説明

マイクロ波供給器及びプラズマ処理装置並びに処理方法

【課題】 マイクロ波の放射特性をより精密に制御することにより、被処理体の半径方向及び周方向における処理の制御性を高める。
【解決手段】 マイクロ波を放射する為の複数のスロット33が設けられた面23を有する環状導波路13を有するマイクロ波供給器及びそれを用いたプラズマ処理装置において、環状導波路13の中心C1に対してスロット3の中心C2、C5が前記面に沿った方向に偏って配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波を用いて被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に関し、特に、環状導波路を有するマイクロ波供給器及びそれを備えたプラズマ処理装置、並びにプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波をプラズマ励起用の励起源として使用するプラズマ処理装置としては、プラズマ重合装置、CVD装置、表面改質装置、エッチング装置、アッシング装置、クリーニング装置等が知られている。
【0003】こうしたいわゆるマイクロ波プラズマ処理装置を使用するCVDは例えば次のように行われる。即ち、マイクロ波プラズマCVD装置のプラズマ発生室及び/又は成膜室内にガスを導入し、同時にマイクロ波エネルギーを投入してプラズマ発生室内にプラズマを発生させ、ガスを励起、解離、イオン化する等してイオンやラジカル等を生成しプラズマ発生室又はプラズマ発生室から離れた成膜室内に配された被処理体上に堆積膜を形成する。そして同様の手法で有機物のプラズマ重合や酸化、窒化、フッ化等の表面改質を行うこともできる。
【0004】又、いわゆるマイクロ波プラズマエッチング装置を使用する被処理体のエッチング処理は、例えば次のようにして行われる。即ち、該装置の処理室内にエッチャントガスを導入し、同時にマイクロ波エネルギーを投入して該処理室内にプラズマを発生させ、エッチャントガスを励起、解離、イオン化して生成したイオンやラジカル等により該処理室内に配された被処理体の表面をエッチングする。
【0005】又、いわゆるマイクロ波プラズマアッシング装置を使用する被処理体のアッシング処理は、例えば次のようにして行われる。即ち、該装置の処理室内にアッシングガスを導入し、同時にマイクロ波エネルギーを投入して該処理室内にプラズマを発生させ、該アッシングガスを励起、解離、イオン化して生成したイオンやラジカルやオゾン等により該処理室内に配された被処理体の表面即ちホトレジストをアッシングする。アッシング同様にして、被処理体の被処理面に付着した不要物を除去するクリーニングを行うこともできる。
【0006】マイクロ波プラズマ処理装置においては、ガスの励起源としてマイクロ波を使用することから、電子を高い周波数をもつ電界により加速でき、ガス分子を効率的にイオン化、励起させることができる。それ故、マイクロ波プラズマ処理装置については、ガスのイオン化効率、励起効率及び解離効率が高く、高密度のプラズマを比較的容易に形成し得る、低温で高速に高品質処理できるといった利点を有する。又、マイクロ波が石英ガラスのような誘電体を透過する性質を有することから、プラズマ処理装置を無電極放電タイプのものとして構成でき、これが故に高清浄なプラズマ処理を行い得るという利点もある。
【0007】こうしたマイクロ波プラズマ処理装置の更なる高速化のために、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用したプラズマ処理装置も実用化されてきている。ECRは、磁束密度が87.5mTの場合、磁力線の周りを電子が回転する電子サイクロトロン周波数が、マイクロ波の一般的な周波数2.45GHzと一致し、電子がマイクロ波を共鳴的に吸収して加速され、高密度プラズマが発生する現象である。
【0008】又、別のタイプの高密度プラズマ発生用のプラズマ処理装置も提案されている。
【0009】例えば、米国特許第5,034,086号の明細書には、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)を用いたプラズマ処理装置が開示されている。
【0010】或いは、特開平5−290995号公報や、米国特許第5,359,177号の明細書や、EP0564359公報には、終端付環状導波管を用いたプラズマ処理装置が開示されている。
【0011】これらとは別に、マイクロ波プラズマ処理装置の例として、近年、マイクロ波の均一で効率的な導入装置として複数のスロットが内側面に形成された無終端環状導波管を用いた装置が提案されている(特開平5−345982号公報、米国特許第5,538,699号)。
【0012】しかしながら、内側面にスロットを有する無終端環状導波管を備えた従来のマイクロ波プラズマ処理装置を用いて、例えばアッシング処理の場合のように、100mTorr(約13.3Pa)以上の高圧領域で処理を行う場合、プラズマの拡散が抑制されるため、プラズマが周辺に局在し基体中央部分の処理速度が低下することがある。又、プラズマ発生空間の容積が非常に大きくなる。
【0013】一方、特開平7−90591号公開特許公報には、円盤状のマイクロ波導入装置を用いたプラズマ処理装置が開示されている。この装置ではガスを導波管内に導入し、導波管に設けられたスロットからガスをプラズマ発生室に向けて放出している。
【0014】これら従来の装置に対して、本発明者が先に提案したプラズマ処理装置の構成は図12に示すようなものである。
【0015】1は内部が排気可能な容器、2は被処理体の保持手段、3は内部に環状導波路を有する環状導波管からなるマイクロ波供給器、4は誘電体窓、7はガス供給口7aを有するガス供給管である。これらの部品から組み立てられた装置では、マイクロ波供給器3のマイクロ波導入口15よりマイクロ波を導入して、スロット3bから誘電体窓4を介して容器1内にマイクロ波を供給する。
【0016】図13〜図15は、マイクロ波供給器の環状導波路内におけるマイクロ波の伝搬と、スロットからのマイクロ波の放射の様子を説明するための模式図である。
【0017】図13は、環状導波路を上方から見た時の様子をスロットを省略して示している。図14は、図13のBB′線による断面を図15はCC′線による断面を示している。
【0018】マイクロ波導入口15付近はE面T分岐の等価回路となっており、マイクロ波導入口15より導入されたマイクロ波は時計回りd2 と反時計回りd1 とに分配されるように進路を変更する。各スロット3bはマイクロ波の進行方向d1 、d2 と交差するように設けられており、マイクロ波はスロットからマイクロ波を放出しながら進む。
【0019】環状導波路は無終端であるため、方向d1 、d2 (z軸方向)に伝搬していくマイクロ波は互いに干渉し合う。C1は導波路の中心を結んで形成される環(輪)を示しており、この長さ即ち周長を管内波長(路内波長)に整数倍とすれば、所定のモードの定在波を生成し易くなる。
【0020】図14はマイクロ波の進行方向(z軸方向)に垂直な断面を示しており、導波路の上下の面3cは電界EFの向きに垂直なH面となっており、導波管の左右の面3dは電界EFの向きに平行なE面となっている。C0はスロット3bの長手方向、即ちマイクロ波の進行、伝搬方向と垂直な方向(x軸方向)の中心である。
【0021】このように導波路のマイクロ波進行方向に垂直な断面はx軸、y軸を長辺、短辺とする矩形断面になっている。
【0022】環状導波路3a内に導入されたマイクロ波MWは、E面T分岐の分配ブロック10で左右に二分配され、自由空間よりも長い管内波長をもって伝搬する。分配されたマイクロ波同士は対向部で干渉し、管内波長の1/2毎に定在波を生じる。スロットを横切る電界が最大になるような位置に設置されたスロット3bから誘電体窓4を透して放射された漏れ波EWは、スロット3b近傍のプラズマP1を生成する。生成したプラズマP1の電子周波数がマイクロ波電源の周波数を超える(例えば電源周波数が2.45GHzの場合、電子密度が7×1010cm-3を超える)と、マイクロ波はプラズマ中を伝搬できなくなる、いわゆるカットオフが生じ、誘電体窓4とプラズマの界面を表面波SWとして伝搬する。隣接するスロットから導入された表面波SW同士が干渉し、表面波SWの波長(λ・εr-1/2〔λ・自由空間マイクロ波波長、εr :比誘電率〕)の1/2毎に電界の腹を生じる。プラズマ発生空間側1にしみ出したこの表面波干渉による腹電界によって表面波干渉プラズマ(SIP:Surface−wave Interfered Plasma)P2が生成する。この時に処理用ガスをプラズマ処理室内に導入しておくと処理用ガスは発生した高密度プラズマにより励起、解離、イオン化され、被処理基体の表面を処理することができる。
【0023】このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いることにより、圧力1.33Pa程度、マイクロ波パワー1kW以上で、直径300mm以上の口径を有する空間に±3%以内の均一性をもって、電子密度1012/cm3 以上、電子温度3eV以下、プラズマ電位20V以下の高密度低電位プラズマが発生できる。
【0024】よって、ガスを充分に反応させ活性な状態で被処理面に供給できる。しかも、圧力2.7Pa、マイクロ波電力2kWとした時、誘電体窓内面から8〜10mm離れた位置でマイクロ波による電流は検出できなくなる。これはプラズマ拡散が抑えられる高圧領域では非常に薄いプラズマの層が誘電体窓近傍にできることを意味する。よって、入射イオンによる基板表面ダメージも減るので、低温でも高品質で高速な処理が可能になる。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】ところで、環状導波路の周長は、被処理体の被処理面積に応じて、管内波長の2倍、3倍、4倍…の中から選択しなければならない。路内が大気圧の空気の場合、この管内波長が約159mmであることを考慮すると、選択できる周長は約318mm、約477mm、約636mm…である。これを環の直径に換算すると約101mm、約151mm、約202mmとなる。
