説明

半導体素子製造方法

【課題】良好な膜質を有するゲート絶縁膜を化合物半導体層上に形成することができる半導体素子製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、基板1上にバッファ層2を介して積層されたGaN活性層3とゲート電極8との間にゲート絶縁膜であるSiO2膜5が形成された半導体素子を製造する半導体素子製造方法において、ゲート絶縁膜は、ECRスパッタリング法を用いて形成されることを特徴とする。この結果、良好な膜質を有するゲート絶縁膜をGaN活性層3上に形成することができる半導体素子製造方法を提供することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上にバッファ層を介して積層された化合物半導体層とゲート電極との間にゲート絶縁膜が形成された半導体素子を製造する半導体素子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体を用いて形成された半導体素子は、直接遷移性等、化合物半導体材料が本質的に有する特性から、高耐圧素子、高速素子として有望な電子素子である。特に、GaN系半導体素子は、Siデバイスよりも耐圧が高く、オン抵抗が低いうえに高温動作が可能であるため、電源用デバイスへの応用が期待されている。このようなGaN系半導体素子として、基板上に、バッファ層、GaN活性層、ゲート絶縁膜が順次積層され、その上にゲート電極が形成された電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−320054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Siデバイスの場合、熱酸化法を用いたSiO2膜をゲート絶縁膜として形成できるため、ゲート絶縁膜層とSi基板との界面状態を良好に保持できる高膜質のゲート絶縁膜を形成することが可能である。これに対し、化合物半導体層を用いて形成された半導体素子においては熱酸化法を用いることができないため、化学的気相成長法(CVD法)または物理気相成長法(PVD法)を用いて、化合物半導体層上にゲート絶縁膜を形成する。しかしながら、表面反応であるCVD法を用いてGaN活性層上にゲート絶縁膜として機能するSiO2膜を形成した場合、ラジカルに起因したGaN活性層表面からの窒素抜けのため、ゲート絶縁膜層とGaN活性層との界面状態が不安定となり、高膜質のゲート絶縁膜を形成することが困難であるという問題があった。また、表面反応ではないPVD法のうち蒸着法を用いてGaN活性層上にSiO2膜を形成した場合、膜の密着性が悪く組成ずれが大きいため、高膜質のゲート絶縁膜を形成することが困難であった。また、PVD法のうちRFスパッタリング法を用いてGaN活性層上にSiO2膜を形成した場合、入射粒子のエネルギーが高いため、GaN系半導体層へのダメージが大きくなり高膜質のゲート絶縁膜を形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、良好な膜質を有するゲート絶縁膜を化合物半導体層上に形成することができる半導体素子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる半導体素子製造方法は、基板上にバッファ層を介して積層された化合物半導体層とゲート電極との間にゲート絶縁膜が形成された半導体素子を製造する半導体素子製造方法において、前記ゲート絶縁膜は、ECRスパッタリング法を用いて形成されることを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記ゲート絶縁膜は、SiO2膜またはAl23膜を含むことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、ECRスパッタリング法を用いて前記化合物半導体層と前記SiO2膜または前記Al23膜との間に前記ゲート絶縁膜として機能する窒化膜を形成することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記ゲート絶縁膜の等価酸化膜厚は、20nm以上100nm以下であることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記窒化膜は、Si34膜またはAlN膜であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記窒化膜は、2nm以上30nm以下の膜厚で形成されることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記化合物半導体層は、窒化物系化合物半導体を用いて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる半導体装置製造方法によれば、ECRスパッタリング法を用いてゲート絶縁膜を形成するため、良好な膜質を有するゲート絶縁膜を化合物半導体層上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0015】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1〜図3は、本実施の形態1における酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metallic Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造工程を示す断面図である。
