化物半導体結晶基板10の抵抗率は、1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、好ましくは1×10-3Ωcm以上1×10-2Ωcm以下であり、より好ましくは1×10-3Ωcm以上8×10-3Ωcm以下である。抵抗率が1×10-4Ωcm以上の場合、シリコンが高濃度にドーピングされる必要がないので、III族窒化物半導体結晶が成長される際にピットや欠陥の発生が抑制され、かつ割れの発生が抑制されている。1×10-3Ωcm以上の場合、ピット、欠陥および割れの発生がより抑制されている。一方、抵抗率が0.1Ωcm以下の場合、発光デバイス、電子デバイスに好適に用いられる。1×10-2Ωcm以下の場合、発光デバイスや発光デバイス、特にパワーデバイスに用いられるn型基板としてより好適に用いられる。8×10-3Ωcm以下の場合、発光デバイスや電子デバイス、特にパワーデバイスに用いられるn型基板としてより一層好適に用いられる。
【0046】
上記「抵抗率」とは、たとえば、以下の方法によって測定された値である。まず、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aを研磨およびドライエッチングを行なう。そして、図2に示す9点のドットのように、任意の直径R1において中央近傍(1点)、両端近傍(2点)、および中央と両端との間(2点)の5点と、この直径R1に直交する直径R2において両端近傍(2点)、および両端と中央との中央近傍(2点)の4点との合計9点において、室温にて四探針法によりそれぞれ抵抗率を測定する。この9点の抵抗率の平均値を算出する。主面10aについて抵抗率を測定する方法を説明したが、他の面について抵抗率を測定してもよい。たとえば主面10aおよび主面10aと反対側の面10bの略中央を厚さ方向にスライス加工することにより、主面10aに平行な一の面を形成する。この一の面内において、同様に9点の抵抗率を測定することにより、抵抗率の平均値を算出してもよい。また、主面10aと交差する方向に面において、同様に9点の抵抗率を測定することにより、その平均値を算出してもよい。
【0047】
III族窒化物半導体結晶基板10における直径方向の抵抗率の分布は、−30%以上30%以下であり、好ましくは−20%以上20%以下であり、より好ましくは−17%以上17%以下である。−30%以上30%以下の場合、このIII族窒化物半導体結晶基板10を用いて半導体デバイスを作製すると、直径方向の性能のばらつきが抑制され、歩留まりを向上できる。−20%以上20%以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきが抑制され、歩留まりを向上できる。−17%以上17%以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきがより抑制され、歩留まりをより向上できる。
【0048】
上記「直径方向の抵抗率の分布」とは、たとえば、以下の方法によって測定された値である。まず、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aを研磨およびドライエッチングを行なう。そして、図2に示す9点のドットのように、任意の直径R1において中央近傍(1点)、両端近傍(2点)、および中央と両端との間(2点)の5点と、この直径R1に直交する直径R2において両端近傍(2点)、および両端と中央との中央近傍(2点)の4点との合計9点において、室温にて四探針法によりそれぞれ抵抗率を測定する。この9点の抵抗率の平均値を算出する。9点のそれぞれの抵抗率のうち、(最大値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の上限値とし、(最小値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の下限値とする。なお、本実施の形態では主面10aについて直径方向の抵抗率の分布を測定する方法を説明したが、他の面について直径方向の抵抗率の分布を測定してもよい。
【0049】
III族窒化物半導体結晶基板10における厚さ方向の抵抗率の分布は、−16%以上16%以下であり、好ましくは−10%以上10%以下であり、より好ましくは−9%以上9%以下である。−16%以上16%以下である場合、このIII族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを作製すると、厚さ方向の性能のばらつきを抑制でき、歩留まりを向上できる。−10%以上10%の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきが抑制され、歩留まりを向上できる。−9%以上9%以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきがより抑制され、歩留まりをより向上できる。
【0050】
上記「厚さ方向の抵抗率の分布」とは、たとえば、以下の方法によって測定された値である。まず、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aを研磨およびドライエッチングを行なう。そして、図1に示す5点のドットのように、任意の厚さにおいて主面10a近傍(1点)および主面10aと反対側の面10b近傍(1点)、主面10aと反対側の面10bとの間の3点との合計5点において、室温にて四探針法によりそれぞれ抵抗率を測定する。この9点の抵抗率の平均値を算出する。9点のそれぞれの抵抗率のうち、(最大値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の上限値とし、(最小値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の下限値とする。
【0051】
III族窒化物半導体結晶12中のシリコンの濃度は、好ましくは5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下であり、より好ましくは3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である。シリコンの濃度が5×1016cm-3以上の場合、実効的にシリコンが取り込まれるので、取り込まれるシリコンの濃度が制御されやすく、高い濃度のシリコンを含有するIII族窒化物半導体結晶基板10が得られる。シリコンの濃度が3×1018cm-3以上の場合、取り込まれるシリコンの濃度がより容易に制御される。一方、シリコンの濃度が5×1020cm-3以下の場合、III族窒化物半導体結晶の成長時におけるピットや欠陥の発生が抑制され、かつ割れの発生が抑制され得る。5×1019cm-3以下の場合、結晶性がより良好である。
【0052】
上記「シリコンの濃度」とは、たとえば、以下の方法によって測定された値である。まず、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aを研磨およびドライエッチングを行なう。そして、図2に示す9点のドットのように、任意の直径R1において中央近傍(1点)、両端近傍(2点)、および中央と両端との間(2点)の5点と、この直径R1に直交する直径R2において両端近傍(2点)、および両端と中央との中央近傍(2点)の4点との合計9点において、室温にてSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:二次イオン質量分析法)によりそれぞれシリコンの濃度を測定する。この9点のシリコンの濃度の平均値を算出する。なお、主面10aについてシリコンの濃度を測定する方法を説明したが、他の面の9点について測定してもよく、また2以上の面を組み合わせた任意の9点についてシリコン濃度を測定してもよい。
【0053】
III族窒化物半導体結晶基板10の転位密度は、好ましくは1×107cm-2以下であり、より好ましくは1×106cm-2以下である。転位密度が1×107cm-2以下の場合、III族窒化物半導体結晶基板10を電子デバイスに用いると電気特性を向上でき、発光デバイスに用いると光特性を向上できるなど、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。1×106cm-2以下の場合、半導体デバイスに用いる際に性能をより向上できる。転位密度は低い程好ましいが、下限値はたとえば1×103cm-2以上である。1×103cm-2以上の場合、低コストでIII族窒化物半導体結晶基板10を作製できる。
【0054】
上記「転位密度」とは、摂氏350度のKOH−NaOH(水酸化カリウム−水酸化ナトリウム)混合融液中に窒化物半導体結晶を浸し、エッチングされた表面についてノマルスキー顕微鏡または走査電子顕微鏡(SEM)を用いてカウントされたエッチピット数から求められるエッチピット密度(Etch Pit Density)とする。
【0055】
III族窒化物半導体結晶基板10中の酸素の濃度は、5×1016cm-3以下、好ましくは2×1016cm-3以下である。本実施の形態では酸素を含むガスがドーピングガスとして用いられていないが、この場合であっても、反応管内に含まれる酸素により、成長されたIII族窒化物半導体結晶にドーパントとして酸素が取り込まれる。酸素はシリコンと同じn型ドーパントであるが、c面へ取り込まれる効率が悪く、特に面方位によって取り込まれる効率が異なるなど、n型のドーパントとしての制御性が悪い。そのため、5×1016cm-3以下の濃度まで酸素が取り込まれることを防止できると、n型キャリア濃度としてシリコンが支配的になる。その結果、シリコンの濃度が制御されることによって、III族窒化物半導体結晶12のキャリア濃度を制御することができる。酸素の濃度はより好ましくは2×1016cm-3以下とすることでさらに結晶性を良好にできる。なお、酸素濃度は低い程好ましいが、下限値はたとえばSIMS分析の検出下限により測定可能な5×1015cm-3以上である。
【0056】
III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aは、(0001)面、(1−100)面、(11−20)面および(11−22)面のうちのいずれか1つの面に対して−5度以上5度以下の角度を有することが好ましい。このような主面10a上には、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに形成することができる。そのため、電子デバイスに用いると電気特性を向上でき、発光デバイスに用いると光特性を向上できるなど、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。
【0057】
なお、個別面を()で示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0058】
