制動力制御装置
【課題】
衝突の回避が不可と判断されて自動ブレーキが作動中に、路面の段差により車輪が路面から離れてしまうと輪荷重が減少して制動距離が長くなる。
【解決手段】
本制動力制御装置は、自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、路面の段差の上下変化状態及び自車と段差までの距離を計測する第2のセンサと、相対距離及び相対速度に基づいて、自車と障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、上下変化状態及び段差までの距離に基づいて、自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、ブレーキを制御するブレーキ制御部と、自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、車高制御部は、ブレーキ制御部がブレーキを制御した際、車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、路面に段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する。
衝突の回避が不可と判断されて自動ブレーキが作動中に、路面の段差により車輪が路面から離れてしまうと輪荷重が減少して制動距離が長くなる。
【解決手段】
本制動力制御装置は、自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、路面の段差の上下変化状態及び自車と段差までの距離を計測する第2のセンサと、相対距離及び相対速度に基づいて、自車と障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、上下変化状態及び段差までの距離に基づいて、自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、ブレーキを制御するブレーキ制御部と、自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、車高制御部は、ブレーキ制御部がブレーキを制御した際、車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、路面に段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事故発生時の被害軽減を目的として、車両に搭載されたレーダにより障害物を認識し、衝突する可能性がある場合には自動的に制動を行う、衝突軽減制動装置が提案されている。
【0003】
衝突軽減制動装置として、車両に搭載されたレーダにより障害物を認識し、走行している車両が障害物に衝突する可能性がある場合、自動的に制動を行うとともにサスペンションを制御する技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、車両が障害物に衝突する可能性がある場合、まず車高を最低位置まで下げ、制動が自動的に開始すると同時に車高を高くする方向に制御することにより、車両の輪荷重を増大し、制動下のタイヤの路面に対する摩擦力を大きくし、大きな減速度を得て制動距離を短縮する。
【0005】
【特許文献1】特開2007−216737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1によれば、車高を高くする方向に制御する場合、単調増加に制御しているので、段差のある路面において、段差を通過する時タイヤが路面から離れたり、上側方向に持ち上がったりして輪荷重が減少し、一時的に制動力が減少するので、制動距離が長くなる、という課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、段差のある路面においても適切に制動力を制御する制動力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本制動力制御装置は、自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、路面の段差の上下変化状態及び自車と段差までの距離を計測する第2のセンサと、相対距離及び相対速度に基づいて、自車と障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、上下変化状態及び段差までの距離に基づいて、自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、ブレーキを制御するブレーキ制御部と、自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、車高制御部は、ブレーキ制御部がブレーキを制御した際、車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、路面に段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、段差のある路面においても適切に制動力を制御する制動力制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、制動力制御装置を搭載した車両の構成を示す図である。
【0012】
自車両1000は、前方車両との車間距離と相対速度を計測する車間距離センサ1010,路面の段差の上下変化状態,段差までの距離を計測する外界認識センサ1050,前方車両との衝突を判断する衝突判断部1020,段差の通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部1060,衝突判断部1020で衝突すると判断された場合にブレーキ1070,1080,1090,1100を制御するブレーキアクチュエータ1030、及び、衝突判断部1020の出力と路面判断部1060の出力によりサスペンション1120,1130,1140,1150を制御するサスペンションアクチュエータ1040を備える。
【0013】
まず、車間距離センサ1010が相対速度と車間距離を衝突判断部1020に送信し、衝突判断部1020が相対速度と車間距離から自車両1000が前方車両と衝突するか否かを判断する(衝突判断が行われる前に行う衝突事前判断と、衝突する場合に行う衝突判断を含む)。衝突判断部1020は、衝突事前判断が行われるとサスペンションアクチュエータ1040に回避不可可能性信号を送信し始め、衝突判断が行われると回避不可信号を送信し始める。
【0014】
外界認識センサ1050は、路面の段差の上下変化を示す路面状態信号と段差までの距離を路面判断部に送信し、路面判断部1060は、路面状態信号と段差までの距離から自車両1000が段差を通過するか否かの判断を行う。路面判断部1060は、段差を通過すると判断すると段差制御方向信号を送信し始める。
【0015】
サスペンションアクチュエータ1040は、衝突判断部1020から回避不可可能性信号と回避不可信号を、路面判断部1060から段差制御方向信号を受信すると、目標車高を設定し、サスペンション1120,1130,1140,1150を制御する。
【0016】
又、ブレーキアクチュエータ1030は、衝突判断部1020から回避不可信号を受信すると、目標減速度を設定しブレーキ1070,1080,1090,1100を制御する。
【0017】
図2は、制動力制御装置の詳細な構成を示す図である。
【0018】
車間距離センサ1010から入力される前方車両との相対速度2010から操舵回避限界距離2030,制動回避限界距離2140、及び、衝突事前判断余裕距離2170とを算出する。
【0019】
操舵回避限界距離はドライバがハンドル操作により前方車両との衝突を回避しようとしても回避できない距離を、制動回避限界距離はドライバがブレーキを操作により前方車両との衝突を回避しようとしても回避できない距離を、衝突事前判断余裕距離は衝突判断後のショックアブソーバ制御の準備を行うのに必要な時間中に変化する自車と前方車両との車間距離を示す。
【0020】
ここで、衝突事前判断余裕時間は、サスペンションアクチュエータにより、現在の車高から最低の車高まで車高を下げるのに必要な時間から求められる。
【0021】
【数1】
【0022】
dst:操舵回避限界距離,vr:前方車両との相対速度,tst:操舵回避限界時間
【0023】
【数2】
【0024】
dbr:制動回避限界距離,vr:前方車両との相対速度,amax:車両最大減速度
【0025】
【数3】
【0026】
dds:衝突事前判断余裕距離,vr:相対速度,tds:衝突事前判断余裕時間
【0027】
【数4】
【0028】
tds:衝突事前判断余裕時間,hcurrent:現在の車高,hmin:最低車高,vhm:車 高の変更速度
図3は、衝突判断処理のフロー図を示す。
【0029】
操舵回避不可判断部2040は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に前記操舵回避限界距離2030を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が操舵回避限界距離2030未満となった場合、操舵回避不可信号2050をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0030】
制動回避不可判断部2130は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に前記制動回避限界距離2140を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が制動回避限界距離2140未満となった場合、制動回避不可信号2120をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0031】
操舵回避不可信号2050と制動舵回避不可信号2120とを総称して回避不可信号2050という。
【0032】
