説明

エッチング装置及び半導体装置の製造方法

【課題】難エッチング材料を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングする。
【解決手段】実施形態に係わるエッチング装置は、上面側に披処理基板19が搭載されるステージ11と、ステージ11の上面側を覆うチャンバー12と、ステージ11の下面側に付加され、開口部を有する下部電極13aと、チャンバー12内にエッチングガスを供給するガス供給部14と、下部電極13aに高周波を印加することにより、チャンバー12内のエッチングガスをプラズマ化する高周波電源部17と、下部電極13aの開口部を介して被処理基板19にマイクロ波を印加することにより、披処理基板19の温度を最適範囲内に設定するマイクロ波発生部15と、ガス供給部14、高周波電源部17及びマイクロ波発生部15を制御する制御部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、エッチング装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造方法においては、エッチングガスとの反応性が悪く、反応生成物の蒸気圧が低い、いわゆる難エッチング材料(貴金属、強誘電体、強磁性体など)をエッチングしなければならないプロセスが必要不可欠になっている。このため、難エッチング材料を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングする技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−123738号公報
【特許文献2】特開2009−16540号公報
【特許文献3】特開平10−504513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、難エッチング材料を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、エッチング装置は、上面側に披処理基板が搭載されるステージと、前記ステージの上面側を覆うチャンバーと、前記ステージの下面側に付加され、開口部を有する下部電極と、前記チャンバー内にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記下部電極に高周波を印加することにより、前記チャンバー内の前記エッチングガスをプラズマ化する高周波電源部と、前記下部電極の前記開口部を介して前記被処理基板にマイクロ波を印加することにより、前記披処理基板の温度を最適範囲内に設定するマイクロ波発生部と、前記ガス供給部、前記高周波電源部及び前記マイクロ波発生部を制御する制御部とを備える。
【0006】
実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、貴金属、強誘電体及び強磁性体のうちの少なくとも1つを含む積層構造を形成する工程と、前記半導体基板の温度をマイクロ波により最適範囲内に維持した状態で前記積層構造をプラズマエッチングによりエッチングする工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】エッチング装置を示す図。
【図2】下部電極を示す図。
【図3】下部電極を示す図。
【図4】エッチング時の最適温度を説明する図。
【図5】マイクロ波加熱とヒーター加熱を比較する図。
【図6】エッチング方法を示すフローチャート。
【図7】エッチング方法を示すフローチャート。
【図8】エッチング方法を示すフローチャート。
【図9】半導体装置の製造方法の第1の例を示す図。
【図10】半導体装置の製造方法の第1の例を示す図。
【図11】半導体装置の製造方法の第2の例を示す図。
【図12】半導体装置の製造方法の第2の例を示す図。
【図13】半導体装置の製造方法の第2の例を示す図。
【図14】半導体装置の製造方法の第2の例を示す図。
【図15】半導体装置の製造方法の第2の例を示す図。
【図16】MRAMのメモリセルアレイを示す図。
【図17】MRAMのメモリセルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0009】
(1) エッチング装置
図1は、エッチング装置を示している。
【0010】
このエッチング装置は、ステージ(例えば、セラミック板)11、チャンバー12、下部電極13a、上部電極13b、ガス供給部14、マイクロ波発生部15、導波管16、高周波電源部17及び制御部18を有する。
【0011】
ステージ11上には、被処理基板(例えば、ウェハー)19が搭載される。ガス供給部14は、エッチングガス、例えば、ハロゲンガス、ハロゲン化合物ガスなど、を真空状態のチャンバー12内に供給する。
【0012】
下部電極13aには、高周波電源部17により高周波が印加される。これにより、チャンバー12内のエッチングガスがプラズマ化し、バイアス電力により被処理基板19に向かってイオンが加速される。上部電極13bは、例えば、コイルである。