III族窒化物半導体結晶基板10のX線回折におけるロッキングカーブの半値幅は、好ましくは10arcsec以上500arcsec以下であり、より好ましくは20arcsec以上100arcses以下である。500arcsec以下の場合、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10a上に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができるため、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。100arcses以下の場合、主面10a上に結晶性のより良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができる。10arcsec以上の場合、III族窒化物半導体結晶基板10を構成するIII族窒化物半導体結晶が容易に成長されるため、コストを低減できる。20arcses以上の場合、コストをより低減できる。
【0059】
上記「ロッキングカーブの半値幅」とは、XRD(X-ray diffraction:X線回折法)により(0004)面のロッキングカーブ半値幅を測定した値を意味し、面内配向性を示す指標となる。ロッキングカーブの半値幅が小さいほど結晶性が良好であることを示す。
【0060】
III族窒化物半導体結晶基板10を構成するIII族窒化物半導体結晶は、AlxInyGa(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)結晶であることが好ましく、窒化ガリウム結晶であることがより好ましい。
【0061】
図3は、本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の製造方法を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶を成長させた状態を示す模式図である。続いて、図3および図4を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を説明する。まず、III族窒化物半導体結晶基板を構成するIII族窒化物半導体結晶の成長方法について説明する。
【0062】
始めに、図3および図4に示すように、下地基板11を準備する(ステップS1)。下地基板11は、その上にIII族窒化物半導体結晶12を成長させるための基板である。
【0063】
準備する工程(ステップS1)では、シリコン、サファイア(Al23)、ガリウム砒素(GaAs)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウムおよび窒化アルミニウム(AlN)よりなる群から選ばれた一種以上を有する材質からなる下地基板11を準備することが好ましい。または、下地基板11としてMg2Al24などのスピネル型結晶基板を準備することが好ましい。格子定数の差を小さくするために、下地基板11は成長させるIII族窒化物半導体結晶12と同じ組成であることがより好ましい。なお、窒化ガリウム基板としては、たとえば特開2001−102307号公報などに記載の単結晶窒化ガリウム基板を用いることができる。
【0064】
準備する下地基板11は25mm以上160mm以下、好ましくは45mm以上130mm以下の直径を有している。下地基板11の直径が25mm以上の場合、III族窒化物半導体結晶基板10を構成するIII族窒化物半導体結晶12を異なる面方位の面上に成長させることを防止できるので、良好な結晶性のIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。下地基板11の直径が45mm以上の場合、より良好な結晶性のIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。一方、下地基板11の直径が160mmの場合、入手が容易であるためコストを低減できる。下地基板11の直径が130mm以下の場合、コストをより低減できる。
【0065】
次に、気相成長法により下地基板11上に、シリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶12を成長させる(ステップS2)。ドーピングガスとして、たとえば四フッ化珪素ガスを用いることができ、本実施の形態では四フッ化珪素ガスのみを用いている。
【0066】
成長させる方法は、気相成長法であれば特に限定されず、たとえばHVPE法、MOCVD法またはMBE法などによりIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。本実施の形態では、HVPE法によりIII族窒化物半導体結晶12を成長させている。HVPE法は、結晶成長速度が速いため、成長時間を制御することによって、大きな厚さD12を有するIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。
【0067】
図5は、本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法に用いるHVPE装置を示す概略図である。ここで、図5を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法に用いるHVPE装置100aについて説明する。図5に示すように、HVPE装置100aは、第1原料ガスボンベ101と、ドーピングガスボンベ102と、第2原料ガスボンベ103と、第1ガス導入管104と、ドーピングガス導入管105と、第2ガス導入管106と、ソースボート107と、サセプタ108と、ヒータ109と、反応管110と、排気管111と、排ガス処置装置とを備えている。HVPE装置100aは、たとえば横型反応管としている。なお、HVPE装置100aは、縦型反応管であってもよい。
【0068】
反応管110は、内部に下地基板11を保持して、その下地基板11上にIII族窒化物半導体結晶を成長させるための容器である。反応管110は、たとえば石英反応管などを用いることができる。第1原料ガスボンベ101、第2原料ガスボンベ103およびソースボート107には、成長させるIII族窒化物半導体結晶を構成する元素を含む原料がそれぞれ供給される。ドーピングガスボンベ102には、ドーパントであるシリコンを含むガスが充填されている。本実施の形態では、ドーピングガスボンベ102には、ドーピングガスとして四フッ化珪素ガスが充填されている。第1ガス導入管104、ドーピングガス導入管105および第2ガス導入管106は、第1原料ガスG1、ドーピングガスG2および第2原料ガスG3の各々を反応管110の外部から内部へ導入するために反応管110に設けられている。ソースボート107は、III族窒化物半導体結晶の金属原料を収容保持し、第2ガス導入管106内に配置されている。
【0069】
サセプタ108は、下地基板11を保持している。反応管110内においてサセプタ108により下地基板11が保持されている面が第1ガス導入管104、ドーピングガス導入管105および第2ガス導入管106の下方に位置するように、サセプタ108が配置されている。サセプタ108は、反応管110の内部で横置きに配置されている。なお、サセプタ108は、下地基板11を縦向きに配置するように構成されていてもよい。また、HVPE装置100aは、下地基板11の抵抗加熱ヒータなど加熱用の局所加熱機構をさらに備えていてもよい。
【0070】
ヒータ109は、反応管110の外部に配置され、反応管110の内部を全体的にたとえば700℃以上1500℃以下に加熱する能力を有している。排気管111は、反応後のガスを反応管110の外部に排出するために、反応管110に設けられている。排ガス処置装置は、排気管111から排出される反応後のガスを環境への負荷を減らすように除害するように構成されている。
【0071】
成長させる工程(ステップS2)では、具体的には、図5に示すように、まず、準備した下地基板11をサセプタ108に保持させる。このとき複数枚の下地基板11をサセプタ108に保持させてもよい。
【0072】
次に、第1原料ガスG1および第2原料ガスG3をそれぞれ充填した第1原料ガスボンベ101および第2原料ガスボンベ103を準備する。また、ソースボート107に金属原料を供給する。第1原料ガスG1、第2原料ガスG3および金属原料は、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の原料である。成長させるIII族窒化物半導体結晶12が窒化ガリウムである場合には、第1原料ガスとしてたとえばアンモニア(NH3)ガス、第2原料ガスとしてたとえば塩化水素(HCl)ガス、ソースボート107に供給される金属原料としてたとえばガリウム(Ga)を用いることができる。また、たとえば四フッ化珪素ガスを内部に充填したドーピングガスボンベ102を準備する。
【0073】
その後、ソースボート107を加熱する。そして、第2ガス導入管106から供給される第2原料ガスG3と、ソースボート107の原料とを反応させて反応ガスG7を生成する。第1ガス導入管104から供給される第1原料ガスG1と、ドーピングガスG2と、反応ガスG7とを下地基板11の表面に当たるように流して(供給して)反応させる。このとき、これらのガスを下地基板11に運搬するためのキャリアガスを用いてもよい。キャリアガスは、たとえば窒素(N2)ガス、水素(H2)ガスおよびアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスを用いることができる。
【0074】
HVPE法では、ヒータ109を用いて、反応管110の内部をIII族窒化物半導体結晶12が適切な速度で成長する温度に加熱する。III族窒化物半導体結晶12を成長させる温度は、好ましくは900℃以上1300℃以下であり、より好ましくは1050℃以上1200℃以下である。900℃以上でIII族窒化物半導体結晶12を成長させる場合、III族窒化物半導体結晶12の欠陥の発生を防止でき、かつ成長させる面方位と異なる面方位(たとえばc面の場合にはピットなど)が発生することを抑制できる。すなわち、成長させる面方位に対して、安定して良好な結晶性のIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。1050℃以上でIII族窒化物半導体結晶12を成長させる場合、結晶性をより良好にできる。一方、1300℃以下でIII族窒化物半導体結晶12を成長させる場合、成長させるIII族窒化物半導体結晶12が分解することを抑制できるので、その結晶性の劣化を抑制できる。1200℃以下でIII族窒化物半導体結晶12を成長させる場合には、結晶性の劣化をより抑制される。
【0075】
III族窒化物半導体結晶12の成長時における四フッ化珪素ガスの分圧は、2.0×10-7atm以上1.0×10-5atm以下であることが好ましい。四フッ化珪素ガスの分圧が2.0×10-7atm以上の場合、n型ドーパントとしてのシリコンが十分にIII族窒化物半導体結晶12に取り込まれる。一方、四フッ化珪素ガスの分圧が1.0×10-5atm以下である場合、Sixy(窒化シリコン)系化合物の生成をより抑制できるため、シリコンをドーピングする制御性をより良好にできる。また、III族窒化物半導体結晶12にドーピングされるシリコンの濃度を考慮すると、四フッ化珪素ガスの分圧は1.0×10-5atm以下である。なお、原料ガス、キャリアガスおよびドーピングガスなどの反応管110内に含まれるガスのそれぞれの分圧の合計(全体)が1atmである。四フッ化珪素ガスの濃度は、分圧に比例する。
