説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置

【課題】メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】成膜チャンバ40Dの内部空間Sに吸着期間の間だけZr(BHを導入した。そして、シリコン基板2の表面、すなわち第2層間絶縁膜の表面及び第1配線の表面に、あるいはハードマスクの表面及び第2配線の表面にZr(BHを吸着させ、吸着分子からなる単分子層を形成した。また、吸着期間の経過後、照射管47の内部に改質期間の間だけマイクロ波を照射し、プラズマ化したHを、すなわち水素活性種をシリコン基板2の表面に供給した。そして、Zr(BHの供給と、水素活性種の供給と、を交互に繰り返した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、微細化や多層化の進展に伴い、電流密度の増加によるエレクトロマイクレーション(EM:Electro migration )が深刻化する。高いEM耐性を有する銅(Cu)の多層配線技術は、半導体装置を高集積化させる上で不可欠である。
【0003】
Cu配線の製造工程には、配線形状に応じたトレンチを予め絶縁層に形成し、該トレンチにCuを充填して配線を形成する、いわゆるダマシン(Damascene )法が利用される。さらに、Cu配線の製造工程には、配線用のトレンチにビアホール(Via-Hole)を予め形成し、トレンチとビアホールの双方にCuを充填して配線とビアコンタクトを同時に形成する、いわゆるデュアルダマシン(Dual-Damascene )法が利用される。
【0004】
ダマシンプロセス後のCu配線には、Cu配線とCu配線上の絶縁層(例えば、底誘電率膜:Low-k 膜)との間にSiCやSiNなどのキャップ層が積層される。キャップ層は、Cu配線表面の酸化防止膜、Cuの拡散防止膜、ビアホールのエッチストップ膜として機能する。一方、これらSiCやSiNなどの絶縁膜からなるキャップ層は、Cu配線との間の密着性が弱いために、Cu配線の信頼性を低下させてしまう。また、ビアホール形成時のエッチング工程を複雑にして、半導体装置の生産性を損なってしまう。
【0005】
そこで、Cu多層配線技術では、上記の問題を解消させるため、従来から、Cu配線上のキャップ層に金属材料を適用する提案がなされている。金属材料からなるキャップ層(以下単に、メタルキャップ層という。)には、Cu配線との間の密着性が高いこと、比抵抗値が低いこと、バリア性が高いこと(Low-k 膜からの水分やCu配線からのCu原子に対するバリア性が高いこと)、Cu配線上にのみ形成される選択性を有すること、が要求される。
【0006】
特許文献1は、無電解メッキ法を利用してCu配線表面に選択的にコバルトタングステンリン(CoWP)を析出させ、さらに、CoWP層の表面をサリサイド化してメタルキャップ層を形成させる。これにより、メタルキャップ層としての密着性、導電性、バリア性、成膜選択性を満たすことができ、かつ、メタルキャップ層の耐酸化性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2002−43315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、CoWPは、成膜選択性を得るために無電解メッキ法を利用する。無電解メッキ法では、CoWP層の形状や膜厚が、薬液の濃度や酸化還元雰囲気などの影響を大きく受ける。この結果、CoWPの析出状況が、Cu配線の粗密、表面積、形状などに応じて大きく変動し、隣接するCoWP層の短絡やCu配線の被覆不良を招く。
【0008】
また、無電解メッキ法は、成膜選択性を実現させるために、ダマシンプロセス後のCu配線の表面やLow-k 膜の表面など、薬液に浸漬させる表面を極めて清浄な状態にさせる必要がある。そのため、清浄化に伴う表面処理工程の増加を招き、半導体装置の生産性を損なってしまう。
【0009】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、メタルキャップ層の信頼性と生産性とを向上させた半導体装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ZrBx膜(x=0.25〜5.0)は、強固なZr−B結合により高い耐酸化性を有し、かつ、高い導電性(数[μΩ・cm])を有する。本発明者は、メタルキャップ層の材料の1つとしてZrBxを検討する中で、ZrBx膜(x=0.25〜5.0)が金属配線に対する良好な密着性と高いバリア性を有し、かつ、x=0.5〜4.0において、その導電性が下地の導電性に大きく依存することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明者は、ZrBx膜(x=0.5〜4.0)が、メタルキャップ層として良好な密着性、高い導電性、高いバリア性を有し、かつ、金属膜上(例えば、Cu配線上)で高い導電性を有し、絶縁膜上(例えば、Low-k 膜上やハードマスク上)で高い絶縁性を有することを見出した。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、素子領域を有する半導体基板に絶縁層を積層する絶縁層工程と、前記絶縁層に凹部を形成する凹部工程と、前記凹部に金属層を埋め込む金属層工程と、前記絶縁層の表面と前記金属層の表面を略同一面に平坦化する平坦化工程と、平坦化した前記絶縁層の表面及び前記金属層の表面に原子層蒸着法を利用してZrBx(x=0.5〜4.0)を主成分とするメタルキャップ層を成膜するメタルキャップ層工程と、を備えたことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、ZrBxからなるメタルキャップ層が、単原子層ずつ積み重ねられるため、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。この結果、他の成膜方法(例えば、CVD法やPVD法)を利用する場合に比べ、メタルキャップ層が、金属層上で確実に高い導電性を発現し、かつ、絶縁層上で確実に高い絶縁性を発現する。よって、メタルキャップ層が、金属層の粗密、表面積、形状などに関わらず、金属層に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する金属層間の短絡を回避させる。しかも、メタルキャップ層が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くことができる。
【0014】
したがって、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置を提供させることができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、前記メタルキャップ層工程は、前記半導体基板の表面にZr(BHを吸着させる吸着工程と、前記Zr(BHが吸着した前記半導体基板の表面に水素活性種を供給し、前記半導体基板の表面に吸着した前記Zr(BHを前記ZrBxに改質させる改質工程と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、水素活性種が、Zr(BHの熱分解反応を低温化させ、吸着したZr(BHの全体にわたり、より均一なZr−B結合を形成させることができる。したがって、Zr(BHの吸着と水素活性種による改質とが、ZrBx膜の均一性と安定性を向上させる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、前記吸着工程及び前記改質工程は、前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素を供給すること、前記改質工程は、前記水素が前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素にマイクロ波を照射すること、を要旨とする。
【0017】
この構成によれば、水素が継続的に供給されるため、間欠的な水素の供給に比べ、水素
の供給量を安定させることができる。したがって、Zr(BHの改質を高い再現性の下で行うことができ、ZrBxの均一性と安定性を向上させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法であって、前記吸着工程及び前記改質工程は、前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素とアルゴンを供給し、前記改質工程は、前記水素と前記アルゴンが前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素と前記アルゴンの混合ガスにマイクロ波を照射すること、を要旨とする。
【0019】
