説明

内燃機関の触媒劣化検出装置

【課題】本発明は、内燃機関の触媒劣化検出装置に関し、EGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の触媒劣化検出装置は、EGR触媒から出る排気ガスの空燃比を検出するEGR触媒後排気ガスセンサの出力に基づいてEGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する。その際に、内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行する。アクティブ空燃比制御によって内燃機関の空燃比が切り替えられた後に排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングが、EGR触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングより早い場合には、アクティブ空燃比制御の実行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の触媒劣化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を行う装置が広く用いられている。EGRを行うと、EGR配管やEGRクーラ、吸気ポート、吸気弁などにデポジットが堆積し易い。デポジットが堆積する原因の一つは、還流する排気ガス(EGRガス)に、未燃HCや粒子状物質などが含まれているからである。このデポジットの堆積を抑制するための技術として、EGRガス中の未燃HCや粒子状物質を浄化(除去)するEGR触媒をEGR通路に設ける技術が知られている。
【0003】
特開2005−264821号公報には、内燃機関の冷間時の排気エミッションの悪化を抑制することを目的としてEGR触媒を利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264821号公報
【特許文献2】特開2008−157133号公報
【特許文献3】特開2006−161718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気系に設けられた排気浄化触媒と同様に、EGR触媒も経年により劣化していく。このため、デポジットの堆積や排気エミッションを抑制するという目的を十分に果たすためには、EGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することが必要となる。しかしながら、従来、EGR触媒の劣化度合いを検出する適切な方法は提案されていない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、EGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することのできる内燃機関の触媒劣化検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の触媒劣化検出装置であって、
内燃機関の排気通路から分岐し、排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路と、
前記EGR通路の途中に設けられたEGR触媒と、
前記EGR触媒から出る排気ガスの空燃比を検出するEGR触媒後排気ガスセンサと、
前記EGR触媒後排気ガスセンサの出力に基づいて前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定するEGR触媒酸素吸蔵容量測定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、前記内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記EGR通路が分岐する箇所より下流側の前記排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記アクティブ空燃比制御によって前記内燃機関の空燃比が切り替えられた後に前記排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングが、前記EGR触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングより早い場合には、前記アクティブ空燃比制御の実行を禁止するアクティブ空燃比制御禁止手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1の発明において、
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、前記内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記EGR通路が分岐する箇所より下流側の前記排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量の値と、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵容量の値とを記憶する容量値記憶手段と、
前記排気浄化触媒を通過する排気ガス流量に対する、前記EGR触媒を通過する排気ガス流量の比を、ガス量比として取得するガス量比取得手段と、
前記容量値記憶手段に記憶されている前記排気浄化触媒の酸素吸蔵容量の値に前記ガス量比を乗じた値が、前記容量値記憶手段に記憶されている前記EGR触媒の酸素吸蔵容量の値より小さいときには、前記アクティブ空燃比制御の実行を禁止するアクティブ空燃比制御禁止手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記排気通路の途中に配置されたタービンと、前記吸気通路の途中に配置されたコンプレッサとを有するターボチャージャを備え、
前記EGR通路は、前記タービンの上流側の排気通路から分岐していることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記排気通路の途中に配置されたタービンと、前記吸気通路の途中に配置されたコンプレッサとを有するターボチャージャを備え、
前記EGR通路は、前記タービンの下流側の排気通路から分岐していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、EGR触媒から出る排気ガスの空燃比を検出するEGR触媒後排気ガスセンサを設け、このEGR触媒後排気ガスセンサの出力に基づいてEGR触媒の酸素吸蔵容量を測定することができる。これにより、EGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することができる。
【0013】
第2の発明によれば、EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行することができる。これにより、EGR触媒の酸素吸蔵容量をより正確に測定することができる。また、第2の発明によれば、アクティブ空燃比制御によって内燃機関の空燃比が切り替えられた後に排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングが、EGR触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングより早い場合には、アクティブ空燃比制御の実行を禁止することができる。これにより、EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、排気浄化触媒の下流側に未浄化成分が流出することを確実に抑制することができる。よって、エミッションの悪化を確実に回避することができる。
【0014】
第3の発明によれば、EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行することができる。これにより、EGR触媒の酸素吸蔵容量をより正確に測定することができる。また、第3の発明によれば、排気浄化触媒を通過する排気ガス流量に対する、EGR触媒を通過する排気ガス流量の比を、ガス量比として取得し、そのガス量比を排気浄化触媒の酸素吸蔵容量の値に乗じた値が、EGR触媒の酸素吸蔵容量の値より小さいときには、アクティブ空燃比制御の実行を禁止することができる。これにより、EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、排気浄化触媒の下流側に未浄化成分が流出することを確実に抑制することができる。よって、エミッションの悪化を確実に回避することができる。
【0015】
第4の発明によれば、ターボチャージャのタービンの上流側の排気通路から分岐するEGR通路に設けられたEGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することができる。
【0016】
第5の発明によれば、ターボチャージャのタービンの下流側の排気通路から分岐するEGR通路に設けられたEGR触媒の劣化度合いを精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるアクティブ空燃比制御実行中の、内燃機関の制御目標空燃比、スタート触媒後O2センサの出力、および高圧EGR触媒後O2センサの出力の変動を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2におけるアクティブ空燃比制御実行中の、内燃機関の制御目標空燃比、スタート触媒後O2センサの出力、および低圧EGR触媒後O2センサの出力の変動を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3において高圧EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態4において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図8】高圧EGR触媒によるエミッション低減効果代の傾向を表したマップである。
