説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】高性能化が必要な回路ブロックや回路部に対して応力を付加することにより、その回路ブロックや回路部の高性能化が実現できる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体チップ基板30内に少なくとも金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ36を含む回路と、この回路を含み、上部にこの回路を保護する保護膜41で覆われた回路ブロックを複数有してなる半導体装置20であって、この半導体装置20の電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックの上部のみに、少なくとも保護膜41を介して複数のバンプ23a、23b、23cが形成され、この複数のバンプ23a、23b、23cはMOSトランジスタ36に応力を付加して移動度を増加させて高性能化が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高集積化・高速化に適した半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会を迎えて、モバイル端末、パソコン、ディジタル家電等の高性能化に不可欠な半導体装置であるシステムLSIは、更なる高性能化を期待されている。この高性能化を実現する手段の一つとして素子の微細化があげられ、例えば、MOSトランジスタのゲート長が100nm以下の加工領域で行われるようになっている。
【0003】
ところで、MOSトランジスタのゲート長を微細化していくと、ソース−ドレイン間のリーク電流が増大する、いわゆる短チャネル効果が発生することが多い。この短チャネル効果は基板の不純物濃度を高くして抑制することができるが、チャネル層の不純物濃度が高くなると不純物散乱の増大により移動度が低下し、駆動電流の低下が生じる。このような課題を解決するために、ゲート直下でのチャネル層を移動するキャリアの移動度を高めて、チャネル層を流れる電流能力を増大させることが効果的である。
【0004】
従来、チャネル層を移動するキャリアの移動度を変化させて導電率を変化させる方法の一つとして、Siデバイスに機械的な歪みを印加するピエゾ効果がよく知られている。この方法は、Siデバイスのウェハ製造プロセスの終了前後でSiデバイスに機械的に適用する。このことにより、デバイス性能を改善する効果が期待できる。
【0005】
図14を用いて上記で説明したSiデバイスに適用した一例を説明する。
図14は従来の半導体装置の構成を示す概略断面図である。
図14に示すように、半導体装置10は半導体チップ1内に、電流能力およびしきい値電圧が異なる、さまざまの種類の金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ2を含んでいる。さらに、電流能力およびしきい値電圧が異なるそれぞれのMOSトランジスタ2の上部に保護膜3を介してバンプ6を形成し、このバンプ6を半導体チップ1に固定している。
【0006】
その際、MOSトランジスタ2がNチャネル(n型)MOSトランジスタの場合で、半導体装置の電流能力が所定より低く、しきい値電圧が所定より高い場合、両特性を所定値にするために、そのMOSトランジスタ2に向かって上部から力学的な圧力4を加えて固定する。そうすることにより、両特性に変動を起こすことができ、つまり、MOSトランジスタ2の電流能力が高く、しきい値電圧が所定より低くなる現象が発生する。そうすることで所定の望むべきMOSトランジスタの電気特性が得ることが可能となり、MOSトランジスタ2の電気特性制御、すなわちMOSトランジスタの電流能力やしきい値電圧を制御することが可能となる。また、MOSトランジスタ2に加える圧力4または張力5を変化させる、すなわち圧力の絶対値を変化させることで電気特性値が変化する為、所定の電気特性が得られない場合はその圧力4または張力5を変化させ制御することが可能である。
【0007】
さらに、その際、MOSトランジスタ2の上部にバンプ6を形成すると効果的である。すなわち、バンプ6を形成する利点としてはこのバンプ6が押しボタンのような役割を果たし、圧力4や張力5の力をダイレクトにMOSトランジスタ2に伝えることが可能となる。そうすることでパッド全体よりMOSトランジスタ2に圧力が伝わり、ピンポイントで力が伝わることなく均一に負荷をかけることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、半導体パッケージの構造を工夫して半導体チップとパッケージとの接触面に少なくとも1つの凹凸面を設けて、半導体チップ全体に応力をかけることにより半導体チップの特性が改善された例がある(例えば、特許文献2参照)。なお、半導体チップ全体に応力をかける手段として、半導体チップが搭載されたパッケージを封じる時のガス圧または液体圧も用いられている。
【0009】
さらに、半導体パッケージに凸状のステージを設け、このステージ上に半導体チップをマウントすることにより、半導体チップ主面に引張応力を加えて高移動度の半導体チップが実現された例も示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−24853号公報
【特許文献2】特開昭64−15957号公報
【特許文献3】特開昭52−120776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の半導体装置では、いずれも半導体チップ全体に引張応力や圧縮応力が印加される、あるいは、トランジスタの要求する電流能力やしきい値電圧を考慮することなく引張応力や圧縮応力を印加するためにバンプが一律に配置されることが一般的に示されていることに留まっている。微細化が急速に進められている半導体技術においては、高集積化された半導体チップに搭載されるトランジスタの数は膨大なものとなり、トランジスタなどの回路素子はそれぞれの機能ごとに回路ブロックとしてまとめられている。さらに、この回路ブロックの中でもそれぞれの動作ごとに回路部がまとめられている。したがって、このような半導体チップ全体に引張応力や圧縮応力を一様に印加すると、回路ブロックや回路部によっては性能が低下する、あるいは引張応力や圧縮応力により信頼性が低下するなどの問題が生じていた。また、一部の回路ブロックや回路部に引張応力や圧縮応力を印加するために、半導体チップ全体に外部から多大な引張応力や圧縮応力を印加しなければならないという問題点もあった。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックや回路部のみに対して、適切な位置に適切な方向の応力を付加することにより、その回路ブロックや回路部の高性能化が実現できる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の半導体装置は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置であって、前記半導体単結晶層に形成された前記回路ブロックの上部全面に形成される保護膜と、前記保護膜を介して前記回路ブロック上に形成される1または複数のバンプとを有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする。
【0013】
この構成により、回路ブロックの上部から高性能化が必要なMOSトランジスタに保護膜を介して応力が効果的な方向に付加されて、MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度が向上しさらに性能が改善される。
【0014】
また、請求項2記載の半導体装置は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置であって、前記回路ブロックのうちのあらかじめ設定した前記回路ブロックに隣接した位置に前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置して形成される評価回路部と、前記半導体単結晶層に形成された前記回路ブロックおよび前記評価回路部の上部全面に形成される保護膜と、前記保護膜を介して前記回路ブロック上に形成される1または複数のバンプとを有し、前記バンプが前記評価回路部の電気的特性の測定により電気的特性の向上が必要であると判定された前記回路ブロックの前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする。
【0015】
この構成により、評価回路部で評価されたMOSトランジスタの電気的特性値があらかじめ設定した設計値に到達しないときに、上記MOSトランジスタと電気的特性が対応する回路ブロックの上部から高性能化が必要なMOSトランジスタに対して、バンプを形成することにより応力が印加される。そうすると、MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度が向上し電気的特性値が改善されて、MOSトランジスタは、さらに設計値に近い電気的特性値を実現することができる。さらに、この構成によりMOSトランジスタに付加する応力を半導体チップごとに変化させて定量的に調整することができ、半導体チップごとに必要十分な応力を付加することにより、電気的特性が設計値に到達したバラツキの少ない半導体装置をさらに再現性よく実現することができる。
【0016】
請求項3記載の半導体装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置において、前記MOSトランジスタがn型MOSトランジスタであることを特徴とする。
請求項4記載の半導体装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置において、前記MOSトランジスタがp型MOSトランジスタであることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の半導体装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置において、前記MOSトランジスタがC−MOS構成からなることを特徴とする。
これらの構成により、MOSトランジスタの構成によらず、各タイプに応じて設定値と電気的測定値との差を定量的に把握し、この差を補正するようにバンプの作製条件などを様々な場合に応じて設定してバンプを配置することにより、その場合のMOSトランジスタに必要な最適な応力の値を設定することができる。
【0018】
請求項6記載の半導体装置は、請求項3または請求項5のいずれかに記載の半導体装置において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[100]または[010]方向であることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の半導体装置は、請求項3または請求項5のいずれかに記載の半導体装置において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]または[−110]方向であることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の半導体装置は、請求項4または請求項5のいずれかに記載の半導体装置において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記p型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向であることを特徴とする。
【0021】
これらの構成により、効率的にキャリアの移動度が向上する結晶軸の方向とチャネル層の中を流れる電流の方向とを適切に選択して引張応力や圧縮応力などの応力を付加することにより、さらに半導体装置の性能は向上することができる。すなわち、高速、大電流または低消費電流動作が可能となる。
【0022】
請求項9記載の半導体装置は、請求項6または請求項7のいずれかに記載の半導体装置において、ゲート電極方向から印加される圧縮応力であることを特徴とする。