この構成によれば、アルゴンが水素のプラズマ状態を安定させる。したがって、Zr(BHが、より高い再現性の下で改質される。しかも、アルゴンが、改質時に発生する副生成物の除去を促進させる。よって、ZrBxの膜特性を安定させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、前記吸着工程及び前記改質工程は、前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素とジボランを供給し、前記改質工程は、前記水素と前記ジボランが前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素と前記ジボランの混合ガスにマイクロ波を照射すること、を要旨とする。
【0021】
この構成によれば、反応系にジボランを供給する分だけ、Zr(BHの改質される速度が遅くなる。したがって、ジボランの供給量を制御することにより、Zr(BHの改質速度を所望の速度に調整させることができる。この結果、吸着したZr(BHに対し、より均一なZr−B結合を形成することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、前記金属層工程は、前記凹部の内側面を含む前記絶縁層の表面に原子層蒸着法を利用してZrBx(0<x≦0.25)を主成分とするバリア層を成膜する工程と、前記バリア層に銅膜を積層して前記凹部を埋め込む工程と、を備えたことを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、メタルキャップ層とバリア層とを共通する元素によって構成させることができる。したがって、メタルキャップ層とバリア層の形成工程においては、各種の条件(例えば、熱的制限に基づく加熱温度や化学的制限に基づく成膜雰囲気)を共通にさせることができ、ひいては半導体装置の生産性を、より向上させることができる。しかも、バリア層の全体に対しては、Zrの単体に近い導電性を与えることができるため、金属層の低抵抗化を図ることができる。
【0024】
上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明では、チャンバ本体と、前記チャンバ本体の内部空間に設けられ半導体基板を載置するステージと、前記内部空間にZr(BHを供給する第一供給手段と、前記内部空間に水素活性種を供給する第二供給手段と、前記第一供給手段及び前記第二供給手段を駆動制御する制御手段と、を備え、前記半導体基板は、基板表面に形成された絶縁層と、前記絶縁層の凹部に埋め込まれて前記絶縁層の表面と略同一面を形成する金属層とを有し、前記制御手段は、前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して前記内部空間に前記Zr(BHと前記水素活性種を交互に供給し、前記絶縁層及び前記金属層の表面にZr(BHを吸着させた後、前記Zr(BHを前記水素活性種によりZrBx(x=0.5〜4.0)に改質させること、を要旨とする。
【0025】
この構成によれば、ZrBxからなるメタルキャップ層が、単原子層ずつ積み重ねられるため、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。この結果、他の成膜方法(例えば、CVD法やPVD法)を利用する場合に比べ、
メタルキャップ層が、金属層上で確実に高い導電性を発現し、かつ、絶縁層上で確実に高い絶縁性を発現する。よって、メタルキャップ層が、金属層の粗密、表面積、形状などに関わらず、金属層に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する金属層間の短絡を回避させる。しかも、メタルキャップ層が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くことができる。
【0026】
したがって、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置を提供させることができる。
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の半導体装置の製造装置であって、前記第二供給手段は、前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、前記水素が前記内部空間に到達する前に前記水素にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、前記制御手段は、前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき、前記水素供給部を駆動して前記内部空間に前記水素を供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記水素を継続的に供給させながら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記水素にマイクロ波を照射させること、を要旨とする。
【0027】
この構成によれば、水素供給部が、水素を継続的に供給させる。そのため、間欠的な水素の供給に比べ、水素の供給量を安定させることができる。したがって、Zr(BHの改質を高い再現性の下で行うことができ、ZrBxの均一性と安定性を向上させることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明では、請求項7又は8に記載の半導体装置の製造装置であって、前記第二供給手段は、前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、前記内部空間にアルゴンを供給するアルゴン供給部と、前記水素と前記アルゴンが前記内部空間に到達する前に前記水素と前記アルゴンの混合ガスにマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、前記制御手段は、前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき前記水素供給部及びアルゴン供給部を駆動して前記内部空間に前記水素と前記アルゴンの混合ガスを供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記混合ガスを継続的に供給させながら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記混合ガスにマイクロ波を照射させること、を要旨とする。
【0029】
この構成によれば、アルゴンが水素のプラズマ状態を安定させるため、Zr(BHを、より高い再現性の下で改質させることができる。しかも、アルゴンがキャリアガスとして作用するため、改質時に発生する副生成物を効果的に除去させることができる。よって、ZrBxの膜特性を安定させることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明では、請求項7〜9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置であって、前記第二供給手段は、前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、前記内部空間にジボランを供給するジボラン供給部と、前記水素と前記ジボランが前記内部空間に到達する前に前記水素と前記ジボランの混合ガスにマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、前記制御手段は、前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき前記水素供給部及び前記ジボラン供給部を駆動して前記内部空間に前記水素と前記ジボランの混合ガスを供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記混合ガスを継続的に供給させながら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記混合ガスにマイクロ波を照射させること、を要旨とする。
【0031】
この構成によれば、反応系にジボランを供給する分だけ、Zr(BHの改質速度を遅くさせることができる。したがって、ジボランの供給量を制御することにより、Zr(BHの改質速度を所望の速度に調整させることができる。この結果、吸着したZr(BHに対し、より均一なZr−B結合を形成させことができる。
【発明の効果】
【0032】
上記したように、本発明によれば、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。まず、本発明を利用して製造した半導体装置について説明する。半導体装置は、例えば、各種RAMや各種ROMを含むメモリ、MPUや汎用ロジックを含むロジックなどである。図1は、半導体装置を説明する要部断面図である。
【0034】
(半導体装置1)
図1において、半導体装置1は、半導体基板を構成するシリコン基板2を備えている。シリコン基板2は、その表面(すなわち、図1に示す上面)に素子分離領域2aと、同素子分離領域2aに囲まれた素子領域2bを有している。素子分離領域2aには、例えば、STI(Shallow Trench Isolation )構造を呈するシリコン酸化膜などの絶縁膜が埋め
込まれている。素子領域2bには、MOSトランジスタ3が形成されている。MOSトランジスタ3は、例えば、素子領域2bに形成されたゲート絶縁膜4と、ゲート絶縁膜4の両側に形成されたソース・ドレイン領域5と、ゲート絶縁膜4に積層されたゲート電極6と、ゲート電極6の外側面を覆うサイドウォール7と、によって構成される。