【0026】一方、被処理体として一般的な8インチウエハ、12インチウエハを用いる場合、それぞれの直径は約200mm、約300mmである。両者を組み合わせて最適な組み合わせを選んでみても、プラズマの均一性、処理の均一性という点で未だ充分なものとは言えず、例えば環の中心付近乃至被処理体の中心付近でプラズマ密度が低下して処理速度が低くなる現象が生じる。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、環の半径方向或いはそれに等価な方向におけるマイクロ波放射特性をより精密に制御できるマイクロ波供給器を提供することにある。
【0028】本発明の別の目的は、被処理体の半径方向における処理の均一性をより一層高めることができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することにある。
【0029】本発明の更に別の目的は、環の半径方向及び周方向或いはこれらに等価な方向におけるマイクロ波放射均一性を向上させることができるマイクロ波供給器を提供することにある。
【0030】本発明の他の目的は、被処理体の半径方向及び周方向或いはこれらに等価な方向における処理の均一性を共に高めることができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することにある。
【0031】本発明は、マイクロ波を放射するための複数のスロットが設けられた面を有する環状導波路を備えたマイクロ波供給器又は、プラズマ処理装置において、前記複数のスロットの中心が前記環状導波路の中心に対して前記面に沿った方向に偏って配置されていることを特徴とする。
【0032】又、本発明はマイクロ波を放射するための複数のスロットが設けられた平面を有する環状導波路を備えたマイクロ波供給器又は、プラズマ処理装置において、前記スロットは、マイクロ波の進行方向に対して交差する方向に向いた不連続線状スロットであることを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】(実施形態1)図1は、本発明の一実施の形態によるプラズマ処理装置を示す模式的断面図である。このマイクロ波を放射するための複数のスロット33が設けられた面を有する環状導波路13を備えたマイクロ波供給器3は、前記環状導波路13の中心C1に対して前記複数のスロット33の中心C2が前記面に沿った方向に偏って配置されていることを特徴とする。詳しくは、1は被処理体Wを内部に収容し、プラズマをプラズマ発生空間9に発生し得る真空容器であり、例えば大気開放型の容器或いは並設される不図示のロードロック室により大気と遮断された容器である。
【0034】2は被処理体Wを容器1内に収容し、保持するためのサセプタ或いはホルダーと呼ばれる被処理体保持手段であり、被処理体Wを昇降し得るリフトピン12を有している。更に必要に応じて保持手段2に、被処理体Wを加熱するためのヒーター或いは被処理体を冷却するためのクーラー等の温度調整手段を付設してもよい。
【0035】3は容器1内にプラズマを発生させるためのマイクロ波エネルギーを供給するマイクロ波供給器である。スロット33の位置は内方にオフセットしている。因に、図14に示したスロットがオフセットしていないものである。
【0036】4は容器1内を気密に封止するとともにマイクロ波を透過させる誘電体窓である。
【0037】5はマイクロ波導波管、6はマイクロ波電源である。
【0038】7はマイクロ波によってプラズマ化される処理ガスを供給するためのガス供給路であり、斜め上方を向いた放出路の先にガス供給口17を有する。
【0039】ガス供給路7は各種ガスボンベ57、バブル47、流量コントローラー37等のガス供給系27に連通している。
【0040】8は、容器1内を排気するための排気路であり真空ポンプ18、バブル28等を含む排気系に不図示の排気口を通じて連通している。
【0041】図2は、図1の装置のマイクロ波供給器3に用いられるスロット付平板23を示している。
【0042】スロット付平板23は、複数のスロット33を有している。スロットは、環状導波路13の中心C1を結ぶ線より、環の内方に、スロットの中心C2を結ぶ線が位置するように、平板23の表面に沿った方向に偏在して設けられている。C3は環状導波路13の外側面の位置を、C4はその内側面の位置を示している。
【0043】図1の装置によるプラズマ処理方法は以下のとおりである。所定の圧力まで減圧、排気された容器1内にガス供給口17から処理ガスを供給する。
【0044】処理ガスはプラズマ発生室となる空間9に放出された後、排気路8へと流れていく。
【0045】一方、マグネトロンのようなマイクロ波電源6において発生したマイクロ波は、同軸導波管、円筒導波管又は矩形導波管のような導波管5を介して伝搬し、導入口15よりマイクロ波供給器3内に導入される。
【0046】1つのスロット33に対向する上方のH面から導入されたマイクロ波は、そのスロット33からマイクロ波を放射するとともに、図2中時計回わり乃至反時計回わりにマイクロ波供給器3の無終端環状導波路13内を伝搬する。
【0047】環状導波路13のH面には、例えばTE10モードにて路内を伝搬・進行するマイクロ波の伝搬・進行方向と交差する縦長のスロット33が設けられているために、そのスロット33から、空間9に向かって、マイクロ波が放射される。
【0048】マイクロ波は、誘電体からなるマイクロ波透過窓4を透過して空間9に供給される。
【0049】空間9には、処理ガスが存在しており、この処理ガスはマイクロ波エネルギーによって励起されプラズマを発生させる。マイクロ波の放射及びプラズマ発生の仕組みは、図15を参照して説明したとおりである。
【0050】被処理体Wの表面には、このプラズマを利用して表面処理が施される。プラズマPは、投入されるマイクロ波の電力や容器内の圧力に応じて、図1のようにスロット下方のみに存在することもあるし、又、窓4の下面全面に拡がることもある。
【0051】被処理体Wの大きさや、マイクロ波供給器導波路の周長に応じて、スロットを外方に偏在させることもできる。
【0052】(実施形態2)次に述べる本発明の別の実施の形態によるマイクロ波を放射するための複数のスロットが設けられた平面を有する環状導波路を備えたマイクロ波供給器は、マイクロ波の進行方向に対して交差する方向に向いた不連続線状スロット(33、43)を有することを特徴とする。
【0053】図3はこのようなプラズマ処理装置を示す模式的断面図である。
【0054】この装置は、図4に示すようなスロット付平板23を有している。図1の装置との相違点は、図4のスロット付平板23が付設されている点と、被処理体バイアス電源22が付設されている点である。
【0055】空間9内の圧力を低くして、プラズマがより拡がるように調整し、被処理体Wにバイアス電源22よりバイアス電圧を印加しながらプラズマ処理を行える構成になっている。このような構成はエッチングに好適なものである。
【0056】更に、必要に応じて保持手段2にクーラーを付設して被処理体Wの昇温を抑制することも好ましいものである。
【0057】図1、図2と同符号で示す部位は、図1の実施形態の装置と同じ構成であるので、詳述を省略する。
【0058】図4は本発明に用いられるマイクロ波供給器のスロット付平板の別の例を示す。
【0059】図4の例では図2と同様に設けられたスロット33の延長線上に更に別のスロット43が設けられている点が図2に示した平板とは異なっている。
【0060】この外方のスロット43も又、その中心を結ぶ線C5が、環状導波路13の中心を結ぶ線C1に対して、環の外方に偏在して設けられている。
【0061】同一径方向にある一対のスロット33とスロット43とは不連続直線状に形成されることにより、従来のスロットの場合よりも径方向に均一にマイクロ波を放射することができる。又、スロット33とスロット43とを一体化した長尺スロットした場合よりも、周方向(マイクロ波の進行方向)において、より均一にマイクロ波を放射することができる。
【0062】本発明に用いられるスロットの偏心量は、使用する処理条件に応じて適宜定められる。特にスロット付平板23を導波路13となる凹部を有する導電性基材に対して交換可能に構成すれば、処理条件の変更にも柔軟に対応できる。
【0063】本発明に用いられるスロットの中心が、環状導波路の中心とは異なっている異中心スロットの形状は、各々のスロットの中心が導波路の中心に対して内方及び/又は外方に偏在しているのであれば、1つの矩形状穿孔でも、長さが管内波長の1/4から3/8である穿孔が複数、不連続かつ直線上に配置されたものでも適用可能である。
【0064】(実施形態3)図5、図6を参照して本発明の別の実施の形態による無終端環状導波管及びそれを用いたマイクロ波プラズマ処理装置について説明する。図5は本発明の一例である不連続直線状スロット付の平板状環状導波管を用いたマイクロ波プラズマ処理装置の横断面模式図で、図16は環状導波管のスロット板の上面図である。
【0065】図3、図4に示した装置と異なる点は、被処理体Wの大きさに比べて環状等波管(マイクロ波供給器)3の大きさが相対的に大きい点、ガス放出口17が傾め下方を向いている点、内方及び外方に偏在した一組のスロット(33、43)のからなる不連続線状スロット数が8個になっている点である。又、被処理体の温度制御用にヒーター114が保持手段2に設けられている。