この構成により、回路ブロックの上部から高性能化が必要なn型MOSトランジスタのチャネル層に圧縮応力が効果的な方向に印加されて、n型MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度がさらに向上し性能が改善される。
【0023】
請求項10記載の半導体装置は、請求項6または請求項7のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする。
【0024】
請求項11記載の半導体装置は、請求項6記載の半導体装置において、前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする。
【0025】
これらの構成により、回路ブロックの上部から高性能化が必要なn型MOSトランジスタのチャネル層に対して、半導体基板表面に平行な方向の応力が効果的な方向に付加されることにより、n型MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度がさらに向上し性能が改善される。
【0026】
請求項12記載の半導体装置は、請求項8記載の半導体装置において、前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする。
【0027】
請求項13記載の半導体装置は、請求項8記載の半導体装置において、前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする。
【0028】
請求項14記載の半導体装置は、請求項10または請求項12のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプの材料は熱膨張係数が前記保護膜の材料よりも大きく、前記バンプを高温で前記保護膜上に配置したのち冷却することにより前記引張応力が加えられることを特徴とする。
【0029】
この構成により、性能を改善したいn型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ピエゾ効果が大きくなり移動度が増大するように引張応力が効率的に印加されるので、半導体装置の性能はさらに向上することができる。
【0030】
請求項15記載の半導体装置は、請求項9から請求項13のいずれかに記載の半導体装置において、前記保護膜上の前記チャネル層に隣接する位置に凹部を設け、前記凹部上に前記バンプを配置することにより、前記凹部の前記チャネル層側の斜面に前記バンプによる圧縮方向の応力が加わり、前記圧縮応力または前記引張応力が加えられることを特徴とする。
【0031】
この構成により、性能を改善したいn型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ピエゾ効果が大きくなり移動度が増大するように圧縮応力が効率的に印加されるので、半導体装置の性能はさらに向上することができる。
【0032】
請求項16記載の半導体装置は、請求項15に記載の半導体装置において、前記バンプは、応力を加える前記MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする。
【0033】
請求項17記載の半導体装置は、請求項15に記載の半導体装置において、前記バンプは、応力を加える前記MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする。
【0034】
これらの構成により、n型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ソースとドレイン方向またはソースとドレイン方向に対して直交する方向に引張応力や圧縮応力などの応力をさらに一層効果的に印加することができる。
【0035】
請求項18記載の半導体装置は、請求項1から請求項17のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプは、前記回路ブロックの入出力回路部の上部、隣接領域または隣接する回路部に配置されることを特徴とする。
【0036】
請求項19記載の半導体装置は、請求項1から請求項18のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプは、前記回路ブロックの上部、隣接領域または隣接する回路ブロックに配置されることを特徴とする。
【0037】
請求項20記載の半導体装置は、請求項1から請求項19のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプは、前記基板または半導体チップの入出力回路部の上部、隣接領域または隣接する回路部に配置されることを特徴とする。
【0038】
これらの構成により、個別に性能を改善したい回路ブロックや回路部を構成するn型MOSトランジスタに対して、そのチャネル層に効率的に引張応力または圧縮応力を印加して半導体装置の性能をさらに向上することができる。
【0039】
請求項21記載の半導体装置は、請求項1から請求項20のいずれかに記載の半導体装置において、前記バンプは、前記MOSトランジスタの、前記ソースとドレイン方向または前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に対して直線状の列として配置されることを特徴とする。
【0040】
この構成により、n型MOSトランジスタのソースとドレイン方向またはソースとドレイン方向に対して直交する方向に引張応力または圧縮応力が効率的に印加されるので、半導体装置の性能はさらに向上することができる。
【0041】
また、上記目的を達成するために、請求項22記載の半導体装置の製造方法は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置の製造方法であって、前記MOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、前記MOSトランジスタの上部に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を隔てて形成された保護膜を介して前記回路ブロック上に1または複数のバンプを形成する工程とを有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする。
【0042】
この構成により、回路ブロックの上部から高性能化が必要なMOSトランジスタのチャネル層に対して応力が効果的な方向に付加されて、MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度が向上しさらに性能が改善される。
【0043】
請求項23記載の半導体装置の製造方法は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置の製造方法であって、前記MOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、前記回路ブロックのうちのあらかじめ設定した前記回路ブロックに隣接した位置に前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置して評価回路部を形成する評価回路部形成工程と、前記MOSトランジスタの上部に絶縁膜を形成する工程と、前記評価回路部に形成された前記MOSトランジスタの電気的特性値を検査する検査工程と、前記MOSトランジスタの前記電気的特性値とあらかじめ設定した設計値とを比較する比較工程と、前記電気的特性値が前記設計値より小さい場合に前記評価回路部に隣接する前記回路ブロックの上部に前記絶縁膜を隔てて形成された保護膜を介して1または複数のバンプを形成するバンプ形成工程とを有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする。
【0044】
この構成により、評価回路部で評価されたMOSトランジスタの電気的特性値があらかじめ設定した設計値に到達しないときに、上記MOSトランジスタと電気的特性が対応する回路ブロックの上部から高性能化が必要なMOSトランジスタに対して、バンプを形成する工程により応力が付加される。そうすると、MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度が向上し電気的特性値が改善されて、さらに設計値に近い許容範囲内の電気的特性値を実現することができる。
【0045】
請求項24記載の半導体装置の製造方法は、請求項23に記載の半導体装置の製造方法において、前記設定値と前記電気的特性値との差から増加させるべき移動度の大きさを求める数値目標設定工程をさらに有し、前記バンプ形成工程において、増加させるべき前記移動度の値に応じてバンプの形状、材質、配置位置または作製条件を制御して、前記MOSトランジスタに付加する応力の値を最適化することを特徴とする。
この構成により、設定値と電気的測定値との差を定量的に把握し、この差を補正するようにバンプの作製条件などを様々な場合に応じて設定することにより、その場合のMOSトランジスタに必要な最適な応力の値を設定することができる。
【0046】
請求項25記載の半導体装置の製造方法は、請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記MOSトランジスタは、n型MOSトランジスタからなることを特徴とする。
【0047】
請求項26記載の半導体装置の製造方法は、請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記MOSトランジスタは、p型MOSトランジスタからなることを特徴とする。
【0048】
請求項27記載の半導体装置の製造方法は、請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記MOSトランジスタは、C−MOS構成からなることを特徴とする。
【0049】
これらの構成により、MOSトランジスタがn型、p型またはC−MOS構成のどのタイプであっても、各タイプに応じて設定値と電気的測定値との差を定量的に把握し、この差を補正するようにバンプの作製条件などを様々な場合に応じて設定することにより、その場合のMOSトランジスタに必要な最適な応力の値を設定することができる。
【0050】
請求項28記載の半導体装置の製造方法は、請求項27記載の半導体装置の製造方法において、前記C−MOS構成のn型MOSトランジスタの数値目標は、前記回路ブロックの設計段階において、前記バンプにより付加する応力で増加する移動度を見込んだ値とすることを特徴とする。
【0051】
請求項29記載の半導体装置の製造方法は、請求項27記載の半導体装置の製造方法において、前記C−MOS構成のp型MOSトランジスタの数値目標は、前記回路ブロックの設計段階において、前記バンプにより付加する応力で増加する移動度を見込んだ値とすることを特徴とする。
【0052】
これらの構成により、回路ブロックの設計段階において従来の設計段階では見込めない大きい移動度を見込むことができるので、従来よりもさらに高性能の回路ブロックを設計することができ製作することができる。
【0053】
請求項30記載の半導体装置の製造方法は、請求項25、請求項27または請求項28のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[100]方向または[010]方向となるように、前記n型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする。
【0054】
請求項31記載の半導体装置の製造方法は、請求項25、請求項27または請求項28のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向または[−110]方向となるように、前記n型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする。
【0055】
これらの構成により、ピエゾ効果が大きい結晶軸の方向にn型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向を構成し、さらにn型MOSトランジスタを高性能化して回路ブロックの中で動作させることができる。
