説明

二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板へのダメージを抑制しつつ、処理液による処理時間を短縮することができる二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】二流体ノズル3は、外筒23、内筒24および中間筒25を含む。内筒24の内部空間は、DIWが流通する直線状の第1処理液流路26となっている。内筒24と中間筒25との間には、窒素ガスが流通する円筒状の気体流路27が形成されおり、中間筒25と外筒23との間には、DIWが流通する円筒状の第2処理液流路28が形成されている。第1処理液流路26の下端は、DIWを吐出する円状の第1処理液吐出口30となっており、気体流路27の下端は、第1処理液吐出口30を取り囲み窒素ガスを吐出する円環状の気体吐出口31となっている。また、第2処理液流路28の下端は、気体吐出口31を取り囲みDIWを吐出する円環状の第2処理液吐出口34となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という。)の表面の異物(パーティクル等)を除去するための洗浄処理が不可欠である。ウエハの表面を洗浄するための基板処理装置には、たとえば、処理液(洗浄液)と気体とを混合することにより処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴をウエハの表面に供給して洗浄処理を行うものがある。
【0003】
具体的には、前記基板処理装置は、たとえば、ウエハを水平に保持して回転させるスピンチャックと、処理液の液滴をスピンチャックに保持されたウエハの表面に向けて噴射する二流体ノズルと、スピンチャックに保持されたウエハの上方で二流体ノズルを移動(スキャン)させるノズル移動機構とを備えている。
二流体ノズルから噴射される処理液の液滴をウエハに衝突させることにより、ウエハの表面に付着している異物を、処理液の液滴の運動エネルギーにより、物理的に除去することができる。また、ウエハの上方で二流体ノズルをスキャンさせることにより、ウエハの表面の全域に処理液の液滴を供給することができる(たとえば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−270564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二流体ノズルから噴射された処理液の液滴がウエハの表面に供給される範囲は、ウエハの表面に対して非常に小さい範囲である。また、近年のウエハの大型化に伴って、ウエハの表面に対する液滴の供給範囲の割合は益々小さくなってきている。したがって、二流体ノズルをスキャンさせてウエハの表面全域に処理液の液滴を供給するには多くの時間がかかり、ウエハの洗浄時間が長くなるという問題がある。
【0005】
この問題の解決方法としては、たとえば、二流体ノズルのスキャン速度を大きくすることが考えられる。しかしながら、二流体ノズルのスキャン速度を大きくすると、処理液の液滴が十分に供給されない箇所がウエハの表面内に生じるので、ウエハの表面を均一に洗浄できない場合や、十分な洗浄効果が得られない場合がある。
したがって、二流体ノズルのスキャン速度を大きくして、ウエハの洗浄時間を短縮するには、たとえば、ウエハの表面全域に処理液の液滴を十分に供給させつつ、十分な洗浄効果が得られるように、より大きな運動エネルギーを処理液の液滴に与えなければならない。
【0006】
しかし、より大きな運動エネルギーを処理液の液滴に与えると、その運動エネルギーによってウエハの表面に形成されたパターンにダメージが生じ、パターン飛び(配線の短絡)などが発生してしまう場合がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、基板へのダメージを抑制しつつ、処理液による処理時間を短縮することができる二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理液および気体が導入されるケーシング(23,45)と、前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状気体吐出口(31)と、前記環状気体吐出口の内側および外側にそれぞれ配置されて前記ケーシングに形成され、処理液を吐出するための少なくとも2つの液吐出口(30,34)とを含み、前記ケーシング外で前記処理液と前記気体とを混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象(W)に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル(3,3a,3b)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、ケーシングに形成された環状気体吐出口から気体を吐出させつつ、前記ケーシングに形成され、前記環状気体吐出口の内側および外側にそれぞれ配置された少なくとも2つの液吐出口から処理液を吐出させる。これにより、処理液および気体をケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成し、形成された処理液の液滴を処理対象に向けて吐出させることができる。また、前記少なくとも2つの液吐出口を設けることにより、処理液の液滴が処理対象に供給される範囲を拡大させ、単位時間当たりに形成される処理液の液滴の数を増加させることができる。
【0009】
したがって、二流体ノズルを移動(スキャン)させて処理対象の処理面の全域に処理液の液滴を供給する場合に、処理液の液滴を前記処理面に十分に供給させながら二流体ノズルをスキャンさせるときの最大スキャン速度を上げることができる。これにより、処理液による処理を処理対象に均一に施しつつ、処理液による処理時間を短縮することができる。
【0010】
また、単位時間当たりに形成される処理液の液滴の数を増加させることにより、処理液による処理効率を向上させることができる。これにより、前記スキャン速度を上げても、処理液による処理効果を十分に得ることができる。また、必要以上に大きな運動エネルギーを処理液の液滴に与えなくてもよいので、処理液の液滴による処理対象へのダメージを抑制することができる。
【0011】
前記環状気体吐出口は、円環状であってもよいし、多角環状であってもよい。また、環状気体吐出口の内側または/および外側に、気体を吐出する気体吐出口(44,47)をさらに設けてもよい。この気体吐出口は、前記環状気体吐出口と同心の円状であってもよいし、前記環状気体吐出口と同心の環状(円環状または多角環状)であってもよい。また、前記気体吐出口を複数設け、複数の気体吐出口を、前記環状気体吐出口と同心形状となるように、環状に配置してもよい。