【0013】
ここで、例えば、図2及び図3に示すように、下部電極13aは、開口部20を有する。開口部29の形状は、特に制限されない。但し、開口部20は、下部電極13aに均等に配置されているのが望ましい。
【0014】
マイクロ波発生部15は、被処理基板19を直接加熱するためのマイクロ波(例えば、1〜10ギガHz)を発生する。このマイクロ波は、導波管16及び下部電極13aに設けられた開口部20(図2及び図3参照)を経由して、被処理基板19に印加される。
【0015】
制御部18は、被処理基板19に対するエッチング時に、ガス供給部14、マイクロ波発生部15及び高周波電源部17の動作を制御する。
【0016】
このエッチング装置の特徴は、被処理基板19を直接加熱するためのマイクロ波を発生するマイクロ波発生部15を備えている点にある。ここでの加熱とは、被処理基板19の全体の加熱を意味する。マイクロ波発生部15を備えることにより、エッチング時に、被処理基板19の温度を高速に所定値に設定することが可能になる。
【0017】
また、マイクロ波は、下部電極13aに設けられた開口部を介して被処理基板19に印加され、被処理基板19を加熱する。即ち、被処理基板19の裏面(エッチング面とは逆の面)側からマイクロ波を印加することにより、エッチング装置を複雑化することなく、簡易な構成により、被処理基板19の温度を高速に所定値に設定することができる。
【0018】
(2) 被処理基板の温度
近年、半導体装置の製造方法においては、難エッチング材料(貴金属、強誘電体、強磁性体など)をエッチングしなければならないプロセスが必要不可欠である。
【0019】
例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)においては、Si, Ta, Zr, Y, Laなどの酸化物を含む誘電体を、Pt, Ir, Ruなどの貴金属で挟み込むキャパシタ構造を備える。また、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)においては、PZTなどの強誘電体を、Pt, Ir, Ruなどの貴金属で挟み込むキャパシタ構造を備える。
【0020】
さらに、MRAM(Magnetic Random Access Memory)においては、Co, Fe, Ni, Ir, Pt, Mn, Ruを含む強磁性体を、Pt, Ir, Ruなどの貴金属で挟み込む積層構造を備える。
【0021】
このように、DRAM及びFeRAMのキャパシタ構造や、MRAMの積層構造などは、難エッチング材料を含んでおり、これらを、高速、高精度及び低ダメージでエッチングする技術の開発が望まれている。
【0022】
難エッチング材料を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングするために重要となるファクターが被処理基板としてのウェハーの温度である。
【0023】
図4は、ウェハーの温度とエッチレート/テーパー角/ダメージの関係を示している。
【0024】
難エッチング材料のエッチングでは、ウェハーの温度が上昇するに従い、エッチレート及びテーパー角が大きくなる。尚、テーパー角とは、難エッチング材料の下地層の上面に対する角度のことであり、最大値は、90°である。
【0025】
その理由は、ウェハーの温度が上昇すると、反応生成物の蒸気圧が上がるからである。反応生成物の蒸気圧が上がると、エッチングレートが大きくなり、マスクに対する選択比が向上し、再付着物(Re-deposition)が減少する。マスクに対する選択比が向上すると、マスクの後退(エッチングによるサイズの縮小)が抑制され、再付着物によるエッチング阻害がなくなるため、テーパー角が大きくなる。
【0026】
ここで、エッチレートが大きくなるとは、高速に難エッチング材料をエッチングできることを意味し、テーパー角が大きくなるとは、高精度に難エッチング材料をエッチングできることを意味するため、高速及び高精度を実現するためにはウェハーの温度をできるだけ上げるのが望ましい。
【0027】
これに対し、ウェハーの温度が上昇するに従い、難エッチング材料に生じるダメージが大きくなる。例えば、上述のDRAM、FeRAM、MRAMなどの半導体装置においては、ウェハーの温度が上昇するに従い、キャパシタや積層構造などにダメージが入り易くなり、結果として、素子特性が劣化する。
【0028】
このように、難エッチング材料のエッチングに関しては、エッチレート/テーパー角とダメージとは、トレードオフの関係にある。
【0029】
従って、難エッチング材料のエッチングでは、これら3つの要素の兼ね合いから、ウェハーの温度の最適範囲が設定される。
【0030】
