説明

半導体装置の製造方法及び成膜システム

【課題】フッ素添加カーボン膜(CF膜)上にハードマスク用の薄膜であるSiCO膜あるいはSiCN膜を成膜するにあたり、その薄膜とフッ素添加カーボン膜との間で大きな密着性を得ること。
【解決手段】 SiCO膜をハードマスクとして使用する場合に、CF膜をシリコンの有機化合物例えばトリメチルシランガスを活性化したプラズマ雰囲気に例えば5〜10秒程度曝し、次いでこのプラズマに窒素プラズマを加えてフッ素添加カーボン膜の上にSiCN膜を成膜し、その後例えばトリメチルシランガスと酸素ガスとを活性化したプラズマによりSiCO膜を成膜する。SiCO膜の成膜時に、酸素の活性種がCF膜中の炭素と反応することが抑えられ、従ってCF膜の脱ガス量が低減する。またSiCN膜をハードマスクとして使用する場合も、同様に最初にトリメチルシランガスのプラズマ処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素添加カーボン膜を絶縁膜例えば層間絶縁膜として用いた半導体装置を製造する方法及び成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化を図るための手法の一つとして配線を多層化する技術があり、多層配線構造をとるためには、n番目の配線層と(n+1)番目の配線層とを導電層で接続すると共に導電層以外の領域は層間絶縁膜と呼ばれる薄膜が形成される。この層間絶縁膜の代表的なものとしてSiO2膜があるが、近年デバイスの動作についてより一層の高速化を図るために層間絶縁膜の比誘電率を低くすることが要求されている。このような要請により、炭素(C)及びフッ素(F)の化合物であるフッ素添加カーボン膜(フロロカーボン膜)が注目されている。SiO2膜の比誘電率が4付近であるのに対して、フッ素添加カーボン膜は、原料ガスの種類を選定すれば比誘電率が例えば2.5以下になることから層間絶縁膜として極めて有効な膜である。
【0003】
このため特許文献1には、原料ガスとしてC5F8を用い、2.45GHzのマイクロ波と875ガウスの磁場との相互作用により電子サイクロトロン共鳴(ECR)を起こしてArガスなどのプラズマ発生用のガスをプラズマ化し、このプラズマにより原料ガスをプラズマ化して半導体ウエハ(以下ウエハという)上にフッ素添加カーボン膜を成膜する技術が記載されている。ところでこの特許文献1にも記載されているように、フッ素添加カーボン膜はいわば有機系の膜であることから、エッチング工程においてフッ素添加カーボン膜をエッチングするガスは、同時に有機系材料であるレジスト膜をもエッチングしてしまう。このため一般のエッチングのようにフッ素添加カーボン膜の上にレジスト膜を積層すると、両者の膜の選択比が近似するため、レジスト膜の膜厚をフッ素添加カーボン膜以上の厚さにしなければならないなどの不都合が生じるし、またレジスト膜を酸素プラズマでアッシングして除去するときにフッ素添加カーボン膜までもアッシングされてしまう。
【0004】
このようなことからフッ素添加カーボン膜を用いるときには、エッチング時にマスクとしての機能を果たすハードマスク用の薄膜をフッ素添加カーボン膜の上に積層しておくことが必要である。このハードマスク用の薄膜の材質としては、シリコン酸化膜、窒化シリコン膜などが知られているが(特許文献1)、これら材質は比誘電率が高いため、層間絶縁膜全体の比誘電率が高くなってしまうので得策ではない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−144676号公報(段落0008、0029、0031)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者は、ハードマスク用の材料として、比誘電率の低い酸素添加炭化ケイ素(SiCO)膜と窒素添加炭化ケイ素(SiCN)膜とに着目している。SiCO膜は例えば酸素を20原子%程度含む炭化ケイ素膜であり、SiCN膜は窒素を例えば10原子%程度含む炭化ケイ素膜である。特に前者のSiCO膜は、例えば配線となる銅を層間絶縁膜に埋め込むときに銅の拡散防止のためのバリヤ層である窒化シリコン膜や炭化ケイ素膜との密着性が良く、また銅を埋め込んだ後に銅をCMPと呼ばれる研磨を行って層間絶縁膜上の銅を除去するときにCMPに対する耐性が大きいなどの利点があり、有効な膜と考えられる。
【0007】
しかしながらフッ素添加カーボン膜の上にSiCO膜を成膜するときには例えばトリメチルシランなどの有機ソースの蒸気(ガス)と酸素ガスとをプラズマ化するが、このとき酸素の活性種がフッ素添加カーボン膜の炭素と反応しCO2となって放出されてしまう。特に酸素に関しては、フッ素添加カーボン膜は酸素が例えば1ppmとごく僅か存在する雰囲気で加熱すると膜からの脱ガス量が多いことを把握しており、このためフッ素添加カーボン膜の表面部の緻密性が悪くなって、結果としてSiCO膜との密着性が悪いという問題を引き起こしている。
