説明

光センサ回路および光センサアレイ

【課題】光センサ回路のレイアウト面積を増大させることなく、光センサ回路の消費電流を一定に保ち、熱平衡状態を維持することのできる光センサ回路および光センサアレイを提供する。
【解決手段】光センサ回路は受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段,増幅回路,増幅回路の入出力端子間に接続されて前記光電流を積分するコンデンサおよびコンデンサの両端に接続されたリセットトランジスタを有し、リセットトランジスタを待機モードでオンさせる。また、この光センサ回路を複数有する光センサアレイについても適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば三角測距の原理に基づく測距装置などに適用することのできる、光電流を増幅回路の入出力端子間に接続されたコンデンサで積分してセンサ出力を得る光センサ回路および光センサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
距離を検出する原理については様々なものがあるが、中でも代表的な測距原理である三角測距の原理について、最初に説明を行う。
図6は、三角測距の原理に基づく距離測定原理図である。被写体(対象)100の光がレンズ101、102を通して、光センサアレイ103、104上に被写体像105、106として結像する。点P、点Pは、正面の無限遠からレンズ101、102の中心点P、Pを通過する光線(光軸107、108)と光センサアレイ103、104との交点である。点Pと点Pの間の距離、すなわち2つのレンズの光軸間距離である基線長をB、光センサアレイ103、104とレンズ101、102との距離をf(レンズ101、102の焦点距離に略等しい)とする。また、点P、点Pからの被写体像105、106のずれをそれぞれX1、X2とし、このX1とX2を足した長さを位相差Xとする。
【0003】
ここで三角Pと三角形Pおよび三角形Pと三角形Pがそれぞれ相似であることから、被写体100までの距離dは次の(1)式で求められる。
d=B・f/(X1+X2)=B・f/X ・・・(1)
Xは被写体100が無限遠にあるとき、すなわち二つの被写体像105、106がレンズ101、102の光軸107、108と光センサアレイ103、104の交点にある場合を基準とした2像の相対変位であり、上記のように位相差と呼ばれる。Bとfは定数であるので、位相差Xを検出することにより距離dを求めることができる。すなわち、光センサアレイ103、104およびレンズ101、102により距離測定装置110を構成することができる。なお、二つの光センサアレイ103、104は一つの光センサアレイを電気的に分割したものでもよい。光センサアレイ103、104は半導体集積回路(以下、単に集積回路とも記す)として形成され、当該集積回路は1つの構造体としてレンズ101、102と一体化されて距離測定装置110を構成する。一体化は、光センサアレイ103、104とレンズ101、102の位置合わせをサブミクロンオーダで精密に行った後、その調整が狂わないよう光センサアレイ103、104を集積した集積回路(のパッケージ)とレンズ101、102を接着剤や溶着などで確実に固定することにより行われる。
【0004】
図7に光センサアレイ103、104に使われる光センサ回路の例を示す。図7に示す光センサ回路111は、増幅率が−K(K>0)である増幅回路112、増幅器の入力端子V1(その入力電圧もV1とする)と出力端子V2(その出力電圧もV2とする)の間に接続されたコンデンサC1およびリセットトランジスタ(リセットスイッチ)としてのNチャネルMOSトランジスタ113、並びに光電変換手段としてのフォトダイオードPDからなり、フォトダイオードPDのカソードは増幅回路112の入力に接続され、アノードは接地されている。NチャネルMOSトランジスタ113のゲートにはリセット信号Vresetが入力されている。リセット信号Vresetは光センサアレイ103、104が集積されている集積回路全体をリセットする信号であり、光センサ回路をリセットするとともに、集積回路中の他のロジック回路も初期化するものである。コンデンサC2はフォトダイオードPDの接合容量である。また、光センサアレイの集積度を上げるために、増幅器112は差動入力ではなくシングルエンド入力のものを適用している。
【0005】