次に、操舵回避限界距離2030と制動回避限界距離2140に衝突前判断余裕距離2170を加算し、操舵回避不可可能性距離2180と制動回避不可可能性距離2190とする。
【0033】
操舵回避不可事前判断部2200は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に操舵回避不可可能性距離2180を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が操舵回避不可可能性距離2180未満となった場合は、操舵回避不可可能性あり信号2220をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0034】
制動回避不可事前判断部2210は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に制動回避不可可能性距離2190を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が制動回避不可可能性距離2190未満となった場合は、制動回避不可可能性あり信号2230をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0035】
操舵回避不可可能性あり信号2050と制動舵回避不可可能性あり信号2120とを総称して回避不可可能性あり信号2250という。
【0036】
路面判断部は、外界認識センサから入力される段差までの距離2320から段差制御開始距離を算出する。車速から算出した走行距離が段差制御開始距離以上になった場合は、外界認識センサから入力される路面状態信号2310に応じたサスペンションの段差制御方向信号2330,2340を出力する。
【0037】
外界認識センサとして、カメラ,超音波や電磁波を用いたセンサを用いる。
【0038】
段差制御開始距離は、サスペンションアクチュエータにより路面の変化に応じて車高を変更するために必要な時間と外界認識センサの搭載位置と車輪の距離から求められる。
【0039】
【数5】
【0040】
dbump1:段差制御開始距離,dbump:段差までの距離,vcurrent:車速,tupdo: サスペンションアクチュエータを変化させる時間,dsentire:外界認識センサ搭載 位置と車輪の距離
走行距離は、車速と制御周期から求められる。
【0041】
【数6】
【0042】
drun:走行距離,vcurrent:現在の車速,tcont:制御周期
車速は、車速検出手段2350から入力される。車速検出手段として、車輪の回転数,変速機の出力軸回転数、光学式センサなどを用いる。
【0043】
図4は、路面状態制御部のフロー図である。
【0044】
まず、判断部4020は、走行距離を算出する。次に、判断部4030で制御対象としている段差の有無を判断する。制御対象の段差が無い場合に4040、判断部4050で路面状態信号2310が、平坦状態から上下変化がある状態に変化したと判断すると、段差制御に必要な情報の設定を処理部4070〜処理部4140で行う。
【0045】
処理部4070は、制御対象の段差の有無信号に対象ありをセットする。処理部4080,4090では段差を検出した時点の走行距離M0、路面状態信号2310を記憶する。次に、処理部4100で段差制御開始距離dbump1を算出する。続いて処理部4110で、前輪用の段差制御開始走行距離duds_fを求める。前輪用の段差制御開始走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、処理部4100で求めた段差制御開始距離の和である。処理部4120は、前輪用の段差制御終了走行距離dude_fを求める。前輪用の段差制御終了走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、段差までの距離2320の和である。
【0046】
処理部4130は、後輪用の段差制御開始走行距離duds_rを求める。後輪用の段差制御開始走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、処理部4100で求めた段差制御開始距離と前輪と後輪の距離Dfr1170の和である。処理部4140は、後輪用の段差制御終了走行距離dude_rを求める。後輪用の段差制御終了走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、段差までの距離2320と前輪と後輪の距離Dfr1170の和である。
【0047】
制御対象の段差がある場合4160、判断部4050で路面状態信号2310に変化が無い場合4150は、何もしない。
【0048】
次に、処理部4170,4180で段差制御方向判断を行う。図5は、段差制御方向判断のフロー図である。
【0049】
処理部4170は、段差制御終了走行距離5021に、処理部4120で求めた前輪段差制御終了走行距離を代入し、段差制御開始走行距離5061に、処理部4110で求めた前輪段差制御開始走行距離を代入し処理を行う。
【0050】
判断部5020は、走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断すると、判断部5060での判断に移る。判断部5060で走行距離が前輪段差制御終了走行距離より大きいと判断されると段差制御方向信号2330に処理部4090で記憶した路面状態信号を代入する。走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断した場合、段差制御方向信号2330に平坦状態をセットする。
【0051】
又、判断部5020において走行距離が前輪段差制御終了走行距離より大きいと判断した場合、前輪が段差を通過したと判断できるので処理部5040で前輪用段差制御要求信号2330に平坦状態をセットする。
【0052】
処理部4180は、段差制御終了走行距離5021に、処理部4140が求めた後輪段差制御終了走行距離を代入し、段差制御開始走行距離5061に、処理部4130で求めた後輪段差制御開始走行距離を代入し処理を行う。
【0053】
判断部5020は走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断すると、判断部5060での判断に移る。判断部5060は走行距離が後輪段差制御終了走行距離より大きいと判断すると、後輪用段差制御方向信号2340に処理部4090で記憶した路面状態信号を代入する。走行距離が後輪段差制御終了走行距離より小さいと判断した場合、後輪用段差制御方向信号2340に平坦状態をセットする。
【0054】
又、判断部5020において走行距離が後輪段差制御終了走行距離より大きいと判断すると、後輪が段差を通過したと判断できるので処理部5040で後輪用段差制御方向信号2340に平坦状態をセットする。
【0055】
次に、判断部4190は、後輪用段差制御方向信号が上下方向から平坦になったと判断すると、後輪が制御対象の段差を通過したと判断できるので制御対象の段差の有無信号に対象無しをセットする。
【0056】
サスペンション制御部2260は操舵回避不可可能性あり信号2220と制動回避不可可能性あり信号2230のどちらかがセットされている場合、目標車高2270,2280を出力する。
【0057】
図6は、サスペンション制御部2260のフロー図である。
【0058】
まず、判断部6020は図2の回避不可可能性情報2250がクリアの状態からセット状態に変化したと判断すると、処理部6040は目標車高が通常制御時の目標車高に初期化する。
【0059】
次に、判断部6100は図2の回避不可情報2070がクリアの状態であると判断すると、判断部6260での判断へと移る。
【0060】
判断部6260は回避不可可能性情報2250がセットされていると判断すると、処理部6280,6290は前輪目標車高,後輪目標車高を変化率目標車高変化率(縮側)で減少させる。目標車高変化率(縮側)は、制御周期1サイクルで変化させることができる最高の値である。
【0061】
回避不可可能性情報がセットされてから回避不可情報がセットされるまでの時間tdsは、車高を目標車高変化率(縮側)で最低車高まで下げるのに必要な時間なので、回避不可情報がセットされるまでに車高を最低付近まで変化させることができる。次の処理である6300では前輪目標車高,後輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0062】
判断部6100は回避不可情報がセットされていると判断すると、処理部6010,6020がブレーキ作動時の前輪目標車高,後輪目標車高を算出する。
【0063】
処理部6010は、図7に示すフローの段差制御方向信号7021に、路面判断部1060で求めた前輪用段差制御方向信号2330を代入し、処理を行う。判断部7020は前輪用段差制御方向信号が平坦状態であると判断すると、処理部7040で前輪目標車高を変化率目標車高変化率(伸側)で増加させる。目標車高変化率は、目標車高上限から目標車高下限を引いた値を、衝突までの時間で除した値である。又、衝突までの時間は、現在の車間距離を相対速度で除した値である。目標車高変化率をこのように設定することにより制動を開始してから衝突するまでの間車高を上げ続けることができる。
【0064】
【数7】
【0065】
hdu:目標車高変化率(伸側),hmax:目標車高上限値,hmin:目標車高下限値
ttc:衝突までの時間
【0066】
【数8】
【0067】
dcurrent:前方車両との車間距離,vr:前方車両との相対速度
判断部7020は前輪用段差制御方向信号2330が平坦状態でないと判断すると、判断部7070での判断に移る。
【0068】
判断部7070は前輪用段差制御方向信号2330が上向きであると判断すると、処理部7090は目標車高を目標車高変化率(縮側)で減少させる。次の処理である7100では、前輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0069】
