説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】ハイブリッド車両において、燃料消費効率の悪化などを抑制しつつ、エバポエミッションの悪化を適切に抑制する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、エンジン及びモータジェネレータを駆動源として有するハイブリッド車両に好適に利用される。具体的には、制御手段は、エンジンの停止中において、蒸発燃料のベーパ濃度が所定値以上となった際に、パージ通路より蒸発燃料のみをエンジンに供給して燃焼させるパージ処理を実行する。これにより、蒸発燃料を燃焼させる際にインジェクタ(燃料噴射弁)からも燃料を供給する必要がないため、燃料が無駄に消費されてしまうことを抑制することができる。よって、燃料消費効率の低下を抑制しつつ、エバポエミッションの悪化を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両において、蒸発燃料(エバポガス)をパージする技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が、特許文献1及び2に記載されている。特許文献1には、EV走行中においてエンジン停止期間が所定期間を超えた際に、エンジンを始動することが記載されている。こうすることで、蒸発燃料を燃焼させて、エミッション(エバポエミッション)の低減を図っている。また、特許文献2には、エンジンの始動開始後において、バッテリの充電完了後もエンジンの駆動を継続して、発電を継続しつつ、蒸発燃料のパージ処理を行うことが記載されている。その他にも、本発明に関連のある技術が特許文献3に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−210536号公報
【特許文献2】特開平10−2240号公報
【特許文献3】特開平8−308019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1乃至3に記載された技術では、蒸発燃料を処理するために、エンジンの駆動を無駄に実施してしまう傾向にあった。また、基本的には、蒸発燃料を燃焼させる際にインジェクタ(燃料噴射弁)からも別途燃料を噴射していたため、燃料が無駄に消費されてしまう傾向にあった。
【0005】
ところで、近年、家庭用電源などの外部電源から充電した電力を動力として使用するプラグインハイブリッド車両が開発されている。ここで、このようなプラグインハイブリッド車両において蒸発燃料をパージする場合には、以下のような問題・課題が想定される。プラグインハイブリッド車両では、基本的には、EV走行性能の拡大を目的としているため、エンジン起動頻度が少ないと言える。そのため、蒸発燃料を十分にパージ処理することができなくなり、エバポエミッションの悪化が発生するおそれがある。一方、これを解決するためにパージ処理のためだけにエンジンを起動すると、EV走行性能の低下を招くと共に、燃料消費効率の悪化なども招くことが考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両において、燃料消費効率の悪化などを抑制しつつ、エバポエミッションの悪化を適切に抑制することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、エンジン及びモータジェネレータを駆動源として有すると共に、燃料タンクと、前記燃料タンク内の蒸発燃料を蓄えるキャニスタと、前記蒸発燃料を吸気系にパージするパージ通路と、を有するハイブリッド車両に適用されるハイブリッド車両の制御装置は、前記エンジンの停止中において、前記蒸発燃料のベーパ濃度が所定値以上となった際に、前記パージ通路より前記蒸発燃料のみを前記エンジンに供給して燃焼させる制御を実行する制御手段を備える。
【0008】
上記のハイブリッド車両の制御装置は、エンジン及びモータジェネレータを駆動源として有するハイブリッド車両に好適に利用される。具体的には、制御手段は、エンジンの停止中において、蒸発燃料のベーパ濃度が所定値以上となった際に、パージ通路を介して蒸発燃料のみをエンジンに供給して燃焼させるパージ処理を実行する。これにより、蒸発燃料を燃焼させる際にインジェクタ(燃料噴射弁)からも燃料を供給する必要がないため、燃料が無駄に消費されてしまうことを抑制することができる。よって、上記のハイブリッド車両の制御装置によれば、燃料消費効率の低下を抑制しつつ、エバポエミッションの悪化を抑制することが可能となる。
【0009】
上記のハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行によって発生されたエネルギーを、前記モータジェネレータによって回生させる制御を更に行う。これにより、蒸発燃料を無駄に消費することなく、有効活用することが可能となる。また、蒸発燃料の燃焼に伴う騒音や振動やトルク変動などの発生を抑制することが可能となる。
【0010】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、前記燃焼状態に基づいて、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を実行/中止する。これにより、蒸発燃料を燃焼させた場合のリーン燃焼によるエミッションの悪化などを、未然に回避することが可能となる。
【0011】
上記のハイブリッド車両の制御装置において好適には、前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/Fに基づいて前記燃焼状態を推定する。この場合、前記制御手段は、前記A/Fが所定値以上リーンである場合には、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を中止する。
【0012】
また、上記のハイブリッド車両の制御装置において好適には、前記制御手段は、前記ベーパ濃度に基づいて前記燃焼状態を推定する。この場合、前記制御手段は、前記ベーパ濃度が所定値以下である場合には、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を中止する。これにより、蒸発燃料を実際に燃焼させる前において、パージ処理を中止することができるため、エミッションの悪化を効果的に回避することが可能となる。
