エンコーダ装置、光学装置、及び露光装置
【課題】光学系の高さを低くするとともに、回折格子からの0次光の影響を低減して計測精度を向上する。
【解決手段】X軸のエンコーダ10Xは、第1部材6に設けられ、X方向を周期方向とする回折格子12Xと、可干渉性のある計測光MX1及び参照光RX1を供給するレーザ光源16と、第2部材7に設けられ、計測光MX1を回折格子12Xに向けてリトロー角から所定角度ずれた角度で反射する傾斜ミラー32XAと、回折格子12Xからの回折光と参照光RX1との干渉光を検出する光電センサ40XAと、光電センサ40XAの検出信号を用いて第1部材6に対する第2部材7のX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を備える。
【解決手段】X軸のエンコーダ10Xは、第1部材6に設けられ、X方向を周期方向とする回折格子12Xと、可干渉性のある計測光MX1及び参照光RX1を供給するレーザ光源16と、第2部材7に設けられ、計測光MX1を回折格子12Xに向けてリトロー角から所定角度ずれた角度で反射する傾斜ミラー32XAと、回折格子12Xからの回折光と参照光RX1との干渉光を検出する光電センサ40XAと、光電センサ40XAの検出信号を用いて第1部材6に対する第2部材7のX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する部材間の相対移動量を計測するエンコーダ装置、このエンコーダ装置を備えた光学装置及び露光装置、並びにこの露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を生産するためのフォトリソグラフィ工程で用いられる、いわゆるステッパー又はスキャニングステッパーなどの露光装置においては、従来より、露光対象の基板を移動するステージの位置計測はレーザ干渉計によって行われていた。ところが、レーザ干渉計では、計測用ビームの光路が長く、かつ変化するため、その光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0003】
そこで、例えばステージに固定された回折格子にレーザ光よりなる計測光を照射し、回折格子から発生する回折光と他の回折光又は参照光との干渉光を光電変換して得られる検出信号から、その回折格子が設けられた部材(ステージ等)の相対移動量を計測する、いわゆるエンコーダ装置(干渉型エンコーダ)も使用されつつある(例えば特許文献1参照)。このエンコーダ装置は、レーザ干渉計に比べて計測値の短期的安定性に優れるとともに、レーザ干渉計に近い分解能が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/029757号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエンコーダ装置は、ほぼ計測光の入射面に沿って、回折光と他の回折光又は参照光とを干渉させるための複数の光学部材を配置していたため、光学系の高さが高くなり、その光学系を例えば狭い空間に組み込むことが困難であった。
さらに、従来のエンコーダ装置では、計測情報を含むある回折光と、回折格子から発生する0次光(正反射光)の方向とが平行になる恐れがあった。このように回折光と0次光とが平行である状態で、検出対象の干渉光にその0次光が混入すると、その干渉光に本来の計測情報を含む周期とは異なる周期の干渉光が含まれるため、計測精度が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明の態様は、このような課題に鑑み、回折格子を用いて計測を行う際に、光学系の高さを低くするとともに、回折格子からの0次光の影響を低減して計測精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、第1部材に対して少なくとも第1方向に相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置が提供される。このエンコーダ装置は、その第1部材及びその第2部材の一方に設けられ、その第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、互いに可干渉性のある第1計測光及び第2計測光を供給する光源部と、その第1部材及びその第2部材の他方に設けられ、その光源部から供給された第1計測光をその格子パターン面に向けて反射する第1反射部材と、その回折格子からの回折光と他の回折光又はその第2計測光との干渉光を検出する第1光電検出器と、その第1光電検出器の検出信号を用いてその第2部材の相対移動量を求める計測部と、を備え、その反射部材からその格子パターン面に向かうその第1計測光のその第1方向の入射角を、その回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定するものである。
【0008】
また、第2の態様によれば、本発明のエンコーダ装置と、対象物用の光学系と、を備える光学装置が提供される。
また、第3の態様によれば、パターンを被露光体に露光する露光装置が提供される。この露光装置は、フレームと、その被露光体を支持するとともにそのフレームに対して少なくとも第1方向に相対移動可能なステージと、その第1方向へのそのステージの相対移動量を計測するための本発明のエンコーダ装置と、を備えるものである。
【0009】
また、第4の様態によれば、リソグラフィ工程を含み、そのリソグラフィ工程では、上記露光装置を用いて物体を露光するデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測光を格子パターン面に向けて反射する反射部材を設けているため、エンコーダ装置の光学系の高さ(格子パターン面の法線方向の高さ)を低くできる。
さらに、その反射部材からその格子パターン面に向かう計測光の第1方向の入射角を、回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子からの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は実施形態の一例に係るエンコーダを示す斜視図、(B)は図1(A)中の傾斜ミラーの反射面等を示す図である。
【図2】図1のエンコーダの2回目の回折光の光路を示す斜視図である。
【図3】(A)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子に垂直入射する状態を示す図、(B)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子にX方向に傾斜して入射する状態を示す図、(C)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子にX方向及びY方向に傾斜して入射する状態を示す図である。
【図4】(A)は傾斜ミラーからの反射光が楔形プリズムを介して回折格子に入射する状態を示す斜視図、(B)は図4(A)のB方向から視た図、(C)は2次元の回折格子を使用する例を示す斜視図である。
【図5】第1実施例に係る2次元のエンコーダを示す平面図である。
【図6】第2実施例に係るエンコーダを示す平面図である。
【図7】(A)は図6のAA線に沿う断面図、(B)は図6のBB線に沿う図、(C)は図6のBB線に沿って一部を省略して示す図である。
【図8】図6の参照光の光路を示す平面図である。
【図9】第3実施例に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図10】図9のウエハステージに設けられた回折格子及び複数の検出ヘッドの配置の一例を示す平面図である。
【図11】図9の露光装置の制御系を示すブロック図である。
【図12】電子デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1〜図4を参照して説明する。図1(A)は本実施形態に係るX軸のエンコーダ10Xの要部を示す斜視図である。図1(A)において、一例として、第1部材6に対して第2部材7は2次元平面内で相対移動可能に配置され、第2部材7の互いに直交する相対移動可能な2つの方向に平行にX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸によって規定される平面(XY面)に直交する軸をZ軸として説明する。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、及びθz方向の角度とも呼ぶ。
【0013】
図1(A)において、エンコーダ10Xは、第1部材6の上面に固定された、XY面に平行な平板状のX軸の回折格子12Xと、第2部材7の上面に固定されて回折格子12Xに計測光を照射するX軸の検出ヘッド14Xと、検出ヘッド14Xに計測用のレーザ光を供給するレーザ光源16と、検出ヘッド14Xから出力される検出信号を処理して第1部材6に対する第2部材7の少なくともX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を有する。さらに、第1部材6に対する第2部材7のY方向の相対移動量を求めるY軸のエンコーダも備えられている。図1(A)では、Y軸のエンコーダのうちの検出ヘッド14Yのみが図示されている。
【0014】
回折格子12XのXY面に平行な格子パターン面12Xbには、X方向に所定の周期(ピッチ)を持ち、位相型でかつ反射型の格子パターン12Xaが形成されている。格子パターン12Xaの周期は、一例として100nm〜4μm程度(例えば2μm周期)である。格子パターン12Xaは、例えばホログラム(例えば感光性樹脂に干渉縞を焼き付けたもの)として、又はガラス板等に機械的に溝等を形成して反射膜を被着することで作製可能である。さらに、格子パターン面12Xbは、保護用の平板ガラスで覆われていてもよい。なお、回折格子12Xの代わりに、X方向、Y方向に周期的に形成された格子パターンを持つ2次元の回折格子を使用してもよい。
【0015】
レーザ光源16は、例えばHe−Neレーザ又は半導体レーザ等よりなり、一例として偏光方向が互いに直交するとともに互いに周波数が異なる第1及び第2の直線偏光のレーザ光XR,YRよりなる2周波ヘテロダイン光を射出する。そのレーザ光XR,YRは互いに可干渉であり、それらの平均波長をλとする。レーザ光源16は、レーザ光XR,YRから分岐した2つの光束の干渉光を光電変換して得られる基準周波数の信号(基準信号)を計測演算部42Xに供給する。なお、ホモダイン干渉方式も使用可能である。
【0016】
レーザ光源16から射出されたヘテロダイン光は、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSという。)18により互いに同じ光量のP偏光の第1のレーザ光XRと、S偏光の第2のレーザ光YRとに分割される。第1のレーザ光XRは、偏光方向を調整するための1/2波長板20Aを介してPBS22Xに入射し、−X方向に向かうS偏光のX軸の計測光MXと、+Y方向に向かうP偏光のY軸の参照光RYとに分割される。Y軸の参照光RYはミラー45A,45Bを介してY軸の検出ヘッド14Yに供給され、参照光RYは、検出ヘッド14Y内でY軸の計測光によってY軸の回折格子(不図示)から発生する回折光と干渉する。
【0017】
また、PBS18で分割された第2のレーザ光YRは、1/2波長板20Bを介してPBS22Yに入射し、P偏光のY軸の計測光MYとS偏光のX軸の参照光RXとに分割され、Y軸の計測光MYはY軸の検出ヘッド14Yに供給される。1/2波長板20B及びPBS22Yは検出ヘッド14Yの一部とみなすことも可能である。1/2波長板20A,20Bの回転角は、それぞれ計測光MX及びMYの光量がその入射するレーザ光XR,YRの光量の95%程度になるように調整される。PBS22Yで反射されたS偏光の参照光RXは、1/2波長板20CによってP偏光に変換された後、ミラー45C,45Dを介して光路が+Z方向にシフトした状態でハーフミラー45Eに入射し、互いに同じ光量の第1及び第2の参照光RX1,RX2に分割される。参照光RX1はP偏光としてPBS38XAに入射し、参照光RX2は、ミラー45Fを介してP偏光としてPBS38XBに入射する。参照光RX1,RX2は、PBS38XA,38XBで後述のX軸の第1及び第2の回折光と合流して干渉光(ヘテロダインビーム)となる。これらの干渉光は、波長板(不図示)を介してフォトダイオード等からなる第1及び第2の光電センサ40XA,40XBに入射する。なお、実際には、参照光RX1,RX2の光路長は、対応する計測光(回折光)の光路長とほぼ等しくなるように光路が設定されている。
【0018】
このように本実施形態では、X軸のレーザ光XRから分割された参照光RYがY軸の検出ヘッド14Yに供給され、Y軸のレーザ光YRから分割された参照光RX(RX1,RX2)がX軸の検出ヘッド14Xで生成される回折光と干渉する。一例として、回折格子12Xでの回折効率はほぼ10%であり、後述のように2回の回折を行わせることによって、最終的に使用される回折光の効率はほぼ1%になる。従って、このように計測光MX,MYの光量をほぼ95%にしておくことによって、最終的に干渉する回折光と参照光との光量比はほぼ1:1になり、参照光を減衰する必要がなくなるため、レーザ光XR,YRの使用効率が高くなる。ミラー45A〜45F,ハーフミラー45E、及び1/2波長板20Cから参照光の光路長を計測光の光路長に合わせるための光学系44が構成されている。
【0019】
また、後述のように本実施形態では、X方向(又はY方向)の相対移動量XとZ方向の相対移動量Zとの差分(X−Z)(又はY−Z)とを計測するために、X方向の回折格子12X(又はY方向の回折格子12Y)でも+1次と-1次の回折光を利用する。本実施形態では、相対移動量Xを計測するための+1次と−1次との回折光の波長(λ1とする)を同じにする。同様に相対移動量Yを計測する際に、+1次と−1次との回折光の波長(λ2とする)を同じにする。このように、移動量Xと移動量Yとを計測する計測光(回折格子12X,12Yで回折される光)を異なる波長にしている。このことで、前述のように移動量Xを計測するための計測光(波長λ1)と参照光(波長λ2)との光量比が95:5になる場合に、移動量Yを計測するための計測光(波長λ2)と参照光(波長λ1)との光量比も95:5になる。この場合の波長λ1,λ2は、レーザ光源16から射出されるヘテロダインビームの二つの波長である。
【0020】
本実施形態の検出ヘッド14Xは2階建て構造であり、PBS18,22X,22Y等は第2部材7上の1階部分にあるのに対して、PBS38XA,38XB等は不図示のフレームを介して2階部分に配置されている。
また、X軸の検出ヘッド14Xは、上記の1/2波長板20A、PBS22X、及び参照光用の光学系44とともに、1階部分にX方向に離れたハーフミラー面25A及び反射面25Bを有し、2階部分に反射面25Cを有する光路変更部材24Xと、光路変更部材24Xの−X方向の端部近傍に配置されてY軸にほぼ45°で傾斜する反射面を持つミラー36Xと、を有する。さらに、検出ヘッド14Xは、光路変更部材24Xの+Y方向側に対向するように、X方向に隣接して対称に配置された第1及び第2のPBS28A,28Bと、PBS28A,28Bの+X方向側及び−X方向側の側面に対称に固定された第1及び第2のコーナキューブ29A,29Bと、PBS28Aの+Y方向側に不図示のフレームによって支持された+1次回折光用の第1及び第2の傾斜ミラー32XA,32XBと、PBS28Bの+Y方向側に不図示のフレームによって支持された−1次回折光用の第1及び第2の傾斜ミラー34XA,34XBと、を有する。傾斜ミラー32XA,34XAは1階部分に反射面を有し、傾斜ミラー32XB,34XBは2階部分に反射面を有する。また、PBS28A及び28Bの偏光ビームスプリッタ面は、それぞれZY面に平行な面をθz方向に45°及び−45°回転した面である。また、PBS28A,28Bの−Y方向の側面に1/2波長板27が固定され、PBS28A,28Bの+Y方向の側面に1/4波長板30が固定されている。1/2波長板27、PBS28A,28B、コーナキューブ29A,29B、1/4波長板30、傾斜ミラー32XA,32XB、及び傾斜ミラー34XA,34XBを含んで、±1次の各2回の回折を行わせるためのX軸の回折光発生部26Xが構成されている。
【0021】
検出ヘッド14Xにおいて、PBS22Xで−X方向に分岐されたS偏光のX軸の計測光MXは、光路変更部材24Xに入射し、ハーフミラー面25Aでほぼ+Y方向に向かう第1の計測光MX1と−X方向に向かう第2の計測光MX2とに分割され、第2の計測光MX2は反射面25Bでほぼ+Y方向に反射される。計測光MX1及びMX2はそれぞれ1/2波長板27を介してP偏光(ここでは偏光方向がX方向)に変換されてPBS28A及び28Bに入射する。入射した計測光MX1,MX2は、それぞれPBS28A,28Bを透過し、1/4波長板30を介して傾斜ミラー32XA,34XAの平面の反射面に入射する。
【0022】
図1(B)は図1(A)中の傾斜ミラー32XA,34XAの反射面等を示す図である。図1(B)において、傾斜ミラー32XAの反射面に入射した計測光MX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xの格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角φ1が、次のように格子パターン12Xaに対する+1次回折光のリトロー角(Littrow角)φLIよりも所定の角度βだけ大きくなる状態で入射する。
【0023】
φ1=φLI+β …(1)
格子パターン面12Xbに入射する計測光MX1のθx方向(Y方向)の入射角は0でもよいが、計測光MX1のY方向の入射角は例えば0〜β程度(例えばβ/2程度)に傾斜していることが好ましい。角度βは、一例として0.5°から数deg程度であり、例えば0.5°〜1.5°(目標値で1°程度)に設定される。
【0024】
+1次回折光のリトロー角φLIは、点線の光ビームLAで示すように、入射する光ビームLAとこの+1次回折光LA1とが平行になるときの光ビームLAの入射角である。このように光ビームLAがリトロー角φLIで入射すると、格子パターン面の高さが変化しても+1次回折光LA1の横シフトが発生しないため、干渉光の強度が変化しないという利点がある一方で、後述のように0次光によるノイズ光の問題が生じる。格子パターン12XaのX方向の周期をp、計測光MX1,MX2の平均的な波長をλとすると、リトロー角φLIは次の関係を満たす。
【0025】
2・sin φLI=λ …(2)
リトロー角φLIで入射する光ビームLAの格子パターン12Xaによる0次光(正反射光)LA0は+1次回折光LA1と対称になる。この場合、光ビームLAと対称に格子パターン12Xaに入射する光ビームの−1次回折光と、0次光LA0とはほぼ平行になるため、その−1次回折光と0次光LA0とが合流すると、周期の大きい干渉縞(ノイズ光)が形成され、計測誤差の要因になる恐れがある。