【0076】
第1原料ガスG1の流量、第2原料ガスG3の流量、またはソースボート107内の原料の量などを調整することにより、成長させるIII族窒化物半導体結晶の厚さを適宜変更できる。III族窒化物半導体結晶12の厚さD12は、たとえば100μm以上1100μm以下となるように成長させることが好ましい。HVPE法は、結晶成長速度が大きいため、成長させる時間を制御することによって、大きな厚さを有するIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。厚さD12を100μm以上とすると、各種半導体デバイスの基板として単独で用いることができるIII族窒化物半導体結晶基板10を製造するためのIII族窒化物半導体結晶12を容易に成長できる。また、厚さD12を1100μm以下とすると、後述する少なくとも下地基板11を除去する(ステップS3)ことにより、上述した厚さD10を有するIII族窒化物半導体結晶基板10が得られる。
【0077】
成長させる工程(ステップS2)では、III族窒化物半導体結晶12中のシリコンの濃度が好ましくは5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下、より好ましくは3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下になるようにドーピングガスを下地基板11に供給する。シリコンの濃度が5×1016cm-3以上の場合、ドーピングガスG2の濃度を制御することによってIII族窒化物半導体結晶12に取り込まれるシリコンの濃度を制御しやすい。シリコンの濃度が3×1018cm-3以上の場合、III族窒化物半導体結晶12に取り込まれるシリコンの濃度をより容易に制御できる。一方、シリコンの濃度が5×1020cm-3以下の場合、成長時のIII族窒化物半導体結晶12においてピットや欠陥の発生を抑制でき、かつ割れの発生を抑制できる。シリコンの濃度が5×1019cm-3以下の場合、III族窒化物半導体結晶12のピットや欠陥の発生を抑制でき、かつ割れの発生を抑制できる。
【0078】
成長させる工程(ステップS2)では、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下、好ましくは1×10-3Ωcm以上1×10-2Ωcm以下、より好ましくは1×10-3Ωcm以上8×10-3Ωcm以下となるようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。抵抗率が1×10-4Ωcm以上の場合、高濃度のシリコンをドーピングする必要がないので、不純物が取り込まれることによりIII族窒化物半導体結晶12が脆くなることを抑制できる。その結果、ピットや欠陥の発生を抑制され、かつ割れの発生を抑制されたIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。1×10-3Ωcm以上の場合、ピット、欠陥および割れの発生をより抑制されたIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。一方、抵抗率が0.1Ωcm以下の場合、電子デバイスや発光デバイスに好適に用いられるIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。1×10-2Ωcm以下の場合、電子デバイスや発光デバイス、特にパワーデバイスにより好適に用いられるIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。8×10-3Ωcm以下の場合、電子デバイスや発光デバイス、特にパワーデバイスにより一層好適に用いられるIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。
【0079】
また、直径方向の抵抗率の分布は、−30%以上30%以下であり、好ましくは−20%以上20%以下であり、より好ましくは−17%以上17%以下となるようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。−30%以上30%以下である場合、半導体デバイスを作製する際に、直径方向の性能のばらつきを抑制でき、歩留まりを向上できるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。−20%以上20%以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきがより抑制され、歩留まりをより向上できる。−17%以上17%以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきがより一層抑制され、歩留まりをより一層向上できる。
【0080】
また、厚さ方向の抵抗率の分布は、−16%以上16%以下であり、好ましくは−10%以上10%以下であり、より好ましくは−9%以上9%以下以下となるようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。−16%以上16%以下である場合、半導体デバイスを作製する際に用いると、厚さ方向の性能のばらつきを抑制でき、歩留まりを向上できるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。−10%以上10%以下である場合、半導体デバイスを作製する際に用いると、厚さ方向の性能のばらつきをより抑制でき、歩留まりをより向上できるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。−9%以上9%以下以下の場合、半導体デバイスを作製したときの性能のばらつきがより一層抑制され、歩留まりをより一層向上できるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。
【0081】
また、成長させる工程(ステップS2)では、III族窒化物半導体結晶12がAlxInyGa(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)結晶であることが好ましく、窒化ガリウム結晶であることがより好ましい。これにより非常に有用なIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。
【0082】
また、成長させる工程(ステップS2)では、III族窒化物半導体結晶12中の酸素の濃度が5×1016cm-3以下になるようにドーピングガスを下地基板11に供給することが好ましい。本実施の形態では酸素を含むガスをドーピングガスとして用いていない。しかし、この場合であっても、反応管110内に含まれる酸素により、成長させるIII族窒化物半導体結晶12に酸素が取り込まれる。酸素はシリコンと同じn型ドーパントであるが、c面への取り込み効率が悪く、特に面方位によって取り込み効率が異なるなど、n型のドーパントとしての制御性が悪い。そのため、酸素の濃度が好ましくは5×1016cm-3以下、より好ましくは2×1016cm-3以下にまで酸素の混入を防止できると、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の抵抗率の制御を安定して行なうことができる。なお、酸素の濃度は低い程好ましいが、下限値はたとえばSIMS分析の検出下限により測定可能な5×1015cm-3以上である。
【0083】
また、成長させる工程(ステップS2)では、III族窒化物半導体結晶12中の転位密度が好ましくは1×107cm-2以下であり、より好ましくは1×106cm-2以下になるようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。転位密度が1×107cm-2以下の場合、電子デバイスに用いると電気特性を向上でき、発光デバイスに用いると光特性を向上できるなど、より良好な特性の半導体デバイスが得られるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。1×106cm-2以下の場合、半導体デバイスに用いる際に性能をより向上できるIII族窒化物半導体結晶12を成長できる。なお、転位密度は低い程好ましいが、下限値はたとえば1×103cm-2以上である。1×103cm-2以上の場合、低コストでIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。
【0084】
また、成長させる工程(ステップS2)では、III族窒化物半導体結晶12の主面が(0001)面、(1−100)面、(11−20)面および(11−22)面のうちのいずれか1つの面に対して−5度以上5度以下の角度を有するようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させることが好ましい。このような主面上には、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに形成することができる。そのため、電子デバイスに用いると電気特性を向上でき、発光デバイスに用いると光特性を向上できるなど、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。
【0085】
また、成長させる工程(ステップS2)では、X線回折におけるロッキングカーブの半値幅が好ましくは10arcsec以上500arcsec以下、より好ましくは20arcsec以上100arcses以下になるようにIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。500arcsec以下の場合、III族窒化物半導体結晶12上に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができるため、より良好な特性の半導体デバイスが得られる。100arcses以下の場合、この上に結晶性のより良好なIII族窒化物半導体結晶をさらに成長させることができる。10arcsec以上の場合、III族窒化物半導体結晶12が容易に成長されるため、コストを低減できる。20arcses以上の場合、コストをより低減できる。
【0086】
次に、ヒータ109による加熱を中止して、ソースボート107、III族窒化物半導体結晶12および下地基板11の温度を室温程度まで降下させる。その後、下地基板11およびIII族窒化物半導体結晶12を反応管110から取り出す。
【0087】
以上より、図4に示す下地基板11上にIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。
【0088】
図6は、本発明の実施の形態1における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【0089】
次に、図6に示すように、少なくとも下地基板11を除去して、厚さD10が100μm以上のIII族窒化物半導体結晶12よりなるIII族窒化物半導体結晶基板10を形成する(ステップS3)。
【0090】