【0013】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、前記燃焼状態に基づいて、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を設定する。
【0014】
上記のハイブリッド車両の制御装置において好適には、前記蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/Fに基づいて前記燃焼状態を推定する。この場合、前記A/Fがリッチ側にある場合には、前記A/Fがリーン側にある場合よりも、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を多く設定する。これにより、A/Fがリッチ側にある場合(つまりベーパ濃度が濃い場合)には、ベーパ処理を短時間で終了させることができると共に、燃焼A/Fのリッチ化によるエミッションの悪化を防止することができる。一方、A/Fがリーン側である場合(つまりベーパ濃度が薄い場合)には、蒸発燃料を燃焼させる気筒数を少なくすることで、安定した燃焼を行わせることができると共に、失火などによるエミッションの悪化を抑制することができる。
【0015】
また、上記のハイブリッド車両の制御装置において好適には、前記制御手段は、前記ベーパ濃度に基づいて前記燃焼状態を推定する。この場合、前記制御手段は、前記ベーパ濃度が濃い場合には、前記ベーパ濃度が薄い場合よりも、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を多く設定する。
【0016】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記エンジンの排気通路上に配設された触媒の温度が所定範囲内にあるか否かによって、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行/非実行を決定する。この場合、触媒の温度が所定範囲内にある場合のみ、パージ処理を実行する。つまり、触媒の温度が所定範囲内にない場合にはパージ処理を実行しない。これにより、蒸発燃料を燃焼した際のエミッションを適切に低減することが可能となる。
【0017】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の一態様では、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行要求があった場合に、電気加熱式に構成された触媒に対して通電を行う通電手段を更に備える。電気加熱式に構成されていない触媒を用いた場合には、例えば、エンジンを始動させて、排気ガスによって当該触媒が暖機されるまでパージ処理の実行を待機する必要があると言える。これに対して、上記のような電気加熱式に構成された触媒を用いた場合には、通電することで触媒を早期に暖機することができるので、電気加熱式に構成されていない触媒を用いた場合と比較して、パージ処理を早期に実行することが可能となる。
【0018】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記ハイブリッド車両が減速回生中にある際において、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を実行すると共に、要求された制動力が前記ハイブリッド車両から発生されるように、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行によって発生されたエネルギーを前記モータジェネレータによって回生させる回生エネルギー量を調整する。これにより、通常の減速時と同等の減速感を適切に実現することが可能となる。また、減速回生時にパージ処理を実行するため、少ない空気量の領域にて蒸発燃料のみで燃焼室内の混合気を可燃範囲に維持することができ、蒸発燃料のみで安定した燃焼が実現できる。
【0019】
好適には、上記のハイブリッド車両の制御装置は、外部電源から充電した電力を動力として使用するプラグインハイブリッド車両に適用される。プラグインハイブリッド車両ではエンジン起動頻度が少ないため、上記のハイブリッド車両の制御装置をプラグインハイブリッド車両に対して適用することは有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0021】
[全体構成]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両の構成を説明する。図1は、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両50の要部の構成を示した概念図である。
【0022】
プラグインハイブリッド車両50は、主に、ハイブリッドECU1と、エンジンECU2と、モータECU3と、エンジン(内燃機関)4と、モータ5と、減速機6と、駆動輪7と、動力分配機構8と、ジェネレータ9と、インバータ10と、バッテリ11と、外部充電装置12と、切り替えリレー13、19と、排気通路14と、電気加熱式触媒15と、燃料タンク20と、キャニスタ21と、パージ通路22と、パージバルブ23と、を備える。プラグインハイブリッド車両50は、家庭用電源などの外部電源から充電した電力を動力として使用するハイブリッド車両である。なお、以下では、プラグインハイブリッド車両50を単に「車両50」とも表記する。
【0023】
エンジン4は、複数の気筒を備え、気筒内で空気と燃料との混合気を燃焼させることによって動力を発生させる。エンジン4は、エンジンECU2との間で、制御信号を送受信することにより制御が行われる。動力分配機構8は、差動作用を生じるように構成されており、エンジン4より伝達された動力をジェネレータ9とモータ5の回転軸とに分配する。なお、エンジン4は、吸気弁及び排気弁(不図示)を備えると共に、これらの吸気弁及び排気弁を任意に稼動/休止させることが可能な機構(不図示)を備える。
【0024】
