説明

光機能素子及びその製造方法

【課題】製造を容易にし、歩留まりを向上させることができる光機能素子を提供する。
【解決手段】光源としての発光素子12と、光導波路20が形成された誘電体基板14と、光を電気に変換する受光素子16と、を備えて、発光素子12からの光を外部電気信号によって変調し、その変調された光を受光素子16により電気信号として出力する。光導波路20は、誘電体基板14の表面14aに形成された、入力導波路部分20aと、該入力導波路部分20aから分かれ外部電気信号によって変調を受ける分岐導波路部分20b、20cと、該変調部分に繋がる出力導波路部分20dとからなる。光導波路20は、複数組の光導波路20A,20Bが誘電体基板14に形成されており、各組の2つの分岐導波路部分20b、20cの設計長さの差異が互いに異なるように設計される。発光素子12及び受光素子16は、上記複数組の光導波路の中で選択され、所望のバイヤス位相差を発生させることができる光導波路に結合するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としての発光素子と、光導波路が形成された誘電体基板と、光を電気に変換する受光素子と、を備えて、光源からの光を外部電気信号によって変調し、その変調された光を受光素子により電気信号として出力する光機能素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変調機能を持つ光機能素子としては、特許文献1または2に記載されたものが知られており、これらの特許文献に記載された構成は概ね図23に示すものとなっている。
【0003】
図において、112は光源としての発光素子、114は誘電体基板、116は受光素子であり、誘電体基板114上には、光導波路120が形成されて、光導波路120は、例えば、マッハツェンダ型の光干渉器を構成しており、発光素子112と受光素子116は、光導波路120の両側に対向するように配置されている。
【0004】
そして、発光素子112から出力された光は集光レンズ122によって集光されて、誘電体基板114の端面から光導波路120の一端へと入射される。光導波路120において、2つの分岐導波路部分に分岐され、外部電気信号によって、一方の分岐導波路部分において、または両方の分岐導波路部分において逆の変調を受けた後、再び合波されて、光導波路120の他端から出射し、集光レンズ124によって集光されて、受光素子116によって受光される。
【0005】
所望のバイヤス位相差をつけて、変調の感度を高めるために、2つの分岐導波路部分は所定の長さの差異を持つように設計される。
【0006】
【特許文献1】特開平6−27427号公報
【特許文献2】特開2003−131182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記長さの差異は数十nm程度の非常に僅かな差であるために、前記所望のバイヤス位相差を得るために要求される加工精度は非常に高く、製造が困難で歩留まりが悪い、という問題がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、製造を容易にし、歩留まりを向上させることができる光機能素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、光源としての発光素子と、光導波路が形成された誘電体基板と、光を電気に変換する受光素子と、を備えて、前記光導波路は、前記誘電体基板にそれぞれ形成された、入力導波路部分と、該入力導波路部分から分かれた2つの分岐導波路部分と、該分岐導波路部分が合流した出力導波路部分とからなり、前記発光素子からの光を、前記外部電気信号によって分岐導波路部分の少なくともいずれか一方において変調し、その変調された光を前記受光素子により電気信号として出力する光機能素子において、
前記光導波路は、複数の組が前記誘電体基板に形成されており、各組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が組ごとで異なるように設計されており、
前記発光素子及び前記受光素子は、上記複数組形成された光導波路の中のうちの選択された光導波路に結合するように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、ある組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が、使用する光の波長λに対して1/4λに相当する長さであるのに対して、別の組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が0であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記複数組の光導波路が、前記誘電体基板の表面にそれぞれ形成され、前記発光素子は、該誘電体基板の裏面側から前記表面に対して直交する方向に沿って前記入力導波路部分の始端に向けて光を出射するものであり、