III族窒化物半導体結晶12と下地基板11との界面付近は、結晶性が良好でないことが多い。そのため、III族窒化物半導体結晶12において結晶性が良好でない部分をさらに除去することにより、III族窒化物半導体結晶基板10を製造することが好ましい。これにより、図6に示すように、主面10aおよび主面10aと反対側の面10bを有するIII族窒化物半導体結晶基板10が得られる。
【0091】
除去する方法としては、たとえば切断または研削などの方法を用いることができる。なお、切断とは、電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーやワイヤーソーなどで、III族窒化物半導体結晶12から少なくとも下地基板11を機械的に分割(スライス)することをいう。研削とは、ダイヤモンド砥石を持つ研削設備などで、少なくとも下地基板11を機械的に削り取ることをいう。
【0092】
III族窒化物半導体結晶12から除去される面は、下地基板11の表面に平行な面に限定されず、たとえばその表面に対して任意の傾きを有する面がスライスされてもよい。ただし、主面10aは上述したように、(0001)面、(1−100)面、(11−20)面および(11−22)面のうちのいずれか1つの面に対して−5度以上5度以下の角度を有することが好ましい。
【0093】
また、III族窒化物半導体結晶基板10の主面10aおよび主面10aと反対側の面10bについて、研磨や表面処理などをさらに実施してもよい。研磨する方法および表面処理方法については特に限定されず、任意の方法を採用できる。
【0094】
以上の工程(ステップS1〜S3)を実施することによって、図1および図2に示すIII族窒化物半導体結晶基板10を製造できる。すなわち、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下であるIII族窒化物半導体結晶基板10が得られる。
【0095】
(変形例1)
次に、図7および図8を参照して、本実施の形態の変形例1におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を説明する。図7は、本発明の実施の形態1の変形例1におけるIII族窒化物半導体結晶を成長させた状態を示す模式図である。図8は、本発明の実施の形態1の変形例1における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【0096】
図7に示すように、本変形例におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、基本的には実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法と同様であるが、成長させる工程(ステップS2)において2層のIII族窒化物半導体結晶を成長させる点においてのみ異なる。
【0097】
具体的には、図7に示すように、上述した実施の形態1により、気相成長法により下地基板11上に、四フッ化珪素ガスをドーピングガスとして用いることによりシリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶12を第1のIII族窒化物半導体結晶12aとする。その後、同様に、第1のIII族窒化物半導体結晶12a上に、四フッ化珪素ガスをドーピングガスとして用いることによりシリコンをドーピングした第2のIII族窒化物半導体結晶12bを成長させる。これにより、図7に示す下地基板11と、下地基板11上に形成された第1のIII族窒化物半導体結晶12aと、第1のIII族窒化物半導体結晶12a上に形成された第2のIII族窒化物半導体結晶12bとが得られる。
【0098】
次に、図8に示すように、少なくとも下地基板11を除去して、厚さD10が100μm以上の第1および第2のIII族窒化物半導体結晶12a、12bの少なくともいずれか一方よりなるIII族窒化物半導体結晶基板を製造する。本変形例では、第1のIII族窒化物半導体結晶12aおよび第2のIII族窒化物半導体結晶12bの一部を除去することにより、第2のIII族窒化物半導体結晶12bからなるIII族窒化物半導体結晶基板を製造している。この場合、第1のIII族窒化物半導体結晶12aを下地基板11と格子定数をあわせるバッファ層とし、その上により結晶性を良好にした第2のIII族窒化物半導体結晶12bを成長させることによって、より結晶性が良好なIII族窒化物半導体結晶基板10が得られる。
【0099】
(変形例2)
図9を参照して、本実施の形態の変形例2におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を説明する。図9は、本発明の実施の形態1の変形例2における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【0100】
図9に示すように、本変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法は、基本的には変形例1におけるIII族窒化物半導体結晶の製造方法と同様であるが、少なくとも下地基板を除去する工程(ステップS3)において第1のIII族窒化物半導体結晶12aの一部を除去することにより、第1および第2のIII族窒化物半導体結晶12a、12bを含むIII族窒化物半導体結晶基板10を製造している点においてのみ異なる。
【0101】
本変形例のIII族窒化物半導体結晶基板10において、2層のIII族窒化物半導体結晶12a、12bは、同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。また、本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、1層または2層のIII族窒化物半導体結晶を成長させる方法に特に限定されず、3層以上のIII族窒化物半導体結晶を成長させてもよい。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態および変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板10は、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である。
【0103】
本実施の形態およびその変形例では、シリコンをドーピングする際に、ドーピングガスが分解することを防止し、かつ、ドーピングガスが他のガスとの反応自体を抑制する条件として、シリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶12を成長させる際に、四フッ化珪素ガスがドーピングガスとして用いてられている。四フッ化珪素ガスはシリコンをドーピングするための他のドーピングガスと比較して、そのガス自身が分解しにくく、かつIII族窒化物半導体結晶の原料ガスおよびキャリアガスなどの他のガスと反応しにくい性質を有している。特に、シラン、ジシラン、クロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランおよびテトラクロロシランは、N(窒素)の原料であるアンモニアガスと室温近傍の温度で反応するのに対して、四フッ化珪素ガスは、1200℃まで昇温してもアンモニアガスと反応しない。これにより、四フッ化珪素ガスが下地基板11に到達する前に分解してシリコンが下地基板11以外の箇所に吸着することや、四フッ化珪素ガス中のシリコンが反応によりSixy(窒化シリコン)系化合物(xおよびyは任意の整数)を生成することを抑制できる。そのため、ドーピングガスとしての四フッ化珪素ガスの濃度を制御することによって、ドーパントとして働くシリコンの濃度を容易に制御できる。その結果、III族窒化物半導体結晶12中に取り込まれるシリコンの量を一定に制御しやすい。したがって、III族窒化物半導体結晶12の抵抗率の制御が容易である。
【0104】
また、四フッ化珪素ガス中のシリコンの量の制御が容易であるので、四フッ化珪素ガスを下地基板11に高速で供給する必要がない。そのため、成長させるために適切な流速でドーピングガスを供給することにより第1のIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができるので、ドーピングガスを下地基板11に均一に供給できる。そのため、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の抵抗率の面内分布が悪化することを防止できる。
【0105】
したがって、本実施の形態およびその変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板10によれば、抵抗率の制御を容易にすることにより抵抗率が低くされ、かつ抵抗率の面内分布の悪化が防止されたIII族窒化物半導体結晶12を用いている。このため、III族窒化物半導体結晶基板10の抵抗率は0.1Ωcm以下であるので、低オン抵抗、高耐圧などの特性を向上した電子デバイスや発光デバイスに用いられるn型基板として好適に用いられる。一方、抵抗率が1×10-4Ωcm以上であるので、高濃度のシリコンがドーピングされる必要がないので、III族窒化物半導体結晶の成長時におけるピットや欠陥の発生が抑制され、かつ割れの発生が抑制されている。また、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下で、かつIII族窒化物半導体結晶基板の厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である場合、このIII族窒化物半導体結晶基板を用いて半導体デバイスを作製するときの特性のばらつきが抑制できるので、歩留まりを向上できる。
【0106】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2におけるIII族窒化物半導体結晶基板は、図1および図2に示す実施の形態1のIII族窒化物半導体結晶基板10と同様である。本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法において、実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法と異なる。
【0107】
具体的には、III族窒化物半導体結晶基板の製造方法において、ドーピングガスとして四塩化珪素ガスを用いてIII族窒化物半導体結晶を成長させる点において実施の形態1と異なる。
【0108】
詳細には、気相成長法により下地基板11上に、四塩化珪素ガスをドーピングガスとして用いることによりシリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶12を成長させる(ステップS2)。本実施の形態では、ドーピングガスは、四塩化珪素ガスのみを用いている。以下、実施の形態1と異なる点を詳述する。
【0109】