【図9】テールパイプエミッションの傾向を表したマップである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、火花点火式の内燃機関10を備えている。内燃機関10は、車両等の動力源として用いられるものである。図1に示す内燃機関10は、直列4気筒型であるが、本発明における内燃機関の気筒数および気筒配置はこれに限定されるものではない。
【0019】
内燃機関10の各気筒には、燃料を筒内に直接に噴射する燃料インジェクタ12が設置されている。なお、本発明は、このような筒内噴射式の内燃機関に限らず、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関にも同様に適用可能である。
【0020】
内燃機関10の各気筒から排出される排気ガスは、排気マニホールド20により集合されて排気通路18に流入する。本実施形態の内燃機関10は、排気ガスのエネルギーによって過給を行うターボチャージャ24を備えている。ターボチャージャ24は、排気ガスのエネルギーによって回転するタービン241と、このタービン241に駆動されて回転するコンプレッサ242とを有している。タービン241は、排気通路18の途中に配置されており、コンプレッサ242は、吸気通路28の途中に配置されている。
【0021】
タービン241の下流側の排気通路18には、排気ガス中の有害成分を浄化するためのスタート触媒26およびアンダーフロア触媒27が設置されている。スタート触媒26の下流側には、スタート触媒26から流出する排気ガスの空燃比を検出するスタート触媒後O2センサ25が設置されている。
【0022】
内燃機関10の吸気通路28の入口付近には、エアクリーナ30が設けられている。また、エアクリーナ30の下流近傍には、吸入空気量を検出するエアフローメータ38が設置されている。
【0023】
コンプレッサ242の下流側の吸気通路28には、インタークーラ32が設置されている。エアクリーナ30を通って吸入された空気は、ターボチャージャ24のコンプレッサ242で圧縮された後、インタークーラ32で冷却される。インタークーラ32を通過した空気は、吸気マニホールド34を通って、各気筒内に流入する。インタークーラ32と吸気マニホールド34との間の吸気通路28には、スロットル弁36が設置されている。
【0024】
内燃機関10には、排気ガスの一部を吸気通路28に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を行うためのEGR装置が備えられている。本実施形態におけるEGR装置は、高圧EGRを行う経路と、低圧EGRを行う経路との、2つのEGR経路を備えている。
【0025】
高圧EGRを行うための高圧EGR通路40は、タービン241より上流側の排気通路(図1の構成では排気マニホールド20)と、コンプレッサ242の下流側の吸気通路28(図1の構成ではスロットル弁36と吸気マニホールド34との間)とを接続している。高圧EGR通路40の途中には、還流する排気ガス中の有害成分を浄化する高圧EGR触媒41と、還流する排気ガスを冷却する高圧EGRクーラ43と、還流する排気ガスの量(EGR量)を調節するための高圧EGR弁44とが、上流側からこの順に設けられている。
【0026】
また、高圧EGR触媒41の下流側には、高圧EGR触媒41から流出する排気ガスの空燃比を検出する高圧EGR触媒後O2センサ39が設置されている。高圧EGR触媒後O2センサ39は、そのセンサ素子を活性温度まで昇温させるためのヒータを備えている。高圧EGR触媒後O2センサ39は、高圧EGRクーラ43の下流側に設置されていてもよいが、本実施形態では、高圧EGR触媒41と高圧EGRクーラ43との間に高圧EGR触媒後O2センサ39を設置している。これにより、高圧EGRクーラ43で冷却される前の、高温の排気ガスを高圧EGR触媒後O2センサ39に当て、高圧EGR触媒後O2センサ39を暖めることができる。このため、ヒータへの通電量が少なくて済むので、電力消費量を軽減することができる。
【0027】
低圧EGRを行うための低圧EGR通路42は、タービン241より下流側の排気通路18(図1の構成ではスタート触媒26とアンダーフロア触媒27との間)と、コンプレッサ242の上流側の吸気通路28とを接続している。低圧EGR通路42の途中には、還流する排気ガス中の有害成分を浄化する低圧EGR触媒45と、還流する排気ガスを冷却する低圧EGRクーラ46と、還流する排気ガスの量を調節するための低圧EGR弁47とが、上流側からこの順に設けられている。
【0028】
また、低圧EGR触媒45の下流側には、低圧EGR触媒45から流出する排気ガスの空燃比を検出する低圧EGR触媒後O2センサ48が設置されている。低圧EGR触媒後O2センサ48は、そのセンサ素子を活性温度まで昇温させるためのヒータを備えている。低圧EGR触媒後O2センサ48は、低圧EGRクーラ46の下流側に設置されていてもよいが、本実施形態では、低圧EGR触媒45と低圧EGRクーラ46との間に低圧EGR触媒後O2センサ48を設置している。これにより、低圧EGRクーラ46で冷却される前の、高温の排気ガスを低圧EGR触媒後O2センサ48に当て、低圧EGR触媒後O2センサ48を暖めることができる。このため、ヒータへの通電量が少なくて済むので、電力消費量を軽減することができる。
【0029】
なお、本発明の適用対象は、上述したような複数のEGR経路を備えた内燃機関に限定されるものではない。本発明は、単一のEGR経路を備えた内燃機関にも適用可能である。
【0030】
本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50には、上述した各種のセンサおよびアクチュエータのほか、内燃機関10のクランク軸(出力軸)の回転角度を検出するクランク角センサ52と、内燃機関10を搭載した車両の運転席に設けられたアクセルペダルの位置(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ54とが電気的に接続されている。ECU50は、各センサの出力に基づき、所定のプログラムに従って各アクチュエータを作動させることにより、内燃機関10の運転状態を制御する。
【0031】
本実施形態におけるスタート触媒後O2センサ25、高圧EGR触媒後O2センサ39および低圧EGR触媒後O2センサ48は、理論空燃比を境に出力が急変する特性を有する酸素センサである。ただし、本発明では、スタート触媒後O2センサ25、高圧EGR触媒後O2センサ39および低圧EGR触媒後O2センサ48に代えて、広域空燃比センサを用いてもよい。広域空燃比センサは、空燃比の変化に対してリニアに変化する出力を発し、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能なセンサである。
【0032】
スタート触媒26、アンダーフロア触媒27、高圧EGR触媒41および低圧EGR触媒45は、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比になっているときに、HC、COおよびNOxの三成分を同時に浄化する三元触媒としての機能を有する触媒コンバータである。これらの触媒コンバータは、触媒成分として、Pt,Pd等の貴金属(活性点)と、酸素を吸収放出可能な酸素吸蔵成分とを含んでいる。これらの触媒コンバータに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリッチである場合には、上記酸素吸蔵成分から酸素が放出され、その放出された酸素によって、HCおよびCOといった未燃成分を酸化して浄化することができる。逆に、これらの触媒コンバータに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンである場合には、上記酸素吸蔵成分が排気ガス中の余剰酸素を吸収することにより、NOxを還元浄化することができる。このようにして、酸素吸蔵成分が酸素の吸収および放出を行うことにより、触媒コンバータに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に対し多少ばらついたとしても、HC、COおよびNOxの三成分を良好に浄化することができる。
【0033】
また、高圧EGR触媒41および低圧EGR触媒45は、sootやSOF(Soluble Organic Fraction)などの、排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter)などを燃焼(酸化)させる機能も有している。高圧EGR触媒41や低圧EGR触媒45によって粒子状物質(以下「PM」と称する)を燃焼させて除去することにより、高圧EGR通路40や低圧EGR通路42、高圧EGRクーラ43、低圧EGRクーラ46、内燃機関10の吸気ポート、吸気弁などにデポジットが堆積することを十分に抑制することができる。
【0034】
触媒コンバータは、経年使用により、その浄化性能が劣化していく。触媒コンバータの劣化度合いは、その触媒コンバータが吸蔵し得る最大の酸素量である酸素吸蔵容量(OSC:Oxygen Storage Capacity)と関係していることが知られている。すなわち、酸素吸蔵容量が低下しているほど、触媒コンバータの劣化が進行していると判定することができる。従って、各触媒コンバータの酸素吸蔵容量を測定することにより、その触媒コンバータの劣化を検出することができる。
【0035】
以下、本実施形態では、スタート触媒26および高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量を測定する場合の制御について説明する。本実施形態では、アクティブ空燃比制御を実行することにより、スタート触媒26および高圧EGR触媒41の各々の酸素吸蔵容量を同時に測定する。アクティブ空燃比制御とは、内燃機関10の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替える制御である。