【0008】
またSiCN膜においては、SiCO膜ほどではないが、フッ素添加カーボン膜との密着性が今一つ十分とはいえず、歩留まりの低下に懸念がある。この理由は、SiCN膜を成膜するときにトリメチルシランなどの有機ソースの蒸気と窒素ガスとをプラズマ化するが、プラズマ中の窒素が成膜初期にフッ素添加カーボン膜中に浸透し、この浸透した窒素が成膜中に放出されてフッ素添加カーボン膜の緻密性が悪くなり、その結果SiCN膜とフッ素添加カーボン膜との密着性が悪くなるのではないかと推測される。
【0009】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、その目的は絶縁膜であるフッ素添加カーボン膜を含む半導体装置を製造する方法において、フッ素添加カーボン膜上にハードマスク用の薄膜を成膜するにあたり、その薄膜とフッ素添加カーボン膜との間で高い密着性が得られる方法を提供することにある。より具体的な目的は、ハードマスク用の薄膜であるSiCO膜とフッ素添加カーボン膜との間の密着性を高めることのできる方法を提供することにある。更に他の目的は、ハードマスク用の薄膜であるSiCN膜とフッ素添加カーボン膜との間の密着性を高めることのできる方法を提供することにある。更にまた他の目的は、これら方法を実施するための成膜システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、基板上にフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を成膜する工程と、
前記フッ素添加カーボン膜の上に、窒素添加炭化ケイ素膜(SiCN膜)からなる保護層を成膜する工程と、
前記保護層の表面をシリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマに曝して酸素添加炭化ケイ素膜(SiCO膜)からなるハードマスク用の薄膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。この方法において、保護層を形成する工程は、前記絶縁膜の表面をシリコン及び炭素の活性種を含むプラズマに曝した後、シリコン及び炭素の活性種に加えて窒素の活性種を更に含むプラズマに曝す工程とすることが好ましい。シリコン及び炭素の活性種を含むプラズマは、例えばシリコンの有機化合物のガスを活性化することにより得られる。またシリコン及び炭素の活性種に加えて窒素の活性種を更に含むプラズマは、例えばシリコンの有機化合物のガス及び窒素ガスをプラズマ化することにより得られる。そしてハードマスク用の薄膜を成膜する工程において、シリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマは、例えばシリコンの有機化合物のガス及び酸素ガスを活性化して得たプラズマである
本発明のより具体的な方法は、前記ハードマスク用の薄膜を成膜した後、この薄膜の表面にレジスト膜を所定のパターンで形成する工程と、次いで前記ハードマスク用の薄膜をプラズマによりエッチングし、この薄膜に前記パターンに対応するパターンを形成してハードマスクを得る工程と、その後、このハードマスクを用いて前記フッ素添加カーボン膜をプラズマによりエッチングする工程と、を含む。
【0011】
他の発明の半導体装置の製造方法は、窒素添加炭化ケイ素膜自体をハードマスク用の薄膜とする場合の方法であり、基板上にフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を成膜する工程と、前記絶縁膜の表面をシリコン及び炭素の活性種を含むプラズマに曝す工程と、次いで基板の表面をシリコン及び炭素の活性種に加えて窒素の活性種を更に含むプラズマに曝して窒素添加炭化ケイ素膜からなるハードマスク用の薄膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。この発明において、シリコン及び炭素の活性種を含むプラズマは、例えばシリコンの有機化合物のガスを活性化することにより得られる。またシリコン及び炭素の活性種に加えて窒素の活性種を更に含むプラズマは、例えばシリコンの有機化合物のガス及び窒素ガスを活性化することにより得られる。
【0012】