前記入力導波路部分の前記始端には、前記表面に対して直交する方向からの光を入力導波路部分に向ける変向手段が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、光源としての発光素子と、光導波路が形成された誘電体基板と、光を電気に変換する受光素子と、を備えて、前記発光素子からの光を外部電気信号によって変調し、その変調された光を前記受光素子により電気信号として出力する光機能素子の製造方法において、
同一の誘電体基板に、入力導波路部分と、該入力導波路部分から分かれた2つの分岐導波路部分と、該分岐導波路部分が合流した出力導波路部分とからなる光導波路を、複数組形成し、その際に、各組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が互いに異なるようにし、各組の前記入力導波路部分の始端が近接するようにし、
発光素子からの光をすべての組の前記入力導波路部分の始端に向けて出射して、すべての光導波路に光を伝搬させると共に、各組の前記分岐導波路部分に順次、周波数f0の変調信号を印加し前記出力導波路部分の終端に到達した光を受光素子で受光し、該受光素子で変換された電気信号から周波数f0成分と周波数2f0成分とを検波し、周波数f0成分が周波数2f0成分に対して最も優勢となる組を選択し、
選択された光導波路に対して発光素子の最終位置決めを行い、発光素子からの光が選択された光導波路に結合されて、選択された光導波路にのみ光が伝搬されるようにし、且つ外部電気信号を選択された光導波路に印加するようにする、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の方法において、前記複数組の光導波路を、前記誘電体基板の表面にそれぞれ形成し、前記発光素子に、誘電体基板の裏面側から前記表面に対して直交する方向に沿って前記入力導波路部分の始端に向けて光を出射させるようにし、
前記入力導波路部分の前記始端には、前記表面に対して直交する方向からの光を入力導波路部分に向ける変向手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも一方が外部電気信号により変調を受ける2つの分岐導波路部分において所望のバイヤス位相差が発生するように、2つの分岐導波路部分の長さの差異を設計通りに作製することは非常に困難であるが、2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が異なる複数組の光導波路を同じ誘電体基板に同時に作製することによって、製造誤差があっても、いずれかの光導波路の2つの分岐導波路部分の差異を、バイヤス位相差が所望の位相差またはそれに近い位相差となるようにすることができるため、その所望の位相差となる光導波路を選択して使用することで、歩留りを向上させることができる。
【0015】
また、請求項3及び5記載の発明によれば、発光素子からの光点の位置を誘電体基板の表面内における位置として視覚的に捉えることができるので、その光点の位置を前記入力導波路部分の始端に合わせることによって、容易に発光素子の最終位置決めを行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の光機能素子の全体斜視図であり、図2はその破断斜視図、図3は平面図、図4は縦断面図である。
【0017】
図において、光機能素子10は、光源としての発光素子12と、光導波路が形成された誘電体基板14と、光を電気に変換する受光素子16と、を備えている。
【0018】
発光素子12は、発光ダイオード、レーザを用いることができ、その中でも、スーパールミネセントダイオード、面発光レーザなどを使用することができる。受光素子16は、フォトダイオードを用いることができる。
【0019】
誘電体基板14は、電気光学効果を持つ誘電体結晶、例えばニオブ酸リチウムから構成され、xカットで、その表面14aにy軸方向に沿ってチタン拡散又はアニールドプロトン交換により約5μm程度の幅のシングルモードの光導波路20が形成される。
【0020】