ジェネレータ9は、主に、動力分配機構8より分配された動力が伝達されて発電を行う。また、ジェネレータ9は、制動時(減速時)に回生運転を行うことで発電する。インバータ10は、モータECU3により制御され、モータ5、ジェネレータ9、バッテリ11間で電力の授受を行う。基本的には、インバータ10は、ジェネレータ9で発電された電力のモータ5やバッテリ11への印加、或いはバッテリ11に充電された電力のモータ5への印加を選択的に行う。モータ5は、インバータ10を介して供給される電力により車両50における駆動力を発生する。減速機6は、モータ5及び/又はエンジン4から伝達された動力を減速して、当該減速した動力をドライブシャフト7aを介して駆動輪7に伝達する。なお、モータ5及びジェネレータ9は、所謂モータジェネレータに相当する。
【0025】
バッテリ11は、モータ5や車両50内に設けられた種々の電気機器(不図示)を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。具体的には、バッテリ4は、外部充電装置12が外部電源(不図示)に接続された状態で、当該外部電源から電力の供給を受けることによって充電される。バッテリ11は、ハイブリッドECU2との間で、制御信号を送受信することにより制御が行われる。例えば、ハイブリッドECU2は、バッテリ11の充電量(SOC)を検出する。外部充電装置12は、外部電源からの電力をバッテリ11に充電可能に構成されると共に、外部電源に接続されているか否かを判定する機能を備える。例えば、外部充電装置12は、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)が可能に構成されている。
【0026】
エンジン4での燃焼によって発生した排気ガスは、図1中の破線矢印で示すように、排気通路14を流れていく。排気通路14には、上流側から順に、A/F(空燃比)を検出するA/Fセンサ17、排気ガスを浄化可能に構成された電気加熱式触媒(以下、「EHC(Electrically Heated Catalyst)」と呼ぶ。)15、排気ガス中の酸素濃度を検出するOセンサ18が設けられている。具体的には、EHC15は、排気ガス中のNOxやSOxなどを浄化可能な触媒、及び通電されることで触媒を加熱可能な電気ヒータなどを備える。例えば、EHC15は、通電されることによって、排気ガスに対する最適な浄化性能が得られる温度まで昇温される。また、EHC15には、EHC15の温度を検出する温度センサ16が設けられている。なお、温度センサ16、A/Fセンサ17、及びOセンサ18が検出した検出信号は、エンジンECU2に供給される。
【0027】
EHC15は、切り替えリレー13及び切り替えリレー19を切り替えることで通電が制御される。具体的には、切り替えリレー13、19は、EHC15への通電を、バッテリ11から行うのか、或いは外部充電装置12から行うのか(言い換えると外部電源から行うのか)を切り替える。この場合、切り替えリレー13、19は、ハイブリッドECU1から供給される制御信号によって制御される。基本的には、ハイブリッドECU1は、車両50の走行中において(詳しくは、エンジン4からの排気ガスを浄化すべき状況において)、EHC15によって排気ガスを適切に浄化させるために、バッテリ11からEHC15へ通電が行われるように、切り替えリレー13、19を設定する。つまり、このような状況においては、バッテリ11からの電力をEHC15へ通電してEHC15を加熱することによって、EHC15によって排気ガスを浄化させる。これに対して、ハイブリッドECU1は、車両50が停車中で、且つ外部充電装置12が外部電源に接続されている状況において、EHC15の異常判定を行うために、外部充電装置12からEHC15へ通電が行われるように切り替えリレー13、19を設定する。つまり、このような状況においては、外部電源からの電力をEHC15に対して直接通電することで、EHC15の異常判定を行う。
【0028】
燃料タンク20には燃料が貯蔵されており、キャニスタ21には燃料タンク20内の蒸発燃料(エバポガス)が吸着される。詳しくは、キャニスタ21内の吸着材に蒸発燃料が吸着される。そして、キャニスタ21内の蒸発燃料は、パージバルブ23を開にした場合に、パージ通路22を通過して吸気系(詳しくは吸気通路)にパージされる。より具体的には、キャニスタ21にはパージ通路22の他に図示しない大気通路が接続されており、大気圧と吸気系の圧力との差圧を利用することによって(つまり吸気系の負圧を利用することによって)、キャニスタ21に吸着された蒸発燃料が吸気系にパージされることとなる。なお、パージバルブ23は、エンジンECU2から供給される制御信号によって開閉が制御される。
【0029】
ハイブリッドECU1、エンジンECU2、及びモータECU3(以下では、これらをまとめて単に「ECU30」とも呼ぶ。)は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両50内の各構成要素に対して制御を行う電子制御ユニットである。具体的には、ECU30は、信号を送受信することによって協調して制御を行う。本実施形態では、ECU30は、主に、キャニスタ21内の蒸発燃料をパージしてエンジン4で燃焼させるための処理(以下、「パージ処理」と呼ぶ。)を実行する。なお、ECU30は、本発明におけるハイブリッド車両の制御装置に相当し、制御手段及び通電手段として機能する。
【0030】
[パージ処理方法]
以下で、ECU30が行うパージ処理方法の実施例について説明する。
【0031】
(第1実施例)
第1実施例では、ECU30は、エンジン4の停止中(つまりEV走行中)において、蒸発燃料のベーパ濃度が所定値以上となった際に、パージ通路22より蒸発燃料のみをエンジン4に供給して燃焼させる制御(パージ処理)を実行する。具体的には、ECU30は、減速回生時の燃料カット(F/C)中に、このようなパージ処理を実行すると共に、蒸発燃料の燃焼によって発生されたエネルギーをジェネレータ9によって回生させる制御を行う。詳しくは、ECU30は、要求された制動力が車両50から適切に発生されるように、ジェネレータ9における回生エネルギー量を調整する。つまり、蒸発燃料の燃焼によって発生したトルク分だけジェネレータ9の回生量を増大することで、バッテリ11にエネルギーとして回収すると共に、通常の回生運転時と同等の制動力(回生ブレーキ)を確保する。即ち、通常の減速時と同等の減速感が得られるように、回生エネルギー量を調整する。