【0026】
また、傾斜ミラー32XAから入射角φ1で格子パターン12Xaに入射した計測光MX1による回折格子12Xからの+1次回折光DX1の回折角φ2は、次のようにほぼリトロー角φLIよりも角度βだけ小さくなる。
φ2≒φLI−β …(3)
また、傾斜ミラー34XAの反射面に入射した計測光MX2は、その反射面で反射されて格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角が、計測光MX1と対称になるように角度(−φ1)で入射する。計測光MX2のX方向の入射角は、格子パターン12Xaに対する−1次回折光のリトロー角(−φLI)よりも絶対値が角度βだけ大きくなる。計測光MX2のθx方向(Y方向)の入射角は、例えば計測光MX1のY方向の入射角と同じ程度である。傾斜ミラー34XAから入射角(−φ1)で格子パターン12Xaに入射した計測光MX2による回折格子12Xからの−1次回折光EX1の回折角は、回折光DX1の回折角φ2と符号が逆である。また、計測光MX1,MX2による格子パターン12Xaからの0次光(正反射光)M10,M20の反射角はそれぞれ−φ1及びφ1である。
【0027】
このため、本実施形態では、計測光MX1の0次光M10と−1次回折光EX1とのθy方向の角度(交差角)はほぼ2・βとなる。従って、仮に0次光M10と−1次回折光EX1とが合流しても、周期の小さい干渉縞が形成されるのみで、計測誤差は極めて小さくなる。
格子パターン12Xaからの回折光DX1及びEX1は、それぞれ傾斜ミラー32XA,34XAの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図1(A)の1/4波長板30を介してS偏光になってPBS28A,28Bに入射し、偏光ビームスプリッタ面で反射される。
【0028】
図2に示すように、PBS28A,28Bの偏光ビームスプリッタ面で反射された回折光DX1及びEX1は、それぞれコーナキューブ29A,29Bで反射されてから、その偏光ビームスプリッタ面の2階部分で再度反射された後、1/4波長板30を介して第2の傾斜ミラー32XB,34XBの平面の反射面に入射する。
図1(B)において、2階部分の傾斜ミラー32XBの反射面に入射した回折光DX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xに、計測光MX1とほぼ平行に入射する。従って、回折光DX1のX方向の入射角φ1も、リトロー角φLIよりもほぼ角度βだけ大きくなる。また、回折光DX1による格子パターン12Xaからの+1次回折光DX2(計測光MX1に対する+2次回折光)の回折角φ2は、回折光DX1の回折角とほぼ同じである。
【0029】
また、2階部分の傾斜ミラー34XBの反射面に入射した回折光EX1は、その反射面で反射されて回折格子12Xに、計測光MX2とほぼ平行に入射する。従って、回折光EX1のX方向の入射角はほぼ−φ1である。傾斜ミラー34XBから入射した回折光EX1による格子パターン12Xaからの−1次回折光EX2(計測光MX2に対する−2次回折光)の回折角は、ほぼ−φ2である。また、回折光DX1,EX1による格子パターン12Xaからの0次光(正反射光)D10,E10の反射角はそれぞれほぼ−φ1及びφ1である。なお、図1(B)において、実際には、傾斜ミラー32XA,34XBからの計測光(回折光)が入射する回折格子12X上のX方向の位置はほぼ等しく、傾斜ミラー32XB,34XAからの回折光(計測光)が入射する回折格子12X上のX方向の位置はほぼ等しい。
【0030】
このため、回折光DX1(EX1)の0次光D10(E10)と回折光EX2(回折光DX2)とのθy方向の角度(交差角)はほぼ2・βとなる。従って、仮に0次光D10等と回折光EX2等とが合流しても、周期の小さい干渉縞が形成されるのみで、計測誤差は極めて小さくなる。ここで、計測光MX1,MX2(平均波長λ)のビーム径をdとして、0次光D10等と回折光EX2等とが合流して形成される干渉縞の周期がそのビーム径dの1/50以下程度であれば(干渉縞が50本以上形成される程度であれば)、得られる干渉縞を光電変換して得られる検出信号の0次光に起因する変動成分(ノイズ成分)はほぼ2%以下になり、計測誤差は極めて小さくなる。この際の条件は以下のようになる。ただし、角度βをradで表している。
【0031】
d・2・β≧50λ …(4)
ここで、一例としてビーム径dを1mm、波長λを0.633μmとすると、式(4)を満たす角度βは以下のようになる。
β≧0.0158(rad)=0.91° …(5)
従って、計測光MX1,MX2のビーム径が1mm程度であれば、計測光MX1,MX2のX方向の入射角のリトロー角に対するずれの角度βは、0.91°以上、例えば1°程度であることが好ましい。なお、計測光MX1,MX2の入射角のリトロー角に対するずれβが大きくなると、格子パターン面12XaのZ方向の位置の変化に対して、回折光DX1,EX1の横シフト量が大きくなり、相対位置情報を含む干渉光の強度が小さくなるため、式(5)を満たす範囲内で角度βはあまり大きくしない方がよい。
【0032】
格子パターン12Xaからの回折光DX2及びEX2は、それぞれ傾斜ミラー32XB,34XBの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図2の1/4波長板30を介してP偏光になってPBS28A,28Bに入射し、偏光ビームスプリッタ面を透過する。
図2に示すように、回折光発生部26XのPBS28A,28Bを透過した回折光DX2及びEX2は、それぞれ1/2波長板27を介してS偏光に変換された後、光路変更部材24Xの反射面25C及びミラー36Xでほぼ+X方向に反射される。そして、反射された回折光DX2及びEX2は、それぞれPBS38XA,38XBに入射して参照光RX1,RX2と同軸に合成された後、偏光板(不図示)を介して干渉光(ヘテロダインビーム)として光電センサ40XA,40XBに入射する。
【0033】
図1(A)において、光電センサ40XA,40XBはそれぞれ入射する干渉光を光電変換して得られる検出信号SXA,SXB(ヘテロダイン信号)を計測演算部42Xに供給する。一例として、計測演算部42Xは、検出信号SXAとレーザ光源16から供給される基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との和(Z+X)を求める。さらに、計測演算部42Xは、検出信号SXBとその基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との差(Z−X)を求める。そして、計測演算部42Xは、その和と差との差分を平均化することで、第1部材6に対する第2部材7のX方向への相対移動量(X)を求めることができ、その和と差とを平均化することで、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量(Z)を求めることができる。X方向、Z方向の相対移動量の検出分解能は例えば0.5〜0.1nm程度である。
【0034】
本実施形態では、最終的に2回目の+1次回折光DX2と参照光RX1との干渉光、及び2回目の+1次回折光EX2と参照光RX2との干渉光を検出しているため、相対移動量の検出分解能(検出精度)を1/2に向上(微細化)できる。また、2回目の回折光を用い、かつ±1次回折光を用いることによって、第1部材6と第2部材7とのθz方向の相対回転角による計測誤差を低減できる。
【0035】
次に、例えば傾斜ミラー32XAから回折格子12Xの格子パターン面12Xbに入射する計測光MX1の入射角をφ1(=φLI+β)に設定する複数の方法につき、図3(A)〜(C)、及び図4(A)、(B)を参照して説明する。これらの方法は他の傾斜ミラー32XB,34XA,34XBの角度調整にも適用可能である。
まず、傾斜角の設定準備として、図3(A)中の斜視図で示すように、傾斜ミラー32XAの反射面をXZ面に平行な状態からX軸に平行な軸の回りに45°傾斜させる。このとき、Y軸に平行に傾斜ミラー32XAの反射面に入射する光ビームLAは、その反射面で−Z方向に反射されて、図3(A)内のA方向から視た図(矢視A)で示すように、回折格子12Xの格子パターン面12Xbに垂直に入射する。この状態で、光ビームLAを計測光MX1として、図3(B)中の斜視図で示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸(入射する計測光MX1)の回りに一体的にリトロー角φLIだけ回転する。このとき、図3(B)中の矢視Bで示すように、傾斜ミラー32XAで反射された計測光MX1は、回折格子12Xにθy方向(X方向)に入射角φLIで入射する。さらに、第1の方法として、その計測光MX1及び傾斜ミラー32XAの一体としての回転角をφ1(=φLI+β)に設定することで、計測光MX1の回折格子12Xに対する入射角をφ1に設定できる。この状態で傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定することで、計測光MX1のX方向の入射角はφ1になる。
【0036】
次に、第2の方法として、図3(B)に示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸の回りに一体的にリトロー角φLIだけ回転した状態で、傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定してもよい。この場合、図3(C)の斜視図で示すように、入射する計測光MX1をY軸に平行な状態からθz方向に角度αだけ傾斜させる。点線の光路MX0は、計測光MX1を角度αだけ傾斜させる前の光路である。このとき、傾斜ミラー32XAで反射される計測光MX1の回折格子12Xに対するX方向の入射角は、図3(C)中の矢視CXで示すように、角度(φLI+β)となる。また、計測光MX1のY方向の入射角は、図3(C)中の矢視CYで示すように、角度γとなる。角度α、β、γの関係は次のようになる。
【0037】
β=α cos φLI …(6A)、 γ=α sin φLI …(6B)
そこで、式(6A)の角度βが例えば1°程度になるように、角度αを定めることによって、回折格子12Xに対する計測光MX1のX方向の入射角をリトロー角から所定の角度ずらすことができる。このときには、計測光MX1のY方向の入射角は式(6B)で定まる値に設定される。その角度αは、例えば図1(A)の光路変更部材24Xのハーフミラー面25A及び反射面25Bの角度で調整可能である。
【0038】
次に、第3の方法では、図4(A)に示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸の回りに一体的に角度(φLI+3・β)だけ回転した状態で、傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定し、かつ傾斜ミラー32XAと回折格子12Xとの間にθz方向に所定の開き角δを持つ楔形プリズム62を配置する。このとき、図4(A)中のB方向から視た図である図4(B)に示すように、楔形プリズム62による入射光の振れ角が2・βになるように開き角δが設定されている。この結果、傾斜ミラー32XAで反射されて、格子パターン面12Xbの法線方向に対して角度(φLI+3・β)で楔形プリズム62に入射した計測光MX1は、楔形プリズム62により方向がθy方向に2・β変化した後、格子パターン面12XbにX方向の入射角(φLI+β)で入射する。従って、計測光MX1の回折格子12Xに対する入射角はリトロー角からβだけずれた角度に設定される。
【0039】
さらに、格子パターン面12Xbからの+1次回折光DX1の回折角はほぼ(φLI−β)であり、回折光DX1は楔形プリズム62を通過すると、θy方向の角度が2・β変化して、格子パターン面12Xbの法線方向に対して角度(φLI+β)で傾斜ミラー32XAの反射面に入射する。従って、この回折光DX1をその反射面から図1のコーナキューブ29A等を介してその反射面(又は他の傾斜ミラー32XB)に戻すことによって、その回折光DX1は、今度は楔形プリズム62が無い状態で格子パターン面12Xbに対してX方向に入射角(φLI+β)で入射する。従って、楔形プリズム62を用いる方法は、特に回折格子12Xで計測光MX1による1回目の回折光DX1を発生させた後、その回折格子12Xから回折光DX1による2回目の回折光DX2を発生させるときに有効である。すなわち、2回目の回折光DX2を発生させるときには楔形プリズム62を使用する必要がない。
【0040】
本実施形態の効果等は以下の通りである。本実施形態のX軸のエンコーダ10Xは、第1部材6と第2部材7とのX方向の相対移動量を計測するエンコーダである。そして、エンコーダ10Xは、第1部材6に設けられ、X方向(第1方向)を周期方向とする格子パターン12Xaが形成された回折格子12Xと、互いに可干渉性のある計測光MX1及び参照光RX1を供給するレーザ光源16等と、を有する。また、エンコーダ10Xは、第2部材7に設けられ、計測光MX1を回折格子12Xに向けてX方向にリトロー角から所定の角度βずれた角度φ1で反射する傾斜ミラー32XAと、回折格子12Xからの回折光DX1を回折格子12Xに向けてX方向に角度φで反射する傾斜ミラー32XBと、回折格子12Xからの回折光DX2と参照光RX1との干渉光を検出する光電センサ40XAと、光電センサ40XAの検出信号SXAを用いて第1部材6に対する第2部材7のX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を備える。
【0041】
なお、検出信号SXAからは、正確にはX方向及びZ方向の相対移動量の和が求められるが、仮に第1部材6と第2部材7とがZ方向にはほとんど静止している場合には、その検出信号SXAからX方向の相対移動量を求めることができる。
本実施形態によれば、計測光MX1及び回折光DX1を格子パターン面12Xaに向けて反射する傾斜ミラー32XA,32XBを設けているため、エンコーダ10Xの光学系のZ方向の高さ(格子パターン面12Xaの法線方向の高さ)を低くできる。従って、エンコーダ10Xの検出ヘッド14Xを第2部材7上にコンパクトに容易に設置できる。
【0042】
さらに、傾斜ミラー32XA,32XBから格子パターン面12Xaに向かう計測光MX1及び回折光DX1のX方向の入射角を、ほぼ回折格子12Xの+1次回折光のリトロー角φLIの近傍に設定しているため、格子パターン面12XaのZ方向の位置(高さ)の変化に対して、回折光DX1の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいため、常に安定に相対移動量が計測できる。また、格子パターン面12Xaに向かう計測光MX1及び回折光DX1のX方向の入射角を、そのリトロー角φLIに対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、回折格子12Xからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。なお、リトロー角としては、±2次以上の回折光のリトロー角を使用してもよい。
また、従来のエンコーダ装置では、回折格子の回折効率が低いときに、計測光を回折格子で二回回折させると、参照光と計測光との強度差が大きいが、本実施形態では、参照光と計測光との強度さが極めて小さい。
また、従来のエンコーダ装置では、検出ヘッドと回折格子との距離の変化によって、計測光の光路長が変化する。この場合に、レーザ光源16の波長誤差によって計測誤差が生じるが、本実施形態では、そのような計測誤差は極めて小さい。
【0043】
また、本実施形態では、2つの傾斜ミラー32XA,32XBを用いて計測光MX1を回折格子12Xで実質的に2回回折させているため、検出分解能が向上できる。なお、1つの傾斜ミラー32XAのみを用いて、1回目の回折光DX1と参照光RX1との干渉光を検出するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、第2の計測光MX2によって傾斜ミラー34XA,34XBを介して回折格子12Xから発生する−1次回折光EX2と参照光RX2との干渉光を検出している。しかしながら、例えば傾斜ミラー32XBからの2回目の+1次回折光DX2(又は1回目の回折光DX1)と傾斜ミラー34XBからの2回目の−1次回折光EX2(又は1回目の回折光EX1)との干渉光を検出し、この検出信号から第1部材6と第2部材7とのX方向の相対移動量を求めてもよい。
【0044】
なお、図4(C)に示すように、2次元の回折格子12XYに2つの波長λ1及びλ2の第1及び第2の計測光MXY1及びMXY2を例えばほぼ垂直に入射させ、回折格子12XYからX方向及びY方向への±1次の回折光を発生させ、これらの回折光と参照光との干渉光を検出する場合にも本実施形態の方法が適用可能である。すなわち、第1の計測光MXY1から分離した参照光RXY2と第2の計測光MXY2との干渉光を検出し、第2の計測光MXY2から分離した参照光RXY1と第1の計測光MXY1との干渉光を検出してもよい。
【実施例】
【0045】
[第1実施例]
第1実施例につき図5を参照して説明する。図5において、図1(A)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図5は、第1実施例に係る2次元のエンコーダ装置8の概略構成を示す。エンコーダ装置8は、不図示の第1部材と不図示の第2部材との間の少なくとも直交する2つの軸(X軸及びY軸とする)の方向の相対移動量を求めるために、X軸のエンコーダ10XとY軸のエンコーダ10Yとを有する。エンコーダ10X及び10Yは、それぞれ不図示の第1部材に固定されたX方向を周期方向とする回折格子12X及びY方向を周期方向とする回折格子12Yと、不図示の第2部材に固定されたX軸の検出ヘッド14X及びY軸の検出ヘッド14Yと、を有する。エンコーダ10X及び10Yは、共通のレーザ光源16及び計測演算部42を有する。
【0046】
X軸の検出ヘッド14Xにおいて、レーザ光源16から射出されてPBS(偏光ビームスプリッタ)18で分岐されたP偏光のレーザ光は、1/2波長板20A及び方向調整用の1対の偏角プリズム56を介してPBS22Xに入射する。PBS22Xを透過したP偏光の参照光は、ハーフミラー58AでY軸の参照光RY及びローカル干渉信号生成用の光ビームMXLに分割される。光ビームMXLは、ミラー52B、偏角プリズム56、及び偏光方向調整用の1/2波長板54(ここでは省略可)を介してP偏光でPBS38Lに入射する。
【0047】