光導波路20は、誘電体基板14の板面に平行な平面である表面14aに互いにほぼ平行に形成された2組の光導波路20A、20Bからなる。各光導波路20A,20Bは、それぞれ1つの入力導波路部分20aと、該入力導波路部分20aからY分岐により分かれ変調部分を構成する2つの分岐導波路部分20b、20cと、2つの分岐導波路部分20b、20cがY分岐により合流された1つの出力導波路部分20dとからなる。
【0021】
光導波路20Aと光導波路20Bは、ほぼ同一の構成を成しているが、光導波路20Aの分岐導波路部分20b、20cの長さが、使用する光の光導波路内での波長λに対して1/4λ分だけ互いに異なるように設計されているのに対して、光導波路20Bの分岐導波路部分20b、20cは同じ長さ、即ち差異が0となるように設計されている。
【0022】
2つの分岐導波路部分20b、20cは変調部分を構成しており、各分岐導波路部分20b、20cを挟み、一対の電極22、24が形成されている。
【0023】
各光導波路20A、20Bの入力導波路部分20aは一部折曲し、それらの始端が、互いに接近するように配置される。同様に、各光導波路20A、20Bの出力導波路部分20bは一部折曲し、それらの終端が、互いに接近するように配置される。
【0024】
誘電体基板14の表面14aには、各光導波路20A、20Bの入力導波路部分20aに直交するようにして、表面14aに対して45度の傾斜角度をなす斜面を持つ断面V字状の切り込み14cが形成され、出力導波路部分20dに直交するようにして、表面14aに対して45度の傾斜角度をなす斜面を持つ断面V字状の切り込み14dが形成される。この切り込み14c、14dは、誘電体基板14として切り出す前のウエハに対するダイシング作業で複数の誘電体基板14に渡り一括して形成することが可能である。
【0025】
V字状の切り込み14cの入力導波路部分20aと接する側の傾斜角度45度の斜面(入力導波路部分20aの始端となる)には、図5に示したように、反射膜が付着されて、変向手段を構成するミラー26が形成される。ミラー26は、各光導波路20A、20Bの入力導波路部分20a毎に形成しても、または全光導波路20A、20Bの入力導波路部分20aに渡り形成してもよい。
【0026】
同様に、V字状の切り込み14dの出力導波路部分20dと接する側の傾斜角度45度の斜面(出力導波路部分20dの終端となる)には、反射膜が付着されて、第2変向手段を構成するミラー28が形成される。ミラー28は、各光導波路20A、20Bの出力導波路部分20d毎に形成しても、または全光導波路20A、20Bの出力導波路部分20dに渡り形成してもよい。
【0027】
それぞれの反射膜は金蒸着により形成することができ、反射膜を形成した後、V字状の切り込みは、誘電体基板14と屈折率が等しいか近似する屈折率を持つ物質で充填されるとよい。但し、図面においては、この充填物質は図示省略とする。変向手段としてのミラー26、28としては、反射膜から構成する他に、図6に示すような45度の傾斜溝に挿入したマイクロミラーで構成することも可能である。または、光導波路部分20a、20dの端部の傾斜面自体で大きな反射率がある場合には、それ自体を変向手段として、別個の反射膜等の手段は省略可能である。
【0028】
誘電体基板14の裏面14b側には、全面的に反射防止膜(ARコート)が付着されているとよい。反射防止膜は、SiO、TiO膜から構成することができ、この膜の形成は誘電体基板14として切り出す前のウエハに対して一括して形成することが可能である。
【0029】
そして、誘電体基板14の裏面側には、発光素子12及び受光素子16を支持するための取付板30が設けられる。取付板30は、放熱性のよいセラミックス又は金属で構成することができる。取付板30には、図4に示すように、前記切り込み14c、14dとその長手方向が一致する縦孔30a、30bが形成されている。
【0030】
縦孔30aには、発光素子12を保持するとともに誘電体基板14に固着される高剛性の例えば金属製の筒状ホルダ32が取り付けられる。筒状ホルダ32は、縦孔30aの形状に合致した内断面形状をなしている。筒状ホルダ32の上端にはフランジ32aが形成されており、フランジ32aが誘電体基板14の下面に取り付けられて、誘電体基板14に固着される。
【0031】