【0066】排関系やガス供給系は、図1、図3に示したものと同様のものを使用できる。
【0067】図5ではスロット33、43は省略されて図示されている。
【0068】プラズマの発生及び処理は以下のようにして行なう。排気系(不図示)を介して容器1内を真空排気する。続いて、プラズマ処理用ガスをガス供給路7を介して所定の流量で容器1内に導入する。次に、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスパルプ(不図示)を調整し、容器1内を所定の圧力に保持する。マイクロ波電源(不図示)より所望の電力を、マイクロ波供給器3を介して、容器1内に供給することにより、容器1内にプラズマが発生する。この時に導入された処理用ガスは発生した高密度プラズマにより励起、解離、イオン化され、保持手段2上に載置された被処理体Wの表面が処理される。
【0069】本発明のマイクロ波プラズマ処理装置に用いられるマイクロ波供給器となる環状導波管の材質は、導電体であれば使用可能であるが、マイクロ波の伝搬ロスをできるだけ抑えるため導電率の高いAl、Cu、Ag/CuメッキしたSUSなどが最適である。本発明に用いられる環状導波管のマイクロ波導入口15の向きは、マイクロ波供給器内の導波路に効率よくマイクロ波を導入できるものであれば、図のようにH面に垂直方向で導入部で伝搬空間の左右方向に二分配するものでもH面に平行で伝搬空間の接線方向でもよい。本発明に用いられるマイクロ波供給器のマイクロ波進行方向におけるスロット間隔は、管内波長の1/2が最適である。本発明においては、不連続スロットの連続部分のそれぞれの長さ即ちスロット33又はスロット44の長さはそれぞれ管内波長の1/4から3/8であるのが好ましい。不連続線状スロット33,43はマイクロ波の進行方向121に対して交差する方向を向いている。即ちスロットの長手方向がマイクロ波の進行方向121と交差、ここでは垂直に交わっている。ここでは、矩形導波管を無終端となるように環状(勿論、円環状だけではなく、楕円環状、四角環状、五核環状等も含む)とし、TE10モード(H01モード)のマイクロ波を伝搬させている為、振動の腹一個に対して一個の不連続線状スロット(一対のスロット)が対応している。符号120は磁界の向きを模式的に示している。
【0070】誘電体窓4に好適な材料は無水合成石英であり、寸法は、直径299mm、厚さ12mmである。不連続直線状スロット付平板環状導波管3は、内壁断面の寸法が27mm×96mmであって、中心径が202mmである。不連続直線状スロット付平板状環状導波管103の材質は、マイクロ波の伝搬損失を抑えるため、すべてアルミニウムを用いている。環状導波管3のH面には、不連続直線状スロット33、34が8組形成されている。導波管の中心から内方と外方にそれぞれ長さ42mm、幅3mmの矩形スロットが一組直線状に並んでおり、各スロットの組は管内波長の1/2間隔に放射状に形成されている。管内波長は、使用するマイクロ波の周波数と、導波管の断面の寸法とに依存するが、周波数2.45GHzのマイクロ波と、上記の寸法の導波管とを用いた場合には約159mmである。使用した環状導波管3では、長さ42mm、幅3mmの矩形状スロットが導波管の中心に対して内側と外側に1個ずつ45°間隔で計16個形成されている。環状導波管3には、4Eチューナ、方向性結合器、アイソレータ、2.45GHzの周波数を持つマイクロ波電界(不図示)が順に接続されている。
【0071】図5、図6に示したマイクロ波プラズマ処理総理を使用して、Ar流量500sccm、圧力1.33Paと133Pa、マイクロ波パワー3.0kWの条件プラズマを発生させ、得られたプラズマの計測を行った。プラズマ計測は、シングルプローブ法により以下のようにして行った。プローブに印加する電圧を−50から+100Vの範囲で変化させ、プローブに流れる電流をI−V測定器により測定し、得られたI−V曲線からラングミュアらの方法により電子密度、電子温度、プラズマ電位を算出した。その結果、電子密度は、1.33Paの場合2.1×1012/cm3 ±2.7%(φ300面内)、133Paの場合9.6×1011/cm3 ±5.4%(φ300面内)であり、高圧領域でも高密度で均一なプラズマが形成されていることが確認された。φ300面内とは直径300mmの円の内部という意味である。
【0072】(実施形態4)図2は接線導入型の平板状環状導波管を用いたマイクロ波プラズマ処理装置の横断面模式図である。
【0073】プラズマの発生及び処理は前出の各実施形態と同じである。
【0074】マイクロ波電源(不図示)より所望の電力をE面に形成された導入口15より平板状環状導波管3内に導入する。導入されたマイクロ波は、管内波長の1/2毎に形成されたスロットを介し誘電体窓4を透してプラズマ発生空間9に導入される。導入されずに1周伝搬したマイクロ波は、導入口15付近で新たに接線導入されたマイクロ波と干渉して強め合い、数周伝搬するまでにほとんどのマイクロ波はプラズマ発生空間に導入される。
【0075】マイクロ波導入口15以外の部分構成は実施形態3と同じである。
【0076】図7もスロットが省略されて図示されている。図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用して、Ar流量500sccm、圧力1.33Paと133Pa,マイクロ波パワー3.0kWの条件でプラズマを発生させ、得られたプラズマの計測を行った。プラズマ計測は、シングルプローブ方法により以下にようにして行なった。プローブに印加する電圧を−50から+100Vの範囲で変化させ、プローブに流れる電流をI−V測定器により測定し、得られたI−V曲線からラングミュアらの方法により電子密度、電子温度、プラズマ電位を算出した。その結果、電子密度は、1.33Paの場合1.9×1012/cm3 ±2.7%(φ300面内)、133Paの場合8.7×1011/cm3 ±5.6%(φ300面内)であり、高圧領域でも高密度で均一なプラズマが形成されていることが確認された。
【0077】(実施形態5)図8はRFバイアス印加機構を用いたマイクロ波プラズマ処理装置の横断面模式図である。22はRFバイアス印加手段である。図8もスロットは省略されて図示されている。
【0078】プラズマの発生及び処理は以下のようにして行なう。被処理体Wを保持手段2上に設置し、ヒータ114を用いて所望の温度まで加熱する。排気系(不図示)を介してプラズマ発生空間9を真空排気する。続いて、プラズマ処理用ガスを所定の流量でプラズマ発生空間9に導入する。次に、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ発生空間を所定の圧力に保持する。RFバイアス印加手段22を用いて保持手段2にRF電力を供給するとともに、マイクロ波電源(不図示)により所望の電力を、平板状環状導波管3を介し誘電体窓4を透してプラズマ発生空間9に導入する。導入されたマイクロ波の電界により電子が加速され、プラズマ発生空間9にプラズマが発生する。この際、処理用ガスは発生した高密度プラズマにより励起、解離、イオン化され、被処理体Wの表面が処理される。また、RFバイアスにより基板に入射するイオンの運動エネルギーを制御できる。
【0079】(実施形態6)図9は温度制御用の冷却機構付マイクロ波プラズマ処理装置の横断面模式図414は基体を冷却するクーラである。
【0080】図9もスロットが省略されて図示されている。
【0081】プラズマの発生及び処理は以下のようにして行なう。被処理体Wを保持手段2上に設置し、クーラ414を用いて冷却する。排気系(不図示)を介してプラズマ発生空間9を真空排気する。続いて、プラズマ処理用ガスを導入する。次に、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、プラズマ発生空間9を所定の圧力に保持する。RFバイアス印加手段22を用いて保持手段2にRF電力を供給するとともに、マイクロ波電源(不図示)より所望の電力を、平板状環状導波管3を介し誘電体窓4を透してプラズマ発生空間に導入する。導入されたマイクロ波の電界により電子が加速され、プラズマが発生する。
【0082】クーラ414を用いることにより、高密度プラズマと高バイアスを用いた場合に問題となるイオン入射による基板の過加熱を抑制することができる。
【0083】本発明に用いられる環状導波路は、前述したとおり、環状であれば、円環状に限らず、楕円環状、四角環状、五角環状、等様々な形状であり得る。
【0084】半導体ウエハや光ディスクや磁気ディスクのような円盤状の被処理体を処理する場合には、円環状が好適である。
【0085】本発明に用いられる環状導波路を有するマイクロ波供給器としては、導波路となる環状凹部を有する導電性基材と、スロット付平板との組み立て体を用いることも好ましいものである。
【0086】又、必要に応じて、導波路内に管内波長を短くするべく誘電体を充てんすることも好ましいものである。このような誘電体としてはテトラフルオロエチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
【0087】本発明に用いられるスロットの偏心量は、前述したとおり使用する処理条件に応じて適宜定められる。特にスロット付平板23を交換可能に構成すれば、処理条件の変更にも柔軟に対応できる。
【0088】本発明に用いられるスロットの中心が、環状導波路の中心とは異なっている異中心スロットの形状は、前述したとおり各々のスロットの中心が導波路の中心に対して内方及び/又は外方に偏在しているのであれば、1つの矩形状穿孔でも、長さが管内波長の1/4から3/8である穿孔が複数、不連続かつ直線上に配置されたものでも適用可能である。