判断部7070は前輪用段差制御方向信号2330が下向きであると判断すると、処理部7120は目標車高を目標車高変化率(伸側)で増加させる。この時の目標車高変化率(伸側)は、数式7に示す目標車高変化率(伸側)以上の所定の値である。
【0070】
処理部6020は、図7に示すフローの段差制御方向信号7021に、路面判断部1060で求めた後輪用段差制御方向信号2340を代入し、処理を行う。判断部7020は、後輪用段差制御方向信号が平坦状態であると判断すると処理部7040で後輪目標車高を数式7に示す変化率目標車高変化率(伸側)で増加させる。
【0071】
判断部7020は後輪用段差制御方向信号2340が平坦状態でないと判断すると、判断部7070での判断に移る。
【0072】
判断部7070は後輪用段差制御方向信号2340が上向きであると判断すると、処理部7090は目標車高を目標車高変化率(縮側)で減少させる。次の処理である7100では、前輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0073】
判断部7070は後輪用段差制御方向信号2340が下向きであると判断すると、処理部7120で目標車高を目標車高変化率(伸側)で増加させる。この時の目標車高変化率(伸側)は、数式7に示す目標車高変化率(伸側)以上の所定の値である。
【0074】
判断部6320は、目標車高を上昇させ始めてからの経過時間が衝突までの時間を超えたか否かを判断し、超えている場合は目標車高2270,2280を標準車高に戻す。目標車高を上昇させ始めてからの時間は、処理部6240で計測を行っている。計測方法はカウンタをインクリメントする等によって行われる。衝突までの時間は、処理部6080で記憶される。この記憶は、判断部6060で回避不可情報がクリアの状態からセットの状態にセットされた時に、数式8で計算された衝突までの時間を記憶することにより実現される。
【0075】
図6で説明した処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。
【0076】
路面形状8300に示すように、上向きの段差がある場合の動作を説明する。外界認識センサ1050が路面形状8300を認識する8150と、路面状態信号2310、段差までの距離dbump2320を入力し、段差制御開始距離dbump18120を算出する。回避不可可能性信号2250がセット8011されると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280が通常制御時の目標車高8100に初期化8041される。その後回避不可信号2070がセット8021されるtds8120の間に前輪目標車高2270,後輪目標車高2280はそれぞれ目標車高下限値8090,8190まで下げられる8042。
【0077】
次に回避不可信号2070がセット8021されると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280の上昇を開始する。
【0078】
回避不可信号2070がセットされた後、走行距離8350が前輪段差制御開始走行距離8340より大きくなると、前輪用段差制御方向信号2330に段差が上向きを示す値がセット8140される。当該信号2330がセットされると、前輪目標車高2270の下降を開始する。走行距離が前輪段差制御終了距離8320より大きくなると前輪用段差制御方向信号2330に平坦がセット8200され、前輪目標車高2270は上昇を開始する。
【0079】
回避不可信号2070がセットされた後、走行距離8350が後輪段差制御開始走行距離8330より大きくなると、後輪用段差制御方向信号2340に段差が上向きを示す値がセット8150される。当該信号2340がセットされると、後輪目標車高2280の下降を開始する。走行距離が後輪段差制御終了距離8310より大きくなると後輪用段差制御方向信号2340に平坦がセット8210され、後輪目標車高2280は上昇を開始する。
【0080】
回避不可信号2070がセットされた時に記憶された衝突までの時間ttcm8130が経過すると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280はそれぞれ標準車高8080,8180にセット8043される。
【0081】
路面に上向きの段差がある場合について説明したが、路面形状に変化が無い場合は、図6の点線で示すように、衝突までの時間ttcm7130が経過した時に目標車高上限値7043に到達するように目標車高4122,4123の上昇を行う。
【0082】
次に図9で、他の目標車高の制御方法を説明する。
【0083】
図9(A)は、段差制御方向信号が上向きにセットされ、目標車高を下降した後、段差制御方向信号が平坦になり目標車高を上昇させる時の目標車高変化率を変更する方法である。衝突までの時間ttcm7130が経過した時に目標車高4122,4123が目標車高上限値7043に到達するように目標車高変化率を設定することにより、輪荷重の増大効果を得るようにする。
【0084】
図9(B)は、路面段差が下方向にある場合である。段差制御方向信号が下向きにセットされる時、既に目標車高の上昇を開始しているが、路面段差が大きいとタイヤの路面に対する摩擦力が低減する可能性がある。そこで、段差制御要求信号がセットされると、目標車高変化率(伸側)を大きくして輪荷重増大効果を大きくし、段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制するようにする。
【0085】
衝突不可情報2070がセットされる前にドライバによるブレーキ操作が行われる場合があるので、以下の処理が施されるようにする。
【0086】
判断部6060はドライバブレーキ情報2400がクリアからセットに変化したと判断すると、処理部6080は衝突までの時間を記憶する。
【0087】
次に、判断部6100はブレーキ情報2400がセットされていると判断すると、回避不可情報2070がセットされている時と同様に前輪目標車高2270,後輪目標車高2280を増加させる。
【0088】
次に、図10から図13を用いて、サスペンション駆動部2290の動作について説明する。
【0089】
図10において、91は流体供給手段を示す。流体供給手段1は、エンジンにより駆動される油圧ポンプ92,油圧ポンプ92から吐き出された圧力流体(以下、圧油という)が油圧ポンプ92側に逆流するのを防止するチェック弁918、油圧ポンプ92から吐き出された圧油を貯留するアキュムレータ919,アキュムレータ919内の圧力を検出する圧力検出手段(不図示)、及び、油圧ポンプ92の吐出側とリザーバタンク93との間に設けられた電磁切替弁からなるアンロード弁95から構成されている。
【0090】
この構成によれば、油圧ポンプ92により吐き出された圧油は、アキュムレータ919に貯留され、圧力検出手段が所定の圧力を検出すると、アンロード弁5が制御されて油圧ポンプ92から吐き出された圧油をリザーバタンク93に戻すことによって、アキュムレータ919内が所定の圧力に保たれる。ここで、アキュムレータ919に接続された共通配管94の先端側は、例えば4本の分岐配管94A,94B,…(2本のみ図示)となって分岐し、該各分岐配管94A,94B,…の先端側は後述の油圧シリンダ96,97等に接続されている。
【0091】
96,97は車両の車体側と各車輪の車軸側との間に介装される車高調整手段としての油圧シリンダ(左,右の前輪側のみ図示)を示し、該油圧シリンダ96,97は左,右の前輪側で車体を懸架するサスペンションを構成し、油圧ポンプ92からの圧油が給排されることにより、チューブ96A,97Aからロッド96B,97Bを伸縮させ、車高調整また車体側の姿勢制御等を行う。
【0092】
尚、図11中では左,右の前輪側に設ける油圧シリンダ96,97を示したが、左,右の後輪側にも同様に油圧シリンダ(図示せず)が設けられ、これらの油圧シリンダも分岐配管94A,94Bと同様の分岐配管に接続される。
【0093】
98,99は油圧シリンダ96,97に付設されたアキュムレータを示し、該アキュムレータ98,99は減衰力バルブ910,911を介して油圧シリンダ96,97に接続され、該油圧シリンダ96,97のロッド96B,97Bを常時伸長方向に付勢するガスばねとして作動する。そして、該油圧シリンダ96,97のロッド96B,97Bが外部からの振動で伸縮する時には、油圧シリンダ96,97とアキュムレータ98,99との間で圧油が流通し、この時に減衰力バルブ910,911により減衰力を発生させて前記振動を緩衝する。
【0094】
912,913は左,右の前輪側に設けられる車高センサを示し、該車高センサ912,913は車両の前輪側で車軸側に対する車体側の高さ位置を検出し、それぞれの検出信号をコントロールユニット917に出力する。
【0095】
914,915は共通配管94と分岐配管94A,94Bの途中に設けられた圧油の給排弁を示し、該給排弁914,915はソレノイド914p,915pを備えた3ポート3位置の電磁式比例制御弁によって構成される。該給排弁914,915はコントロールユニット917からの制御信号によりソレノイド914p,915pに通電されると、図12に示す流量−電流特性に基づき、閉弁位置(イ)又は圧油の供給位置(ロ)及び排出位置(ハ)に切り換えられ、供給源5から油圧シリンダ96,97に圧油が給排される。
【0096】
尚、該給排弁914,915はソレノイド914p,915pに通電されない時は排油位置(ハ)に保持され、圧油は油圧シリンダ96,97からリザーバタンク93へ排出されることになる。916はパイロット操作チェック弁であり、パイロット操作チェック弁916は、3ポート2位置の電磁切替弁で構成されるパイロット制御弁920によって制御され、ソレノイド914p,915p非通電時の圧油の排出を防止するためのものである。パイロット操作チェック弁916は、パイロット制御弁920によってパイロット圧が作用すると開弁して油圧シリンダ96,97と供給源95とが連通され、パイロット圧が作用しないと通常のチェック弁として機能し、供給源5から油圧シリンダ96,97への圧油の流動のみが許容される。