フランジ32aの表面の一部には図7及び図8に示したように、環状溝32bが形成されており、環状溝32b内には紫外線硬化樹脂が充填されており、該紫外線硬化樹脂を接着材として筒状ホルダ32と誘電体基板14とが接着される。紫外線硬化樹脂が紫外線の照射を受けて硬化した時に収縮することで、フランジ32aの環状溝32b以外の部分が、誘電体基板14に対して接触して、フランジ面で誘電体基板14を保持することができる。また、紫外線硬化樹脂が硬化する前に、該樹脂が筒状ホルダ32の内側に浸み出すことを防ぐために、筒状ホルダ32のフランジ32aの内周面の境界部分にOリング、高表面張力材、などの水密保護部材33(図8)を設けてもよい。こうして、環状溝32bによって円周方向に亘り筒状ホルダ32と誘電体基板14とが接着されるために、誘電体基板14の前記平面内の2軸方向において確実に固着を図ることができる。尚、環状溝32bとする代わりに、図9に示したような、円周方向に等間隔で形成された複数の径方向溝32cとすることも可能である。また、溝32b、32cに紫外線硬化樹脂を充填する代わりに、フランジ面を誘電体基板14に半田溶接することも可能である。尚、フランジ32aが全周に亘り誘電体基板14に固着される必要はなく、図7(b)に示すように、フランジ32aの一部は誘電体基板14からはみ出すようになっていてもよい。
【0032】
発光素子12は、筒状ホルダ32にレーザ溶接等により図10に示すように、周方向に等間隔(通常120度間隔で3点)で溶接されて、誘電体基板14の表面14a及び裏面14bに直交する方向に沿って前記複数組の光導波路20A、20Bのうちの選択された光導波路の入力導波路部分20aの始端に向けて光を出射するようになっている。発光素子12は、CANタイプ、チップタイプのいずれのタイプのものも利用可能であるが、この図示例のようにCANタイプとすることによって、発光素子自体の気密性を図ることができ、別途の気密構造は不要となる。
【0033】
発光素子12と入力導波路部分20aの始端との間には集光レンズ34が設けられる。集光レンズ34によって、発光素子12からの光を高効率で光導波路20に結合させることができる。集光レンズ34は、発光素子12と別に筒状ホルダ32の内周面に取り付けられてもよいが、CANタイプの発光素子12と一体になったものでも良く、または誘電体基板14の裏面14bに一体に固着されたものであってもよい。
【0034】
図4に戻り、取付板30の縦孔30bには、受光素子16を保持するとともに誘電体基板14を支持する高剛性の金属製の筒状ホルダ38が取り付けられる。筒状ホルダ38の上端にはフランジ38aが形成されており、フランジ38aは誘電体基板14の裏面14bを支持している。但し、筒状ホルダ38のフランジ38aは裏面14bと接触するだけとなっており、裏面14bに固定されない。これによって、誘電体基板14をその一端にある筒状ホルダ32によってのみ拘束し、温度変化・振動等による誘電体基板14の応力の発生を防ぐ。但し、フランジ38aと裏面14bとの間には、肉薄の弾性シートまたはコーティング39が介挿されるとよい。
【0035】
受光素子16は、筒状ホルダ38にレーザ溶接等により周方向に等間隔(通常120度間隔で3点)で溶接されて、誘電体基板14の表面14a及び裏面14bに直交する方向に沿って前記複数組の光導波路20A、20Bのうちの選択された光導波路の出力導波路部分20dの終端からミラー28を反射して伝搬した光を受光するようになっている。出力導波路部分20dの終端と受光素子16との間には集光レンズ40が設けられる。発光素子12と同様に、受光素子16は、CANタイプ、チップタイプのいずれのタイプのものも利用可能であるが、この図示例のようにCANタイプとすることによって、発光素子自体の気密性を図ることができ、別途の気密構造は不要となる。
【0036】
集光レンズ40は、受光素子16と別に筒状ホルダ38の内周面に取り付けられてもよいが、CANタイプの受光素子16と一体になったものでもよい。集光レンズ40によって、光導波路20からの光を高効率で受光素子16に結合させることができる。
【0037】
尚、筒状ホルダ38を誘電体基板14に直接的又は間接的に接触させる代わりに、図14に示すように、離間させて、取付板30と誘電体基板14との間に弾性部材41を介挿させることでもよい。弾性部材としてはRTVゴム、テフロン(登録商標)等から構成することができる。
【0038】
以下、2組の光導波路20A、20Bのうち使用する光導波路をどのように選択するかについて説明する。
【0039】