【0012】
同様に、前記液吐出口は、前記環状気体吐出口と同心の円状であってもよいし、前記環状気体吐出口と同心の円環状または多角環状であってもよい。また、複数の液吐出口が、前記環状気体吐出口と同心形状となるように、環状に配置されていてもよい。
また、前記少なくとも2つの液吐出口から吐出される処理液は、互いに異なる種類の処理液であってもよいし、同種の処理液であってもよい。さらに、前記液吐出口が3つ以上設けられている場合には、2つ以上の液吐出口から同種の処理液を吐出させ、残りの液吐出口から異なる種類の処理液を吐出させてもよい。
【0013】
たとえば、請求項2記載の発明のように、前記2つの液吐出口は、同種の処理液を吐出するようにしてもよいし、請求項3記載の発明のように、前記2つの液吐出口は、互いに異なる種類の処理液を吐出するようにしてもよい。
異なる種類の処理液を吐出させることにより、これらの処理液を処理対象の上空また処理対象上で混合させて、混合処理液による処理を処理対象に施すことができる。
【0014】
前記処理液としては、たとえば、薬液やリンス液などを用いることができる。具体的には、薬液として、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いることができ、リンス液として、たとえば、純水、DIW(脱イオン化された純水)、機能水(炭酸水、水素水、オゾン水など)などを用いることができる。
【0015】
また、前記気体としては、たとえば、空気、窒素ガス、オゾンガス、炭酸ガス、水素ガスのうちの少なくとも1種以上を含む気体を用いることができる。
前記気体は加熱された状態で吐出されてもよいし、加熱されていない状態で吐出されてもよい。加熱された気体を吐出させることにより、当該気体と混合される処理液の温度の低下を抑制したり、その温度を昇温させたりすることができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記異なる種類の処理液は、互いに種類の異なる第1薬液および第2薬液を含む、請求項3記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、前記2つの液吐出口のうちの一方から第1薬液を吐出させ、他方から第2薬液を吐出させる。そして、吐出された第1薬液および第2薬液は、処理対象の上空または処理対象上で液滴の状態で混合される。したがって、処理対象には、殆ど劣化のない活性の高い混合薬液が供給される。これにより、前記混合薬液による薬液処理を処理対象に効率的に施すことができる。
【0017】
また、第1薬液および第2薬液の混合により反応熱が生じる場合には、この反応熱を、二流体ノズルなどの他の部材に吸熱させることなく、前記混合液の昇温に寄与させることができる。したがって、前記反応熱を利用して混合薬液による薬液処理を促進させる場合には、良好な処理を処理対象に施すことができる。さらに、第1薬液および第2薬液は、液滴の状態で互いに混ざり合うので、良好に混合された混合薬液を処理対象に供給することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、前記異なる種類の処理液は、薬液およびリンス液を含む、請求項3記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、前記2つの液吐出口のうちの一方から薬液を吐出させ、他方からリンス液を吐出させる。これにより、処理対象に供給される薬液の濃度を容易に調節したり、薬液による処理対象への薬液処理範囲を限定したりすることができる。
【0019】
すなわち、前記2つの液吐出口のうちの、前記環状気体吐出口の内側に配置された液吐出口からリンス液を吐出させ、前記環状気体吐出口の外側に配置された液吐出口から薬液を吐出させた場合には、吐出された薬液が、薬液よりも内側から吐出されたリンス液と瞬時に混ざり合い薄められるので、薬液およびリンス液の各流量を調節することにより、処理対象に供給される薬液の濃度を容易に調節することができる。
【0020】
また、前記2つの液吐出口のうちの、前記環状気体吐出口の内側に配置された液吐出口から薬液を吐出させ、前記環状気体吐出口の外側に配置された液吐出口からリンス液を吐出させた場合には、薬液よりも外側から吐出されたリンス液によって薬液を取り囲んで、薬液による処理対象への薬液処理範囲を限定することができる。したがって、処理対象の一部にのみ薬液処理を施す場合に良好な処理を施すことができる。
【0021】
前記2つの液吐出口から吐出される処理液の組合せの具体例としては、硫酸および過酸化水素水、アンモニア水および過酸化水素水、塩酸および過酸化水素水、フッ酸および過酸化水素水、硝酸およびDIW、酢酸およびオゾン水、硫酸およびオゾン水などが挙げられる。
硫酸および過酸化水素水の混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、基板上に形成されたレジスト膜を剥離して基板上から除去することができる。
【0022】
アンモニア水および過酸化水素水の混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、パーティクルなどの異物を基板上から除去することができる。
塩酸および過酸化水素水の混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、金属汚染物などの不要物を基板上から除去することができる。
フッ酸および過酸化水素水の混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、金属汚染物などの不要物や酸化膜を基板上から除去することができる。
【0023】
硝酸およびDIWの混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、金属汚染物などの不要物や金属膜を基板上から除去することができる。
酢酸およびオゾン水の混合液や硫酸およびオゾン水の混合液を、たとえば処理対象としての基板に供給することにより、レジストなどの有機物を基板上から除去することができる。
【0024】