【0035】
シリコン基板2の表面には、MOSトランジスタ3を覆う第1層間絶縁膜8が積層されている。第1層間絶縁膜8は、例えば、リンを添加したシリコン酸化膜(PSG)やリン及びボロンを添加したシリコン酸化膜(BPSG)などにより構成することができる。第1層間絶縁膜8には、ソース・ドレイン領域5までを貫通する凹部(以下単に、コンタクトホール9という。)が形成されている。コンタクトホール9の内側には、それぞれコンタクトプラグ10が形成されている。コンタクトプラグ10は、コンタクト層/バリア層/プラグ層(例えば、チタンシリサイド/窒化チタン/タングステン)からなる積層構造により構成することができる。
【0036】
第1層間絶縁膜8の表面には、第2層間絶縁膜11が積層されている。第2層間絶縁膜11には、例えば、シリコン酸化膜やリンを添加したシリコン酸化膜などを利用することができる。第2層間絶縁膜11には、コンタクトホール9(あるいは、コンタクトプラグ10)にまで貫通する凹部(以下単に、第1トレンチ12という。)が形成され、第1トレンチ12の内側には、第1配線13が形成されている。第1配線13は、第1バリア層14/第1配線層15からなる積層構造により構成することができる。第1バリア層14としては、例えば、ホウ化ジルコニウム(ZrBx(0<x≦0.25)を用いることができ、第1配線層15としては、銅を用いることができる。第1バリア層14は、第2層間絶縁膜11及び第1配線13に対する高い密着性と、第1配線13に対する高いバリア性を有する。
【0037】
第2層間絶縁膜11の表面には、第2層間絶縁膜11と第1配線13(すなわち、第1バリア層14及び第1配線層15)とに共通する第1メタルキャップ層16が積層されている。第1メタルキャップ層16は、高い耐酸化性を有したホウ化ジルコニウム(ZrBx(x=0.5〜4.0))を主成分とする層であり、下地の導電性に応じた導電性を発現する。第1メタルキャップ層16は、例えば、第1配線13の表面に対応する領域(図1において濃いドットで示す領域)に5〜8[μΩ・cm]の比抵抗値を有する。また、第1メタルキャップ層16は、第2層間絶縁膜11の表面に対応する領域(図1において薄いドットで示す領域)に10[Ω・cm]以上の比抵抗値を有する。
【0038】
ここで、第1配線13の表面に対応する第1メタルキャップ層16の領域を、第1導電領域16aという。また、第2層間絶縁膜11の表面に対応する第1メタルキャップ層16の領域を、第1絶縁領域16bという。
【0039】
第1メタルキャップ層16は、水分に対して高いバリア性を有する。第1メタルキャップ層16は、第1導電領域16aと第1バリア層14とにより第1配線層15を囲い第1配線層15の酸化を阻止する。第1メタルキャップ層16は、第2層間絶縁膜11の表面を覆い、第2層間絶縁膜11の吸湿を阻止する。第1メタルキャップ層16は、第1配線13に対する高い密着性と高いバリア性とにより、第1配線13の金属拡散や第1配線13のマイグレーションを防止する。
【0040】
第1メタルキャップ層16は、第1導電領域16aで高い導電性を有し、かつ、第1絶縁領域16bで高い絶縁性を有する。このため、第1メタルキャップ層16は、第1配線13の粗密、表面積、形状などに関わらず、第1配線13に対応する第1導電領域16aのみで導電性を発現し、かつ、第2層間絶縁膜11に対応する第1絶縁領域16bで絶縁性を発現する。
【0041】
これにより、第1メタルキャップ層16は、隣接する第1配線13間の短絡を確実に回避できる。また、第1メタルキャップ層16は、シリコン基板2の表面全体(すなわち、第2層間絶縁膜11の表面及び第1配線13の表面)に形成されるため、第1配線13ごとの膜厚差を抑制させることができ、膜厚のバラツキに起因した第1配線13の被覆不良を回避できる。
【0042】
第1メタルキャップ層16の表面には、第3層間絶縁膜21とトレンチエッチストッパ22とが積層されている。第3層間絶縁膜21は、有機シリカガラスや多孔質のシリカガラスなどの低誘電率膜(以下単に、Low-k 膜という。)により構成することができる。トレンチエッチストッパ22は、第3層間絶縁膜21に対しエッチングの選択比がとれる膜であり、例えば、シリコン窒化膜やシリコン炭化膜などにより構成することができる。これら第3層間絶縁膜21とトレンチエッチストッパ22とには、第1メタルキャップ層16の第1導電領域16aにまで貫通する共通の凹部(以下単に、ビアホール23という。)が形成されている。
【0043】
トレンチエッチストッパ22の表面には、第4層間絶縁膜31とハードマスク32とが積層されている。第4層間絶縁膜31は、第3層間絶縁膜21と同じく、例えば、各種のLow-k 膜などにより構成することができる。ハードマスク32は、第4層間絶縁膜31との間でエッチングの選択比がとれる膜であり、例えば、シリコン窒化膜やシリコン炭化膜などにより構成することができる。これら第4層間絶縁膜31とハードマスク32には、ビアホール23に連結する共通の凹部(以下単に、第2トレンチ33という。)が貫通形成されている。
【0044】
ビアホール23と第2トレンチ33の内側には、第2配線34が形成されている。第2配線34は、ビアホール23に対応するビアコンタクト34aと、第2トレンチ33に対応する第2配線部34bを有する。第2配線34は、第2バリア層35/第2配線層36からなる積層構造により構成することができる。第2バリア層35としては、例えば、ホウ化ジルコニウム(ZrBx(0<x≦0.25)を用いることができ、第2配線層36としては、銅を用いることができる。第2バリア層35は、第3層間絶縁膜21、第4層間絶縁膜31、ビアコンタクト34a及び第2配線部34bに対する高い密着性と、ビアコンタクト34a及び第2配線部34bに対する高いバリア性を有する。
【0045】
第2配線34は、第1メタルキャップ層16の第1導電領域16aを介して第1配線1
3と接続する。第1メタルキャップ層16は、その高い耐酸化性により第1導電領域16aの酸化を防ぎ、第1配線13と第2配線34との間の電気的接続を可能にする。
【0046】
ハードマスク32の表面には、ハードマスク32と第2配線34(すなわち、第2バリア層35及び第2配線層36)とに共通する第2メタルキャップ層37が積層されている。第2メタルキャップ層37は、第1メタルキャップ層16と同じく、ZrBx(x=0.5〜4.0)を主成分とする層であり、下地の導電性に応じた導電性を有する。第2メタルキャップ層37は、例えば、第2配線34の表面に対応する領域(図1において濃いドットで示す領域)に5〜8[μΩ・cm]の比抵抗値を有する。また、第2メタルキャップ層37は、ハードマスク32の表面に対応する領域(図1において薄いドットで示す領域)に10[Ω・cm]以上の比抵抗値を有する。
【0047】
ここで、第2配線34の表面に対応する第2メタルキャップ層37の領域を、第2導電領域37aという。また、ハードマスク32の表面に対応する第2メタルキャップ層37の領域を、第2絶縁領域37bという。
【0048】
第2メタルキャップ層37は、水分に対して高いバリア性を有する。第2メタルキャップ層37は、第2導電領域37aと第2バリア層35とにより第2配線層36を囲い第2配線層36の酸化を阻止する。第2メタルキャップ層37は、ハードマスク32の表面を覆い、第4層間絶縁膜31の吸湿を阻止してlow-k 膜の誘電率を安定させる。第2メタルキャップ層37は、第2配線34に対する高い密着性と高いバリア性とにより、第2配線34からの金属拡散や第2配線34のマイグレーションを防止する。
【0049】
第2メタルキャップ層37は、第2導電領域37aで高い導電性を有し、かつ、第2絶縁領域37bで高い絶縁性を有する。このため、第2メタルキャップ層37は、第2配線34の粗密、表面積、形状などに関わらず、第2配線34に対応する第2導電領域37aのみで導電性を発現し、かつ、ハードマスク32に対応する第2絶縁領域37bで絶縁性を発現する。
【0050】
これにより、第2メタルキャップ層37は、隣接する第2配線34間の短絡を確実に回避できる。また、第2メタルキャップ層37は、シリコン基板2の表面全体(すなわち、ハードマスク32の表面及び第2配線34の表面)に形成されるため、第2配線34ごとの膜厚差を抑制させることができ、膜厚のバラツキに起因した第2配線34の被覆不良を回避できる。
【0051】
(成膜装置40)
次に、上記半導体装置の製造装置としての成膜装置40について説明する。
図2において、成膜装置40は、ロードロックチャンバ40Lと、同ロードロックチャンバ40Lに連結されたコアチャンバ40Cと、同コアチャンバ40Cに連結された4つの成膜チャンバ40Dと、を有している。ロードロックチャンバ40Lと、コアチャンバ40Cと、各成膜チャンバ40Dは、それぞれ遮断可能に連通して共通する真空系を形成可能にする。
【0052】
ロードロックチャンバ40Lは、複数のシリコン基板2を減圧空間に収容し、シリコン基板2の成膜処理を開始するとき、複数のシリコン基板2をそれぞれ成膜装置40の内部に搬入する。ロードロックチャンバ40Lは、シリコン基板2の成膜処理を終了するとき、成膜処理後のシリコン基板2を収容して大気開放し、成膜装置40の外部に搬出する。