変調部分において、2つの分岐導波路部分20b、20cの長さは、好ましくは1/4λ程度の長さの差異を設けることにより、90度の所望のバイヤス位相差をつけて、変調の感度を高くすることが理想的である。よって、理想的に製造されていれば、光導波路20Aを選択することになる。しかしながら、数十nm程度の精度の加工は非常に困難であり、作製プロセス時の種々の要因により、設計通りに製造されないおそれがある。この実施形態では、変調部分である分岐導波路部分における1/4λと0の差異を持つ光導波路20A,20Bを同じ誘電体基板14上に同時に形成しているので、実際値が設計値からずれていても、その影響は同様に全ての光導波路に及ぶと考えられるから、いずれかの光導波路20A、20Bのバイヤス位相差が所望の位相差またはそれに近いものとなっていることが期待できる。よって、実際のバイヤス位相差が所望の位相差となっている光導波路を選択する。
【0040】
そのために、まず、発光素子12を固着する前の段階で、発光素子12を少し、誘電体基板14から離してピントをずらすようにして、拡散光を2つの入力導波路部分20a、20aの始端に照射し、弱いながらも両方の光導波路20A、20Bに光が入るようにする。そして、それぞれの光導波路20A、20Bの変調部分に順番に変調信号(周波数f0)を印加する(図20(a)、(b))。この変調された光を受光素子16で受光して、f0成分と2f0成分とを検波し、f0成分と2f0成分の割合から、バイヤス位相を判別する。バイヤス位相が90度であればf0成分が優勢となり(図20(c))、バイヤス位相が0度であれば2f0成分が優勢となる(図20(d))。図20の例では、光導波路20Aを選択することになる。
【0041】
光導波路20が選択されると、発光素子12の精密アライメント調整を行う。このとき、発光素子12と筒状ホルダ32の内周面との間のクリアランスを利用して、発光素子12を調整する。
【0042】
従来の構成のように、誘電体基板14の端面から光を入射する構成であると、光導波路に結合されたかどうかの確認が視覚的手段によってできず、調整が困難であるという問題があるが、本実施形態では、誘電体基板14の裏面側に発光素子12が配置されているので、誘電体基板14の表面側から発光素子12からの光を視覚的に確認することで行うことができ、その調整を容易に行うことができる。
【0043】
また、発光素子12の発光面の集光レンズ34により形成される像の面積が小さい(10μm以下)ので確実に光導波路20A、20Bの入力導波路部分20aの始端へ光を伝搬させることは通常困難であるが、誘電体基板14の表面側から発光素子12からの光を視覚的に確認することで行うことができるので、その調整も容易である。
【0044】
調整作業をさらに容易にするため、図11に示すように、誘電体基板14の表面に各光導波路20A,20Bに対応してマーク14mをそれぞれ形成することもできる。このマーク14mは、基板作製プロセスで同時に形成することが可能であり、Cr等でパターンニングするとよい。マーク14mの位置は、ミラー26の近傍で所定距離、所定の方向に離れた位置に決められる。
【0045】
調整作業においては、誘電体基板14の表面上方に設置したCCDカメラにより、発光素子12からの光が誘電体基板14に当たった光点の位置を撮像し、筒状ホルダ32内での発光素子12の位置を調整する。ミラー26に当たった光点を表面側から撮像することはできないので、まず、光点がマーク14mに一致するように発光素子12の表面14aに平行な面内の位置及び/または該平行な面に対する発光素子12の傾きを調整し、且つマーク14mの所でピントを結ぶように発光素子12の上下位置を粗調整する。そして、図12に示すように、光点がマーク14mに一致してピントが合ったならば、発光素子12の位置を前記マーク14mから所定距離、所定の方向に移動させることで、ミラー26の位置にくるように調整する。そして、位置決めされた状態で、前記レーザ溶接により、発光素子12を筒状ホルダ32に固着する。
【0046】
マーク14mの位置はミラー26近傍の任意の位置とすることができるが、図13に示すように光導波路20を横切るように設けられてもよい。これによって、マーク14mに沿って光導波路20へと光点を移動させた後、光導波路20に沿った方向に所定距離、移動させることで、光点をミラー26の位置にくるように調整することができる。
【0047】
受光素子16の受光面は、発光素子12の発光面に比較して大きい(100μm以上)ので、発光素子12の調整程の精密さは要求されない。そのため、選択された光導波路20A、20Bの出力導波路部分20dの終端に合致するように、発光素子12と同様に受光素子16を位置決めしてもよいが、単に、2つの光導波路20A、20Bの出力導波路部分20dの中点付近に整列するように受光素子16を筒状ホルダ38に固着することで十分である。
【0048】
