説明

半導体デバイス及びその製造方法

【課題】 半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成する際に、半導体素子に熱損傷を与えない程度の低温にて形成可能な半導体デバイスを提供する。
【解決手段】
半導体デバイスは、半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜(106)が形成されてなる半導体デバイスであって、薄膜(106)は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子(106a)の集合体であり、複数の結晶粒子(106a)の各々は、表面の一部において、隣接する結晶粒子と結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板上に、高誘電体又は強誘電体である金属酸化物よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子を他の回路素子と集積した半導体デバイスを形成する場合、容量絶縁膜は、一定の組成を有する金属酸化物薄膜として形成されることが一般的であった。
【0003】
図11は、高誘電体又は強誘電体である金属酸化物よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子をメモリセルトランジスタと集積した半導体デバイスの要部断面図を示している。なお、図示していないが、半導体基板501上には、他の回路素子なども形成されている。
【0004】
図11に示すように、半導体基板501の表層部には、不純物拡散領域502aが形成されている。また、半導体基板501の上には、ゲート絶縁膜502b及びゲート電極502cが順に形成されており、ゲート絶縁膜502b及びゲート電極502cの側面にはサイドウォール502dが形成されている。このように、不純物拡散領域502a、ゲート絶縁膜502b、ゲート電極502c及びサイドウォール502dよりなるメモリセルトランジスタ502が形成されている。また、半導体基板501の上には、メモリセルトランジスタ502を覆うように絶縁膜503が形成されており、該絶縁膜503中には、下端が不純物拡散領域502aと接続するコンタクトプラグ504が形成されている。また、絶縁膜503の上には、コンタクトプラグ504と電気的に接続する下部電極505が形成されており、該下部電極505の上には、高誘電体又は強誘電体である金属酸化物よりなる容量絶縁膜506及び上部電極507が順に形成されている。このように、下部電極505、容量絶縁膜506及び上部電極507から構成される容量素子508が形成されている。
【0005】
ここで、図11に示した容量絶縁膜506である金属酸化物薄膜を形成する方法としては、容量素子508を構成する下部電極505上に、金属有機物を塗布するスピンオン法、気相蒸着法(以下、CVD法と記す)、又はスパッタ法などが用いられてきた。
【0006】
これらの方法のうち、スピンオン法によると、塗布された金属有機物を酸化物化するために、高温にて酸素雰囲気中での熱処理(以下、結晶化アニールと記す)を行なう必要がある。また、CVD法又はスパッタ法においても、成膜された薄膜は、多くの場合、アモルファス状態の金属酸化物薄膜であるので、高い誘電率又は強誘電性を実現するためには、スピンオン法と同様に、高温にて酸素雰囲気中での熱処理を行なうことが一般的に必要である。例えば、特許文献1では、従来の方式によるスピンオン法が提案されており、特許文献2では、従来の方式によるCVD法が提案されている。
【0007】
図12は、下部電極上に、スピンオン法によって形成される金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を有する容量素子508の一般的な製造方法を説明するためのフローチャート図を示している。
【0008】
まず、図12に示す工程S601において、半導体基板501上に、下部電極505を形成する(下部電極形成工程)。
【0009】
次に、図12に示す工程S602において、下部電極505上に、金属酸化物薄膜を形成するための原料溶液を塗布する(スピンオン工程)。
【0010】
次に、図12に示す工程S603において、下部電極505上に塗布された原料溶液中の溶媒をベーク温度200〜300℃で蒸発させる(ソフトベーク工程)。これにより、金属酸化物薄膜となる前駆体薄膜が形成される。
【0011】
次に、図12に示す工程S604において、前駆体薄膜を結晶化することにより、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を形成する(結晶化アニール工程)。この際のアニール温度は700〜800℃であって、半導体の集積プロセスとしては比較的高い温度である。
【0012】
次に、図12に示す工程S605において、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506の上に、上部電極507を形成する(上部電極形成工程)。
【0013】
次に、図12に示す工程S606において、パターニング及びエッチングなどを行なうことによって、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を有する容量素子508の形状を加工する(容量素子加工工程)。
【0014】
次に、図12に示す工程S607において、工程S606によってダメージを受けた金属酸化物薄膜の結晶性を回復させる。
【0015】
以上のようにして、スピンオン法を用いることにより、半導体基板501上に容量素子508が形成される。
【0016】
また、図13は、下部電極上に、CVD法によって形成される金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を有する容量素子508の一般的な製造方法を説明するためのフローチャート図を示している。
【0017】
まず、図13に示す工程S701において、半導体基板501上に、下部電極505を形成する(下部電極形成工程)。
【0018】
次に、図13に示す工程S702において、CVD法により、下部電極505上に、金属酸化物薄膜を形成する(CVD工程)。
【0019】
次に、形成された金属酸化物薄膜は、通常、アモルファス状態であるので、図13に示す工程S703において、該金属酸化物薄膜を結晶化して、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を形成する(結晶化アニール工程)。この際のアニール温度は600〜800℃であって、半導体の集積プロセスとしては比較的高い温度である。
【0020】
次に、図13に示す工程S704において、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506の上に、上部電極507を形成する(上部電極形成工程)。
【0021】
次に、図13に示す工程S705において、パターニング及びエッチングなどを行なうことによって、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜506を有する容量素子508の形状を加工する(容量素子加工工程)。
【0022】
次に、図13に示す工程S706において、工程S705によってダメージを受けた金属酸化物薄膜の結晶性を回復させる。
【0023】
以上のようにして、CVD法を用いることにより、半導体基板501上に容量素子508が形成される。
【0024】
一方、特許文献3では、金属酸化物の微粒子が他の金属酸化物中に分散されてなる前駆体を熱処理することにより、前駆体全体を結晶化させて金属酸化物薄膜を形成する方法が提案されている。
【0025】
なお、前述した金属酸化物の作製方法は薄膜を製造するものであるが、この他の酸化物の製造方法としては、特許文献4のように、レーザーアブレーション法を用いて酸化物微粒子を製造する方法も提案されている。
【特許文献1】特開平9−69614号公報
【特許文献2】特開2003−174028号公報
【特許文献3】特開2001−53071号公報
【特許文献4】特開2003−137553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載された従来の金属酸化物薄膜の形成方法では、電気的特性に優れると共に結晶性の良い高誘電体又は強誘電体である金属酸化物薄膜を得るために、前述した結晶化アニール工程(工程S604又は工程S703)において、通常は600℃以上でのアニールを行なう必要がある。このため、結晶化アニール工程(工程S604又は工程S703)において、半導体基板501上に形成されたメモリセルトランジスタ503又は他の回路素子などに対して熱損傷を与える恐れがある。
【0027】
なかでも、強誘電体メモリ(以下、FeRAM(Ferroelectric random access memory)と記す)に使用される代表的な強誘電体材料であるSrBi2Ta23 (以下、SBTと記す)よりなる金属酸化物薄膜を得る場合には、結晶化アニール工程(工程S604又は工程S703)において、通常は650℃以上のアニールを行なう必要がある。このように、高温度のアニールが要求される点が、FeRAMを作製する上で、プロセス上の制約となっている。
【0028】
また、特許文献3に記載された従来の金属酸化物薄膜の形成方法では、金属酸化物の微粒子を他の金属酸化物中へ分散させた前駆体全体を加熱処理によって結晶化するので、特許文献1又は特許文献2に記載された製造方法と同様に、熱処理温度が高いという問題がある。