【0032】
このような第1実施例に係る制御によれば、減速回生時にパージ処理を実行するため、少ない空気量の領域にて蒸発燃料のみで燃焼室内の混合気を可燃範囲に維持することができ、蒸発燃料のみで安定した燃焼が実現できる。また、減速回生時にパージ処理を実行することで、蒸発燃料の燃焼により発生したトルクを回生エネルギーとしてバッテリ11に回収することができ、蒸発燃料を無駄に消費することなく、有効活用することが可能となる。更に、蒸発燃料による発生トルクを回生制御のみで吸収することができるので、走行制御へ及ぼす外乱の未然防止が可能となる。つまり、走行制御中に余剰トルクを加算することでの電池パワーの見直しや充放電制御の見直し等、走行に違和感を与えないための追加制御を行う必要がないと言える。
【0033】
以上より、第1実施例によれば、キャニスタ21内のベーパ濃度(蒸発燃料の濃度)を低い状態に維持することができ、エバポエミッションの悪化を適切に抑制することが可能となる。また、パージ処理のためにエンジン4を起動して燃料を消費することがないため、即ち蒸発燃料を燃焼させる際にインジェクタ(燃料噴射弁)からも燃料を供給する必要がないため、車両50に搭載した燃料や電気エネルギーを車両50の走行のためにのみ用いることでき、エネルギー効率を最大限発揮することが可能となる。つまり、燃料消費効率の低下を抑制することができると共に、EV走行性能の低下を抑制することができる。
【0034】
次に、図2を参照して、第1実施例に係るパージ処理方法について具体的に説明する。図2は、第1実施例に係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ECU30によって実行される。
【0035】
まず、ステップS101では、ECU30は、エンジン4やモータ5などの状態に基づいて、EV運転中であるか否かを判定する。EV運転中である場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進み、EV運転中でない場合(ステップS101;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0036】
ステップS102では、ECU30は、ベーパ濃度が所定値以上であるか否かを判定する。具体的には、ステップS102では、キャニスタ21内の蒸発燃料が外部に放出される可能性があるか否かの判定を行っている。この場合、当該判定に用いる所定値は、キャニスタ21内の蒸発燃料が外部に放出される可能性があるベーパ濃度に設定される。なお、ベーパ濃度は、センサによって直接検出された値を用いても良いし、燃料タンク20内の圧力などから推定した値を用いても良い。
【0037】
ベーパ濃度が所定値以上である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。この場合には、蒸発燃料が外部に放出される可能性があると言える。したがって、ステップS103以降の処理で、蒸発燃料をパージして燃焼するための処理が実行される。これに対して、ベーパ濃度が所定値未満である場合(ステップS102;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、蒸発燃料が外部に放出される可能性は低いので、蒸発燃料をパージしない。
【0038】
ステップS103では、ECU30は、減速回生中であるか否かを判定する。前述したように、第1実施例では、減速回生中にパージ処理を行うこととしたため、ステップS103のような判定を行っている。減速回生中である場合(ステップS103;Yes)、処理はステップS104に進み、減速回生中でない場合(ステップS103;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0039】
ステップS104では、ECU30は、パージ処理を実行する。具体的には、ECU30は、パージバルブ23を開にすると共に、圧縮タイミングにて点火する。つまり、パージバルブ23を開にすることで、キャニスタ21内の蒸発燃料をパージ通路22を介して吸気系にパージする。そして、圧縮タイミングにて点火することで、パージされた蒸発燃料のみをエンジン4で燃焼させる。以上の処理が終了すると、処理はステップS105に進む。
【0040】
ステップS105では、ECU30は、失火が発生していないか否かを判定する。つまり、ステップS105では、ステップS104でパージされた蒸発燃料が適切に燃焼されたか否かを判定している。例えば、ECU30は、排気ガスのA/F(A/Fセンサ17によって取得される値)に基づいて失火を判定する。失火が発生していない場合(ステップS105;Yes)、処理はステップS107に進む。これに対して、失火が発生している場合(ステップS105;No)、処理はステップS106に進む。この場合には、蒸発燃料が燃焼されずにそのまま放出されていると言えるため、エバホエミッションの悪化が発生し得る。したがって、ECU30は、エバホエミッションの悪化を抑制するために、パージ処理を中止する(ステップS106)。具体的には、ECU30は、パージバルブ23を開から閉にすると共に、点火カットする。そして、処理は当該フローを抜ける。
【0041】
一方、ステップS107では、ECU30は、車両50に付与されている減速トルクが所定値未満であるか否かを判定する。具体的には、ステップS107では、適切な減速感が得られるような減速トルクが発生しているか否かの判定を行っている。例えば、ECU30は、車両50に最終的に付与されているトルク(正のトルクと負のトルクとの収支としてのトルク)が、負の値であるか否かを判定する。減速トルクが所定値未満である場合(ステップS107;Yes)、処理はステップS108に進む。この場合には、適切な減速感が得られるような減速トルクが発生していないものと考えられる。したがって、ECU30は、発電量を増大させる制御を行う(ステップS108)。つまり、ECU30は、通常の回生運転時と同等の制動力(回生ブレーキ)が得られるように、ジェネレータ9の回生量を増大させる制御を行う。具体的には、蒸発燃料の燃焼によって発生したトルク分だけジェネレータ9の回生量を増大する。そして、処理はステップS102に戻り、前述したようなステップS102以降の処理を繰り返し実行する。一方、減速トルクが所定値以上である場合(ステップS107;No)、発電量を増大させる制御を行うことなく、処理はステップS102に戻る。そして、前述したようなステップS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0042】