【0016】
まず、図1(1)に示すように、Si基板である基板1上に、有機金属気相成長(MOCVD)法によって、たとえば厚さ100nmのAlNから成るバッファ層2とたとえば厚さ1μmのp型であるGaN活性層をエピタキシャル成長する。バッファ層2は、基板温度を1100℃とし、トリメチルアルミニウム(TMA)およびアンモニア(NH3)を反応ガスとして用いることによって成長される。GaN活性層3は、基板温度を1100℃とし、トリメチルガリウム(TMG)およびNH3を反応ガスとして用いることによって成長される。また、たとえばシクロペンタジェニエルマグネシウム(Cp2Mg)を反応ガスとして用いることによって、マグネシウム(Mg)をp型のドーパントとしてGaN活性層3にドーピングすることができる。たとえば、Mgの添加量は、5×1015cm-3〜5×1017cm-3に設定される。なお、基板1としてアルミナ、炭化シリコン等の基板も適用できる。また、MOCVD法に代えて、ハライド気相エピタキシー法(HVPE法)、分子線エピタキシー法(MBE)を用いることも可能である。
【0017】
つぎに、図1(2)に示すように、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を経ることによって、素子間分離領域3aを形成する。フォトリソグラフィ工程として、フォトレジストを塗布後、露光現像することによって素子間分離領域3aに対応する開口領域を形成し、エッチング工程として、反応性イオンエッチング(RIE)法、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング法を用いて開口領域に対応するGaN活性層3をエッチングし、フォトレジスト除去を行なう。
【0018】
つぎに、イオン防御用のマスク層12であるSiO2膜をCVD法によってGaN活性層3上に形成した後にフォトレジスト13を塗布し露光現像することによって、ソース形成領域上およびドレイン形成領域上に開口部を形成する。そして、バッファドフッ酸を用いて開口部に対応するマスク層12をエッチングし、図1(3)に示すように、開口部12sおよび開口部12dを形成する。その後、n型ドーパントであるシリコンをイオン注入法によってGaN活性層3内に注入する。この結果、開口部12s,12dにn+型ドーズ領域4a,4bが形成される。その後、溶剤を用いてフォトレジスト13を除去した後、フッ酸系水溶液を用いてマスク層12を除去する。そして、GaN活性層3上に保護膜(図示せず)を形成した後、たとえば窒素(N)雰囲気中において1300℃、5分間アニールすることによってn+型ドーズ領域4a,4bの不純物を活性化させて、図2に示すように、それぞれソース領域4s、ドレイン領域4dとする。なお、窒素雰囲気の代わりにアルゴン(Ar)などの不活性ガスを導入してn+型ドーズ領域4a,4bの不純物を活性化させてもよい。また、ソース領域4sおよびドレイン領域4dは、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の誘電体膜をマスクに使用してn+型層を成長する選択成長法または熱拡散法を用いてもよい。
【0019】
つぎに、図2に示すように、GaN活性層3の表面上にゲート絶縁膜として機能するSiO2膜5を形成する。このSiO2膜は、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)を用いたECRスパッタリング法を用いてECRスパッタ装置15において形成される。
【0020】
つぎに、SiO2膜5上にフォトレジスト(図示しない)を塗布し露光現像するフォトリソグラフィ工程後にエッチング工程を行なうことによって、図3(1)に示すように、ソース領域4s上およびドレイン領域4d上に開口部5sおよび開口部5dを形成する。
【0021】
そして、図3(2)に示すように、開口部5sおよび開口部5dからそれぞれ露出するソース領域4sおよびドレイン領域4dの上にTi/Alからなるソース電極6とドレイン電極7を形成する。ソース電極6とドレイン電極7は、電極形成領域以外の領域をフォトレジストで覆った状態でスパッタリング法やEB法によって金属を形成した後にフォトレジストを除去するリフトオフ法を用いて形成される。ソース電極6およびドレイン電極7は、それぞれp型であるGaN活性層3におけるn+型ドーズ領域4a,4bとオーミック接触する。なお、ソース電極6およびドレイン電極7は、n+型ドーズ領域4a,4bとのオーミック接触を実現できれば足りるため、Ti/Al以外の材料を用いて形成してもよい。
【0022】
そして、多結晶シリコン(poly−Si)膜を減圧(LP)CVD法やスパッタリング法を用いて素子全面に形成した後、三塩化リン(POCl3)ガス中における熱処理を行なうことによって、poly−Si膜にPのドーピングを行なう。なお、poly−Si膜への不純物のドーピングは、成膜時に不純物を含ませるほか、成膜後に熱拡散を行なうことによって行ってもよい。また、ゲート電極8は、ホウ素がドープされたpoly−Si膜、多結晶シリコンゲルマニウム(SiGe)膜、アルミニウム(Al)、金(Au)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、あるいは、これら金属のシリサイド膜などを用いて形成してもよい。