【0056】
請求項32記載の半導体装置の製造方法は、請求項25、請求項27、請求項28、請求項30または請求項31のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ゲート電極方向から印加される圧縮応力であることを特徴とする。
【0057】
請求項33記載の半導体装置の製造方法は、請求項25、請求項27、請求項28、請求項30または請求項31のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする。
【0058】
請求項34記載の半導体装置の製造方法は、請求項25、請求項27、請求項28、請求項30のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする。
【0059】
これらの構成により、n型MOSトランジスタにピエゾ効果が大きくなり移動度が増大するように応力を印加し、n型MOSトランジスタで構成される回路部や回路ブロックをさらに高性能化することができる。
【0060】
請求項35記載の半導体装置の製造方法は、請求項26、請求項27または請求項29のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記p型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向または[−110]方向となるように、前記p型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする。
【0061】
この構成により、ピエゾ効果が大きい結晶軸の方向にp型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向を構成し、さらにp型MOSトランジスタを高性能化して回路ブロックの中で動作させることができる。
【0062】
請求項36記載の半導体装置の製造方法は、請求項26、請求項27、請求項29または請求項35のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする。
【0063】
請求項37記載の半導体装置の製造方法は、請求項26、請求項27、請求項29または請求項35のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される引張応力であることを特徴とする。
【0064】
これらの構成により、p型MOSトランジスタにピエゾ効果が大きくなり移動度が増大するように応力を印加し、p型MOSトランジスタで構成される回路部や回路ブロックをさらに高性能化することができる。
【0065】
請求項38記載の半導体装置の製造方法は、請求項33または請求項37のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプの材料は熱膨張係数が前記保護膜の材料よりも大きく、前記バンプを高温で前記保護膜上に配置したのち冷却することにより前記引張応力が加えられることを特徴とする。
【0066】
この構成により、n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ソースとドレイン方向またはソースとドレイン方向に対して直交する方向にさらに効果的に引張応力を印加することができる。
【0067】
請求項39記載の半導体装置の製造方法は、請求項34または請求項36のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記保護膜上の前記バンプを配置する位置に凹部を設け、前記凹部の前記チャネル層側の斜面に前記バンプによる圧縮方向の応力を加えることにより、前記圧縮応力が加えられることを特徴とする。
【0068】
この構成により、n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ソースとドレイン方向またはソースとドレイン方向に対して直交する方向にさらに効果的に圧縮応力を印加することができる。
【0069】
請求項40記載の半導体装置の製造方法は、請求項38または請求項39のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプは、応力を加える前記n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする。
【0070】
請求項41記載の半導体装置の製造方法は、請求項38または請求項39のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプは、応力を加える前記n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする。
【0071】
これらの構成により、n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ソースとドレイン方向またはソースとドレイン方向に対して直交する方向に引張応力や圧縮応力などの応力をさらに一層効果的に印加することができる。
【0072】
請求項42記載の半導体装置の製造方法は、請求項23から請求項41のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記バンプは、前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと対応する前記評価回路部のMOSトランジスタに同一の構成で形成することを特徴とする。
【0073】
この構成により、評価回路部のMOSトランジスタの電気的特性を検査することにより、回路ブロックに形成したMOSトランジスタの電気的特性をさらに正確に把握することができる。
【0074】
請求項43記載の半導体装置の製造方法は、請求項23から請求項42のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記回路形成工程において、前記評価回路部の一部が前記基板上の半導体チップを形成する領域の外側に形成されることを特徴とする。
【0075】
この構成により、基板上の面積を効率的に利用することができ、例えば評価回路部の一部を半導体チップの間を分離するスクライブライン上や基板の周辺領域に形成することにより、1枚の基板からさらに効率的に多くの数量の半導体チップが得られることとなる。
【0076】
請求項44記載の半導体装置の製造方法は、請求項22から請求項43のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記基板を樹脂封止する封止工程をさらに備え、前記バンプに加えられた前記応力を固定または増加させることを特徴とする。
この構成により、n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層に対して適切に印加された応力を効果的に固定または増加させて、半導体装置の性能をさらに向上することができる。すなわち、このような製造方法で作製された半導体装置は、さらに高速、大電流または低消費電流動作が可能となる。
【0077】
以上により、電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックや回路部のみに対して、適切な位置に適切な方向の応力を付加することにより、その回路ブロックや回路部の高性能化が実現できる。
【発明の効果】
【0078】
本発明の半導体装置は、保護膜の上部の適切な位置にバンプを形成することにより、電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックを構成するn型MOSトランジスタのみのチャネル層に対して、適切な方向に応力を加えることにより、n型MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度を向上させるものである。その結果、高速、大電流または低消費電流動作が可能となり、半導体装置の性能がさらに改善されることとなる。
【0079】
さらに、本発明の半導体装置の製造方法は、回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置した評価回路部を設けることにより、電気的特性値の改善が必要な回路ブロックを明確にし、その回路ブロックを構成するn型またはp型MOSトランジスタのチャネル層に対して保護膜の上部から適切な方向に応力を加える。このことにより、n型またはp型MOSトランジスタにおけるチャネル層のキャリアの移動度を向上させて、これらのMOSトランジスタで構成される回路ブロックの性能を向上させるものである。その結果、高性能化が必要な回路ブロックや回路部に対してのみ応力を付加することにより、その回路ブロックや回路部の高性能化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
以下、本発明の実施の形態にかかる半導体装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
(第1の実施の形態)
図1から図6は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0081】
図1は本発明の第1の実施の形態の半導体装置の概略構成図、図2は第1の実施の形態の半導体装置におけるバンプによる引張応力の印加を説明する回路模式図、図3は第1の実施の形態におけるn型MOSトランジスタのゲートの形成方向を示す図、図4は結晶軸方向による印加応力と移動度の関係を説明するためのトランジスタ断面図、図5は第1の実施の形態における凹部上に形成されたバンプを備える半導体装置の構成を示す図、図6は第1の実施の形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0082】
図1に本発明の第1の実施の形態の半導体装置20の概略構成図を示す。図1(a)は本実施の形態の半導体装置のチップ表面を上から見た概略構成図、図1(b)は図1(a)の破線の丸で囲んだ部分の半導体装置の構成をA−A線の断面から見た概略断面図であり、バンプの構成の説明に用いる。
【0083】
図1(a)において、半導体装置20、例えば、システムLSIのチップ表面21には複数の回路ブロックが配置されている。主な回路ブロックは、メモリ部24、MPU(Micro Processor Unit)部25、入出力コントロール(以下IOCとする)部26、プログラマブル論理機能部27、入出力回路部28およびその他の回路部29である。
【0084】
半導体チップ基板30上に形成された半導体装置20内のこれらの回路ブロックは、少なくとも金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含む回路部がある。図1(a)ではメモリ部24、IOC部26、プログラマブル論理機能部27、入出力回路部28の各回路ブロックの上部に複数のバンプ23が配置されている。これらの回路ブロックの上部に複数のバンプ23を配置することにより、これらの回路ブロックの一部を構成しているn型MOSトランジスタのチャネル層に対して、ゲート電極方向から圧縮応力、ソースとドレイン方向に引張応力を加える。ここで引張応力が加わるのは、バンプ23を配置するときのバンプ23の温度が高いために、その後バンプ23自体が冷えて収縮することにより、直下の保護膜を引っ張り、n型MOSトランジスタのチャネル層に対してソースとドレイン方向に引張応力を加えることとなる。これらの圧縮応力や引張応力を加えることにより、チャネル層を移動するキャリアの移動度を速めて、n型MOSトランジスタの高速、大電流または低消費電流動作を可能として、半導体装置20の性能が向上することとなる。
【0085】
次に、半導体装置20の主な構成について図1(b)の概略断面図を用いて説明する。