【0053】
コアチャンバ40Cは、シリコン基板2の成膜処理を開始するとき、成膜処理前のシリコン基板2をロードロックチャンバ40Lから搬入し、各成膜チャンバ40Dに搬送する
。コアチャンバ40Cは、シリコン基板2の成膜処理を終了するとき、成膜処理後のシリコン基板2を各成膜チャンバ40Dから搬入し、ロードロックチャンバ40Lに搬送する。
【0054】
各成膜チャンバ40Dは、それぞれ原子層蒸着法(ALD:Atomic Layer Deposition
)を行うチャンバである。各成膜チャンバ40Dは、それぞれシリコン基板2の成膜処理を実行するとき、シリコン基板2をコアチャンバ40Cから搬入し、対応するZrBx膜、すなわち、第1及び第2メタルキャップ層16,37、第1及び第2バリア層14,35を成膜する。
【0055】
図3において、成膜チャンバ40Dは、その上部を開口したチャンバ本体41と、同チャンバ本体41の上部に配設されて上部開口を開閉可能にするチャンバリッド42と、を有する。成膜チャンバ40Dは、これらチャンバ本体41とチャンバリッド42とに囲まれた内部空間Sを有する。
【0056】
チャンバ本体41には、シリコン基板2を載置する基板ステージ43が配設されている。基板ステージ43は、抵抗加熱ヒータを搭載したステージである。基板ステージ43は、シリコン基板2を載置するとき、シリコン基板2を所定の温度(例えば、300[℃])に昇温させる。基板ステージ43の下側には、昇降機構44が連結されている。昇降機構44は、基板ステージ43を上下方向に昇降しシリコン基板2の搬入や搬出を可能にする。
【0057】
チャンバ本体41の一側には、排気ポートP1を介し排気ポンプ45が接続されている。排気ポンプ45は、ターボ分子ポンプやドライポンプなどの各種のポンプにより構成され、内部空間Sの圧力を所定の圧力(例えば、1[Pa]〜800[Pa])にまで減圧する。
【0058】
チャンバリッド42の下側には、内部空間Sにガスを導入するためのシャワーヘッド46が配設されている。シャワーヘッド46は、複数の第一ガス供給孔H1と、第一ガス供給孔H1から独立する複数の第二ガス供給孔H2と、を備えている。シャワーヘッド46は、各第一ガス供給孔H1から内部空間Sに向けて吸着ガス、すなわち、Zr(BHを導入する。また、シャワーヘッド46は、各第二ガス供給孔H2から内部空間Sに向けて改質ガス、すなわち、水素(H)を含むガスを導入する。
【0059】
チャンバリッド42の上部一側には、第一ガスポートP2が設けられている。第一ガスポートP2は、チャンバリッド42の内部を通してシャワーヘッド46の各第一ガス供給孔H1と連通している。第一ガスポートP2は、チャンバリッド42の外部において吸着ガス用の供給配管及び供給バルブを介しマスフローコントローラMC1及びマスフローコントローラMC2と連結している。
【0060】
マスフローコントローラMC1は、Zr(BHの供給系に連結され、第一ガスポートP2に所定の流量のZr(BHを供給する。マスフローコントローラMC1は、例えば、10[sccm]〜100[sccm]の流量範囲でZr(BHの供給量を制御する。マスフローコントローラMC1がZr(BHを供給するとき、Zr(BHは、第一ガスポートP2を通して各第一ガス供給孔H1から内部空間Sに導入され、基板ステージ43に載置されたシリコン基板2の表面に吸着する。
【0061】
マスフローコントローラMC2は、キャリアガス(例えば、アルゴン(Ar))の供給系に連結され、第一ガスポートP2に所定の流量のArを供給する。マスフローコントローラMC2は、例えば、10[sccm]〜500[sccm]の流量範囲でArの供給
量を制御する。マスフローコントローラMC2がArを供給するとき、Arは、供給配管内のZr(BHを搬送しながら内部空間Sに導入され、Zr(BHの供給状態を安定させる。なお、Zr(BHの供給状態が十分に安定している場合には、マスフローコントローラMC2を設けなくてもよい。
【0062】
チャンバリッド42の上端部には、第二ガスポートP3が設けられている。第二ガスポートP3は、チャンバリッド42の内部を通してシャワーヘッド46の各第二ガス供給孔H2と連通している。第二ガスポートP3は、チャンバリッド42の外部において改質ガス用の供給配管及び供給バルブを介しマスフローコントローラMC3、マスフローコントローラMC4、及びマスフローコントローラMC5と連結している。
【0063】
各マスフローコントローラMC3,MC4,MC5は、それぞれ水素(H)、Ar、シボラン(B)の供給系に連結され、第二ガスポートP3に所定の流量のH、Ar、Bを供給する。マスフローコントローラMC3,MC4,MC5は、例えば、それぞれ10[sccm]〜500[sccm]の流量範囲でH、Ar、Bの供給量を制御する。各マスフローコントローラMC3,MC4,MC5がそれぞれH、Ar、Bを供給するとき、H、Ar、Bは、それぞれ第二ガスポートP3を通して各第二ガス供給孔H2から内部空間Sに導入され、基板ステージ43に載置されたシリコン基板2の表面に到達する。
【0064】
チャンバリッド42の上部であって、第二ガスポートP3と第二ガス供給孔H2との間の流路には、照射管47が設けられている。照射管47は、石英管あるいはアルミナ管からなる耐熱性の円筒管であって、第二ガスポートP3に供給された改質ガスを各第二ガス供給孔H2に向けて導出する。
【0065】
照射管47の外側であって、照射管47の長手方向の途中には、マイクロ波電源FGに駆動されるマイクロ波源48と、マイクロ波源48に連結されて照射管47に向かって延びる導波管49と、が配設されている。
【0066】
マイクロ波源48は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発振器(すなわち、マグネトロン)であって、マイクロ波電源FGの駆動電力を受けて所定の出力範囲(例えば、0.1〜3.0[kW])のマイクロ波を間欠的に出力させる。導波管49は、マイクロ波源48が発振するマイクロ波を導波管49の内部に伝播させて照射管47の内部に導入する。導波管49は、マイクロ波源48がマイクロ波を発振するとき、照射管47を通過する改質ガスにマイクロ波を照射し、改質ガスを励起させて活性化させる(すなわち、プラズマ化させる)。
【0067】
第二ガスポートP3から照射管47に導入される改質ガスは、各第二ガス供給孔H2から内部空間Sに導入され、マイクロ波源48がマイクロ波を発振する間だけ、プラズマ化した状態で導入される。シリコン基板2の表面に吸着したZr(BHは、プラズマ化した改質ガスと反応しシリコン基板2の表面にZrBx膜を形成する。
【0068】
次に、上記成膜装置40の電気的構成について説明する。
図4において、制御部51は、成膜装置40に各種の処理動作(例えば、シリコン基板2の搬送処理動作やシリコン基板2の成膜処理動作など)を実行させるものである。制御部51は、各種の演算処理を実行するCPUと、各種のデータや各種の制御プログラムを格納する記憶部51Aと、各種の処理工程ごとにプロセス時間を計時するタイマ51Bと、を有する。制御部51は、例えば、記憶部51Aが格納する成膜処理プログラムを読み出し、タイマ51Bが計時するプロセス時間と、読み出した成膜処理プログラムと、に従って、複数の処理工程(吸着工程や改質工程など)からなる成膜処理動作を実行させる。
【0069】
制御部51には、入出力部52が接続されている。入出力部52は、起動スイッチや停止スイッチなどの各種操作スイッチと、液晶ディスプレイなどの各種表示装置とを有する。入出力部52は、各処理動作に利用するデータを制御部51に入力し、成膜装置40の処理状況に関するデータを出力する。入出力部52は、例えば、成膜時の各種のパタメータ(ガスの流量やマイクロ波電源FGの出力値など)に関するデータ(以下単に、成膜条件データIdという。)を制御部51に入力する。制御部51は、入出力部52から入力される成膜条件データIdを受信し、成膜条件データIdに対応する成膜条件の下で成膜処理動作を実行させる。
【0070】
制御部51には、排気系を駆動制御するための排気系駆動回路53が接続されている。制御部51は、排気系駆動回路53に対応する駆動制御信号を排気系駆動回路53に出力する。排気系駆動回路53は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、チャンバ内(例えば、内部空間S)を所定の圧力に減圧させるための排気系(例えば、排気ポンプ45)を駆動させる。
【0071】
制御部51には、搬送系駆動回路54が接続されている。制御部51は、搬送系駆動回路54に対応する駆動制御信号を搬送系駆動回路54に出力する。搬送系駆動回路54は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、シリコン基板2を搬送させるための搬送系(例えば、昇降機構44)を駆動させる。
【0072】