【0089】本発明に用いられるスロット付平板や環状導波管の材質は、導電体であれば使用可能であるが、マイクロ波の伝搬ロスをできるだけ抑えるため導電率の高いAl,Cu,Ag/Cuメッキしたステンレススチールなどが最適である。本発明に用いられる環状導波路への導入口の向きは、環状導波路内のマイクロ波伝搬空間に効率よくマイクロ波を導入できるものであれば、H面T分岐や接線導入のようにH面に平行にマイクロ波を導入できる向き、又は、E面T分岐のようにH面に垂直に導入できる向きでもよい。又、導入口付近に図15の符号10に示したような分配器を設けてもよい。本発明に用いられるマイクロ波進行方向にスロット間隔は、管内波長の1/2もしくは1/4が最適である。
【0090】本発明に用いられるマイクロ波周波数は、0.8GHz乃至20GHzの範囲から適宜選択することができる。
【0091】本発明に用いられるマイクロ波透過窓の誘電体としては、石英ガラスやSiO2 系のその他各種ガラス、Si34 ,NaCl,KCl,LiF,CaF2 ,BaF2 ,Al23 ,AlN,MgOなどの無機物が適当であるが、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの有機物のフィルム、シートなども適用可能である。
【0092】本発明のマイクロ波プラズマ処理装置及び処理方法においては、磁界発生手段を用いても良い。本発明において用いられる磁界としては、ミラー磁界なども適用可能であるが、スロット近傍の磁界の磁束密度は基板近傍の磁界の磁束密度よりも大きいマグネトロン磁界が最適である。磁界発生手段としては、コイル以外でも、永久磁石でも使用可能である。コイルを用いる場合には過熱防止のため水冷機構や空冷など他の冷却手段を用いてもよい。
【0093】また、処理のより高品質化のため、紫外光を被処理基体表面に照射してもよい。光源としては、被処理体もしくはその上に付着したガスに吸収される光を放射するものなら適用可能で、エキシマレーザ、エキシマランプ、希ガス共鳴線ランプ、低圧水銀ランプなどが適当である。
【0094】本発明のプラズマ処理室内の圧力は1.33×10-2Pa乃至1.33×103 Paの範囲、より好ましくは、CVDの場合1.33×10-1Pa乃至1.33×101 Pa、エッチングの場合6.65×10-2Paから6.65Pa、アッシングの場合1.33×101 Paから1.33×103 Paの範囲から選択することができる。
【0095】本発明によるプラズマ処理方法について図5を参照して説明する。
【0096】図10の(a)に示すようにシリコン基板のような被処理体101の表面にCVD装置又は表面改質装置により、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機物や、テトラフルオロエチレン、ポリアリールエーテル等の有機物からなる絶縁膜102を形成する。
【0097】図10の(b)に示すようにフォトレジストを塗布して、ベーキングを行いフォトレジスト層103を形成する。
【0098】図10の(c)に示すように、露光装置によりホールパターン潜像の形成を行い、これを現像してホール104を有するフォトレジストパターン103′を形成する。
【0099】図10の(d)に示すように、エッチング装置により、フォトレジストパターン103′の下の絶縁膜102をエッチングしてホール105を形成する。
【0100】図10の(e)に示すように、アッシング装置を用いてフォトレジストパターン103′をアッシングして除去する。
【0101】こうして、ホール付絶縁膜を有する構造体が得られる。
【0102】続いて、ホール内に導電体等を堆積させる場合には、前もって、クリーニング装置等によりホール内をクリーニングすることも好ましいものである。
【0103】そして、図1〜図9を参照して説明した本発明によるプラズマ処理装置は、前述した工程に用いられるCVD装置、表面改質装置、エッチング装置、アッシング装置のうちの少なくともいずれか1つとして利用可能である。
【0104】図11は本発明による別のプラズマ処理方法を示している。
【0105】図11の(a)に示すようにアルミニウム、銅、モリブデン、クロム、タングステンのような金属或いはこれらの金属のうち少なくとも一つを主成分とする各種合金等からなる導電体のパターン又は多結晶シリコンのパターン(ここではラインアンドスペース)を形成する。
【0106】図11の(b)に示すようにCVD装置等により絶縁膜107を形成する。
【0107】不図示のフォトレジストパターンを形成した後、エッチング装置にて絶縁膜107にホール108を形成する。
【0108】フォトレジストパターンをアッシング装置等により除去すると図11の(c)に示すような構造体が得られる。
【0109】そして、本発明のプラズマ処理装置は、上述CVD装置、エッチング装置、アッシング装置として使用できるが、後述するようにこれらにのみ限定的に適用されるわけではない。
【0110】本発明のマイクロ波プラズマ処理方法による堆積膜の形成は、使用するガスを適宜選択することによりSi34 ,SiO2 ,Ta25 ,TiO2 ,TiN,Al23 ,AlN,MgF2 、フルオロカーボンなどの絶縁膜、a−Si,poly−Si,SiC,GaAsなどの半導体膜、Al,W,Mo,Ti,Taなどの金属膜,アモーファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド等、各種の堆積膜を効率よく形成することが可能である。
【0111】本発明のプラズマ処理方法により処理する被処理体の基体は、半導体であっても、導電性のものであっても、あるいは電気絶縁性のものであってもよい。具体的にはSiウエハ、SOIウエハ等の半導体基体が挙げられる。
【0112】導電性基体としては、Fe,Ni,Cr,Al,Mo,Au,Nb,Ta,V,Ti,Pt,Pbなどの金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0113】絶縁性基体としては、石英ガラスやそれ以外の各種ガラス、Si34 ,NaCl,KCl,LiF,CaF2 ,BaF2 ,Al23 ,AlN,MgOなどの無機物、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの有機物のフィルム、シートなどが挙げられる。
【0114】CVD法により基板上に薄膜を形成する場合に用いられるガスとしては、一般に公知のガスが使用できる。
【0115】a−Si,poly−Si,SiCなどのSi系半導体薄膜を形成する場合のSi原子を含有する原料ガスとしては、SiH4 ,Si26 などの無機シラン類、テトラエチルシラン(TES),テトラメチルシラン(TMS)、ジメチルシラン(DMS),ジメチルジフルオロシラン(DMDFS),ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類、SiF4 ,Si26 ,Si38 ,SiHF3 ,SiH22 ,SiCl4 ,Si2 Cl6 ,SiHCl3 ,SiH2 Cl2 ,SiH3 Cl,SiCl22 などのハロシラン類等、常温常圧でガス状態であるものまたは容易にガス化し得るものが挙げられる。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H2 ,He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rnが挙げられる。
【0116】Si34 ,SiO2 などのSi化合物系薄膜を形成する場合のSi原子を含有する原料としては、SiH4 ,Si26 などの無機シラン類、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、オクタメチルシクロテトラシラン(OMCTS)、ジメチルジフルオロシラン(DMDFS)、ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類、SiF4 ,Si26 ,Si38 ,SiHF3 ,SiH22 ,SiCl4 ,Si2 Cl6 ,SiHCl3 ,SiH2 Cl2 ,SiH3 Cl,SiCl22 などのハロゲン化シラン類等、常温常圧でガス状態であるものまたは容易にガス化し得るものが挙げられる。また、この場合の同時に導入する窒素原料ガスまたは酸素原料ガスとしては、N2 ,NH3 ,N24 、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、O2 、O3 、H2 O、NO、N2 O、NO2 などが挙げられる。
【0117】Al,W,Mo,Ti,Taなどの金属薄膜を形成する場合の金属原子を含有する原料としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO)6)、モリブデンカルボニル(Mo(CO)6 )、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)などの有機金属、AlCl3 ,WF6 、TiCl3 、TaCl3 などのハロゲン化金属等が挙げられる。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H2 ,He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rnが挙げられる。