また、前記少なくとも2つの液吐出口から吐出される処理液にオゾン水が含まれる場合には、当該オゾン水の吐出とともに、または当該オゾン水に代えて、環状気体吐出口または/および気体吐出口からオゾンガスを吐出させてもよい。オゾン水よりも高濃度でオゾンを含むオゾンガスを処理液と混合させることにより、オゾンを高濃度で含む処理液の液滴を処理対象に供給して、オゾンによる効果、たとえば、基板表面の有機物を良好に除去する効果や基板表面に酸化膜を厚く形成する効果等を確実に発揮させることができる。
【0025】
また、前記少なくとも2つの液吐出口から吐出される処理液にDIWが含まれる場合には、DIWに代えて、炭酸水または水素水を用いてもよい。DIWに代えて炭酸水を用いることにより、処理対象の帯電を抑制することができる。また、DIWに代えて水素水を用いることにより、パーティクルなどの異物が処理対象に付着することを低減させるとともに、処理対象が酸化されることを抑制することができる。
【0026】
請求項6記載の発明は、処理対象の基板(W)を保持して回転させるための基板回転手段(2)と、前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜5のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、前記二流体ノズルのケーシングに前記処理液を供給するための処理液供給手段(11,12,37,38)と、前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給するための気体供給手段(10)と、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段(16)とを含む、基板処理装置(1,1a)である。
【0027】
この発明によれば、処理液供給手段および気体供給手段からそれぞれ処理液および気体を二流体ノズルのケーシングに供給し、供給された処理液および気体を二流体ノズルから吐出させることにより、処理液および気体をケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成し、この形成された処理液の液滴を、基板回転手段によって回転されている基板の主面に供給しつつ、ノズル移動手段によって当該二流体ノズルを基板の主面に沿って移動(スキャン)させる。これにより、基板の主面の全域に処理液の液滴を供給させることができる。
【0028】
前述のように、処理対象としての基板の主面に処理液の液滴が供給される範囲は拡大されており、単位時間当たりに形成される処理液の液滴の数は増加されている。したがって、処理液の液滴を前記主面に十分に供給させながら二流体ノズルをスキャンさせるときの最大スキャン速度を上げることができる。これにより、処理液による処理を基板の主面に均一に施しつつ、処理液による基板への処理時間を短縮することができる。
【0029】
また、単位時間当たりに形成される処理液の液滴の数を増加させることにより、処理液による処理効率を向上させることができる。これにより、前記スキャン速度を上げても処理液による処理効果を十分に得ることができる。また、必要以上に大きな運動エネルギーを処理液の液滴に与えなくてもよいので、処理液の液滴による基板へのダメージを抑制することができる。
【0030】
請求項7記載の発明は、処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転工程と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二流体ノズルのケーシングに前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給する気体供給工程と、前記基板回転工程で回転されている基板の主面に、前記二流体ノズルから処理液の液滴を供給する液滴供給工程と、前記液滴供給工程と並行して、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるノズル移動工程とを含む、基板処理方法である。
【0031】
この発明によれば、請求項6に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。この基板処理装置1は、処理対象の基板としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)に処理液(薬液または純水その他のリンス液)による処理を施すための枚葉式の処理装置であり、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面(上面)に処理液の液滴を供給する二流体ノズル3と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液を供給する処理液ノズル4とを備えている。
【0033】
スピンチャック2は、鉛直な方向に延びる回転軸5と、回転軸5の上端に水平に取り付けられた円板状のスピンベース6とを有している。スピンチャック2は、スピンベース6の上面周縁部に立設された複数本のチャックピン7によって、ウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
すなわち、複数本のチャックピン7は、スピンベース6の上面周縁部において、ウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されており、ウエハWの裏面(下面)周縁部を支持しつつ、ウエハWの周面の異なる位置に当接することにより、互いに協働してウエハWを挟持し、このウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
【0034】
また、回転軸5には、モータなどの駆動源を含むチャック回転駆動機構8が結合されている。複数本のチャックピン7でウエハWを保持しつつ、チャック回転駆動機構8から回転軸5に駆動力を入力することにより、ウエハWの表面の中心を通る鉛直な軸線まわりにウエハWを回転させることができる。
なお、スピンチャック2としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0035】
二流体ノズル3は、処理液と気体とを二流体ノズル3のケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成する外部混合型の二流体ノズル3であり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム9の先端に取り付けられている。二流体ノズル3には、窒素ガス供給管10、第1DIW供給管11および第2DIW供給管12が接続されており、窒素ガス供給管10から窒素ガスが、第1DIW供給管11および第2DIW供給管12からそれぞれ処理液(リンス液)としてのDIW(脱イオン化された純水)が二流体ノズル3に供給されるようになっている。