ドーピングガスが四塩化珪素ガスの場合、III族窒化物半導体結晶12の成長速度は、200μm/h以上2000μm/h以下であり、好ましくは300μm/h以上600μm/h以下である。III族窒化物半導体結晶12の成長速度が200μm/h以上である場合、III族窒化物半導体結晶12の成長表面に微細なSixy層が形成されても、Sixy層の成長速度よりも四塩化珪素ガスの成長速度が十分に大きいので、III族窒化物半導体結晶12がそのSixy層を埋め込むように形成される。このため、Sixy層が形成される影響を抑えることができるので、四塩化珪素ガスの濃度を制御することによって、ドーパントであるシリコンの濃度の制御が容易となる。その結果、取り込まれるシリコンの濃度を一定に制御しやすい。したがって、III族窒化物半導体結晶12の抵抗率の制御が容易である。III族窒化物半導体結晶12の成長速度が300μm/h以上である場合、III族窒化物半導体結晶12の抵抗率の制御がより容易である。一方、III族窒化物半導体結晶12の成長速度が2000μm/h以下である場合、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の結晶性の劣化が抑制される。III族窒化物半導体結晶12の成長速度が600μm/h以下である場合、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の結晶性の劣化がより抑制される。
【0110】
III族窒化物半導体結晶12の成長時における四塩化珪素ガスの分圧は、1×10-6atm以上2×10-4atm以下であることが好ましい。四塩化珪素ガスの分圧が1×10-6atm以上の場合、n型ドーパントとしてのシリコンが十分にIII族窒化物半導体結晶12に取り込まれる。一方、四塩化珪素ガスの分圧が2×10-4atm以下である場合、Sixy(窒化シリコン)系化合物の生成をより抑制できるため、シリコンをドーピングする制御性をより良好にできる。また、III族窒化物半導体結晶12にドーピングされるシリコンの濃度を考慮すると、四塩化珪素ガスの分圧は1.0×10-5atm以下である。なお、原料ガス、キャリアガスおよびドーピングガスなどの反応管110内に含まれるガスのそれぞれの分圧の合計(全体)が1atmである。四塩化珪素ガスの濃度は、分圧に比例する。
【0111】
ドーピングガスG2の供給速度は、100cm/分以上1000cm/分以下が好ましく、250cm/分以上500cm/分以下であることがより好ましい。この範囲内にすると、供給するドーピングガスG2の濃度分布のばらつきを抑制できる。
【0112】
以上より、図4に示す下地基板11上にIII族窒化物半導体結晶12を成長させることができる。このIII族窒化物半導体結晶12を用いて、実施の形態1と同様にIII族窒化物半導体結晶基板を製造する。これにより、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下であるIII族窒化物半導体結晶基板が得られる。
【0113】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶12の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法は、実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶12の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶基板10の製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0114】
また、本実施の形態の製造方法は実施の形態1だけでなくその変形例にも適用することができる。
【0115】
また、図6および図7に示す実施の形態1の変形例1におけるIII族窒化物半導体結晶12の成長方法において、第1のIII族窒化物半導体結晶12aは、1×1017cm-3以下の相対的に低いシリコン濃度を有し、第2のIII族窒化物半導体結晶12bは、1×1017cm-3を超える相対的に高いシリコン濃度を有していることが好ましい。この場合、Sixy膜が形成されることにより成長が阻害されることが防止された第2のIII族窒化物半導体結晶12bが得られる。
【0116】
(変形例)
図10は、実施の形態2の変形例におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法に用いる別のHVPE装置を示す概略図である。図10に示すように、HVPE装置100bは、上述したHVPE装置100bと基本的には同様の構成を備えているが、ドーピングガス導入管105の径が小さい点、およびドーピングガス導入管105と第2ガス導入管106とを出口側で連結させている点においてのみ異なる。
【0117】
このHVPE装置100bでは、ドーピングガス導入管105の径が小さいため、ドーピングガスG2の流速が高くなる。良好な抵抗率の面内分布を維持できる程度のドーピングガスG2の流速を実現するようにドーピングガス導入管105の径が設定されている。
【0118】
またドーピングガス導入管105と第2ガス導入管106とを連結させることにより、ドーピングガスG2を第1原料ガスG1に接触させるタイミングが遅れる。このHVPE装置100bでは、領域AにおいてドーピングガスG2を第1原料ガスG1に曝される時間を短縮している。第2原料ガスG3がドーピングガスと反応性が低く、かつ第1原料ガスG1がドーピングガスG2との反応性の高いガスである場合には、ドーピングガスG2が第1原料ガスG1と反応することを抑制できる。そのため、供給するシリコン濃度の制御性を高めることができる。このため、図10に示すHVPE装置100bを用いて、III族窒化物半導体結晶12を成長させることが好ましい。特に、ドーピングガスに四塩化珪素を用いる場合には、図10に示すHVPE装置100bが好適に用いられる。
【0119】
また、このHVPE装置100b内でIII族窒化物半導体結晶12を成長させる場合には、ドーピングガスG2の供給速度を250cm/分以上にすることが非常に好ましい。この場合、HVPE装置100bにおいて領域Aを800℃以上の高温領域にしたときに、領域AでのドーピングガスG2の熱分解を抑制できる。
【0120】
なお、本変形例の製造方法は実施の形態2だけでなく実施の形態1およびその変形例にも適用することができる。
【0121】
以上説明したように、本実施の形態およびその変形例では、シリコンをドーピングする際に、ドーピングガスが分解されることを防止し、かつ、ドーピングガスが他のガスとの反応の影響を小さくする条件として、シリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶12を成長させる際に、四塩化珪素ガスがドーピングガスとして用いられ、かつIII族窒化物半導体結晶基板10を構成するIII族窒化物半導体結晶12の成長速度を200μm/h以上2000μm/h以下にしている。四塩化珪素ガスは、シリコンをドーピングするためのシラン、ジシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランなどの他のガスと比較して、そのガス自身が分解しにくい。そのため、四塩化珪素ガスが下地基板11に到達する前に分解してシリコンが下地基板11以外の箇所に吸着することを防止できる。
【0122】
また、四塩化珪素ガスがIII族窒化物半導体結晶12の第1の原料ガスG1およびキャリアガスなどの他のガスと反応してSixy層が生成した場合であっても、III族窒化物半導体結晶12の成長速度をたとえば200μm/h以上とする。これにより、III族窒化物半導体結晶12の成長表面に微細なSixy層が形成されても、Sixy層の成長速度よりもIII族窒化物半導体結晶12の成長速度が十分に大きいので、III族窒化物半導体結晶がSixy層を埋め込むように横方向にも成長する。このため、Sixy層が形成される影響を抑えることができるので、四塩化珪素ガスの濃度を制御することによって、ドーパントであるシリコンの濃度の制御が容易となる。その結果、取り込まれるシリコンの濃度を一定に制御しやすい。したがって、III族窒化物半導体結晶の抵抗率の制御が容易であるので、抵抗率を低減できる。
【0123】
このように、四塩化珪素ガス中のシリコンの濃度の制御が容易であるので、四塩化珪素ガスを下地基板11に高速で供給する必要がない。そのため、適切な流速で四塩化珪素ガスを供給することにより第1のIII族窒化物半導体結晶を成長させることができるので、ドーピングガスとしての塩化珪素ガスを下地基板に均一に供給できる。したがって、成長させるIII族窒化物半導体結晶12の抵抗率の面内分布が悪化することを防止できる。
【0124】
このため、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板は、抵抗率の制御を容易にすることにより抵抗率が低くされ、かつ抵抗率の面内分布の悪化が防止されたIII族窒化物半導体結晶を用いているので、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下が得られる。
【0125】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板を示す概略斜視図である。図11を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板を説明する。
【0126】
図11に示すように、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶基板20aは、基本的には図1に示す実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶基板10と同様であるが、100μm以上1000μm以下の厚さD20aを有している点においてのみ異なる。
【0127】
III族窒化物半導体結晶基板20aの厚さD20aは100μm以上1000μm以下であり、好ましくは60μm以上300μm以下の厚さD20aを有している。厚さD20aが100μm以上の場合、ハンドリングする際に割れが発生することが防止されたIII族窒化物半導体結晶基板20aが得られる。厚さD20aが60μm以上の場合、割れの発生がより防止されたIII族窒化物半導体結晶基板20aが得られる。一方、厚さD20aが1000μm以下の場合、半導体デバイスに好適に用いることができるととともに、III族窒化物半導体結晶基板20aの1枚当たりの製造コストを低減できる。厚さD20aが300μm以下の場合、III族窒化物半導体結晶基板20aの1枚当たりの製造コストをより低減できる。
【0128】
また、本実施の形態の「厚さ方向の抵抗率の分布」は、以下の方法によって測定された値である。具体的には、任意の厚さにおいて主面10a近傍(1点)および主面10aと反対側の面10b近傍(1点)との合計2点において、室温にて四探針法によりそれぞれ抵抗率を測定する。この2点の抵抗率の平均値を算出する。2点のそれぞれの抵抗率のうち、(最大値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の上限値とし、(最小値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の下限値とする。
【0129】
図12は、本発明の実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を示すフローチャートである。続いて、図12を参照して、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の製造方法について説明する。