【0118】Al23 ,AlN,Ta25 ,TiO2 ,TiN,WO3 などの金属化合物薄膜を形成する場合の金属原子を含有する原料としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO)6 )、モリブデンカルボニル(Mo(CO)6 ),トリメチルガリウム(TMGa),トリエチルガリウム(TEGa)などの有機金属、AlCl3 ,WF6 ,TiCl3 ,TaCl5 などのハロゲン化金属等が挙げられる。また、この場合の同時に導入する酸素原料ガスまたは窒素原料ガスとしては、O2 ,O3 ,H2 ,O,NO,N2 O,NO2 ,N2 ,NH3 ,N24 、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0119】アモーファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド等のカーボン膜を形成する場合には、CH4 、C26 等の炭素含有ガスを、フルオロカーボン膜を形成する場合には、CF4 やC26 等のフッ素、炭素含有ガスを用いるとよい。
【0120】基体表面をエッチングする場合のエッチング用ガスとしては、F2 ,CF4 ,CH22 ,C26 ,C48 ,CF2 Cl2 ,SF6 ,NF3 ,Cl2 ,CCl4 ,CH2 Cl2 ,C2 Cl6 などが挙げられる。
【0121】フォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合アッシング用ガスとしては、O2 ,O3 ,H2 O,N2 ,NO,N2 O,NO2 などが挙げられる。
【0122】また本発明のマイクロ波プラズマ処理装置及び処理方法を表面改質にも適用する場合、使用するガスを適宜選択することにより、例えば基体もしくは表面層としてSi,Al,Ti,Zn,Taなどを使用してこれら基体もしくは表面層の酸化処理あるいは窒化処理さらにはB、As、Pなどのドーピング処理等が可能である。更に本発明はクリーニング方法にも適用できる。その場合酸化物あるいは有機物や重金属などを除去するクリーニングに使用することもできる。
【0123】基体を酸化表面処理する場合の酸化性ガスとしては、O2 ,O3 ,H2 O,NO,N2 O,NO2 などが挙げられる。また、基体を窒化表面処理する場合の窒化性ガスとしては、N2 ,NH3 ,N24 、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0124】基体表面の有機物をクリーニングする場合、またはフォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合のクリーニング/アッシング用ガスとしては、O2 ,O3 ,H2 O,H2 ,NO,N2 O,NO2 などが挙げられる。また、基体表面の無機物をクリーニングする場合のクリーニング用ガスとしては、F2 ,CF4 ,CH22 ,C26 ,C48 ,CF2 Cl2 ,SF6 ,NF3 などが挙げられる。
【0125】(実施例1)本実施例では、図1、図2に示したような構成の装置を作製してプラズマを発生させた。
【0126】アルミニウム製の導電性の部材にマイクロ波の進行方向に垂直な断面が縦が27mm、横が96mmの矩形断面であり、周長が路内波長の3倍、即ち152mmの無終端環状導波路13となる環状溝を形成した。
【0127】導電性の平板に路内波長の2分の1間隔となるように長さ42mm、幅4mmの矩形スロットを6個形成し、アルミニウム製スロット付平板23を作製した。この時スロットの中心が導波路13の中心に対して内方に24mm偏るようにした。
【0128】導電性の部材とスロット付平板とを組み合わせて図1に示すようなマイクロ波供給器を作製した。
【0129】無水合成石英ガラスを加工して直径299mm、厚さ12mmの円盤を形成し、これを誘電体窓4に用いた。
【0130】実験の為、空間9内にプローブを配置し、空間9内を排気後、ガス供給路7よりアルゴンガスを500sccm導入した。
【0131】排気系のコンダクタンスバルブとガス供給系のマスフローコントローラーを調整し、空間9内の圧力を1.33Paに維持した。
【0132】2.45GHz、3.0kWマイクロ波を4Eチューナー、方向性結合器、アイソレータを介して導波管5よりマイクロ波供給器3にTE10モードで導入した。
【0133】シングルプローブ法により、プローブに印加する電圧を−50Vから+100Vの範囲内で変化させながら、プローブに流れる電流を測定し、I−V曲線を得、電子密度を算出した。その結果、電子密度は直径300mmの平面内において2.1×1012/cm2 、電子密度の均一性(バラツキで表わす)は±2.7%であった。
【0134】次に、圧力を133Paに上昇させ、同様に電子密度を測定したところ、9.6×1011/cm2 、電子密度の均一性は±5.4%であった。
【0135】このことから、高圧領域においても、空間9の横方向中心付近で高密度プラズマが形成されていることが判った。
【0136】(実施例2)本実施例では、図3、図4に示したような構成の装置を作製してプラズマを発生させた。
【0137】実施例1で用いたスロット付平板を図3に示したような平板に交換した。
【0138】アルミニウムの平板に、長さ42mm、幅4mmの矩形スロットを6個内方に等間隔にて形成した。偏心量(オフセット量)は23mmとした。
【0139】更に、長さ42mm、幅4mmの矩形スロットを6個外方に等間隔に配されるよう形成した。偏心量は23mmとした。
【0140】こうして、路内波長の2分の1間隔にて不連続線状スロットが6組形成されたことになる。
【0141】同一直線上にある一対のスロットの間隔は4mmであり、隣接する不連続線状スロットのなす角は60℃である。
【0142】又、無水合成石英ガラスを加工して、直径299mm、厚さ16mmの円盤状の誘電体窓4を作製した。
【0143】実施例1と同様にしてプラズマの電子密度を算出した。
【0144】圧力が1.33Paの時は、電子密度が1.9×1012/cm3 、均一性が±2.7%であった。
【0145】圧力が133Paの時は、電子密度が8.7×1011/cm3 、均一性が±5.6%であった。
【0146】(実施例3)図1、図2に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にてフォトレジストのアッシングを行った。
【0147】被処理体Wとしては、フォトレジストパターン下の酸化シリコンからなる絶縁膜をエッチングし、ビアホールを形成し直後のシリコン基板(直径200mm)を使用した。まず、シリコン基板を保持手段2上に設置した後、排気系を介して容器1内を排気し、1.33×10-3Paまで減圧させた。処理用ガス供給口17を介して酸素ガスを2slmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ28を調整し、容器1内を133Paに保持した。容器1内に、マイクロ波電源6より1.5kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給器3を介して供給した。かくして、空間9内にプラズマを発生させた。この際、処理用ガス供給口17を介して導入された酸素ガスは空間9内でオゾンとなり、シリコン基板Wの方向に輸送され、基板W上のフォトレジストを酸化し、フォトレジストは気化し、除去された。アッシング後、アッシング速度と基板表面電荷密度などについて評価した。
【0148】得られたアッシング速度及び均一性は極めて良好で6.6μm/min、±4.5%であった。表面電荷密度は−1.3×1011/cm2 と充分低い値を示した。
【0149】(実施例4)図3、図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、フォトレジストのアッシングを行った。
【0150】用いた被処理体及び処理方法は上記実施例3と同じものとした。
【0151】得られたアッシング速度及び均一性は、6.4μm/min、±3.4%であった。表面電荷密度は、−1.4×1011/cm2 と充分低い値を示した。
【0152】(実施例5)図1、図2に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にて半導体素子保護用窒化シリコン膜の形成を行った。
【0153】被処理体Wとしては、ラインアンドスペースがそれぞれ0.5μmのAl配線パターンが形成された酸化シリコンからなる絶縁膜付きP型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、シリコン基板を保持手段2上に設置した後、排気系を介して容器1内を排気し、1.33×10-5Paの値まで減圧させた。続いて保持手段2に付設したヒータ(不図示)に通電し、シリコン基板を300℃に加熱し、保持した。処理用ガス供給口17を介して窒素ガスを600sccmの流量で、又、モノシランガスを200sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ28を調整し、容器1内を2.66Paに保持した。ついで、マイクロ波電源6より3.0kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給器3を介して供給した。かくして、空間9内にプラズマを発生させた。この際、処理用ガス供給口17を介して導入された窒素ガス空間9内で励起、解離、イオン化されて活性種となり、シリコン基板の方向に輸送され、モノシランガスと反応し、窒化シリコン膜がシリコン基板上に1.0μmの厚さで形成された。成膜速度及び応力などの膜質について評価した。応力は成膜前後の基板の反り量の変化をレーザ干渉計Zygo(商品名)で測定し求めた。