【0036】
窒素ガス供給管10、第1DIW供給管11および第2DIW供給管12には、それぞれ、窒素ガスバルブ13、第1DIWバルブ14および第2DIWバルブ15が介装されており、各バルブ13〜15を開閉することにより、二流体ノズル3への窒素ガスおよびDIWの供給を制御することができる。
また、二流体ノズル3には、アーム9を介して二流体ノズル移動機構16が結合されている。この二流体ノズル移動機構16によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム9を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム9の先端に取り付けられた二流体ノズル3を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0037】
また、アーム9を所定の角度範囲内で往復揺動させることにより、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方で二流体ノズル3を移動させて、二流体ノズル3からの処理液の供給位置をスキャン(移動)させることができる。具体的には、二流体ノズル3からの処理液の供給位置を、スピンチャック2に保持されたウエハWの中心部から周縁部に至る範囲でスキャンさせることができる。
【0038】
処理液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム17の先端に取り付けられている。処理液ノズル4には、薬液供給管18および第3DIW供給管19が接続されており、薬液供給管18および第3DIW供給管19から薬液およびDIWがそれぞれ処理液ノズル4に供給されるようになっている。
【0039】
薬液供給管18および第3DIW供給管19には、それぞれ、薬液バルブ20および第3DIWバルブ21が介装されており、各バルブ20,21を開閉することにより、処理液ノズル4への薬液およびDIWの供給を制御することができる。
また、処理液ノズル4には、アーム17を介して処理液ノズル移動機構22が結合されている。この処理液ノズル移動機構22によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム17を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム17の先端に取り付けられた処理液ノズル4を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0040】
図2は、二流体ノズル3の構造を図解的に示す図である。図2(a)は、二流体ノズル3の縦断面を示し、図2(b)は、スピンチャック2側から見た二流体ノズル3の底面を示している。また、図2(b)において、ハッチングが施された範囲は、後述の第1処理液吐出口30、気体吐出口31および第2処理液吐出口34を示している。
二流体ノズル3は、ほぼ円柱状の外形を有しており、ケーシングを構成する外筒23と、外筒23の内部に嵌め込まれた内筒24と、外筒23および内筒24の間に配置された中間筒25とを含む。内筒24、外筒23および中間筒25は、それぞれ共通の中心軸線L1上に同軸配置されており、隣接する筒同士(内筒24と中間筒25、中間筒25と外筒23)は互いに連結されている。
【0041】
内筒24の内部空間は、第1DIW供給管11からのDIWが流通する直線状の第1処理液流路26となっている。また、内筒24と中間筒25との間には、窒素ガス供給管10からの窒素ガスが流通する円筒状の気体流路27が形成されおり、中間筒25と外筒23との間には、第2DIW供給管12からのDIWが流通する円筒状の第2処理液流路28が形成されている。
【0042】
第1処理液流路26は、内筒24の上端で第1処理液導入口29として開口しており、この第1処理液導入口29を介して、第1DIW供給管11からのDIWが第1処理液流路26内に導入されるようになっている。また、第1処理液流路26は、内筒24の下端で、中心軸線L1上に中心を有する円状の第1処理液吐出口30(2つの液吐出口の一方)として開口している。第1処理液流路26に導入されたDIWは、この第1処理液吐出口30から吐出されるようになっている。
【0043】
気体流路27は、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、内筒24および中間筒25の上端部で閉塞され、内筒24および中間筒25の下端で、中心軸線L1上に中心を有し、第1処理液吐出口30を取り囲む円環状の気体吐出口31(環状気体吐出口)として開口している。また、気体流路27の下端部は、気体流路27の長さ方向における中間部よりも流路面積が小さくされており、下方に向かって小径にされている。
【0044】
具体的には、内筒24の上端部の外壁面と、中間筒25の上端部の内壁面とはほぼ同じ形状にされており、互いに密接されている。また、内筒24および中間筒25の長さ方向における中間部間には、一定の間隔が設けられている。また、内筒24の下端部には、その中間部よりも外方に張り出したフランジ部32が設けられており、中間筒25の下端部の内壁面は、前記一定の間隔よりも小さい間隔を隔ててフランジ部32に沿うような形状になっている。内筒24および中間筒25の下端部の先端部には、それぞれ、下方に向かって小径となるテーパ状の外壁面および内壁面が設けられており、これにより、気体流路27が下方に向かって小径にされている。
【0045】
また、中間筒25の中間部には、気体流路27に連通する気体導入口33が形成されている。気体導入口33には、窒素ガス供給管10が中間筒25および外筒23を貫通した状態で接続されており、窒素ガス供給管10の内部空間と気体流路27とは連通されている。窒素ガス供給管10からの窒素ガスは、この気体導入口33を介して、気体流路27に導入され、気体吐出口31から吐出されるようになっている。
【0046】
第2処理液流路28は、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、中間筒25および外筒23の上端部で閉塞され、中間筒25および外筒23の下端で、中心軸線L1上に中心を有し、第1処理液吐出口30および気体吐出口31を取り囲む円環状の第2処理液吐出口34(2つの液吐出口の他方)として開口している。また、第2処理液流路28の下端部は、下方に向かって小径となっている。
【0047】