【0130】
図12に示すように、まず、上述した実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶12の成長方法(ステップS1、S2)にしたがって、III族窒化物半導体結晶12を成長させる。次に、実施の形態1と同様に、少なくとも下地基板11を除去する(ステップS3)。これにより、実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶基板10を製造する。
【0131】
次に、III族窒化物半導体結晶12を厚さ方向にスライス加工することにより、厚さが100μm以上1000μm以下の複数枚のIII族窒化物半導体結晶12よりなるIII族窒化物半導体結晶基板20a〜20mを形成する(ステップS4)。
【0132】
図13は、本発明の実施の形態3におけるスライス加工する状態を示す模式図である。図13に示すように、III族窒化物半導体結晶基板10を所望の厚さの所望の複数枚のIII族窒化物半導体結晶基板20a〜20mに加工する。スライス加工する方法は特に限定されず、たとえば電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーやワイヤーソーなどを用いて行なう。
【0133】
(変形例)
図14は、本発明の実施の形態3の変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を示す模式図である。図14に示すように、本変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法は、基本的には実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法と同様であるが、工程の順序が異なる点においてのみ異なる。
【0134】
具体的には、実施の形態1と同様にIII族窒化物半導体結晶基板の成長方法を実施することによって、下地基板11上にIII族窒化物半導体結晶12を成長させる。次に、III族窒化物半導体結晶12を厚さ方向にスライス加工することにより、厚さが100μm以上1000μm以下の複数枚のIII族窒化物半導体結晶12よりなるIII族窒化物半導体結晶基板20a〜20mを形成する(ステップS4)。この結果、III族窒化物半導体結晶12から少なくとも下地基板11が除去される(ステップS3)。すなわち、下地基板11を除去する前にIII族窒化物半導体結晶基板20a〜20mをスライス加工している。
【0135】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶基板20aの構成および製造方法は、実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶基板10の構成およびIII族窒化物半導体結晶基板10の製造方法の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0136】
また、本実施の形態および変形例は、実施の形態1だけでなく実施の形態1の変形例、実施の形態2およびその変形例にも適用することができる。
【0137】
以上説明したように、本実施の形態およびその変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板20aは、上記III族窒化物半導体結晶基板20aの製造方法により得られるので、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である。
【0138】
このように、本実施の形態およびその変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板20aによれば、不純物としてシリコンを含むIII族窒化物半導体結晶基板20aにおいて、シリコンをドーピングする際に、ドーピングガスが分解することを防止し、かつ、ドーピングガスが他のガスとの反応自体を抑制する、または反応の影響を小さくする条件で製造されている。このため、抵抗率の制御を容易にして抵抗率を低くできるとともに、抵抗率の面内分布の悪化を抑制したIII族窒化物半導体結晶基板20a〜20mが得られる。
【0139】
なお、実施の形態1、その変形例1および2、実施の形態2およびその変形例では、III族窒化物半導体結晶基板10、20aの厚さD10、D20aおよび直径Rを上記範囲としたが、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板10は、厚みについては特に限定されない。また、実施の形態1、その変形例1および2、実施の形態2およびその変形例で説明したIII族窒化物半導体結晶基板10の製造方法に特に限定されない。
【0140】
また、厚さ方向の抵抗率の分布の測定する試料の数は、III族窒化物半導体結晶12またはIII族窒化物半導体結晶基板10の厚さが2mm以上の場合は5点であり、III族窒化物半導体結晶12の厚さが2mm未満の場合は2点である。
【0141】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4における半導体デバイスを示す概略断面図である。図15に示すように、本実施の形態における半導体デバイスとしてのショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)は、実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板20aと、エピタキシャル層としてのドリフト層31と、ショットキー電極32と、オーミック電極33とを備えている。
【0142】
ドリフト層31は、III族窒化物半導体結晶基板20a上に形成されている。ショットキー電極32は、ドリフト層31上に形成されている。オーミック電極33は、III族窒化物半導体結晶基板20aにおいてドリフト層31が形成された面と反対側の面に形成されている。
【0143】
なお、本実施の形態では、実施の形態3のIII族窒化物半導体結晶基板20aを備えたショットキーバリアダイオードを説明したが、実施の形態1および2のIII族窒化物半導体結晶基板10を備えていてもよい。
【0144】
また、本実施の形態では、半導体デバイスの一例としてショットキーバリアダイオードを例に挙げて説明したが、特にこれに限定されない。半導体デバイスとしては、たとえば発光ダイオード、レーザダイオードなどの光デバイス、ショットキーバリアダイオード、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)などの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAW(Surface Acoustic Wave Device:表面弾性波素子)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS部品、圧電アクチュエータなどが挙げられる。
【0145】
以上説明したように、本実施の形態における半導体デバイスの一例であるショットキーバリアダイオード30は、実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板20aを備えている。上述した実施の形態1、2およびその変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板10、20a〜20mは、抵抗率を低くできるとともに、抵抗率の面内分布の悪化を防止できる。抵抗率の面内分布が抑制されたIII族窒化物半導体結晶基板10、20a〜20mを用いているので、特性のばらつきを抑制できることから、歩留まりを向上できる。また、低い抵抗率を有するIII族窒化物半導体結晶基板10、20a〜20mを用いているので、低オン抵抗、高耐圧などの特性を向上できる。
【0146】
[実施例1]
本実施例では、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板を製造するための条件について調べた。具体的には、実施の形態3にしたがって試料1〜18のIII族窒化物半導体結晶基板を製造し、その抵抗率、直径方向および厚さ方向の抵抗率の分布、シリコンの濃度を測定するとともに表面状態を観察した。
【0147】
(試料1〜18)
まず、105mmの直径および400μmの厚さを有する窒化ガリウムからなる下地基板11を準備した(ステップS1)。下地基板11の主面は(0001)面とした。
【0148】
次に、気相成長法としてHVPE法により下地基板11上に、下記の表1に記載のドーピングガスを用いて、シリコンをドーピングしたIII族窒化物半導体結晶として窒化ガリウム結晶を成長させた(ステップS2)。
【0149】
ステップS2では、図5に示すHVPE装置100aを用いて、窒化ガリウム結晶を成長させた。第1原料ガスG1としてアンモニアガスを、第2原料ガスG3として塩化水素ガスを、ドーピングガスG2として表1に記載のガスを、キャリアガスとして純度が99.999%以上の水素を準備した。第1ガス導入管104、第2ガス導入管106およびドーピングガス導入管105のそれぞれから、キャリアガスを反応管110の内部に導入し、ヒータ109の温度を1100℃に上昇させた。その後、ソースボート107にガリウムを供給して、ソースボート107を加熱した。
【0150】
第2ガス導入管106から供給される塩化水素ガスとソースボート107のガリウムとを、Ga+HCl→GaCl+1/2H2のように反応させることにより、反応ガスG7としてGaCl(塩化ガリウム)ガスを生成した。
【0151】
次いで、第1ガス導入管104から供給される第1原料ガスG1としてアンモニアガスと、塩化ガリウムガスとを下地基板11の窒化ガリウム結晶を成長させる表面に当たるようにキャリアガスとともに流して、その表面上で、GaCl+NH3→GaN+HCl+H2のように反応させた。
【0152】
窒化ガリウム結晶を成長させる条件として、窒化ガリウム結晶の成長速度、ドーピングガスの供給分圧およびドーピングガスの流速は下記の表1に記載のようにした。これにより、105mmの直径および10mmの厚さを有する窒化ガリウム結晶からなるIII族窒化物半導体結晶12を成長させた。
【0153】
次に、このIII族窒化物半導体結晶12としての窒化ガリウム結晶から下地基板を除去し(ステップS3)、さらに厚さ方向にスライス加工した(ステップS4)。その後、研削、研磨およびドライエッチング等の加工工程を実施して変質層を除去した。これにより、100mmの直径および400μmの厚さを有する窒化ガリウム結晶からなる13枚のIII族窒化物半導体結晶基板が得られた。この13枚のIII族窒化物半導体結晶基板のうち、厚さ方向において中央に位置するIII族窒化物半導体結晶基板(図13においてIII族窒化物半導体結晶基板20g)を試料1〜18のIII族窒化物半導体結晶基板とした。
【0154】
(測定方法)
試料1〜18の窒化ガリウム結晶基板について、抵抗率、直径方向の抵抗率の分布、厚さ方向の抵抗率の分布およびシリコン濃度をそれぞれ以下の方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0155】