【0154】得られた窒化シリコン膜の成膜速度及び均一性は、510nm/min、±2.5%であった。応力は1.2×109 dyne/cm2 (圧縮)、リーク電流は1.2×10-10 A/cm2 、絶縁耐圧は9MV/cmであり、極めて良質な膜であることが確認された。
【0155】(実施例6)図3、図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にてプラスチックレンズ防止用酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の形成を行った。
【0156】被処理体Wとしては、直径50mmプラスチック凸レンズを使用した。レンズを保持手段2上に設置した後、排気系を介して容器1内を排気し、1.33×10-5Paの値まで減圧させた。処理用ガス供給口17を介して窒素ガスを160sccmの流量で、又、モノシランガスを100sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ8を調整し、容器1内を9.32×10-1Paに保持した。ついで、マイクロ波電源6より3.0kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、空間9内にプラズマを発生させた。この際、処理用ガス供給口17を介して導入された窒素ガスは、空間9内で励起、解離、イオン化されて窒素原子などの活性種となり、レンズの方向に輸送され、モノシランガスと反応し、窒化シリコン膜がレンズの表面上に21nmの厚さで形成された。
【0157】次に、処理用ガス供給口17を介して酸素ガスを200sccmの流量で、又、モノシランガスを100sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ8を調整し、容器1内を1.33×10-1Paに保持した。ついで、マイクロ波電源6より2.0kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、空間9にプラズマを発生させた。この際、導入された酸素ガスは、空間9で励起、分解されて酸素原子などの活性種となり、レンズの方向に輸送され、モノシランガスと反応し、酸化シリコン膜がレンズ上に86nmの厚さで形成された。成膜速度、反射特性について評価した。
【0158】得られた窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の成膜速度及び均一性はそれぞれ320nm/min、±2.2%、350nm/min、±2.6であった。又、500nm付近の反射率が0.3%であり、極めて良好な光学特性であることが確認された。
【0159】(実施例7)図3、図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にて半導体素子の層間絶縁膜の形成を行った。
【0160】被処理体Wとしては、最上部にラインアンドスペース0.5μmのAlパターンが形成されたP型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を使用した。このシリコン基板を保持手段上に設置した。排気系を介して容器1内を真空排気し、1.33×10-5Paまで減圧させた。続いて保持手段に付設したヒータに通電し、シリコン基板を300℃に加熱し、保持した。処理用ガス供給口17を介して酸素ガスを500sccmの流量で、又、モノシランガスを200sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ8を調整し、容器1内を4.00Paに保持した。ついで、保持手段に付設したバイアス電圧印加手段を介して300W、13.56MHzの高周波の電力を保持手段2に印加するとともに、マイクロ波電源6より2.0kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給管3を介して容器1内に供給した。かくして、空間9にプラズマを発生させた。処理用ガス供給口17を介して導入された酸素ガスは空間9で励起、分解されて活性種となり、シリコン基板の方向に輸送され、モノシランガスと反応し、酸化シリコン膜がシリコン基板上に0.8μmの厚さで形成された。この時、イオン種はRFバイアスにより加速されて基板に入射しAlパターンの上の酸化シリコン膜を削り平坦性を向上させる。そして、成膜速度、均一性、絶縁耐圧、及び段差被覆性について評価した。段差被覆性は、Alパターン上に成膜した酸化シリコン膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、ボイドを観測することにより評価した。
【0161】得られた酸化シリコン膜の成膜速度及び均一性は240nm/min、±2.5%であった。絶縁耐圧は8.5MV/cm、ボイドフリーであって良質な膜であることが確認された。
【0162】(実施例8)図3、図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にて半導体素子の層間絶縁膜のエッチングを行った。
【0163】被処理体Wとして、ラインアンドスペース0.18μmのAlパターン上に1μm厚の酸化シリコンからなる絶縁膜及びその上にホストレジストパターンが形成されたP型単結晶シリコン基板(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を使用した。まず、シリコン基板を保持手段2上に設置した後、排気系を介して容器1内を排気し、1.33×10-5Paまで減圧させた。処理用ガス供給口17を介してC48 を100sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブ8を調整し、容器1内を1.33Paの圧力に保持した。ついで、保持手段に付設したバイアス電圧印加手段を介して300W、13.56Mzの高周波の電力を保持手段2に印加するとともに、マイクロ波電源より2.0kW、2.45GHzの電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、空間9にプラズマを発生させた。処理用ガス供給口17を介して容器1内に導入されたC48 ガスは空間9で励起、分解されて活性種となり、シリコン基板の方向に輸送され、自己バイアスによって加速されたイオンによって酸化シリコンからなる絶縁膜がエッチングされホールが形成された。保持手段2に付設されたクーラ(不図示)により基板温度は80℃までしか上昇しなかった。エッチング後、エッチング速度、選択比、及びエッチング形状について評価した。エッチング形状は、エッチングされた酸化シリコン膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、評価した。
【0164】エッチング速度及び均一性と対ポリシリコン選択比はそれぞれ、540nm/min、±2.2%、20であった。ホールはほぼ垂直な側面を呈しており、マイクロローティング効果も少ないことが確認された。
【0165】(実施例9)図4に示したようなプラズマ処理装置を用いて、直径200mmのウエハ上のフォトレジストをアッシングした。
【0166】マイクロ波供給器としては、周長が路内波長の2倍であり、不連続線状スロットが路内波長の2分の1間隔で4組配された構成を採用した。
【0167】(実施例10)図4に示したプラズマ処理装置を用いて直径300mmのウエハ表面の酸化シリコンからなる絶縁膜をエッチングした。
【0168】マイクロ波供給器としては、周長が路内波長の4倍であり、不連続線状スロットが路内波長の2分の1間隔で8組配された構成を採用した。
【0169】(実施例11)図5、図6に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にてフォトレジストのアッシングを行った。
【0170】被処理体Wとして、層間SiO2 膜をエッチングし、ビアホールを形成した直後のシリコンウエハ(φ8インチ)を用意した。まず、Siウエハを保持手段2上に設置した後、排気系(不図示)を介して容器1内を真空排気し、約1.33×10-3Paまで減圧させた。プラズマ処理用ガスとして酸素ガスを2slmの流量で容器1内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、容器1内を約2.66×102 Paに保持した。容器1内に、2.45Gzのマイクロ波電源より1.5kWの電力をマイクロ波供給器3を介して供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。この際、導入された酸素ガスの一部は容器1内で、オゾンとなり、シリコンウエハの方向に輸送され、シリコンウエハ上のフォトレジストを酸化するのでホストレジストは気化し、除去された。この時アッシング速度と基板表面電荷密度などについて評価した。
【0171】得られたアッシング速度は、8.6μm/minプラスマイナス8.5%と極めて大きく、表面電荷密度も−1.3×1011/cm2 と充分低い値を示した。
【0172】(実施例12)図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にてフォトレジストのアッシングを行った。