具体的には、中間筒25の上端部の外壁面と、外筒23の上端部の内壁面とはほぼ同じ形状にされており、互いに密接されている。また、中間筒25および外筒23の長さ方向における中間部間には、一定の間隔が設けられている。また、中間筒25および外筒23の下端部には、それぞれ、下方に向かって小径となるテーパ状の外壁面および内壁面が設けられており、これら外壁面および内壁面の間隔は前記一定の間隔に保たれている。
【0048】
また、外筒23の中間部には、第2処理液流路28に連通する第2処理液導入口35が形成されている。第2処理液導入口35には、第2DIW供給管12が外筒23を貫通した状態で接続されており、第2DIW供給管12の内部空間と第2処理液流路28とは連通されている。第2DIW供給管12からのDIWは、この第2処理液導入口35を介して、第2処理液流路28に導入され、第2処理液吐出口34から吐出されるようになっている。
【0049】
第1処理液吐出口30、第2処理液吐出口34および気体吐出口31からDIWおよび窒素ガスを吐出させると、吐出されたDIWおよび窒素ガスが、各吐出口30,31,34の近傍で衝突(混合)して、DIWの液滴が形成される。そして、このDIWの液滴は、噴流となって、二流体ノズル3の下方に配置されたウエハWの表面に衝突する。これにより、ウエハWの表面に付着しているパーティクル等の異物がDIWの液滴の運動エネルギーによって物理的に除去される。
【0050】
また、DIWの液滴がウエハWの表面に供給される範囲は、スポット状の範囲となっており、その範囲の大きさは、第1処理液吐出口30からだけでなく第2処理液吐出口34からもDIWを吐出させることにより、拡大されている。さらに、第2処理液吐出口34からもDIWを吐出させることにより、単位時間当たりに形成されるDIWの液滴の数が増加されている。
【0051】
図3は、前記基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置1は、制御装置36を備えている。この制御装置36は、チャック回転駆動機構8、二流体ノズル移動機構16および処理液ノズル移動機構22の動作を制御する。また、制御装置36は、窒素ガスバルブ13、第1DIWバルブ14、第2DIWバルブ15、薬液バルブ20および第3DIWバルブ21の開閉を制御する。
【0052】
図4は、前記基板処理装置1によるウエハWの処理の一例について説明するための図である。以下では、図1、図2および図4を参照しつつ、ウエハWの処理の一例について説明する。
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬送されてきて、搬送ロボットからスピンチャック2へとウエハWが受け渡される(ステップS1)。
【0053】
ウエハWがスピンチャック2に受け渡されると、制御装置36は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の回転速度で回転させる。また、制御装置36は処理液ノズル移動機構22を制御して、処理液ノズル4を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置させる。
その後、制御装置36は、薬液バルブ20を開くとともに、第1DIWバルブ14、第2DIWバルブ15、第3DIWバルブ21、窒素ガスバルブ13を閉じて、回転されているウエハWの表面の回転中心付近に処理液ノズル4から薬液を供給させる(ステップS2)。ウエハWの表面に供給された薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWに表面全域に薬液処理が施される。
【0054】
薬液の供給が所定の薬液処理時間に亘って行われると、制御装置36は、薬液バルブ20を閉じるとともに、第3DIWバルブ21を開いて、回転されているウエハWの表面の回転中心付近に処理液ノズル4からDIWを供給させる(ステップS3)。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面に付着している薬液がDIWによって洗い流され、ウエハWの表面にリンス処理が施される。
【0055】
DIWの供給が所定のリンス処理時間に亘って行われると、制御装置36は、第3DIWバルブ21を閉じさせる。その後、制御装置36は、処理液ノズル移動機構22を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方から退避させるとともに、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3をウエハWの上方に配置させる。そして、制御装置36は、第1DIWバルブ14、第2DIWバルブ15および窒素ガスバルブ13を開いて、二流体ノズル3からウエハWに向けてDIWおよび窒素ガスを吐出させる。
【0056】
このとき、第1処理液吐出口30および第2処理液吐出口34からは、それぞれ所定の流量でDIWが吐出されており、気体吐出口31からは、第1処理液吐出口30および第2処理液吐出口34からのDIWの合計流量に応じた流量の窒素ガスが吐出さている。
具体的には、第1処理液吐出口30から、たとえば30〜150ml/minの流量でDIWが吐出されており、第2処理液吐出口34から、たとえば30〜150ml/minの流量でDIWが吐出されている。また、気体吐出口31からは、たとえば5〜100ml/minの流量で窒素ガスが吐出されている。第1処理液吐出口30および第2処理液吐出口34からのそれぞれのDIWの流量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
吐出されたDIWおよび窒素ガスは、前述のように、各吐出口30,31,34の近傍で衝突し、これにより、DIWの液滴が形成される。そして、このDIWの液滴は、噴流となって、ウエハWの表面に衝突する(ステップS4)。
また、制御装置36は、ウエハWへのDIWの液滴の供給とともに、二流体ノズル移動機構16を制御して、ウエハWの上方で二流体ノズル3を所定のスキャン速度で移動させる。具体的には、ウエハWの表面の回転中心に対向する位置と、ウエハWの表面の周縁部に対向する位置との間で二流体ノズル3を往復して移動させたり、ウエハWの表面の周縁部に対向する位置からウエハWの表面の回転中心に対向する位置を通って反対側の周縁部に対向する位置まで二流体ノズル3を往復して移動させる。これにより、ウエハWへのDIWの液滴の供給位置が移動され、ウエハWの表面全域にDIWの液滴が供給される。その結果、ウエハWの表面に付着しているパーティクル等の異物がウエハWの表面全域から物理的に除去される。
【0058】