【0029】
以上のように、結晶化アニールにおける熱処理温度に基づく熱損傷は、高誘電体又は強誘電体である金属酸化物よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子と他の回路素子とを集積化する上において、大きな問題である。とりわけ、0.13μmルール以下の超高集積化プロセスにおいては、特に大きな問題である。
【0030】
前記に鑑み、本発明の目的は、半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成する際に、半導体素子に熱損傷を与えない程度の低温にて形成可能な半導体デバイス及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記の目的を達成するために、本発明に係る第1の半導体デバイスは、半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子の集合体であり、複数の結晶粒子の各々は、表面の一部において、隣接する結晶粒子と結合していることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る第1の半導体デバイスによると、薄膜が、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子の集合体よりなるので、該薄膜に対して結晶化アニールを行なう必要性は必ずしもなく、結晶化アニールを行なう場合であっても、低温での結晶化アニールで十分となる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0033】
本発明に係る第2の半導体デバイスは、半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る第2の半導体デバイスによると、薄膜が、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなる、結晶粒子と媒質材料との複合体よりなるので、媒質材料が結晶化されている必要性は必ずしもない。このため、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなる薄膜に対して、結晶化アニールを行なう必要性は必ずしもなく、結晶化アニールを行なう場合であっても、低温での結晶化アニールで十分となる。したがって、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を予め用意することにより、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0035】
本発明に係る第3の半導体デバイスは、半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が接着材料によって接着されてなることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る第3の半導体デバイスによると、薄膜が、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子同士が接着材料によって接着されてなるので、接着材料が結晶化されている必要性は必ずしもない。このため、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が接着材料によって接着されてなる薄膜に対して、結晶化アニールを行なう必要性は必ずしもなく、結晶化アニールを行なう場合であっても、低温での結晶化アニールで十分となる。したがって、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を予め用意することにより、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。また、接着材料の量は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子同士を接着させる程度の量で十分であるため、金属酸化物を含む薄膜中に含まれる接着材料の占める割合を極めて小さくすることができる。このため、金属酸化物を含む薄膜は、例えば結晶粒子を構成する金属酸化物の単体からなる高誘電体薄膜又は強誘電体薄膜の高誘電性又は強誘電性等の物性に極めて近い物性を実現することができる。
【0037】
本発明に係る第2又は第3の半導体デバイスにおいて、媒質材料又は接着材料は、非晶質材料であることが好ましい。
【0038】
このようにすると、非晶質材料は比較的低い温度にて形成できるので、比較的低い温度にて形成可能な、金属酸化物を含む薄膜を実現することができる。
【0039】
本発明に係る第2又は第3の半導体デバイスにおいて、媒質材料又は接着材料は、有機物よりなることが好ましい。
【0040】
このようにすると、有機物よりなる媒質材料に対して酸化物化のための加熱処理を行なう必要がないので、より低い温度にて形成可能な、金属酸化物を含む薄膜を実現することができる。
【0041】
本発明に係る第2又は第3の半導体デバイスにおいて、媒質材料又は接着材料は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有していることが好ましい。
【0042】
このようにすると、高い比誘電率を有する金属酸化物を含む薄膜を実現することができる。
【0043】
本発明に係る第1〜第3の半導体デバイスにおいて、結晶粒子の平均粒径は、半導体素子の最小線幅よりも小さいことが好ましい。
【0044】
このようにすると、金属酸化物よりなる結晶粒子が飛散して集積回路素子上に付着する場合であっても、回路ショートを起こす可能性を大幅に低減することができる。
【0045】
本発明に係る第1〜第3の半導体デバイスにおいて、薄膜は、強誘電体薄膜又は高誘電体薄膜よりなることが好ましい。
【0046】
この場合、金属酸化物を含む薄膜は、複数の結晶粒子を有しているので、高温の結晶化アニールを行なうことなく、必要な高誘電性又は強誘電性を発現する。
【0047】
本発明に係る第1の半導体デバイスの製造方法は、基板上に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を堆積する工程と、基板に対して加熱処理を行なって、複数の結晶粒子同士が結合されてなる薄膜を基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0048】
本発明に係る第1の半導体デバイスの製造方法によると、複数の結晶粒子同士が結合されてなる薄膜を基板上に形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0049】
本発明に係る第2の半導体デバイスの製造方法は、媒質材料を含む原料溶液中に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を分散させる工程と、基板上に、複数の結晶粒子が分散された原料溶液を塗布する工程と、基板に対して加熱処理を行なって、媒質材料中に複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0050】
本発明に係る第2の半導体デバイスの製造方法によると、媒質材料中に複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を基板上に形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。また、この場合、通常のスピンオン法を用いれば、媒質材料中に結晶粒子が分散されてなる薄膜を容易に形成することが可能となる。
【0051】
本発明に係る第3の半導体デバイスの製造方法は、気相蒸着法に用いる原料ガス又は原料ガス搬送用ガス中に、金属酸化物よりなる結晶粒子を分散させる工程と、複数の結晶粒子が分散された原料ガス又は原料ガス搬送用ガスを用いて、気相蒸着法により、複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程を備えることを特徴とする。
【0052】
本発明に係る第3の半導体デバイスの製造方法によると、複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなる薄膜を基板上に形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜がCVD法によって形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0053】
本発明に係る第4の半導体デバイスの製造方法は、接着材料を含む原料溶液中に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を分散させる工程と、基板上に、複数の結晶粒子が分散された原料溶液を塗布する工程と、基板に対して熱処理を行なって、複数の結晶粒子同士が接着材料によって接着されてなる薄膜を基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0054】
本発明に係る第4の半導体デバイスの製造方法によると、複数の結晶粒子同士が接着材料によって接着されてなる薄膜を基板上に形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0055】