【0097】
917はマイクロコンピュータ等によって構成されるコントロールユニットを示し、該コントロールユニット917は入力側が車高センサ912,913及び車速センサ,ステアリングセンサ(いずれも不図示)等に接続され、出力側が排出弁95、給排弁914,915及びパイロット制御弁920等に接続されている。そして、該コントロールユニット917は記憶回路内に図12に示すプログラム等を格納し、車高調整制御処理等を行うようになっている。また、該コントロールユニット917の記憶回路には、その記憶エリア917A内に車高判定用の基準データ等が格納されている。
【0098】
次にコントロールユニット917による車高調整制御処理について図12を参照して述べる。
【0099】
まず、電源スイッチ(不図示)の投入によって処理動作がスタートすると、ステップ1で各種の設定値等の初期化や出力信号の初期化を行う。ここで給排弁914,915に対して閉弁位置(イ)になる信号を出力し、次にパイロット制御弁920に対してパイロット圧を作用させる信号を出力し、該パイロット操作チェック弁16を開弁して油圧シリンダ96,97と供給源95とが連通させる。ステップ2に移って数ms程度の制御周期が経過したか否かを判定し、「YES」と判定した時にはステップ3に移って車高センサ912,913等から検出信号を読み込む。次に、ステップ4では下記の如く車高制御等の制御演算を行い、ステップ5に移って給排弁914,915のソレノイド914p,915pに電流Iを出力し給排油動作を実行する。
【0100】
ステップ4で実行する車高制御演算について図13を参照し説明する。車高制御演算1321は、サスペンション制御部2260で設定した目標車高と車高センサ912,913の差X0−Xにゲイン1323を乗算して流量Qを求め、流量Qに対応するソレノイド914p,915pの電流Iをテーブル1324から求めている。尚、前輪の車高制御演算を行う時には目標車高に前輪目標車高2270,後輪の車高制御演算を行う時には後輪目標車高2280を代入して処理を行う。
【0101】
以上に示したようなサスペンション駆動部により目標車高2270,2280と車高を一致させる。
【0102】
図14は、ブレーキ制御部2080のフロー図である。
【0103】
ブレーキ制御部2080は、回避不可情報2070がクリアからセットに変化したか否かを判断し、変化した場合は目標減速度をセットし(14040)、衝突までの時間を記憶する(14050)。セットされた目標減速度は、本装置が搭載されている車両において安全かつ効果的に減速できる最大の減速度がセットされる。
【0104】
次に、回避不可情報がセットされているか否かを判断し(14070)、セットされている場合、目標減速度出力時間を計測する(14090)。計測方法はカウンタをインクリメントする等によって行われる。
【0105】
次に、目標減速度出力時間が記憶された衝突までの時間が超えたか否かを判断し(14110)、超えている場合、目標減速度を0にセットする(14130)。
【0106】
図14で説明した処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。回避不可信号2070がセット8021されると、目標減速度2090が出力8031される。その後、衝突までの時間ttcm経過すると目標減速度2090が0になる8044。
【0107】
次に、図15から図17を用いてブレーキ液圧駆動部2100の動作について説明する。
【0108】
ブレーキ液圧駆動部2100は図15のようになっており、ポンプモータ40050により駆動されるプランジャポンプ40060と、プランジャポンプ40060か吐き出された圧力流体(以下、圧油という)のブレーキ10110への流入方向を制御する各バルブ40010,40020,40030,40040から構成されている。又、油圧回路は2系統から構成されており、これらはX配管に対応している。従って、Primary系統にはFL輪とRR輪が接続されており、Secondary系統にはFR輪とRL輪が接続されている。各バルブは、G/V OUTとW/C INはN/O、G/V INとW/C OUTはN/Cとなっている。
【0109】
この構成によりブレーキをかける(減速する)場合の動作を図16により説明する。
【0110】
G/V IN40020をON(開状態)、G/V OUT40010をON(閉状態・液圧に応じて保持電流を制御)、W/C IN40040をOFF(開状態)、W/C OUT 40030と40040をOFF(平状態)、ポンプモータ20090をON(モーター回転数により増圧勾配を制御)40050することにより、マスタシリンダ40050内の圧油をブレーキ10110に流入させることにより、実ブレーキ液圧20090の増圧を行う。
【0111】
ポンプモータ20090は目標減速度2090に従って制御される必要があるが、図17に示すように、目標減速度2090と車両の実減速度17010の差にゲイン17030を乗ずることにより、ポンプモータに印加する電圧波形のDuty比17040を求め、ポンプモータ駆動回路40060により前記Duty比17040に従った電圧波形17070をポンプモータ40050に与える。
【0112】
以上に示したようなブレーキ液圧駆動部により目標減速度2090と減速度を一致させる。
【0113】
本例は、回避不可信号がセットされ、目標減速度をブレーキ液圧駆動部2100に送信し減速を開始する時から、前方車両に衝突するまでの時間ttcm8130は、車高を上昇させることで自車両1000の輪荷重を増大させ、タイヤの路面に対する摩擦力を大きくすることができる。
【0114】
又、路面の段差部を通過する時は、車高を下降させることで、段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制することができる。
【実施例2】
【0115】
実施例1と同様の構成において、図2の「実施例2の場合」に示すように、外界認識センサから段差左右位置情報2410を入力し、路面判断部から段差の左右位置に応じて前後左右各輪用の段差制御方向信号2420,2430,2440,2450を出力し、サスペンション制御部2260から前輪左側の目標車高2460,前輪右側の目標車高2470,後輪左側の目標車高2480,後輪右側の目標車高2490をサスペンション駆動部2290に出力し車高制御を行う。
【0116】
実施例1は、路面の段差に対して、左右の目標車高を同一に変化させる制御方法であったが、本例は外界認識センサで検出する段差の位置情報に応じて、左右の目標車高を別々に変化させる。
【0117】
本例は、段差がある側では段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制し、段差が無い側ではタイヤの路面に対する摩擦力を大きくすることにより車両の輪荷重を増大させることができる。
【0118】
以上によれば、当該制動力制御装置は、路面形状を認識することにより、段差形状に応じて制動中の車高制御を変更し、輪荷重の減少を抑制するようにしているので、制動距離が長くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】制動力制御装置を搭載した車両の構成を示す図。
【図2】制動力制御装置の詳細な構成を示す図。
【図3】衝突判断処理フロー図。
【図4】路面状態制御部のフロー図。
【図5】段差制御方向判断のフロー図。
【図6】サスペンション制御部2260のフロー図。
【図7】ブレーキ作動時目標車高算出処理のフロー図。
【図8】目標車高算出のタイミングチャート。
【図9】目標車高算出例のタイミングチャート。
【図10】目標減速度算出処理のフロー図。
【図11】サスペンション制御アクチュエータの構成図。
【図12】流量−電流特性図。
【図13】車高制御フロー図。
【図14】車高制御のブロック図。
【図15】ブレーキアクチュエータ構成図。
【図16】ブレーキ制御時動作図。
【図17】ブレーキ制御ブロック図。
【符号の説明】
【0120】
1000 自車両
1010 車間距離センサ
1020 衝突判断部
1030 ブレーキアクチュエータ
1040 サスペンションアクチュエータ
1050 外界認識センサ
1060 路面判断部
1070,1080,1090,1100 ブレーキ
1110 ブレーキ駆動配管
1120,1130,1140,1150 サスペンション
1160 サスペンション駆動配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事故発生時の被害軽減を目的として、車両に搭載されたレーダにより障害物を認識し、衝突する可能性がある場合には自動的に制動を行う、衝突軽減制動装置が提案されている。
【0003】
衝突軽減制動装置として、車両に搭載されたレーダにより障害物を認識し、走行している車両が障害物に衝突する可能性がある場合、自動的に制動を行うとともにサスペンションを制御する技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、車両が障害物に衝突する可能性がある場合、まず車高を最低位置まで下げ、制動が自動的に開始すると同時に車高を高くする方向に制御することにより、車両の輪荷重を増大し、制動下のタイヤの路面に対する摩擦力を大きくし、大きな減速度を得て制動距離を短縮する。
【0005】