ここで、前記スキャン速度は、ウエハWの表面全域にDIWの液滴が十分に供給される速度に設定されている。また、このスキャン速度は、ウエハWの表面へのDIWの液滴の供給範囲が拡大されているので、前記供給範囲が拡大されていない従来の構成の場合よりも速くされている。したがって、ウエハWの表面全域にDIWの液滴を供給するのに要する時間が短縮されている。
【0059】
また、前述のように、単位時間当たりに形成されるDIWの液滴の数は増加されている。したがって、DIWの液滴による前記異物の除去効率が向上されている。これにより、前記スキャン速度で二流体ノズル3を移動させても、ウエハWの表面に付着している異物を確実に除去して、DIWの液滴による十分な除去効果を得ることができる。また、必要以上に大きな運動エネルギーをDIWの液滴に与えなくてもよいので、DIWの液滴によるウエハWへのダメージを抑制することができる。
【0060】
DIWの液滴の供給が所定の液滴処理時間に亘って行われると、制御装置36は、第1DIWバルブ14、第2DIWバルブ15および窒素ガスバルブ13を閉じて、二流体ノズル3からのDIWおよび窒素ガスの吐出を停止させるとともに、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3をウエハWの上方から退避させる。そして、制御装置36は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の高回転速度で回転させる(ステップS5)。これにより、ウエハWの表面に付着しているDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られ、ウエハWの表面が乾燥する(スピンドライ処理)。
【0061】
スピンドライ処理後は、ウエハWの回転速度が減速されてウエハWの回転が停止し、図示しない搬送ロボットによって、スピンチャック2から処理後のウエハWが搬送されていく(ステップS6)。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置1aの構成を説明するための図解図である。この図5において、図1に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
【0062】
この図5に示す第2の実施形態に係る基板処理装置1aは、レジストの薄膜が表面に形成されたウエハWにレジスト剥離液を供給して、ウエハWの表面からレジストを剥離して除去するレジスト剥離処理を施すための枚葉式の処理装置であり、二流体ノズル3には、第1薬液としての硫酸を供給するための硫酸供給管37と、第2薬液としての過酸化水素水を供給するための過酸化水素水供給管38とが接続されている。二流体ノズル3からは、硫酸、過酸化水素水および窒素ガスが吐出されるようになっている。
【0063】
硫酸供給管37および過酸化水素水供給管38には、それぞれ、硫酸バルブ39および過酸化水素水バルブ40が介装されており、各バルブ39,40を開閉することにより、二流体ノズル3への硫酸および過酸化水素水の供給を制御することができる。また、硫酸バルブ39および過酸化水素水バルブ40の開閉は、制御装置36によって制御することができる(図3参照)。
【0064】
硫酸、過酸化水素水および窒素ガスが二流体ノズル3から吐出されると、吐出された硫酸および過酸化水素水が二流体ノズル3の近傍で窒素ガスと衝突(混合)して、硫酸の液滴および過酸化水素水の液滴が形成される。そして、この硫酸の液滴および過酸化水素水の液滴は、ウエハWの上空またウエハWの表面上で良好に混合されて、カロ酸(ペルオキソー酸)などの強酸化力を有する成分を含むSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)となる。すなわち、ウエハWの表面には、レジスト剥離液としてのSPMが供給される。
【0065】
供給されたSPMは、当該SPMを構成する硫酸および過酸化水素水が二流体ノズル3から吐出された後に混合されているので、殆ど劣化がなく活性の高い状態になっている。また、硫酸および過酸化水素水の反応により生じる反応熱は、二流体ノズル3や配管などに吸熱されることなく、SPMの昇温に寄与する。したがって、ウエハWの表面には、殆ど劣化がなく、かつ、高温となった非常に活性の高いSPMが供給される。これにより、ウエハWの表面からレジストを良好に剥離して除去することができる。
【0066】
さらに、二流体ノズル3や配管内にSPMが残留することがないので、時間経過により活性が低下したSPMが、レジスト剥離処理の初期にウエハWに供給されることを防止することができる。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る二流体ノズル3aの構造を示す図である。図6(a)は、二流体ノズル3aの縦断面を示し、図6(b)は、スピンチャック2側から見た二流体ノズル3aの底面を示している。また、図6(b)において、ハッチングが施された範囲は、前述の第1処理液吐出口30、気体吐出口31および第2処理液吐出口34、ならびに後述の中心吐出口44を示している。
【0067】
この図6において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
この図6に示す第3の実施形態に係る二流体ノズル3aでは、第1処理液流路26に、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する中心筒41が配置されており、中心筒41の内部空間は、窒素ガスが流通する直線状の中心流路42となっている。この中心流路42は、中心筒41の上端で中心導入口43として開口しており、中心筒41の下端で、中心軸線L1上に中心を有し、第1処理液吐出口30に取り囲まれた円状の中心吐出口44として開口している。
【0068】
本実施形態にかかる二流体ノズル3aでは、気体吐出口31からだけではなく、中心吐出口44からも窒素ガスが吐出される。これにより、第1処理液吐出口30および第2処理液吐出口34から吐出されたDIWと窒素ガスとを確実に衝突させて、効率的にDIWの液滴を形成することができる。
また、第1処理液吐出口30からのDIWの流量と、第2処理液吐出口34からのDIWの流量とは、第1処理液吐出口30と第2処理液吐出口34との面積比や、気体吐出口31および中心吐出口44から吐出される窒素ガスの流量に応じて設定されるようになっている。これにより、DIWおよび窒素ガスを二流体ノズル3aからバランスよく吐出してDIWの液滴を効率的に形成することができる。