図8は、光センサ回路111の構成をトランジスタレベルで示したものであり、増幅回路112がPチャネルMOSトランジスタ114およびNチャネルMOSトランジスタ115に置き換えられている。すなわち、PチャネルMOSトランジスタ114およびNチャネルMOSトランジスタ115が増幅回路112を構成している。それ以外の構成は図7と同じである。PチャネルMOSトランジスタ114は、そのソースが電源ラインVdd(その電圧もVddと表す)に接続され、ゲートに定電圧のバイアス信号Vbiasが入力されて定電流源を構成している。NチャネルMOSトランジスタ115のドレインはPチャネルMOSトランジスタ114のドレインと接続されて増幅回路112の出力端子V2となっている。また、NチャネルMOSトランジスタ115のゲートは増幅回路112の入力端子V1となっている。
【0006】
光センサ回路111の動作について説明する。センシング動作の開始に先立つ初期化としてNチャネルMOSトランジスタ113のゲートに入力されている信号VresetをH(High)としてNチャネルMOSトランジスタ113をオンさせてコンデンサC1の電荷を放電させる。放電後、信号VresetをL(Low)にしてNチャネルMOSトランジスタ113をオフさせると、光センサ回路111の動作が開始する。フォトダイオードPDは被写体像105、106のうちの自身に照射される部分の光量Lに応じた光電流Iphを生成する。この光電流IphはコンデンサC1およびC2に積分される。
【0007】
NチャネルMOSトランジスタ113をオンさせて増幅回路112の入出力を短絡させたときの入出力電圧をV0、NチャネルMOSトランジスタ113がオフして光センサ回路111の動作が開始してからの時間をt(NチャネルMOSトランジスタ113がオンからオフに切り替わった時点がt=0)、コンデンサC1の電荷をQ1、コンデンサC2の電荷をQ2、電荷Q2のt=0のときの初期値をQ20(=C2・V0)、V1の初期値からの変動を△V1(=V0−V1)、V2の初期値からの変動を△V2(=V2−V0)電荷Q2の初期値Q20からの変動を△Q2(=Q20−Q2)とすると以下の式がなりたつ。
【0008】
△V2=K・△V1
Q1=C1(△V1+△V2)=C1(△V1+K・△V1)=C1(1+K)△V1
△Q2=C2・△V1
Iph・t=Q1+△Q2=((1+K)C1+C2)△V1 ・・・(2)
(2)式より次式が成り立つ。
【0009】
△V1=Iph・t/((1+K)C1+C2) ・・・(3)
(3)式よりV1,V2は以下で表される。
V1=V0−△V1=V0−Iph・t/((1+K)C1+C2) ・・・(4)
V2=V0+K・△V1=V0+Iph・t/((1+1/K)C1+C2/K) ・・・(5)
(5)式よりKが非常に大きいとすれば、
V2=V0+Iph・t/C1 ・・・(6)
と近似することができる。
【0010】
図9に電圧V1,V2の波形を示す。リセット信号VresetがHになると信号V1,V2はV0に初期化され、その後リセット信号VresetがLになるとV1が下降を始めるとともにV2が上昇を始める。(4),(5)式から分かるように、V2の傾きはV1の傾きの絶対値のK倍である。図中に示すV1minおよびV2maxは、それぞれ光センサ回路111が出力することのできる信号V1,V2の限界値(最終値)である。このうち、信号V2の最終値V2maxは電源電圧Vddに等しいが、信号V2が電源電圧Vddに近づくとPチャネルMOSトランジスタ114は定電流性を保てなくなる。PチャネルMOSトランジスタ114の閾値電圧およびドレイン電流をそれぞれVth(>0),Ibiasとすると、Ibiasは以下のようになる。
(i)V2≦Vbias+Vthのとき、
Ibias=A(Vdd−Vbias−Vth) ・・・(7)
(ii)Vbias+Vtp<V2≦Vddのとき、
Ibias=2A((Vdd+V2)/2−Vbias−Vth)(Vdd−V2) ・・・(8)
ここで、Aは定数である。(7)式は、(i)の範囲でPチャネルMOSトランジスタ114は定電流性を保つことを示している。(8)式は、V2がVbias+Vtpを超えてVddに近づくと電流Ibiasが漸減し、V2=Vddとなると電流Ibiasがゼロになることを示している。これより、上記の光センサ回路を複数配置した光センサアレイを集積回路として半導体に集積した場合、当該集積回路の消費電流が光センサアレイが動作中であるか否かで大きく異なることになる。集積回路中の光センサ回路の総数をnとすると、光センサアレイが動作を開始した当初と動作終了時では消費電流にnA(Vdd−Vbias−Vth)の差が生じることになる。距離測定装置110は、光センサアレイを複数回動作させることが多いので、そのつど消費電流がnA(Vdd−Vbias−Vth)だけ増えたり減ったりすることになる。光センサ回路の総数nは通常100以上、場合によっては1000を超える場合もあるので、消費電流におけるこの差は無視できないものになる。
【0011】