図1(b)は図1(a)のA−A線の断面から半導体装置20の破線の丸22で囲んだバンプ23間の概略断面図を示している。ここでは、例えば、p型の導電性を示す半導体チップ基板30の表面近傍にn型の導電性を示すソース領域31とドレイン領域32が形成されており、このソース領域31とドレイン領域32に挟まれた領域の半導体チップ基板30の表面近傍にn型のチャネル層33が形成されている。このn型のチャネル層33を流れる電流は酸化膜34を介してゲート電極35に印加する電圧により制御している。図1(b)には、このような構成のn型MOSトランジスタ36としてn型MOSトランジスタ36a,n型MOSトランジスタ36b,n型MOSトランジスタ36cの3素子が並列に並んでおり、このn型MOSトランジスタ36は酸化膜37により隣接する素子と隔てられて素子分離がなされている。さらに、半導体チップ基板30の表面は保護酸化膜38で覆われ、ソース領域31およびドレイン領域32にはそれぞれソース電極39およびドレイン電極40が形成されている。なお、ソース電極39は半導体チップ基板30の表面の一部42と電気的に接続されてグランドに接続されている。このように形成されたn型MOSトランジスタ36を含む回路の上部を保護膜41で覆い、n型トランジスタ36cのゲート電極上の保護膜41上部にバンプ23cが配置されてn型トランジスタ36cにゲート電極方向から圧縮応力を付加している。
【0086】
すなわち、図1(b)には少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板、ここでは半導体チップ基板30を使用している。この半導体単結晶層には金属酸化物半導体(MOS)トランジスタ36(ここでは、n型MOSトランジスタ)を含む回路と、この回路を含み、上部にこの回路を保護する保護膜41で覆われた回路ブロックを複数有してなる半導体装置20の一部分が図1(b)に示されている。この半導体装置20の回路ブロックの上部に、少なくとも保護膜41を介して複数のバンプ23a、23b、23cが形成され、この複数のバンプ23a、23b、23cはMOSトランジスタ36に応力を付加して移動度を増加させる構成となっている。
【0087】
なお、この保護膜41の上部にn型MOSトランジスタ36cを挟むように左右にバンプ23a、23bが配置されている。これらのバンプ23a、23bは室温よりも高温で配置されるので、その後室温まで冷えるときにバンプ23a、23b自体がその下にある保護膜41よりも大きく収縮する。すなわち、バンプ23a、23bを左右に配置して保護膜41を上部から左右に引っ張ることにより、n型MOSトランジスタ36cのソースとドレイン方向に引張応力を印加することができる。このことはバンプ23a、23bの材料の熱膨張係数が保護膜41の材料の熱膨張係数よりも大きいことにより生じる。そして、バンプ23a、23bは保護膜41よりも高温で保護膜41上に配置されたのち、その熱がバンプ23a、23bから保護膜41などに逃げて、バンプ23a、23bが冷却されることで保護膜41にバンプ23a、23bから引張応力が付加される。この保護膜41に付加される引張応力はMOSトランジスタ36cのソースとドレイン方向に保護膜41を介して付加されることとなる。例えば、バンプ23a、23bをAlなどの金属材料で構成し、保護膜41はSiOなどの酸化膜やSiなどの窒化膜で構成すると、金属材料の熱膨張係数が、酸化膜や窒化膜の材料の熱膨張係数よりも大きいので上記の説明のように引張応力が加わることとなる。なお、バンプ23a、23bは保護膜41上に配置する前に予熱されたのち、室温で準備された半導体基板30上に配置される。
【0088】
したがって、電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックや回路部のチャネル層33上部や周辺部の適切な位置にバンプ23を設けることにより、チャネル層33に圧縮応力や引張応力を加えることができ、チャネル層33を移動するキャリアの移動度を速めて、n型MOSトランジスタ36の高速、大電流または低消費電流動作を可能として、半導体装置20の性能が向上することとなる。
【0089】
図2に一例として、チップ表面21のバンプ23aおよびバンプ23bの近傍に形成されたn型MOSトランジスタを含む回路の模式図を示す。図2(a)はn型MOSインバータを並列に形成した回路例の模式図であり、(b)はCMOSインバータを並列に形成した回路例の模式図である。
【0090】
図2(a)でチップ表面21のバンプ23aからバンプ23bの間に複数のn型MOSインバータ回路が並列に構成されている。すなわち、各n型MOSインバータ回路は、n型MOSトランジスタ36のソース側に、電源電圧Vdd43に接続された負荷抵抗R44が接続された回路構成となっている。なお、n型MOSトランジスタ36のドレイン側はグランド45に接続されている。ここで図2(a)には示されていないが、n型MOSトランジスタ36のソースとドレイン方向は、バンプ23aとバンプ23bを結ぶ方向となっている。
【0091】
入力信号は、Vin端子46からn型MOSトランジスタ36のゲート側から入力され、出力信号はソース側のVout端子47から出力される。このときに、バンプ23aとバンプ23bは図2(a)に示すようにチップ表面21の保護膜(図示していない)上に配置されて、保護膜を上部から押すことにより、バンプ23aとバンプ23bの間の保護膜を引っ張ることになり、引張応力を発生させる。したがって、図2(a)に示す矢印48a、48bの方向に引張応力が印加され、n型MOSトランジスタ50のソースとドレイン方向に印加されることとなる。なお、n型MOSトランジスタ50上の保護膜の上部にバンプ(図示していない)を配置して、n型MOSトランジスタ50のチャネル層(図示していない)に対してゲート電極方向から圧縮応力を印加することもできる。
【0092】
同様に図2(b)でチップ表面21のバンプ23aからバンプ23bの間に複数のCMOSインバータ回路が並列に構成されている。すなわち、各CMOSインバータ回路は、p型MOSトランジスタ49のソース側が電源電圧Vdd43に接続され、n型トランジスタ50のドレイン側がグランド45に接続されている。なお、図2(b)には示されていないが、n型MOSトランジスタ50のソースとドレイン方向は、バンプ23aとバンプ23bを結ぶ方向となっている。
【0093】
入力信号は、Vin端子46からC−MOSトランジスタ51のp型MOSトランジスタ49およびn型MOSトランジスタ50のゲート側から入力され、出力信号はp型MOSトランジスタ49のドレイン側とn型MOSトランジスタ50のソース側とを結んだ出力端子であるVout端子47から出力される。このときに、バンプ23aとバンプ23bは図2(b)に示すようにチップ表面21の保護膜上に配置されて、保護膜を上部から押すことにより、バンプ23aとバンプ23bの間の保護膜を引っ張ることになり、引張応力を発生させる。したがって、図2(a)と同様に図2(b)に示す矢印48a、48bの方向に引張応力が印加され、n型MOSトランジスタのソースとドレイン方向に印加されることとなる。
【0094】
図2(a)および(b)で示したように各回路ブロックの回路を構成するn型MOSトランジスタのゲートの長さ方向に引張応力を印加することにより、ゲート電極直下のキャリア層中を移動するキャリア(ここでは電子)の移動度を向上させて、半導体装置の高速、大電流または低消費電流動作を可能とする。なお、n型MOSトランジスタの上の保護膜の上部にバンプを配置して、n型MOSトランジスタのチャネル層に対してゲート電極方向から圧縮応力を印加しても同様の効果が得られる。
【0095】
図3に(001)Si基板上でのn型MOSトランジスタのゲートの形成方向を示す。
図3で、回路ブロック上から圧縮応力や引張応力を印加してn型MOSトランジスタのチャネル層中を移動するキャリアの移動度を効果的に向上させるためには、n型MOSトランジスタのソースとドレイン方向が特定の結晶軸の方向になるように作製する必要がある。すなわち、図3に示すように従来の結晶軸の方向に作製したMOSトランジスタ52は、(001)Si基板53上においてソースとドレイン方向であるゲートの長さ方向54が[110]または、[110]に直交する[−110]方向(以下、[110]座標系の方向とする)となるように配置される。このような方向に配置するとSi基板のへき開が容易で加工がし易い。そして、[110]または[−110]の方向にキャリアを流す。
【0096】
しかしながら、近年、半導体プロセスの微細化が100nmを下回る時代に突入すると、電流駆動力を向上する必要性から、より高い移動度を見込むことが期待できる[100]または[010]方向(以下、[100]座標系の方向とする)にMOSトランジスタ55のソースとドレイン方向であるゲートの長さ方向を配置する構造が検討されている。さらに、これらのMOSトランジスタを形成した回路ブロックの上部からチャネル層中のキャリアが移動する方向に圧縮応力や引張応力を印加すると、従来作製していた方向よりも大きいピエゾ効果が期待でき、移動度がより向上する。なお、従来の[−110]と[010]の方向がなす角度αは、[110]と[100]の方向がなす角度αと同じで45度の角度を成している。
【0097】
図4(a)および図4(b)に従来の結晶軸の方向に作製したMOSトランジスタ55と移動度がより向上する新たな結晶軸の方向に作製したMOSトランジスタ52の断面構造の模式図を示す。
【0098】
図4(a)および図4(b)において、いずれもp型のSi基板56の表面近傍にn型のソース領域57とn型のドレイン領域58が形成され、酸化膜59を挟んでゲート電極60が形成されている。このゲート電極60に印加される電圧により、チャネル層61中を移動するキャリアの量、すなわち電流を制御している。MOSトランジスタ55および52はチャネル層61中を流れる電流の方向だけが異なり、それぞれ[100](図4(a))および[110](図4(b))の方向に電界が印加されてキャリアが移動する。
【0099】
さて、一般的に応力が付加されたときのピエゾ効果による抵抗率の変化は、次のように表現できる。
【0100】
【数1】

【0101】
ここでΔ11〜Δ12は抵抗率の変化を表す2階のテンソルを表し、σ11〜σ12は応力を表す2階のテンソルを表す。また、これらの2階のテンソルを結びつける4階のテンソル量は、抵抗率の変化と応力を関係づけるピエゾ係数Π11、Π12、Π44などからなる行列である。
【0102】
また、数1の行列式を具体的に展開して整理すると以下の数2となる。
【0103】
【数2】

【0104】
ここでρは抵抗率を表す。図4(a)の場合にn型MOSトランジスタのキャリアである電子の移動度μと抵抗率ρを関係付けて数式を展開したものが以下の数3である。
【0105】
【数3】

【0106】
この数3に従来からよく知られたピエゾ係数(例えば、C.S.Smith:Phys.Rev.B vol.94(1954)p.42参照)を代入したものを数4に示す。
【0107】
【数4】

【0108】
また、同様に図4(b)の場合にn型MOSトランジスタのキャリアである電子の移動度μと抵抗率ρを関係付けて数式を展開したものが以下の数5である。
【0109】
【数5】

【0110】
この数5に従来からよく知られたピエゾ係数を代入したものを数6に示す。
【0111】
【数6】

【0112】
なお、数1から数6での応力を表す2階のテンソルσ11、σ22、σ33はそれぞれソースとドレイン方向にかかる応力、ソースとドレイン方向に直交する方向にかかる応力、ゲートに垂直上方からかかるゲート電極方向の応力を示している。また、これらの応力を表すテンソルσ11、σ22、σ33は互いに直交する関係にある。また、引張応力の場合のテンソルσ11、σ22、σ33の符号は+、圧縮応力の場合の符号は−となる。
【0113】
したがって、上記の内容を考慮して応力が付加されたときの、n型MOSトランジスタの移動度の変化の数4と数6を見る。すなわち、数4は[100]座標系に対応し、数6は[110]座標系に対応している。これらの[100]座標系および[110]座標系の両座標系において、ゲート電極方向から圧縮応力が加わると顕著に移動度が増加することがわかる。また、[100]座標系においてソースとドレイン方向に直交する方向に圧縮応力が加わった場合も、顕著に移動度が増加することがわかる。さらに、ソースとドレイン方向に引張応力が加わった場合は、[110]座標系では移動度が顕著に増加し、[100]座標系では移動度はさらに2から3倍に著しく増加する。また、[010]座標系は[100]座標系と同様の応力で移動度を増し、[−110]座標系は[110]座標系座標系と同様の応力で移動度を増す。