【0023】
その後、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を経ることによって、poly−Si膜をパターニングし、図3(2)に示すゲート電極8をSiO2膜5上に形成する。以上の工程を行なうことによって、基板上に積層されたGaN活性層3とゲート電極8との間にゲート絶縁膜であるSiO2膜5が形成されたMOSFET10を製造する。
【0024】
つぎに、ECRスパッタリング法を用いたゲート絶縁膜であるSiO2膜5形成工程を詳細に説明する。図2に示すECRスパッタ装置15においては、磁界中にある電子がサイクロトロン運動を行なうサイクロトロン周波数と同一の周波数を持つマイクロ波Wmを加えることによって、サイクロトロン共鳴が起こり、磁力線の周りを高速回転する電子とプラズマ室内に導入されたO2流量が多いAr−O2混合ガスにおけるガス分子との衝突により高密度のプラズマが発生する。発生したプラズマは、プラズマ流としてECR領域16から引き出され、シリコンであるターゲット17をスパッタし、GaN活性層3表面に入射してGaN活性層3上にSiO2膜5を形成する。なお、成膜温度は、MOSFETの閾値電圧の変動起因となる膜界面または膜中の固定電荷を低減した良好な膜質を得るため、400℃以上であることが望ましい。
【0025】
従来のRFスパッタリング法を用いた場合、試料に入射する粒子のエネルギーが50eV以上になり、GaN活性層を構成する原子がたたき出され、GaN活性層のダメージが大きかった。また、蒸着法を用いた場合には、入射粒子のエネルギーが0.1eV台と大変低いため、膜の密着性が悪く組成ずれが大きかった。
【0026】
これに対し、ECRスパッタリング法においては、圧力などを変えることによって試料表面に入射される粒子のエネルギーを変えることが可能である。たとえば0.01Pa台の低圧力で安定な高密度プラズマを維持することが可能であり、10〜30eV程度のエネルギーで試料表面に入射できる。したがって、ECRスパッタリング法においては、成膜に適したエネルギーを試料表面に入射する粒子に与えることができ、エネルギー制御された高密度の粒子が試料表面に入射した状態で薄膜成長が進行する。このため、ECRスパッタリング法においては、化学的に安定となる高い結合力を有する薄膜を形成することが可能であり、熱酸化法を用いて形成されたSiO2膜の膜質に近い良好な膜質を保持することができる。もちろん、ECRスパッタリング法は、表面反応を行なわないため、表面反応であるCVD法において問題となるGaN活性層表面からの窒素抜けも低減でき、さらに、CVD法における反応生成物などによる汚染が発生することもないため、良好な膜質であるSiO2膜を形成できる。
【0027】
このように、実施の形態1においては、ECRスパッタリング法を用いてゲート絶縁膜を形成するため、良好な膜質を有するゲート絶縁膜をGaN活性層上に形成することができる。
【0028】
つぎに、GaN活性層3上に形成されるSiO2膜5の等価酸化膜厚について説明する。この等価酸化膜厚(EPT)は、次式で定義される。
EOT=(εOx/εx)ds
上式において、εOxはSiO2比誘電率、εxは、ゲート絶縁膜の比誘電率、dsはゲート絶縁膜の膜厚である。
【0029】
MOSFET10におけるSiO2膜5における等価酸化膜厚の最小値は、ゲートリーク発生を抑制するため、20nm以上であることが望ましい。つぎに、等価酸化膜厚の最大値について説明する。図4に、反転キャリア密度とゲート絶縁膜の膜厚との関係を示す。反転キャリア密度は、たとえば5×1011cm-2以上と大きい方が望ましいため、図4に示すように、ゲート絶縁膜は140nm以下であることが好ましい。そして、図5にMOSFET10のピンチオフ電圧、ゲート絶縁膜および相互コンダクタンスとの関係を示す。相互コンダクタンスは大きい方が望ましく、たとえばピンチオフ電圧が10Vである場合には、正確なトランジスタ動作を行なうため1.0E+8以上である必要がある。このため、図5に示すように、ゲート絶縁膜の最大値は、オン抵抗および電界効果移動度の減少を考慮して100nm以下であることが好ましい。したがって、ゲート絶縁膜を構成するSiO2膜5の等価酸化膜厚は、20nm以上100nm以下であることが望ましい。
【0030】
また、本実施の形態1においては、ゲート絶縁膜として、エネルギーバンドギャップが9.0eVであるSiO2膜5を形成した場合について説明したが、図6(1)に示すように、エネルギーバンドギャップが8.8eVでありSiO2膜と同様にエネルギーバンドギャップが高いAl23膜5aを形成してもよい。この場合、Alであるターゲット17aを用いることによって、Al23膜5aをGaN活性層3上に形成することができる。Al23膜5aを形成した後は、図3に示す工程と同様の工程を行なうことによって、ソース電極6、ドレイン電極7およびゲート電極8を形成する。この結果、図6(2)に示すMOSFET10aを製造することができる。
【0031】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2におけるMOSFET製造方法においては、ECRスパッタリング法を用いて、GaN活性層とSiO2膜との間に、SiO2膜とともにゲート絶縁膜として機能する窒化膜を形成する。図7〜図9は、本実施の形態2におけるMOSFETの製造方法を説明する図である。