本発明に係る第5の半導体デバイスの製造方法は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子と媒質材料よりなる粒子とが溶媒中に混合されてなる混合溶液を作製する工程と、基板上に、混合溶液を塗布する工程と、基板に対して熱処理を行なって、媒質材料よりなる粒子を軟化させることにより、媒質材料中に複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0056】
本発明に係る第5の半導体デバイスの製造方法によると、媒質材料中に複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を基板上に形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【0057】
本発明に係る第6の半導体デバイスの製造方法は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子と接着材料よりなる粒子とが溶媒中に混合されてなる混合溶液を作製する工程と、基板上に、混合溶液を塗布する工程と、基板に対して熱処理を行なって、接着材料よりなる粒子を軟化させることにより、複数の結晶粒子同士が接着材料によって接着されてなる薄膜を基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0058】
本発明に係る第6の半導体デバイスの製造方法によると、複数の結晶粒子同士が接着材料によって接着されてなる薄膜を形成することにより、熱処理温度の低減が可能になる。したがって、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、該回路素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することが可能となる。これにより、従来に比べて、半導体素子に対して与えられる熱損傷を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0059】
以上のように本発明によると、例えばメモリセルトランジスタなどの他の回路素子上に、他の回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0061】
なお、本発明の各実施形態では、本発明に係る金属酸化物よりなる薄膜(以下、金属酸化物薄膜)を強誘電体キャパシタ(容量素子)の容量絶縁膜に適用した場合について説明しているが、本発明に係る金属酸化物薄膜は、強誘電体キャパシタ以外にも、MFS(Metal-Ferroelectric-Semiconductor)型トランジスタ、MFIS(Metal-Ferroelectric-Insulator-Semiconductor)型トランジスタ又はMFMIS(Metal-Ferroelectric-Metal-Insulator-Semiconductor)型トランジスタなどの半導体記憶装置の容量絶縁膜として用いることもできる。
【0062】
また、本発明の各実施形態では、金属酸化物薄膜が、SBT(SrBi2Ta29)よりなる場合を例に説明しているが、例えばPZT(Pb(Zr,Ti)O3 )又はBLT((Bi,La)4Ti312)などの他の金属酸化物薄膜である場合であっても、同様に実施することができる。さらに、SBT又はPZTのような強誘電体よりなる金属酸化物薄膜の他にも、BST(Sr,Bi)TiO3 又はTa25 などの高誘電体よりなる金属酸化物薄膜であっても同様に適用可能である。
【0063】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスについて、図1を参照しながら説明する。
【0064】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスの要部模式図を示しており、具体的には、金属酸化物薄膜よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子とメモリセルトランジスタとが集積された半導体デバイスの要部模式図を示している。
【0065】
図1に示すように、半導体基板101の表層部には、不純物拡散領域102aが形成されている。また、半導体基板101の上には、ゲート絶縁膜102b及びゲート電極102cが順に形成されており、ゲート絶縁膜102b及びゲート電極102cの側面にはサイドウォール102dが形成されている。このように、不純物拡散領域102a、ゲート絶縁膜102b、ゲート電極102c及びサイドウォール102dよりなるメモリセルトランジスタ102が形成されている。また、半導体基板101の上には、メモリセルトランジスタ102を覆うように絶縁膜103が形成されており、該絶縁膜103中には、下端が不純物拡散領域102aと接続するコンタクトプラグ104が形成されている。また、絶縁膜103の上には、コンタクトプラグ104と電気的に接続する白金よりなる下部電極105(膜厚約200nm)が形成されている。下部電極105の上には、溶媒106b中にて酸化物微粒子(結晶粒子)106aが集積されてなる金属酸化物薄膜106が形成されている。ここで、酸化物微粒子106aは、その表面の一部において隣接する酸化物微粒子106aと結合している。金属酸化物薄膜106の上には、白金よりなる上部電極107(膜厚約200nm)が形成されている。このように、下部電極105、金属酸化物薄膜(容量絶縁膜)106及び上部電極107から構成される容量素子108が形成されている。なお、図示していないが、半導体基板101上には、メモリセルトランジスタ102以外の集積回路素子がさらに形成されていてもよい。
【0066】
以下では、本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法について、図2を参照しながら説明する。具体的には、本発明の特徴部分である図1に示した金属酸化物薄膜106の形成方法を含む容量素子108の製造方法について説明し、以下で説明する工程よりも前のその他の工程は通常の方法で行なわれるものである。
【0067】
まず、図2に示す工程S101において、図1に示した金属酸化物薄膜106を構成するSBTよりなる酸化物微粒子106aを作製する(酸化物微粒子作製工程)。
【0068】
ここで、酸化物微粒子106aの作製方法は、任意であり、例えばレーザーアブレーション法を用いることができる。具体的には、SBTよりなる酸化物のターゲットに対してレーザー照射を行なって、その際に発生した微粒子を炉で加熱する。その後、加熱された微粒子を捕集することによって酸化物微粒子106aを作製することができる。また、他の作製方法としては、Sr―Taのダブル金属アルコキシドとBiのアルコキシドとをエタノール中に溶解させた後に、当該溶液を撹拌しながら当該溶液に水を含むアルコールを加えることにより、酸化物微粒子106aを作製することができる。
【0069】
一方、図2に示す工程S102において、図1に示した下部電極105を形成する(下部電極形成工程)。具体的には、スパッタ法により、絶縁膜103の上に、下面がコンタクトプラグ104の上端と電気的に接続する下部電極105を形成する。なお、コンタクトプラグ104の下端は、不純物拡散層102aと接続しているので、トランジスタ102と下部電極105とは電気的に接続している。
【0070】
ここで、酸化物微粒子106aは、その粒径が半導体基板101上に形成されたトランジスタ203又はコンタクトプラグ204を含む集積回路素子の最小線幅よりも小さくなるように形成されることが望ましい。このようにすることにより、金属酸化物よりなる酸化物微粒子106aが集積回路素子上に付着する場合であっても、回路ショートを起こす可能性を大幅に低減することができる。したがって、ここでは、酸化物微粒子106aは、SBTよりなる場合であって、その粒径が集積回路素子の最小線幅130nmに比べて大幅に小さい約10nm以下となるように形成されている(なお、微細な粒径を有する酸化物微粒子の作製方法については、第3の実施形態において詳述している)。
【0071】
また、酸化物微粒子106aとして、SBTよりなる微粒子に対して酸化ホウ素及び酸化シリコンなどを主成分とするガラス微粒子が混入されてなる微粒子を用いることにより、後述する工程S103(酸化物微粒子106aを集積する工程)の後プロセスにおいて熱が加えられると、集積された酸化物微粒子106a同士の結合が強化される。
【0072】
次に、図2に示す工程S103において、半導体基板101上に形成された下部電極105の上に、前述の工程S101にて得られた結晶化された酸化物微粒子106aを集積する(酸化物微粒子集積工程)。これにより、溶媒106b中に酸化物微粒子106aが集積されてなる金属酸化物薄膜106が形成される。
【0073】
ここで、酸化物微粒子106aを下部電極105上に集積する方法としては、酸化物微粒子106aの粒径又は表面状態などによって、いくつかの方法を使用することが可能である。本実施形態では、溶媒106b中に酸化物微粒子106aを分散させて、酸化物微粒子106aをゾル状態にした後に、スピンオン法と同様の手法を用いて、半導体基板101上にゾル状態の酸化物微粒子106aを塗布し乾燥させることにより、金属酸化物薄膜106を形成する。この場合、溶媒として水を採用し、その水のpH値を酸又は塩基などによって調整することにより、酸化物微粒子106aが互いに凝集していない酸化物微粒子106aよりなる金属酸化物薄膜106が形成される。