【0114】
このことからも、チャネル層の中を流れる電流の方向がシリコン層の[100]座標系の方向に構成すると、n型MOSトランジスタのソースとドレイン方向に引張応力、ゲート電極方向およびソースとドレイン方向から圧縮応力を印加すれば、効率的かつ効果的に移動度を増加することができ、半導体装置の性能が向上できる。すなわち、移動度を増加させて抵抗率を下げるので、半導体装置の高速、大電流または低消費電流動作が可能となる。
【0115】
図5にn型MOSトランジスタのソースとドレイン方向に直交する方向に圧縮応力が加わる場合の一例について説明する。図5は本発明の実施の形態において、半導体装置の一部であるn型MOSトランジスタがソースとドレイン方向に並んだ部分の構成の模式図を示す。
【0116】
図5(a)に示すように、チップ表面21の保護膜(図示していない)の下にはゲート電極35、ソース電極39およびドレイン電極40からなるn型MOSトランジスタ36が並んで形成されている。
【0117】
さらに、図5(a)に示すように、チップ表面21にはn型MOSトランジスタ36を挟むように直線状の凹部65、66が平行に形成されている。この凹部65、66は、底面67および斜面68で構成されている。この凹部65、66の一部の上にバンプ69がn型MOSトランジスタ36を挟んで図5(a)に示すように配置される。
【0118】
図5(b)は図5(a)のB−B線の断面から凹部65、66上の一対のバンプ69に挟まれたn型MOSトランジスタ36を含む領域を見た概略断面図を示す。図5(b)で半導体チップ基板30にはn型MOSトランジスタのチャネル層33が形成されてその直上にはゲート電極35が形成されている。そして、半導体チップ基板30およびゲート電極35を覆うように保護膜41が形成されている。保護膜41の表面には凹部65、66が形成されて、その上にはバンプ69が実装されて上部より圧縮応力が加えられている。したがって、例えば、凹部65の斜面68には矢印70で示した斜面に垂直な方向に圧縮応力が加わることとなり、この圧縮応力のチップ表面21に平行な成分によりチャネル層33にソースとドレイン方向の圧縮応力が印加されることとなる。
【0119】
すなわち、圧縮応力はn型MOSトランジスタのチャネル層を挟んでソースとドレイン方向に直交する方向に配置された一対の(2個の)バンプを保護膜上に密着して配置することにより加えられる。そして、保護膜上のバンプを配置する位置に凹部を設け、凹部のチャネル層側の斜面にバンプによる圧縮方向の応力を加えることにより、ソースとドレイン方向の圧縮応力がチャネル層に加えられることとなる。
【0120】
次に、本実施の形態で示した半導体装置20の製造方法について図6に示す。図6は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板を用い、この半導体単結晶層に金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置の製造方法について示している。本発明の半導体装置の製造方法は、その一例を図6(a)から図6(d)までに順に示しているが、MOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、MOSトランジスタの上部に絶縁膜を形成する工程とを有している。さらに、本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜を隔てて形成された保護膜上に複数のバンプを形成して、複数のバンプが少なくともこの保護膜を介してMOSトランジスタに応力を付加して移動度を増大させるバンプ形成工程を有する。
【0121】
なお、図6(a)から図6(d)までの本発明における半導体装置20の製造方法の一例を順に詳細に示す。図6(a)および図6(b)はMOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程を示す。
【0122】
図6(a)に示すようにp型の導電性を示す半導体チップ基板30の表面に、例えばイオン注入とアニールによりn型のソース領域31およびn型のドレイン領域32ならびにチャネル層33が形成される。さらに、n型MOSトランジスタ36の素子間の分離のために酸化膜37が形成される。次に図6(b)に示すように半導体チップ基板30の表面を保護する保護酸化膜38とゲート酸化膜34およびゲート電極35を、例えばSiO酸化膜堆積のためのCVD法や、電極蒸着、フォトリソグラフィおよびエッチング等により形成する。
【0123】
加えて、図6(c)に示すようにn型MOSトランジスタ36の上部に、例えばCVD法により保護膜41を形成している。
そして、図6(d)に示すようにn型MOSトランジスタ36の保護膜41上に、例えばワイヤボンダーなどによりバンプ23a、23bを形成して、回路ブロックのn型MOSトランジスタは、ソースとドレイン方向に引張応力を加えられるように作製される。このときにバンプ23a、23bは、100℃程度の高温で形成されて配置されるので、その後に冷却されて保護膜41を引っ張ることにより、ソースとドレイン方向に引張応力が生じる。また、同時にバンプ23cを、例えばワイヤボンダーなどにより保護膜41上に形成して、ゲート電極の垂直上方のゲート電極方向よりチャネル層33に圧縮応力が加えられるように製作される。さらに、図5で説明したように図6(c)の工程ののちに保護膜41に凹部を形成して、凹部上にバンプを配置してソースとドレイン方向に直交する方向に圧縮応力を加えるようにすることもできる。
【0124】
以上の製造方法により、半導体装置20は作製される。高性能化が必要な回路ブロックや回路部に対してのみ、ゲート電極上部や回路周辺部の適当な位置にバンプを形成して応力を付加することにより、n型MOSトランジスタに圧縮応力や引張応力が効果的な方向に印加されて、n型MOSトランジスタにおけるチャネル層のキャリアの移動度が向上し、性能が向上した半導体装置を実現することができる。
(第2の実施の形態)
図7から図9を用いて本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0125】
図7は本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造工程図および概略構成図、図8は第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図、図9は第2の実施の形態における評価回路部の形成位置を例示する図である。
【0126】
図7で、(a)は本発明の第2の実施の形態の半導体装置の製造方法の概略工程フロー図、図7(b)は本実施の形態の半導体装置の製造方法により作製した半導体装置の概略構成図を示す。
【0127】
図7(a)に本実施の形態の半導体装置の製造方法の概略工程フロー図を示す。本半導体装置の製造方法は、少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板を使用する。この半導体単結晶層には、金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含む回路により構成される回路ブロックが複数形成されることとなる。
【0128】
このような基板を使用して、まず、回路形成工程ステップ11では、回路ブロックと、この回路ブロックのうち、あらかじめ設定した回路ブロックに隣接した位置に、この回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置した評価回路部とを表面層の半導体単結晶層に形成する。次に、検査工程ステップ12では、評価回路部に形成されたMOSトランジスタの電気的特性値を検査し、比較工程ステップ13では、このMOSトランジスタの電気的特性値をあらかじめ設定した設計値と比較する。
【0129】
ところで、比較工程ステップ13で設計値と電気的特性値を比較して、その差の数値を求め、増加させるべき移動度の値として数値目標とする。なお、移動度と電気的特性は、例えば下記の式(A)により関係付けられる。
1/ρ=nqμ ・・・ 式(A)
ここでρは、抵抗率(Ω・cm)、nはキャリア密度(cm−3)、qは電気素量、μは移動度(m/V・s)を表す。
【0130】
このように、評価回路部の電気的特性を検査して、隣接する回路ブロックの増加させるべき移動度の値を数値目標値として明らかにするとともに、数値目標設定工程ステップ14において、どのようなバンプをどういう条件で配置してMOSトランジスタに付加して応力を与えるかが決定される。すなわち、数値目標値に応じてバンプの形状、材質、配置位置または作製条件などのバンプ形成条件を異ならせてMOSトランジスタに付加する応力の値が変化させられて設定される。なお、あらかじめMOSトランジスタに付加する応力の値が決まっていて、バンプ形成条件が決まっている場合は数値目標設定工程を省略することができる。
【0131】
このようにして、評価回路部の電気的特性検査にてMOSトランジスタの電気的特性が設計値より小さいと判断される場合には、バンプ形成工程ステップ15により、評価回路部に隣接するMOSトランジスタで構成される回路ブロック上部の移動度の数値目標値を達成できるような応力を加えることのできる位置に、少なくとも絶縁保護膜を介して複数のバンプを形成する。このように、評価回路部の電気的特性測定により電気的特性の向上が必要と判断されたMOSトランジスタの電気的特性が向上されるような位置にバンプを形成することにより、MOSトランジスタに応力を付加して移動度を増大させることにより、電気的特性値を設計値に到達させることができる。
【0132】
さらに、必要に応じて、形成したバンプに加えられた応力を固定または増加させる目的で、封止工程ステップ16により、半導体装置を形成した基板を樹脂でパッケージに封止する。
【0133】
このように図7(a)で説明した概略工程フロー図に示した製造方法により、図7(b)に概略の構成を示す半導体装置100が製造される。
図7(b)において、半導体装置100、例えばシステムLSIのチップ表面21には複数の回路ブロックが配置されている。主な回路ブロックは、メモリ部24、MPU(Micro Processor Unit)部25、入出力コントロール(以下IOCとする)部26、プログラマブル論理機能部27、入出力回路部28およびその他の回路部29である。なお、これらの回路ブロックのうち、あらかじめ設定した回路ブロックに隣接した位置に、これらの回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置した評価回路部19が半導体チップ基板30の半導体単結晶層(図示していない)に形成されている。
【0134】
ところで、半導体チップ基板30内のこれらの回路ブロックには、少なくとも金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含む回路ブロックがある。図7(b)ではメモリ部24、IOC部26、プログラマブル論理機能部27、入出力回路部28の各回路ブロックの上部に複数のバンプ23が配置されている。また、これらの回路ブロックに隣接する評価回路部19の上部にも同様に複数のバンプ23が配置されている。これらの回路ブロックの上部に複数のバンプ23を配置することにより、これらの回路ブロックの一部を構成しているMOSトランジスタ、ここでは、例えばn型MOSトランジスタのチャネル層に対して上部のゲート電極方向から印加される圧縮応力やソースとドレイン方向に印加される引張応力が加えられる。
【0135】
ここで圧縮応力が加わるのは、バンプ23を配置するときのボンディング加重やバンプの自重などによると考えられる。また、引張応力が加わるのは、バンプ23を配置するときのバンプ23の温度が保護膜より高い温度になっていて、その後バンプ23自体が冷えて収縮することによると考えられる。したがって、バンプ23は直下の保護膜をバンプ23の方向に引っ張り、n型MOSトランジスタのチャネル層に対してソースとドレイン方向に引張応力を印加することとなる。このバンプからチャネル層方向の圧縮応力とチャネル層からソースおよびドレイン方向への引張応力を印加することにより、チャネル層を移動するキャリアの移動度を速めて、n型MOSトランジスタの高速、大電流または低消費電流動作を可能として、半導体装置100の性能が改善される、あるいは向上することとなる。