本発明の成膜システムは、基板が載置される気密な処理容器内に、炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に、窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するための雰囲気を形成する手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に、シリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させてフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を前記基板に成膜するステップと、次いで当該基板に窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、続いてシリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマを発生させて、当該基板に酸素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、を実行するように各手段を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記の各手段は、例えば処理を行うためのガスの供給を制御するガス供給機器、処理容器内でプラズマを発生させるためにガスにエネルギーを与える部分、基板の温度を調整するためのヒータなどの手段、処理容器内の圧力を調整する手段などが相当する。この発明において、例えばフッ素添加カーボン膜、窒素添加炭化ケイ素膜及び酸素添加炭化ケイ素膜を成膜する各処理容器の少なくとも2つは共通の処理容器としてもよいし、あるいは別々の処理容器としてもよい。
【0014】
他の発明の成膜システムは、基板が載置される気密な処理容器内に、炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に供給されるシリコン及び炭素を含む第1の処理ガスと窒素を含む第2の処理ガスとを夫々供給制御するための第1のガス供給機器及び第2のガス供給機器と、
前記処理容器内に供給された前記処理ガスをプラズマ化するためのプラズマ発生手段と、
炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させてフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を前記基板に成膜するステップと、次に第1の処理ガスをプラズマ化して、前記基板の表面をシリコン及び炭素の活性種を含むプラズマに曝すステップと、続いて第1の処理ガス及び第2の処理ガスをプラズマ化して前記基板の表面をシリコン、炭素及び窒素の活性種を含むプラズマに曝して窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、を実行するように各手段及び各ガス供給機器を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。この発明において、フッ素添加カーボン膜を成膜する処理容器と、窒素添加炭化ケイ素膜を成膜する処理容器と、は共通としてもよいし、別々の処理容器としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、SiCO膜をハードマスクとして使用する場合に、フッ素添加カーボン膜の上に直接SiCO膜を付けずにSiCN膜を保護層として介在させているため、SiCO膜を成膜するときに用いられる酸素の活性種がフッ素添加カーボン膜中の炭素と反応することが抑えられ、従ってフッ素添加カーボン膜の脱ガス量が低減するので、結果としてフッ素添加カーボン膜とSiCO膜との密着性が大きくなる。また保護層であるSiCN膜を成膜するときに、初期においては窒素の活性種を発生させるガスを供給せずに、例えばシリコンの有機化合物の成分の活性種をフッ素添加カーボン膜の表面に供給することにより、後述の実験例から分かるようにSiCN膜の密着性が大きくなり、結果としてフッ素添加カーボン膜とSiCO膜との密着性がより一層大きくなる。
【0016】
また他の発明によれば、SiCN膜自体をハードマスクとして使用する場合に、SiCN膜を成膜するときに初期においては窒素の活性種を発生させるガスを供給せずに、例えばシリコンの有機化合物の成分の活性種をフッ素添加カーボン膜の表面に供給することにより、同様にSiCN膜の密着性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法である第1の実施の形態においては、図4〜図6に示すように基板の上に絶縁膜、この例では層間絶縁膜としてのフッ素添加カーボン膜を成膜し、更に保護層であるSiCN(窒素添加炭化ケイ素)膜及び第1のハードマスクとなるSiCO(酸素添加炭化ケイ素)膜を順次積層し、その後第2のハードマスクとなるシリコン酸化膜を成膜し、これらハードマスクを用いてフッ素添加カーボン膜のエッチングを行い、配線を埋め込むようにしている。