【0074】
なお、ここでは、酸化物微粒子106aを形成するために水を用いたが、アルコールを用いても、前述と同様の効果を得ることができる。また、溶媒として液体を用いる代わりに、気体を用いることもできる。この場合は、酸化物微粒子106aをエアロゾル状態にした後に、半導体基板101上にエアロゾル状態の酸化物微粒子106aを噴射することによっても、酸化物微粒子106aが互いに凝集していない酸化物微粒子106aよりなる金属酸化物薄膜106を形成することができる。
【0075】
また、酸化物微粒子106aを集積する工程S103の後に、図2に示す工程S104(低温アニール工程)を任意に行なうこともできる。すなわち、工程S104において、低温アニールを実施することにより、酸化物微粒子106a同士を固着させて、強固な金属酸化物薄膜106を形成することもできる。このとき、下部電極105又は上部電極107として、低温アニール時の温度(多くの場合は、アルミニウムの融点より低い温度)によって溶融又は十分柔らかくなるような低融点金属を用いることにより、酸化物微粒子106aを下部電極105又は上部電極107に融着させることができる。例えば、酸化物微粒子106aが、SBT又はBLTのようなビスマス層状化合物よりなる場合には、下部電極105又は上部電極107として、ビスマスを含む低融点金属(例えば、スズ−銀−インジューム−ビスマス合金)を用いることが望ましい。
【0076】
次に、図2に示す工程S105において、スパッタ法により、金属酸化物薄膜106の上に上部電極107を形成する(上部電極形成工程)。
【0077】
次に、図2に示す工程S106において、パターニング及びドライエッチングなどを行なうことによって、金属酸化物薄膜106又は上部電極107における容量素子108形成領域以外に存在している部分を除去して容量素子108を形成する(容量素子加工工程)。
【0078】
なお、前述した工程S106の後に、図2に示す工程S107を任意に行なうこともできる(回復熱処理工程)。すなわち、金属酸化物薄膜106中の酸化物微粒子106aが十分に結晶化しているため、工程S106における加工によってダメージを受けることは少ない。このため、工程S107の回復熱処理工程を行なわない場合であっても、十分な特性を有する容量素子108を実現することができる。したがって、工程S107の回復熱処理工程は必要に応じて行なえばよいが、本工程を行なう場合には、半導体基板101を600℃以下で加熱することにより、工程S106において金属酸化物薄膜106に発生した加工ダメージを除去することが可能になる。この工程S107における熱処理温度は、工程S104における熱処理温度と同様に、低温で実現できる。
【0079】
このようにして、半導体基板101上に、金属酸化物薄膜106を有する容量素子108を備えた半導体デバイスが形成される。
【0080】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイス及びその製造方法によると、酸化物微粒子106aは、半導体基板101上に集積される前に、十分高い温度で結晶化しているので、半導体基板101又はその上に形成されたトランジスタ102等の集積回路素子に対して熱損傷を与えることなく、高誘電性又は強誘電性に優れた容量素子108を容易に実現することができる。また、本発明の第1の実施形態では、酸化物微粒子106aを集積する際に、ゾル状態の酸化物微粒子106aのpH値を制御することにより、下部電極105上に酸化物微粒子106aを配向性良く集積させることができる。その結果、残留分極電荷(2Pr)として23μC/cm2 以上の値が得られるSBTよりなる強誘電体容量素子を実現することができる。
【0081】
なお、本発明の第1の実施形態では、図1に示したように、平面型の容量素子が形成された半導体デバイスの製造方法について説明したが、例えば図3に示すように、凸型の下部電極105を形成した後、該下部電極105の上部及び側面を覆うように金属酸化物薄膜106及び上部電極107を順に形成することにより、立体構造を有する容量素子108を形成する場合であっても、本発明は同様に実現可能である。この場合は、容量素子の投影面積を小さく維持しながら、動作に必要な読み出し電荷を確保できるFeRAMを実現することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスについて、図4を参照しながら説明する。
【0083】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図であり、具体的には、強誘電体薄膜よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子とメモリセルトランジスタとが集積された半導体デバイスの要部断面図である。図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスは、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の構成に特徴があり、それ以外の部分は前述した第1の実施形態に係る半導体デバイスと同様であるので、以下では、金属酸化物薄膜106の構成について具体的に説明する。なお、図4では、図1における共通部分を同一の符号を付している。
【0084】
本発明の第2の実施形態における容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106は、媒質206b中に金属酸化物よりなる複数の酸化物微粒子(結晶粒子)206aが分散されてなる強誘電体薄膜よりなる。また、酸化物微粒子206aを構成する金属酸化物は、金属酸化物薄膜106と同じくSBTよりなる。なお、酸化物微粒子206aの粒径は、前述の第1の実施形態でも述べたように、半導体基板101上に形成されたメモリトランジスタ102を含む集積回路素子の最小線幅よりも小さくなるように形成されることが望ましい。このようにすることにより、金属酸化物よりなる酸化物微粒子206aが集積回路素子上に付着する場合であっても、回路ショートを起こす可能性を大幅に低減することができる。
【0085】
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法について、図5を参照しながら説明する。
【0086】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の形成方法に特徴があるので、以下では、金属酸化物薄膜106の形成方法を含む容量素子108の製造方法について、具体的に説明する。また、ここでは、金属酸化物薄膜106の形成方法として、CVD法を用いた場合を例に説明するが、後述の第3の実施形態で用いるスピンオン法、又はスパッタ法を用いることもできる。
【0087】
本実施形態においては、CVD法を用いて金属酸化物薄膜106(又はその前駆体、以下単に金属酸化物薄膜106と記す)を形成する際に、媒質106b中に、該金属酸化物薄膜106と同じ組成を有する酸化物微粒子106aを分散させることを特徴とするものであるが、図5に沿って具体的に以下に説明する。
【0088】
まず、図5に示す工程S201において、図4に示した金属酸化物薄膜106を構成する予め結晶化されたSBTよりなる酸化物微粒子206aを作製する(酸化物微粒子作製工程)。なお、酸化物微粒子206aを作製する方法として、前述した第1の実施形態と同様の方法を用いることにより、予め結晶化された酸化物微粒子206aを形成することができる。
【0089】
一方、図5に示す工程S202において、図4に示した下部電極105を形成する(下部電極形成工程)。具体的には、スパッタ法により、絶縁膜103の上に、下面がコンタクトプラグ104の上端と電気的に接続する下部電極105を形成する。なお、コンタクトプラグ104の下端は、不純物拡散層102aと接続しているので、トランジスタ102と下部電極105とは電気的に接続している。
【0090】
次に、図5に示す工程S203において、下部電極105上に、媒質206b中に酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106を作製するために、キャリアガス中に酸化物微粒子206aを分散させる。具体的には、CVD法で用いる有機原料の搬送に使用するキャリアガス中に酸化物微粒子206aをエアロゾル状に分散させる。
【0091】
次に、図5に示す工程S204において、酸化物微粒子206aがエアゾル状に分散されてなるキャリアガスを用いて、CVD法により、媒質中206b中に酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106を下部電極105上に形成する。
【0092】
なお、ここでは、キャリアガス中に酸化物微粒子206aを分散させる方法を用いた場合について説明したが、その他酸化ガス中に酸化微粒子206aを分散させることにより、媒質206b中に酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106を形成することもできるし、CVD法に必要なガスとは別個に酸化物微粒子206a用の搬送ガスを用いることにより、媒質206b中に酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106を形成することもできる。
【0093】