【0032】
実施の形態2におけるMOSFETの製造方法においては、図1(1)〜(3)に示す工程と同様の工程を行なった後、図7に示すように、ECRスパッタリング法を用いてGaN活性層3上にSi34膜25を形成する。この場合、窒素ガスをECR領域16に流すことによって、GaN活性層3表面にSi34膜を形成することができる。
【0033】
つぎに、図8に示すように、図2に示す場合と同様にECR領域16にO2の流量が多いAr−O2混合ガスを流すことによって、Si34膜25上にSiO2膜5を形成する。なお、ゲート絶縁膜として機能するSiO2膜5およびSi34膜25を合わせた場合の等価酸化膜厚は、実施の形態1と同様に、20nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0034】
そして、実施の形態1と同様に、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行なうことによって、図9(1)に示すように、ソース領域4s上およびドレイン領域4d上に開口部25sおよび開口部25dを形成する。その後、実施の形態1と同様に、リフトオフ法を用いることによって、ソース電極6およびドレイン電極7を形成した後、poly−Si膜の形成工程、不純物のドーピング工程、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行なってSiO2膜5上にゲート電極8を形成することによって、MOSFET20を製造する。
【0035】
従来、表面反応であるCVD法を用いてゲート絶縁膜として機能するSiO2膜をGaN活性層上に形成した場合、ラジカルに起因したGaN活性層表面からの窒素抜けのため、ゲート絶縁膜層とGaN活性層との界面状態が不安定となり、GaN活性層とゲート絶縁膜との界面準位が増加してチャネル移動度が低下するというGaN半導体層デバイス特有の問題があった。
【0036】
これに対し、実施の形態2においては、ECRスパッタリング法を用いてGaN活性層3とゲート絶縁膜であるSiO2膜5との間にSi34膜25を形成しており、CVD法におけるラジカルを用いた表面反応を行なわないため、ラジカルに起因したGaN活性層表面からの窒素抜けを抑制することが可能になる。そして、実施の形態2においては、窒素ガスを流し窒素雰囲気中においてSi34膜25を形成するためGaN活性層3における窒素が抜け出しにくく、GaN活性層表面からの窒素抜けをさらに抑制することが可能になる。また、実施の形態2においては、ECRスパッタリング法を用いてSi34膜25を形成するため、GaN活性層3とSiO2膜5との間に高膜質である窒化膜を形成することが可能になる。
【0037】
このように、実施の形態2においては、SiO2膜5とGaN活性層3との間にSi34膜25を形成することによってGaN活性層3表面からの窒素抜けを抑制することができるため、GaN活性層とゲート絶縁膜との界面順位の増加とチャネル移動度の低下とを防止した性能の高いMOSFETを製造することが可能になる。
【0038】
つぎに、GaN活性層3上に形成されるSi34膜25の膜厚について説明する。Si34膜25は、2nm以上の膜厚であれば安定して成膜できるため、2nm以上であることが好ましい。そして、Si34膜25の最大値について説明する。図10は、実施の形態2におけるMOSFET20のSi34膜25とゲートリーク開始電圧との関係を示す図である。図10における曲線l1は、ゲート絶縁膜の等価酸化膜厚が100nmである場合について示し、曲線l2は、ゲート絶縁膜の等価酸化膜厚が50nmである場合について示す。MOSFET20におけるゲート耐圧条件を満たすため、少なくともゲート電極に印加される電圧が10Vの場合にゲートリークが発生しないことが望ましい。このため、ゲート絶縁膜の等価酸化膜厚が100nmである場合には、曲線l1に示すように、Si34膜25の膜厚は、30nm以下であることが望ましい。また、等価酸化膜厚が50nmである場合には、曲線l2に示すように、Si34膜25の膜厚は、15nm以下であることが望ましい。このように、GaN活性層3上に形成されるSi34膜25の膜厚は、2nm以上30nm以下であることが好ましい。
【0039】
また、本実施の形態2においては、GaN活性層3上に形成する窒化膜としてSi34膜25を形成した場合について説明したが、これに限らずAlN膜を形成してもよい。たとえば、図11(1)に示すように、Alであるターゲット17aを用いた場合には、窒素ガスを流すことによって、GaN活性層3上にAlN膜25aを形成後、Ar−O2混合ガスを流すことによって、AlN膜25a上にAl23膜5aを形成する。そして、図9に示す工程と同様の工程を行なうことによって、ソース電極6、ドレイン電極7およびゲート電極8を形成する。この結果、図11(2)に示すMOSFET20aを製造することができる。なお、AlN膜25aの膜厚は、Si34膜と同様に、成膜可能である厚さおよびゲートリークを防止可能である厚さを考慮して決定する。
【0040】
また、図12(1)に示すように、Alのターゲット17aを用い窒素ガスを流すことによってGaN活性層3上にAlN膜25aを形成後、Siのターゲット17に交換しAr−O2混合ガスを流すことによって、AlN膜25a上にSiO2膜5を形成してもよい。そして、図9に示す工程と同様の工程を行なうことによって、ソース電極6、ドレイン電極7およびゲート電極8を形成する。この結果、図12(2)に示すMOSFET20bを製造できる。