【0018】
第1の実施の形態を説明するにあたり、先ずこの方法に用いられる好ましいプラズマ処理装置について図1〜図3を参照しながら述べておく。図中1は、例えばアルミニウムからなる処理容器(真空チャンバ)であり、この処理容器1内には、例えば窒化アルミニウムあるいは酸化アルミニウムなどからなる載置台2が設けられている。この載置台2は表面部に静電チャック21が設けられており、この静電チャック21の電極は、スイッチ22を介して直流電源23に接続されている。また載置台2の内部には、温調手段である温調媒体の流路24が設けられており、流入路25からの温調媒体である冷媒が流路24内を通って流出路26から排出され、この温調媒体及び図示しないヒータによって載置台2上の基板である半導体ウエハ(以下ウエハという)Wが所定温度に維持されることとなる。また載置台2には例えば13.56MHzのバイアス用高周波電源27が接続されている。
【0019】
更に載置台2の上方には、例えば平面形状が略円形状のガスシャワーヘッドとして構成された導電体例えばアルミニウムからなる第1のガス供給部3が設けられ、この第1のガス供給部3における載置台2と対向する面には多数のガス供給孔31が形成されている。この第1のガス供給部3の内部には、例えば図2に示すようにガス供給孔31と連通する格子状のガス流路32が形成されており、このガス流路32にはガス供給路33が接続されている。
【0020】
このガス供給路33の基端側は、分岐管33a及び33bに分岐されている。一方の分岐管33aには、シリコンの有機化合物のガス例えばトリメチルシラン(SiH(CH3)3)を気化して得た蒸気の供給源であるガス供給源35がガス供給機器群34を介して接続されている。また他方の分岐管33bには、炭素とフッ素とを含む処理ガスである成膜ガス例えばC5F8ガスのガス供給源37がガス供給機器群36を介して接続されている。なおガス供給機器群34及び36はバルブや流量調整部であるマスフローコントローラなどを含むものである。
【0021】
ガス供給部3には、図2に示すように当該ガス供給部3を貫通するように、多数の開口部38が形成されている。この開口部38は、プラズマを当該ガス供給部3の下方側の空間に通過させるためのものであり、例えば隣接するガス流路32同士の間に形成されている。
【0022】
第1のガス供給部3の上方側には、第2のガス供給部であるガス供給路をなすガス供給路4が設けられている。このガス供給路4の基端側は分岐管41、42、43に分岐されており、分岐管41にはガス供給機器群51及び希ガスである例えばAr(アルゴン)ガスのガス供給源52が接続され、分岐管42にはガス供給機器群53及びO2(酸素)ガスのガス供給源54が接続され、分岐管43にはガス供給機器群55及びN2(窒素)ガスのガス供給源56が接続されている。なおガス供給機器群51、53、55はバルブや流量調整部であるマスフローコントローラなどを含むものである。
【0023】
なおガス供給の手法としては上述の例に限らず、第1のガス供給部3内にガスの供給路を2系統設けると共に、ガス供給孔31群を、一方の系統のガス供給路の出口として割り当てられる一方のガス供給孔と他方の系統のガス供給路の出口として割り当てられる他方のガス供給孔とに振り分け、酸素ガス及び窒素ガスについては一方の系統のガス供給路を通じて処理容器1内に供給し、またC5F8ガス及びトリメチルシランガスについては他方の系統のガス供給路を通じて処理容器1内に供給するようにしてもよい。2系統のガス供給路は互いを流れるガスが混じらないように構成され、また一方のガス供給孔と他方のガス供給孔とは、例えばマトリクス状につまり交互に配列される。このようにして処理ガスを供給すれば、ウエハWに成膜される膜の膜質及び膜厚について高い面内均一性が得られる。
【0024】
前記ガス供給部3の上部側には、誘電体例えばアルミナあるいは石英などからなるプレート(マイクロ波透過窓)6が設けられ、この誘電体プレート6の上部側には、当該誘電体プレート6と密接するようにアンテナ部7が設けられている。このアンテナ部7は、図3にも示すように、平面形状が円形の扁平なアンテナ本体70と、このアンテナ本体70の下面側に設けられ、多数のスロットが形成された円板状の平面アンテナ部材(スロット板)71とを備えている。これらアンテナ本体70と平面アンテナ部材71とは導体により構成されており、扁平な中空の円形導波管を構成すると共に、同軸導波管11に接続されている。アンテナ本体70は、この例では2つの部材に分割された構成となっており、図示しない外部からの冷媒流路を介して冷媒が通流する冷媒溜72が内部に形成されている。