ここで、前述した工程S204によって形成された媒質206b中に酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106は、通常、非晶質状態であるので、図5に示す工程S205において、結晶化アニールを行なって、金属酸化物薄膜106の全体を結晶化させる(結晶化アニール工程)。このとき、酸化物微粒子206aは予め結晶化されているので、酸化物微粒子206aが種結晶となって金属酸化物薄膜106の結晶化を促進させる。したがって、工程S205における結晶化アニールでは、通常のCVD法を用いて形成された酸化物微粒子206aが分散されていない金属酸化物薄膜106の結晶化アニール温度よりも低い温度にて結晶化を実現することができる。なお、本実施形態では結晶化アニール工程S205を後述する上部電極形成工程S206の前に実施しているが、上部電極形成工程S206の後に結晶化アニール工程S205を実施することもできる。
【0094】
次に、図5に示す工程S206において、スパッタ法により、金属酸化物薄膜106の上に上部電極107を形成する(上部電極形成工程)。
【0095】
次に、図5に示す工程S207において、パターニング及びドライエッチングなどを行なうことによって、金属酸化物薄膜106又は上部電極107における容量素子108形成領域以外に存在している部分を除去して容量素子108を形成する(容量素子加工工程)。
【0096】
なお、前述した工程S207の後に、図5に示す工程S208を任意に行なうこともできる(回復熱処理工程)。すなわち、金属酸化物薄膜106中の酸化物微粒子206aが十分に結晶化しているため、工程S207における加工によってダメージ受けることは少ない。このため、工程S208の回復熱処理工程を行なわない場合であっても、十分な特性を有する容量素子108を実現することができる。したがって、工程S208の回復熱処理工程は必要に応じて行なえばよいが、本工程を実施する場合においては、前述した第1の実施形態と同様に低温で実現することができる。
【0097】
このようにして、半導体基板101上に、金属酸化物薄膜106を有する容量素子108を備えた半導体デバイスが形成される。
【0098】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイス及びその製造方法によると、媒質206b中に結晶化された酸化物微粒子206aが分散されてなる金属酸化物薄膜106に対する結晶化アニールを低温で行なうことができるので、半導体基板101又はその上に形成されたトランジスタ102等の集積回路素子に対して熱損傷を与えることなく、高誘電性又は強誘電性に優れた容量素子108を容易に実現することができる。
【0099】
なお、本実施形態では、CVD法を用いて金属酸化物薄膜106を形成する場合について説明したが、スピンオン法又はスパッタ法を用いる場合であっても、同様に、結晶化アニール温度を低減することができる。この場合、例えば、スピンオン法を用いる場合には、スピンオン原料に酸化物微粒子206aを事前に分散させた後に、スピンオン法によってその原料溶液の塗布を行なうことにより、同様に、結晶化アニール温度を低減することができる。また、スパッタ法を用いる場合には、酸化物微粒子206aが分散されてエアロゾル状態となった気体を供給しながらスパッタリングを行なうことにより、図4に示したように、媒質206b中に酸化物微粒子206aが分散された構造を有する金属酸化物薄膜106を容易に形成することができ、この場合も同様に、結晶化アニール温度を低減することができる。
【0100】
また、本実施形態では、酸化物微粒子206aの組成と金属酸化物薄膜106の組成とが同一である場合について説明したが、酸化物微粒子206aの構成金属元素の一部と金属酸化物薄膜106の構成金属元素の一部とが互いに共通する構成であってもよいし、酸化物微粒子206aの組成と金属酸化物薄膜106の組成とが全く異なっていてもよい。例えば、金属酸化物薄膜106がPZTよりなると共に、酸化物微粒子206aがPZTの構成金属元素の酸化物であるPbTiO3 を用いることにより、結晶化アニール温度を大幅に低減することもできる。
【0101】
さらに、図4に示したように、酸化物微粒子206aを金属酸化物薄膜106中に分散させる構造の代わりに、図6に示すように、予め下部電極105上に酸化物微粒子206aを集積させることにより、媒質206b中の下部に酸化物微粒子206aが配置された構造を有する金属酸化物薄膜106を形成することもできる。
【0102】
なお、第1の実施形態と同様に、本発明の第2の実施形態において、平面構造を有する容量素子を形成する代わりに、凹型又は凸型などの立体構造を有する容量素子108を形成する場合であっても、本発明は同様に実現可能である。この場合は、容量素子の投影面積を小さく維持しながら、動作に必要な読み出し電荷を確保できるFeRAMを実現することができる。
【0103】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスについて、図7を参照しながら説明する。
【0104】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図であり、具体的には、強誘電体薄膜よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子とメモリセルトランジスタとが集積された半導体デバイスの要部断面図である。図7に示すように、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスは、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の構成に特徴があり、それ以外の部分は前述した第1の実施形態に係る半導体デバイスと同様であるので、以下では、金属酸化物薄膜106の構成について具体的に説明する。なお、図7では、図1における共通部分とは同一の符号を付している。
【0105】
本発明の第3の実施形態における容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106は、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子(結晶粒子)306aが媒質材料306b中に分散されてなる強誘電体薄膜よりなる。また、酸化物微粒子306aを構成する金属酸化物はSBTであり、媒質材料306bはSrTa26(以下、STと記す)である。金属酸化物薄膜106がこのような構成を有することにより、酸化物微粒子106aと媒質材料106bとは、それぞれ2種類の共通する金属元素を含むため、酸化物微粒子306aと媒質材料306bとの間において金属元素の拡散を防止することができる。このため、酸化物微粒子306a及び媒質材料306bのそれぞれにおいて、組成が変動することを防止することができる。したがって、酸化物微粒子306aの強誘電性が劣化することを防止することができる。また、本実施形態では、酸化物微粒子306aと媒質材料306bとにおいて共通する金属元素が2種類存在する場合について説明したが、それぞれを構成する金属元素の種類によっては、共通する金属元素が3種類以上の場合は言うまでもなく1種類である場合であっても効果が得られる。
【0106】
また、酸化物微粒子306aの粒径は、前述の実施形態と同様に、半導体基板101上に形成されたメモリトランジスタ102を含む集積回路素子の最小線幅よりも小さくなるように形成されることが望ましい。このようにすることにより、金属酸化物よりなる酸化物微粒子306aが集積回路素子上に付着した場合であっても、回路ショートを起こす可能性を大幅に低減することができる。なお、本実施形態において、酸化物微粒子306aは、その粒径が集積回路素子の最小線幅130nmに比べて大幅に小さい約30nm以下となるように形成されている(形成方法の詳細は後述する)。
【0107】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスによると、金属酸化物薄膜106としての強誘電体薄膜は、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子306aが媒質材料306b中に分散されてなる、酸化物微粒子306aと媒質材料306bとの複合体から構成されている。このような構成において、酸化物微粒子306aは強誘電性を発現するので、媒質材料306bが結晶化されている必要性は必ずしもない。本実施形態に係る金属酸化物薄膜106は、容量素子108を構成する容量絶縁膜として必要な強誘電性を発現することができる。また、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106に対して、さらに高温アニールを行なう必要がないため、金属酸化物よりなる酸化物微粒子306aを予め用意することにより、メモリセルトランジスタ102などの集積回路素子が形成された半導体基板101上に、メモリセルトランジスタ102などの集積回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて金属酸化物薄膜106を形成することが可能となる。
【0108】
また、媒質材料306bは、酸化シリコンの比誘電率よりも大きな比誘電率を有するので、高い比誘電率を有する強誘電体薄膜としての金属酸化物薄膜106を実現することが可能となる。
【0109】