この最適範囲は、例えば、MRAMに用いる難エッチング材(例えば、強磁性体など)については、200℃から350℃まで、より望ましくは、250℃から275℃までの狭い範囲となる。またFeRAMに用いる難エッチング材(例えば、強誘電体)などについては、250℃から400℃まで、より望ましくは、300℃から350℃までの狭い範囲となる。
【0031】
ここで、従来のエッチング装置では、一般的に、ウェハーの加熱は、ヒーターにより行われる。しかし、例えば、図5に示すように、ヒーターによる加熱は、ウェハーの温度を最適範囲内に設定するまでに多大な時間tを要する。また、ヒーターにより最適範囲の温度を維持するのは難しい。
【0032】
さらに、予めウェハーの温度を最適範囲内に設定しておく方法が提案されているが、この方法では、ウェハーを、長時間、高温に維持しておく必要があるため、これによる難エッチング材料のダメージが深刻な問題となる。
【0033】
そこで、実施形態では、図1に示すエッチング装置を用いて、マイクロ波によりウェハーを直接加熱し、ウェハーの温度を高速に最適範囲内に設定する。例えば、図5に示すように、マイクロ波による加熱は、ウェハーの温度を直ちに最適範囲内に設定できる点に特徴を有する。
【0034】
尚、従来においても、マイクロ波による加熱(例えば、マイクロ波アニールなど)が知られているが、この方法には、難エッチング材料のエッチングに際して初めて生じる課題、即ち、エッチレート/テーパー角とダメージとのトレードオフにより、エッチング時のウェハーの温度を、最適範囲内に維持しなければならないという課題が発生しない。
【0035】
従って、実施形態に係わるエッチング装置及び半導体装置の製造方法は、周知のマイクロ波加熱技術から容易に考えられるものではない。
【0036】
(3) 動作(エッチング方法)
図1のエッチング装置の動作(エッチング方法)について説明する。
【0037】
図6は、エッチング装置の動作の第1の例を示している。
この動作は、図1のエッチング装置の制御部18により制御される。
【0038】
まず、ウェハー19がステージ11上に置かれた状態において、ガス供給部14により、エッチングガスを真空状態のチャンバー12内に供給する。この時、チャンバー12内の圧力は、一定に保たれる。また、エッチングガスの供給と同時に、マイクロ波発生部15により、マイクロ波を発生させ、ウェハー19の温度を最適範囲内に設定する(ステップST1)。
【0039】
次に、ウェハー19の温度が最適範囲内に維持された状態において、高周波電源部17により、下部電極13aに高周波を印加し、エッチングガスをプラズマ化すると共に、バイアス電力により、プラズマイオンをウェハー19に向かって加速させ、ウェハー19に対するエッチングを行う(ステップST2)。
【0040】
この動作では、マイクロ波によるウェハー19の加熱は、エッチングガスの供給と並行して行われる。
【0041】
図7は、エッチング装置の動作の第2の例を示している。
この動作も、図1のエッチング装置の制御部18により制御される。
【0042】
まず、ウェハー19がステージ11上に置かれた状態において、ガス供給部14により、エッチングガスを真空状態のチャンバー12内に供給する。この時、チャンバー12内の圧力は、一定に保たれる。
【0043】
次に、ウェハー19の温度が最適範囲内に維持された状態において、高周波電源部17により、下部電極13aに高周波を印加し、エッチングガスをプラズマ化すると共に、バイアス電力により、プラズマイオンをウェハー19に向かって加速させ、ウェハー19に対するエッチングを行う。
【0044】
また、これと同時に、マイクロ波発生部15により、マイクロ波を発生させ、ウェハー19の温度を最適範囲内に設定する(ステップST1)。
【0045】
この動作では、マイクロ波によるウェハー19の加熱は、プラズマの発生/バイアス電力の印加と並行して行われる。
【0046】
いずれの例においても、ウェハー19の温度を高速に最適範囲内に設定できるため、難エッチング材料の高速、高精度及び低ダメージのエッチングを実現することができる。
【0047】
これに対し、ヒーターによりウェハーを加熱するエッチング装置の動作(比較例)は、図6のフローチャートに示すようになる。
【0048】
まず、ウェハーを予め加熱しておく(ステップST1)。
【0049】
これは、既に述べたように、ヒーターによる加熱は、ウェハーの温度を最適範囲内に設定するために多大な時間を要するからである。
【0050】
次に、ウェハーの温度が最適範囲内に維持された状態において、ガス供給部により、エッチングガスを真空状態のチャンバー内に供給する。この時、チャンバー内の圧力は、一定に保たれる。(ステップST2)。
【0051】
次に、ウェハーの温度が最適範囲内に維持された状態において、高周波電源部により、下部電極に高周波を印加し、エッチングガスをプラズマ化すると共に、バイアス電力により、プラズマイオンをウェハーに向かって加速させ、ウェハーに対するエッチングを行う(ステップST3)。
【0052】