【0036】
図2は、本実施形態のアクティブ空燃比制御実行中の、内燃機関10の制御目標空燃比、スタート触媒後O2センサ25の出力、および高圧EGR触媒後O2センサ39の出力の変動を示す図である。図2に示すように、アクティブ空燃比制御の実行中、ECU50は、内燃機関10の制御目標空燃比を、理論空燃比からリッチ側に所定の振幅ΔA/FRだけ離れた空燃比(以下、「リッチ空燃比」と称する)と、理論空燃比からリーン側に所定の振幅ΔA/FLだけ離れた空燃比(以下、「リーン空燃比」と称する)とに、強制的に且つ交互に切り替える。
【0037】
図2において、時刻t1以前においては、制御目標空燃比がリーン空燃比とされているので、内燃機関10は、空気過剰なリーン空燃比で運転される。このため、スタート触媒26には、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスが流入する。この余剰酸素をスタート触媒26が吸収することにより、スタート触媒26の下流は、ほぼ理論空燃比になる。しかしながら、スタート触媒26がそれ以上酸素を吸収できない状態(酸素が満杯の状態)になると、余剰酸素がスタート触媒26の下流側に流出し始める。その結果、スタート触媒後O2センサ25の出力がリッチからリーンに変化(反転)する(時刻t1)。これを契機として、制御目標空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比に切り替えられる。
【0038】
制御目標空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比に切り替わると、内燃機関10は、燃料過剰なリッチ空燃比で運転される。このため、時刻t1以降、スタート触媒26には、酸素が不足し、余剰の未燃成分を含んだリッチ空燃比の排気ガスが流入する。スタート触媒26は、吸蔵していた酸素を放出することにより、余剰の未燃成分を浄化する。これにより、スタート触媒26の下流は、ほぼ理論空燃比になる。しかしながら、スタート触媒26に吸蔵されていた酸素が底をつくと、余剰の未燃成分がスタート触媒26の下流側に流出し始める。その結果、スタート触媒後O2センサ25の出力がリーンからリッチに変化(反転)する(時刻t3)。これを契機として、制御目標空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。
【0039】
以下、同様にして、スタート触媒後O2センサ25の出力の反転を契機として、制御目標空燃比がリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に切り替えられていく。すなわち、スタート触媒後O2センサ25の出力がリッチからリーンに反転したときに、制御目標空燃比はリーン空燃比からリッチ空燃比に切り替えられ(図2中の時刻t5、t9)、スタート触媒後O2センサ25の出力がリーンからリッチに反転したときに、制御目標空燃比はリッチ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる(時刻t7)。
【0040】
時刻t1においてはスタート触媒26の酸素は満杯になっており、時刻t3においてはスタート触媒26の酸素は空になっている。従って、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cは、時刻t1から時刻t3までの間にスタート触媒26から放出された酸素量に等しい。時刻t1から時刻t3までの間は、酸素が不足したリッチ空燃比の排気ガスがスタート触媒26に流入する。その酸素不足分を補填するように、スタート触媒26から酸素が放出される。
【0041】
従って、単位期間当たりにスタート触媒26から放出される酸素の量は、スタート触媒26での単位期間当たりの酸素不足量に等しい。スタート触媒26での単位期間当たりの酸素不足量は、内燃機関10の単位期間当たりの酸素不足量に対応している。内燃機関10の単位期間当たりの酸素不足量は、リッチ側振幅ΔA/FR、燃料噴射量、空気中の酸素質量割合(約0.23)などの値に基づいて算出することができる。その算出された単位期間当たりの酸素不足量を時刻t1から時刻t3まで積算した値が、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t5と時刻t7との間においても、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cを算出することができる。
【0042】
また、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cは、次のようにして算出することもできる。時刻t3においてはスタート触媒26の酸素は空になっており、時刻t5においてはスタート触媒26の酸素は満杯になっている。従って、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cは、時刻t3から時刻t5までの間にスタート触媒26に吸収された酸素量に等しい。時刻t3から時刻t5までの間は、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスがスタート触媒26に流入し、その余剰酸素がスタート触媒26に吸収される。
【0043】
従って、単位期間当たりにスタート触媒26に吸収される酸素の量は、スタート触媒26での単位期間当たりの酸素余剰量に等しい。スタート触媒26での単位期間当たりの酸素余剰量は、内燃機関10の単位期間当たりの酸素余剰量に対応している。内燃機関10の単位期間当たりの酸素余剰量は、リーン側振幅ΔA/FL、燃料噴射量、空気中の酸素質量割合などの値に基づいて算出することができる。その算出された単位期間当たりの酸素余剰量を時刻t3から時刻t5まで積算した値が、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t7と時刻t9との間においても、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cを算出することができる。
【0044】
図2中に示す「スタート触媒のOSC算出カウンタ」は、上述した単位期間当たりのスタート触媒26の酸素放出量(または酸素吸収量)ΔOSCs/cの積算値の変化を表している。図2では、時刻t3、t5、t7、t9におけるΔOSCs/cの積算値が、それぞれ、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cの値に相当している。このようにして、アクティブ空燃比制御の実行中にΔOSCs/cの積算値を算出することにより、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cを繰り返し測定することができる。そして、それらの測定値の平均値を求めることにより、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cを精度良く算出することができる。
【0045】
一方、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCは、次のようにして算出することができる。図2中の時刻t0において、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力は、リッチからリーンへ変化している。すなわち、時刻t0の時点で、高圧EGR触媒41の酸素は満杯となっている。しかしながら、時刻t0以降も制御目標空燃比はリーン空燃比に維持される。そして、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するのを待って、制御目標空燃比がリッチ空燃比へ切り替えられる(時刻t1)。よって、リッチ空燃比の排気ガスが高圧EGR触媒41に流入し始めるのは、時刻t1以降である。
【0046】
その後、時刻t2になると、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力がリーンからリッチへ反転する。すなわち、時刻t2の時点で、高圧EGR触媒41の酸素は空となる。従って、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRは、時刻t1から時刻t2までの間に、高圧EGR触媒41から放出された酸素の量に等しい。この間、高圧EGR触媒41には、酸素が不足したリッチ空燃比の排気ガスが流入し、その酸素不足分を補填するようにして、高圧EGR触媒41から酸素が放出される。従って、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素放出量ΔOSCHEGRは、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素不足量に等しい。高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素不足量は、スタート触媒26での単位期間当たりの酸素不足量ΔOSCs/cと、高圧EGR率(内燃機関10から排出される排気ガスのうち、高圧EGR通路40に流入する排気ガスの割合)とに基づいて算出することができる。そのようにして算出された、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素不足量を時刻t1から時刻t2まで積算した値が、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t5と時刻t6との間においても、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを算出することができる。
【0047】