【0025】
また前記平面アンテナ部材71とアンテナ本体70との間には、例えばアルミナや酸化ケイ素、窒化ケイ素等の低損失誘電体材料により構成された遅波板73が設けられている。この遅波板73はマイクロ波の波長を短くして前記円形導波管内の管内波長を短くするためのものである。この実施の形態では、これらアンテナ本体70、平面アンテナ部材71及び遅相板73によりラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)が構成されている。
【0026】
このように構成されたアンテナ部7は、前記平面アンテナ部材71が誘電体プレート6に密接するように図示しないシール部材を介して処理容器1に装着されている。そしてこのアンテナ部7は同軸導波管11を介して外部のマイクロ波発生手段12と接続され、例えば周波数が2.45GHzあるいは8.4GHzのマイクロ波が供給されるようになっている。そして同軸導波管11の外側の導波管11Aはアンテナ本体70に接続され、中心導体11Bは遅相板73に形成された開口部を介して平面アンテナ部材71に接続されている。
【0027】
前記平面アンテナ部材71は例えば厚さ1mm程度の銅板からなり、図3に示すように例えば円偏波を発生させるための多数のスロット74が形成されている。このスロット74は略T字状に僅かに離間させて配置した一対のスロット74A,74Bを1組として、周方向に沿って例えば同心円状や渦巻き状に形成されている。なおこのスロット74は略八字状に僅かに離間させて配置させてもよい。このようにスロット74Aとスロット74Bとを相互に略直交するような関係で配列しているので、2つの直交する偏波成分を含む円偏波が放射されることになる。この際スロット対74A,74Bを遅相板73により圧縮されたマイクロ波の波長に対応した間隔で配列することにより、マイクロ波が平面アンテナ部材71から略平面波として放射される。
【0028】
また処理容器1の底部には排気管13が接続されており、この排気管13の基端側には例えばバタフライバルブなどからなる圧力調整部14を介して真空排気手段である真空ポンプ15が接続されている。更にまた処理容器1の内壁の内面側には、加熱手段であるヒータ16が設けられた囲い部材(ウオール部)17が設けられている。
【0029】
そしてこのプラズマ処理装置は例えばコンピュータからなる制御部10を備えており、前記ガス供給機器群34、36、51、53、55、圧力調整部14、ヒータ16マイクロ発生手段12及び載置台2の静電チャックのスイッチ22などを制御するように構成されている。より具体的には、処理容器1内で行われる後述の成膜処理のステップを実行するためのシーケンスプログラムを記憶した記憶部、各プログラムの命令を読み出して各部に制御信号を出力する手段などを備えている。
【0030】
続いてこの装置にて実施される成膜方法の一例について説明する。先ず図示しないゲートバルブを介して基板であるウエハWを搬入して載置台2上に載置する。この例では下地に層間絶縁膜及び配線が形成されていてこれからその上に次の層の配線を形成しようとするウエハが搬入されるものとする。先ず処理容器1の内部を所定の圧力まで真空引きし、第2のガス供給部であるガス供給路4を介してプラズマガスである希ガス例えばArガスを供給すると共に、ガス供給路33を介して第1のガス供給部3から原料ガス例えばC5F8ガスを供給する。そして処理容器1内を所定のプロセス圧力に維持し、載置台2の表面温度を所定温度に設定する。
【0031】
一方マイクロ波発生手段12から2.45GHz,2000Wの高周波(マイクロ波)を供給すると、このマイクロ波は、TMモード或いはTEモード或いはTEMモードで同軸導波管11内を伝搬してアンテナ部7の平面アンテナ部材71に到達し、同軸導波管11の内部導体11Bを介して、平面アンテナ部材71の中心部から周縁領域に向けて放射状に伝搬される間に、スロット対74A、74Bからマイクロ波が誘電体プレート6を介して下方側の空間に向けて放出される。ここで誘電体プレート6はマイクロ波が透過可能な材質例えばAl2O3(アルミナ)により構成されているので、マイクロ波透過窓として作用し、マイクロ波はこれらを効率良く透過していく。
【0032】