【特許文献1】特開2007−216737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1によれば、車高を高くする方向に制御する場合、単調増加に制御しているので、段差のある路面において、段差を通過する時タイヤが路面から離れたり、上側方向に持ち上がったりして輪荷重が減少し、一時的に制動力が減少するので、制動距離が長くなる、という課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、段差のある路面においても適切に制動力を制御する制動力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本制動力制御装置は、自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、路面の段差の上下変化状態及び自車と段差までの距離を計測する第2のセンサと、相対距離及び相対速度に基づいて、自車と障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、上下変化状態及び段差までの距離に基づいて、自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、ブレーキを制御するブレーキ制御部と、自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、車高制御部は、ブレーキ制御部がブレーキを制御した際、車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、路面に段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、段差のある路面においても適切に制動力を制御する制動力制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、制動力制御装置を搭載した車両の構成を示す図である。
【0012】
自車両1000は、前方車両との車間距離と相対速度を計測する車間距離センサ1010,路面の段差の上下変化状態,段差までの距離を計測する外界認識センサ1050,前方車両との衝突を判断する衝突判断部1020,段差の通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部1060,衝突判断部1020で衝突すると判断された場合にブレーキ1070,1080,1090,1100を制御するブレーキアクチュエータ1030、及び、衝突判断部1020の出力と路面判断部1060の出力によりサスペンション1120,1130,1140,1150を制御するサスペンションアクチュエータ1040を備える。
【0013】
まず、車間距離センサ1010が相対速度と車間距離を衝突判断部1020に送信し、衝突判断部1020が相対速度と車間距離から自車両1000が前方車両と衝突するか否かを判断する(衝突判断が行われる前に行う衝突事前判断と、衝突する場合に行う衝突判断を含む)。衝突判断部1020は、衝突事前判断が行われるとサスペンションアクチュエータ1040に回避不可可能性信号を送信し始め、衝突判断が行われると回避不可信号を送信し始める。
【0014】
外界認識センサ1050は、路面の段差の上下変化を示す路面状態信号と段差までの距離を路面判断部に送信し、路面判断部1060は、路面状態信号と段差までの距離から自車両1000が段差を通過するか否かの判断を行う。路面判断部1060は、段差を通過すると判断すると段差制御方向信号を送信し始める。
【0015】
サスペンションアクチュエータ1040は、衝突判断部1020から回避不可可能性信号と回避不可信号を、路面判断部1060から段差制御方向信号を受信すると、目標車高を設定し、サスペンション1120,1130,1140,1150を制御する。
【0016】
又、ブレーキアクチュエータ1030は、衝突判断部1020から回避不可信号を受信すると、目標減速度を設定しブレーキ1070,1080,1090,1100を制御する。
【0017】
図2は、制動力制御装置の詳細な構成を示す図である。
【0018】
車間距離センサ1010から入力される前方車両との相対速度2010から操舵回避限界距離2030,制動回避限界距離2140、及び、衝突事前判断余裕距離2170とを算出する。
【0019】
操舵回避限界距離はドライバがハンドル操作により前方車両との衝突を回避しようとしても回避できない距離を、制動回避限界距離はドライバがブレーキを操作により前方車両との衝突を回避しようとしても回避できない距離を、衝突事前判断余裕距離は衝突判断後のショックアブソーバ制御の準備を行うのに必要な時間中に変化する自車と前方車両との車間距離を示す。
【0020】
ここで、衝突事前判断余裕時間は、サスペンションアクチュエータにより、現在の車高から最低の車高まで車高を下げるのに必要な時間から求められる。
【0021】
【数1】
【0022】
dst:操舵回避限界距離,vr:前方車両との相対速度,tst:操舵回避限界時間
【0023】
【数2】
【0024】
dbr:制動回避限界距離,vr:前方車両との相対速度,amax:車両最大減速度
【0025】
【数3】
【0026】
dds:衝突事前判断余裕距離,vr:相対速度,tds:衝突事前判断余裕時間
【0027】
【数4】
【0028】
tds:衝突事前判断余裕時間,hcurrent:現在の車高,hmin:最低車高,vhm:車 高の変更速度
図3は、衝突判断処理のフロー図を示す。
【0029】
操舵回避不可判断部2040は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に前記操舵回避限界距離2030を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が操舵回避限界距離2030未満となった場合、操舵回避不可信号2050をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0030】
制動回避不可判断部2130は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に前記制動回避限界距離2140を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が制動回避限界距離2140未満となった場合、制動回避不可信号2120をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0031】
操舵回避不可信号2050と制動舵回避不可信号2120とを総称して回避不可信号2050という。
【0032】
次に、操舵回避限界距離2030と制動回避限界距離2140に衝突前判断余裕距離2170を加算し、操舵回避不可可能性距離2180と制動回避不可可能性距離2190とする。
【0033】
操舵回避不可事前判断部2200は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に操舵回避不可可能性距離2180を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が操舵回避不可可能性距離2180未満となった場合は、操舵回避不可可能性あり信号2220をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0034】
制動回避不可事前判断部2210は、車間距離3021にレーダから入力される前方車両との車間距離2150を代入し、距離閾値3022に制動回避不可可能性距離2190を代入し処理を行う。即ち、前方車両との車間距離2150が制動回避不可可能性距離2190未満となった場合は、制動回避不可可能性あり信号2230をセットし、それ以外の時はクリアする。
【0035】
操舵回避不可可能性あり信号2050と制動舵回避不可可能性あり信号2120とを総称して回避不可可能性あり信号2250という。
【0036】
路面判断部は、外界認識センサから入力される段差までの距離2320から段差制御開始距離を算出する。車速から算出した走行距離が段差制御開始距離以上になった場合は、外界認識センサから入力される路面状態信号2310に応じたサスペンションの段差制御方向信号2330,2340を出力する。
【0037】
外界認識センサとして、カメラ,超音波や電磁波を用いたセンサを用いる。
【0038】
段差制御開始距離は、サスペンションアクチュエータにより路面の変化に応じて車高を変更するために必要な時間と外界認識センサの搭載位置と車輪の距離から求められる。
【0039】
【数5】
【0040】
dbump1:段差制御開始距離,dbump:段差までの距離,vcurrent:車速,tupdo: サスペンションアクチュエータを変化させる時間,dsentire:外界認識センサ搭載 位置と車輪の距離
走行距離は、車速と制御周期から求められる。
【0041】
【数6】
【0042】
drun:走行距離,vcurrent:現在の車速,tcont:制御周期
車速は、車速検出手段2350から入力される。車速検出手段として、車輪の回転数,変速機の出力軸回転数、光学式センサなどを用いる。
【0043】
図4は、路面状態制御部のフロー図である。
【0044】
まず、判断部4020は、走行距離を算出する。次に、判断部4030で制御対象としている段差の有無を判断する。制御対象の段差が無い場合に4040、判断部4050で路面状態信号2310が、平坦状態から上下変化がある状態に変化したと判断すると、段差制御に必要な情報の設定を処理部4070〜処理部4140で行う。
【0045】
処理部4070は、制御対象の段差の有無信号に対象ありをセットする。処理部4080,4090では段差を検出した時点の走行距離M0、路面状態信号2310を記憶する。次に、処理部4100で段差制御開始距離dbump1を算出する。続いて処理部4110で、前輪用の段差制御開始走行距離duds_fを求める。前輪用の段差制御開始走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、処理部4100で求めた段差制御開始距離の和である。処理部4120は、前輪用の段差制御終了走行距離dude_fを求める。前輪用の段差制御終了走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、段差までの距離2320の和である。
【0046】