また、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCは、次のようにして算出することもできる。図2中の時刻t2において、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力は、リーンからリッチへ変化している。すなわち、時刻t2の時点で、高圧EGR触媒41の酸素は空となっている。しかしながら、時刻t2以降も制御目標空燃比はリッチ空燃比に維持される。そして、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するのを待って、制御目標空燃比がリーン空燃比へ切り替えられる(時刻t3)。よって、リーン空燃比の排気ガスが高圧EGR触媒41に流入し始めるのは、時刻t3以降である。
【0048】
その後、時刻t4になると、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力がリッチからリーンへ反転する。すなわち、時刻t4の時点で、高圧EGR触媒41の酸素は満杯となる。従って、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRは、時刻t3から時刻t4までの間に、高圧EGR触媒41に吸収された酸素の量に等しい。この間、高圧EGR触媒41には、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスが流入し、その余剰酸素が高圧EGR触媒41に吸収される。従って、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素吸収量は、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素余剰量に等しい。高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素余剰量は、スタート触媒26での単位期間当たりの酸素余剰量ΔOSCs/cと、高圧EGR率とに基づいて算出することができる。そのようにして算出された、高圧EGR触媒41での単位期間当たりの酸素余剰量を時刻t3から時刻t4まで積算した値が、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t7と時刻t8との間においても、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを算出することができる。
【0049】
図2中に示す「高圧EGR触媒のOSC算出カウンタ」は、上述した単位期間当たりの高圧EGR触媒41の酸素放出量(または酸素吸収量)ΔOSCHEGRの積算値の変化を表している。図2では、時刻t2、t4、t6、t8におけるΔOSCHEGRの積算値が、それぞれ、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの値に相当している。このようにして、アクティブ空燃比制御の実行中にΔOSCHEGRの積算値を算出することにより、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを繰り返し測定することができる。そして、それらの測定値の平均値を求めることにより、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを精度良く算出することができる。
【0050】
図3は、上記の手法に従ってスタート触媒26および高圧EGR触媒41の劣化検出(酸素吸蔵容量の測定)を実行する際にECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図3に示すルーチンによれば、まず、内燃機関10の制御目標空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比へ、あるいはリーン空燃比からリッチ空燃比へ切り替える処理が実行される(ステップ100)。次いで、EGR触媒後O2センサ39の出力が反転したか否かが判定される(ステップ102)。
【0051】
上記ステップ102で、EGR触媒後O2センサ39の出力がまだ反転していない場合には、EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するまで待機する。そして、EGR触媒後O2センサ39の出力が反転したことが認められた場合には、次に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転したか否かが判定される(ステップ104)。このステップ104で、スタート触媒後O2センサ25の出力がまだ反転していない場合には、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するまで待機する。
【0052】
上記ステップ104で、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転したことが認められた場合には、次に、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cと、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRとがそれぞれ算出される(ステップ106)。具体的には、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転した時点におけるΔOSCs/cの積算値が、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cの今回の測定値として読み込まれ、この今回の測定値と、前回までの測定値との平均値が、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cの値として記憶される。また、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転した時点におけるΔOSCHEGRの積算値が、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの今回の測定値として読み込まれ、この今回の測定値と、前回までの測定値との平均値が、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの値として記憶される。
【0053】
上記ステップ106の処理に続いて、スタート触媒26および高圧EGR触媒41の劣化検出の実行開始後の経過時間が所定時間に達したか否かが判別される(ステップ108)。この所定時間は、酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの測定回数(すなわち、両O2センサ25,39の反転回数)が、十分な測定精度が保証できるような必要回数に到達できるような時間として、予め設定されている。
【0054】
上記ステップ108において、上記経過時間が上記所定時間に達していないと判別された場合には、酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの測定回数が必要回数に達していないと判断できる。この場合には、酸素吸蔵容量の測定を続行する必要があるので、上記ステップ100以下の処理が再度実行される。なお、上記ステップ106および108の処理は実際上は瞬時に終了する。このため、上記ステップ108から上記ステップ100に戻る場合、時間的には、上記ステップ104でスタート触媒後O2センサ25の出力が反転したことが認められた直後に、上記ステップ100で内燃機関10の制御目標空燃比が切り替えられることとなる。
【0055】
一方、上記ステップ108で、上記経過時間が上記所定時間に達したと判別された場合には、酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの測定回数が必要回数に達したと判断できる。この場合には、本ルーチンによる、アクティブ空燃比制御を利用した劣化検出の実行が終了される。
【0056】
本実施形態は、上述した図2に示すように、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミング(時刻t0、t2、t4、t6、t8)が、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミング(時刻t1、t3、t5、t7、t9)より早くなるような状況のときに、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの測定を実行することを特徴としている。
【0057】
これに対し、仮に、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングが、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングより早いとすると、次のような問題がある。
【0058】
高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを正確に測定するためには、高圧EGR触媒41の酸素が満杯あるいは空になるまで、制御目標空燃比をリーン空燃比あるいはリッチ空燃比に維持することが必要である。従って、スタート触媒後O2センサ25の出力が高圧EGR触媒後O2センサ39の出力より前に反転した場合には、その後、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するまで、制御目標空燃比の切り替えを延期することが必要となる。このため、スタート触媒26の下流に、未浄化成分を多く含む排気ガスが流出することになる。
【0059】