【0136】
次に一例として、本実施の形態の製造方法により作製した半導体装置100の主な構成について図8の概略断面図を用いて説明する。図8は図7(b)のC−C線の断面から半導体装置100の破線の丸22で囲んだバンプ23間の概略断面図を示す。また、図7(b)のD−D線の断面から半導体装置100の破線の丸22で囲んだバンプ23間の概略断面図も同様に図8で示す構造になっている。
【0137】
図8の概略断面図では、例えば、p型の導電性を示す半導体チップ基板30の表面およびその周辺領域にn型の導電性を示すソース領域31とドレイン領域32が形成されており、このソース領域31とドレイン領域32に挟まれた領域の半導体チップ基板30の表面およびその周辺領域にn型のチャネル層33が形成されている。このn型のチャネル層33を流れる電流は酸化膜34を介してゲート電極35に印加する電圧により制御している。図8には、このような構成のn型MOSトランジスタ36がn型MOSトランジスタ36a,n型MOSトランジスタ36b,n型MOSトランジスタ36cとして3素子並列に並んでおり、このn型MOSトランジスタ36は酸化膜37により隣接する素子と隔てられて素子分離がなされている。さらに、半導体チップ基板30の表面は保護酸化膜38で覆われ、ソース領域31およびドレイン領域32にはそれぞれソース電極39およびドレイン電極40が形成されている。なお、ソース電極39は半導体チップ基板30の表面の一部42と電気的に接続されてグランドに接続されている。
【0138】
このように形成されたn型MOSトランジスタ36を含む回路の上部を保護膜41で覆い、この保護膜41の上部にn型MOSトランジスタ36a,n型MOSトランジスタ36bに隣接する領域上にバンプ23a、23bが配置されている。なお、保護膜41は加熱も冷却もされずに室温の温度環境に置かれている。このときも、バンプ23a、23bは室温よりも高温で配置されるので、その後、温度環境の室温まで冷えるときにバンプ23a、23b自体が収縮する。すなわち、バンプ23a、23bをn型MOSトランジスタ36のソース領域31またはドレイン領域32あるいはその両方の側部上に配置して保護膜41を上部から左右に引っ張ることにより、n型MOSトランジスタ36a,n型MOSトランジスタ36bのソースとドレイン方向に引張応力を印加することができる。
【0139】
このことは、バンプ23の材料は熱膨張係数が保護膜41の材料よりも大きく、バンプ23を保護膜41よりも高温で保護膜41上に配置したのち保護膜41から熱が逃げることにより冷却することで保護膜41に引張応力が印加される。例えば、バンプ23をAlなどの金属材料で構成し、保護膜41はSiOなどの酸化膜やSiなどの窒化膜で構成すると、金属材料の熱膨張係数が、酸化膜や窒化膜の材料の熱膨張係数よりも大きいので上記の説明のように引張応力が加わることとなる。なお、バンプ23は保護膜41上に配置する前に予熱されたのち、室温で準備された半導体基板30上に配置される。
【0140】
また、保護膜41のn型トランジスタ36cのチャネル層33上部にバンプ23cが配置されてn型トランジスタ36cに上部から圧縮応力を印加している。したがって、電気的特性の目標値を満たすように、これらn型トランジスタ36のチャネル層33上部のゲート電極34からチャネル層33方向への圧縮応力やn型トランジスタ36のソース−ドレイン方向への引張応力を加えることにより、チャネル層33を移動するキャリアの移動度を速めて、電気的特性の向上が求められるn型MOSトランジスタ36の高速、大電流または低消費電流動作を可能として、半導体装置100の性能が向上することとなる。
【0141】
図9は、図7(a)で説明した概略工程フロー図に示した製造方法により作製した図7(b)で説明した半導体装置とは異なる評価回路部構成の半導体装置の概略の構成例について示すものである。
【0142】
図9(a)は半導体チップ基板30の左下の隅に集中して評価回路部105を作製した半導体装置110を示す。図7(b)では各回路ブロックに隣接した位置に分散して評価回路部を作製したが、図9(a)では1箇所に評価回路部105を集中して作製している。このようにすることで、各回路ブロックが利用できる面積を拡大して、かつチップ表面21のレイアウトが容易となる。そして、半導体チップ基板30に形成する半導体装置110の集積度が上がり、高性能化も容易となる。1つのチップの中では製造条件のバラツキ等も少ないと考えられることより、このように評価回路部105を1箇所に集中して配置して、この部分にバンプ23を形成して、その形成前後の特性変化を測定することにより、各回路ブロックの特性変化を制御することができる。もちろん、チップ表面21のレイアウトや面積に余裕があれば、評価回路部105を複数箇所形成して、より精度よく特性変化を測定して、各回路ブロックの特性変化を制御してもよい。
【0143】
また、図9(b)は半導体ウェハ120のプロセス制御部113に評価回路部115を組み込んだ例を示す。このプロセス制御部113は、抵抗やトランジスタなどの基本的な回路が形成されて、半導体ウェハが製造プロセスを経るごとに所望の特性に形成されているかを評価する役割を担っている。半導体ウェハ120のプロセス制御部115を除いた領域には半導体チップ(図示せず)が縦横に隙間無く整列している。例えば、破線の円で囲んだ領域117の中にも半導体チップ(図示せず)が縦横に隙間無く整列している。本発明の実施の形態においても、評価回路部115をプロセス制御部113の一部に形成して、この評価回路部115の領域にバンプ(図示せず)を形成してその形成前後の特性変化を測定することにより、各回路ブロックの特性変化を制御することができる。なお、半導体ウェハ120の周辺領域に評価回路部115を形成してもよい。
【0144】
さらに、図9(c)に示すように評価回路部125を半導体ウェハ上に形成された半導体装置130の間に形成してもよい。図9(b)の領域117の中には、例えば図9(c)に示すように半導体ウェハ上に形成されて分離されていない半導体装置130が縦横に整列している。このように半導体装置130の間に評価回路部125を形成すると、評価回路部125が特性をモニターし制御したい半導体装置130に隣接する利点と半導体装置130を分離するときに使用しない半導体ウェハの部分を用いることができ、半導体ウェハの表面を有効に利用することができ、1枚の半導体ウェハから多くの半導体装置130を得ることができる。このようにすると、半導体装置130内に評価回路部125を形成しなくても隣接する半導体装置130のスクライブラインとなる分離線122の領域にのみ評価回路部125を形成するので半導体ウェハを有効に使用することができる。
【0145】
このように、概略工程フロー図の回路形成工程において、評価回路部の一部または全部が基板上の半導体チップである半導体装置を形成している領域の外側に形成されるようにしてもよい。
(第3の実施の形態)
図10,図11を用いて本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0146】
図10は第3の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図、図11は第3の実施の形態における半導体装置のソース−ドレイン間方向に圧縮応力を印加するバンプの構造を説明する図である。
【0147】
本実施の形態の半導体装置は、第1の実施の形態で示したn型MOSトランジスタではなく、C−MOSトランジスタの場合について示している。すなわち、半導体装置75はC−MOSトランジスタを含んだ回路ブロックのある半導体装置である。
【0148】
図10(a)で、例えば、p型の導電性を示す半導体チップ基板76の表面近傍にn型の導電性を示すソース領域31とドレイン領域32が形成されており、このソース領域31とドレイン領域32に挟まれた領域の半導体チップ基板76の表面近傍にn型のチャネル層33が形成されている。このn型MOSトランジスタ36のn型のチャネル層33を流れる電流は酸化膜34を介してゲート電極35に印加する電圧により制御している。
【0149】
一方、このn型MOSトランジスタ36と酸化膜37で素子分離されたp型MOSトランジスタ77が形成されてC−MOSトランジスタ74が構成されている。このp型MOSトランジスタ77は半導体チップ基板76に形成されたn型拡散層78にp型の導電性を示すソース領域79とドレイン領域80が形成されており、このソース領域79とドレイン領域80に挟まれた領域のn型拡散層78の表面近傍にp型のチャネル層81が形成されている。このp型MOSトランジスタ77のp型のチャネル層81を流れる電流は酸化膜82を介してゲート電極83に印加する電圧により制御している。
【0150】
さらに、半導体チップ基板76やn型拡散層78の表面は保護酸化膜38で覆われ、n型MOSトランジスタ36のソース領域31およびドレイン領域32にはそれぞれソース電極39およびドレイン電極40が形成されている。また、同様にp型MOSトランジスタ77のソース領域79およびドレイン領域80にはそれぞれソース電極84およびドレイン電極85が形成されている。なお、n型MOSトランジスタ36のドレイン電極40はp型MOSトランジスタ77のソース電極84は同一の電極として形成されている。また、ドレイン電極85はn型拡散層78とウェルコンタクト86で接続されて電源電圧(図示していない)Vddに接続されている。
【0151】
このようにC−MOSトランジスタ74も図7(a)に示す概略工程フロー図でn型MOSトランジスタと同様に製造することができる。したがって、p型MOSトランジスタ77およびC−MOS構成のC−MOSトランジスタ74からなる回路ブロックおよび隣接した評価回路部も同様に図7(a)に示す概略工程フロー図で製造することができる。すなわち、回路形成工程ステップ11においてp型MOSトランジスタ77を形成するためのn型拡散層やソース領域、ドレイン領域を形成し、素子分離のための酸化膜や配線工程を付加的に実行するだけで製造することができる。
【0152】
このように形成されたn型MOSトランジスタ36とp型MOSトランジスタ77とを含む回路の上部を保護膜41で覆い、保護膜41の上部に複数のバンプ23a、23bを配置することにより、n型MOSトランジスタ36のチャネル層33に対して応力が印加される構成となっている。このバンプが構成される位置は、第1の実施の形態で述べた内容と同様の構成である。例えば、この保護膜41の上部にn型MOSトランジスタ36を挟むように左右にバンプ23a、23bが高温で配置され、冷却するときの熱膨張係数の差を利用してソースとドレイン方向に引張応力を印加している。
【0153】
図10(b)は図10(a)と同じ構成の半導体装置75でバンプを配置する位置だけが異なる。すなわち、保護膜41のn型MOSトランジスタ36のチャネル層33上にバンプ23cを配置してゲート電極垂直上方からチャネル層33に対して圧縮応力を印加している。
【0154】
一方、図11(a)にはp型MOSトランジスタ77のソースとドレイン方向に圧縮応力を印加する例を、図11(b)にはp型MOSトランジスタ77のソースとドレイン方向に対して直交する方向に引張応力を印加する半導体装置の例を示している。
【0155】
図11(a)でp型MOSトランジスタ77を挟んで凹部93、94が設けられ、この凹部93、94上にバンプ23d、23eが配置されている。このバンプ23d、23eにより凹部93、94の斜面に圧縮応力が印加され、その結果、p型MOSトランジスタ77のソースとドレイン方向に圧縮応力が印加されることになる。
【0156】
また、図11(b)はp型MOSトランジスタ77のソースとドレイン方向に対して直交する方向にp型MOSトランジスタ77を挟んで複数のバンプ69を配置する。p型MOSトランジスタ77を挟むように上下に複数のバンプ69が高温で配置され、冷却するときの熱膨張係数の差を利用してソースとドレイン方向に引張応力を印加している。
【0157】