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法について、図8を参照しながら説明する。
【0110】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。図8に示すように、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の形成方法に特徴があるので、以下では、金属酸化物薄膜106の形成方法を含む容量素子108の製造方法について、具体的に説明する。
【0111】
まず、図8に示す工程S301において、媒質材料用の原料溶液を形成する。すなわち、媒質材料306bであるSTを含むスピンオン原料溶液を用意する(媒質材料用原料溶液形成工程)。また、図8に示す工程S302において、金属酸化物よりなる酸化物微粒子306aであるSBTよりなる結晶粒子(以下、SBT結晶粒子と記す)を形成する(金属酸化物結晶粒子形成工程)。
【0112】
ここで、直径が30nm以下の球状のSBT結晶粒子の作製方法について説明する。
【0113】
直径が30nm以下の球状のSBT結晶粒子のようなナノサイズの粒子を作製する方法としては、粉砕法、電気炉・化学炎・プラズマ・レーザーなどの手法による気相法、共沈・化合物沈殿・アルコキシド・水熱合成などの化学的手法による液相法、又は凍結乾燥・噴霧乾燥・噴霧熱分解などの物理的手法による液相法がある(例えば、シーエムシー出版 小泉・奥山・目編集 2002年10月発行「ナノ粒子の製造・評価・応用・機器の最新情報」を参照)。後の工程において、このようなナノサイズの粒子を結晶成長の核とするためには、良好な結晶性を有する粒子を作製できる方法が好ましいので、本実施形態ではプラズマ法を用いる。本手法を用いる場合には、酸素プラズマ中にSBTの有機原料液を噴霧し、1200℃以上の高温にて瞬時に焼結させる。このように、高温にて粒子の作製が可能であるので、強誘電性を有する層状ペロブスカイト結晶構造を有する粒子を得ることに適していると共に、大量処理が可能である。X線回折法により、プラズマ法を用いて作製されたSBT結晶粒子の結晶性を調べたところ、層状ペロブスカイト結晶構造に特有の指数に関連したピークのみが検出された。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)により、SBT結晶粒子を観察したところ、SBT結晶粒子内は単一の結晶であることが確認された。したがって、プラズマ法を用いて作製したSBT結晶粒子は層状ペロブスカイト結晶構造を有する単結晶である。なお、プラズマ法を用いて作製したSBT結晶粒子は、プラズマ中において、粒子同士が衝突することによって融合し、一つの大きな粒子となるので、SBT結晶粒子群には、目標とする直径30nm以下のSBT結晶粒子の他に、直径30nmよりも大きな直径を有するSBT結晶粒子が混在している。走査型電子顕微鏡(SEM)により、この粒子群における各粒子の粒径を調べると、粒径は25nm〜300nmの範囲に分布していた。
【0114】
そこで、SBT結晶粒子群を純水中に懸濁し、沈降による分級を行なう。
【0115】
一般に、重力による粒子の沈降速度uは、下記式(1)で表される。
【0116】
u=D2(ρ-ρ0)g/18η ・・・(1)
(但し、Dは粒径、ρは粒子の密度、ρ0は溶媒の密度、ηは溶媒の粘度、gは重力加
速度である。)
式(1)を用いて粒子の沈降速度uを計算すると、直径100nm及び30nmの粒子が液体中を沈降する速度は、およそ0.04mm/h及び0.0036mm/hであるので、例えば高さ50mmの容器に懸濁液を入れて3ヶ月間放置すると、直径100nmの粒子は沈降する一方、直径30nmの粒子は懸濁液中を浮遊している。このため、容器中の上澄み液から直径30nm以下のSBT結晶粒子のみを回収することができる。このようにして、結晶粒子306aである直径30nm以下のSBT結晶粒子を作成することができる。なお、ここでは、沈降法を用いて説明したが、遠心分離器又は微分型静電分級器などを使うことにより、短時間に分級することもできる。
【0117】
なお、SBT結晶粒子を形成する方法としては、前述の方法に限定されず、例えば、レーザーアブレーション法により、SBTよりなるターゲットをレーザー照射し、その際に発生した微粒子を炉で加熱した後に、捕集することによってSBT結晶粒子を作製することもできる。
【0118】
次に、図8に示す工程S303において、STを含むスピンオン原料溶液中にSBT結晶粒子を分散させる(原料混合工程)。
【0119】
次に、図8に示す工程S304において、通常のスピンオン法により、半導体基板101上に、SBT結晶粒子が分散されたスピンオン原料溶液を塗布する(原料溶液塗布(スピンオン)工程)。なお、半導体基板101上には、前述の図7に示したように、予め、メモリセルトランジスタ102、コンタクトプラグ104及びパターニングされた下部電極105などが形成されている。
【0120】
次に、図8に示す工程S305において、半導体基板101を200〜300℃で加熱することにより、強誘電体薄膜である容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の前駆体薄膜を形成する(ソフトベーク工程)。このとき、前駆体薄膜における酸化物微粒子306a(SBT結晶粒子)の占める割合を、前駆体薄膜における媒質材料306b(ST)の占める割合に対して小さくすることが望ましい。なお、前駆体薄膜における酸化物微粒子306a(SBT結晶粒子)の占める割合を大きくすることにより、後述する第4の実施形態のような、酸化物微粒子306aのそれぞれが融着材料によって融着されてなる金属酸化物薄膜を形成することもできる。
【0121】
次に、図8に示す工程S306において、工程S304において形成された前駆体薄膜を500℃以下にて加熱することにより、当該前駆体薄膜に含まれている有機物を分解して酸化物化する(熱処理工程)。これにより、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子306a(SBT結晶粒子)が媒質材料306b(ST)中に分散されてなる強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106が形成される。この際、酸化物微粒子306aはすでに結晶化しているので、媒質材料306bは必ずしも結晶化させる必要はない。したがって、工程S306における熱処理温度は、例えば従来例のように通常のスピンオン法を用いて強誘電体薄膜を形成する場合に行なう熱処理温度に比べて低減させることができる。例えば熱処理温度として300℃〜500℃という従来に比べて低い熱処理温度にて、十分な強誘電性を発現する強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を形成することができる。
【0122】
次に、図8に示す工程S307において、金属酸化物薄膜106の上に上部電極107を形成する(上部電極形成工程)。
【0123】
次に、図8に示す工程S308において、パターニング及びドライエッチングなどを行なうことによって、金属酸化物薄膜106又は上部電極109における容量素子108形成領域以外に存在している部分を除去する(容量素子加工工程)。
【0124】
次に、図8に示す工程S309において、半導体基板を500℃以下で加熱することにより、工程S308において金属酸化物薄膜106に発生した加工ダメージを除去する(回復熱処理工程)。この工程S309における熱処理温度は工程S306における熱処理温度と同様に低温化が可能である。
【0125】
このようにして、半導体基板101上に容量素子108を有する半導体デバイスが形成される。
【0126】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法によると、工程S306(熱処理工程)及び工程S309(回復熱処理工程)における熱処理温度の低減が可能であるので、半導体基板101又はその上に形成されたメモリセルトランジスタ102などの集積回路素子に対して熱損傷を与えることなく、強誘電性などの特性に優れた強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を備えた容量素子105を容易に製造することができる。さらに、通常のスピンオン法を用いることができるので、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を容易に形成することができる。
【0127】
なお、本実施形態では、酸化物微粒子306aとしてSBTよりなる結晶粒子を用いると共に媒質材料306bとしてSTを用いる場合について説明したが、酸化物微粒子306aとして、PZT(Pb(Zr,Ti)03 ))又はBLT((Bi,La)4Ti312 )などの他の強誘電体よりなる結晶粒子を用いてもよいし、媒質材料306bとして、酸化鉛などの他の酸化物を用いてもよい。また、酸化物微粒子306aとしてPZTよりなる結晶粒子を用いると共に媒質材料306bとして酸化鉛を用いる場合には、Pbがそれぞれに共通する金属元素であるため、PZTよりなる酸化物微粒子306aと酸化鉛よりなる媒質材料307bとの間における金属元素の拡散が防止できるので、それぞれにおける組成変動が生じることを防止することができる。このため、酸化物微粒子306aの強誘電性が劣化することを防止することができる。
【0128】