すなわち、スタート触媒後O2センサ25の出力がリッチからリーンへ反転したとすると、その時点でスタート触媒26の酸素は満杯となっている。その後、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力がリッチからリーンへ反転するまでの間は、制御目標空燃比がリーン空燃比のままに維持される。つまり、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスがスタート触媒26に流入し続ける。従って、この間、スタート触媒26内の空燃比がリーンに偏るので、NOxを十分に浄化できなくなり、スタート触媒26の下流にNOxが流出する。
【0060】
一方、スタート触媒後O2センサ25の出力がリーンからリッチへ反転したとすると、その時点でスタート触媒26の酸素は空となっている。その後、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力がリーンからリッチへ反転するまでの間は、制御目標空燃比がリッチ空燃比のままに維持される。つまり、余剰の未燃成分を含んだリッチ空燃比の排気ガスがスタート触媒26に流入し続ける。従って、この間、スタート触媒26内の空燃比がリッチに偏るので、余剰の未燃成分(HC、CO)を十分に浄化できなくなり、スタート触媒26の下流にHCやCOが流出する。
【0061】
スタート触媒26の下流側に流出した未浄化成分は、アンダーフロア触媒27において浄化される。しかしながら、その浄化率は必ずしも100%ではないので、アンダーフロア触媒27の下流側にも多少の未浄化成分が流出する。それゆえ、スタート触媒26の下流側に流出する未浄化成分の量は、できるだけ少ないことが望ましい。
【0062】
以上述べたように、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量を測定するためにアクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングが、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングより早いとすると、スタート触媒26の下流側に未浄化成分が排出されることになる。
【0063】
これに対し、本実施形態では、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転する以前に高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するような状況のときに、アクティブ空燃比制御の実行を許可し、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量を測定することを特徴としている。このため、スタート触媒26の下流側に未浄化成分が流出することを確実に抑制することができる。
【0064】
スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cが大きくなるにつれて、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングは遅くなる。これに対し、スタート触媒26を通過する排気ガス流量FRs/cが多くなるにつれて、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングは早くなる。また、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRが大きくなるにつれて、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングは遅くなる。一方、高圧EGR触媒41を通過する排気ガス流量FRHEGRが多くなるにつれて、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングは早くなる。
【0065】
従って、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転する以前に高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するためには、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cと、スタート触媒26を通過する排気ガス流量FRs/cと、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRと、高圧EGR触媒41を通過する排気ガス流量FRHEGRとの間に、次式のような条件が成立すればよい。
OSCs/c/FRs/c≧OSCHEGR/FRHEGR ・・・(1)
【0066】
上記(1)式は、次式のように変形することができる。
OSCs/c×FRHEGR/FRs/c≧OSCHEGR ・・・(2)
【0067】
上記(2)式が成立している場合には、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転する以前に高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転する。従って、この場合には、大気中への未浄化成分の排出を確実に防止しつつ、アクティブ空燃比制御を実行して高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定することができる。
【0068】
これに対し、上記(2)式が不成立の場合、すなわち、下記(3)式が成立する場合には、アクティブ空燃比制御を実行した場合に、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングが、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングより早くなる。このため、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定するためにアクティブ空燃比制御を実行したとすると、スタート触媒26の下流側に未浄化成分が流出すると予測できる。
OSCs/c×FRHEGR/FRs/c<OSCHEGR ・・・(3)
【0069】
そこで、本実施形態では、上記(3)式が成立している場合には、アクティブ空燃比制御の実行を禁止することとした。図4は、この機能を実現するためにECU50が実行するルーチンのフローチャートである。本ルーチンによれば、まず、上記(3)式の成否が判定される(ステップ110)。
【0070】
上記ステップ110において、上記(3)式中のFRHEGR/FRs/c(以下「ガス量比」と称する)の値は、次のようにして求めることができる。ガス量比FRHEGR/FRs/cは、スタート触媒26を通過する排気ガス流量に対する、高圧EGR触媒41を通過する排気ガス流量の比を表す値である。ガス量比FRHEGR/FRs/cは、内燃機関10の運転状態(高圧EGR弁44の開度、エンジン回転数、吸入空気量など)に応じて変化する。よって、そのような運転状態パラメータと、ガス量比FRHEGR/FRs/cとの関係を予め調べておき、ECU50にマップとして記憶しておくことにより、現在の運転状態におけるガス量比FRHEGR/FRs/cを算出することができる。
【0071】
また、上記ステップ110において、スタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cおよび高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRの値としては、前回の劣化検出時に図3に示すルーチンの処理によって算出されてECU50に記憶された値を用いることができる。スタート触媒26や高圧EGR触媒41の劣化はそれほど急激に進行することはないので、現在の酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの値は、前回の劣化検出時に算出された酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの値にほぼ等しいと考えてよい。従って、上記ステップ110においては、前回の劣化検出時に算出された酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの値を、現在の酸素吸蔵容量OSCs/cおよびOSCHEGRの値として代用することができる。
【0072】
上記ステップ110では、上述したようにして得られるFRHEGR/FRs/c、OSCs/c、OSCHEGRの値を用いて、上記(3)式の成否が判定される。その結果、上記(3)式が成立していると判定された場合には、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定するためにアクティブ空燃比制御を実行したとすると、スタート触媒26の下流側に未浄化成分が流出すると予測できる。そこで、この場合には、EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定するためのアクティブ空燃比制御の実行が禁止される(ステップ112)。
【0073】
一方、上記ステップ110で、上記(3)式が不成立であると判定された場合には、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定するためにアクティブ空燃比制御を実行したとしても、スタート触媒26の下流側に未浄化成分が流出するおそれはないと予測できる。そこで、この場合には、EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRを測定するためのアクティブ空燃比制御の実行が許可される(ステップ114)。
【0074】