また、Y軸の検出ヘッド14Yにおいて、PBS18で分岐されてミラー52Aを介して供給されたS偏光のレーザ光は、1/2波長板20B及び偏角プリズム56を介してPBS22Yに入射する。PBS22Yを透過したP偏光(図1(A)の例とは偏光方向が逆である)の参照光は、ハーフミラー58BでX軸の参照光RX及びローカル干渉信号生成用の光ビームMYLに分割される。光ビームMYLは、1/2波長板54Aを介してS偏光でPBS38Lに入射する。なお、検出ヘッド14X,14Yは2階建て構造であり、ハーフミラー58B、PBS38L等は1階部分にあり、後述のPBS38YA等は2階部分にあり、光ビームMYLは、PBS38YAの底面を通過している。
【0048】
PBS38Lに入射した光ビームMXL及びMYLは同軸に合成された後、偏角プリズム56及び偏光板60を介してローカル干渉光として光電センサ40XAと同じ光電センサ40Lに入射する。光電センサ40Lは、そのローカル干渉光の検出信号を計測演算部42に出力する。その検出信号は、例えばレーザ光源16から計測演算部42に供給される基準信号の代わりに使用することも可能である。
【0049】
また、ハーフミラー58Aを通過したY軸の参照光RYは、2面ミラー部材52Cの第1の反射面で+X方向に反射された後、コーナキューブ46Aで反射されて2階部分に移動する。2階部分で−X方向に進む参照光RYは、Y軸の計測光MYの光路上にある光学部材とほぼ同じ光路長を設定するための複数枚のガラス板47Aを透過して、ダハプリズム48で+X方向に反射される。+X方向に反射された参照光RYは、ハーフミラー58Cで第1及び第2のP偏光のY軸の参照光RY1,RY2に分割される。参照光RY1は偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38YAに入射し、参照光RY2はミラー52Eで反射された後、偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38YBに入射する。
【0050】
一方、ハーフミラー58Bを通過したX軸の参照光RXは、1階部分にあるミラー52で−X方向に反射され、複数枚のガラス板47Aを透過した後、コーナキューブ46Bで反射されて2階部分に移動する。2階部分で+X方向に進む参照光RXは、光路長調整用の複数枚のガラス板47Bを透過して、ハーフミラー58Dで第1及び第2のP偏光のX軸の参照光RX1,RX2に分割される。参照光RX1は偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38XAに入射し、参照光RX2は2面ミラー部材52Cの第2の反射面で反射された後、偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38XBに入射する。2面ミラー部材52C、コーナキューブ46A,46B、ダハプリズム48、及びガラス板47A,47B等から、検出ヘッド14X及び14Yについて共通の参照光用の光学系44XYが構成されている。
【0051】
X軸の検出ヘッド14Xにおいて、PBS22Xで反射された計測光MXは、光路変更部材24Xを介して回折光発生部26Xに入射し、回折光発生部26Xによって回折格子12Xから2回目の+1次回折光DX2及び−1次回折光EX2が発生する。なお、図5の回折光発生部26Xにおいては、1/4波長板30の表面に、回折格子12Xにおける計測光の位相変化を補正するための位相補正板31が設けられている。回折光DX2は、光路変更部材24Xを経て+X方向にS偏光でPBS38XAに入射し、PBS38XAで−Y方向に同軸に合成された回折光DX2及び参照光RX1は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40XAで受光される。回折光EX2は、ミラー36Xを経て+X方向にS偏光でPBS38XBに入射し、PBS38XBで−Y方向に同軸に合成された回折光EX2及び参照光RX2は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40XBで受光される。この際に、複数対の偏角プリズム56の調整によって、その回折光DX2,EX2及び参照光RX1,RX2から形成される干渉縞がそれぞれ例えば全体で1本以内になるように調整される。
【0052】
また、Y軸の検出ヘッド14Yは、基本的にX軸の検出ヘッド14Xを90°回転した構成である。Y軸の検出ヘッド14Yにおいて、PBS22Yで反射されたS偏光の計測光MYは、ミラー37Y及び光路変更部材24Yを介して、Y方向に離れた2本の計測光MY1,MY2としてY軸の回折光発生部26Yに入射する。回折光発生部26Yは、X軸の回折光発生部26Xを90°回転した構成である。なお、回折光発生部26Yにおける回折格子12Yの上方の2対の傾斜ミラーが傾斜ミラー32YA,32YB及び34YA,34YBである。回折光発生部26Yによって回折格子12Yから2回目の+1次回折光DY2及び−1次回折光EY2が発生する。回折光DY2,EY2は、光路変更部材24Yの上方の空間(2階部分)を+X方向に通過し、回折光DY2は、S偏光でPBS38YAに入射し、PBS38YAで−Y方向に同軸に合成された回折光DY2及び参照光RY1は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40YAで受光される。回折光EY2は、S偏光でPBS38YBに入射し、PBS38YBで−Y方向に同軸に合成された回折光EY2及び参照光RY2は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40YBで受光される。
【0053】
この際に、複数対の偏角プリズム56の調整によって、その回折光DY2,EY2及び参照光RY1,RY2から形成される干渉縞が例えば全体で1本以内になるように調整される。
光電センサ40XA,40XB,40YA,40YBの検出信号は計測演算部42に供給される。計測演算部42では、X軸の光電センサ40XA,40XBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材とのX方向及びZ方向の相対移動量を求める。さらに、計測演算部42では、Y軸の光電センサ40YA,40YBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材とのY方向及びZ方向の相対移動量を求める。
【0054】
この際に、検出ヘッド14X,14Yをコンパクトに配置できる。さらに、傾斜ミラー32XA,32YA等から回折格子12X,12Yの格子パターン面に向かう計測光のX方向、Y方向の入射角を、回折格子12X,12Yのリトロー角に対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子12X,12Yからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【0055】
[第2実施例]
第2実施例につき図6〜図8を参照して説明する。図6〜図8において、図1(A)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図6及び図8は、第2実施例に係るX軸のエンコーダ10XAの概略構成を示す。図7(A)は図6のAA線に沿う断面図であり、図7(B)、(C)はそれぞれ図6のBB線に沿う断面図である。エンコーダ10XAは、不図示の第1部材に固定されたX方向を周期方向とする回折格子12Xと、第2部材64の上面に固定された検出ヘッド14XAと、レーザ光源16及び計測演算部42XAとを有する。なお、検出ヘッド14XAも2階建て構造である。
【0056】
検出ヘッド14XAにおいて、レーザ光源16から射出されてPBS18を透過したP偏光の計測光MXは、1/2波長板54を介して2階部分のPBS18Cに入射し、PBS18Cを透過したP偏光成分(計測光MX)の一部がビームスプリッタ70で反射され、ミラー72Aを介してローカル干渉光生成用のPBS18Bに入射する。ビームスプリッタ70を透過した第1の計測光MX1は、1対の偏角プリズム56を介してP偏光で−Y方向にPBS(偏光ビームスプリッタ)28に入射する。PBS18Cで反射されたS偏光の第2の計測光MX2は、ミラー72C、1対の偏角プリズム56、及び1/2波長板54Bを介して−Y方向にP偏光でPBS28に入射する。
【0057】
また、PBS18で反射されたS偏光の参照光RXは、ミラー52A等、1/2波長板54、及び偏角プリズム56を介して2階部分のPBS18Aに入射する。なお、実際には、PBS18から1/2波長板54までの計測光MXの光路長と、PBS18から1/2波長板54までの参照光RXの光路長とはほぼ等しくなるように、計測光MX及び参照光RXの光路は設定されている。PBS18Aで反射された参照光RXの一部がS偏光でPBS18Bに入射する。PBS18Bで−Y方向に同軸に合成された計測光MXの一部及び参照光RXの一部は、偏光板60を介してローカル干渉光として光電センサ40Lで受光される。光電センサ40Lの検出信号は計測演算部42XAに供給される。
【0058】
図7(A)に示すように、PBS18Aを透過したP偏光の参照光RXは、ZX面を45°傾斜させた2つの偏光ビームスプリッタ面(PBS面)68Aa,68Abを持つ光路変更部材68Aに入射する。参照光RXは、PBS面68Aa,68Abに対してはS偏光となるため、PBS面68Aa,68Abで反射された後、1階部分に移動して1/2波長板54を介して−Y方向にミラー72Bに入射する。図8に示すように、ミラー72Bで−X方向に反射された参照光RXは、ハーフミラー58Cで参照光RX1,RX2に分割され、参照光RX1は−Y方向にS偏光でPBS28に入射し、参照光RX2は、ミラー72Cを介して−Y方向にS偏光でPBS28に入射する。図7(B)、(C)に示すように、計測光MX1,MX2はハーフミラー58C及びミラー72Cの上方を通過してPBS28に入射する。
【0059】
図6において、PBS28に入射したP偏光の計測光MX1は、PBS面28aを透過して傾斜ミラー32XAの反射面で反射され、回折格子12Xの格子パターン12XaにX方向の入射角がリトロー角より角度βだけ大きい角度φ1で入射し、格子パターン12Xaからの+1次回折光DX1が発生する。図7(B)に示すように、回折光DX1(計測光MX1)の光路には図4(A)の楔形プリズム62と同じ楔形プリズム62A、1/4波長板30B、及び位相補正板31Bが配置されている。回折光DX1は、反射面の2階部分で反射されてPBS28にS偏光で入射する。
【0060】
図6に示すように、PBS面28aで反射された回折光DX1は、コーナキューブ29Aで反射され、PBS面28aで反射された後、図7(B)に示すように、傾斜ミラー32XAの反射面の1階部分に入射する。その反射面で反射された回折光DX1は、1/4波長板30B及び位相補正板31Bを介して格子パターン12XaにX方向の入射角φ1で入射し、格子パターン12Xaからの2回目の+1次回折光DX2が発生する。回折光DX2は傾斜ミラー32XAで反射されてPBS28にP偏光で入射し、図6に示すように、PBS面28aを透過した回折光DX2は、ミラー72D,72Eで反射され、1対のハービング66を介して光路合成部材68Bの1階部分に入射する。
【0061】
図7(B)に示すように、光路合成部材68Bは、光路変更部材68AのPBS面と平行な2つのPBS面68Ba,68Bbを有し、回折光DX2はPBS面68Ba,68Bbに対してはS偏光である。そのため、回折光DX2はPBS面68Ba,68Bbで反射されて2階部分で+Y方向に射出される。
同様に、図6において、PBS28に入射したP偏光の計測光MX2は、PBS面28aを透過して傾斜ミラー34XAの反射面で反射され、格子パターン12XaにX方向の入射角(−φ1)で入射し、格子パターン12Xaからの−1次回折光EX1が発生する。図7(C)に示すように、回折光EX1(計測光MX2)の光路には図4(A)の楔形プリズム62と同じ楔形プリズム62B、1/4波長板30B、及び位相補正板31Bが配置されている。回折光EX1は、反射面の2階部分で反射されてPBS28にS偏光で入射する。PBS面28aで反射された回折光EX1は、コーナキューブ29Bで反射され、PBS面28aで反射された後、傾斜ミラー34XAの反射面の1階部分に入射する。その反射面で反射された回折光EX1は、1/4波長板30B及び位相補正板31Bを介して格子パターン12XaにX方向の入射角(−φ1)で入射し、格子パターン12Xaからの2回目の−1次回折光EX2が発生する。回折光EX2は傾斜ミラー34XAで反射されてPBS28にP偏光で入射し、図6に示すように、PBS面28aを透過した回折光EX2は、ミラー72F,72Gで反射され、ハービング66を介して光路合成部材68Cの1階部分に入射する。図7(C)に示すように、回折光EX2は、光路合成部材68Bと同じ構成の光路合成部材68Cの2階部分で+Y方向に射出される。
【0062】
一方、図8において、PBS28に入射したS偏光の第1の参照光RX1は、PBS面28aで+X方向に反射された後、1/4波長板30Aを介してミラー74AのYZ面に平行な反射面で反射された後、1/4波長板30Aを介してP偏光でPBS面28aに入射する。PBS面28aを透過した参照光RX1は、コーナキューブ29Aで2階部分に反射された後(図7(B)参照)、1/4波長板30Aを介してミラー74Aで反射され、1/4波長板30Aを介してPBS面28aで反射される。反射された参照光RX1は、ミラー72H,72Eを介してP偏光で光路合成部材68BのPBS面に入射する。このPBS面で同軸に合成された回折光DX2及び参照光RX1は、偏光板60を介して干渉光として光電センサ40XAで受光される。
【0063】
また、PBS28に入射したS偏光の第2の参照光RX2は、PBS面28aで+X方向に反射された後、1/4波長板30Aを介してミラー74BのYZ面に平行な反射面で反射された後、1/4波長板30Aを介してP偏光でPBS面28aに入射する。PBS面28aを透過した参照光RX2は、コーナキューブ29Bで2階部分に反射された後(図7(C)参照)、1/4波長板30Aを介してミラー74Bで反射され、1/4波長板30Aを介してPBS面28aで反射される。反射された参照光RX2は、ミラー72I,72Gを介してP偏光で光路合成部材68CのPBS面に入射する。このPBS面で同軸に合成された回折光EX2及び参照光RX2は、偏光板60を介して干渉光として光電センサ40XBで受光される。
【0064】
また、PBS面28aからミラー74A,74Bの反射面までの光路長は、PBS面28aからそれぞれ傾斜ミラー32XA,34XAを介して回折格子12Xに至る光路長とほぼ同じ長さに設定されている。さらに、参照光RX1,RX2と回折光DX2,EX2とは、PBS28及びコーナキューブ29A,29B内でほぼ同じ光路を通過している。従って、参照光RX1,RX2と回折光DX2,EX2とは、ほぼ等価な光路を通過しているため、環境の僅かな温度変化及び/又は雰囲気の温度変化等があっても、高い計測精度が得られる。
【0065】
この際に、複数対の偏角プリズム56及びハービング66の調整によって、その回折光DX2,EX2及び参照光RX1,RX2から形成される干渉縞が例えば全体で1本以内になるように調整される。光電センサ40XA,40XBの検出信号は計測演算部42XAに供給される。計測演算部42XAでは、光電センサ40XA,40XBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材64とのX方向及びZ方向の相対移動量を求めることができる。
【0066】
この際に、検出ヘッド14XAをコンパクトに配置できる。さらに、傾斜ミラー32XA,34XAから回折格子12Xの格子パターン面に向かう計測光のX方向の入射角を、回折格子12Xのリトロー角に対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子12Xからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【0067】
[第3実施例]
第3実施例につき図9〜図11を参照して説明する。図9は、第3実施例に係るエンコーダ装置を備えた露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、スキャニングステッパーよりなる走査露光型の投影露光装置である。露光装置EXは、投影光学系PL(投影ユニットPU)を備えており、以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面(ほぼ水平面に平行な面)内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向にY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向にX軸を取って説明する。
【0068】
露光装置EXは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示される照明系110、及び照明系110からの露光用の照明光(露光光)IL(例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波など)により照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRSTを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW(基板)に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWSTを含むステージ装置195、及び制御系等(図11参照)を備えている。
【0069】
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に真空吸着等により保持され、レチクルRのパターン面(下面)には、回路パターンなどが形成されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含む図11のレチクルステージ駆動系111によって、XY平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能である。
【0070】
レチクルステージRSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計116によって、移動鏡115(又は鏡面加工されたステージ端面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、図11のコンピュータよりなる主制御装置120に送られる。主制御装置120は、その計測値に基づいてレチクルステージ駆動系111を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0071】