試料1〜18のIII族窒化物半導体結晶基板の主面について、表面を鏡面研磨した後に、ドライエッチング処理により研磨によるダメージ層を除去した。そして、ある直径における中央近傍(1点)、両端近傍(2点)、および中央と両端との間の中央近傍(2点)と、この直径に直交する直径において両端近傍(2点)、および両端と中央との間の中央近傍(2点)との合計9点を、室温にてそれぞれ四探針法により抵抗率を測定した。9点の平均値を抵抗率とした。また、(最大値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の上限値とし、(最小値−平均値)/平均値で求まる値を直径方向の抵抗率の分布の下限値とした。表1において、たとえば「<±22」とは−22%以上22%以下の範囲を示す。
【0156】
また、厚さ方向の抵抗率の分布は、以下の方法によって測定された値である。上述した方法と同様に、III族窒化物半導体結晶基板の表面および裏面について表面研磨およびドライエッチングを行なった。そして、主面近傍(1点)および主面と反対側の面近傍(1点)の合計2点(すなわち、表面および裏面の2点)において、室温にて四探針法によりそれぞれ抵抗率を測定した。そして、この2点の抵抗率の平均値を算出した。また、2点のそれぞれの抵抗率のうち、(最大値−平均値)/平均値で求まる値を厚さ方向の抵抗率の分布の上限値とし、(最小値−平均値)/平均値で求まる値を厚さ方向の抵抗率の分布の下限値とした。表1において、たとえば「<±13」とは−13%以上13%以下の範囲を示す。
【0157】
また、シリコンの濃度は、抵抗率の測定に用いた9点の測定用試料について、5mm角に切断し、この切断した測定用試料をSIMSによりシリコンの濃度を測定し、その平均値をシリコン濃度の平均値とした。
【0158】
また、試料1〜18における窒化ガリウム結晶基板の主面の表面状態をノルマルスキー顕微鏡により観察した。
【0159】
【表1】

【0160】
(測定結果)
表1に示すように、四フッ化珪素ガスをドーピングガスとして用いて窒化ガリウム結晶を成長させた試料1〜5の窒化ガリウム結晶基板は、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下と低く、直径方向の抵抗率の分布が−17%以上17%以下とばらつきが低く、厚さ方向の抵抗率の分布が−9%以上9%以下とばらつきが低く、シリコンの濃度は5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下と高い値であった。
【0161】
また、四塩化塩化珪素ガスをドーピングガスとして用い、かつ成長速度を200(μm/h)以上2000(μm/h)以下で窒化ガリウム結晶を成長させた試料6〜12の窒化ガリウム結晶基板は、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下と低く、直径方向の抵抗率の分布が−27%以上27%以下とばらつきが低く、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下とばらつきが低く、シリコンの濃度は5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下と高い値であった。
【0162】
また、試料1〜12の窒化ガリウム結晶基板を製造するための窒化ガリウム結晶は、成長表面に大きな凹凸がほとんど形成されず平坦であり、ピットの発生もなく、かつ単結晶であった。
【0163】
一方、ジクロロシランをドーピングガスとして用いた試料13〜16は、抵抗率が0.1Ωcmを超える高い値となった。
【0164】
試料13の窒化ガリウムの成長速度と試料2の窒化ガリウム結晶の成長速度とは同じであり、かつ試料13のドーピングガスの分圧および流速と試料2のドーピングガスの分圧および流速とは同じであったため、成長させる窒化ガリウム結晶中の抵抗率およびシリコン濃度は理論的には同じである。しかし、ジクロロシランをドーピングガスとして用いた試料13の窒化ガリウム結晶基板の抵抗率は試料2よりも高く、かつシリコン濃度は試料2よりも低かった。この結果から、ジクロロシランをドーピングガスとして用いると、ジクロロシランが分解することや他のガスと反応することによって、成長させる窒化ガリウム結晶にドーパントとしてのシリコンが十分に取り込まれなかったことがわかった。
【0165】
同様に、試料14の窒化ガリウムの成長速度と試料10の窒化ガリウム結晶の成長速度とは同じであり、かつ試料14のドーピングガスの分圧および流速と試料10のドーピングガスの分圧および流速とは同じであったため、成長させる窒化ガリウム結晶中の抵抗率およびシリコン濃度は理論的には同じである。しかし、ジクロロシランをドーピングガスとして用いた試料14の窒化ガリウム結晶基板の抵抗率は試料10よりも3桁以上高く、かつシリコン濃度は試料10よりも低かった。
【0166】
また、ジクロロシランをドーピングガスとして用い、抵抗率を低減するためにドーピングガスの流速を1500cm/分に増加した試料16は、抵抗率は0.013Ω・cmに低減されたものの、供給されたドーピングガスの濃度分布が悪化したことから、直径方向および厚さ方向の抵抗率の分布が大きく、面内の抵抗率のばらつきが大きかった。
【0167】
また、四塩化珪素をドーピングガスとして用い、成長速度を100μm/hとした試料17は、Sixyの成長速度が窒化ガリウムの成長よりも支配的になったため、Sixyが成長してしまい、成長表面に凹凸が発生し、ピットも生じ、多結晶になり、異常成長した。そのため、抵抗率、シリコン濃度、および抵抗率の分布の測定はできなかった。
【0168】
また、四塩化珪素をドーピングガスとして用い、成長速度を3000μm/hとした試料18は、窒化ガリウムの成長速度が速すぎたため、表面に凹凸が発生し、ピットも生じ、多結晶も現れ、異常成長した。そのため、抵抗率、シリコン濃度、および抵抗率の分布の測定はできなかった。
【0169】
以上より、本実施例によれば、四フッ化珪素ガスをドーピングとして用いる場合、または、四塩化珪素ガスをドーピングガスとして用い、かつ成長速度を200(μm/h)以上2000(μm/h)以下とする場合には、抵抗率を容易に制御できるとともに、抵抗率の面内分布の悪化を防止できるため、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下であるIII族窒化物半導体結晶基板が得られることが確認できた。
【0170】
ここで、本実施例では、III族窒化物半導体結晶として窒化ガリウム結晶を成長させたが、これ以外のIII族窒化物半導体結晶(B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)およびTI(タリウム)のIII族元素の少なくとも1種の元素を含むIII族窒化物半導体結晶)を成長させた場合でも、同様の結果を有することを確認した。
【0171】
[実施例2]
本実施例では、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造された半導体デバイスの特性および歩留まりを向上する効果について調べた。具体的には、試料1〜5、13〜16のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて実施の形態4で説明した図15に示す試料19〜27のショットキーバリアダイオードを製造し、その基板面抵抗、特性オン抵抗、および歩留まりを測定した。
【0172】
(試料19〜27)
まず、試料1〜5および試料13〜16のIII族窒化物半導体結晶基板20aを準備した。次に、それぞれのIII族窒化物半導体結晶基板20a上に、MOCVD法により、III族原料としてトリメチルガリウム(TMGa)、V族原料としてアンモニア(NH3)、ドーピングガスとしてシラン(SiH4)を用いて、ドリフト層31として5μmの厚みを有するn型GaN層を形成した。ドリフト層31のキャリア濃度は5×1015cm-3であった。
【0173】
次に、III族窒化物半導体結晶基板20aと、この上に形成されたドリフト層31とを備えたエピタキシャルウエハを、塩酸と純水とを1:1で混合した塩酸水溶液を用いて、室温で1分間、洗浄した。
【0174】
次に、III族窒化物半導体結晶基板20aの裏面側にオーミック電極33を形成した。具体的には、まず、エピタキシャルウエハを、III族窒化物半導体結晶基板20aにおいてドリフト層31が形成された面と反対側の裏面を有機溶媒で洗浄した。その後、20nmのTi(チタン)、100nmのAl、20nmのTiおよび300nmのAu(金)がこの順で裏面側に積層されるように、EB蒸着法(電子線蒸着法)により形成した。この積層した金属膜を形成した後に、600℃で1分間、合金化を行った。これにより、平面形状において700μmの直径を有する円形のオーミック電極33が形成された。
【0175】
次に、ドリフト層31上にショットキー電極32を形成した。ショットキー電極32は、500nmのAuよりなる膜を、抵抗加熱蒸着法により形成した。
【0176】
以上の工程を実施することにより、試料1〜5、13〜16の1枚のIII族窒化物半導体結晶基板より、それぞれ、試料19〜27の36枚のショットキーバリアダイオードを作製した。1枚のショットキーバリアダイオードは、1mm角の平面形状と、400μmの厚みとを有していた。なお、この半導体デバイスは、特性オン抵抗と耐圧とのトレードオフが最良となるようにショットキーバリアダイオードのパラメータを制御した。
【0177】
(測定方法)
試料19〜27のショットキーバリアダイオードについて、基板面抵抗、特性オン抵抗、特性オン抵抗内の基板面抵抗の割合、特性オン抵抗の面内分布、基板間の特性オン抵抗分布および歩留まりを測定した。これらの結果を下記の表2に記載する。
【0178】
具体的には、III族窒化物半導体結晶基板の抵抗率を四探針法により測定し、以下の式により基板面抵抗を求めた。
【0179】
基板面抵抗(mΩ・cm2)=抵抗率×厚さ
また、以下の式より特性オン抵抗が表される。
【0180】
特性オン抵抗(mΩ・cm2)=基板面抵抗+ドリフト面抵抗+電極面抵抗ドリフト面抵抗
ここで、特性オン抵抗は、ショットキーバリアダイオードのI−V(電流−電圧)特性より測定し、基板面抵抗は予め四探針測定により測定し、電極面抵抗はTLM(Transmission Line Model)法によって測定した。これより、ドリフト面抵抗も求められる。なお、ここではドリフト面抵抗を0.2(mΩ・cm2)、電極面抵抗を0.05(mΩ・cm2)とした。
【0181】
また、特性オン抵抗内の基板面抵抗の割合は、基板面抵抗を特性オン抵抗で除算した値(%)とした。
【0182】
また、特性オン抵抗の面内分布は、面ないに作製したショットキーバリアダイオードの各I−V特性より測定した。
【0183】
また、基板間の特性オン抵抗分布は、各基板の面内分布の平均値から、基板間の特性オン抵抗分布を測定した。
【0184】
また、歩留まりは、36枚のショットキーバリアダイオードの製造において、特性オン抵抗の目標値から10%以内の特性を有する割合(%)を求めた。
【0185】
【表2】