処理部4130は、後輪用の段差制御開始走行距離duds_rを求める。後輪用の段差制御開始走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、処理部4100で求めた段差制御開始距離と前輪と後輪の距離Dfr1170の和である。処理部4140は、後輪用の段差制御終了走行距離dude_rを求める。後輪用の段差制御終了走行距離は、処理部4080で記憶した走行距離と、段差までの距離2320と前輪と後輪の距離Dfr1170の和である。
【0047】
制御対象の段差がある場合4160、判断部4050で路面状態信号2310に変化が無い場合4150は、何もしない。
【0048】
次に、処理部4170,4180で段差制御方向判断を行う。図5は、段差制御方向判断のフロー図である。
【0049】
処理部4170は、段差制御終了走行距離5021に、処理部4120で求めた前輪段差制御終了走行距離を代入し、段差制御開始走行距離5061に、処理部4110で求めた前輪段差制御開始走行距離を代入し処理を行う。
【0050】
判断部5020は、走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断すると、判断部5060での判断に移る。判断部5060で走行距離が前輪段差制御終了走行距離より大きいと判断されると段差制御方向信号2330に処理部4090で記憶した路面状態信号を代入する。走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断した場合、段差制御方向信号2330に平坦状態をセットする。
【0051】
又、判断部5020において走行距離が前輪段差制御終了走行距離より大きいと判断した場合、前輪が段差を通過したと判断できるので処理部5040で前輪用段差制御要求信号2330に平坦状態をセットする。
【0052】
処理部4180は、段差制御終了走行距離5021に、処理部4140が求めた後輪段差制御終了走行距離を代入し、段差制御開始走行距離5061に、処理部4130で求めた後輪段差制御開始走行距離を代入し処理を行う。
【0053】
判断部5020は走行距離が前輪段差制御終了走行距離より小さいと判断すると、判断部5060での判断に移る。判断部5060は走行距離が後輪段差制御終了走行距離より大きいと判断すると、後輪用段差制御方向信号2340に処理部4090で記憶した路面状態信号を代入する。走行距離が後輪段差制御終了走行距離より小さいと判断した場合、後輪用段差制御方向信号2340に平坦状態をセットする。
【0054】
又、判断部5020において走行距離が後輪段差制御終了走行距離より大きいと判断すると、後輪が段差を通過したと判断できるので処理部5040で後輪用段差制御方向信号2340に平坦状態をセットする。
【0055】
次に、判断部4190は、後輪用段差制御方向信号が上下方向から平坦になったと判断すると、後輪が制御対象の段差を通過したと判断できるので制御対象の段差の有無信号に対象無しをセットする。
【0056】
サスペンション制御部2260は操舵回避不可可能性あり信号2220と制動回避不可可能性あり信号2230のどちらかがセットされている場合、目標車高2270,2280を出力する。
【0057】
図6は、サスペンション制御部2260のフロー図である。
【0058】
まず、判断部6020は図2の回避不可可能性情報2250がクリアの状態からセット状態に変化したと判断すると、処理部6040は目標車高が通常制御時の目標車高に初期化する。
【0059】
次に、判断部6100は図2の回避不可情報2070がクリアの状態であると判断すると、判断部6260での判断へと移る。
【0060】
判断部6260は回避不可可能性情報2250がセットされていると判断すると、処理部6280,6290は前輪目標車高,後輪目標車高を変化率目標車高変化率(縮側)で減少させる。目標車高変化率(縮側)は、制御周期1サイクルで変化させることができる最高の値である。
【0061】
回避不可可能性情報がセットされてから回避不可情報がセットされるまでの時間tdsは、車高を目標車高変化率(縮側)で最低車高まで下げるのに必要な時間なので、回避不可情報がセットされるまでに車高を最低付近まで変化させることができる。次の処理である6300では前輪目標車高,後輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0062】
判断部6100は回避不可情報がセットされていると判断すると、処理部6010,6020がブレーキ作動時の前輪目標車高,後輪目標車高を算出する。
【0063】
処理部6010は、図7に示すフローの段差制御方向信号7021に、路面判断部1060で求めた前輪用段差制御方向信号2330を代入し、処理を行う。判断部7020は前輪用段差制御方向信号が平坦状態であると判断すると、処理部7040で前輪目標車高を変化率目標車高変化率(伸側)で増加させる。目標車高変化率は、目標車高上限から目標車高下限を引いた値を、衝突までの時間で除した値である。又、衝突までの時間は、現在の車間距離を相対速度で除した値である。目標車高変化率をこのように設定することにより制動を開始してから衝突するまでの間車高を上げ続けることができる。
【0064】
【数7】
【0065】
hdu:目標車高変化率(伸側),hmax:目標車高上限値,hmin:目標車高下限値
ttc:衝突までの時間
【0066】
【数8】
【0067】
dcurrent:前方車両との車間距離,vr:前方車両との相対速度
判断部7020は前輪用段差制御方向信号2330が平坦状態でないと判断すると、判断部7070での判断に移る。
【0068】
判断部7070は前輪用段差制御方向信号2330が上向きであると判断すると、処理部7090は目標車高を目標車高変化率(縮側)で減少させる。次の処理である7100では、前輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0069】
判断部7070は前輪用段差制御方向信号2330が下向きであると判断すると、処理部7120は目標車高を目標車高変化率(伸側)で増加させる。この時の目標車高変化率(伸側)は、数式7に示す目標車高変化率(伸側)以上の所定の値である。
【0070】
処理部6020は、図7に示すフローの段差制御方向信号7021に、路面判断部1060で求めた後輪用段差制御方向信号2340を代入し、処理を行う。判断部7020は、後輪用段差制御方向信号が平坦状態であると判断すると処理部7040で後輪目標車高を数式7に示す変化率目標車高変化率(伸側)で増加させる。
【0071】
判断部7020は後輪用段差制御方向信号2340が平坦状態でないと判断すると、判断部7070での判断に移る。
【0072】
判断部7070は後輪用段差制御方向信号2340が上向きであると判断すると、処理部7090は目標車高を目標車高変化率(縮側)で減少させる。次の処理である7100では、前輪目標車高が下限値以下にならないように下限リミット処理を行う。
【0073】
判断部7070は後輪用段差制御方向信号2340が下向きであると判断すると、処理部7120で目標車高を目標車高変化率(伸側)で増加させる。この時の目標車高変化率(伸側)は、数式7に示す目標車高変化率(伸側)以上の所定の値である。
【0074】
判断部6320は、目標車高を上昇させ始めてからの経過時間が衝突までの時間を超えたか否かを判断し、超えている場合は目標車高2270,2280を標準車高に戻す。目標車高を上昇させ始めてからの時間は、処理部6240で計測を行っている。計測方法はカウンタをインクリメントする等によって行われる。衝突までの時間は、処理部6080で記憶される。この記憶は、判断部6060で回避不可情報がクリアの状態からセットの状態にセットされた時に、数式8で計算された衝突までの時間を記憶することにより実現される。
【0075】
図6で説明した処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。
【0076】
路面形状8300に示すように、上向きの段差がある場合の動作を説明する。外界認識センサ1050が路面形状8300を認識する8150と、路面状態信号2310、段差までの距離dbump2320を入力し、段差制御開始距離dbump18120を算出する。回避不可可能性信号2250がセット8011されると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280が通常制御時の目標車高8100に初期化8041される。その後回避不可信号2070がセット8021されるtds8120の間に前輪目標車高2270,後輪目標車高2280はそれぞれ目標車高下限値8090,8190まで下げられる8042。
【0077】
次に回避不可信号2070がセット8021されると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280の上昇を開始する。
【0078】
回避不可信号2070がセットされた後、走行距離8350が前輪段差制御開始走行距離8340より大きくなると、前輪用段差制御方向信号2330に段差が上向きを示す値がセット8140される。当該信号2330がセットされると、前輪目標車高2270の下降を開始する。走行距離が前輪段差制御終了距離8320より大きくなると前輪用段差制御方向信号2330に平坦がセット8200され、前輪目標車高2270は上昇を開始する。
【0079】
回避不可信号2070がセットされた後、走行距離8350が後輪段差制御開始走行距離8330より大きくなると、後輪用段差制御方向信号2340に段差が上向きを示す値がセット8150される。当該信号2340がセットされると、後輪目標車高2280の下降を開始する。走行距離が後輪段差制御終了距離8310より大きくなると後輪用段差制御方向信号2340に平坦がセット8210され、後輪目標車高2280は上昇を開始する。
【0080】