集積回路の消費電流は熱となり、初めはこの消費電流が当該集積回路の温度を上げるものの、消費電流が一定であれば最終的には発生する熱と外部に放出される熱とが等しくなる熱平衡状態に達して、当該集積回路の温度は変化しなくなる。一定温度で安定すれば、その温度を検出して(1)式を補正して正確な距離を求めることができる。しかしながら、上述のように光センサの動作状態によって消費電流にnA(Vdd−Vbias−Vth)の差が生じると集積回路は熱平衡状態に達することができず(留まることができず)、光センサの動作に伴い集積回路の温度も変動してしまうため、安定した温度を測定することができない。
【0012】
また、上述のように集積回路とレンズ101、102が一体化されているため、レンズ101、102の温度も変化してしまう。距離測定装置110のレンズ101、102やそれを支える図6には示さない構造物はプラスチックでできているため、その寸法は温度により敏感に変化する。(1)式に示すように被写体までの距離dは、基線長B、光センサアレイとレンズ間距離fおよび位相差Xより、d=B・f/Xで与えられるが、このうちBとfが温度の影響を受けて変化をしてしまう。位相差Xはサブミクロンオーダで検出されているのにもかかわらず、温度の変化に伴い光学系Bやfが変化し、かつその温度も安定しないとなると、距離dの測定精度に著しく悪影響を与えることになる。集積回路の消費電流をゼロにすることはできないので、この問題に対処するには熱平衡状態から外れないようにすることが必要となる。すなわち、集積回路の消費電流を一定に保つことが有効である。
【0013】
特許文献1では、画素GSを2次元の行列状に配置し、各列に図8に示す光センサ回路111からフォトダイオードPDを除いたものに類似のアンプAPを配した個体撮像装置において、アンプAPの消費電流がその動作により変化しないようにしたものが開示されている。図10にそのアンプAPの基本回路を示す。図10に示す回路は特許文献1に開示されているアンプAPの回路のうち、積分コンデンサの切り替え回路など一部の付加的回路を省略し、記号を付け直したものである。図10に示す回路のうち図8と同じ部位については同じ記号を付してあり、その詳細な説明は省略する。
【0014】
図10は複数の画素GSの出力のうち1つが選択されてコンデンサC3を介して入力される増幅回路で、信号V1と信号V2の関係は図7,8のものと同じである。1つのアンプAPに接続される複数の画素GSは固体撮像素子の1つの列を構成し、各列に接続されるアンプAPが固体撮像素子の行方向に配列されて図11に示すようなアンプアレイを形成する。図11においてm個のアンプAP1,AP2,・・・,APmが行方向(図11では横方向)に配列され、それぞれ電源ラインVddおよび接地ラインGNDから電源の供給を受けている。電源ラインVddおよび接地ラインGNDは集積回路のPAD(電源PAD,GNDPAD)に接続されている。また、アンプAP1,AP2,・・・,APmはそれぞれ入力端子IN1,IN2,・・・,INmおよび出力端子OUT1,OUT2,・・・,OUTmを有している。電源ラインVddおよび接地ラインGNDには、図11に示すように寄生抵抗r11,r12,r21,r22,rが存在し、アンプAP1,AP2,・・・,APmで消費する電流により電圧ドロップを生じる。特許文献1で問題としているのはこの電圧ドロップである。それは、図7,8,11に示すようなシングルエンド入力の増幅器は差動入力タイプのものより電源電圧変動の影響を受けやすく、アンプAP1,AP2,・・・,APmの電源電圧の変動は固体撮像素子から出力される映像信号の画質劣化に繋がるからである。この画質劣化を防ぐためには、アンプAPの消費電流がその動作状態に関わらず一定であるようにすればよい。
【0015】
その対策として特許文献1がアンプAPの回路に設けたのが図10に示すPチャネルMOSトランジスタ116である。PチャネルMOSトランジスタ116のゲートには定電圧信号VLIMITが入力されて、信号VLIMITを基準にしたリミット回路を構成している。すなわち、PチャネルMOSトランジスタ116は言わば信号VLIMITに対するソースフォロワとなっていて、そのゲート・ソース間電圧Vgs=V2−VLIMITが(PチャネルMOSトランジスタ116の閾値電圧+α)を超えないように機能する。これにより、アンプAPの動作に伴い信号V2の電位が上昇しても、PチャネルMOSトランジスタ116により上述の(i)の条件V2≦Vbias+Vthを破ることがないようリミットがかかるため、アンプAPの消費電流を一定に保つことができる。