【0041】
また、図13(1)に示すように、ターゲット17を用い窒素ガスを流すことによってGaN活性層3上にSi34膜25を形成後、Alのターゲット17aに交換しAr−O2混合ガスを流すことによって、Si34膜25上にAl23膜5aを形成してもよい。そして、図9に示す工程と同様の工程を行なうことによって、ソース電極6、ドレイン電極7およびゲート電極8を形成する。この結果、図13(2)に示すMOSFET20bを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1におけるMOSFETの製造工程を説明する図である。
【図2】実施の形態1におけるMOSFETの製造工程を示す断面図である。
【図3】実施の形態1におけるMOSFETの製造工程を示す断面図である。
【図4】反転キャリア密度と実施の形態1におけるMOSFETのゲート絶縁膜の膜厚との関係を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるMOSFETのピンチオフ電圧、ゲート絶縁膜および相互コンダクタンスとの関係を示す図である。
【図6】実施の形態1におけるMOSFETの製造工程の他の例を示す断面図である。
【図7】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程を示す断面図である。
【図8】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程を示す断面図である。
【図9】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程を示す断面図である。
【図10】実施の形態2におけるMOSFETのSi34膜25とゲートリーク開始電圧との関係を示す図である。
【図11】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程の他の例を示す断面図である。
【図12】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程の他の例を示す断面図である。
【図13】実施の形態2におけるMOSFETの製造工程の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基板
2 バッファ層
3 GaN活性層
3a 素子間分離領域
12s,12d 開口部
4a,4b n+型ドーズ領域
4s ソース領域
4d ドレイン領域
5 SiO2
5a Al23
5s,5d,25s,25d 開口部
6 ソース電極
7 ドレイン電極
8 ゲート電極
10,10a,20,20a〜20c MOSFET
15 ECRスパッタ装置
16 ECR領域
17,17a ターゲット
25 Si34
25a AlN膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバッファ層を介して積層された化合物半導体層とゲート電極との間にゲート絶縁膜が形成された半導体素子を製造する半導体素子製造方法において、
前記ゲート絶縁膜は、ECRスパッタリング法を用いて形成されることを特徴とする半導体素子製造方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜は、SiO2膜またはAl23膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子製造方法。
【請求項3】
ECRスパッタリング法を用いて前記化合物半導体層と前記SiO2膜または前記Al23膜との間に前記ゲート絶縁膜として機能する窒化膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体素子製造方法。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜の等価酸化膜厚は、20nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体素子製造方法。
【請求項5】
前記窒化膜は、Si34膜またはAlN膜であることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体素子製造方法。
【請求項6】
前記窒化膜は、2nm以上30nm以下の膜厚で形成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の半導体素子製造方法。
【請求項7】
前記化合物半導体層は、窒化物系化合物半導体を用いて形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体素子製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−112750(P2008−112750A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293026(P2006−293026)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】