誘電体基板14には、その表面14aの切り込み14c、14dよりも外側に、それぞれ切り込み14c、14dと平行な断面V字状の迷光防止用切り込み14g、14hが形成され、裏面14bには、図15に示すように、前記切り込み14c、14dと直交する方向に延びる断面V字状またはU字状の迷光防止用切り込み14i、14jが形成されている。
【0049】
以上のように構成される光機能素子10においては、発光素子12から誘電体基板14の表面14a及び裏面14bに直交する方向に出射される光が集光レンズ34によってミラー26に集光され、ミラー26で90度変向されて、選択された光導波路20の入力導波路部分20aを伝搬した後、分岐導波路部分20b、20cに分岐される。
【0050】
電極22、24に外部電気信号が入力されることにより、分岐導波路部分20b、20cを伝搬する光に対して電気光学効果による屈折率の変化により互いに反対のプッシュプル位相変調がなされ、これらの変調された光が合波されて出力導波路部分20dに出力されるようになっている。合波により、変調信号に応じた信号が出力されることになる。
【0051】
出力導波路部分20dを伝搬した光は、ミラー28によって誘電体基板14と直交する方向に変向されて、集光レンズ40で集光されて、受光素子16で受光されて電気信号に変換される。
【0052】
このようにこの実施形態においては、複数組形成された光導波路のうち、所望のバイヤス位相差を発生させることができる光導波路を選択することで、簡単に光機能素子を製造することができ、歩留りを向上させることができる。尚、以上の例では、2組の光導波路を形成したが、分岐導波路部分の差異が異なる長さである3組以上の光導波路を形成することも可能であり、その設計差異の長さも任意の長さが可能である。しかしながら、最低限として、この例のように互いの分岐導波路部分の差異の差異がλ/4の2組の光導波路を形成すれば、いずれか一方が所望のバイヤス位相差に近いものとなることが期待できる。
【0053】
その他、この実施形態では次の効果を奏することができる。
・発光素子12から出射された光が90度変向して、光導波路20を伝搬し、光導波路20の変調部分を経た光が90度変向して受光素子16に受光されており、出射方向と受光方向が180度異なるために、迷光を極力防ぐことができる。迷光防止用切り込み14i、14j、14g、14hによって迷光をさらに防ぐことができる。
集光レンズ34、40によって、光の拡散を防ぐことにより、より一層迷光を防ぐことができ、発光素子と光導波路、及び光導波路と発光素子との間の結合効率を高めることができる。
【0054】
・また、この実施形態においては、発光素子12と誘電体基板14との位置調整を表面側から視覚的にモニタリングすることができるので、高速且つ容易に、また必要に応じて自動的に調整作業を行うことができる。発光素子12の光点を一致させるべきマーク14mによって調整をより一層容易に行うことができる。上記に説明したように発光素子12の位置を調整する代わりに、誘電体基板14の位置を調整することとしてもよい。
・また、この実施形態においては、発光素子12と受光素子16としてCANタイプを使用することにより、素子の気密性を持たせることができる。
・また、この実施形態においては、誘電体基板14の裏面から光を入射しており、誘電体基板14の端面から光を入射する必要がないために、ウエハのダイシングによる切り出しによって粗面となった誘電体基板14の端面を研磨する必要がない。
【0055】
次に、図16は、本発明の第2実施形態を表す図である。この例では、受光素子16を誘電体基板14の表面14a側に配置しており、受光素子16は、誘電体基板14の表面14a側に半田バンプ42によって固着される。この構成によれば、受光素子16としてベアチップタイプのものも使用することができるようになる。誘電体基板14の表面14aには切り込み14d’が形成され、該切り込み14d’は、一方の面が表面14aに対して直交する面となり、他方の面が表面14aに対して45度の角度となっている。そして、傾斜角度が45度となった斜面には好ましくは反射膜が付着されて、第2変向手段を構成するミラー28となっている。
【0056】
または、図17に示すように、切り込み14d’を形成する代わりに、誘電体基板14の端面を45度角度に傾斜させても良く、さらには、この出力導波路部分20dの終端となる傾斜面にミラー28となる反射膜を付着してもよい。
【0057】
この例においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。この場合には、受光素子16としてベアチップタイプも好適に使用することができ、縦孔30b、筒状ホルダ38を省略することが可能である。受光素子16については、その受光面が発光素子12の発光面よりも大きく、調整が困難でないために、この例の構成でも、調整は容易に行うことができる。