【特許文献1】特開平2005−252529号公報(段落0001〜0018,0035〜0041、図3,9〜14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1では、その従来回路に対しリミット回路としてのPチャネルMOSトランジスタ116を追加しているが、これにより集積回路においてアンプAPのレイアウト面積の増大および信号VLIMITの配線という問題が生じる。PチャネルMOSトランジスタ116の替わりにツェナーダイオードを用いることも考えられるが、その場合はゲートを制御する信号の配線の問題はなくなるが、ツェナー電圧を決定するための集積回路製造プロセス追加が問題となる。また、ツェナーダイオードのためにレイアウト面積が増大するという問題は共通である。
【0017】
図6に示す距離測定装置110の光センサアレイ103、104のレイアウト構成を図12に示す。図12は図7または8に示す光センサ回路111を図12の横方向にn個配列した光センサアレイを示したものであり、PD1,PD2,・・・,PDnはそれぞれ個々の光センサ回路のフォトダイオード、121,122,・・・,12nはそれぞれ光センサ回路111からフォトダイオードPDおよびその接合容量C2を除いた部分である。n個の光センサ回路に対し、信号Vbiasおよび信号Vresetが共通に入力されている。距離測定装置110の性能(測距精度)を上げるためにはフォトダイオードPD1,PD2,・・・,PDnのピッチは小さい方がよく、一方フォトダイオードの感度を上げるためにフォトダイオードのレイアウト面積は大きい方がよい。フォトダイオードの感度を維持もしくは向上しつつ光センサアレイ103、104を集積する半導体集積回路の集積度を上げることを考えると、図12に示すレイアウト構成において、フォトダイオードPD1,PD2,・・・,PDnの占める面積を出来るだけ大きくするとともに、回路121,122,・・・,12nの占める面積を出来るだけ小さくすることが望ましい。また、図12に示す1次元のラインセンサを図12の縦方向に複数配列したマルチラインセンサ構造の光センサアレイを距離測定装置110に適用する場合を考えると、各ラインセンサ間距離を短くするためには回路121,122,・・・,12nの占める面積を小さくすることがより強く望まれる。これに対し、図10のPチャネルMOSトランジスタ116やそれに替わるツェナーダイオードを付加することは回路121,122,・・・,12nの占める面積増大に直結してしまうので、避けなければならない。すなわち、回路121,122,・・・,12nの占める面積を増大させずに、光センサ回路の消費電流を一定に保つ構成とせねばならないという課題がある。
【0018】
この発明は上記問題を解決するものであって、従来技術のものより光センサ回路のレイアウト面積を増大させることなく光センサ回路の消費電流を一定に保つことのできる光センサ回路および光センサアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段と、増幅回路と、該増幅回路の入出力端子間に接続されて前記光電流を積分するコンデンサと、該コンデンサの両端に接続されているスイッチ手段と、を有する光センサ回路であって、待機モードでは前記スイッチ手段をオンさせていることを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記増幅回路が電流源およびドレイン端子が前記電流源に接続されたMOSトランジスタからなり、該MOSトランジスタのゲート端子およびドレイン端子がそれぞれ前記増幅回路の入力端子および出力端子であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記増幅回路の出力電圧が外部から読み出される、もしくはサンプルホールドされると前記待機モードになることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に係る発明の光センサ回路を複数有し、該複数の光センサ回路の出力の少なくとも一部が外部から読み出される、もしくはサンプルホールドされると前記待機モードになる光センサアレイであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明の光センサ回路は受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段,増幅回路,増幅回路の入出力端子間に接続されて前記光電流を積分するコンデンサおよびコンデンサの両端に接続されたリセットトランジスタを有し、リセットトランジスタを待機モードでオンさせるので付加回路なしで消費電流を一定に保つことができる。また、この光センサ回路を複数有する光センサアレイも常に付加回路なしで消費電流を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、実施の形態に係る図面において、図7,8と同じ部位には同一符号を付し、重複部分については後述での説明を適宜省略する。