以上の第1実施例に係る処理によれば、ベーパ濃度を低い状態に維持することができ、エバポエミッションの悪化を適切に抑制することが可能となる。また、パージ処理のためにエンジン4を起動して燃料を消費することがないため、即ち蒸発燃料を燃焼させる際にインジェクタからも燃料を供給する必要がないため、車両50に搭載した燃料や電気エネルギーを車両50の走行のためにのみ用いることでき、エネルギー効率を最大限発揮することが可能となる。つまり、燃料消費効率の低下を抑制することができると共に、EV走行性能の低下を抑制することができる。更に、減速回生時にパージ処理を実行することで、蒸発燃料の燃焼により発生したトルクを回生エネルギーとしてバッテリ11に回収することができ、蒸発燃料を無駄に消費することなく、有効活用することが可能となる。
【0043】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係るパージ処理方法について説明する。第2実施例でも、第1実施例と同様に、減速回生時にパージ処理を実行すると共に、蒸発燃料の燃焼によって発生されたエネルギーをジェネレータ9によって回生させる制御を行う。しかしながら、第2実施例では、蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、当該燃焼状態に基づいて蒸発燃料を燃焼させる制御を実行/中止する点で、第1実施例と異なる。具体的には、第2実施例では、蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/F(燃焼A/F)に基づいて燃焼状態を推定し、当該A/Fが所定値以上リーンである場合には、蒸発燃料を燃焼させる制御を中止する。つまり、燃焼A/Fより蒸発燃料における燃焼状態を推定し、A/Fが所定値以上リーンである場合にはベーパ濃度が低いとして、パージ処理を中止する。これにより、リーン燃焼によるエミッションの悪化(例えば未燃分やNOxの排出など)を未然に回避することが可能となる。
【0044】
図3は、第2実施例に係る処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU30によって実行される。なお、ステップS201〜S208の処理は、前述したステップS101〜S108の処理(図2参照)と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS209の処理のみ説明する。
【0045】
ステップS209の処理は、ステップS205の処理後に実行される。つまり、点火によって失火が発生していない場合(ステップS205;Yes)に実行される。ステップS209では、ECU30は、排気ガスのA/F(A/Fセンサ17によって取得される値)が所定値以上リーンであるか否かを判定する。つまり、ステップS209では、リーン燃焼によるエミッションの悪化が発生し得る状況であるか否かを判定している。A/Fが所定値以上リーンである場合(ステップS209;Yes)、処理はステップS206に進む。この場合には、エミッションの悪化を未然に回避するために、ECU30は、パージ処理を中止する(ステップS206)。そして、処理は当該フローを抜ける。これに対して、A/Fが所定値以上リーンでない場合(ステップS209;No)、処理はステップS207に進む。この場合には、エミッションの悪化が発生する可能性は低いと考えられるため、ECU30は、パージ処理を中止せずに、ステップS207以降の処理を行う。
【0046】
以上の第2実施例に係る処理によれば、蒸発燃料を燃焼させた場合のリーン燃焼によるエミッションの悪化を未然に回避することが可能となる。
【0047】
なお、上記では、蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/Fに基づいて燃焼状態を推定する例を示したが、A/Fの代わりに、ベーパ濃度に基づいて燃焼状態を推定しても良い。こうするのは、エンジン回転数やスロットル開度などとベーパ濃度とに基づいて、蒸発燃料を燃焼した場合のA/Fなどを推定することができるからである。この場合には、ベーパ濃度が所定値(例えばステップS202の判定で用いる所定値よりも大きな値であり、蒸発燃料を燃焼した場合にリーン燃焼となるようなベーパ濃度である)以下である場合に、蒸発燃料を燃焼させる制御を中止することができる。これにより、蒸発燃料を実際に燃焼させる前において、当該制御の実行を中止することができるため、リーン燃焼によるエミッションの悪化を効果的に回避することが可能となる。
【0048】
(第3実施例)
次に、第3実施例に係るパージ処理方法について説明する。第3実施例でも、第1実施例などと同様に、減速回生時にパージ処理を実行する。しかしながら、第3実施例では、電気加熱式触媒(EHC)15の温度が所定範囲内にあるか否かによって、蒸発燃料を燃焼させる制御の実行/非実行を決定する点で、第1及び第2実施例と異なる。具体的には、第3実施例では、EHC15の温度が所定範囲内にある場合(つまりEHC15が活性している場合)のみ、パージ処理を実行し、EHC15の温度が所定範囲内にない場合(つまりEHC15が活性していない場合)には、パージ処理を実行しない。これにより、蒸発燃料を燃焼した際のエミッションを適切に低減することが可能となる。
【0049】
図4は、第3実施例に係る処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU30によって実行される。なお、ステップS301〜S308の処理は、前述したステップS101〜S108の処理(図2参照)と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS309の処理のみ説明する。
【0050】