図9において、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒140と、鏡筒140内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系110からの照明光ILによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介して照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの像が、ウエハ(半導体ウエハ)Wの一つのショット領域の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。
【0072】
また、露光装置EXは、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ191を保持する鏡筒140の下端部の周囲を取り囲むように、局所液浸装置108の一部を構成するノズルユニット132が設けられている。ノズルユニット132は、露光用の液体Lq(例えば純水)を供給するための供給管131A及び回収管131Bを介して、液体供給装置186及び液体回収装置189(図11参照)に接続されている。なお、液浸タイプの露光装置としない場合には、上記の局所液浸装置108は設けなくともよい。
【0073】
図9において、ウエハステージWSTは、不図示の複数の例えば真空予圧型空気静圧軸受(エアパッド)を介して、ベース盤112のXY面に平行な上面112aに非接触で支持されている。また、ウエハステージWSTは、例えば平面モータ、又は直交する2組のリニアモータを含むステージ駆動系124(図11参照)によってX方向及びY方向に駆動可能である。露光装置EXは、レチクルRのアライメントを行う空間像計測系(不図示)、ウエハWのアライメントを行うアライメント系AL(図11参照)、照射系90a及び受光系90bよりなりウエハWの表面の複数箇所のZ位置を計測する斜入射方式の多点のオートファオーカスセンサ90(図11参照)、及びウエハステージWSTの位置情報を計測するためのエンコーダ装置8Bを備えている。
【0074】
ウエハステージWSTは、X方向、Y方向に駆動されるステージ本体191と、ステージ本体191上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体191内に設けられて、ステージ本体191に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx方向、θy方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBの中央の上部には、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
【0075】
また、ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(又は保護部材)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きな円形の開口が形成された高平面度の平板状のプレート体128が設けられている。
なお、上述の局所液浸装置108を設けたいわゆる液浸型の露光装置の構成にあっては、さらにプレート体128は、図10のウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の平面図に示されるように、その円形の開口を囲む、外形(輪郭)が矩形の表面に撥液化処理が施されたプレート部(撥液板)128aと、プレート部128aを囲む周辺部128eとを有する。周辺部128eの上面に、プレート部128aをY方向に挟むようにX方向に細長い1対のY軸の第1及び第2の回折格子12Y1,12Y2が配置され、プレート部128aをX方向に挟むようにY方向に細長い1対のX軸の回折格子12X1,12X2が配置されている。X方向を周期方向とする反射型の回折格子12X1,12X2は図1の回折格子12Xと同じ構成であり、Y方向を周期方向とする回折格子12Y1,12Y2は回折格子12Xを90°回転した構成である。
【0076】
また、図9において、投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に連結部材(不図示)を介してXY面にほぼ平行な平板状の計測フレーム150が支持されている。計測フレーム150の底面に、投影光学系PLをX方向に挟むように、図5のX軸の検出ヘッド14Xと同じ構成の複数の検出ヘッド14Xが固定され、投影光学系PLをY方向に挟むように、図5のY軸の検出ヘッド14Yと同じ構成の複数の検出ヘッド14Yが固定されている(図10参照)。また、複数の検出ヘッド14X,14Yにレーザ光(計測光及び参照光)を供給するための複数のレーザ光源(不図示)も備えられている。なお、検出ヘッド14Xの代わりに図6の検出ヘッド14XAを使用してもよく、検出ヘッド14Yの代わりに検出ヘッド14XAを90°回転した構成の検出ヘッドを使用してもよい。
【0077】
図10において、投影光学系PLからの照明光でウエハWを露光している期間では、常に複数の検出ヘッド14Xのいずれか2つがX軸の回折格子12X1,12X2に対向し、複数の検出ヘッド14Yのいずれか2つがY軸の回折格子12Y1,12Y2に対向するように構成されている。各検出ヘッド14Xは、回折格子12X1又は12X2に計測光を照射し、回折格子12X1,12X2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する計測演算部42X(図11)に供給する。計測演算部42Xでは、図1の計測演算部42と同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのX方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Xに供給する。計測値切り替え部80Xでは、回折格子12X1,12X2に対向している検出ヘッド14Xに対応する計測演算部42Xから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0078】
また、各検出ヘッド14Yは、回折格子12Y1又は12Y2に計測光を照射し、回折格子12Y1,12Y2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する計測演算部42Y(図11)に供給する。計測演算部42Yでは、計測演算部42Xと同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのY方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Yに供給する。計測値切り替え部80Yでは、回折格子12Y1,12Y2に対向している検出ヘッド14Yに対応する計測演算部42Yから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0079】
複数の検出ヘッド14X、レーザ光源(不図示)、計測演算部42X、及びX軸の回折格子12X1,12X2からX軸のエンコーダ10XBが構成され、複数の検出ヘッド14Y、レーザ光源(不図示)、計測演算部42Y、及びY軸の回折格子12Y1,12Y2からY軸のエンコーダ10YBが構成されている。そして、X軸のエンコーダ10XB、Y軸のエンコーダ10YB、及び計測値切り替え部80X,80Yからエンコーダ装置8Bが構成されている。主制御装置120は、エンコーダ装置8Bから供給される相対位置の情報に基づいて、計測フレーム150(投影光学系PL)に対するウエハステージWSTのX方向、Y方向、Z方向の位置、及びθz方向の回転角等の情報を求め、この情報に基づいてステージ駆動系124を介してウエハステージWSTを駆動する。
【0080】
そして、露光装置EXの露光時には、先ずレチクルR及びウエハWのアライメントが行われる。その後、レチクルRへの照明光ILの照射を開始して、投影光学系PLを介してレチクルRのパターンの一部の像をウエハWの表面の一つのショット領域に投影しつつ、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを投影光学系PLの投影倍率βを速度比としてY方向に同期して移動(同期走査)する走査露光動作によって、そのショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。その後、ウエハステージWSTを介してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、上記の走査露光動作とを繰り返すことによって、液浸法でかつステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。
【0081】
この際に、検出ヘッド14X,14Yにおいては、計測光及び回折光の光路長はレーザ干渉計に比べて短いため、検出ヘッド14X,14Yを用いた計測値に対する空気揺らぎの影響が非常に小さい。従って、本実施例のエンコーダ装置8Bは、レーザ干渉計と比較して、空気が揺らぐ程度の短い期間における計測安定性(短期安定性)が格段に優れているため、レチクルRのパターン像をウエハWに高精度に転写できる。さらに、検出ヘッド14X,14YはZ方向の高さを低くコンパクトに構成できるため、計測フレーム150の底面等に複数の検出ヘッド14X,14Yを容易に設置できる。
【0082】
なお、本実施例では、計測フレーム150側に検出ヘッド14X,14Y等を配置し、ウエハステージWST側に回折格子12X1,12Y1等を配置している。この他の構成として、計測フレーム150側に回折格子12X1,12Y1等を配置し、ウエハステージWST側に検出ヘッド14X,14Y等を配置してもよい。
また、上記の実施例の露光装置EX又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図12に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたレチクル(マスク)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置(露光方法)によりレチクルのパターンを基板(感光基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0083】
言い換えると、このデバイスの製造方法は、上記の実施例の露光装置EX(露光方法)を用いてレチクルのパターンの像を基板(ウエハ)に転写し、その基板を現像するリソグラフィ工程と、そのパターンの像が転写されたその基板をそのパターンの像に基づいて加工する工程(ステップ224のエッチング等)とを含んでいる。この際に、上記の実施例によれば、露光装置のウエハステージWSTの位置を高精度に制御できるため、電子デバイスを高精度に製造できる。
【0084】
なお、本発明は、上述の走査露光型の投影露光装置(スキャナ)の他に、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ等)にも適用できる。さらに、本発明は、液浸型露光装置以外のドライ露光型の露光装置にも同様に適用することができる。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグフィ工程を用いて製造する際の、露光装置にも適用することができる。
【0085】
また、上記の実施形態又は実施例のエンコーダ10X、エンコーダ装置8,8Bは、露光装置以外の検査装置又は計測装置等の検査又は加工対象の物体用の光学系を備えた光学装置において、その物体の相対移動量を計測するために適用することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
EX…露光装置、R…レチクル、W…ウエハ、MX1,MX2…計測光、RX1,RX2…参照光、10X…X軸のエンコーダ、12X…X軸の回折格子、14X…X軸の検出ヘッド、16…レーザ光源、27…1/2波長板、28A,28B…PBS(偏光ビームスプリッタ)、29A,29B…コーナキューブ、30…1/4波長板、32XA,32XB…+1次回折光用の傾斜ミラー、34XA,34XB…−1次回折光用の傾斜ミラー、40XA,40XB…光電センサ、42X…計測演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する部材間の相対移動量を計測するエンコーダ装置、このエンコーダ装置を備えた光学装置及び露光装置、並びにこの露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を生産するためのフォトリソグラフィ工程で用いられる、いわゆるステッパー又はスキャニングステッパーなどの露光装置においては、従来より、露光対象の基板を移動するステージの位置計測はレーザ干渉計によって行われていた。ところが、レーザ干渉計では、計測用ビームの光路が長く、かつ変化するため、その光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0003】
そこで、例えばステージに固定された回折格子にレーザ光よりなる計測光を照射し、回折格子から発生する回折光と他の回折光又は参照光との干渉光を光電変換して得られる検出信号から、その回折格子が設けられた部材(ステージ等)の相対移動量を計測する、いわゆるエンコーダ装置(干渉型エンコーダ)も使用されつつある(例えば特許文献1参照)。このエンコーダ装置は、レーザ干渉計に比べて計測値の短期的安定性に優れるとともに、レーザ干渉計に近い分解能が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/029757号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエンコーダ装置は、ほぼ計測光の入射面に沿って、回折光と他の回折光又は参照光とを干渉させるための複数の光学部材を配置していたため、光学系の高さが高くなり、その光学系を例えば狭い空間に組み込むことが困難であった。
さらに、従来のエンコーダ装置では、計測情報を含むある回折光と、回折格子から発生する0次光(正反射光)の方向とが平行になる恐れがあった。このように回折光と0次光とが平行である状態で、検出対象の干渉光にその0次光が混入すると、その干渉光に本来の計測情報を含む周期とは異なる周期の干渉光が含まれるため、計測精度が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明の態様は、このような課題に鑑み、回折格子を用いて計測を行う際に、光学系の高さを低くするとともに、回折格子からの0次光の影響を低減して計測精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、第1部材に対して少なくとも第1方向に相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置が提供される。このエンコーダ装置は、その第1部材及びその第2部材の一方に設けられ、その第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、互いに可干渉性のある第1計測光及び第2計測光を供給する光源部と、その第1部材及びその第2部材の他方に設けられ、その光源部から供給された第1計測光をその格子パターン面に向けて反射する第1反射部材と、その回折格子からの回折光と他の回折光又はその第2計測光との干渉光を検出する第1光電検出器と、その第1光電検出器の検出信号を用いてその第2部材の相対移動量を求める計測部と、を備え、その反射部材からその格子パターン面に向かうその第1計測光のその第1方向の入射角を、その回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定するものである。
【0008】
また、第2の態様によれば、本発明のエンコーダ装置と、対象物用の光学系と、を備える光学装置が提供される。
また、第3の態様によれば、パターンを被露光体に露光する露光装置が提供される。この露光装置は、フレームと、その被露光体を支持するとともにそのフレームに対して少なくとも第1方向に相対移動可能なステージと、その第1方向へのそのステージの相対移動量を計測するための本発明のエンコーダ装置と、を備えるものである。
【0009】
また、第4の様態によれば、リソグラフィ工程を含み、そのリソグラフィ工程では、上記露光装置を用いて物体を露光するデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測光を格子パターン面に向けて反射する反射部材を設けているため、エンコーダ装置の光学系の高さ(格子パターン面の法線方向の高さ)を低くできる。
さらに、その反射部材からその格子パターン面に向かう計測光の第1方向の入射角を、回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子からの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は実施形態の一例に係るエンコーダを示す斜視図、(B)は図1(A)中の傾斜ミラーの反射面等を示す図である。
【図2】図1のエンコーダの2回目の回折光の光路を示す斜視図である。
【図3】(A)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子に垂直入射する状態を示す図、(B)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子にX方向に傾斜して入射する状態を示す図、(C)は傾斜ミラーからの反射光が回折格子にX方向及びY方向に傾斜して入射する状態を示す図である。
【図4】(A)は傾斜ミラーからの反射光が楔形プリズムを介して回折格子に入射する状態を示す斜視図、(B)は図4(A)のB方向から視た図、(C)は2次元の回折格子を使用する例を示す斜視図である。
【図5】第1実施例に係る2次元のエンコーダを示す平面図である。
【図6】第2実施例に係るエンコーダを示す平面図である。
【図7】(A)は図6のAA線に沿う断面図、(B)は図6のBB線に沿う図、(C)は図6のBB線に沿って一部を省略して示す図である。
【図8】図6の参照光の光路を示す平面図である。
【図9】第3実施例に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図10】図9のウエハステージに設けられた回折格子及び複数の検出ヘッドの配置の一例を示す平面図である。