図1は本実施の形態の光センサ回路1およびその制御を行う部分の構成を示す回路図であり、図2はそのタイミングチャートである。図7ではNチャネルMOSトランジスタ113のゲートにはリセット信号Vresetが入力されていたのに対し、図1ではORゲート2の出力が入力されている。また、ORゲート2には従来のリセット信号Vresetとともに制御回路3から出力されるセンサリセット信号Rsensorが入力されている。すなわち、本発明の実施の形態では、光センサ回路1は従来のリセット信号Vresetとともにセンサリセット信号Rsensorでもリセットされるようになっている。また、リセット信号Vresetは制御回路3にも入力されている。
【0024】
センサリセット信号Rsensorは、制御回路3が待機モードにNチャネルMOSトランジスタ113をオンさせて、光センサアレイ中の各光センサ回路が上述の(i)V2≦Vbias+Vthという条件を満たすようにして、その消費電流を一定にするための信号である。図2に示すように、リセット信号VresetがHになると制御回路3の出力信号RsensorがHからLに変化する。なお、このときの信号V1,V2の動きは図9と同じである。その後リセット信号VresetがLに戻るとセンサ回路1は光電流Iphの積分を開始し、信号V1が下降するとともに信号V2が上昇する(この動作も図9と同じである)。そして、制御回路3が光センサ回路1の動作を停止させる待機モードになったと判断すると、光センサ回路1の消費電流を一定に保たせるためにセンサリセット信号RsensorをHにしてNチャネルMOSトランジスタ113をオンさせる。センサリセット信号Rsensor=Hの状態は次にセット信号Vresetが入力されるまで保持される。
【0025】
ORゲート2および制御回路3は、図12に示す光センサアレイの外部に設ければよい。すなわち、ORゲート2の出力端を図12の信号Vresetラインに接続すればよいので、従来技術に比して、光センサ回路のレイアウト面積を増大させることがない。
制御回路3は、基本的には光センサ回路1の出力信号V2(もしくは図12に示す光センサアレイの出力信号V21,V22,・・・,V2n)の少なくとも一部を外部に読み出すか、もしくは図3に示す回路などでサンプルホールドすると光センサ回路1もしくは光センサアレイを待機モードに移行させる。なお、状況によっては読み出しやサンプルホールドを行わずに待機モードに移行してもよい。
【0026】
図3に示す回路は、図1に示す回路にサンプルホールド機能を付加するために、コンデンサSshおよびスイッチSWshからなるサンプルホールド回路を端子V2に接続し、サンプルホールドした信号を端子V3から出力するようにしたものである。制御回路3が光センサ回路1のデータを保持するタイミングであると判断すると、スイッチSWshを一時オンしてその時の信号V2の電圧をコンデンサCshに記憶させてからスイッチSWshをオフにする。コンデンサCshに光センサ回路1の出力信号が記憶されると光センサ回路1の役目は終了するので、次に制御回路3は光センサ回路1を待機モードに移行させるタイミングと判断してセンサリセット信号RsensorをHにするのである。これにより、光センサ回路1を有する光センサアレイのデータを記憶・保持するとともに集積回路の消費電流が変動することを防ぐことができる。
【0027】
次に、制御回路3が光センサ回路1もしくは光センサアレイの出力信号の読み出しもしくはサンプルホールドを行うタイミングを決定する方法の例について説明する。図4は、このタイミングを決定するために図12に示す光センサアレイの出力信号V21,V22,・・・,V2nのピーク(出力信号V21,V22,・・・,V2nのうち最も高い電圧、すなわち光センサアレイ中で最も積分が進んだ光センサ回路の出力信号、に応じた信号)を検出する回路である。図4に示す回路は、n個のNチャネルMOSトランジスタN1,N2,・・・,Nnが電源Vddと出力端子Vpeakの間に並列に接続され、各ゲートには信号V21,V22,・・・,V2nがそれぞれ接続されていて、それぞれ信号V21,V22,・・・,V2nに対するソースフォロワ回路を構成している。電流源4はこれらの並列されたソースフォロワ回路に負荷電流i1を供給するものであり、プルダウン抵抗に換えてもよい。出力端子Vpeakから得られる出力信号(これもVpeakと記す)は、信号V21,V22,・・・,V2nのうち最も高い電圧からNチャネルMOSトランジスタN1,N2,・・・,Nnの閾値電圧を引いたものにほぼ等しくなる(電流i1を流す分だけ、閾値電圧を引いたものからさらに小さくなる)。
【0028】