このとき既述のようにスロット対74A、74Bを配列したので、円偏波が平面アンテナ部材71の平面に亘って均一に放出され、この下方の処理空間の電界密度が均一化される。そしてこのマイクロ波のエネルギ−によりアルゴンガスが活性化され、第1のガス供給部3の上方空間に高密度で均一なプラズマが励起される。そして、このプラズマは第1のガス供給部3の開口部38を介して当該ガス供給部3の下方側の処理空間に流れ込んで行き、当該ガス供給部3からこの処理空間に供給されるC5F8ガスを活性化させてつまりプラズマ化して活性種を形成し、図4(a)に示すようにウエハWの表面に堆積してフッ素添加カーボン膜91からなる層間絶縁膜が例えば200nmの膜厚で成膜される。即ちこのプラズマ処理装置によれば、上方側のプラズマ空間の下方側に活性種が存在する成膜空間(ここは発光していない)が形成され、いわばソフトな活性種によりフッ素添加カーボン膜91が成膜されるので、緻密で密着性が高く、熱的安定性の高い薄膜が得られる。なお図4において81、82は、夫々既にウエハWの下地層として形成されているフッ素添加カーボン膜及び銅配線である。
【0033】
次いでウエハWを処理容器1から搬出することなくこのままSiCN膜及びSiCO膜を連続成膜する。まずSiCN膜の成膜について述べると、SiCN膜はトリメチルシランガスを活性化して得たプラズマに加え、窒素の活性種が必要であるが、この実施の形態では、成膜初期時には窒素ガスを供給せずにガス供給機器群51、34の各バルブを開いてトリメチルシランガス及びArガスを処理容器1内に供給すると共に、処理容器1内を例えば所定のプロセス圧力に維持する。
【0034】
一方マイクロ波発生手段12から例えば2.45GHzの所定のパワーのマイクロ波を供給して、既述のようにプラズマを励起させ、このプラズマにより前記ガス供給部3から供給されるトリメチルシランガスを活性化(プラズマ化)させる。このためシリコン、炭素及び水素の活性種(プラズマ)が発生し、図4(b)に示すようにSiC(炭化水素)膜92(詳しくは水素も含まれる)が形成される。この窒素ガスを供給しない初期成膜プロセスを例えば5秒程度行い、その後ガス供給機器群55のバルブを開いて窒素ガスを第2のガス供給部4から供給し、これにより窒素の活性種が生成されて図4(c)に示すようにSiC膜92の上にSiCN膜93が成膜される。SiC膜92及びSiCN膜93の積層膜厚は例えばトータルで、5nm程度である。なおSiCN膜は例えば窒素が10原子%含まれる炭化ケイ素膜である。
【0035】
SiC膜92は、SiCN膜93をフッ素添加カーボン膜91と密着させるための密着層であり、SiCN膜93を成膜するときに窒素がフッ素添加カーボン膜91内に侵入するのを防ぐ役割があるのではないかと推測される。そしてこの実施の形態ではSiCN膜93は、それ自体でハードマスクとしての機能を持つものではなく、次に積層されるSiCO膜94を成膜するときにおいて、フッ素添加カーボン膜91が酸素の活性種に曝されないようにするための、いわば酸素の活性種によるアタックから保護するための保護層としての役割を持つものである。
【0036】
更に続いて、後の工程でハードマスクとして使用されることとなるSiCO膜を成膜する。この成膜プロセスは、例えばSiCN膜93の成膜時に供給していたトリメチルシランガスをSiCO膜の成膜レシピに記載された流量に設定してそのまま流し続けると共に、窒素ガスから酸素ガスの供給に切り替えて、処理容器1内を例えば所定のプロセス圧力に維持する。またマイクロ波発生手段12からの供給パワーを例えばSiCN膜93の成膜時のままにして(変更してもよい)マイクロ波を供給し、トリメチルシランガス及び酸素ガスを活性化してプラズマを励起させ、このプラズマにより図4(d)に示すように第1のハードマスクとしてのSiCO膜94が例えば50nm程度の膜厚で形成される。SiCO膜は例えば酸素が20原子%含まれる炭化ケイ素膜である。なおSiCO膜94の成膜工程は、成膜初期時に酸素ガスを供給せずにトリメチルシランガスのみを例えば5秒程度流し、続いてトリメチルシランガスに酸素ガスを加えるようにすると、SiCN膜93に対するSiCO膜94の密着性がより一層向上する。
【0037】
次いで図4(e)に示すようにSiCO膜とは別の材質である例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)95からなる第2のハードマスク用の薄膜を成膜する。この成膜工程は、例えば図1の装置内にてTEOSなどの有機ソースの蒸気と酸素ガスとを用い、これらガスを活性化して得たプラズマにより実施してもよいし、あるいは別の成膜装置により実施してもよい。その後図示していないが、レジスト膜を成膜しかつパターンを形成し、そのレジストマスクを用いてシリコン酸化膜95をエッチングし、その後レジストマスクをアッシング除去することにより前記パターンに対応するパターンを有する第2のハードマスクを得る(図4(f))。
【0038】