【0069】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る二流体ノズル3bの底面図である。この図7において、ハッチングが施された範囲は、前述の第1処理液吐出口30、気体吐出口31および第2処理液吐出口34、ならびに後述の最外郭吐出口47を示している。
また、この図7において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
【0070】
この図7に示す第4の実施形態に係る二流体ノズル3bでは、外筒23のさらに外側に、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する最外郭筒45が設けられ、外筒23と最外郭筒45との間に、窒素ガスが流通する最外郭流路46が形成されている。この最外郭流路46は、外筒23および最外郭筒45の下端において、中心軸線L1上に中心を有し、第2処理液吐出口34を取り囲む最外郭吐出口47として開口している。また、本実施形態では、最外郭筒45が二流体ノズル3bのケーシングを構成している。
【0071】
本実施形態にかかる二流体ノズル3bでは、気体吐出口31からだけではなく、最外郭吐出口47からも窒素ガスが吐出される。これにより、第1処理液吐出口30および第2処理液吐出口34から吐出されたDIWと窒素ガスとを確実に衝突させて、効率的にDIWの液滴を形成することができる。
この発明は、以上の第1〜第4の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1の実施形態におけるウエハWの処理の一例では、ウエハWの表面にリンス処理が行われた後に液滴処理が行われる例について説明したが、リンス処理と液滴処理とが同時に行われる期間があってもよい。
【0072】
また、前述の第1の実施形態におけるウエハWの処理の一例では、ウエハWの表面に液滴処理が施された後、スピンドライ処理が行われる例について説明したが、液滴処理とスピンドライ処理との間に、処理液ノズル4からウエハWの表面にDIW(リンス液)を供給するリンス処理をさらに行ってもよい。
また、前述の第2の実施形態では、第1薬液および第2薬液としてそれぞれ硫酸および過酸化水素水を例示したが、硫酸および過酸化水素水の組合せに限らず、アンモニア水および過酸化水素水、塩酸および過酸化水素水、フッ酸および過酸化水素水などを第1薬液および第2薬液として用いてもよい。
【0073】
アンモニア水および過酸化水素水を二流体ノズル3,3a,3bから吐出させて、これらの混合液をウエハWの表面に供給することにより、パーティクルなどの異物をウエハWの表面からより確実に除去することができる。
塩酸および過酸化水素水を二流体ノズル3,3a,3bから吐出させて、これらの混合液をウエハWの表面に供給することにより、金属汚染物などの不要物をウエハWの表面から除去することができる。
【0074】
フッ酸および過酸化水素水を二流体ノズル3,3a,3bから吐出させて、これらの混合液をウエハWの表面に供給することにより、金属汚染物などの不要物や酸化膜をウエハWの表面から除去することができる。
また、前述の第1および第2の実施形態では、ほぼ水平に保持され回転されているウエハWの表面に処理液を供給して当該ウエハWを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)のウエハWの表面に処理液を供給してウエハWを処理するものであってもよい。なお、前記非回転状態のウエハWとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)のウエハWであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)のウエハWであってもよい。
【0075】
また、前述の第1、第3および第4の実施形態では、二流体ノズル3,3a,3bからウエハWの表面にDIWが供給される例ついて説明したが、DIWに限らず、純水、機能水(炭酸水、水素水、オゾン水など)などのその他のリンス液を用いてもよい。
また、前述の第1〜第4の実施形態では、同種の処理液や互いに種類の異なる薬液が二流体ノズル3,3a,3bから吐出される例について説明したが、薬液およびリンス液を二流体ノズル3,3a,3bから吐出させてもよい。
【0076】
このとき、気体吐出口31の内側に配置された第1処理液吐出口30からリンス液を吐出させ、気体吐出口31の外側に配置された第2処理液吐出口34から薬液を吐出させてもよいし、第1処理液吐出口30から薬液を吐出させ、第2処理液吐出口34からリンス液を吐出させてもよい。
第1処理液吐出口30からリンス液を吐出させ、第2処理液吐出口34から薬液を吐出させた場合には、吐出された薬液が、薬液よりも内側から吐出されたリンス液と瞬時に混ざり合い薄められるので、ウエハWに供給される薬液の濃度を容易に調節することができる。
【0077】
また、第1処理液吐出口30から薬液を吐出させ、第2処理液吐出口34からリンス液を吐出させた場合には、薬液よりも外側から吐出されたリンス液によって薬液を取り囲んで、薬液によるウエハWへの薬液処理範囲を限定することができる。したがって、たとえばベベルエッチングなどのようにウエハWの一部に薬液処理を施す場合に良好な処理を施すことができる。
【0078】
前記薬液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いることができる。なお、これらの薬液は、あらかじめ室温以上、たとえば30〜100℃程度に加熱しておいてから用いてもよい、
前記リンス液としては、たとえば、純水、DIW、機能水(炭酸水、水素水、オゾン水など)などを用いることができる。なお、これらのリンス液は、あらかじめ室温以上、たとえば30〜100℃程度に加熱しておいてから用いてもよい、
前記薬液およびリンス液の組合せの具体例としては、硝酸およびDIW、酢酸およびオゾン水、硫酸およびオゾン水などが挙げられる。
【0079】
硝酸およびDIWを二流体ノズル3,3a,3bから吐出させて、これらの混合液をウエハWの表面に供給することにより、金属汚染物などの不要物や金属膜をウエハWの表面から除去することができる。
酢酸およびオゾン水を二流体ノズル3,3a,3bから吐出させて、これらの混合液をウエハWの表面に供給することにより、レジストなどの有機物をウエハWの表面から除去することができる。
【0080】
また、リンス液としてDIWを用いる場合には、DIWに代わって、炭酸水または水素水を用いてもよい。DIWに代わって炭酸水を用いることにより、ウエハWの帯電を抑制することができる。また、DIWに代わって水素水を用いることにより、パーティクルなどの異物がウエハWの表面に付着することを低減させるとともに、ウエハWの表面が酸化されることを抑制することができる。