ステップS309の処理は、ステップS303の処理後に実行される。つまり、減速回生中である場合(ステップS303;Yes)に実行される。ステップS309では、ECU30は、EHC15の温度(温度センサ16によって取得される温度)が所定範囲内であるか否かを判定する。つまり、EHC15が活性しているか否かを判定する。なお、EHC15の温度の判定に用いる所定範囲は、EHC15における最適な浄化性能が得られる温度範囲に相当する。
【0051】
EHC15の温度が所定範囲内にある場合(ステップS309;Yes)、処理はステップS304に進む。この場合には、蒸発燃料を燃焼した際に発生する排気ガスをEHC15によって適切に浄化させることができるため、ECU30は、パージ処理を実行する(ステップS304)。これに対して、EHC15の温度が所定範囲内にない場合(ステップS309;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、蒸発燃料を燃焼した際に発生する排気ガスをEHC15によって適切に浄化させることができない可能性があるため、ECU30は、パージ処理を実行しない。つまり、蒸発燃料を燃焼した際のエミッションの悪化を抑制するために、パージ処理を実行しない。
【0052】
以上の第3実施例に係る処理によれば、蒸発燃料を燃焼した際のエミッションを適切に低減することが可能となる。言い換えると、蒸発燃料を燃焼した際のエミッションの悪化を抑制することが可能となる。
【0053】
なお、EHC15を通電する制御を予め行ってから、パージ処理を実行することが望ましい。つまり、パージ処理の要求があった場合において、パージ処理を実行する前に、EHC15を通電することが望ましい。このようにEHC15を通電することで、EHC15を早期に暖機することができる。また、このようにEHC15を通電する場合にも、通電によりEHC15の温度が所定範囲内になった際(つまりEHC15が活性した際)に、パージ処理を実行する。言い換えると、EHC15の温度が所定範囲内になっていない場合(つまりEHC15が活性していない場合)には、EHC15への通電を継続して、パージ処理の実行を延期する。なお、電気加熱式に構成されていない触媒を用いた場合には、例えば、エンジンをわざわざ始動させて排気ガスによって当該触媒が暖機されるまでパージ処理の実行を待機する必要がある。これに対して、EHC15を用いた場合には、通電することでEHC15を早期に暖機することができるので、電気加熱式に構成されていない触媒を用いた場合と比較して、パージ処理を早期に実行することが可能となる。
【0054】
更に、このようなEHC15への通電は、パージ処理中も継続することが望ましい。これにより、パージ処理中に、EHC15の活性状態を維持することができる。
【0055】
なお、第3実施例によれば、EHC15の温度が所定範囲内である場合には蒸発燃料を燃焼した際の排気ガスを適切に浄化することができるので、排気ガスのA/Fが所定値以上リーンであっても、リーン燃焼によるエミッションの悪化を適切に抑制することができると言える。つまり、EHC15の温度が所定範囲内である場合には、燃焼A/Fが所定値以上リーンであっても(言い換えるとベーパ濃度が比較的低くても)、前述した第2実施例で示したようにパージ処理を中止する必要はないと言える。
【0056】
(第4実施例)
次に、第4実施例に係るパージ処理方法について説明する。第4実施例でも、第1実施例などと同様に、減速回生時にパージ処理を実行する。しかしながら、第4実施例では、蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、当該燃焼状態に基づいて蒸発燃料を燃焼させる気筒数(以下、「燃焼実行気筒数」と呼ぶ。)を設定する点で、前述した第1乃至第3実施例と異なる。具体的には、第4実施例では、ベーパ濃度に基づいて燃焼状態を推定し、当該ベーパ濃度が濃い場合には、ベーパ濃度が薄い場合よりも、燃焼実行気筒数を多く設定する。これにより、ベーパ処理を短時間で終了させることができると共に、燃焼A/Fのリッチ化によるエミッションの悪化を防止することができる。一方、ベーパ濃度が薄い場合には、ベーパ濃度が濃い場合よりも、燃焼実行気筒数を少なく設定する。これにより、安定した燃焼を行わせることができると共に、失火などによるエミッションの悪化を抑制することができる。
【0057】
図5は、第4実施例に係る処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU30によって実行される。なお、ステップS401〜S408の処理は、前述したステップS101〜S108の処理(図2参照)と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS409〜S411の処理のみ説明する。
【0058】
ステップS409の処理は、ステップS403の処理後に実行される。つまり、減速回生中である場合(ステップS403;Yes)に実行される。ステップS409では、ECU30は、ベーパ濃度が所定値(例えば、ステップS402の判定で用いる所定値よりも大きな値)以上であるか否かを判定する。ベーパ濃度が所定値以上である場合(ステップS409;Yes)、処理はステップS410に進む。この場合には、ベーパ濃度が濃いと言えるため、ECU30は、燃焼実行気筒数を多く設定する(ステップS410)。具体的には、ECU30は、燃焼実行気筒数をAに設定する。この気筒数Aは、ベーパ濃度が薄い場合に設定する燃焼実行気筒数Bよりも多い(A>B)。例えば、ECU30は、エンジン4の各気筒の吸気弁及び排気弁をそれぞれ稼動/休止させることで、蒸発燃料を投入する気筒数をAに設定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS404に進み、パージ処理を実行する。
【0059】
これに対して、ベーパ濃度が所定値未満である場合(ステップS409;No)、処理はステップS411に進む。この場合には、ベーパ濃度が薄いと言えるため、ECU30は、燃焼実行気筒数を少なく設定する(ステップS411)。具体的には、ECU30は、燃焼実行気筒数をBに設定する。この気筒数Bは、ベーパ濃度が濃い場合に設定する燃焼実行気筒数Aよりも少ない(B<A)。例えば、ECU30は、エンジン4の各気筒の吸気弁及び排気弁をそれぞれ稼動/休止させることで、蒸発燃料を投入する気筒数をBに設定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS404に進み、パージ処理を実行する。