また、本実施形態では、酸化物微粒子306a(SBT結晶粒子)と媒質材料306b(ST)とが2種類の共通の金属元素(Sr、Ta)を有する場合について説明したが、酸化物微粒子306a及び媒質材料306bを構成する材料によっては、共通の金属元素を有していなくともかまわない。例えば、媒質材料306bとして、酸化物ガラスなどの非晶質材料を用いる場合が挙げられる。この場合には、工程S306(熱処理工程)における熱処理温度の大幅な低減が可能となる。特に、ガラス転移点温度が低い低融点ガラスであるホウ酸塩ガラスなどを用いるとよい。
【0129】
また、媒質材料306bは酸化物よりなる場合に限定されるわけではなく、例えばポリプロピレンなどの高誘電率を有する有機物を使用してもよい。この場合、工程S306(熱処理工程)は省略してもよく、このため、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を形成するために必要な熱バジェットを大幅に低減させることができる。
【0130】
また、本実施形態では、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106の形成方法として、スピンオン法を用いる場合を例にして説明したが、気相蒸着法又はスパッタ法などを用いることも可能である。
【0131】
また、本実施形態では、強誘電体薄膜及びその形成方法について説明したが、高誘電体薄膜及びその形成方法にも適用できるものである。その場合は、酸化物微粒子306aとして、高誘電体よりなる結晶粒子を用いればよい。例えば、BST(Sr,Bi)TiO3 )又はTa25 などを用いればよい。
【0132】
なお、第1の実施形態と同様に、本発明の第3の実施形態において、平面構造を有する容量素子を形成する代わりに、凹型又は凸型などの立体構造を有する容量素子108を形成する場合であっても、本発明は同様に実現可能である。この場合は、容量素子の投影面積を小さく維持しながら、動作に必要な読み出し電荷を確保できるFeRAMを実現することができる。
【0133】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスについて、図9を参照しながら説明する。
【0134】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図であり、具体的には、強誘電体薄膜よりなる容量絶縁膜を備えた容量素子とメモリセルトランジスタとが集積された半導体デバイスの要部断面図である。図9に示すように、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスは、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の構成に特徴があり、それ以外の部分は前述した第1の実施形態に係る半導体デバイスと同様であるので、以下では、金属酸化物薄膜106の構成について、具体的に説明する。なお、図9では、図1における共通する部分とは同一の符号を付している。
【0135】
本発明の第4の実施形態に係る容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106は、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aのそれぞれが融着用材料(接着材料)406bによって融着(接着)されてなる強誘電体薄膜である。また、酸化物微粒子406aを構成する金属酸化物はPZTであり、融着用材料406bは非晶質の酸化物ガラス(以下、単にガラスと記す)であり、特に、本実施形態では、鉛を40重量%程度含んだ鉛ガラスを用いている。このようにすることで、酸化物微粒子406aと媒質材料406bとは、それぞれ共通する金属元素であるPbを含むので、酸化物微粒子406aと媒質材料406bとの間における金属元素の拡散を防止することができる。このため、酸化物微粒子406a及び媒質材料406bのそれぞれにおいて、組成が変動することを防止することができる。したがって、酸化物微粒子406aの強誘電性が劣化することを防止することができる。
【0136】
なお、酸化物微粒子406aは、前述の実施形態と同様に、その粒径が半導体基板101上に形成されたメモリトランジスタ102を含む集積回路素子の最小線幅よりも小さくなるように形成されることが望ましい。本実施形態では、酸化物微粒子406aは、第3の実施形態で説明したような方法により、その粒径が集積回路素子の最小線幅130nmに比べて大幅に小さい約30nm以下となるように形成されている。
【0137】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスは、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aのそれぞれが融着用材料406bによって融着されることによって構成されている。このような構成において、酸化物微粒子406aは、強誘電性を発現するので、融着用材料406bは結晶化されている必要性は必ずしもない。本実施形態に係る強誘電体薄膜は、容量素子108を構成する金属酸化物薄膜106として必要な強誘電性を発現することができる。また、融着用材料406bの量は、複数の金属酸化物よりなる結晶粒子406aのそれぞれを融着させる程度の量で十分であるので、強誘電体薄膜の中に含まれる融着用材料406bの占める割合を極めて小さくすることができる。このため、酸化物微粒子406aを構成する金属酸化物の単体からなる強誘電体薄膜の強誘電性などの物性に極めて近い物性を実現することができる。また、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106に対して、さらに高温アニールを行なう必要がないため、金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aを予め用意することにより、メモリセルトランジスタ102などの集積回路素子が形成された半導体基板101上に、メモリセルトランジスタ102などの集積回路素子に熱損傷を与えない程度の低温にて強誘電体薄膜を形成することが可能となる。
【0138】
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法について、図10を参照しながら説明する。
【0139】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。図10に示すように、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、容量絶縁膜としての金属酸化物薄膜106の形成方法に特徴があるので、以下では、金属酸化物薄膜106の形成方法を含む容量素子108の製造方法について、具体的に説明する。
【0140】
まず、工程S401において、鉛を40重量%程度含んだ鉛ガラスのバルク状ガラスを粉砕して、融着用材料406bとなるガラス粉末を形成する(ガラス粉末形成工程)。また、工程S402において、第1の実施形態において説明した方法と同様の方法により、金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aであるPZTよりなる結晶粒子(以下、PZT結晶粒子と記す)を形成する(金属酸化物結晶粒子形成工程)。
【0141】
次に、工程S403において、水にポリビニルアルコールを溶解した溶液に、PZT結晶粒子とガラス粉末とを混合して、金属酸化物の混合スラリー(以下、単にスラリーと記す)を形成する(スラリー形成工程)。この際、スラリーにおけるPZT結晶粒子の占める割合を、スラリーにおけるガラス粉末の占める割合よりも大きくすることが望ましい。本実施形態では、ガラス粉末とPZT結晶粒子との混合比率を、体積比で1:9としている。
【0142】
なお、ガラス粉末とPZT結晶粒子との混合比率を調整することにより、第3の実施形態のように、酸化物微粒子406aが鉛ガラス(媒質材料)中に分散されてなる強誘電体薄膜を形成することもできる。
【0143】
次に、工程S404において、通常のスピンオン法により、半導体基板101上に当該スラリーを塗布する(スラリー塗布(スピンオン)工程)。なお、半導体基板101上には、前述の図9に示したように、予め、メモリセルトランジスタ102、コンタクトプラグ104及びパターニングされた下部電極105などが形成されている。
【0144】
次に、工程S405において、鉛ガラスのガラス軟化点である600℃まで過熱することにより、ガラス粉末を軟化させて、PZT結晶粒子同士を融着させる(熱処理工程)。これにより、複数の金属酸化物よりなる酸化物微粒子406a(PZT結晶粒子)のそれぞれが融着用材料406b(鉛ガラス)によって融着されてなる強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106が形成される。この際、酸化物微粒子406aはすでに結晶化しているため、融着用材料406bを結晶化させる必要は必ずしもない。したがって、工程S405(熱処理工程)における熱処理温度は、例えば従来例のように通常のスピンオン法を用いて強誘電体薄膜を形成する場合に行なう熱処理の温度に比べて低減させることができる。例えば熱処理温度として600℃程度という比較的低い熱処理温度にて、十分な強誘電性を発現する強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を形成することができる。
【0145】