この比較例では、ウェハーを予め最適範囲内に設定しておくステップが新たに必要となるため、スループットが悪くなると共に、難エッチング材料にもダメージを与える。
【0053】
(4) 半導体装置の製造方法
図1のエッチング装置を用いれば、難エッチング材料(貴金属、強誘電体、強磁性体など)を含む積層構造を備える半導体装置の製造方法において、その積層構造を、マイクロ波により最適範囲内の温度に設定した状態で、プラズマエッチングによりエッチングすることが可能になる。従って、難エッチング材料にダメージを与えることなく、高速(高いスループット)及び高精度(高い形状制御性)で、難エッチング材料のエッチングを行うことができる。
【0054】
以下では、難エッチング材料を含む積層構造を備える半導体装置の製造方法として、MRAMを例に説明する。
【0055】
図9及び図10は、磁気抵抗効果素子の製造方法の第1の例を示している。
【0056】
まず、図9に示すように、下部電極21上に、下部層22、記憶層23、トンネルバリア層24、参照層25、シフト調整層26及びハードマスク層27を順次形成する。
【0057】
下部層22は、例えば、(Co/Pt)を含む。ここで、(Co/Pt)は、Co層とPt層とが1回以上交互に積み重ねられる構造を意味する。
【0058】
記憶層23及び参照層25は、例えば、CoPt、FePtなどの垂直磁化を有する磁性層である。トンネルバリア層24は、例えば、MgOである。
【0059】
垂直磁化とは、残留磁化の方向が記憶層23及び参照層25の膜面(上面/下面)に対して垂直又はほぼ垂直となることである。この明細書において、ほぼ垂直とは、残留磁化の方向が記憶層23及び参照層25の膜面に対して、45°<θ≦90°の範囲内にあることを意味する。
【0060】
シフト調整層26は、磁気抵抗効果素子の構造に起因する記憶層23の磁気ヒステリシス曲線のシフトを調整する機能を有する。シフト調整層26は、例えば、CoPtである。参照層25とシフト調整層26との間には、中間層(例えば、Ru)が存在していてもよい。
【0061】
シフト調整層26は、磁気抵抗効果素子に必須の要素ではなく、これを省略することも可能である。なぜなら、シフト調整層26が無くても、記憶層23の磁気ヒステリシス曲線のシフト調整を行うことも可能だからである。
【0062】
例えば、参照層25として、TbCoFe/CoFeBを用い、TbとCoFeの組成比を調整することにより、参照層25の見かけ上の飽和磁化(net−Ms)を零にすることができる。CoFeの比率を70〜80at.%にすると、TbCoFe/CoFeBの飽和磁化が零になる。
【0063】
ハードマスク層27は、例えば、Ta、Ti、Alなどの金属、さらには、その窒化膜又は酸化物からなる層である。
【0064】
次に、PEP(Photo Engraving Process)により、ハードマスク層27上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにして、プラズマエッチングによりハードマスク層27をパターニングする。このプラズマエッチングは、例えば、CF、CHF、C、Cなどを含むフロロカーボンガスを用いて行われる。この後、レジストパターンを除去する。
【0065】
次に、図10に示すように、ハードマスク層27をマスクにして、プラズマエッチングにより、シフト調整層26、参照層25、トンネルバリア層24、記憶層23及び下部層22をパターニングする。ここで、ハードマスク層27をマスクとするのは、フォトレジストをマスクにすると、それをアッシングにより除去するときに記憶層23及び参照層25が酸化される恐れがあるからである。
【0066】
このプラズマエッチングは、例えば、図1のエッチング装置を用いて行う。
【0067】
即ち、チャンバー12内の圧力を約1Paに維持した状態で、Clガスを流量約200SCCMによりチャンバー12内に導入する。また、約1000Wのパワーを上部電極13bに印加し、約13.56メガHzの高周波及び約400Wのバイアス電力を下部電極13aに印加する。さらに、約500Wのパワーを持つマイクロ波発生部15を用いて、約5.7ギガHzのマイクロ波を発生し、これを、導波管16及び下部電極13aを介して、ウェハー(磁気抵抗効果素子)19に印加する。
【0068】
これにより、ウェハー19が瞬時に加熱され、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定される。また、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定された状態で、プラズマ化されたClガスを用いて、約20秒をかけて、シフト調整層26、参照層25、トンネルバリア層24、記憶層23及び下部層22をエッチングする。
【0069】
以上の工程により、磁気抵抗効果素子が形成される。この製造方法により形成された磁気抵抗効果素子のテーパー角は、ほぼ垂直(90°)であった。また、磁気抵抗効果素子の飽和磁化量をVSM (Vibrating Sample Magnetometer)法により測定したところ、飽和磁化量の減少がほとんど無かった。