【0081】
また、前述の第1〜第4の実施形態では、二流体ノズル3,3a,3bから吐出される気体として窒素ガスを例示したが、窒素ガスに限らず、空気、窒素ガス、オゾンガス、炭酸ガス、水素ガスのうちの少なくとも1種以上を含むその他の気体を用いてもよい。
二流体ノズル3,3a,3bからオゾン水を吐出させる場合に、当該オゾン水の吐出とともに、または当該オゾン水に代わって、オゾン水よりも高濃度でオゾンを含むオゾンガスを二流体ノズル3,3a,3bから吐出させることにより、オゾンを高濃度で含む処理液の液滴を形成し、オゾンによる効果、たとえば、ウエハW表面の有機物を良好に除去する効果やウエハW表面に酸化膜を厚く形成する効果等を確実に発揮させることができる。
【0082】
また、前記気体は、加熱された状態で吐出されてもよいし、加熱されていない状態で吐出されてもよい。加熱された気体を吐出させることにより、当該気体と混合される処理液の温度の低下を抑制したり、その温度を昇温させたりすることができる。
また、前述の第1〜第4の実施形態では、同一中心上に配置された円環状の液吐出口(第1処理液吐出口30、第2処理液吐出口34)が2つ設けられ、同一中心上に配置された円状または円環状の気体吐出口(気体吐出口31、中心吐出口44、最外郭吐出口47)が1つまたは2つ設けられている例について説明したが、同一中心上に配置された3つ以上の液吐出口を設けてもよいし、同一中心上に配置された3つ以上の気体吐出口を設けてもよい。
【0083】
さらに、前記液吐出口は、円環状だけでなく、多角環状などの環状や円状であってもよいし、複数の液吐出口が設けられ、これら複数の液吐出口が前記気体吐出口と同心形状となる環状に配置されていてもよい。同様に、前記気体吐出口は、円状または円環状だけでなく、多角環状などの環状であってもよいし、複数の気体吐出口が設けられ、これら複数の気体吐出口が前記液吐出口と同心形状となる環状に配置されていてもよい。
【0084】
また、前述の第1〜第4の実施形態では、処理対象の基板として半導体ウエハWを取り上げたが、半導体ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】二流体ノズルの構造を図解的に示す図である。
【図3】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】前記基板処理装置によるウエハの処理の一例について説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る二流体ノズルの構造を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る二流体ノズルの底面図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1a 基板処理装置
2 スピンチャック(基板回転手段)
3,3a,3b 二流体ノズル
10 窒素ガス供給管(気体供給手段)
11 第1DIW供給管(処理液供給手段)
12 第2DIW供給管(処理液供給手段)
16 二流体ノズル移動機構(ノズル移動手段)
23 外筒(ケーシング)
30 第1処理液吐出口(液吐出口)
31 気体吐出口(環状気体吐出口)
34 第2処理液吐出口(液吐出口)
37 硫酸供給管(処理液供給手段)
38 過酸化水素水供給管(処理液供給手段)
45 最外郭筒(ケーシング)
W ウエハ(基板、処理対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液および気体が導入されるケーシングと、
前記ケーシングに形成され、気体を吐出するための環状気体吐出口と、
前記環状気体吐出口の内側および外側にそれぞれ配置されて前記ケーシングに形成され、処理液を吐出するための少なくとも2つの液吐出口とを含み、
前記ケーシング外で前記処理液と前記気体とを混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル。
【請求項2】
前記2つの液吐出口は、同種の処理液を吐出する、請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項3】
前記2つの液吐出口は、互いに異なる種類の処理液を吐出する、請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項4】
前記異なる種類の処理液は、互いに種類の異なる第1薬液および第2薬液を含む、請求項3記載の二流体ノズル。
【請求項5】
前記異なる種類の処理液は、薬液およびリンス液を含む、請求項3記載の二流体ノズル。
【請求項6】
処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜5のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、
前記二流体ノズルのケーシングに前記処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給するための気体供給手段と、
前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段とを含む、基板処理装置。
【請求項7】
処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転工程と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の二流体ノズルのケーシングに前記処理液を供給する処理液供給工程と、
前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給する気体供給工程と、
前記基板回転工程で回転されている基板の主面に、前記二流体ノズルから処理液の液滴を供給する液滴供給工程と、
前記液滴供給工程と並行して、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるノズル移動工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−112837(P2008−112837A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294469(P2006−294469)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】