【0173】被処理体Wとして、層間SiO2 膜をエッチングし、ビアホールを形成した直後のシリコンウエハ(φ8インチ)を使用した。まず、シリコンウエハを保持手段2上に設置した後、容器1内を真空排気し、約1.33×10-3Paまで減圧させた。酸素ガスを2slmの流量で容器1内に導入した。ついで、容器1内を約2.66×102 Paに保持した。容器1内に、2.45GHzのマイクロ波電源より1.5kWの電力をマイクロ波供給器3を介して供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。この際、導入された酸素ガスはオゾンとなり、ウエハの方向に輸送され、ウエハ上のフォトレジストは酸化され、気化し、除去された。アッシング速度と基板表面電荷密度などについて評価した。
【0174】得られたアッシング速度は、8.4μm/min±7.4%と極めて大きく、表面電荷密度も−1.4×1011/cm2 と充分低い値を示した。
【0175】(実施例13)図5、図6に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順で半導体素子保護用窒化シリコン膜の形成を行った。
【0176】被処理体Wとして、Al配線パターン(ラインアンドスペース0.5μm)が形成された層間SiO2 膜付きP型単結晶シリコンウエハ(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を用意した。まず、このシリコンウエハを保持手段2上に設置した後、容器1内を真空排気し、約1.33×10-5Paの値まで減圧させた。続いてヒータ144に通電し、シリコンウエハを300℃に加熱昇温し、この温度に保持した。プラズマ処理用ガスとして、窒素ガスを600sccmの流量で、又、モノシランガスを200sccmの流量で容器1内に導入し、容器1内を約2.66Paに保持した。ついで、2.45GHz、3.0kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給して、プラズマを発生させた。この際、窒素ガスは活性種となり、シリコンウエハの方向に輸送され、モノシランガスと反応し、窒化シリコン膜がシリコンウエハ上に堆積する。1.0μmの厚さで堆積した膜について、成膜速度、応力などの膜質を評価した。応力は成膜前後の基板の反り量の変化をレーザ干渉計Zygo(商品名)で測定し求めた。
【0177】得られた窒化シリコン膜の成膜速度は、510nm/minと極めて大きく、膜質も応力1.2×109 dyne/cm2 (圧縮)、リーク電流1.2×10-10 A/cm2 、絶縁耐圧9MV/cmの極めて良質な膜であることが確認された。
【0178】(実施例14)図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順でプラスチックレンズ反射防止用酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の形成を行った。
【0179】被処理としては、直径50mmプラスチック凸レンズを用意した。レンズを保持手段2上に設置した後、容器1内を真空排気し、約1.33×10-5Paまで減圧させた。窒素ガスを160sccmの流量で、又、モノシランガスを100sccmの流量で容器1内に導入し、容器1内を約0.93Paに保持した。ついで、2.45GHz、3.0kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。21nmの厚さの窒化シリコン膜をレンズ上に形成した。
【0180】次に、酸素ガスを200sccmの流量で、又、モノシランガスを100sccmの流量で容器1内に導入した。ついで、容器1内を約0.133Paに保持した。ついで、2.45GHz、2.0kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。この際、導入された酸素ガスは、容器1内で励起、解離されて酸素原子、ラジカルなどの活性種となり、ガラス基板の方向に輸送され、モノシランガスと反応し、酸化シリコン膜としてガラス基板上に堆積する。86nmの厚さの酸化シリコンを成膜した。得られた窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜の成膜速度はそれぞれ320nm/min、350nm/minと良好で、膜質も、500nm付近の反射率が0.3%と極めて良好な反射特性であることが確認された。
【0181】(実施例15)図8に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順で半導体素子層間絶縁用酸化シリコン膜の形成を行った。
【0182】被処理体Wとして、最上部にAlパターン(ラインアンドスペース0.5μm)が形成されたP型単結晶シリコンウエハ(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を用意した。まずシリコンウエハを保持手段2上に設置した。容器1内を真空排気し、約1.33×10-5Paまで減圧した。続いてヒータ114に通電し、シリコンウエハを300℃に加熱昇温し、この温度に保持した。酸素ガスを500sccmの流量で、また、モノシランガスを200sccmの流量で容器1内に導入し、容器1内を約3.99Paに保持した。ついで、13.56MHz、300kWのRF電力を保持手段2に印加するとともに、2.45GHz、2.0kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器33を介して容器1内に供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。導入された酸素ガスは、励起、解離、イオン化されて活性種となり、ウエハの方向に輸送され、モノシランガスと反応し、酸化シリコンを堆積する。この例では、イオン種はRFバイアスにより加速されて基板に入射しパターン上の膜を削り膜の平坦性を向上させる作用がある。ウエハ上に0.8μmの厚さで形成された膜について成膜速度、均一性、絶縁耐圧、及び段差被覆性について評価した。段差被覆性は、Al配線パターン上に成膜した酸化シリコンの膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、ボイドを観測することにより評価した。得られた酸化シリコン膜の成膜速度と均一性は240nm/min±2.5%と良好で、膜質も絶縁耐圧8.5MV/cm、ボイドフリーであって良質な膜であることが確認された。
【0183】(実施例16)図9に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順で半導体素子層間SiO2 膜のエッチングを行った。
【0184】被処理体Wとして、Alパターン(ラインアンドスペース0.35μm)上に1μm圧の層間SiO2 膜が形成されたP型単結晶シリコンウエハ(面方位〈100〉、抵抗率10Ωcm)を用意した。まず、シリコンウエハを保持手段2上に設置した後、排気系(不図示)を介して容器1内を真空排気し、1.33×10-5Paまで減圧した。C48 を100sccmの流量で容器1内に導入し、容器1内を1.33Paの圧力に保持した。ついで、13.56MHz、300WのRF電力を保持手段2に印加するとともに、2.45GHz、2.0kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。導入されたC48 ガスは容器1内で励起、解離、イオン化されて活性種となり、シリコンウエハの方向に輸送され、自己バイアスによって加速されたイオンによって層間SiO2 膜がエッチングされる。クーラ414により基板温度は80℃までしか上昇しなかった。エッチング時の、エッチング速度、エッチング選択比、及びエッチング形状について評価した。エッチング形状は、エッチングされた酸化シリコン膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、評価した。
【0185】エッチング速度と対ポリシリコン選択比は540nm/min、20と良好で、エッチング形状もほぼ垂直で、マイクロローディング効果も少ないことが確認された。
【0186】(実施例17)図9に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、以下の手順にて半導体素子ゲート電極間ポリシリコン膜のエッチングを行った。
【0187】被処理体Wとしては、最上部にポリシリコン膜が形成されたP型単結晶シリコンウエハ(面方向〈100〉、抵抗率10Ωcm)を用意した。まず、シリコンウエハを保持手段2上に設置した後、容器1内を真空排気し、約1.33×10-5Paまで減圧した。C48 ガスを100sccm、酸素を20sccmの流量で容器1内に導入し、容器1内を約0.67Paの圧力に保持した。ついで、400kHz、300Wの高周波電力を保持手段2に印加するとともに、2.45GHz、1.5kWのマイクロ波電力をマイクロ波供給器3を介して容器1内に供給した。かくして、容器1内にプラズマを発生させた。導入されたC48ガス及び酸素は容器1内で励起、解離、イオン化されて活性種となり、シリコンウエハの方向に輸送され、自己バイアスによって加速されたイオンによりポリシリコン膜がエッチングされる。処理時には、クーラ414により、基板温度は80℃までしか上昇しなかった。エッチング時のエッチング速度、エッチング選択比、及びエッチング形状について評価した。エッチング形状は、エッチングされたポリシリコン膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観測し、評価した。
【0188】エッチング速度と対SiO2 選択比はそれぞれ750nm/min、29と良好で、エッチング形状も垂直で、マイクロローディング効果も少ないことが確認された。
【0189】