制御回路3は、出力信号Vpeakが所定の値に達する時点を、光センサアレイの出力信号の読み出しもしくはサンプルホールドを行うタイミングとすればよい。
図5は、制御回路3が光センサ回路1もしくは光センサアレイの出力信号の読み出しもしくはサンプルホールドを行うタイミングを決定する別の方法について説明するための図である。これはn個の光センサ回路1(それぞれS1,S2,・・・,Snとする)を図5の横方向に配置した光センサアレイに対し、その平均光量を得るためのモニタフォトダイオードPDmonを光センサ回路S1,S2,・・・,Snの配置方向(図5の横方向)の近傍に並置したものである。モニタフォトダイオードPDmonの長辺は光センサアレイのほぼ全長に渡っているので、その光電流を見れば光センサアレイの平均光量を推定することができる。制御回路3は、推定された平均光量より光センサアレイに光電流の積分をさせる時間(積分時間)を決定し、積分時間が終了した時点で光センサアレイの出力信号の読み出しもしくはサンプルホールドを行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の光センサ回路1およびその制御を行う部分の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】図1に示す回路にサンプルホールド回路を組み合わせた回路である。
【図4】光センサアレイ出力のピーク(最大値)を検出する回路例である。
【図5】モニタフォトダイオードについて説明するための図である。
【図6】三角測距の原理に基づく距離測定原理図である。
【図7】従来の光センサ回路の構成を示す回路図である。
【図8】図7の光センサ回路の構成をトランジスタレベルで示したものである。
【図9】従来の光センサ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】特許文献1に開示されているアンプの基本回路図である。
【図11】特許文献に開示されているアンプアレイについて説明するための図である。
【図12】光センサアレイの構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 光センサ回路
2 ORゲート
3 制御回路
4 定電流源
103,104 光センサアレイ
110 距離測定装置
112 増幅回路
113 NチャネルMOSトランジスタ(リセットトランジスタ)
114 PチャネルMOSトランジスタ(定電流源)
115 NチャネルMOSトランジスタ
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ(接合容量)
Csh サンプルホールド用コンデンサ
N1〜Nn NチャネルMOSトランジスタ(ソースフォラワ)
PD,PD1〜PDn フォトダイオード
PDmon モニタフォトダイオード
Rsensor センサリセット信号
SWsh サンプルホールド用スイッチ
V2,V21〜V2n 光センサ回路の出力端子、出力信号
Vbias 定電圧のバイアス信号
Vreset 集積回路全体をリセットするリセット信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光量に応じた値の光電流を生成する光電変換手段と、増幅回路と、該増幅回路の入出力端子間に接続されて前記光電流を積分するコンデンサと、該コンデンサの両端に接続されているスイッチ手段と、を有し、
待機モードでは前記スイッチ手段をオンさせていることを特徴とする光センサ回路。
【請求項2】
前記増幅回路が電流源およびドレイン端子が前記電流源に接続されたMOSトランジスタからなり、該MOSトランジスタのゲート端子およびドレイン端子がそれぞれ前記増幅回路の入力端子および出力端子であることを特徴とする請求項1に記載の光センサ回路。
【請求項3】
前記増幅回路の出力電圧が外部から読み出される、もしくはサンプルホールドされると前記待機モードになることを特徴とする請求項1または2に記載の光センサ回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光センサ回路を複数有し、該複数の光センサ回路の出力の少なくとも一部が外部から読み出される、もしくはサンプルホールドされると前記待機モードになることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−135929(P2008−135929A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320066(P2006−320066)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】