ところで、上述した実施の形態1においては、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRとスタート触媒26の酸素吸蔵容量OSCs/cとを同時に測定するようにしているが、本発明では、両者を別々に測定するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態1においては、スタート触媒後O2センサ25の出力が反転するタイミングが、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するタイミングより早くなるかどうかを上記ステップ110の処理によって事前に予測するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明では、上記ステップ110のような事前予測をせずにアクティブ空燃比制御を開始し、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力が反転するより前にスタート触媒後O2センサ25の出力が反転したことが実際に検出された場合には、アクティブ空燃比制御の実行を禁止するようにしてもよい。
【0076】
また、上述した実施の形態1においては、高圧EGR触媒後O2センサ39が前記第1の発明における「EGR触媒後排気ガスセンサ」に、高圧EGR触媒41が前記第1乃至第3の発明における「EGR触媒」に、高圧EGR通路40が前記第1および第4の発明における「EGR通路」に、スタート触媒26が前記第2および第3の発明における「排気浄化触媒」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、図3に示すルーチンの処理を実行することにより前記第1の発明における「EGR触媒酸素吸蔵容量測定手段」並びに前記第2および第3の発明における「アクティブ空燃比制御手段」が、上記ステップ110の処理を実行することにより前記第3の発明における「ガス量比取得手段」が、上記ステップ110および112の処理を実行することにより前記第2および第3の発明における「アクティブ空燃比制御禁止手段」が、それぞれ実現されている。
【0077】
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。本実施形態のハードウェア構成は、実施の形態1と同様に、図1に示す構成である。
【0078】
本実施形態では、アクティブ空燃比制御を実行することにより、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量を測定する。図5は、本実施形態のアクティブ空燃比制御実行中の、内燃機関10の制御目標空燃比、スタート触媒後O2センサ25の出力、および低圧EGR触媒後O2センサ48の出力の変動を示す図である。
【0079】
図5中の時刻t1において、低圧EGR触媒45の酸素が満杯となり、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力がリッチからリーンに反転している。これを契機として、制御目標空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比に切り替えられる。これにより、時刻t1以降、スタート触媒26には、余剰の未燃成分を含んだリッチ空燃比の排気ガスが流入する。スタート触媒26は、吸蔵していた酸素を放出することにより、その余剰の未燃成分を浄化する。このため、低圧EGR触媒45には、酸素の過不足のない理論空燃比の排気ガスが流入する。
【0080】
その後、時刻t2において、スタート触媒後O2センサ25の出力がリーンからリッチに反転する。これは、スタート触媒26に吸蔵されていた酸素が底をつき、余剰の未燃成分がスタート触媒26の下流側に流出し始めたことを表している。従って、時刻t2以降、低圧EGR触媒45に、余剰の未燃成分を含んだリッチ空燃比の排気ガスが流入し始める。低圧EGR触媒45は、吸蔵していた酸素を放出することにより、その余剰の未燃成分を浄化する。その後、時刻t3において、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力がリーンからリッチに反転する。これは、低圧EGR触媒45に吸蔵されていた酸素が底をつき、余剰の未燃成分が低圧EGR触媒45の下流側に流出し始めたことを表している。
【0081】
時刻t3における低圧EGR触媒後O2センサ48の出力の反転を契機として、制御目標空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。これにより、時刻t3以降、スタート触媒26には、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスが流入する。この余剰酸素をスタート触媒26が吸収する。スタート触媒26の酸素が満杯になると、余剰酸素がスタート触媒26の下流側に流出し始める結果、スタート触媒後O2センサ25の出力がリッチからリーンに反転する(時刻t4)。この時刻t4以降、低圧EGR触媒45には、余剰酸素を含んだリーン空燃比の排気ガスが流入し、その余剰酸素を低圧EGR触媒45が吸収する。低圧EGR触媒45の酸素が満杯になると、余剰酸素が低圧EGR触媒45の下流側に流出し始める結果、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力がリッチからリーンに反転する(時刻t5)。これを契機として、制御目標空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比に切り替えられる。
【0082】
このように、本実施形態では、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力の反転を契機として、制御目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に切り替えるようにする。
【0083】
低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCは、次のようにして算出することができる。時刻t2においては低圧EGR触媒45の酸素は満杯になっており、時刻t3においては低圧EGR触媒45の酸素は空になっている。従って、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRは、時刻t2から時刻t3までの間に、低圧EGR触媒45から放出された酸素の量に等しい。低圧EGR触媒45での単位期間当たりの酸素放出量(すなわち酸素不足量)ΔOSCLEGRは、リッチ側振幅ΔA/FR、燃料噴射量、空気中の酸素質量割合、低圧EGR率(内燃機関10から排出される排気ガスのうち、低圧EGR通路42に流入する排気ガスの割合)などの値に基づいて算出することができる。その算出された単位期間当たりの酸素放出量を時刻t2から時刻t3まで積算した値が、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t6と時刻t7との間においても、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRを算出することができる。
【0084】
また、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCは、次のようにして算出することもできる。時刻t4においては低圧EGR触媒45の酸素は空になっており、時刻t5においては低圧EGR触媒45の酸素は満杯となっている。従って、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRは、時刻t4から時刻t5までの間に、低圧EGR触媒45に吸収された酸素の量に等しい。低圧EGR触媒45での単位期間当たりの酸素吸収量(すなわち酸素余剰量)ΔOSCLEGRは、リーン側振幅ΔA/FL、燃料噴射量、空気中の酸素質量割合、低圧EGR率に基づいて算出することができる。その算出された単位期間当たりの酸素吸収量ΔOSCLEGRを時刻t4から時刻t5まで積算した値が、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRの値に相当する。同様の計算を行うことにより、時刻t8と時刻t9との間においても、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRを算出することができる。
【0085】
上述したように、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRを測定するためには、低圧EGR触媒45にリッチ空燃比またはリーン空燃比の排気ガスを流入させることが必要となる。すなわち、スタート触媒26の下流側に、未浄化成分を含んだ排気ガスを流出させることが必要となる。このため、スタート触媒26の下流側に流出した未浄化成分をアンダーフロア触媒27で確実に浄化することが重要である。そのためには、アンダーフロア触媒27の酸素が空または満杯になることを避けなければならない。
【0086】
アンダーフロア触媒27の酸素が空または満杯になることを避けるには、スタート触媒26の下流側にリッチ空燃比またはリーン空燃比の排気ガスが流れる期間がなるべく短い方がよい。スタート触媒26の下流側にリッチ空燃比またはリーン空燃比の排気ガスが流れる期間を短くするためには、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力が反転するタイミングを早くすることが必要である。低圧EGR触媒45を通過する排気ガス流量が多いほど、低圧EGR触媒後O2センサ48の出力が反転するタイミングは早くなる。
【0087】
以上のようなことから、本実施形態においては、低圧EGR通路42によるEGR量が比較的多い運転状態のときにのみ、低圧EGR触媒45の酸素吸蔵容量OSCLEGRの測定を実行することが望ましい。
【0088】
上述した実施の形態2においては、低圧EGR触媒後O2センサ48が前記第1の発明における「EGR触媒後排気ガスセンサ」に、低圧EGR触媒45が前記第1の発明における「EGR触媒」に、低圧EGR通路42が前記第1および第5の発明における「EGR通路」に、それぞれ相当している。
【0089】
実施の形態3.