【0070】
このように、上述の製造方法によれば、磁気抵抗効果素子(難エッチング材料)を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングすることができる。
【0071】
尚、磁気抵抗効果素子のパターニングに用いるエッチングガスは、Clガス(ハロゲンガス)に代えて、HClガス、BClガスなどのハロゲン化合物ガスを用いることも可能である。また、これらハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスに、Ar、He、Xeなどの不活性ガスや、O、Nなどの酸化性又は窒化性を示すガスを混入させてもよい。
【0072】
また、チャンバー内の圧力は、約1Paに限られない。チャンバー内の圧力は、0.5Pa〜3Paの範囲内の値であるのが望ましく、さらに望ましくは、1Pa〜2Paの範囲内の値である。
【0073】
さらに、バイアス電力は、300〜600Wの範囲内の値が望ましく、さらに望ましくは、300〜400Wの範囲内の値である。上部電極13bに印加するパワーは、200〜4000Wの範囲内の値が望ましく、さらに望ましくは、500〜1500Wの範囲内の値である。
【0074】
図11乃至図15は、磁気抵抗効果素子の製造方法の第2の例を示している。
【0075】
第2の例は、第1の例と比べると、記憶層23のサイズと参照層25のサイズとを異ならせるプロセスに特徴を有する。これにより、記憶層23及び参照層25の側壁上に、エッチング時に生じる再付着層が形成されても、これが記憶層23と参照層25との電気的ショートを発生させることはない。
【0076】
まず、図11に示すように、下部電極21上に、下部層22、記憶層23、トンネルバリア層24、参照層25、シフト調整層26及びハードマスク層27を順次形成する。
【0077】
下部層22は、例えば、(Co/Pt)を含む。記憶層23及び参照層25は、例えば、CoPt、FePtなどの垂直磁化を有する磁性層である。トンネルバリア層24は、例えば、MgOである。
【0078】
シフト調整層26は、磁気抵抗効果素子の構造に起因する記憶層23の磁気ヒステリシス曲線のシフトを調整する機能を有する。シフト調整層26は、例えば、CoPtである。参照層25とシフト調整層26との間には、中間層(例えば、Ru)が存在していてもよい。
【0079】
シフト調整層26は、磁気抵抗効果素子に必須の要素ではなく、これを省略することも可能である。なぜなら、シフト調整層26が無くても、記憶層23の磁気ヒステリシス曲線のシフト調整を行うことも可能だからである。
【0080】
ハードマスク層27は、例えば、金属層である。
【0081】
次に、PEPにより、ハードマスク層27上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにして、プラズマエッチングによりハードマスク層27をパターニングする。このプラズマエッチングは、例えば、CF、CHF、C、Cなどを含むフロロカーボンガスを用いて行われる。この後、レジストパターンを除去する。
【0082】
次に、図12に示すように、ハードマスク層27をマスクにして、プラズマエッチングにより、シフト調整層26及び参照層25をパターニングする。ここで、ハードマスク層27をマスクとするのは、フォトレジストをマスクにすると、それをアッシングにより除去するときに参照層25が酸化される恐れがあるからである。
【0083】
このプラズマエッチングは、例えば、図1のエッチング装置を用いて行う。
【0084】
即ち、チャンバー12内の圧力を約1Paに維持した状態で、Clガスを流量約200SCCMによりチャンバー12内に導入する。また、約1000Wのパワーを上部電極13bに印加し、約13.56メガHzの高周波及び約400Wのバイアス電力を下部電極13aに印加する。さらに、約500Wのパワーを持つマイクロ波発生部15を用いて、約5.7ギガHzのマイクロ波を発生し、これを、導波管16及び下部電極13aを介して、ウェハー(磁気抵抗効果素子)19に印加する。
【0085】
これにより、ウェハー19が瞬時に加熱され、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定される。また、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定された状態で、プラズマ化されたClガスを用いて、約10秒をかけて、シフト調整層26及び参照層25をエッチングする。
【0086】
次に、図13に示すように、参照層25、シフト調整層26及びハードマスク層27を覆う側壁スペーサ層28を形成する。側壁スペーサ層28は、例えば、BN、SiC、BC、Al、AlNなどを備える。
【0087】