制御部51には、マスフローコントローラ駆動回路55が接続されている。制御部51は、マスフローコントローラ駆動回路55に対応する駆動制御信号をマスフローコントローラ駆動回路55に出力する。マスフローコントローラ駆動回路55は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、各ガスを供給させるための各マスフローコントローラMC1〜MC5をそれぞれ駆動させる。
【0073】
制御部51には、マイクロ波電源駆動回路56が接続されている。制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56に対応する駆動制御信号をマイクロ波電源駆動回路56に出力する。マイクロ波電源駆動回路56は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、マイクロ波を発振させるためのマイクロ波電源FGを駆動させる。
【0074】
次に、上記成膜装置40の成膜処理動作について説明する。なお、第1及び第2バリア層14,35の成膜処理動作は、第1及び第2メタルキャップ層16,37の成膜処理動作に対して、各ガスの流量を変更するものである。そのため、以下では、第1及び第2メタルキャップ層16,37の成膜処理動作について詳細に説明する。
【0075】
まず、制御部51は、入出力部52から成膜条件データIdを受信する。制御部51は、排気系駆動回路53を介して排気ポンプ45を駆動し内部空間Sを所定の到達圧力(例えば、1[Pa])まで減圧させる。制御部51は、内部空間Sを減圧させると、搬送系駆動回路54を介して搬送系を駆動しロードロックチャンバ40Lのシリコン基板2を成膜チャンバ40Dまで搬送させる。そして、制御部51は、搬送系駆動回路54を介して昇降機構44を駆動し基板ステージ43にシリコン基板2を載置させ、同シリコン基板2を所定の温度(例えば、300[℃])に昇温して保持させる。
【0076】
なお、この際、第1及び第2メタルキャップ層16,37の成膜処理動作においては、シリコン基板2の表面として、第2層間絶縁膜11及び第1配線13、あるいは、ハードマスク32及び第2配線34が形成されている。また、第1及び第2メタルキャップ層16,37の成膜処理動作においては、シリコン基板2の表面として、第2層間絶縁膜11及び第1トレンチ12、あるいは、第4層間絶縁膜31、ビアホール23及び第2トレン
チ33が形成されている。
【0077】
制御部51は、基板ステージ43にシリコン基板2を載置させると、マスフローコントローラ駆動回路55及びマイクロ波電源駆動回路56を介して、成膜条件データIdに応じた各処理工程を実行する。
【0078】
すなわち、図5において、制御部51は、成膜プロセスを開始させると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1,MC2のオン制御を実行し、内部空間Sに所定の流量の吸着ガスを導入させる。すなわち、吸着工程を開始させる。例えば、制御部51は、マスフローコントローラMC1に30[sccm]のZr(BHを導入させる。また、制御部51は、マスフローコントローラMC2に100[sccm]のArを導入させる。
【0079】
制御部51は、吸着ガスを導入するとき、同時に、マスフローコントローラ駆動回路55を介して各マスフローコントローラMC3〜MC5のオン制御を実行し、上記吸着ガスの導入と同様に、所定の流量の改質ガスを内部空間Sに導入させる。例えば、制御部51は、各マスフローコントローラMC3,MC4,MC5にそれぞれ100[sccm]のHと、100[sccm]のArと、100[sccm]のBを導入させる。
【0080】
図6において、内部空間Sに導入されるZr(BHは、シリコン基板2の表面との間の強い相互作用により同表面に吸着する。すなわち、Zr(BHは、シリコン基板2の表面に対し物理的又は化学的に吸着する吸着分子MAとして機能し、同表面の全体にわたり単分子層を形成する。
【0081】
吸着分子MAの一部は、シリコン基板2の表面に吸着するとき、同表面からの熱量を受けて熱分解され、分解生成物MPと副生成物BPを生成する。そのため、吸着分子MAからなる単分子層の一部は、その熱分解による分解生成物MPとしてZrBx(図6のグラデーション部分)を生成し、副生成物BPとして揮発性のBHやB(図6の黒丸部分)などを生成する。
【0082】
吸着分子MAの一部は、シリコン基板2に吸着するとき、同表面の酸化源や内部空間Sの酸化源(例えば、酸素)によって酸化され、酸化物MOを生成する。すなわち、吸着分子MAからなる単分子層の一部は、その酸化反応により、酸化物MOとしてZrOやB(図6のハッチング部分)などを含む。
【0083】
一方、内部空間Sに導入された改質ガスは、それぞれ所定の時間だけ内部空間Sに滞在する。改質ガスは、内部空間Sで反応することなく、未反応ガスN(図6の黒丸部分)として順次排気される。
【0084】
なお、内部空間Sに吸着ガスを導入している期間を、吸着期間Taという。吸着期間Taは、予め試験等に基づいて設定され、吸着分子MAがシリコン基板2の表面の全体にわたり一分子層を形成させる期間(例えば、1秒〜5秒)に設定されている。
【0085】
図5において、制御部51は、吸着ガス及び改質ガスを導入させてプロセス時間が吸着期間Taだけ経過すると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1,MC2のオフ制御を実行し、吸着ガスについてのみ、その供給を停止させる。すなわち、吸着工程を終了させる。
【0086】
制御部51は、吸着工程を終了させると、マイクロ波電源駆動回路56を介してマイクロ波電源FGのオン制御を実行し、マイクロ波源48にマイクロ波を発振させる。そして
、制御部51は、内部空間Sに到達する前の改質ガスを照射管47内で活性化し、プラズマ状態の改質ガスを内部空間Sに導入させる。すなわち、改質工程を開始させる。
【0087】
図7において、プラズマ状態の水素(以下単に、水素活性種という。)Rは、Zr(BHの分解反応を促進させ、シリコン基板2の表面に吸着した全てのZr(BHを利用して分解生成物MP、すなわちZrBxと、副生成物BPと、を生成する。また、水素活性種Rは、シリコン基板2の表面に生成されたZrOなどの酸化物MOを還元し、還元生成物(すなわち、ZrBx)を生成する。また、水素活性種Rは、シリコン基板2の表面に生成されたBなどの酸化物MOを還元し、揮発性の還元生成物(すなわち、BHやBなど:図7の黒丸部分)を生成する。
【0088】
これにより、水素活性種Rは、シリコン基板2の表面全体にわたって、ZrBxからなる均一な単分子膜MLを形成させる。なお、この間、改質ガスに含まれるArは、水素活性種Rのプラズマ状態を安定させる。また、改質ガスに含まれるBは、Zr(BHの過剰な分解反応を抑制させる。
【0089】
なお、マイクロ波源48にマイクロ波を発振させている期間を、改質期間Trという。改質期間Trは、予め試験等に基づいて設定され、吸着分子MAの単分子層が反応し分解生成物MPの単分子膜を生成する期間(例えば、1秒〜10秒)に設定されている。
【0090】
図5において、制御部51は、マイクロ波を発振させてプロセス時間が改質期間Trだけ経過すると、マイクロ波電源駆動回路56を介してマイクロ波電源FGのオフ制御を実行し、マイクロ波の発振を停止させる。すなわち、改質工程を終了させる。
【0091】
制御部51は、改質工程を終了させると、再び、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1,MC2のオン制御を実行し、所定の流量の吸着ガスを内部空間Sに導入させる。すなわち、再び、吸着工程を開始させる。以後同様に、制御部51は、吸着工程と改質工程を交互に繰り返し、分解生成物MPからなる単分子層を順次積層させる。
【0092】
これにより、成膜装置40は、ZrBxからなるメタルキャップ層16,37を単原子層ずつ積み重ねて形成させることができる。そのため、メタルキャップ層16,37が、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。
【0093】
また、成膜装置40は、ZrBxからなるバリア層14,35を単原子層ずつ積み重ねて形成させることができる。そのため、バリア層14,35によって、第1トレンチ12、ビアホール23及び第2トレンチ33の内側面を均一に被覆させることができ、下地の情報に関わらず、そのバリア層14,35に導電性を与えることができる。
【0094】
次に、上記成膜装置40を用いて形成したZrBx膜に関し、Cuに対するバリア性、水分に対するバリア性、絶縁膜上での導電性、金属膜上での導電性、金属膜に対する密着性について以下に説明する。
【0095】
(Cuに対するバリア性)
膜厚が100nmの銅膜を有した複数のシリコンウェハ上に、それぞれ組成比xの異なるZrBx膜を約20nmだけ積層した。そして、下地に銅膜を有し、組成比xを0.25〜5.00まで変動させた複数のZrBx膜を得た。
【0096】
この際、吸着ガスとしてZr(BHを30[sccm]、Arを100[sccm]に設定した。また、吸着期間Taを3秒、改質期間Trを5秒に設定し、ウェハ温度を300
[℃]に調整した。そして、改質ガスとしてArを100[sccm]に設定し、Hの流量を変更して各組成比xのZrBx膜を得た。尚、各ZrBx膜の組成比xは、それぞれXPSにより計測した。