【0060】
以上の第4実施例に係る処理によれば、ベーパ濃度に応じて、適切な燃焼実行気筒数を設定することができる。よって、ベーパ濃度が濃い場合には、ベーパ処理を短時間で終了させることができると共に、燃焼A/Fのリッチ化によるエミッションの悪化を防止することができる。また、ベーパ濃度が薄い場合には、安定した燃焼を行わせることができると共に、失火などによるエミッションの悪化を抑制することができる。
【0061】
なお、上記では、ベーパ濃度に基づいて燃焼状態を推定する例を示したが、ベーパ濃度の代わりに、蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスの燃焼A/Fに基づいて燃焼状態を推定しても良い。この場合には、A/Fがリッチ側にある場合には、A/Fがリーン側にある場合よりも、燃焼実行気筒数を多く設定する。言い換えると、A/Fがリーン側にある場合には、A/Fがリッチ側にある場合よりも、燃焼実行気筒数を少なく設定する。
【0062】
また、上記では、EHC15の温度を考慮せずにパージ処理を実行する例を示したが、EHC15の温度が所定範囲内にあるか否かによって、パージ処理の実行/非実行を決定しても良い。つまり、前述した第3実施例と第4実施例とを組み合わせても良い。更に、EHC15を通電する制御を予め行ってから、パージ処理を実行しても良い。加えて、パージ処理中にEHC15への通電を継続しても良い。
【0063】
(第5実施例)
次に、第5実施例に係るパージ処理方法について説明する。第5実施例でも、第1実施例などと同様に、減速回生時にパージ処理を実行する。しかしながら、第5実施例では、パージ処理後に燃焼A/Fをモニタして、燃焼A/Fが所定範囲内になるようにエンジン回転数やスロットル開度などを調整する点で、前述した第1乃至第4実施例と異なる。即ち、第5実施例では、蒸発燃料を燃焼させた場合に失火が発生しないように、エンジン回転数やスロットル開度などを調整してA/Fのフィードバック制御を行う。これにより、失火の発生を適切に抑制することができ、エミッションの悪化を抑制することが可能となる。
【0064】
更に、第5実施例では、このような制御を行った場合のエンジン4のトルクを推定して、通常の回生時と同等の制動力(回生ブレーキ)が得られるように、回生エネルギー量を調整する。つまり、要求された制動力が車両50から適切に発生されるように、ジェネレータ9による回生エネルギー量を調整する。これにより、通常の減速時と同等の減速感を適切に実現することが可能となる。
【0065】
図6は、第5実施例に係る処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU30によって実行される。なお、ステップS501〜S506の処理は、前述したステップS101〜S106の処理(図2参照)と同様であるため、その説明を省略する。ここでは、ステップS507、S508の処理のみ説明する。
【0066】
ステップS507の処理は、ステップS505の処理後に実行される。つまり、点火によって失火が発生していない場合(ステップS505;Yes)に実行される。具体的には、ステップS507では、ECU30は、パージ処理後の燃焼A/Fをモニタして(つまりA/Fセンサ17が検出したA/Fを取得して)、A/Fが所定範囲内になるようにエンジン回転数やスロットル開度などを調整する。当該所定範囲は、蒸発燃料を燃焼させた場合に失火が発生しないようなA/Fの範囲に相当する。したがって、ステップS507の処理は、蒸発燃料を燃焼させた場合に失火が発生しないように、エンジン回転数やスロットル開度などを調整することに相当する。以上の処理が終了すると、処理はステップS508に進む。
【0067】
ステップS508では、ECU30は、ステップS507の処理を行った際のエンジン4の発生トルクを推定して、通常の回生時と同等の制動力(回生ブレーキ)が得られるように、ジェネレータ9の回生エネルギー量を調整する。つまり、蒸発燃料の燃焼によって発生したトルク分だけジェネレータ9の回生量を増大することで、バッテリ11にエネルギーとして回収すると共に、通常の減速時と同等の減速感を確保する。なお、ECU30は、エンジン回転数、スロットル開度、吸入空気量、排気ガスのA/Fなどに基づいて、上記したエンジン4の発生トルクを推定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS502に戻り、ステップS502以降の処理を繰り返し実行する。
【0068】
以上の第5実施例に係る処理によれば、失火の発生を適切に抑制することができ、エミッションの悪化を抑制することが可能となると共に、通常の減速時と同等の減速感を適切に実現することが可能となる。
【0069】
なお、上記では、蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を考慮せずにパージ処理を実行する例を示したが、蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、当該燃焼状態に基づいてパージ処理を実行/中止しても良い。つまり、前述した第2実施例と第5実施例とを組み合わせても良い。また、このような燃焼状態に基づいて蒸発燃料を燃焼させる燃焼実行気筒数を設定しても良い。つまり、前述した第4実施例と第5実施例とを組み合わせても良い。
【0070】
更に、上記では、EHC15の温度を考慮せずにパージ処理を実行する例を示したが、EHC15の温度が所定範囲内にあるか否かによって、パージ処理の実行/非実行を決定しても良い。つまり、前述した第3実施例と第5実施例とを組み合わせても良い。また、EHC15を通電する制御を予め行ってから、パージ処理を実行しても良い。加えて、パージ処理中にEHC15への通電を継続しても良い。
【0071】
[変形例]
上記では、本発明をプラグインハイブリッド車両50に適用する例を示したが、本発明は、通常のハイブリッド車両にも同様に適用することができる。
【0072】