なお、スラリーの形成に用いたバインダーであるポリビニルアルコールは、工程S405(熱処理工程)を酸素雰囲気下で実施することにより、熱分解によって除去することができる。
【0146】
次に、第1の実施形態と同様に、工程S406(上部電極形成工程)、工程S407(容量素子加工工程)及び工程S408(回復熱処理工程)を経て、半導体基板101上に容量素子108を有する半導体デバイスが形成される。なお、工程S408(回復熱処理工程)では、半導体基板101を約600℃で加熱することにより、工程S407(容量素子加工工程)で金属酸化物薄膜106に発生した加工ダメージを除去することができる。
【0147】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法によると、工程S405(熱処理工程)において、熱処理温度を600℃以下にして、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を形成することが可能であり、半導体基板101又はその上に形成されたメモリセルトランジスタ102などの集積回路素子に対して熱損傷を与えることなく、強誘電性などの特性に優れた強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を備えた容量素子108を容易に製造することができる。さらに、通常のスピンオン法を用いることができるので、強誘電体薄膜を容易に形成することができる。
【0148】
なお、本実施形態では、金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aとしてPZTよりなる結晶粒子を用いる場合について説明したが、酸化物微粒子406aとしてSBT又はBLTなどの他の強誘電体よりなる結晶粒子を用いてもよい。
【0149】
また、本実施形態では、融着用材料406bとして鉛ガラスを用いる場合について説明したが、融着用材料406bとしてホウ酸塩ガラス又はゲルマニウムを含むガラスなどを用いてもよい。さらに、融着用材料406bとして、例えばエポキシ樹脂又はポリプロピレンなどの高誘電率を有する有機物を使用してもよい。この場合、工程S405(熱処理工程)は省略してもよく、このため、強誘電体薄膜よりなる金属酸化物薄膜106を形成するために必要な熱バジェットを大幅に低減させることができる。
【0150】
また、本実施形態では、強誘電体薄膜及びその形成方法について説明したが、高誘電体薄膜及びその形成方法にも適用できるものである。その場合は、金属酸化物よりなる酸化物微粒子406aとして、高誘電体よりなる結晶粒子を用いればよい。例えば、BST(Sr,Bi)TiO3 )又はTa25 などを用いればよい。
【0151】
なお、第1の実施形態と同様に、本実施形態において、平面構造を有する容量素子を製造する代わりに、凹型又は凸型等の立体構造を有する容量素子108を形成する場合であっても、本発明は同様に実現可能である。この場合は、容量素子の投影面積を小さく維持しながら、動作に必要な読み出し電荷を確保できるFeRAMを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、トランジスタ等の半導体素子が形成された半導体基板上に、金属酸化物薄膜を有する容量素子が形成された半導体デバイス及びその製造方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体デバイスの構造の変形例を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体デバイスの構造の変形例を示す要部断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【図11】従来に係る半導体デバイスの構造を示す要部断面図である。
【図12】スピンオン法を用いた従来に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【図13】CVD法を用いた従来に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0154】
101 半導体基板
102 メモリセルトランジスタ
102a、502a 高濃度不純物領域
102b、502b ゲート絶縁膜
102c、502c ゲート電極
102d、502d サイドウォール
103、503 絶縁膜
104、504 コンタクトプラグ
105、505 下部電極
106 金属酸化物薄膜(容量絶縁膜)
106a、206a、306a 酸化物微粒子(結晶粒子)
106b、206b、306b 媒質材料
406b 融着用材料(接着材料)
106、506 容量絶縁膜
107、507 上部電極
108、208、508 容量素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、
前記薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子の集合体であり、
前記複数の結晶粒子の各々は、表面の一部において、隣接する結晶粒子と結合していることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、
前記薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項3】
半導体素子上に、金属酸化物を含む薄膜が形成されてなる半導体デバイスであって、
前記薄膜は、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子が接着材料によって接着されてなることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項4】
前記媒質材料又は前記接着材料は、非晶質材料であることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記媒質材料又は前記接着材料は、有機物よりなることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記媒質材料又は前記接着材料は、酸化シリコンの比誘電率よりも大きい比誘電率を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記結晶粒子の平均粒径は、前記半導体素子の最小線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記薄膜は、強誘電体薄膜又は高誘電体薄膜よりなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
基板上に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を堆積する工程と、
前記基板に対して加熱処理を行なって、前記複数の結晶粒子同士が結合されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
媒質材料を含む原料溶液中に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を分散させる工程と、
基板上に、前記複数の結晶粒子が分散された前記原料溶液を塗布する工程と、
前記基板に対して加熱処理を行なって、前記媒質材料中に前記複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
気相蒸着法に用いる原料ガス又は原料ガス搬送用ガス中に、金属酸化物よりなる結晶粒子を分散させる工程と、
前記複数の結晶粒子が分散された前記原料ガス又は前記原料ガス搬送用ガスを用いて、前記気相蒸着法により、前記複数の結晶粒子が媒質材料中に分散されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
接着材料を含む原料溶液中に、金属酸化物よりなる複数の結晶粒子を分散させる工程と、
基板上に、前記複数の結晶粒子が分散された前記原料溶液を塗布する工程と、
前記基板に対して熱処理を行なって、前記複数の結晶粒子同士が前記接着材料によって接着されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項13】
金属酸化物よりなる複数の結晶粒子と媒質材料よりなる粒子とが溶媒中に混合されてなる混合溶液を作製する工程と、
基板上に、前記混合溶液を塗布する工程と、
前記基板に対して熱処理を行なって、前記媒質材料よりなる粒子を軟化させることにより、前記媒質材料中に前記複数の結晶粒子が分散されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項14】
金属酸化物よりなる複数の結晶粒子と接着材料よりなる粒子とが溶媒中に混合されてなる混合溶液を作製する工程と、
基板上に、前記混合溶液を塗布する工程と、
前記基板に対して熱処理を行なって、前記接着材料よりなる粒子を軟化させることにより、前記複数の結晶粒子同士が前記接着材料によって接着されてなる薄膜を前記基板上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−128596(P2006−128596A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36229(P2005−36229)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】