【図11】図9の露光装置の制御系を示すブロック図である。
【図12】電子デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1〜図4を参照して説明する。図1(A)は本実施形態に係るX軸のエンコーダ10Xの要部を示す斜視図である。図1(A)において、一例として、第1部材6に対して第2部材7は2次元平面内で相対移動可能に配置され、第2部材7の互いに直交する相対移動可能な2つの方向に平行にX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸によって規定される平面(XY面)に直交する軸をZ軸として説明する。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、及びθz方向の角度とも呼ぶ。
【0013】
図1(A)において、エンコーダ10Xは、第1部材6の上面に固定された、XY面に平行な平板状のX軸の回折格子12Xと、第2部材7の上面に固定されて回折格子12Xに計測光を照射するX軸の検出ヘッド14Xと、検出ヘッド14Xに計測用のレーザ光を供給するレーザ光源16と、検出ヘッド14Xから出力される検出信号を処理して第1部材6に対する第2部材7の少なくともX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を有する。さらに、第1部材6に対する第2部材7のY方向の相対移動量を求めるY軸のエンコーダも備えられている。図1(A)では、Y軸のエンコーダのうちの検出ヘッド14Yのみが図示されている。
【0014】
回折格子12XのXY面に平行な格子パターン面12Xbには、X方向に所定の周期(ピッチ)を持ち、位相型でかつ反射型の格子パターン12Xaが形成されている。格子パターン12Xaの周期は、一例として100nm〜4μm程度(例えば2μm周期)である。格子パターン12Xaは、例えばホログラム(例えば感光性樹脂に干渉縞を焼き付けたもの)として、又はガラス板等に機械的に溝等を形成して反射膜を被着することで作製可能である。さらに、格子パターン面12Xbは、保護用の平板ガラスで覆われていてもよい。なお、回折格子12Xの代わりに、X方向、Y方向に周期的に形成された格子パターンを持つ2次元の回折格子を使用してもよい。
【0015】
レーザ光源16は、例えばHe−Neレーザ又は半導体レーザ等よりなり、一例として偏光方向が互いに直交するとともに互いに周波数が異なる第1及び第2の直線偏光のレーザ光XR,YRよりなる2周波ヘテロダイン光を射出する。そのレーザ光XR,YRは互いに可干渉であり、それらの平均波長をλとする。レーザ光源16は、レーザ光XR,YRから分岐した2つの光束の干渉光を光電変換して得られる基準周波数の信号(基準信号)を計測演算部42Xに供給する。なお、ホモダイン干渉方式も使用可能である。
【0016】
レーザ光源16から射出されたヘテロダイン光は、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSという。)18により互いに同じ光量のP偏光の第1のレーザ光XRと、S偏光の第2のレーザ光YRとに分割される。第1のレーザ光XRは、偏光方向を調整するための1/2波長板20Aを介してPBS22Xに入射し、−X方向に向かうS偏光のX軸の計測光MXと、+Y方向に向かうP偏光のY軸の参照光RYとに分割される。Y軸の参照光RYはミラー45A,45Bを介してY軸の検出ヘッド14Yに供給され、参照光RYは、検出ヘッド14Y内でY軸の計測光によってY軸の回折格子(不図示)から発生する回折光と干渉する。
【0017】
また、PBS18で分割された第2のレーザ光YRは、1/2波長板20Bを介してPBS22Yに入射し、P偏光のY軸の計測光MYとS偏光のX軸の参照光RXとに分割され、Y軸の計測光MYはY軸の検出ヘッド14Yに供給される。1/2波長板20B及びPBS22Yは検出ヘッド14Yの一部とみなすことも可能である。1/2波長板20A,20Bの回転角は、それぞれ計測光MX及びMYの光量がその入射するレーザ光XR,YRの光量の95%程度になるように調整される。PBS22Yで反射されたS偏光の参照光RXは、1/2波長板20CによってP偏光に変換された後、ミラー45C,45Dを介して光路が+Z方向にシフトした状態でハーフミラー45Eに入射し、互いに同じ光量の第1及び第2の参照光RX1,RX2に分割される。参照光RX1はP偏光としてPBS38XAに入射し、参照光RX2は、ミラー45Fを介してP偏光としてPBS38XBに入射する。参照光RX1,RX2は、PBS38XA,38XBで後述のX軸の第1及び第2の回折光と合流して干渉光(ヘテロダインビーム)となる。これらの干渉光は、波長板(不図示)を介してフォトダイオード等からなる第1及び第2の光電センサ40XA,40XBに入射する。なお、実際には、参照光RX1,RX2の光路長は、対応する計測光(回折光)の光路長とほぼ等しくなるように光路が設定されている。
【0018】
このように本実施形態では、X軸のレーザ光XRから分割された参照光RYがY軸の検出ヘッド14Yに供給され、Y軸のレーザ光YRから分割された参照光RX(RX1,RX2)がX軸の検出ヘッド14Xで生成される回折光と干渉する。一例として、回折格子12Xでの回折効率はほぼ10%であり、後述のように2回の回折を行わせることによって、最終的に使用される回折光の効率はほぼ1%になる。従って、このように計測光MX,MYの光量をほぼ95%にしておくことによって、最終的に干渉する回折光と参照光との光量比はほぼ1:1になり、参照光を減衰する必要がなくなるため、レーザ光XR,YRの使用効率が高くなる。ミラー45A〜45F,ハーフミラー45E、及び1/2波長板20Cから参照光の光路長を計測光の光路長に合わせるための光学系44が構成されている。
【0019】
また、後述のように本実施形態では、X方向(又はY方向)の相対移動量XとZ方向の相対移動量Zとの差分(X−Z)(又はY−Z)とを計測するために、X方向の回折格子12X(又はY方向の回折格子12Y)でも+1次と-1次の回折光を利用する。本実施形態では、相対移動量Xを計測するための+1次と−1次との回折光の波長(λ1とする)を同じにする。同様に相対移動量Yを計測する際に、+1次と−1次との回折光の波長(λ2とする)を同じにする。このように、移動量Xと移動量Yとを計測する計測光(回折格子12X,12Yで回折される光)を異なる波長にしている。このことで、前述のように移動量Xを計測するための計測光(波長λ1)と参照光(波長λ2)との光量比が95:5になる場合に、移動量Yを計測するための計測光(波長λ2)と参照光(波長λ1)との光量比も95:5になる。この場合の波長λ1,λ2は、レーザ光源16から射出されるヘテロダインビームの二つの波長である。
【0020】
本実施形態の検出ヘッド14Xは2階建て構造であり、PBS18,22X,22Y等は第2部材7上の1階部分にあるのに対して、PBS38XA,38XB等は不図示のフレームを介して2階部分に配置されている。
また、X軸の検出ヘッド14Xは、上記の1/2波長板20A、PBS22X、及び参照光用の光学系44とともに、1階部分にX方向に離れたハーフミラー面25A及び反射面25Bを有し、2階部分に反射面25Cを有する光路変更部材24Xと、光路変更部材24Xの−X方向の端部近傍に配置されてY軸にほぼ45°で傾斜する反射面を持つミラー36Xと、を有する。さらに、検出ヘッド14Xは、光路変更部材24Xの+Y方向側に対向するように、X方向に隣接して対称に配置された第1及び第2のPBS28A,28Bと、PBS28A,28Bの+X方向側及び−X方向側の側面に対称に固定された第1及び第2のコーナキューブ29A,29Bと、PBS28Aの+Y方向側に不図示のフレームによって支持された+1次回折光用の第1及び第2の傾斜ミラー32XA,32XBと、PBS28Bの+Y方向側に不図示のフレームによって支持された−1次回折光用の第1及び第2の傾斜ミラー34XA,34XBと、を有する。傾斜ミラー32XA,34XAは1階部分に反射面を有し、傾斜ミラー32XB,34XBは2階部分に反射面を有する。また、PBS28A及び28Bの偏光ビームスプリッタ面は、それぞれZY面に平行な面をθz方向に45°及び−45°回転した面である。また、PBS28A,28Bの−Y方向の側面に1/2波長板27が固定され、PBS28A,28Bの+Y方向の側面に1/4波長板30が固定されている。1/2波長板27、PBS28A,28B、コーナキューブ29A,29B、1/4波長板30、傾斜ミラー32XA,32XB、及び傾斜ミラー34XA,34XBを含んで、±1次の各2回の回折を行わせるためのX軸の回折光発生部26Xが構成されている。
【0021】
検出ヘッド14Xにおいて、PBS22Xで−X方向に分岐されたS偏光のX軸の計測光MXは、光路変更部材24Xに入射し、ハーフミラー面25Aでほぼ+Y方向に向かう第1の計測光MX1と−X方向に向かう第2の計測光MX2とに分割され、第2の計測光MX2は反射面25Bでほぼ+Y方向に反射される。計測光MX1及びMX2はそれぞれ1/2波長板27を介してP偏光(ここでは偏光方向がX方向)に変換されてPBS28A及び28Bに入射する。入射した計測光MX1,MX2は、それぞれPBS28A,28Bを透過し、1/4波長板30を介して傾斜ミラー32XA,34XAの平面の反射面に入射する。
【0022】
図1(B)は図1(A)中の傾斜ミラー32XA,34XAの反射面等を示す図である。図1(B)において、傾斜ミラー32XAの反射面に入射した計測光MX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xの格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角φ1が、次のように格子パターン12Xaに対する+1次回折光のリトロー角(Littrow角)φLIよりも所定の角度βだけ大きくなる状態で入射する。
【0023】
φ1=φLI+β …(1)
格子パターン面12Xbに入射する計測光MX1のθx方向(Y方向)の入射角は0でもよいが、計測光MX1のY方向の入射角は例えば0〜β程度(例えばβ/2程度)に傾斜していることが好ましい。角度βは、一例として0.5°から数deg程度であり、例えば0.5°〜1.5°(目標値で1°程度)に設定される。
【0024】
+1次回折光のリトロー角φLIは、点線の光ビームLAで示すように、入射する光ビームLAとこの+1次回折光LA1とが平行になるときの光ビームLAの入射角である。このように光ビームLAがリトロー角φLIで入射すると、格子パターン面の高さが変化しても+1次回折光LA1の横シフトが発生しないため、干渉光の強度が変化しないという利点がある一方で、後述のように0次光によるノイズ光の問題が生じる。格子パターン12XaのX方向の周期をp、計測光MX1,MX2の平均的な波長をλとすると、リトロー角φLIは次の関係を満たす。
【0025】
2・sin φLI=λ …(2)
リトロー角φLIで入射する光ビームLAの格子パターン12Xaによる0次光(正反射光)LA0は+1次回折光LA1と対称になる。この場合、光ビームLAと対称に格子パターン12Xaに入射する光ビームの−1次回折光と、0次光LA0とはほぼ平行になるため、その−1次回折光と0次光LA0とが合流すると、周期の大きい干渉縞(ノイズ光)が形成され、計測誤差の要因になる恐れがある。
【0026】
また、傾斜ミラー32XAから入射角φ1で格子パターン12Xaに入射した計測光MX1による回折格子12Xからの+1次回折光DX1の回折角φ2は、次のようにほぼリトロー角φLIよりも角度βだけ小さくなる。
φ2≒φLI−β …(3)
また、傾斜ミラー34XAの反射面に入射した計測光MX2は、その反射面で反射されて格子パターン面12Xbに、θy方向(X方向)の入射角が、計測光MX1と対称になるように角度(−φ1)で入射する。計測光MX2のX方向の入射角は、格子パターン12Xaに対する−1次回折光のリトロー角(−φLI)よりも絶対値が角度βだけ大きくなる。計測光MX2のθx方向(Y方向)の入射角は、例えば計測光MX1のY方向の入射角と同じ程度である。傾斜ミラー34XAから入射角(−φ1)で格子パターン12Xaに入射した計測光MX2による回折格子12Xからの−1次回折光EX1の回折角は、回折光DX1の回折角φ2と符号が逆である。また、計測光MX1,MX2による格子パターン12Xaからの0次光(正反射光)M10,M20の反射角はそれぞれ−φ1及びφ1である。
【0027】
このため、本実施形態では、計測光MX1の0次光M10と−1次回折光EX1とのθy方向の角度(交差角)はほぼ2・βとなる。従って、仮に0次光M10と−1次回折光EX1とが合流しても、周期の小さい干渉縞が形成されるのみで、計測誤差は極めて小さくなる。
格子パターン12Xaからの回折光DX1及びEX1は、それぞれ傾斜ミラー32XA,34XAの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図1(A)の1/4波長板30を介してS偏光になってPBS28A,28Bに入射し、偏光ビームスプリッタ面で反射される。
【0028】
図2に示すように、PBS28A,28Bの偏光ビームスプリッタ面で反射された回折光DX1及びEX1は、それぞれコーナキューブ29A,29Bで反射されてから、その偏光ビームスプリッタ面の2階部分で再度反射された後、1/4波長板30を介して第2の傾斜ミラー32XB,34XBの平面の反射面に入射する。
図1(B)において、2階部分の傾斜ミラー32XBの反射面に入射した回折光DX1は、その反射面で反射されて、回折格子12Xに、計測光MX1とほぼ平行に入射する。従って、回折光DX1のX方向の入射角φ1も、リトロー角φLIよりもほぼ角度βだけ大きくなる。また、回折光DX1による格子パターン12Xaからの+1次回折光DX2(計測光MX1に対する+2次回折光)の回折角φ2は、回折光DX1の回折角とほぼ同じである。
【0029】
また、2階部分の傾斜ミラー34XBの反射面に入射した回折光EX1は、その反射面で反射されて回折格子12Xに、計測光MX2とほぼ平行に入射する。従って、回折光EX1のX方向の入射角はほぼ−φ1である。傾斜ミラー34XBから入射した回折光EX1による格子パターン12Xaからの−1次回折光EX2(計測光MX2に対する−2次回折光)の回折角は、ほぼ−φ2である。また、回折光DX1,EX1による格子パターン12Xaからの0次光(正反射光)D10,E10の反射角はそれぞれほぼ−φ1及びφ1である。なお、図1(B)において、実際には、傾斜ミラー32XA,34XBからの計測光(回折光)が入射する回折格子12X上のX方向の位置はほぼ等しく、傾斜ミラー32XB,34XAからの回折光(計測光)が入射する回折格子12X上のX方向の位置はほぼ等しい。
【0030】
このため、回折光DX1(EX1)の0次光D10(E10)と回折光EX2(回折光DX2)とのθy方向の角度(交差角)はほぼ2・βとなる。従って、仮に0次光D10等と回折光EX2等とが合流しても、周期の小さい干渉縞が形成されるのみで、計測誤差は極めて小さくなる。ここで、計測光MX1,MX2(平均波長λ)のビーム径をdとして、0次光D10等と回折光EX2等とが合流して形成される干渉縞の周期がそのビーム径dの1/50以下程度であれば(干渉縞が50本以上形成される程度であれば)、得られる干渉縞を光電変換して得られる検出信号の0次光に起因する変動成分(ノイズ成分)はほぼ2%以下になり、計測誤差は極めて小さくなる。この際の条件は以下のようになる。ただし、角度βをradで表している。
【0031】
d・2・β≧50λ …(4)
ここで、一例としてビーム径dを1mm、波長λを0.633μmとすると、式(4)を満たす角度βは以下のようになる。
β≧0.0158(rad)=0.91° …(5)
従って、計測光MX1,MX2のビーム径が1mm程度であれば、計測光MX1,MX2のX方向の入射角のリトロー角に対するずれの角度βは、0.91°以上、例えば1°程度であることが好ましい。なお、計測光MX1,MX2の入射角のリトロー角に対するずれβが大きくなると、格子パターン面12XaのZ方向の位置の変化に対して、回折光DX1,EX1の横シフト量が大きくなり、相対位置情報を含む干渉光の強度が小さくなるため、式(5)を満たす範囲内で角度βはあまり大きくしない方がよい。
【0032】
格子パターン12Xaからの回折光DX2及びEX2は、それぞれ傾斜ミラー32XB,34XBの反射面でほぼ−Y方向に反射されて、図2の1/4波長板30を介してP偏光になってPBS28A,28Bに入射し、偏光ビームスプリッタ面を透過する。
図2に示すように、回折光発生部26XのPBS28A,28Bを透過した回折光DX2及びEX2は、それぞれ1/2波長板27を介してS偏光に変換された後、光路変更部材24Xの反射面25C及びミラー36Xでほぼ+X方向に反射される。そして、反射された回折光DX2及びEX2は、それぞれPBS38XA,38XBに入射して参照光RX1,RX2と同軸に合成された後、偏光板(不図示)を介して干渉光(ヘテロダインビーム)として光電センサ40XA,40XBに入射する。
【0033】
図1(A)において、光電センサ40XA,40XBはそれぞれ入射する干渉光を光電変換して得られる検出信号SXA,SXB(ヘテロダイン信号)を計測演算部42Xに供給する。一例として、計測演算部42Xは、検出信号SXAとレーザ光源16から供給される基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との和(Z+X)を求める。さらに、計測演算部42Xは、検出信号SXBとその基準信号とから、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量とX方向への相対移動量との差(Z−X)を求める。そして、計測演算部42Xは、その和と差との差分を平均化することで、第1部材6に対する第2部材7のX方向への相対移動量(X)を求めることができ、その和と差とを平均化することで、第1部材6に対する第2部材7のZ方向への相対移動量(Z)を求めることができる。X方向、Z方向の相対移動量の検出分解能は例えば0.5〜0.1nm程度である。
【0034】
本実施形態では、最終的に2回目の+1次回折光DX2と参照光RX1との干渉光、及び2回目の+1次回折光EX2と参照光RX2との干渉光を検出しているため、相対移動量の検出分解能(検出精度)を1/2に向上(微細化)できる。また、2回目の回折光を用い、かつ±1次回折光を用いることによって、第1部材6と第2部材7とのθz方向の相対回転角による計測誤差を低減できる。
【0035】
次に、例えば傾斜ミラー32XAから回折格子12Xの格子パターン面12Xbに入射する計測光MX1の入射角をφ1(=φLI+β)に設定する複数の方法につき、図3(A)〜(C)、及び図4(A)、(B)を参照して説明する。これらの方法は他の傾斜ミラー32XB,34XA,34XBの角度調整にも適用可能である。