また、上記では減速回生時にパージ処理を行う例を示したが、減速回生時でなくてもエンジン4が停止中であれば、上記したようなパージ処理を同様に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態によるプラグインハイブリッド車両の概略構成を示す。
【図2】第1実施例に係る処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施例に係る処理を示すフローチャートである。
【図4】第3実施例に係る処理を示すフローチャートである。
【図5】第4実施例に係る処理を示すフローチャートである。
【図6】第5実施例に係る処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 ハイブリッドECU
2 エンジンECU
3 モータECU
4 エンジン
5 モータ
8 動力分配機構
9 ジェネレータ
10 インバータ
11 バッテリ
12 外部充電装置
13、19 切り替えリレー
14 排気通路
15 電気加熱式触媒(EHC)
21 キャニスタ
22 パージ通路
23 パージバルブ
30 ECU
50 プラグインハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びモータジェネレータを駆動源として有すると共に、燃料タンクと、前記燃料タンク内の蒸発燃料を蓄えるキャニスタと、前記蒸発燃料を吸気系にパージするパージ通路と、を有するハイブリッド車両に適用される制御装置であって、
前記エンジンの停止中において、前記蒸発燃料のベーパ濃度が所定値以上となった際に、前記パージ通路より前記蒸発燃料のみを前記エンジンに供給して燃焼させる制御を実行する制御手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行によって発生されたエネルギーを、前記モータジェネレータによって回生させる制御を更に行う請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、前記燃焼状態に基づいて、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を実行/中止する請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/Fに基づいて前記燃焼状態を推定する請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記A/Fが所定値以上リーンである場合には、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を中止する請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ベーパ濃度に基づいて前記燃焼状態を推定する請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ベーパ濃度が所定値以下である場合には、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を中止する請求項6に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した場合の燃焼状態を推定し、前記燃焼状態に基づいて、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を設定する請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記蒸発燃料を燃焼した際における排気ガスのA/Fに基づいて前記燃焼状態を推定する請求項8に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記A/Fがリッチ側にある場合には、前記A/Fがリーン側にある場合よりも、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を多く設定する請求項9に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記ベーパ濃度に基づいて前記燃焼状態を推定する請求項8に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記ベーパ濃度が濃い場合には、前記ベーパ濃度が薄い場合よりも、前記蒸発燃料を燃焼させる気筒数を多く設定する請求項11に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記エンジンの排気通路上に配設された触媒の温度が所定範囲内にあるか否かによって、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行/非実行を決定する請求項1乃至12のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項14】
前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行要求があった場合に、電気加熱式に構成された触媒に対して通電を行う通電手段を更に備える請求項1乃至13のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記ハイブリッド車両が減速回生中にある際において、前記蒸発燃料を燃焼させる制御を実行すると共に、
要求された制動力が前記ハイブリッド車両から発生されるように、前記蒸発燃料を燃焼させる制御の実行によって発生されたエネルギーを前記モータジェネレータによって回生させる回生エネルギー量を調整する請求項1乃至14のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項16】
外部電源から充電した電力を動力として使用するプラグインハイブリッド車両に適用される請求項1乃至15のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250036(P2009−250036A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94951(P2008−94951)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】