ところで、n型MOSトランジスタの場合と異なり、p型MOSトランジスタ77のチャネル層に対して応力を付加して移動度を効果的に増大させる結晶軸の方向は異なる。
第1の実施の形態で示した図5(a)および図5(b)の場合のn型MOSトランジスタのキャリアである電子の移動度μと抵抗率ρを関係付けて数式を展開したものが以下の数4および数6である。
【0158】
【数4】

【0159】
【数6】

【0160】
これに対して、ソースとドレインの方向を結晶軸の[100]方向にして図5(a)に示す構造でp型MOSトランジスタを作製するとキャリアであるホールの移動度μと抵抗率ρの関係は、数7のようになる。
【0161】
【数7】

【0162】
また、同様にソースとドレインの方向を結晶軸の[110]方向にして図5(a)にしめす構造でp型MOSトランジスタを作製するとキャリアであるホールの移動度μと抵抗率ρの関係は、数8のようになる。
【0163】
【数8】

【0164】
したがって、上記の内容を考慮して応力が印加されたときの、p型MOSトランジスタの移動度の変化について数7と数8から見る。すなわち、数7は[100]座標系に対応し、数8は[110]座標系に対応している。p型MOSトランジスタの場合は、[100]座標系においてはどの方向から応力が印加されたとしても移動度はほとんど変化しない。
【0165】
一方、[110]座標系ではソースとドレイン方向に圧縮応力が印加された場合、およびソースとドレイン方向に対して直交する方向に引張応力が印加された場合は顕著に移動度が増加することがわかる。
【0166】
このように、C−MOSトランジスタ等に形成される[110]座標系のp型MOSトランジスタに対して、ソースとドレイン方向の圧縮応力やソースとドレイン方向に対して直交する方向の引張応力が印加されるようにバンプを形成することにより、p型MOSトランジスタのチャネル層のキャリアの移動度が向上し性能が向上し、C−MOSトランジスタが高速化する。その結果、C−MOSトランジスタを含む回路または回路ブロックを有する半導体装置の高性能化を実現することができる。ここで、n型MOSトランジスタのキャリア移動度の向上についても、前述の実施の形態と同様の効果を奏する。
(第4の実施の形態)
図12,図13を用いて本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0167】
図12は第4の実施の形態におけるバンプが1列に形成された半導体装置の構成を示す図、図13は第4の実施の形態におけるバンプが2列に形成された半導体装置の構成を示す図である。
【0168】
図12および図13は回路ブロックに対してバンプを実装するときの様々な配置について示す図である。
図12は第1の実施の形態の図7(b)で示した半導体装置と同様の、例えば、システムLSIの機能を持つ半導体装置20を示している。図12のチップ表面21には複数の回路ブロックが同様に配置されている。個々の回路ブロックの説明は図7(b)と重複するので省略する。なお、図12および図13では評価回路部は回路ブロックに隣接して配置されているが、図中には示さず省略している。
【0169】
回路ブロックのうち、メモリ部24の入出力回路部のn型MOSトランジスタ(図示していない)がソースとドレイン方向に並列に並んでいる。このソースとドレイン方向に沿ってゲートのチャネル層の上部を覆ってバンプ23が領域90の中で列状に配置されて、チャネル層に圧縮応力を印加している。また、同様にIOC部26、プログラマブル論理機能部27の回路ブロック上にも、例えば領域91に示すように列状にバンプ23が配置されて、この領域に配置されているn型MOSトランジスタのチャネル層に圧縮応力を加えている。
【0170】
さらに、このシステムLSIの入出力回路部28の回路ブロックの近傍の領域92にバンプ23が回路ブロックを挟むように配置されて、入出力回路部28に形成されているn型MOSトランジスタのソースとドレイン方向にチャネル層に対して引張応力を印加している。
【0171】
図13は図12と比較してバンプを複数の列として配置して応力を加えている。領域90ではバンプ23が2列に整列してチャネル層に圧縮応力を印加し、領域91でも2列に整列して圧縮応力を印加している。このようにバンプを2列に整列することで圧縮応力の大きさを増大して印加し、圧縮応力によるn型MOSトランジスタの性能向上の効果を増大している。また、領域92の入出力回路部28には、バンプ23をn型MOSトランジスタのチャネル層の垂直上方に配置し、圧縮応力を印加している。
【0172】
このように、半導体装置の各回路ブロックのn型MOSトランジスタに回路ブロックの上部または近傍にバンプを配置して、垂直上方のゲート電極方向から圧縮応力を加える、あるいはソースとドレイン方向から引張応力またはソースとドレイン方向に対して直交する方向から圧縮応力を加えることにより、n型MOSトランジスタの性能を向上させて、半導体装置の性能を向上させている。ここではn型MOSトランジスタの場合について述べたが、p型MOSトランジスタおよびC−MOSトランジスタの場合も同様にバンプを実装配置して、各MOSトランジスタおよび回路ブロックの性能を向上することができる。
【0173】
なお、評価回路部は半導体チップの中に備える構成で説明したが、半導体チップの外にある半導体ウェハのプロセス評価部分や半導体チップの間のスクライブライン等に配置して、半導体ウェハからのチップの取れ数を増加させるように構成されていてもよい。
【0174】
さらに、本発明の第1から第4の実施の形態で述べた半導体装置を接続用のバンプによりフェースダウンで実装して樹脂封止する。このようにすることにより、本実施の形態で示した半導体装置に対してバンプにより加えられた応力が固定または増加させることができ、半導体装置の性能の向上を確実にする、または効果を増大することができる。
【0175】
なお、本発明の実施の形態ではチャネル層は通常の結晶層を想定しているが、歪みを導入した歪み結晶層や化合物半導体の界面などをチャネル層として用いてもよい。さらに量子効果により大きい移動度を持つ層、例えば量子井戸層やヘテロ接合界面をチャネル層として用いてもよい。
【0176】
また、半導体基板の材料はSiや、GaAsなどの化合物半導体に限らずガラス等の絶縁性基板を用いてもよい。
また、バンプ材料はAl、Cu、Auなどの金属はもちろん、半導体の保護膜上に配置して圧縮応力が印加できるものや半導体の保護膜の材料に較べて熱膨張係数が大きいものであれば同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、電流能力およびしきい値電圧が所定の値を満たさない高性能化が必要な回路ブロックや回路部のみに対して、適切な位置に適切な方向の応力を付加することにより、その回路ブロックや回路部の高性能化が実現でき、高集積化・高速化に適した半導体装置および半導体装置の製造方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の第1の実施の形態の半導体装置の概略構成図
【図2】第1の実施の形態の半導体装置におけるバンプによる引張応力の印加を説明する回路模式図
【図3】第1の実施の形態におけるn型MOSトランジスタのゲートの形成方向を示す図
【図4】結晶軸方向による印加応力と移動度の関係を説明するためのトランジスタ断面図
【図5】第1の実施の形態における凹部上に形成されたバンプを備える半導体装置の構成を示す図
【図6】第1の実施の形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図7】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造工程図および概略構成図
【図8】第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図
【図9】第2の実施の形態における評価回路部の形成位置を例示する図
【図10】第3の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図
【図11】第3の実施の形態における半導体装置のソース−ドレイン間方向に圧縮応力を印加するバンプの構造を説明する図
【図12】第4の実施の形態におけるバンプが1列に形成された半導体装置の構成を示す図
【図13】第4の実施の形態におけるバンプが2列に形成された半導体装置の構成を示す図
【図14】従来の半導体装置の構成を示す概略断面図
【符号の説明】
【0179】
1 半導体チップ
2 トランジスタ
3 保護膜
4 圧力
5 張力
6 バンプ
10 半導体装置
19,105,115,125 評価回路部
20,75,100,110,130 半導体装置
21 チップ表面
22 破線の丸
23,23a,23b,23c,23d,23e,69 バンプ
24 メモリ部
25 MPU部
26 IOC部
27 プログラマブル論理機能部
28 入出力回路部
29 その他の回路部
30,76 半導体チップ基板
31 ソース領域
32 ドレイン領域
33,61,81 チャネル層
34,37,59,82 酸化膜
35,60,83 ゲート電極
36,36a,36b,36c,50 n型MOSトランジスタ
38 保護酸化膜
39,84 ソース電極
40,85 ドレイン電極
41 保護膜
42 表面の一部
43 電源電圧Vdd
44 負荷抵抗R
45 グランド
46 Vin端子
47 Vout端子
48a,48b,70 矢印
49,77 p型MOSトランジスタ
51,74 C−MOSトランジスタ
52,55 MOSトランジスタ
53 (001)Si基板
54 ゲートの長さ方向
56 p型のSi基板
57,79 ソース領域
58,80 ドレイン領域
65,66,93,94 凹部
67 底面
68 斜面
78 n型拡散層
86 ウェルコンタクト
90,91,92,117 領域
113 プロセス制御部
120 半導体ウェハ
122 分離線(スクライブライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置であって、
前記半導体単結晶層に形成された前記回路ブロックの上部全面に形成される保護膜と、
前記保護膜を介して前記回路ブロック上に形成される1または複数のバンプと
を有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置であって、
前記回路ブロックのうちのあらかじめ設定した前記回路ブロックに隣接した位置に前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置して形成される評価回路部と、
前記半導体単結晶層に形成された前記回路ブロックおよび前記評価回路部の上部全面に形成される保護膜と、
前記保護膜を介して前記回路ブロック上に形成される1または複数のバンプと
を有し、前記バンプが前記評価回路部の電気的特性の測定により電気的特性の向上が必要であると判定された前記回路ブロックの前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記MOSトランジスタがn型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記MOSトランジスタがp型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記MOSトランジスタがC−MOS構成からなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[100]または[010]方向であることを特徴とする請求項3または請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]または[−110]方向であることを特徴とする請求項3または請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記p型MOSトランジスタのチャネル層の中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ゲート電極方向から印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項12】