【0186】
(測定結果)
表2に示すように、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造された試料19〜23のショットキーバリアダイオードは、比較例のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造されたショットキーバリアダイオードよりも、特性オン抵抗が4.25Ω・cm2以下と低かった。
【0187】
また、用いたIII族窒化物半導体結晶基板の抵抗率が低い程、特性オン抵抗が低減し、かつ特性オン抵抗内の基板面抵抗の割合も低減した。このことから、III族窒化物半導体結晶基板の抵抗率を低減することで、特性オン抵抗を低減でき、かつ抵抗率分布が半導体デバイス特性に与える影響も小さくなることがわかった。
【0188】
また、特性オン抵抗の面内分布および基板間の特性オン抵抗分布についても、試料19〜23のショットキーバリアダイオードは、試料24〜27よりも低かったため、歩留まりが92%以上と高かった。
【0189】
特に、抵抗率が1×10-3Ωcmで、直径方向の抵抗率の分布が−17%以上17%以下で、厚さ方向の抵抗率の分布が−8%以上8%以下の試料4のIII族窒化物半導体結晶基板を用いた試料22、および、抵抗率が1×10-4Ωcmで、直径方向の抵抗率の分布が−17%以上17%以下で、厚さ方向の抵抗率の分布が−9%以上9%以下の試料5のIII族窒化物半導体結晶基板を用いた試料23は、特性オン抵抗を0.29Ω・cm2以下に大きく低減でき、かつ歩留まりを100%にまで向上することができた。
【0190】
一方、抵抗率が0.1Ωcmを超えていた試料13〜15のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造された試料24〜26のショットキーバリアダイオードは、特性オン抵抗が非常に高かった。
【0191】
また直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下の範囲外であり、かつ厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下の範囲外である試料16を用いて製造された試料27のショットキーバリアダイオードは、歩留まりが非常に悪かった。
【0192】
以上より、本実施例によれば、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である、III族窒化物半導体結晶基板を用いて製造された半導体デバイスは、ばらつきが抑制された低い特性オン抵抗が得られるとともに、歩留まりを向上できることが確認できた。
【0193】
[実施例3]
本実施例では、本発明のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造された半導体デバイスの特性を向上する効果について調べた。具体的には、実施例2で製造した試料20〜23のショットキーバリアダイオードのオン抵抗および耐圧を測定した。
【0194】
また、試料20〜23について、耐圧について測定した。具体的には、逆方向に電圧を印加して、電流と電圧との特性を測定し、逆方向電圧の増加に伴いリーク電流が増大する値を逆方向電圧とした。この結果を図16に示す。
【0195】
図16は、実施例3における試料20〜23のショットキーバリアダイオードの特性オン抵抗と逆方向耐圧との関係を示す図である。図16中、縦軸は特性オン抵抗(単位:Ω・cm2)を示し、横軸は耐圧(単位:V)を示す。また、図16において、GaN−limit、SiC−limitおよびSi−limitとは、それぞれの材料において現在標準となっている理論限界値を示す。具体的には、図17に示すように、ドリフト層のドリフト抵抗に対して、基板抵抗、電極抵抗など他の抵抗成分が無視できる程度に小さい場合には、オン抵抗が理論限界値になるため、このときのオン抵抗をそれぞれの理論限界値としている(たとえば、(11)M,Razeghi and M.Henini, Optoelectronic Device:IIINitrides(Elsevir, Oxford, 2005), Chapter 12)。なお、図17は、実施例3において理論限界値を説明するための図である。
【0196】
(測定結果)
図16に示すように、本発明例の試料2〜5のIII族窒化物半導体結晶基板を用いて製造したショットキーバリアダイオードは、特性オン抵抗が低く、かつ600Vの高い耐圧を維持していた。
【0197】
以上より、本実施例によれば、抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である、III族窒化物半導体結晶基板を用いて製造されたショットキーバリアダイオードは、低い特性オン抵抗および高い耐圧を維持できるなど特性を向上できることが確認できた。
【0198】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】本発明の実施の形態1における窒化ガリウム結晶基板を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における窒化ガリウム結晶基板を示す概略上面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶を成長させた状態を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法に用いるHVPE装置を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態1における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例1におけるIII族窒化物半導体結晶を成長させた状態を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態1の変形例1における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態1の変形例2における少なくとも下地基板を除去した状態を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法に用いる別のHVPE装置を示す概略図である。
【図11】本発明の実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板を示す概略斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態3におけるスライス加工する状態を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の形態3の変形例におけるIII族窒化物半導体結晶基板の製造方法を示す模式図である。
【図15】本発明の実施の形態4における半導体デバイスを示す概略断面図である。
【図16】実施例3における試料20〜23のショットキーバリアダイオードの特性オン抵抗と逆方向耐圧との関係を示す図である。
【図17】実施例3において理論限界値を説明するための図である。
【符号の説明】
【0200】
10,20a〜20m III族窒化物半導体結晶基板、10a 主面、10b 面、11 下地基板、12 族窒化物半導体結晶、12a 第1のIII族窒化物半導体結晶、12b 第2のIII族窒化物半導体結晶、30 ショットキーバリアダイオード、31 ドリフト層、32 ショットキー電極、33 オーミック電極、100a,100b HVPE装置、101 第1原料ガスボンベ、102 ドーピングガスボンベ、103 第2原料ガスボンベ、104 第1ガス導入管、105 ドーピングガス導入管、106 第2ガス導入管、107 ソースボート、108 サセプタ、109 ヒータ、110 反応管、111 排気管、G1 第1原料ガス、G2 ドーピングガス、G3 第2原料ガス、G7 反応ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25mm以上160mm以下の直径を有するIII族窒化物半導体結晶基板であって、
抵抗率が1×10-4Ωcm以上0.1Ωcm以下であり、
直径方向の抵抗率の分布が−30%以上30%以下であり、
厚さ方向の抵抗率の分布が−16%以上16%以下である、III族窒化物半導体結晶基板。
【請求項2】
直径方向の抵抗率の分布が−20%以上20%以下であり、
厚さ方向の抵抗率の分布が−10%以上10%以下である、請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項3】
2mm以上160mm以下の厚さを有する、請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項4】
100μm以上1000μm以下の厚さを有する、請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項5】
抵抗率が1×10-3Ωcm以上8×10-3Ωcm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項6】
シリコンの濃度が5×1016cm-3以上5×1020cm-3以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項7】
シリコンの濃度が3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項8】
転位密度が1×107cm-2以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項9】
主面が(0001)面、(1−100)面、(11−20)面および(11−22)面のうちのいずれか1つの面に対して−5度以上5度以下の角度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項10】
X線回折におけるロッキングカーブの半値幅が10arcsec以上500arcsec以下である、請求項1〜9のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項11】
AlxInyGa(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)結晶よりなる、請求項1〜10のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項12】
窒化ガリウム結晶よりなる、請求項1〜10のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶基板と、
前記III族窒化物半導体結晶基板上に形成されたエピタキシャル層とを備えた、半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−126722(P2009−126722A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300460(P2007−300460)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】