まず、傾斜角の設定準備として、図3(A)中の斜視図で示すように、傾斜ミラー32XAの反射面をXZ面に平行な状態からX軸に平行な軸の回りに45°傾斜させる。このとき、Y軸に平行に傾斜ミラー32XAの反射面に入射する光ビームLAは、その反射面で−Z方向に反射されて、図3(A)内のA方向から視た図(矢視A)で示すように、回折格子12Xの格子パターン面12Xbに垂直に入射する。この状態で、光ビームLAを計測光MX1として、図3(B)中の斜視図で示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸(入射する計測光MX1)の回りに一体的にリトロー角φLIだけ回転する。このとき、図3(B)中の矢視Bで示すように、傾斜ミラー32XAで反射された計測光MX1は、回折格子12Xにθy方向(X方向)に入射角φLIで入射する。さらに、第1の方法として、その計測光MX1及び傾斜ミラー32XAの一体としての回転角をφ1(=φLI+β)に設定することで、計測光MX1の回折格子12Xに対する入射角をφ1に設定できる。この状態で傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定することで、計測光MX1のX方向の入射角はφ1になる。
【0036】
次に、第2の方法として、図3(B)に示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸の回りに一体的にリトロー角φLIだけ回転した状態で、傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定してもよい。この場合、図3(C)の斜視図で示すように、入射する計測光MX1をY軸に平行な状態からθz方向に角度αだけ傾斜させる。点線の光路MX0は、計測光MX1を角度αだけ傾斜させる前の光路である。このとき、傾斜ミラー32XAで反射される計測光MX1の回折格子12Xに対するX方向の入射角は、図3(C)中の矢視CXで示すように、角度(φLI+β)となる。また、計測光MX1のY方向の入射角は、図3(C)中の矢視CYで示すように、角度γとなる。角度α、β、γの関係は次のようになる。
【0037】
β=α cos φLI …(6A)、 γ=α sin φLI …(6B)
そこで、式(6A)の角度βが例えば1°程度になるように、角度αを定めることによって、回折格子12Xに対する計測光MX1のX方向の入射角をリトロー角から所定の角度ずらすことができる。このときには、計測光MX1のY方向の入射角は式(6B)で定まる値に設定される。その角度αは、例えば図1(A)の光路変更部材24Xのハーフミラー面25A及び反射面25Bの角度で調整可能である。
【0038】
次に、第3の方法では、図4(A)に示すように、計測光MX1及び傾斜ミラー32XAを、Y軸に平行な軸の回りに一体的に角度(φLI+3・β)だけ回転した状態で、傾斜ミラー32XAを不図示のフレームに固定し、かつ傾斜ミラー32XAと回折格子12Xとの間にθz方向に所定の開き角δを持つ楔形プリズム62を配置する。このとき、図4(A)中のB方向から視た図である図4(B)に示すように、楔形プリズム62による入射光の振れ角が2・βになるように開き角δが設定されている。この結果、傾斜ミラー32XAで反射されて、格子パターン面12Xbの法線方向に対して角度(φLI+3・β)で楔形プリズム62に入射した計測光MX1は、楔形プリズム62により方向がθy方向に2・β変化した後、格子パターン面12XbにX方向の入射角(φLI+β)で入射する。従って、計測光MX1の回折格子12Xに対する入射角はリトロー角からβだけずれた角度に設定される。
【0039】
さらに、格子パターン面12Xbからの+1次回折光DX1の回折角はほぼ(φLI−β)であり、回折光DX1は楔形プリズム62を通過すると、θy方向の角度が2・β変化して、格子パターン面12Xbの法線方向に対して角度(φLI+β)で傾斜ミラー32XAの反射面に入射する。従って、この回折光DX1をその反射面から図1のコーナキューブ29A等を介してその反射面(又は他の傾斜ミラー32XB)に戻すことによって、その回折光DX1は、今度は楔形プリズム62が無い状態で格子パターン面12Xbに対してX方向に入射角(φLI+β)で入射する。従って、楔形プリズム62を用いる方法は、特に回折格子12Xで計測光MX1による1回目の回折光DX1を発生させた後、その回折格子12Xから回折光DX1による2回目の回折光DX2を発生させるときに有効である。すなわち、2回目の回折光DX2を発生させるときには楔形プリズム62を使用する必要がない。
【0040】
本実施形態の効果等は以下の通りである。本実施形態のX軸のエンコーダ10Xは、第1部材6と第2部材7とのX方向の相対移動量を計測するエンコーダである。そして、エンコーダ10Xは、第1部材6に設けられ、X方向(第1方向)を周期方向とする格子パターン12Xaが形成された回折格子12Xと、互いに可干渉性のある計測光MX1及び参照光RX1を供給するレーザ光源16等と、を有する。また、エンコーダ10Xは、第2部材7に設けられ、計測光MX1を回折格子12Xに向けてX方向にリトロー角から所定の角度βずれた角度φ1で反射する傾斜ミラー32XAと、回折格子12Xからの回折光DX1を回折格子12Xに向けてX方向に角度φで反射する傾斜ミラー32XBと、回折格子12Xからの回折光DX2と参照光RX1との干渉光を検出する光電センサ40XAと、光電センサ40XAの検出信号SXAを用いて第1部材6に対する第2部材7のX方向の相対移動量を求める計測演算部42Xと、を備える。
【0041】
なお、検出信号SXAからは、正確にはX方向及びZ方向の相対移動量の和が求められるが、仮に第1部材6と第2部材7とがZ方向にはほとんど静止している場合には、その検出信号SXAからX方向の相対移動量を求めることができる。
本実施形態によれば、計測光MX1及び回折光DX1を格子パターン面12Xaに向けて反射する傾斜ミラー32XA,32XBを設けているため、エンコーダ10Xの光学系のZ方向の高さ(格子パターン面12Xaの法線方向の高さ)を低くできる。従って、エンコーダ10Xの検出ヘッド14Xを第2部材7上にコンパクトに容易に設置できる。
【0042】
さらに、傾斜ミラー32XA,32XBから格子パターン面12Xaに向かう計測光MX1及び回折光DX1のX方向の入射角を、ほぼ回折格子12Xの+1次回折光のリトロー角φLIの近傍に設定しているため、格子パターン面12XaのZ方向の位置(高さ)の変化に対して、回折光DX1の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいため、常に安定に相対移動量が計測できる。また、格子パターン面12Xaに向かう計測光MX1及び回折光DX1のX方向の入射角を、そのリトロー角φLIに対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、回折格子12Xからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。なお、リトロー角としては、±2次以上の回折光のリトロー角を使用してもよい。
また、従来のエンコーダ装置では、回折格子の回折効率が低いときに、計測光を回折格子で二回回折させると、参照光と計測光との強度差が大きいが、本実施形態では、参照光と計測光との強度さが極めて小さい。
また、従来のエンコーダ装置では、検出ヘッドと回折格子との距離の変化によって、計測光の光路長が変化する。この場合に、レーザ光源16の波長誤差によって計測誤差が生じるが、本実施形態では、そのような計測誤差は極めて小さい。
【0043】
また、本実施形態では、2つの傾斜ミラー32XA,32XBを用いて計測光MX1を回折格子12Xで実質的に2回回折させているため、検出分解能が向上できる。なお、1つの傾斜ミラー32XAのみを用いて、1回目の回折光DX1と参照光RX1との干渉光を検出するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、第2の計測光MX2によって傾斜ミラー34XA,34XBを介して回折格子12Xから発生する−1次回折光EX2と参照光RX2との干渉光を検出している。しかしながら、例えば傾斜ミラー32XBからの2回目の+1次回折光DX2(又は1回目の回折光DX1)と傾斜ミラー34XBからの2回目の−1次回折光EX2(又は1回目の回折光EX1)との干渉光を検出し、この検出信号から第1部材6と第2部材7とのX方向の相対移動量を求めてもよい。
【0044】
なお、図4(C)に示すように、2次元の回折格子12XYに2つの波長λ1及びλ2の第1及び第2の計測光MXY1及びMXY2を例えばほぼ垂直に入射させ、回折格子12XYからX方向及びY方向への±1次の回折光を発生させ、これらの回折光と参照光との干渉光を検出する場合にも本実施形態の方法が適用可能である。すなわち、第1の計測光MXY1から分離した参照光RXY2と第2の計測光MXY2との干渉光を検出し、第2の計測光MXY2から分離した参照光RXY1と第1の計測光MXY1との干渉光を検出してもよい。
【実施例】
【0045】
[第1実施例]
第1実施例につき図5を参照して説明する。図5において、図1(A)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図5は、第1実施例に係る2次元のエンコーダ装置8の概略構成を示す。エンコーダ装置8は、不図示の第1部材と不図示の第2部材との間の少なくとも直交する2つの軸(X軸及びY軸とする)の方向の相対移動量を求めるために、X軸のエンコーダ10XとY軸のエンコーダ10Yとを有する。エンコーダ10X及び10Yは、それぞれ不図示の第1部材に固定されたX方向を周期方向とする回折格子12X及びY方向を周期方向とする回折格子12Yと、不図示の第2部材に固定されたX軸の検出ヘッド14X及びY軸の検出ヘッド14Yと、を有する。エンコーダ10X及び10Yは、共通のレーザ光源16及び計測演算部42を有する。
【0046】
X軸の検出ヘッド14Xにおいて、レーザ光源16から射出されてPBS(偏光ビームスプリッタ)18で分岐されたP偏光のレーザ光は、1/2波長板20A及び方向調整用の1対の偏角プリズム56を介してPBS22Xに入射する。PBS22Xを透過したP偏光の参照光は、ハーフミラー58AでY軸の参照光RY及びローカル干渉信号生成用の光ビームMXLに分割される。光ビームMXLは、ミラー52B、偏角プリズム56、及び偏光方向調整用の1/2波長板54(ここでは省略可)を介してP偏光でPBS38Lに入射する。
【0047】
また、Y軸の検出ヘッド14Yにおいて、PBS18で分岐されてミラー52Aを介して供給されたS偏光のレーザ光は、1/2波長板20B及び偏角プリズム56を介してPBS22Yに入射する。PBS22Yを透過したP偏光(図1(A)の例とは偏光方向が逆である)の参照光は、ハーフミラー58BでX軸の参照光RX及びローカル干渉信号生成用の光ビームMYLに分割される。光ビームMYLは、1/2波長板54Aを介してS偏光でPBS38Lに入射する。なお、検出ヘッド14X,14Yは2階建て構造であり、ハーフミラー58B、PBS38L等は1階部分にあり、後述のPBS38YA等は2階部分にあり、光ビームMYLは、PBS38YAの底面を通過している。
【0048】
PBS38Lに入射した光ビームMXL及びMYLは同軸に合成された後、偏角プリズム56及び偏光板60を介してローカル干渉光として光電センサ40XAと同じ光電センサ40Lに入射する。光電センサ40Lは、そのローカル干渉光の検出信号を計測演算部42に出力する。その検出信号は、例えばレーザ光源16から計測演算部42に供給される基準信号の代わりに使用することも可能である。
【0049】
また、ハーフミラー58Aを通過したY軸の参照光RYは、2面ミラー部材52Cの第1の反射面で+X方向に反射された後、コーナキューブ46Aで反射されて2階部分に移動する。2階部分で−X方向に進む参照光RYは、Y軸の計測光MYの光路上にある光学部材とほぼ同じ光路長を設定するための複数枚のガラス板47Aを透過して、ダハプリズム48で+X方向に反射される。+X方向に反射された参照光RYは、ハーフミラー58Cで第1及び第2のP偏光のY軸の参照光RY1,RY2に分割される。参照光RY1は偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38YAに入射し、参照光RY2はミラー52Eで反射された後、偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38YBに入射する。
【0050】
一方、ハーフミラー58Bを通過したX軸の参照光RXは、1階部分にあるミラー52で−X方向に反射され、複数枚のガラス板47Aを透過した後、コーナキューブ46Bで反射されて2階部分に移動する。2階部分で+X方向に進む参照光RXは、光路長調整用の複数枚のガラス板47Bを透過して、ハーフミラー58Dで第1及び第2のP偏光のX軸の参照光RX1,RX2に分割される。参照光RX1は偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38XAに入射し、参照光RX2は2面ミラー部材52Cの第2の反射面で反射された後、偏角プリズム56を介して−Y方向にPBS38XBに入射する。2面ミラー部材52C、コーナキューブ46A,46B、ダハプリズム48、及びガラス板47A,47B等から、検出ヘッド14X及び14Yについて共通の参照光用の光学系44XYが構成されている。
【0051】
X軸の検出ヘッド14Xにおいて、PBS22Xで反射された計測光MXは、光路変更部材24Xを介して回折光発生部26Xに入射し、回折光発生部26Xによって回折格子12Xから2回目の+1次回折光DX2及び−1次回折光EX2が発生する。なお、図5の回折光発生部26Xにおいては、1/4波長板30の表面に、回折格子12Xにおける計測光の位相変化を補正するための位相補正板31が設けられている。回折光DX2は、光路変更部材24Xを経て+X方向にS偏光でPBS38XAに入射し、PBS38XAで−Y方向に同軸に合成された回折光DX2及び参照光RX1は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40XAで受光される。回折光EX2は、ミラー36Xを経て+X方向にS偏光でPBS38XBに入射し、PBS38XBで−Y方向に同軸に合成された回折光EX2及び参照光RX2は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40XBで受光される。この際に、複数対の偏角プリズム56の調整によって、その回折光DX2,EX2及び参照光RX1,RX2から形成される干渉縞がそれぞれ例えば全体で1本以内になるように調整される。
【0052】
また、Y軸の検出ヘッド14Yは、基本的にX軸の検出ヘッド14Xを90°回転した構成である。Y軸の検出ヘッド14Yにおいて、PBS22Yで反射されたS偏光の計測光MYは、ミラー37Y及び光路変更部材24Yを介して、Y方向に離れた2本の計測光MY1,MY2としてY軸の回折光発生部26Yに入射する。回折光発生部26Yは、X軸の回折光発生部26Xを90°回転した構成である。なお、回折光発生部26Yにおける回折格子12Yの上方の2対の傾斜ミラーが傾斜ミラー32YA,32YB及び34YA,34YBである。回折光発生部26Yによって回折格子12Yから2回目の+1次回折光DY2及び−1次回折光EY2が発生する。回折光DY2,EY2は、光路変更部材24Yの上方の空間(2階部分)を+X方向に通過し、回折光DY2は、S偏光でPBS38YAに入射し、PBS38YAで−Y方向に同軸に合成された回折光DY2及び参照光RY1は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40YAで受光される。回折光EY2は、S偏光でPBS38YBに入射し、PBS38YBで−Y方向に同軸に合成された回折光EY2及び参照光RY2は、偏光板60及び偏角プリズム56を介して干渉光として光電センサ40YBで受光される。
【0053】
この際に、複数対の偏角プリズム56の調整によって、その回折光DY2,EY2及び参照光RY1,RY2から形成される干渉縞が例えば全体で1本以内になるように調整される。
光電センサ40XA,40XB,40YA,40YBの検出信号は計測演算部42に供給される。計測演算部42では、X軸の光電センサ40XA,40XBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材とのX方向及びZ方向の相対移動量を求める。さらに、計測演算部42では、Y軸の光電センサ40YA,40YBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材とのY方向及びZ方向の相対移動量を求める。
【0054】
この際に、検出ヘッド14X,14Yをコンパクトに配置できる。さらに、傾斜ミラー32XA,32YA等から回折格子12X,12Yの格子パターン面に向かう計測光のX方向、Y方向の入射角を、回折格子12X,12Yのリトロー角に対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子12X,12Yからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【0055】
[第2実施例]
第2実施例につき図6〜図8を参照して説明する。図6〜図8において、図1(A)に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図6及び図8は、第2実施例に係るX軸のエンコーダ10XAの概略構成を示す。図7(A)は図6のAA線に沿う断面図であり、図7(B)、(C)はそれぞれ図6のBB線に沿う断面図である。エンコーダ10XAは、不図示の第1部材に固定されたX方向を周期方向とする回折格子12Xと、第2部材64の上面に固定された検出ヘッド14XAと、レーザ光源16及び計測演算部42XAとを有する。なお、検出ヘッド14XAも2階建て構造である。
【0056】
検出ヘッド14XAにおいて、レーザ光源16から射出されてPBS18を透過したP偏光の計測光MXは、1/2波長板54を介して2階部分のPBS18Cに入射し、PBS18Cを透過したP偏光成分(計測光MX)の一部がビームスプリッタ70で反射され、ミラー72Aを介してローカル干渉光生成用のPBS18Bに入射する。ビームスプリッタ70を透過した第1の計測光MX1は、1対の偏角プリズム56を介してP偏光で−Y方向にPBS(偏光ビームスプリッタ)28に入射する。PBS18Cで反射されたS偏光の第2の計測光MX2は、ミラー72C、1対の偏角プリズム56、及び1/2波長板54Bを介して−Y方向にP偏光でPBS28に入射する。