前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項14】
前記バンプの材料は熱膨張係数が前記保護膜の材料よりも大きく、前記バンプを高温で前記保護膜上に配置したのち冷却することにより前記引張応力が加えられることを特徴とする請求項10または請求項12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記保護膜上の前記チャネル層に隣接する位置に凹部を設け、前記凹部上に前記バンプを配置することにより、前記凹部の前記チャネル層側の斜面に前記バンプによる圧縮方向の応力が加わり、前記圧縮応力または前記引張応力が加えられることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記バンプは、応力を加える前記MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記バンプは、応力を加える前記MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする請求項15に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記バンプは、前記回路ブロックの入出力回路部の上部、隣接領域または隣接する回路部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項19】
前記バンプは、前記回路ブロックの上部、隣接領域または隣接する回路ブロックに配置されることを特徴とする請求項1から請求項18のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項20】
前記バンプは、前記基板または半導体チップの入出力回路部の上部、隣接領域または隣接する回路部に配置されることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項21】
前記バンプは、前記MOSトランジスタの、前記ソースとドレイン方向または前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に対して直線状の列として配置されることを特徴とする請求項1から請求項20のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項22】
少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置の製造方法であって、
前記MOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、
前記MOSトランジスタの上部に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を隔てて形成された保護膜を介して前記回路ブロック上に1または複数のバンプを形成する工程と
を有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
少なくとも表面層に半導体単結晶層を有する基板の前記半導体単結晶層にMOSトランジスタを含む回路により構成される回路ブロックを複数有してなる半導体装置の製造方法であって、
前記MOSトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、
前記回路ブロックのうちのあらかじめ設定した前記回路ブロックに隣接した位置に前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと同一の構成からなるMOSトランジスタを配置して評価回路部を形成する評価回路部形成工程と、
前記MOSトランジスタの上部に絶縁膜を形成する工程と、
前記評価回路部に形成された前記MOSトランジスタの電気的特性値を検査する検査工程と、
前記MOSトランジスタの前記電気的特性値とあらかじめ設定した設計値とを比較する比較工程と、
前記電気的特性値が前記設計値より小さい場合に前記評価回路部に隣接する前記回路ブロックの上部に前記絶縁膜を隔てて形成された保護膜を介して1または複数のバンプを形成するバンプ形成工程と
を有し、前記バンプが電気的特性の向上の必要がある前記MOSトランジスタのキャリア移動度が高くなるような応力を前記MOSトランジスタに印加する位置に形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記設定値と前記電気的特性値との差から増加させるべき移動度の大きさを求める数値目標設定工程をさらに有し、
前記バンプ形成工程において、増加させるべき前記移動度の値に応じてバンプの形状、材質、配置位置または作製条件を制御して、前記MOSトランジスタに付加する応力の値を最適化することを特徴とする請求項23に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記MOSトランジスタは、n型MOSトランジスタからなることを特徴とする請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
前記MOSトランジスタは、p型MOSトランジスタからなることを特徴とする請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項27】
前記MOSトランジスタは、C−MOS構成からなることを特徴とする請求項22から請求項24のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
前記C−MOS構成のn型MOSトランジスタの数値目標は、前記回路ブロックの設計段階において、前記バンプにより付加する応力で増加する移動度を見込んだ値とすることを特徴とする請求項27記載の半導体装置の製造方法。
【請求項29】
前記C−MOS構成のp型MOSトランジスタの数値目標は、前記回路ブロックの設計段階において、前記バンプにより付加する応力で増加する移動度を見込んだ値とすることを特徴とする請求項27に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項30】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[100]方向または[010]方向となるように、前記n型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする請求項25、請求項27または請求項28のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項31】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記n型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向または[−110]方向となるように、前記n型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする請求項25、請求項27または請求項28のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項32】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ゲート電極方向から印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項25、請求項27、請求項28、請求項30または請求項31のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項33】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される引張応力であることを特徴とする請求項25、請求項27、請求項28、請求項30または請求項31のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項34】
前記バンプにより前記n型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項25、請求項27、請求項28、請求項30のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項35】
前記半導体単結晶層はシリコン単結晶からなり、前記p型MOSトランジスタのチャネル層中を流れる電流の方向が、前記シリコン単結晶の[110]方向または[−110]方向となるように、前記p型MOSトランジスタを配置したことを特徴とする請求項26、請求項27または請求項29のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項36】
前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に印加される圧縮応力であることを特徴とする請求項26、請求項27、請求項29または請求項35のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項37】
前記バンプにより前記p型MOSトランジスタのチャネル層に付加する応力は、ソースとドレイン方向に対して直交する方向に印加される引張応力であることを特徴とする請求項26、請求項27、請求項29または請求項35のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項38】
前記バンプの材料は熱膨張係数が前記保護膜の材料よりも大きく、前記バンプを高温で前記保護膜上に配置したのち冷却することにより前記引張応力が加えられることを特徴とする請求項33または請求項37のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項39】
前記保護膜上の前記バンプを配置する位置に凹部を設け、前記凹部の前記チャネル層側の斜面に前記バンプによる圧縮方向の応力を加えることにより、前記圧縮応力が加えられることを特徴とする請求項34または請求項36のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項40】
前記バンプは、応力を加える前記n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする請求項38または請求項39のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項41】
前記バンプは、応力を加える前記n型またはp型MOSトランジスタのチャネル層を挟んで、前記ソースとドレイン方向に対して直交する方向に少なくとも2個以上配置することを特徴とする請求項38または請求項39のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項42】
前記バンプは、前記回路ブロックに形成したMOSトランジスタと対応する前記評価回路部のMOSトランジスタに同一の構成で形成することを特徴とする請求項23から請求項41のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項43】
前記回路形成工程において、前記評価回路部の一部が前記基板上の半導体チップを形成する領域の外側に形成されることを特徴とする請求項23から請求項42のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項44】
前記基板を樹脂封止する封止工程をさらに備え、前記バンプに加えられた前記応力を固定または増加させることを特徴とする請求項22から請求項43のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−71774(P2008−71774A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246197(P2006−246197)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】