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。本実施形態のハードウェア構成は、実施の形態1と同様に、図1に示す構成である。
【0090】
本実施形態では、アクティブ空燃比制御を実行することなしに、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量を測定する。図6は、本実施形態において高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量を測定する方法を説明するための図である。図6中の時刻t1において、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力はリーンになっている。この時刻t1の時点でEGR制御実行フラグがONとなり、高圧EGRが開始される。すなわち、時刻t1から高圧EGR触媒41に排気ガスが流入し始める。ここで、内燃機関10は、燃料増量が実施され、リッチ空燃比で運転されているものとする。よって、高圧EGR触媒41に流入する排気ガスは、理論空燃比よりリッチであり、酸素が不足しているものとする。この酸素不足分を補填するようにして、高圧EGR触媒41から酸素が放出されていく。そして、時刻t2において、高圧EGR触媒41の酸素が空となり、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力がリーンからリッチへ反転する。
【0091】
時刻t1から時刻t2までの間に、単位期間当たりに高圧EGR触媒41から放出される酸素の量ΔOSCHEGRは、実施の形態1と同様にして算出することができる。このΔOSCHEGRを時刻t1から時刻t2まで積算することにより、時刻t1から時刻t2までの間に高圧EGR触媒41から放出された酸素の量(以下「酸素総放出量」と称する)を求めることができる。
【0092】
時刻t1の時点では、高圧EGR触媒41の酸素が満杯であるとは限らない。このため、上述した酸素総放出量が高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRに等しいとは限らない。しかしながら、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRは、少なくとも、上述した酸素総放出量以上の値であると言うことができる。
【0093】
図6について更に説明すると、時刻t3において、燃料カットフラグがONとされ、内燃機関10の燃料カットが開始される。よって、時刻t3以降、高圧EGR触媒41には、燃料を含まない空気が流入する。この流入した空気中の酸素が、高圧EGR触媒41に吸収されていく。時刻t4の時点で、EGR制御実行フラグがOFFとなり、高圧EGRが停止される。すなわち、時刻t4の時点で、高圧EGR触媒41へのガス(空気)の流入が停止する。この時刻t4の時点で、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力は、まだリッチからリーンへ反転していない。
【0094】
燃料カット実行中において高圧EGR触媒41を通過する空気流量は、吸入空気量、高圧EGR弁44開度、エンジン回転数等に基づいて算出することができる。そして、高圧EGR触媒41を通過する空気流量に空気中の酸素質量割合を乗じた値を時刻t3から時刻t4まで積算することにより、時刻t3から時刻t4までの間に高圧EGR触媒41に吸収された酸素の量(以下「酸素総吸収量」と称する)を求めることができる。
【0095】
図6に示す例では、時刻t4の時点で、高圧EGR触媒後O2センサ39の出力は、まだリッチからリーンへ反転していない。すなわち、時刻t4の時点で、高圧EGR触媒41の酸素はまだ満杯とは限らない。よって、上述した酸素総吸収量は、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRに等しいとは限らない。しかしながら、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量OSCHEGRは、少なくとも、上述した酸素総吸収量以上の値であると言うことができる。
【0096】
本実施形態では、上述したようにして、燃料増量が実行された場合には酸素総放出量を測定し、燃料カットが実行された場合には酸素総吸収量を測定する。上述したように、酸素吸蔵容量OSCHEGRは、少なくとも、酸素総放出量あるいは酸素総吸収量以上の値である。そこで、本実施形態では、これまでに測定された酸素総放出量あるいは酸素総吸収量のうちの最大値(以下「最大測定値」と称する)を、酸素吸蔵容量OSCHEGRの値として代用することとした。すなわち、酸素総放出量あるいは酸素総吸収量が新たに測定された場合には、その新たな測定値をこれまでの最大測定値と比較し、新たな測定値がこれまでの最大測定値を超える場合には、最大測定値を更新する。そして、この最大測定値を酸素吸蔵容量OSCHEGRの値として扱うことにより、触媒劣化判定を行うことができる。
【0097】
実施の形態4.
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。本実施形態のハードウェア構成は、実施の形態1と同様に、図1に示す構成であるものとするが、本実施形態は、高圧EGR触媒41の劣化検出と、低圧EGR触媒45の劣化検出との何れにも適用することができる。そこで、以下の説明では、高圧EGRと低圧EGRとを区別せず、単に「EGR触媒」「EGR触媒後O2センサ」などと記す。
【0098】
EGR触媒には、経年により、排気ガス中のマンガン等の成分が付着堆積する場合がある。マンガン等の成分は、特に、EGR触媒の入口付近の、排気ガスが衝突する部位に付着し易い。この付着物が堆積すると、EGR触媒の通気抵抗が増大し、EGRガスが流れにくくなる場合がある。このため、場合によっては、エンジン制御の内容を補正したり、運転者に警告して修理を促したりする必要がある。
【0099】
前述したように、EGR触媒後O2センサは、そのセンサ素子を活性温度まで昇温させるためのヒータを備えている。ECU50は、センサ素子の温度が活性温度より低い場合には、センサ素子の温度が活性温度まで上昇するように、ヒータへの通電をフィードバック制御する。
【0100】
内燃機関10において燃料カットが実行された場合には、空気がEGR触媒に流入し、EGR触媒後O2センサが冷やされるので、ヒータへ通電してセンサ素子を暖める制御が実行される。このとき、EGR触媒の通気抵抗が大きいほど、通過する空気流量が少なくなるので、EGR触媒後O2センサが冷やされにくい。その結果、センサ素子の温度を活性温度まで上昇させるのに必要なヒータへの総通電量(以下「ヒータ制御量」と称する)が少なくなる。そこで、本実施形態では、燃料カット実行中のヒータ制御量に基づいて、EGR触媒の通気抵抗を判定することとした。
【0101】
図7は、上記の機能を実現するためにECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンは、内燃機関10の燃料カットが行われている場合に実行されるものとする。このルーチンによれば、まず、EGR触媒のOBD(On-Board Diagnostic)を実施する必要があるか否かが判定される(ステップ120)。OBDを実施する必要がある場合には、次に、EGR触媒後O2センサのヒータ制御の実施状況が判定される(ステップ122)。このステップ122では、EGR触媒後O2センサのヒータ制御量が取得される。
【0102】
ステップ122の処理に続いて、燃料カットの実施状況が判定される(ステップ124)。このステップ124では、燃料カット実行中のEGR弁開度、吸入空気量、エンジン回転数等が取得される。
【0103】