【0057】
また、PBS18で反射されたS偏光の参照光RXは、ミラー52A等、1/2波長板54、及び偏角プリズム56を介して2階部分のPBS18Aに入射する。なお、実際には、PBS18から1/2波長板54までの計測光MXの光路長と、PBS18から1/2波長板54までの参照光RXの光路長とはほぼ等しくなるように、計測光MX及び参照光RXの光路は設定されている。PBS18Aで反射された参照光RXの一部がS偏光でPBS18Bに入射する。PBS18Bで−Y方向に同軸に合成された計測光MXの一部及び参照光RXの一部は、偏光板60を介してローカル干渉光として光電センサ40Lで受光される。光電センサ40Lの検出信号は計測演算部42XAに供給される。
【0058】
図7(A)に示すように、PBS18Aを透過したP偏光の参照光RXは、ZX面を45°傾斜させた2つの偏光ビームスプリッタ面(PBS面)68Aa,68Abを持つ光路変更部材68Aに入射する。参照光RXは、PBS面68Aa,68Abに対してはS偏光となるため、PBS面68Aa,68Abで反射された後、1階部分に移動して1/2波長板54を介して−Y方向にミラー72Bに入射する。図8に示すように、ミラー72Bで−X方向に反射された参照光RXは、ハーフミラー58Cで参照光RX1,RX2に分割され、参照光RX1は−Y方向にS偏光でPBS28に入射し、参照光RX2は、ミラー72Cを介して−Y方向にS偏光でPBS28に入射する。図7(B)、(C)に示すように、計測光MX1,MX2はハーフミラー58C及びミラー72Cの上方を通過してPBS28に入射する。
【0059】
図6において、PBS28に入射したP偏光の計測光MX1は、PBS面28aを透過して傾斜ミラー32XAの反射面で反射され、回折格子12Xの格子パターン12XaにX方向の入射角がリトロー角より角度βだけ大きい角度φ1で入射し、格子パターン12Xaからの+1次回折光DX1が発生する。図7(B)に示すように、回折光DX1(計測光MX1)の光路には図4(A)の楔形プリズム62と同じ楔形プリズム62A、1/4波長板30B、及び位相補正板31Bが配置されている。回折光DX1は、反射面の2階部分で反射されてPBS28にS偏光で入射する。
【0060】
図6に示すように、PBS面28aで反射された回折光DX1は、コーナキューブ29Aで反射され、PBS面28aで反射された後、図7(B)に示すように、傾斜ミラー32XAの反射面の1階部分に入射する。その反射面で反射された回折光DX1は、1/4波長板30B及び位相補正板31Bを介して格子パターン12XaにX方向の入射角φ1で入射し、格子パターン12Xaからの2回目の+1次回折光DX2が発生する。回折光DX2は傾斜ミラー32XAで反射されてPBS28にP偏光で入射し、図6に示すように、PBS面28aを透過した回折光DX2は、ミラー72D,72Eで反射され、1対のハービング66を介して光路合成部材68Bの1階部分に入射する。
【0061】
図7(B)に示すように、光路合成部材68Bは、光路変更部材68AのPBS面と平行な2つのPBS面68Ba,68Bbを有し、回折光DX2はPBS面68Ba,68Bbに対してはS偏光である。そのため、回折光DX2はPBS面68Ba,68Bbで反射されて2階部分で+Y方向に射出される。
同様に、図6において、PBS28に入射したP偏光の計測光MX2は、PBS面28aを透過して傾斜ミラー34XAの反射面で反射され、格子パターン12XaにX方向の入射角(−φ1)で入射し、格子パターン12Xaからの−1次回折光EX1が発生する。図7(C)に示すように、回折光EX1(計測光MX2)の光路には図4(A)の楔形プリズム62と同じ楔形プリズム62B、1/4波長板30B、及び位相補正板31Bが配置されている。回折光EX1は、反射面の2階部分で反射されてPBS28にS偏光で入射する。PBS面28aで反射された回折光EX1は、コーナキューブ29Bで反射され、PBS面28aで反射された後、傾斜ミラー34XAの反射面の1階部分に入射する。その反射面で反射された回折光EX1は、1/4波長板30B及び位相補正板31Bを介して格子パターン12XaにX方向の入射角(−φ1)で入射し、格子パターン12Xaからの2回目の−1次回折光EX2が発生する。回折光EX2は傾斜ミラー34XAで反射されてPBS28にP偏光で入射し、図6に示すように、PBS面28aを透過した回折光EX2は、ミラー72F,72Gで反射され、ハービング66を介して光路合成部材68Cの1階部分に入射する。図7(C)に示すように、回折光EX2は、光路合成部材68Bと同じ構成の光路合成部材68Cの2階部分で+Y方向に射出される。
【0062】
一方、図8において、PBS28に入射したS偏光の第1の参照光RX1は、PBS面28aで+X方向に反射された後、1/4波長板30Aを介してミラー74AのYZ面に平行な反射面で反射された後、1/4波長板30Aを介してP偏光でPBS面28aに入射する。PBS面28aを透過した参照光RX1は、コーナキューブ29Aで2階部分に反射された後(図7(B)参照)、1/4波長板30Aを介してミラー74Aで反射され、1/4波長板30Aを介してPBS面28aで反射される。反射された参照光RX1は、ミラー72H,72Eを介してP偏光で光路合成部材68BのPBS面に入射する。このPBS面で同軸に合成された回折光DX2及び参照光RX1は、偏光板60を介して干渉光として光電センサ40XAで受光される。
【0063】
また、PBS28に入射したS偏光の第2の参照光RX2は、PBS面28aで+X方向に反射された後、1/4波長板30Aを介してミラー74BのYZ面に平行な反射面で反射された後、1/4波長板30Aを介してP偏光でPBS面28aに入射する。PBS面28aを透過した参照光RX2は、コーナキューブ29Bで2階部分に反射された後(図7(C)参照)、1/4波長板30Aを介してミラー74Bで反射され、1/4波長板30Aを介してPBS面28aで反射される。反射された参照光RX2は、ミラー72I,72Gを介してP偏光で光路合成部材68CのPBS面に入射する。このPBS面で同軸に合成された回折光EX2及び参照光RX2は、偏光板60を介して干渉光として光電センサ40XBで受光される。
【0064】
また、PBS面28aからミラー74A,74Bの反射面までの光路長は、PBS面28aからそれぞれ傾斜ミラー32XA,34XAを介して回折格子12Xに至る光路長とほぼ同じ長さに設定されている。さらに、参照光RX1,RX2と回折光DX2,EX2とは、PBS28及びコーナキューブ29A,29B内でほぼ同じ光路を通過している。従って、参照光RX1,RX2と回折光DX2,EX2とは、ほぼ等価な光路を通過しているため、環境の僅かな温度変化及び/又は雰囲気の温度変化等があっても、高い計測精度が得られる。
【0065】
この際に、複数対の偏角プリズム56及びハービング66の調整によって、その回折光DX2,EX2及び参照光RX1,RX2から形成される干渉縞が例えば全体で1本以内になるように調整される。光電センサ40XA,40XBの検出信号は計測演算部42XAに供給される。計測演算部42XAでは、光電センサ40XA,40XBの検出信号及びレーザ光源16からの基準信号(又は光電センサ40Lからの検出信号)より、第1部材と第2部材64とのX方向及びZ方向の相対移動量を求めることができる。
【0066】
この際に、検出ヘッド14XAをコンパクトに配置できる。さらに、傾斜ミラー32XA,34XAから回折格子12Xの格子パターン面に向かう計測光のX方向の入射角を、回折格子12Xのリトロー角に対して角度βだけ変化した角度に設定しているため、格子パターン面の高さの変化に対して回折光の横シフト量が小さく、干渉光の強度変化が小さいとともに、回折格子12Xからの0次光の影響を低減して計測精度を向上できる。
【0067】
[第3実施例]
第3実施例につき図9〜図11を参照して説明する。図9は、第3実施例に係るエンコーダ装置を備えた露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、スキャニングステッパーよりなる走査露光型の投影露光装置である。露光装置EXは、投影光学系PL(投影ユニットPU)を備えており、以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面(ほぼ水平面に平行な面)内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向にY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向にX軸を取って説明する。
【0068】
露光装置EXは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示される照明系110、及び照明系110からの露光用の照明光(露光光)IL(例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波など)により照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRSTを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW(基板)に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWSTを含むステージ装置195、及び制御系等(図11参照)を備えている。
【0069】
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に真空吸着等により保持され、レチクルRのパターン面(下面)には、回路パターンなどが形成されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含む図11のレチクルステージ駆動系111によって、XY平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能である。
【0070】
レチクルステージRSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計116によって、移動鏡115(又は鏡面加工されたステージ端面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、図11のコンピュータよりなる主制御装置120に送られる。主制御装置120は、その計測値に基づいてレチクルステージ駆動系111を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0071】
図9において、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒140と、鏡筒140内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系110からの照明光ILによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介して照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの像が、ウエハ(半導体ウエハ)Wの一つのショット領域の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。
【0072】
また、露光装置EXは、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ191を保持する鏡筒140の下端部の周囲を取り囲むように、局所液浸装置108の一部を構成するノズルユニット132が設けられている。ノズルユニット132は、露光用の液体Lq(例えば純水)を供給するための供給管131A及び回収管131Bを介して、液体供給装置186及び液体回収装置189(図11参照)に接続されている。なお、液浸タイプの露光装置としない場合には、上記の局所液浸装置108は設けなくともよい。
【0073】
図9において、ウエハステージWSTは、不図示の複数の例えば真空予圧型空気静圧軸受(エアパッド)を介して、ベース盤112のXY面に平行な上面112aに非接触で支持されている。また、ウエハステージWSTは、例えば平面モータ、又は直交する2組のリニアモータを含むステージ駆動系124(図11参照)によってX方向及びY方向に駆動可能である。露光装置EXは、レチクルRのアライメントを行う空間像計測系(不図示)、ウエハWのアライメントを行うアライメント系AL(図11参照)、照射系90a及び受光系90bよりなりウエハWの表面の複数箇所のZ位置を計測する斜入射方式の多点のオートファオーカスセンサ90(図11参照)、及びウエハステージWSTの位置情報を計測するためのエンコーダ装置8Bを備えている。
【0074】
ウエハステージWSTは、X方向、Y方向に駆動されるステージ本体191と、ステージ本体191上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体191内に設けられて、ステージ本体191に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx方向、θy方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBの中央の上部には、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
【0075】
また、ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(又は保護部材)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きな円形の開口が形成された高平面度の平板状のプレート体128が設けられている。
なお、上述の局所液浸装置108を設けたいわゆる液浸型の露光装置の構成にあっては、さらにプレート体128は、図10のウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の平面図に示されるように、その円形の開口を囲む、外形(輪郭)が矩形の表面に撥液化処理が施されたプレート部(撥液板)128aと、プレート部128aを囲む周辺部128eとを有する。周辺部128eの上面に、プレート部128aをY方向に挟むようにX方向に細長い1対のY軸の第1及び第2の回折格子12Y1,12Y2が配置され、プレート部128aをX方向に挟むようにY方向に細長い1対のX軸の回折格子12X1,12X2が配置されている。X方向を周期方向とする反射型の回折格子12X1,12X2は図1の回折格子12Xと同じ構成であり、Y方向を周期方向とする回折格子12Y1,12Y2は回折格子12Xを90°回転した構成である。
【0076】
また、図9において、投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に連結部材(不図示)を介してXY面にほぼ平行な平板状の計測フレーム150が支持されている。計測フレーム150の底面に、投影光学系PLをX方向に挟むように、図5のX軸の検出ヘッド14Xと同じ構成の複数の検出ヘッド14Xが固定され、投影光学系PLをY方向に挟むように、図5のY軸の検出ヘッド14Yと同じ構成の複数の検出ヘッド14Yが固定されている(図10参照)。また、複数の検出ヘッド14X,14Yにレーザ光(計測光及び参照光)を供給するための複数のレーザ光源(不図示)も備えられている。なお、検出ヘッド14Xの代わりに図6の検出ヘッド14XAを使用してもよく、検出ヘッド14Yの代わりに検出ヘッド14XAを90°回転した構成の検出ヘッドを使用してもよい。
【0077】
図10において、投影光学系PLからの照明光でウエハWを露光している期間では、常に複数の検出ヘッド14Xのいずれか2つがX軸の回折格子12X1,12X2に対向し、複数の検出ヘッド14Yのいずれか2つがY軸の回折格子12Y1,12Y2に対向するように構成されている。各検出ヘッド14Xは、回折格子12X1又は12X2に計測光を照射し、回折格子12X1,12X2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する計測演算部42X(図11)に供給する。計測演算部42Xでは、図1の計測演算部42と同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのX方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Xに供給する。計測値切り替え部80Xでは、回折格子12X1,12X2に対向している検出ヘッド14Xに対応する計測演算部42Xから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0078】
また、各検出ヘッド14Yは、回折格子12Y1又は12Y2に計測光を照射し、回折格子12Y1,12Y2から発生する回折光と参照光との干渉光の検出信号を対応する計測演算部42Y(図11)に供給する。計測演算部42Yでは、計測演算部42Xと同様に、ウエハステージWSTと計測フレーム150とのY方向、Z方向の相対位置(相対移動量)を例えば0.5〜0.1nmの分解能で求めて計測値切り替え部80Yに供給する。計測値切り替え部80Yでは、回折格子12Y1,12Y2に対向している検出ヘッド14Yに対応する計測演算部42Yから供給される相対位置の情報を主制御装置120に供給する。
【0079】
複数の検出ヘッド14X、レーザ光源(不図示)、計測演算部42X、及びX軸の回折格子12X1,12X2からX軸のエンコーダ10XBが構成され、複数の検出ヘッド14Y、レーザ光源(不図示)、計測演算部42Y、及びY軸の回折格子12Y1,12Y2からY軸のエンコーダ10YBが構成されている。そして、X軸のエンコーダ10XB、Y軸のエンコーダ10YB、及び計測値切り替え部80X,80Yからエンコーダ装置8Bが構成されている。主制御装置120は、エンコーダ装置8Bから供給される相対位置の情報に基づいて、計測フレーム150(投影光学系PL)に対するウエハステージWSTのX方向、Y方向、Z方向の位置、及びθz方向の回転角等の情報を求め、この情報に基づいてステージ駆動系124を介してウエハステージWSTを駆動する。
【0080】