【0058】
図18は、本発明の第3実施形態を表す図である。この例では、発光素子12及び受光素子16を誘電体基板14の表面14a側に配置しており、発光素子12と受光素子16は、誘電体基板14の表側に半田バンプ42によって固着される。この構成によれば、受光素子12、16としてベアチップタイプのものも使用することができるようになる。
【0059】
誘電体基板14の表面14aには切り込み14c’が形成され、該切り込み14c’は、一方の面が表面14aに対して直交する面となり、他方の面が表面14aに対して45度の角度となっている。そして、傾斜角度が45度となった斜面には好ましくは反射膜が付着されて、変向手段を構成するミラー26となっている。また、切り込み14d’が形成され、該切り込み14d’は、一方の面が表面14aに対して直交する面となり、他方の面が表面14aに対して45度の角度となっている。そして、傾斜角度が45度となった斜面には好ましくは反射膜が付着されて、第2変向手段を構成するミラー28となっている。
【0060】
この例の場合には、発光素子12及び受光素子16と光導波路20とが密接するので、レンズ34、40を不要とすることができる。
【0061】
または、図19に示すように、取付部品50,50を介して発光素子12、16を誘電体基板14に取り付けることも可能である。
【0062】
この例においても、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。この例においては、表面14a側から光点を捉えての発光素子12の調整はできないが、発光素子12及び受光素子16がチップタイプであるので、その取り付けが容易であり、発光素子12及び受光素子16を誘電体基板14の表面14a側に貼り合わせることで、容易に行うことができる。さらには、発光素子12及び受光素子16を誘電体基板14と併せて全体として平面基板とすることができるので取扱が容易となる。
【0063】
図21は本発明の第4実施形態を表す斜視図である。
誘電体基板14は、z軸方向に熱起電力が働く(焦電効果)ので、これを避けるために、誘電体基板14の両側面を短絡する必要がある。そのための対策として、図21に示すように誘電体基板14の表面14aの光導波路20の両側にさらに、金属パターン(例えば金パターン)14n、14nを形成し、これらの金属パターン14n、14nを光導波路20に影響の出ない細いパターンで接続するか、またはワイヤーで接続するとよい。さらには、図22に示すように、誘電体基板14の両側面に導電性塗料14oを金属パターン14nに接触するように塗布するとよい。これによって、図4または図14に示したような片持ちで誘電体基板14を支持している場合にも誘電体基板14の両側面の短絡を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の光機能素子の全体斜視図である。
【図2】図1の破断斜視図である。
【図3】図1の平面図(説明のため縦横の縮尺比は図1と変えている)である。
【図4】図1の縦断面図である。
【図5】(a)は入力導波路部分の始端付近または出力導波路部分の終端付近の拡大斜視図、(b)は入力導波路部分の始端の拡大断面図である。
【図6】入力導波路部分の始端付近の他の例を表す拡大断面図である。
【図7】筒状ホルダと誘電体基板(仮想線で示す)との関係を示す平面図である。
【図8】筒状ホルダと誘電体基板の固着状態を示す部分断面図である。
【図9】筒状ホルダの他の例を表す部分斜視図である。
【図10】発光素子と筒状ホルダとの固着状態を示す底面図である。
【図11】発光素子の調整を表す説明斜視図である。
【図12】マークと光点の拡大平面図である。
【図13】別のマークと光導波路と光点の関係を表す拡大平面図である。
【図14】変形例を表す縦断面図である。
【図15】誘電体基板の裏面側の斜視図である。
【図16】本発明の第2実施形態を表す縦断面図である。
【図17】本発明の第2実施形態の変形例を表す縦断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態を表す縦断面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の変形例を表す縦断面図である。
【図20】2つの光導波路による変調信号と出力信号の関係を表す波形図である。
【図21】本発明の第4実施形態を表す誘電体基板の斜視図である。
【図22】本発明の第4実施形態を表す誘電体基板の斜視図である。