上記ステップ124の処理に続いて、EGR触媒の通気抵抗が判定される(ステップ126)。EGR触媒を通過する空気流量が多いほど、EGR触媒後O2センサが冷やされるので、ヒータ制御量が大きくなる。ECU50には、EGR触媒を通過する空気流量と、ヒータ制御量との関係を予め調べて作成したマップが記憶されている。ステップ126では、まず、上記ステップ124で取得されたEGR弁開度、吸入空気量、エンジン回転数等に基づいて、EGR触媒を通過する空気流量の推定値が算出される。次いで、この推定空気流量と上記マップとに基づいて、推定空気流量からヒータ制御量を逆算する。そして、上記ステップ122で取得された実際のヒータ制御量と、推定空気流量から逆算したヒータ制御量とを比較する。実際のヒータ制御量が、推定空気流量から逆算したヒータ制御量より小さい場合には、実際の空気流量が推定空気流量より少なくなっていると判断することができる。そして、実際の空気流量が推定空気流量より少ないということは、EGR触媒の通気抵抗が増大していることを意味している。よって、推定空気流量から逆算したヒータ制御量と、実際のヒータ制御量との差が大きいほど、EGR触媒の通気抵抗が大きく、マンガン等の付着物が多いと判定することができる。
【0104】
ところで、内燃機関10から高圧EGR触媒41までの排気ガス経路は、内燃機関10からスタート触媒26までの排気ガス経路よりも短い。このため、内燃機関10の冷間時などに、高圧EGRを行うようにすれば、スタート触媒26よりも早く高圧EGR触媒41を暖機することが可能である。よって、冷間時などに高圧EGRを行って高圧EGR触媒41で排気ガスを浄化することにより、テールパイプエミッション(大気中に放出されるエミッション)を低減することが可能である。
【0105】
上記のような制御を行う排気浄化装置においては、高圧EGR触媒41の通気抵抗が大きくなるにつれて、EGR量が少なくなっていくので、高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代が減少していく。また、当然ながら、高圧EGR触媒41の劣化度合いが大きくなるにつれて、高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代が減少していく。すなわち、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量が小さくなるにつれて、高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代が減少していく。図8は、高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代の上述したような傾向を表したマップである。このマップによれば、高圧EGR触媒41の通気抵抗と、高圧EGR触媒41の酸素吸蔵容量とに基づいて、高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代を算出することができる。このようにして算出される高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代が小さくなるほど、テールパイプエミッションは悪化する。
【0106】
また、テールパイプエミッションは、スタート触媒26の劣化度合いが大きくなるにつれて、つまりスタート触媒26の酸素吸蔵容量が小さくなるにつれて、悪化する。図9は、テールパイプエミッションの上述したような傾向を表したマップである。このマップによれば、上述した高圧EGR触媒41によるエミッション低減効果代と、スタート触媒26の酸素吸蔵容量とに基づいて、経年劣化によるテールパイプエミッションの悪化度合いを判定することができる。その結果、テールパイプエミッションの悪化度合いが所定の閾値を超えたと判定された場合には、MIL(Malfunction Indicator Lamp)を点灯させて、運転者に異常を報知することができる
【符号の説明】
【0107】
10 内燃機関
12 燃料インジェクタ
18 排気通路
20 排気マニホールド
24 ターボチャージャ
241 タービン
242 コンプレッサ
25 スタート触媒後O2センサ
26 スタート触媒
27 アンダーフロア触媒
28 吸気通路
34 吸気マニホールド
36 スロットル弁
38 エアフローメータ
39 高圧EGR触媒後O2センサ
40 高圧EGR通路
41 高圧EGR触媒
42 低圧EGR通路
43 高圧EGRクーラ
44 高圧EGR弁
45 低圧EGR触媒
46 低圧EGRクーラ
47 低圧EGR弁
48 低圧EGR触媒後O2センサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路から分岐し、排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路と、
前記EGR通路の途中に設けられたEGR触媒と、
前記EGR触媒から出る排気ガスの空燃比を検出するEGR触媒後排気ガスセンサと、
前記EGR触媒後排気ガスセンサの出力に基づいて前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定するEGR触媒酸素吸蔵容量測定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の触媒劣化検出装置。
【請求項2】
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、前記内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記EGR通路が分岐する箇所より下流側の前記排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記アクティブ空燃比制御によって前記内燃機関の空燃比が切り替えられた後に前記排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングが、前記EGR触媒から流出する排気ガスの空燃比が切り替わるタイミングより早い場合には、前記アクティブ空燃比制御の実行を禁止するアクティブ空燃比制御禁止手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
【請求項3】
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量を測定する際に、前記内燃機関の空燃比を、理論空燃比を挟んでリッチ側とリーン側とに交互に強制的に切り替えるアクティブ空燃比制御を実行するアクティブ空燃比制御手段と、
前記EGR通路が分岐する箇所より下流側の前記排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記EGR触媒の酸素吸蔵容量の値と、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵容量の値とを記憶する容量値記憶手段と、
前記排気浄化触媒を通過する排気ガス流量に対する、前記EGR触媒を通過する排気ガス流量の比を、ガス量比として取得するガス量比取得手段と、
前記容量値記憶手段に記憶されている前記排気浄化触媒の酸素吸蔵容量の値に前記ガス量比を乗じた値が、前記容量値記憶手段に記憶されている前記EGR触媒の酸素吸蔵容量の値より小さいときには、前記アクティブ空燃比制御の実行を禁止するアクティブ空燃比制御禁止手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
【請求項4】
前記排気通路の途中に配置されたタービンと、前記吸気通路の途中に配置されたコンプレッサとを有するターボチャージャを備え、
前記EGR通路は、前記タービンの上流側の排気通路から分岐していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。
【請求項5】
前記排気通路の途中に配置されたタービンと、前記吸気通路の途中に配置されたコンプレッサとを有するターボチャージャを備え、
前記EGR通路は、前記タービンの下流側の排気通路から分岐していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の触媒劣化検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223075(P2010−223075A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70619(P2009−70619)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】