【発明の効果】本発明によれば、マイクロ波の放射特性をより精密に制御できるので、被処理体の半径方向及び周方向或いはこれらに等価系方向における処理の制御性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプラズマ処理装置を示す断面図。
【図2】本発明に用いられるスロット付平板の他の一例を示す平面図。
【図3】本発明による別のプラズマ処理装置を示す断面図。
【図4】本発明に用いられるスロット付平板の他の例を示す平面図。
【図5】本発明による環状導波管を用いたマイクロ波プラズマ処理装置の模式的断面図。
【図6】スロット付平板の上面図。
【図7】本発明による接線導入型の環状導波管を用いたマイクロ波プラズマ処理装置の模式断面図である。
【図8】本発明による他のマイクロ波プラズマ処理装置の模式断面図である。
【図9】本発明による他のマイクロ波プラズマ処理装置の模式断面図である。
【図10】プラズマ処理方法の一例を示す図。
【図11】プラズマ処理方法の別の例を示す図。
【図12】プラズマ処理装置の構成を示す図。
【図13】マイクロ波供給器の断面図。
【図14】導波路の断面図。
【図15】マイクロ波の放射の様子を示す図。
【符号の説明】
1 容器
2 被処理体保持手段
3 マイクロ波供給器
4 誘電体窓
5 導波管
6 マイクロ波電源
7 ガス供給路
8 排気路
9 空間
13 環状導波路
17 ガス供給口
23 スロット付平板
27 ガス供給系
33、43 スロット
114 ヒーター
414 クーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロ波を放射する為の複数のスロットが設けられた面を有する環状導波路を備えたマイクロ波供給器において、前記複数のスロットの中心が前記面に沿った方向に前記環状導波路の中心に対して偏って配置されていることを特徴とするマイクロ波供給器。
【請求項2】 前記複数のスロットは前記環状導波路の中心より環内方に偏っている請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項3】 前記環状導波路の中心より環外方に、更に別の複数のスロットが偏って設けられている請求項2記載のマイクロ波供給器。
【請求項4】 前記環状導波路は、その周長がマイクロ波の路内波長の整数倍である無終端環状導波路である請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項5】 前記スロットの長さは、マイクロ波の路内波長の1/4乃至3/8の範囲から選択される請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項6】 前記環状導波路内にTE10モードのマイクロ波が導入される請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項7】 前記複数のスロットが設けられた面は、前記環状導波路のH面である請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項8】 前記複数のスロットは、マイクロ波の路内波長の1/2又は1/4間隔で配置されている請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項9】 前記複数のスロットが設けられた面には、該スロットを覆う誘電体が設けられている請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項10】 前記複数のスロットが設けられた面は、交換可能である請求項1記載のマイクロ波供給器。
【請求項11】 マイクロ波を放射する為の複数のスロットが設けられた平面を有する環状導波路を備えたマイクロ波供給器において、前記スロットはマイクロ波の進行方向に対して交差する方向に向いた不連続線状スロットであることを特徴とするマイクロ波供給器。
【請求項12】 前記環状導波路は、その周長がマイクロ波の路内波長の整数倍である無終端環状導波路である請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項13】 前記スロットの長さは、マイクロ波の路内波長の1/4乃至3/8の範囲から選択される請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項14】 前記環状導波路内にTE10モードのマイクロ波が導入される請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項15】 前記複数のスロットが設けられた面は、前記環状導波路のH面である請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項16】 前記複数のスロットは、マイクロ波の路内波長の1/2又は1/4間隔で配置されている請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項17】 前記複数のスロットが設けられた面には、該スロットを覆う誘電体が設けられている請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項18】 前記複数のスロットが設けられた面は、交換可能である請求項11記載のマイクロ波供給器。
【請求項19】 内部が排気可能な容器と、前記容器内に処理ガスを供給するガス供給口とを有し、該容器内に配された被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記容器内に前記ガスのプラズマを発生させるためのマイクロ波エネルギーを供給する手段として、請求項1に記載のマイクロ波供給器を用いたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項20】 前記ガス供給口が前記容器の側壁に設けられている請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項21】 前記ガス供給口が前記被処理体より前記複数のスロットが設けられた面寄りに設けられている請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項22】 前記ガス供給口から前記複数のスロットが設けられた面に向けて前記処理ガスを放出する請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項23】 前記容器には、該容器内を1.34×103 Pa以下に減圧できる排気ポンプが設けられている請求項19記載のプラズマ処理装置。
【請求項24】 被処理体をプラズマ処理するためのプラズマ処理方法において、請求項19記載のプラズマ処理装置を用いて前記被処理体をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項25】 前記プラズマ処理方法は、アッシング、エッチング、クリーニング、CVD、プラズマ重合、ドーピング、酸化、窒化の少なくともいずれか一種である請求項24記載のプラズマ処理方法。
【請求項26】 前記環状導波路の周長を、マイクロ波の路内波長の2倍又は3倍として、200mmウエハのアッシングを行う請求項24記載のプラズマ処理方法。
【請求項27】 内部が排気可能な容器と、前記容器内に処理ガスを供給するガス供給口とを有し、該容器内に配された被処理体にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記容器内に前記ガスのプラズマを発生させるためのマイクロ波エネルギーを供給する手段として、請求項11に記載のマイクロ波供給器を用いたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項28】 前記ガス供給口が前記容器の側壁に設けられている請求項27記載のプラズマ処理装置。
【請求項29】 前記ガス供給口が前記被処理体より前記複数のスロットが設けられた面寄りに設けられている請求項27記載のプラズマ処理装置。
【請求項30】 前記ガス供給口から前記複数のスロットが設けられた面に向けて前記処理ガスを放出する請求項27記載のプラズマ処理装置。
【請求項31】 前記容器には、該容器内を1.34×103 Pa以下に減圧できる排気ポンプが設けられている請求項27記載のプラズマ処理装置。
【請求項32】 被処理体をプラズマ処理するためのプラズマ処理方法において、請求項27記載のプラズマ処理装置を用いて前記被処理体をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項33】 前記プラズマ処理方法は、アッシング、エッチング、クリーニング、CVD、プラズマ重合、ドーピング、酸化、窒化の少なくともいずれか一種である請求項32記載のプラズマ処理方法。
【請求項34】 前記環状導波路の周長を、マイクロ波の路内波長の4倍として、300mmウエハのアッシングを行う請求項32記載のプラズマ処理方法。
【請求項35】 前記環状導波路の周長を、マイクロ波の路内波長の2倍又は3倍として、200mmウエハのアッシングを行う請求項32記載のプラズマ処理方法。
【請求項36】 請求項24又は32に記載のプラズマ処理方法により処理された構造体。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2001−73150(P2001−73150A)
【公開日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−306902
【出願日】平成11年10月28日(1999.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】