側壁スペーサ層28は、熱ALD法、プラズマALD法、プラズマCVD法、IBD法、スパッタ法などにより形成される。この後、側壁スペーサ層28を、例えば、プラズマエッチングによりエッチングすると、図14に示すように、側壁スペーサ層28は、参照層25、シフト調整層26及びハードマスク層27の側壁上のみに残存する。
【0088】
次に、図15に示すように、ハードマスク層27及び側壁スペーサ層28をマスクにして、プラズマエッチングにより、トンネルバリア層24、記憶層23及び下部層22をパターニングする。
【0089】
このプラズマエッチングも、例えば、図1のエッチング装置を用いて行う。
【0090】
即ち、チャンバー12内の圧力を約1Paに維持した状態で、Clガスを流量約200SCCMによりチャンバー12内に導入する。また、約1000Wのパワーを上部電極13bに印加し、約13.56メガHzの高周波及び約400Wのバイアス電力を下部電極13aに印加する。さらに、約500Wのパワーを持つマイクロ波発生部15を用いて、約5.7ギガHzのマイクロ波を発生し、これを、導波管16及び下部電極13aを介して、ウェハー(磁気抵抗効果素子)19に印加する。
【0091】
これにより、ウェハー19が瞬時に加熱され、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定される。また、ウェハー19の温度が最適範囲内に設定された状態で、プラズマ化されたClガスを用いて、約10秒をかけて、トンネルバリア層24、記憶層23及び下部層22をエッチングする。
【0092】
以上の工程により、磁気抵抗効果素子が形成される。この製造方法により形成された磁気抵抗効果素子のテーパー角は、ほぼ垂直(90°)であった。また、磁気抵抗効果素子の飽和磁化量をVSM法により測定したところ、飽和磁化量の減少がほとんど無かった。
【0093】
このように、上述の製造方法によれば、磁気抵抗効果素子(難エッチング材料)を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングすることができる。
【0094】
尚、磁気抵抗効果素子のパターニングに用いるエッチングガスは、Clガス(ハロゲンガス)に代えて、HClガス、BClガスなどのハロゲン化合物ガスを用いることも可能である。また、これらハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスに、Ar、He、Xeなどの不活性ガスや、O、Nなどの酸化性又は窒化性を示すガスを混入させてもよい。
【0095】
また、チャンバー内の圧力は、約1Paに限られない。チャンバー内の圧力は、0.5Pa〜3Paの範囲内の値であるのが望ましく、さらに望ましくは、1Pa〜2Paの範囲内の値である。
【0096】
さらに、バイアス電力は、300〜600Wの範囲内の値が望ましく、さらに望ましくは、300〜400Wの範囲内の値である。上部電極13bに印加するパワーは、200〜4000Wの範囲内の値が望ましく、さらに望ましくは、500〜1500Wの範囲内の値である。
【0097】
(5) 適用例
上述の半導体装置の製造方法により形成した磁気抵抗効果素子は、MRAMやスピンFET(Field effect transistor)などに適用可能である。以下、MRAMについて説明する。
【0098】
図16は、MRAMのメモリセルの等価回路を示している。
【0099】
メモリセルアレイMA内のメモリセルMCは、磁気抵抗効果素子MTJとスイッチ素子(例えば、FET)Tの直列接続体を備える。直列接続体の一端(磁気抵抗効果素子MTJの一端)は、ビット線BLAに接続され、直列接続体の他端(スイッチ素子Tの一端)は、ビット線BLBに接続される。スイッチ素子Tの制御端子、例えば、FETのゲート電極は、ワード線WLに接続される。
【0100】
ワード線WLの電位は、第1の制御回路31により制御される。また、ビット線BLA,BLBの電位は、第2の制御回路32により制御される。
【0101】
図17は、MRAMのメモリセルを示している。
【0102】
半導体基板41は、例えば、シリコン基板であり、その導電型は、P型でも、N型でもどちらでもよい。半導体基板41内には、素子分離絶縁層42として、例えば、STI構造の酸化シリコン層が配置される。
【0103】
半導体基板41の表面領域、具体的には、素子分離絶縁層42により取り囲まれた素子領域(アクティブエリア)内には、スイッチ素子Tが配置される。本例では、スイッチ素子Tは、FETであり、半導体基板41内の2つのソース/ドレイン拡散層43と、それらの間のチャネル領域上に配置されるゲート電極44とを有する。ゲート電極44は、ワード線WLとして機能する。
【0104】
スイッチ素子Tは、絶縁層(例えば、酸化シリコン)45により覆われる。コンタクトホールは、絶縁層45内に設けられ、コンタクトビア(CB)46は、そのコンタクトホール内に配置される。コンタクトビア46は、例えば、W(タングステン)、Cu(銅)などの金属材料から形成される。