【図23】従来の光機能素子を表す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 光機能素子
12 発光素子
14 誘電体基板
14a 表面
14b 裏面
16 受光素子
20、20A、20B 光導波路
20a 入力導波路部分
20b 分岐導波路部分
20c 分岐導波路部分
20d 出力導波路部分
26 ミラー(変向手段)
28 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としての発光素子と、光導波路が形成された誘電体基板と、光を電気に変換する受光素子と、を備えて、前記光導波路は、前記誘電体基板にそれぞれ形成された、入力導波路部分と、該入力導波路部分から分かれた2つの分岐導波路部分と、該分岐導波路部分が合流した出力導波路部分とからなり、前記発光素子からの光を、前記外部電気信号によって分岐導波路部分の少なくともいずれか一方において変調し、その変調された光を前記受光素子により電気信号として出力する光機能素子において、
前記光導波路は、複数の組が前記誘電体基板に形成されており、各組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が組ごとで異なるように設計されており、
前記発光素子及び前記受光素子は、上記複数組形成された光導波路の中のうちの選択された光導波路に結合するように配置されることを特徴とする光機能素子。
【請求項2】
ある組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が、使用する光の波長λに対して1/4λに相当する長さであるのに対して、別の組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が0であることを特徴とする請求項1記載の光機能素子。
【請求項3】
前記複数組の光導波路は、前記誘電体基板の表面にそれぞれ形成され、前記発光素子は、該誘電体基板の裏面側から前記表面に対して直交する方向に沿って前記入力導波路部分の始端に向けて光を出射するものであり、
前記入力導波路部分の前記始端には、前記表面に対して直交する方向からの光を入力導波路部分に向ける変向手段が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の光機能素子。
【請求項4】
光源としての発光素子と、光導波路が形成された誘電体基板と、光を電気に変換する受光素子と、を備えて、前記発光素子からの光を外部電気信号によって変調し、その変調された光を前記受光素子により電気信号として出力する光機能素子の製造方法において、
同一の誘電体基板に、入力導波路部分と、該入力導波路部分から分かれた2つの分岐導波路部分と、該分岐導波路部分が合流した出力導波路部分とからなる光導波路を、複数組形成し、その際に、各組の2つの分岐導波路部分の設計長さの差異が互いに異なるようにし、各組の前記入力導波路部分の始端が近接するようにし、
発光素子からの光をすべての組の前記入力導波路部分の始端に向けて出射して、すべての光導波路に光を伝搬させると共に、各組の前記分岐導波路部分に順次、周波数f0の変調信号を印加し前記出力導波路部分の終端に到達した光を受光素子で受光し、該受光素子で変換された電気信号から周波数f0成分と周波数2f0成分とを検波し、周波数f0成分が周波数2f0成分に対して最も優勢となる組を選択し、
選択された光導波路に対して発光素子の最終位置決めを行い、発光素子からの光が選択された光導波路に結合されて、選択された光導波路にのみ光が伝搬されるようにし、且つ外部電気信号を選択された光導波路に印加するようにする、ことを特徴とする光機能素子の製造方法。
【請求項5】
前記複数組の光導波路を、前記誘電体基板の表面にそれぞれ形成し、前記発光素子に、誘電体基板の裏面側から前記表面に対して直交する方向に沿って前記入力導波路部分の始端に向けて光を出射させるようにし、
前記入力導波路部分の前記始端には、前記表面に対して直交する方向からの光を入力導波路部分に向ける変向手段を設けることを特徴とする請求項4記載の光機能素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−192955(P2009−192955A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35335(P2008−35335)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】