しかる後、ウエハWの表面にレジスト膜96を成膜しかつ前記パターンよりも幅の狭いパターンを形成し(図5(g))、そのレジストマスク96を用いてSiCO膜94を例えばハロゲン化物の活性種を含むプラズマによりエッチングし、その後レジストマスク96をアッシング除去することにより第1のハードマスクを得る。そしてこの第1のハードマスクを用いてSiCN膜93及びSiC膜92を例えばハロゲン化物の活性種を含むプラズマによりエッチングし、さらにフッ素添加カーボン膜91を例えば酸素プラズマによりエッチングする(図5(h))。なお下地の層81、82の表面には、実際にはバリヤ層やハードマスクが存在するが、図では便宜上省略してある。
【0039】
更にシリコン酸化膜95からなる第2のハードマスクを用いて、SiCN膜93及びSiCO膜94をエッチングし更にフッ素添加カーボン膜91をエッチングして、先のエッチングにより形成された凹部よりも幅の大きい凹部を形成する(図5(i))。なお幅の狭い凹部はビヤホールに相当し、幅の広い凹部は当該層の回路の配線埋め込み領域に相当する。しかる後、図6(j)に示すように配線金属である例えば銅97が埋め込まれ、凹部以外の部分の銅が例えばCMP(chemical mechanical polishing)と呼ばれる研磨により除去されて銅配線97が形成される(図6(k))。その後図示していないが、表面にバリヤ層である例えばSiC層などが形成されることになる。
【0040】
上述の実施の形態によれば、フッ素添加カーボン膜91の上にハードマスクとして有効なSiCO膜94を成膜するにあたり、SiCN膜93を保護膜として介在させているため、SiCO膜94の成膜時に用いられる酸素の活性種がSiCN膜93に妨げられてフッ素添加カーボン膜91の炭素と反応することが抑えられるので、フッ素添加カーボン膜91の脱ガス量が低減する。そして保護膜であるSiCN膜93を成膜するときに、窒素プラズマの照射の前にトリメチルシランガスのプラズマ雰囲気にフッ素添加カーボン膜91の表面を曝すため、後述の実施例からも分かるようにSiCN膜93とフッ素添加カーボン膜91との密着性が良い。またSiCN膜93とSiCO膜94とは、同じ炭化ケイ素がベースとなっているので両者の密着性は大きく、この結果SiCO膜94とフッ素添加カーボン膜91との間で大きな密着性が得られる。従ってSiCO膜をハードマスクとして使用することが可能となる。
【0041】
窒素プラズマの照射の前にトリメチルシランガスを活性化したプラズマ雰囲気を形成することによりSiCN膜93の密着性が良くなる理由については十分に解明していないが、後述の参考例の項目でも記載してあるように、フッ素添加カーボン膜91の表面に形成された炭素のリッチな層が窒素をトラップしているのではないかと考えられ、この結果フッ素添加カーボン膜から窒素がガスとして抜けて膜の密度が小さくなることが回避され、密着性が良くなるのではないかと考えられる。
【0042】
ここでプラズマを発生させるガスとして上述の例ではArガスを用いているが、その他の希ガス例えばHe(ヘリウム)ガス、Ne(ネオン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、Xe(キセノン)ガスなどを用いることができる。またフッ素添加カーボン膜の用途としては層間絶縁膜に限らず他の絶縁膜であってもよい。フッ素添加カーボン膜の原料ガスとしてはC5F8ガスに限らず、CF4ガス、C2F6ガス、C3F8ガス、C3F6ガス及びC4F8ガスなどを用いてもよい。
【0043】
そしてまた、SiCN膜93を成膜するときに窒素の活性種を得るためのガスとしては、窒素ガスに限らずアンモニアガスであってもよい。
【0044】
またSiCN膜93あるいはSiCO膜94を成膜するときに使用されるシリコンの有機化合物としては、トリメチルシランガスに限られず、他の有機化合物であってもよい。その具体例を挙げると、CH3SiH3、(CH3)2SiH2、(CH3)3SiH、(CH3)4Si、(CH3)2Si(OC2H5)2、(CH3)2Si(OCH3)2、CH3Si(OC2H5)3、CH3Si(OCH3)3、(HCH3SiO)4[環状構造]、((CH3)3Si)2O、(H(CH3)2Si)2O、(H2CH3Si)2O、((CH3)2SiO)3、(CH3ASiO)3、((CH3)2SiO)4、(CH3ASiO)4などである。なお最後の3つの化合物は環状構造であり、「A」はビニル基(CH−CH3)である。