【0097】
組成比xの異なる各ZrBx膜(x=0.25〜5.00)に対し、それぞれ500[℃]の雰囲気で1時間のアニール処理を施し、アニール処理後の各ZrBx膜について、それぞれSIMS(Sec ondary Ion Mass Spectrometer )測定を実施し、膜厚方向に関する元素分析を行った。
【0098】
上記元素分析では、各ZrBx膜(x=0.25〜5.00)の中に銅の存在が認められなかった。したがって、上記成膜装置40を用い、Cu配線(金属膜)をZrBx膜で囲うことにより、Cu(金属)の拡散を阻止させることができる。
【0099】
(水分に対するバリア性)
Cuに対するバリア性の評価と同じく、下地に銅膜を有し、組成比xを0.25〜5.00まで変動させた複数のZrBx膜を得た。そして、各ZrBx膜(x=0.25〜5.00)に対し、それぞれ重水を用いたプレッシャークッカーテストを実施した。すなわち、各ZrBx膜に対し、それぞれ120[℃]に加熱した2気圧の重水の水蒸気雰囲気下で168時間の加熱加圧処理を施し、該処理後の各ZrBx膜について、それぞれSIMS測定を実施し、膜厚方向に関する元素分析を行った。
【0100】
上記元素分析では、各ZrBx膜(x=0.25〜5.00)の中に、それぞれ表面から10nm程度の深さまで重水素原子及び酸素原子の存在が認められた。したがって、上記の成膜装置40によるZrBx膜は、その膜厚が20nm程度になることにより、下地に対する水分の侵入を十分に阻止することができる。
【0101】
(絶縁膜上の導電性)
シリコン酸化膜を有した複数のシリコンウェハ上に、それぞれ組成比xの異なるZrBx膜を約20nmだけ積層した。そして、下地にシリコン酸化膜(絶縁膜)を有し、組成比xを0.25〜5.00まで変動させた複数のZrBx膜を得た。
【0102】
この際、吸着ガスとしてZr(BHを30[sccm]、Arを100[sccm]に設定した。また、吸着期間Taを3秒、改質期間Trを5秒に設定し、ウェハ温度を300[℃]に調整した。そして、改質ガスとしてArを100[sccm]に設定し、Hの流量を変更して各組成比xのZrBx膜を得た。
【0103】
そして、各ZrBx膜(x=0.25〜5.00)の面内49点についてシート抵抗値を計測し、49点の平均値を算出してZrBx膜のシート抵抗値とした。各ZrBx膜のシート抵抗値を表1及び表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

表1及び表2において、“∞”は、対応するZrBx膜のシート抵抗値が計測した49点の全てにおいて検出限界を超えた値(10[Ω/□]以上)であることを示す。
【0106】
表1及び表2において、ZrBx膜は、x=0.5〜4.0の範囲において、そのシート抵抗値を“∞”にすることが分かる。すなわち、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層されたZrBx膜は、組成比x=0.5〜4.0の範囲で、高い絶縁性を発現し、Zrの単体に近くなる組成比x(0<x≦0.25)において導電性を発現することが分かる。したがって、上記成膜装置40を用い、ZrBx膜(x=0.5〜4.0)を絶縁膜上に積層させることにより、該ZrBx膜を絶縁膜として機能させることができる。また、上記成膜装置40を用い、ZrBx膜(0<x≦0.25)を第1トレンチ12、ビアホール23及び第2トレンチ33の内側面に積層させることにより、該ZrBx膜の全体を導電性のバリア膜として機能させることができる。
【0107】
(金属膜上の導電性)
Cuに対するバリア性の評価と同じく、下地に銅膜を有し、組成比xを0.25〜5.00まで変動させた複数のZrBx膜を得た。そして、各ZrBx膜(x=0.25〜5.0)の面内49点についてシート抵抗値を計測し、49点の平均値を算出してZrBx膜のシート抵抗値とした。各ZrBx膜のシート抵抗値、及び各ZrBx膜を成膜する前の銅膜のみのシート抵抗値を表3及び表4に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

表3及び表4において、ZrBx膜は、その組成比xの全範囲(x=0.25〜5.0)で、銅膜に近い低抵抗値を有し、銅膜(金属膜)上で高い導電性を発現することが分かる。したがって、上記成膜装置40を用い、ZrBx膜(x=0.25〜5.0)を銅膜(金属膜)に積層することにより、該ZrBx膜を金属膜として機能させることができる。すなわち、金属膜と絶縁膜とからなる表面にZrBx膜(x=0.5〜4.0)を積層させることにより、該ZrBx膜を、成膜選択性を要しないメタルキャップ層として機能させることができる。
【0110】
(金属膜に対する密着性)
Cuに対するバリア性の評価と同じく、下地に銅膜を有し、組成比xを0.25〜5.00まで変動させた複数のZrBx膜を得た。そして、各ZrBx膜(x=0.25〜5.0)について密着性テストを行った。すなわち、カーターナイフを用い、シリコンウェハの表面(ZrBx膜及び銅膜)に3mm間隔の格子状のスクラッチを形成し、該スクラッチ上に粘着テープを貼着して剥がした。そして、ZrBx膜が銅膜から剥がれるか否か(粘着テープにZrBx膜が付着するか否か)を検出した。
【0111】
上記密着性評価の結果、ZrBx膜は、その組成比xの全範囲(x=0.25〜5.0)において剥がれが認められず、銅膜と間に十分な密着性を有することが分かった。したがって、上記成膜装置40を用い、ZrBx膜(x=0.25〜5.0)で銅膜(金属膜)を囲うことにより、機械的耐性を有したメタルキャップ層とバリア層を形成させることができる。
【0112】
(半導体装置1の製造方法)
次に、上記半導体装置1の製造方法について説明する。
まず、図1に示すように、シリコン基板2の表面に、素子分離領域2aと、素子領域2bと、を区画形成する。例えば、公知のSTIプロセスを用いて、素子分離領域2aにシリコン酸化膜を埋め込む。また、公知のMOSプロセスを用いて、ゲート絶縁膜4、ソース・ドレイン領域5、ゲート電極6、サイドウォール7などを形成し、素子領域2bにMOSトランジスタ3を形成する。
【0113】
MOSトランジスタ3を形成すると、シリコン基板2の表面に第1層間絶縁膜8を積層し、コンタクトプラグ10を形成する。例えば、CVD技術を用いて、シリコン基板2の表面にMOSトランジスタ3を覆うシリコン酸化膜を積層して第1層間絶縁膜8を形成し、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、第1層間絶縁膜8にコンタクトホール9を形成する。次いで、スパッタリング技術又はCVD技術を用いて、コンタクトホール9にチタンシリサイド/窒化チタン/タングステンを埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing )技術あるいはエッチバック技術を用いて平坦化し、コンタクトプラグ10を形成する。
【0114】
コンタクトプラグ10を形成すると、第1層間絶縁膜8の表面に第2層間絶縁膜11を積層し、第2層間絶縁膜11に第1トレンチ12を形成する。すなわち、絶縁層工程を実行し、続いて凹部工程を実行する。例えば、絶縁層工程は、CVD技術を用いて、第1層間絶縁膜8の表面にシリコン酸化膜を積層して第2層間絶縁膜11を形成し、凹部工程は、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、第1トレンチ12を形成する。
【0115】
第1トレンチ12を形成すると、第1トレンチ12内を含む第2層間絶縁膜11の表面に第1配線13を積層し、第2層間絶縁膜11の表面と第1配線13の表面を平坦化させる。すなわち、金属層工程を実行し、続いて平坦化工程を実行する。例えば、金属層工程は、シリコン基板2を上記成膜装置40に搬送して、上記吸着工程と上記改質工程とを交互に繰り返し、第1トレンチ12内を含む第2層間絶縁膜11の表面に、第1バリア層14としてのZrBx膜(0<x≦0.25)を積層する。次いで、無電解メッキ技術あるいはCVD技術を用いて、第1バリア層14の表面に銅のシード層を形成し、第1トレンチ12の内側を含むシリコン基板2の全体に銅を析出させて第1配線層15を形成する。平坦化工程は、CMP技術を用いて、第1バリア層14及び第1配線層15を研磨し、第1バリア層14及び第1配線層15の表面を第2層間絶縁膜11の表面と略面一にして第1配線13を形成する。
【0116】
第1配線13を形成すると、シリコン基板2を上記成膜装置40に搬送し、第2層間絶縁膜11及び第1配線13の表面に第1メタルキャップ層16を形成する。すなわち、上記吸着工程と上記改質工程とを交互に繰り返し、分解生成物MPからなる単分子層を順次積層させる(メタルキャップ層工程を実行する)。そして、シリコン基板2の表面全体、すなわち第2層間絶縁膜11の表面と第1配線13の表面に、共通するZrBx膜を積層する。
【0117】
ZrBx膜は、下地の導電性に応じた導電性を発現するため、第1配線13の表面に対応する第1導電領域16aで高い導電性を発現し、かつ、第2層間絶縁膜11の表面に対応する第1絶縁領域16bで高い絶縁性を発現する。すなわち、ZrBx膜は、第1配線13の形状やサイズに関わらず隣接する第1配線13の短絡を回避できる。