回避不可信号2070がセットされた時に記憶された衝突までの時間ttcm8130が経過すると、前輪目標車高2270,後輪目標車高2280はそれぞれ標準車高8080,8180にセット8043される。
【0081】
路面に上向きの段差がある場合について説明したが、路面形状に変化が無い場合は、図6の点線で示すように、衝突までの時間ttcm7130が経過した時に目標車高上限値7043に到達するように目標車高4122,4123の上昇を行う。
【0082】
次に図9で、他の目標車高の制御方法を説明する。
【0083】
図9(A)は、段差制御方向信号が上向きにセットされ、目標車高を下降した後、段差制御方向信号が平坦になり目標車高を上昇させる時の目標車高変化率を変更する方法である。衝突までの時間ttcm7130が経過した時に目標車高4122,4123が目標車高上限値7043に到達するように目標車高変化率を設定することにより、輪荷重の増大効果を得るようにする。
【0084】
図9(B)は、路面段差が下方向にある場合である。段差制御方向信号が下向きにセットされる時、既に目標車高の上昇を開始しているが、路面段差が大きいとタイヤの路面に対する摩擦力が低減する可能性がある。そこで、段差制御要求信号がセットされると、目標車高変化率(伸側)を大きくして輪荷重増大効果を大きくし、段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制するようにする。
【0085】
衝突不可情報2070がセットされる前にドライバによるブレーキ操作が行われる場合があるので、以下の処理が施されるようにする。
【0086】
判断部6060はドライバブレーキ情報2400がクリアからセットに変化したと判断すると、処理部6080は衝突までの時間を記憶する。
【0087】
次に、判断部6100はブレーキ情報2400がセットされていると判断すると、回避不可情報2070がセットされている時と同様に前輪目標車高2270,後輪目標車高2280を増加させる。
【0088】
次に、図10から図13を用いて、サスペンション駆動部2290の動作について説明する。
【0089】
図10において、91は流体供給手段を示す。流体供給手段1は、エンジンにより駆動される油圧ポンプ92,油圧ポンプ92から吐き出された圧力流体(以下、圧油という)が油圧ポンプ92側に逆流するのを防止するチェック弁918、油圧ポンプ92から吐き出された圧油を貯留するアキュムレータ919,アキュムレータ919内の圧力を検出する圧力検出手段(不図示)、及び、油圧ポンプ92の吐出側とリザーバタンク93との間に設けられた電磁切替弁からなるアンロード弁95から構成されている。
【0090】
この構成によれば、油圧ポンプ92により吐き出された圧油は、アキュムレータ919に貯留され、圧力検出手段が所定の圧力を検出すると、アンロード弁5が制御されて油圧ポンプ92から吐き出された圧油をリザーバタンク93に戻すことによって、アキュムレータ919内が所定の圧力に保たれる。ここで、アキュムレータ919に接続された共通配管94の先端側は、例えば4本の分岐配管94A,94B,…(2本のみ図示)となって分岐し、該各分岐配管94A,94B,…の先端側は後述の油圧シリンダ96,97等に接続されている。
【0091】
96,97は車両の車体側と各車輪の車軸側との間に介装される車高調整手段としての油圧シリンダ(左,右の前輪側のみ図示)を示し、該油圧シリンダ96,97は左,右の前輪側で車体を懸架するサスペンションを構成し、油圧ポンプ92からの圧油が給排されることにより、チューブ96A,97Aからロッド96B,97Bを伸縮させ、車高調整また車体側の姿勢制御等を行う。
【0092】
尚、図11中では左,右の前輪側に設ける油圧シリンダ96,97を示したが、左,右の後輪側にも同様に油圧シリンダ(図示せず)が設けられ、これらの油圧シリンダも分岐配管94A,94Bと同様の分岐配管に接続される。
【0093】
98,99は油圧シリンダ96,97に付設されたアキュムレータを示し、該アキュムレータ98,99は減衰力バルブ910,911を介して油圧シリンダ96,97に接続され、該油圧シリンダ96,97のロッド96B,97Bを常時伸長方向に付勢するガスばねとして作動する。そして、該油圧シリンダ96,97のロッド96B,97Bが外部からの振動で伸縮する時には、油圧シリンダ96,97とアキュムレータ98,99との間で圧油が流通し、この時に減衰力バルブ910,911により減衰力を発生させて前記振動を緩衝する。
【0094】
912,913は左,右の前輪側に設けられる車高センサを示し、該車高センサ912,913は車両の前輪側で車軸側に対する車体側の高さ位置を検出し、それぞれの検出信号をコントロールユニット917に出力する。
【0095】
914,915は共通配管94と分岐配管94A,94Bの途中に設けられた圧油の給排弁を示し、該給排弁914,915はソレノイド914p,915pを備えた3ポート3位置の電磁式比例制御弁によって構成される。該給排弁914,915はコントロールユニット917からの制御信号によりソレノイド914p,915pに通電されると、図12に示す流量−電流特性に基づき、閉弁位置(イ)又は圧油の供給位置(ロ)及び排出位置(ハ)に切り換えられ、供給源5から油圧シリンダ96,97に圧油が給排される。
【0096】
尚、該給排弁914,915はソレノイド914p,915pに通電されない時は排油位置(ハ)に保持され、圧油は油圧シリンダ96,97からリザーバタンク93へ排出されることになる。916はパイロット操作チェック弁であり、パイロット操作チェック弁916は、3ポート2位置の電磁切替弁で構成されるパイロット制御弁920によって制御され、ソレノイド914p,915p非通電時の圧油の排出を防止するためのものである。パイロット操作チェック弁916は、パイロット制御弁920によってパイロット圧が作用すると開弁して油圧シリンダ96,97と供給源95とが連通され、パイロット圧が作用しないと通常のチェック弁として機能し、供給源5から油圧シリンダ96,97への圧油の流動のみが許容される。
【0097】
917はマイクロコンピュータ等によって構成されるコントロールユニットを示し、該コントロールユニット917は入力側が車高センサ912,913及び車速センサ,ステアリングセンサ(いずれも不図示)等に接続され、出力側が排出弁95、給排弁914,915及びパイロット制御弁920等に接続されている。そして、該コントロールユニット917は記憶回路内に図12に示すプログラム等を格納し、車高調整制御処理等を行うようになっている。また、該コントロールユニット917の記憶回路には、その記憶エリア917A内に車高判定用の基準データ等が格納されている。
【0098】
次にコントロールユニット917による車高調整制御処理について図12を参照して述べる。
【0099】
まず、電源スイッチ(不図示)の投入によって処理動作がスタートすると、ステップ1で各種の設定値等の初期化や出力信号の初期化を行う。ここで給排弁914,915に対して閉弁位置(イ)になる信号を出力し、次にパイロット制御弁920に対してパイロット圧を作用させる信号を出力し、該パイロット操作チェック弁16を開弁して油圧シリンダ96,97と供給源95とが連通させる。ステップ2に移って数ms程度の制御周期が経過したか否かを判定し、「YES」と判定した時にはステップ3に移って車高センサ912,913等から検出信号を読み込む。次に、ステップ4では下記の如く車高制御等の制御演算を行い、ステップ5に移って給排弁914,915のソレノイド914p,915pに電流Iを出力し給排油動作を実行する。
【0100】
ステップ4で実行する車高制御演算について図13を参照し説明する。車高制御演算1321は、サスペンション制御部2260で設定した目標車高と車高センサ912,913の差X0−Xにゲイン1323を乗算して流量Qを求め、流量Qに対応するソレノイド914p,915pの電流Iをテーブル1324から求めている。尚、前輪の車高制御演算を行う時には目標車高に前輪目標車高2270,後輪の車高制御演算を行う時には後輪目標車高2280を代入して処理を行う。
【0101】
以上に示したようなサスペンション駆動部により目標車高2270,2280と車高を一致させる。
【0102】
図14は、ブレーキ制御部2080のフロー図である。
【0103】
ブレーキ制御部2080は、回避不可情報2070がクリアからセットに変化したか否かを判断し、変化した場合は目標減速度をセットし(14040)、衝突までの時間を記憶する(14050)。セットされた目標減速度は、本装置が搭載されている車両において安全かつ効果的に減速できる最大の減速度がセットされる。
【0104】
次に、回避不可情報がセットされているか否かを判断し(14070)、セットされている場合、目標減速度出力時間を計測する(14090)。計測方法はカウンタをインクリメントする等によって行われる。
【0105】
次に、目標減速度出力時間が記憶された衝突までの時間が超えたか否かを判断し(14110)、超えている場合、目標減速度を0にセットする(14130)。
【0106】
図14で説明した処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。回避不可信号2070がセット8021されると、目標減速度2090が出力8031される。その後、衝突までの時間ttcm経過すると目標減速度2090が0になる8044。
【0107】
次に、図15から図17を用いてブレーキ液圧駆動部2100の動作について説明する。
【0108】
ブレーキ液圧駆動部2100は図15のようになっており、ポンプモータ40050により駆動されるプランジャポンプ40060と、プランジャポンプ40060か吐き出された圧力流体(以下、圧油という)のブレーキ10110への流入方向を制御する各バルブ40010,40020,40030,40040から構成されている。又、油圧回路は2系統から構成されており、これらはX配管に対応している。従って、Primary系統にはFL輪とRR輪が接続されており、Secondary系統にはFR輪とRL輪が接続されている。各バルブは、G/V OUTとW/C INはN/O、G/V INとW/C OUTはN/Cとなっている。