【0105】
コンタクトビア46の下面は、スイッチ素子Tに接続される。本例では、コンタクトビア46は、ソース/ドレイン拡散層43に直接接触している。
【0106】
コンタクトビア46上には、下部電極21が配置される。下部電極21は、例えば、Ta(10nm)/Ru(5nm)/Ta(5nm)の積層構造を有する。
【0107】
下部電極21上、即ち、コンタクトビア46の直上には、磁気抵抗効果素子MTJが配置される。磁気抵抗効果素子MTJ上には、上部電極(例えば、TiN)47が配置される。上部電極47は、ビア(例えば、Cu)48を介して、ビット線(例えば、Cu)BLAに接続される。
【0108】
(6) むすび
実施形態によれば、難エッチング材料を、高速、高精度及び低ダメージでエッチングすることができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
11: ステージ、 12: チャンバー、 13a: 下部電極、 13b: 上部電極、 14: ガス供給部、 15: マイクロ波発生部、 16: 導波管、 17: 高周波電源部、 18: 制御部、 19: 被処理基板、 20: 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に披処理基板が搭載されるステージと、前記ステージの上面側を覆うチャンバーと、前記ステージの下面側に付加され、開口部を有する下部電極と、前記チャンバー内にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記下部電極に高周波を印加することにより、前記チャンバー内の前記エッチングガスをプラズマ化する高周波電源部と、前記下部電極の前記開口部を介して前記被処理基板にマイクロ波を印加することにより、前記披処理基板の温度を最適範囲内に設定するマイクロ波発生部と、前記ガス供給部、前記高周波電源部及び前記マイクロ波発生部を制御する制御部とを具備するエッチング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ガス供給部により前記エッチングガスを前記チャンバー内に供給する動作に並行して、前記マイクロ波発生部により前記被処理基板の温度を前記最適範囲内に設定する動作を行う請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記高周波電源部により前記チャンバー内の前記エッチングガスをプラズマ化する動作に並行して、前記マイクロ波発生部により前記被処理基板の温度を前記最適範囲内に設定する動作を行う請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被処理基板が強磁性体を含んでいるとき、前記最適範囲を200℃から350℃までに設定する請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被処理基板が強誘電体を含んでいるとき、前記最適範囲を250℃から400℃までに設定する請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項6】
半導体基板上に、貴金属、強誘電体及び強磁性体のうちの少なくとも1つを含む積層構造を形成する工程と、前記半導体基板の温度をマイクロ波により最適範囲内に維持した状態で前記積層構造をプラズマエッチングによりエッチングする工程とを具備する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記積層構造を形成する工程は、第1の強磁性層上にトンネルバリア層を形成する工程と、前記トンネルバリア層上に第2の強磁性層を形成する工程とを備え、
前記積層構造をエッチングする工程は、金属層としてのハードマスク層をマスクにして行われる
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記積層構造が前記強磁性体を含んでいるとき、前記積層構造をエッチングする工程は、前記半導体基板の温度を前記マイクロ波により200℃から350℃までの範囲内に維持した状態で行われる請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記積層構造が前記強誘電体を含んでいるとき、前記積層構造をエッチングする工程は、前記半導体基板の温度を前記マイクロ波により250℃から400℃までの範囲内に維持した状態で行われる請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−21129(P2013−21129A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153218(P2011−153218)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】