【0118】
ZrBx膜は、高い耐酸化性と高いバリア性を有するため、製造過程におけるZrBx膜自身の酸化、第1配線13の酸化、第2層間絶縁膜11の吸湿などを阻止する。また、ZrBx膜は、第1配線13との間に高い密着性を有するため、第1メタルキャップ層16の膜剥がれといった機械的損傷を回避できる。しかも、このZrBx膜は、上記成膜チャンバ40Dによりシリコン基板2の全体に成膜される。そのため、第1配線13ごとにメタルキャップ層を形成させる場合に比べ、このZrBx膜は、第1配線13間の膜厚差を抑制し、膜厚のバラツキに起因した第1配線13の被覆不良を回避できる。
【0119】
第1メタルキャップ層16を形成すると、第1メタルキャップ層16の表面に第3層間絶縁膜21、トレンチエッチストッパ22、第4層間絶縁膜31、ハードマスク32を順に積層する。すなわち、絶縁層工程を実行する。
【0120】
例えば、絶縁層工程は、CVD技術又はスピンコート技術を用いて、第1メタルキャップ層16の表面に有機シリカガラスを積層して第3層間絶縁膜21を形成し、CVD技術を用いて、第3層間絶縁膜21の表面にシリコン炭化膜を積層してトレンチエッチストッパ22を形成する。また、CVD技術あるいはスピンコート技術を用いて、トレンチエッチストッパ22の表面に有機シリカガラスを積層して第4層間絶縁膜31を形成し、CVD技術を用いて、第4層間絶縁膜31の表面にシリコン炭化膜を積層してハードマスク32を形成する。
【0121】
ハードマスク32を形成すると、第3層間絶縁膜21、トレンチエッチストッパ22、第4層間絶縁膜31、及びハードマスク32に、ビアホール23及び第2トレンチ33を形成する。すなわち、凹部工程を実行する。例えば、凹部工程は、ビアホール23を先行して形成するビアファースト法を利用し、ビアホール23及び第2トレンチ33を形成する。
【0122】
ビアホール23と第2トレンチ33を形成すると、ビアホール23内及び第2トレンチ33内を含む第4層間絶縁膜31の表面に第2配線34を積層し、第4層間絶縁膜31の表面と第2配線34の表面を平坦化させる。すなわち、金属層工程を実行し、続いて平坦化工程を実行する。例えば、金属層工程は、シリコン基板2を上記成膜装置40に搬送して、上記吸着工程と上記改質工程とを交互に繰り返し、ビアホール23及び第2トレンチ33内を含む第4層間絶縁膜31の表面に、第2バリア層35としてのZrBx膜(0<x≦0.25)を積層する。次いで、無電解メッキ技術あるいはCVD技術を用いて、第2バリア層35の表面に銅のシード層を形成し、ビアホール23及び第2トレンチ33の内側を含むシリコン基板2の全体に銅を析出させて第2配線層36を形成する。平坦化工程は、CMP技術を用いて、第2バリア層35及び第2配線層36を研磨し、第2バリア層35及び第2配線層36の表面をハードマスク32の表面と略面一にして第2配線34を形成する。
【0123】
第2配線34を形成すると、シリコン基板2を上記成膜装置40に搬送し、ハードマスク32及び第2配線34の表面に第2メタルキャップ層37を形成する。すなわち、上記吸着工程と上記改質工程を交互に繰り返し、分解生成物MPからなる単分子層を順次積層させる(メタルキャップ層工程を実行する)。そして、シリコン基板2の表面全体、すなわちハードマスク32の表面と第2配線34の表面に、共通するZrBx膜を積層する。
【0124】
ZrBx膜は、高い耐酸化性と高いバリア性を有するため、製造過程におけるZrBx膜自身の酸化、第2配線34の酸化、第4層間絶縁膜31の吸湿などを阻止する。また、ZrBx膜は、第2配線34との間に高い密着性を有するため、第2メタルキャップ層37の膜剥がれといった機械的損傷を回避できる。しかも、このZrBx膜は、上記成膜チャンバ40Dによりシリコン基板2の全体に成膜される。そのため、第2配線34ごとにメタルキャップ層を形成させる場合に比べ、このZrBx膜は、第2配線34間の膜厚差を抑制し、膜厚のバラツキに起因した第2配線34の被覆不良を回避できる。
【0125】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態によれば、成膜チャンバ40Dの内部空間Sに吸着期間Taの間だけZr(BHを導入した。そして、シリコン基板2の表面、すなわち第2層間絶縁膜11の表面及び第1配線13の表面、あるいはハードマスク32の表面及び第2配線34の表面にZr(BHを吸着させ、吸着分子MAからなる単分子層を形成した。また、吸着期間Taの経過後、照射管47の内部に改質期間Trの間だけマイクロ波を照射し、プラズマ化したHを、すなわち水素活性種をシリコン基板2の表面に供給した。そして、Zr(BHの供給と、水素活性種の供給と、を交互に繰り返して、ZrBx(0.5≦x≦4.0)からなるメタルキャップ層16,37を形成した。
【0126】
したがって、メタルキャップ層16,37を単原子層ずつ積み重ねることができ、メタルキャップ層16,37が、それぞれ対応する下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。この結果、各メタルキャップ層16,37が、それぞれ第1配線13及び第2配線34に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する第1配線13間及び隣接する第2配線34間の短絡を回避できる。しかも、各メタルキャップ層16,37が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くこと
ができる。よって、各メタルキャップ層16,37の信頼性と生産性を向上させた半導体装置1を提供させることができる。
【0127】
(2)上記実施形態では、吸着期間Taと改質期間Trの双方で継続的に改質ガス(Hを含むガス)を供給する。そして、改質期間Trの間だけ改質ガスにマイクロ波を照射する。したがって、改質ガスが継続的に供給されるため、間欠的な改質ガスの供給に比べ、改質ガスの供給量や改質ガスのプラズマ状態を安定させることができる。この結果、Zr(BHの改質を高い再現性の下で行うことができ、ZrBxの均一性と安定性を向上させることができる。
【0128】
(3)上記実施形態では、改質ガスにArを添加するため、改質ガスのプラズマ状態を安定させることができる。しかも、副生成物BPの除去を、Arによって促進させることができる。したがって、Zr(BHを、より高い再現性の下で改質することができ、かつ、ZrBxの膜特性を安定させることができる。
【0129】
(4)上記実施形態では、改質ガスにBを添加するため、Zr(BHの改質速度を調整することができる。この結果、吸着したZr(BHに対し、より均一なZr−B結合を形成させることができる。
【0130】
(5)上記実施形態では、第1トレンチ12の内部、ビアホール23の内部、及び第2トレンチ33の内部に対して、Zr(BHの供給と、水素活性種の供給と、を交互に繰り返し、ZrBx(0<x≦0.25)からなるバリア層14,35を形成する。
【0131】
したがって、メタルキャップ層16,37とバリア層14,35とを共通する元素によって構成することができる。したがって、メタルキャップ層16,37とバリア層14,35の形成工程においては、各種の条件(例えば、熱的制限に基づく加熱温度や化学的制限に基づく成膜雰囲気)を共通にさせることができ、ひいては半導体装置1の生産性を、より向上させることができる。しかも、バリア層14,35の全体に導電性を与えることができ、バリア層14,35にZrBx(0.5<x≦4.0)を用いる場合に比べて、各配線13,34の低抵抗化を図ることができる。
【0132】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態では、改質工程の期間だけ、マイクロ波を発振させる構成にした。これに限らず、例えば、図8に示すように、改質工程と吸着工程の双方で、マイクロ波を発振させる構成にしてもよい。すなわち、内部空間Sに対し吸着ガスを導入するときに、同内部空間Sに対し水素活性種を導入する構成にしてもよい。この構成によれば、吸着ガス(Zr(BH)の分解反応が吸着工程の気相中で生じる。この結果、未反応の吸着分子MAを、より確実に低減でき、吸着工程と改質工程との双方で、より均一なZr−B結合を形成させることができる。
【0133】
・上記実施形態では、改質ガスを、吸着工程と改質工程の双方で継続的に供給する構成にした。これに限らず、例えば、改質ガスを、改質工程にのみ利用し、改質ガスの供給を吸着期間Taの間だけ遮断する構成にしてもよい。さらには、吸着工程と改質工程との間に、内部空間Sに滞在するガスを排気する工程を介在させてもよい。これによれば、吸着ガスと改質ガスとを、確実に分離して供給することができる。したがって、吸着分子MAによる表面吸着反応の制御性と、改質ガスによる改質反応(Zr(BHの分解反応)の制御性と、を向上させることができる。
【0134】
・上記実施形態では、金属層を第1配線13及び第2配線34に具体化した。これに限らず、例えば、金属層を容量素子の電極や誘導素子に具体化してもよい。