【0109】
この構成によりブレーキをかける(減速する)場合の動作を図16により説明する。
【0110】
G/V IN40020をON(開状態)、G/V OUT40010をON(閉状態・液圧に応じて保持電流を制御)、W/C IN40040をOFF(開状態)、W/C OUT 40030と40040をOFF(平状態)、ポンプモータ20090をON(モーター回転数により増圧勾配を制御)40050することにより、マスタシリンダ40050内の圧油をブレーキ10110に流入させることにより、実ブレーキ液圧20090の増圧を行う。
【0111】
ポンプモータ20090は目標減速度2090に従って制御される必要があるが、図17に示すように、目標減速度2090と車両の実減速度17010の差にゲイン17030を乗ずることにより、ポンプモータに印加する電圧波形のDuty比17040を求め、ポンプモータ駆動回路40060により前記Duty比17040に従った電圧波形17070をポンプモータ40050に与える。
【0112】
以上に示したようなブレーキ液圧駆動部により目標減速度2090と減速度を一致させる。
【0113】
本例は、回避不可信号がセットされ、目標減速度をブレーキ液圧駆動部2100に送信し減速を開始する時から、前方車両に衝突するまでの時間ttcm8130は、車高を上昇させることで自車両1000の輪荷重を増大させ、タイヤの路面に対する摩擦力を大きくすることができる。
【0114】
又、路面の段差部を通過する時は、車高を下降させることで、段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制することができる。
【実施例2】
【0115】
実施例1と同様の構成において、図2の「実施例2の場合」に示すように、外界認識センサから段差左右位置情報2410を入力し、路面判断部から段差の左右位置に応じて前後左右各輪用の段差制御方向信号2420,2430,2440,2450を出力し、サスペンション制御部2260から前輪左側の目標車高2460,前輪右側の目標車高2470,後輪左側の目標車高2480,後輪右側の目標車高2490をサスペンション駆動部2290に出力し車高制御を行う。
【0116】
実施例1は、路面の段差に対して、左右の目標車高を同一に変化させる制御方法であったが、本例は外界認識センサで検出する段差の位置情報に応じて、左右の目標車高を別々に変化させる。
【0117】
本例は、段差がある側では段差部での飛び越しによるタイヤの路面に対する摩擦力の低減を抑制し、段差が無い側ではタイヤの路面に対する摩擦力を大きくすることにより車両の輪荷重を増大させることができる。
【0118】
以上によれば、当該制動力制御装置は、路面形状を認識することにより、段差形状に応じて制動中の車高制御を変更し、輪荷重の減少を抑制するようにしているので、制動距離が長くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】制動力制御装置を搭載した車両の構成を示す図。
【図2】制動力制御装置の詳細な構成を示す図。
【図3】衝突判断処理フロー図。
【図4】路面状態制御部のフロー図。
【図5】段差制御方向判断のフロー図。
【図6】サスペンション制御部2260のフロー図。
【図7】ブレーキ作動時目標車高算出処理のフロー図。
【図8】目標車高算出のタイミングチャート。
【図9】目標車高算出例のタイミングチャート。
【図10】目標減速度算出処理のフロー図。
【図11】サスペンション制御アクチュエータの構成図。
【図12】流量−電流特性図。
【図13】車高制御フロー図。
【図14】車高制御のブロック図。
【図15】ブレーキアクチュエータ構成図。
【図16】ブレーキ制御時動作図。
【図17】ブレーキ制御ブロック図。
【符号の説明】
【0120】
1000 自車両
1010 車間距離センサ
1020 衝突判断部
1030 ブレーキアクチュエータ
1040 サスペンションアクチュエータ
1050 外界認識センサ
1060 路面判断部
1070,1080,1090,1100 ブレーキ
1110 ブレーキ駆動配管
1120,1130,1140,1150 サスペンション
1160 サスペンション駆動配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、
路面の段差の上下変化状態及び前記自車と前記段差までの距離を計測する第2のセンサと、
前記相対距離及び相対速度に基づいて、前記自車と前記障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、
前記上下変化状態及び前記段差までの距離に基づいて、前記自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、
ブレーキを制御するブレーキ制御部と、
前記自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、
前記車高制御部は、前記ブレーキ制御部が前記ブレーキを制御した際、前記車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、前記路面に前記段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する、制動力制御装置。
【請求項2】
前記車高制御部は、前記路面判断部の値が第1の所定値に達し、その後の第2の所定値範囲内において、前記路面の段差の上下変化状態に応じて、当該車高の制御を変更する、請求項1記載の制動力制御装置。
【請求項3】
前記車高制御部は、衝突の可能性がある場合は予め車高を下げておき、その後ブレーキを制御する時には車高を上げる方向に制御する、請求項2記載の制動力制御装置。
【請求項4】
前記衝突判断部は、現在の車高から最低車高に下げる時間を加味して、衝突不可事前判断を行う、請求項3記載の制動力制御装置。
【請求項5】
前記ブレーキの制御を開始する前にドライバがブレーキ操作を開始した場合、前記ドライバがブレーキを開始した時点から車高を上げる方向に制御し、前記車高を上げる方向の制御中に、前記路面判断部の値が第1の所定値に達し、その後の第2の所定値範囲内において、前記路面の段差の上下変化状態に応じて、当該車高の制御を変更する、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【請求項6】
前記車高の制御を変更するとは、前記路面の段差が上方向に変化している時は車高を下げる方向、前記路面の段差が下方向に変化している時は車高を上げる方向に変更することを示す、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【請求項7】
前記第1の所定値とは前記路面の段差までの距離より小さい値を示し、前記第2の所定値とは前記路面の段差までの距離以上の値を示す、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【請求項1】
自車と障害物との相対距離及び相対速度を計測する第1のセンサと、
路面の段差の上下変化状態及び前記自車と前記段差までの距離を計測する第2のセンサと、
前記相対距離及び相対速度に基づいて、前記自車と前記障害物とが衝突するか否かを判断する衝突判断部と、
前記上下変化状態及び前記段差までの距離に基づいて、前記自車が当該段差を通過する時のサスペンションの制御方向を判断する路面判断部と、
ブレーキを制御するブレーキ制御部と、
前記自車の車高を制御する車高制御部と、を備え、
前記車高制御部は、前記ブレーキ制御部が前記ブレーキを制御した際、前記車高を現在の車高よりも高く上げるよう制御し、前記路面に前記段差がある場合、当該段差の形状に基づいて当該車高の制御を変更する、制動力制御装置。
【請求項2】
前記車高制御部は、前記路面判断部の値が第1の所定値に達し、その後の第2の所定値範囲内において、前記路面の段差の上下変化状態に応じて、当該車高の制御を変更する、請求項1記載の制動力制御装置。
【請求項3】
前記車高制御部は、衝突の可能性がある場合は予め車高を下げておき、その後ブレーキを制御する時には車高を上げる方向に制御する、請求項2記載の制動力制御装置。
【請求項4】
前記衝突判断部は、現在の車高から最低車高に下げる時間を加味して、衝突不可事前判断を行う、請求項3記載の制動力制御装置。
【請求項5】
前記ブレーキの制御を開始する前にドライバがブレーキ操作を開始した場合、前記ドライバがブレーキを開始した時点から車高を上げる方向に制御し、前記車高を上げる方向の制御中に、前記路面判断部の値が第1の所定値に達し、その後の第2の所定値範囲内において、前記路面の段差の上下変化状態に応じて、当該車高の制御を変更する、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【請求項6】
前記車高の制御を変更するとは、前記路面の段差が上方向に変化している時は車高を下げる方向、前記路面の段差が下方向に変化している時は車高を上げる方向に変更することを示す、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【請求項7】
前記第1の所定値とは前記路面の段差までの距離より小さい値を示し、前記第2の所定値とは前記路面の段差までの距離以上の値を示す、請求項2又は3記載の制動力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−64614(P2010−64614A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232795(P2008−232795)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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