そして、露光装置EXの露光時には、先ずレチクルR及びウエハWのアライメントが行われる。その後、レチクルRへの照明光ILの照射を開始して、投影光学系PLを介してレチクルRのパターンの一部の像をウエハWの表面の一つのショット領域に投影しつつ、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを投影光学系PLの投影倍率βを速度比としてY方向に同期して移動(同期走査)する走査露光動作によって、そのショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。その後、ウエハステージWSTを介してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作と、上記の走査露光動作とを繰り返すことによって、液浸法でかつステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの全部のショット領域にレチクルRのパターン像が転写される。
【0081】
この際に、検出ヘッド14X,14Yにおいては、計測光及び回折光の光路長はレーザ干渉計に比べて短いため、検出ヘッド14X,14Yを用いた計測値に対する空気揺らぎの影響が非常に小さい。従って、本実施例のエンコーダ装置8Bは、レーザ干渉計と比較して、空気が揺らぐ程度の短い期間における計測安定性(短期安定性)が格段に優れているため、レチクルRのパターン像をウエハWに高精度に転写できる。さらに、検出ヘッド14X,14YはZ方向の高さを低くコンパクトに構成できるため、計測フレーム150の底面等に複数の検出ヘッド14X,14Yを容易に設置できる。
【0082】
なお、本実施例では、計測フレーム150側に検出ヘッド14X,14Y等を配置し、ウエハステージWST側に回折格子12X1,12Y1等を配置している。この他の構成として、計測フレーム150側に回折格子12X1,12Y1等を配置し、ウエハステージWST側に検出ヘッド14X,14Y等を配置してもよい。
また、上記の実施例の露光装置EX又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図12に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたレチクル(マスク)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置(露光方法)によりレチクルのパターンを基板(感光基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0083】
言い換えると、このデバイスの製造方法は、上記の実施例の露光装置EX(露光方法)を用いてレチクルのパターンの像を基板(ウエハ)に転写し、その基板を現像するリソグラフィ工程と、そのパターンの像が転写されたその基板をそのパターンの像に基づいて加工する工程(ステップ224のエッチング等)とを含んでいる。この際に、上記の実施例によれば、露光装置のウエハステージWSTの位置を高精度に制御できるため、電子デバイスを高精度に製造できる。
【0084】
なお、本発明は、上述の走査露光型の投影露光装置(スキャナ)の他に、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ等)にも適用できる。さらに、本発明は、液浸型露光装置以外のドライ露光型の露光装置にも同様に適用することができる。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグフィ工程を用いて製造する際の、露光装置にも適用することができる。
【0085】
また、上記の実施形態又は実施例のエンコーダ10X、エンコーダ装置8,8Bは、露光装置以外の検査装置又は計測装置等の検査又は加工対象の物体用の光学系を備えた光学装置において、その物体の相対移動量を計測するために適用することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
EX…露光装置、R…レチクル、W…ウエハ、MX1,MX2…計測光、RX1,RX2…参照光、10X…X軸のエンコーダ、12X…X軸の回折格子、14X…X軸の検出ヘッド、16…レーザ光源、27…1/2波長板、28A,28B…PBS(偏光ビームスプリッタ)、29A,29B…コーナキューブ、30…1/4波長板、32XA,32XB…+1次回折光用の傾斜ミラー、34XA,34XB…−1次回折光用の傾斜ミラー、40XA,40XB…光電センサ、42X…計測演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して少なくとも第1方向に相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置であって、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、前記第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、
互いに可干渉性のある第1計測光及び第2計測光を供給する光源部と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記光源部から供給された前記第1計測光を前記格子パターン面に向けて反射する第1反射部材と、
前記回折格子からの回折光と他の回折光又は前記第2計測光との干渉光を検出する第1光電検出器と、
前記第1光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の相対移動量を求める計測部と、
を備え、
前記第1反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1計測光の前記第1方向の入射角を、前記回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記第1反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1計測光の前記第1方向の入射角を、前記リトロー角に対して前記所定角度変化した角度に設定する角度調整部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記光源部から出力される前記第1計測光を前記回折格子の前記格子パターン面にほぼ平行にする光路折り曲げ部材を備え、
前記反射部材は、前記光路折り曲げ部材を介した前記第1計測光を前記格子パターン面に前記リトロー角で入射させる回転角に配置され、
前記光路折り曲げ部材は、前記第1計測光を、前記格子パターン面に平行な面内で前記第1方向に直交する第2方向に対して前記所定角度に対応した角度だけ傾斜させて反射することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記角度調整部材は、前記第1反射部材と前記格子パターン面との間に設けられて、前記第1計測光の前記格子パターン面に対する入射面内の振れ角を前記所定角度に応じた角度に設定する楔型プリズムであることを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記回折格子からの回折光を、前記格子パターン面に前記第1方向の入射角が前記リトロー角に対して変化した角度になるように反射する再反射部材を備え、
前記楔型プリズムの振れ角は前記所定角度の2倍であることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記第1計測光から第1部分計測光を分岐する第1分岐部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記第1分岐部材で分岐された前記第1部分計測光を前記格子パターン面に向けて反射する第2反射部材と、
前記回折格子からの前記第1部分計測光による回折光と他の回折光又は前記第2計測光との干渉光を検出する第2光電検出器と、を備え、
前記第2反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1部分計測光の前記第1方向の入射角を、前記リトロー角と符号が逆のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定し、
前記計測部は、前記第1光電検出器及び前記第2光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の相対移動量を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記第2計測光の光路長を前記第1計測光の光路長に合わせる光学系を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記第1計測光と前記第2計測光とを分離する分離面を有する分離光学部材と、
前記分離面に関して前記格子パターン面までの光路長がほぼ等しい反射面を有し、該反射面で前記第2計測光を反射する参照用反射部材と、を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記計測部は、前記第1及び第2光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の前記第1方向の相対移動量及び前記格子パターン面の法線方向の相対移動量を求めることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記第1計測光及び前記第2計測光は互いに周波数の異なるヘテロダイン光であり、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、前記第1方向に直交する第2方向を周期方向とする他の格子パターンを有する反射型の他の回折格子と、
前記第2計測光から第1参照光を分岐する第2分岐部材と、
前記第1計測光から第2参照光を分岐する第3分岐部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記第2計測光を前記他の格子パターン面に向けて反射する第3反射部材と、
前記他の回折格子からの前記第2計測光による回折光と前記第2参照光との干渉光を検出する第3光電検出器と、を備え、
前記第1光電検出器は、前記回折格子からの回折光と前記第1参照光との干渉光を検出し、
前記計測部は、前記第3光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の前記第2方向の相対移動量を求めることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記第2分岐部材で分岐される前記第2計測光の前記第1参照光に対する光量比、及び前記第3分岐部材で分岐される前記第1計測光の前記第2参照光に対する光量比を調整する第1及び第2調整部材を備えることを特徴とする請求項10に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
対象物用の光学系と、を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項13】
パターンを被露光体に露光する露光装置であって、
フレームと、
前記被露光体を支持するとともに前記フレームに対して少なくとも前記第1方向に相対移動可能なステージと、
前記第1方向への前記ステージの相対移動量を計測するための請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項14】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程で、請求項13に記載の露光装置を用いて物体を露光することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項1】
第1部材に対して少なくとも第1方向に相対移動する第2部材の相対移動量を計測するエンコーダ装置であって、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、前記第1方向を周期方向とする格子パターンを有する反射型の回折格子と、
互いに可干渉性のある第1計測光及び第2計測光を供給する光源部と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記光源部から供給された前記第1計測光を前記格子パターン面に向けて反射する第1反射部材と、
前記回折格子からの回折光と他の回折光又は前記第2計測光との干渉光を検出する第1光電検出器と、
前記第1光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の相対移動量を求める計測部と、
を備え、
前記第1反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1計測光の前記第1方向の入射角を、前記回折格子のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記第1反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1計測光の前記第1方向の入射角を、前記リトロー角に対して前記所定角度変化した角度に設定する角度調整部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記光源部から出力される前記第1計測光を前記回折格子の前記格子パターン面にほぼ平行にする光路折り曲げ部材を備え、
前記反射部材は、前記光路折り曲げ部材を介した前記第1計測光を前記格子パターン面に前記リトロー角で入射させる回転角に配置され、
前記光路折り曲げ部材は、前記第1計測光を、前記格子パターン面に平行な面内で前記第1方向に直交する第2方向に対して前記所定角度に対応した角度だけ傾斜させて反射することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記角度調整部材は、前記第1反射部材と前記格子パターン面との間に設けられて、前記第1計測光の前記格子パターン面に対する入射面内の振れ角を前記所定角度に応じた角度に設定する楔型プリズムであることを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記回折格子からの回折光を、前記格子パターン面に前記第1方向の入射角が前記リトロー角に対して変化した角度になるように反射する再反射部材を備え、
前記楔型プリズムの振れ角は前記所定角度の2倍であることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記第1計測光から第1部分計測光を分岐する第1分岐部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記第1分岐部材で分岐された前記第1部分計測光を前記格子パターン面に向けて反射する第2反射部材と、
前記回折格子からの前記第1部分計測光による回折光と他の回折光又は前記第2計測光との干渉光を検出する第2光電検出器と、を備え、
前記第2反射部材から前記格子パターン面に向かう前記第1部分計測光の前記第1方向の入射角を、前記リトロー角と符号が逆のリトロー角に対して所定角度変化した角度に設定し、
前記計測部は、前記第1光電検出器及び前記第2光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の相対移動量を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記第2計測光の光路長を前記第1計測光の光路長に合わせる光学系を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記第1計測光と前記第2計測光とを分離する分離面を有する分離光学部材と、
前記分離面に関して前記格子パターン面までの光路長がほぼ等しい反射面を有し、該反射面で前記第2計測光を反射する参照用反射部材と、を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記計測部は、前記第1及び第2光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の前記第1方向の相対移動量及び前記格子パターン面の法線方向の相対移動量を求めることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記第1計測光及び前記第2計測光は互いに周波数の異なるヘテロダイン光であり、
前記第1部材及び前記第2部材の一方に設けられ、前記第1方向に直交する第2方向を周期方向とする他の格子パターンを有する反射型の他の回折格子と、
前記第2計測光から第1参照光を分岐する第2分岐部材と、
前記第1計測光から第2参照光を分岐する第3分岐部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の他方に設けられ、前記第2計測光を前記他の格子パターン面に向けて反射する第3反射部材と、
前記他の回折格子からの前記第2計測光による回折光と前記第2参照光との干渉光を検出する第3光電検出器と、を備え、
前記第1光電検出器は、前記回折格子からの回折光と前記第1参照光との干渉光を検出し、
前記計測部は、前記第3光電検出器の検出信号を用いて前記第2部材の前記第2方向の相対移動量を求めることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記第2分岐部材で分岐される前記第2計測光の前記第1参照光に対する光量比、及び前記第3分岐部材で分岐される前記第1計測光の前記第2参照光に対する光量比を調整する第1及び第2調整部材を備えることを特徴とする請求項10に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
対象物用の光学系と、を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項13】
パターンを被露光体に露光する露光装置であって、
フレームと、
前記被露光体を支持するとともに前記フレームに対して少なくとも前記第1方向に相対移動可能なステージと、
前記第1方向への前記ステージの相対移動量を計測するための請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項14】
リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程で、請求項13に記載の露光装置を用いて物体を露光することを特徴とするデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−26272(P2013−26272A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156740(P2011−156740)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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