・上記実施形態では、マスフローコントローラMC5をジボランの供給元に接続し、内部空間Sにジボランを導入させる構成にした。これに限らず、例えば、マスフローコントローラMC5をボランの供給元に接続し、内部空間Sにボランを導入させる構成にしてもよい。この構成においても、Zr(BHの分解反応に対して、その反応速度を制御することができ、過剰な分解反応を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の半導体装置を示す要部断面図。
【図2】成膜装置を示す平面図。
【図3】成膜チャンバを示す概略断面図。
【図4】成膜装置の電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】半導体装置の製造工程を示すタイムチャート。
【図6】吸着工程を説明する工程図。
【図7】改質工程を説明する工程図。
【図8】変更例における半導体装置の製造工程を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0136】
MC1…第一供給手段を構成するマスフローコントローラ、MC3…第二供給手段を構成する水素供給部としてのマスフローコントローラ、MC4…アルゴン供給部を構成するマスフローコントローラ、MC5…ジボラン供給部を構成するマスフローコントローラ、R…水素活性種、S…内部空間、1…半導体装置、2…半導体基板としてのシリコン基板、2b…素子領域、11…絶縁層を構成する第2層間絶縁膜、12…凹部を構成する第1トレンチ、13…金属層を構成する第1配線、15…第1配線層、16…第1メタルキャップ層、21…絶縁層を構成する第3層間絶縁膜、23…凹部を構成するビアホール、33…凹部を構成する第2トレンチ、31…絶縁層を構成する第4層間絶縁膜、34…金属層を構成する第2配線、36…第2配線層、37…第2メタルキャップ層、40…半導体装置の製造装置としての成膜装置、41…チャンバ本体、43…基板ステージ、48…マイクロ波照射部を構成するマイクロ波源、49…マイクロ波照射部を構成する導波管、51…制御手段を構成する制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子領域を有する半導体基板に絶縁層を積層する絶縁層工程と、
前記絶縁層に凹部を形成する凹部工程と、
前記凹部に金属層を埋め込む金属層工程と、
前記絶縁層の表面と前記金属層の表面とを略同一面に平坦化する平坦化工程と、
平坦化した前記絶縁層の表面及び前記金属層の表面に原子層蒸着法を利用してZrBx(x=0.5〜4.0)を主成分とするメタルキャップ層を成膜するメタルキャップ層工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記メタルキャップ層工程は、
前記半導体基板の表面にZr(BHを吸着させる吸着工程と、
前記Zr(BHが吸着した前記半導体基板の表面に水素活性種を供給し、前記半導体基板の表面に吸着した前記Zr(BHを前記ZrBxに改質させる改質工程と、
を備えたこと特徴とした半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記吸着工程及び前記改質工程は、
前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素を供給すること、
前記改質工程は、
前記水素が前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素にマイクロ波を照射すること、
を特徴とした半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記吸着工程及び前記改質工程は、
前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素とアルゴンを供給し、
前記改質工程は、
前記水素と前記アルゴンが前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素と前記アルゴンの混合ガスにマイクロ波を照射すること、
を特徴とした半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記吸着工程及び前記改質工程は、
前記半導体基板の表面に向けて継続的に水素とジボランを供給し、
前記改質工程は、
前記水素と前記ジボランが前記半導体基板の表面に到達する前に、前記水素と前記ジボランの混合ガスにマイクロ波を照射すること、
を特徴とした半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記金属層工程は、
前記凹部の内側面を含む前記絶縁層の表面に原子層蒸着法を利用してZrBx(0<x≦0.25)を主成分とするバリア層を成膜する工程と、
前記バリア層に銅膜を積層して前記凹部を埋め込む工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
チャンバ本体と、
前記チャンバ本体の内部空間に設けられ半導体基板を載置するステージと、
前記内部空間にZr(BHを供給する第一供給手段と、
前記内部空間に水素活性種を供給する第二供給手段と、
前記第一供給手段及び前記第二供給手段を駆動制御する制御手段と、を備え、
前記半導体基板は、
基板表面に形成された絶縁層と、前記絶縁層の凹部に埋め込まれて前記絶縁層の表面と略同一面を形成する金属層とを有し、
前記制御手段は、
前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して前記内部空間に前記Zr(BHと前記水素活性種を交互に供給し、前記絶縁層及び前記金属層の表面にZr(BHを吸着させた後、前記Zr(BHを前記水素活性種によりZrBx(x=0.5〜4.0)に改質させること、
を特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記第二供給手段は、
前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、
前記水素が前記内部空間に到達する前に前記水素にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、
前記制御手段は、
前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき、前記水素供給部を駆動して前記内部空間に前記水素を供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記水素を継続的に供給させながら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記水素にマイクロ波を照射させること、
を特徴とした半導体装置の製造装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記第二供給手段は、
前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、
前記内部空間にアルゴンを供給するアルゴン供給部と、
前記水素と前記アルゴンが前記内部空間に到達する前に前記水素と前記アルゴンの混合ガスにマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、
前記制御手段は、
前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき、前記水素供給部及び前記アルゴン供給部を駆動して前記内部空間に前記水素と前記アルゴンの混合ガスを供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記混合ガスを継続的に供給させながら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記混合ガスにマイクロ波を照射させること、
を特徴とした半導体装置の製造装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置であって、
前記第二供給手段は、
前記内部空間に水素を供給する水素供給部と、
前記内部空間にジボランを供給するジボラン供給部と、
前記水素と前記ジボランが前記内部空間に到達する前に前記水素と前記ジボランの混合ガスにマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、を備え、
前記制御手段は、
前記半導体基板の表面に前記Zr(BHを吸着させるとき、前記水素供給部及び前記ジボラン供給部を駆動して前記内部空間に前記水素と前記ジボランの混合ガスを供給させ、前記Zr(BHの供給を停止した後、前記混合ガスを継続的に供給させなが
ら前記マイクロ波照射部を駆動して前記内部空間に到達する前の前記混合ガスにマイクロ波を照射させること、
を特徴とした半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−99583(P2009−99583A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266669(P2007−266669)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】