【0045】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態は、SiCN膜自体をハードマスクとして使用するための方法であり、具体的には、SiCN膜を第1のハードマスク用の薄膜とし、この薄膜の上にSiCN膜とは別の材質からなる第2のハードマスク用の薄膜を成膜する。従ってSiCN膜は例えば50nm程度の膜厚とされ、その製法は、先の第1の実施の形態と全く同様であり、成膜初期時には窒素ガスを供給せずにトリメチルシランガス及びArガスを供給し、その後これらガスに加えて窒素ガスを供給するようにする。図4〜図6の記載に対応させれば、SiCN膜93及びSiCO膜94を合わせた膜が第1のハードマスク用の薄膜であるSiCN膜に相当する。この場合第2のハードマスクはシリコン酸化膜になるが、SiCO膜であってもよい。このような実施の形態によれば、既述のようにフッ素添加カーボン膜の表面に形成される炭素リッチな層により窒素がトラップされ、その後のフッ素添加カーボン膜からの脱ガス量が少なくなるので、SiCN膜とフッ素添加カーボン膜との間の密着性が極めてよくなる。
【0046】
以上において、フッ素添加カーボン膜、SiCN膜、及びSiCO膜を成膜するためには、処理容器を共通化しなくとも、別々の処理容器により夫々の成膜を行ってもよく、この場合には、例えば共通の真空チャンバからなる搬送用チャンバに各膜を成膜するための処理容器を接続し、これら処理容器間を前記搬送用チャンバを介して順次基板が搬送するように構成される。あるいはこれら処理容器間が直列に接続され、それらの間を仕切るロードロック室を介して基板が順次処理容器間を搬送されるようにしてもよい。またフッ素添加カーボン膜、SiCN膜、及びSiCO膜のうち2つの膜について共通の処理容器により成膜し、残りの膜については別の処理容器により成膜するようにしてもよい。更にまたSiCN膜、については、プラズマ処理装置ではなく、例えばスパッタにより成膜するようにしてもよい。
【0047】
本発明に係る半導体装置の第3の実施の形態について説明する。この半導体装置は、図7に示すようにポーラス化(多孔質化)された層間絶縁膜の一部をなすSiCO膜41の上に保護膜であるSiCN膜42が形成され、このSiCN膜42を介して層間絶縁膜であるフッ素添加カーボン(CF)膜40が積層されている。つまりSiCN膜42を挟んでSiCO膜41とフッ素添加カーボン膜40との2段構造の層間絶縁膜として構成されている。なおこの層間絶縁膜は、下方側における層間絶縁膜に配線が埋め込まれた構造部分の上に積層され、多層構造配線の一部分を構成している。
【0048】
この層間絶縁膜には凹部48が形成されており、この凹部48は、図7のように断面で見ると前記SiCO膜41に形成された狭小凹部48a(ビアホールに相当する。)と前記フッ素添加カーボン膜40に形成された拡大凹部48b(配線用の溝)とから形成されている。この凹部48には例えば配線層である銅47が埋め込まれている。またフッ素添加カーボン膜40の上には保護膜であるSiCN膜43が形成さており、このSiCN膜43の上には後述するように、CMP(chemical mechanical polishing)と呼ばれる研磨工程によってハードマスク用の薄膜であるSiO2膜44が僅かに残っている。
【0049】
続いてこの半導体装置の製造工程について図8に基づいて説明する。この半導体装置は、図1〜図3に基づいて説明したプラズマ処理装置を用いて実施することができる。この例では、下地に層間絶縁膜及び配線が形成されており、この上に次の層の配線を形成しようとするウエハWが搬入されるものとする。図8(a)に示すように当該ウエハWの表面の下地層にポーラス化されたSiCO膜41及び保護膜であるSiCN42が成膜される。ポーラス化されたSiCO膜41の成膜について述べると、Arガス及びトリメチルシラン(TMS)ガスを処理容器1内に供給して既述のようにプラズマを励起させ、このプラズマによりSiCH膜を成膜させる。その後酸素ガスを活性化してプラズマ励起させ、ウエハWをこの酸素プラズマ雰囲気とすることによりSiCH膜中のCH3基がOに置換され、結合格子が小さくなることでポーラス化されたSiCO膜41となる。このSiCO膜41は例えば100nm程度の膜厚で形成されている。このSiCO膜41は例えば酸素が20原子%含まれる炭化ケイ素膜である。このようにSiCO膜41をポーラス化することによりSiCO膜41の誘電率が3.0から例えば2.2程度に下がるので、フッ素添加カーボン膜40と2段構造の層間絶縁膜とすることにより全体の誘電率が低い絶縁膜が形成できる。
【0050】
次にこのSiCO膜41の上に既述のようにしてSiCN膜42を形成し、続いて図8(b)に示すようにフッ素添加カーボン膜40を成膜する。この成膜プロセスは、第1の実施の形態のところで述べたフッ素添加カーボン膜91の成膜プロセスと同様であり、フッ素添加カーボン膜40が例えば100nm程度の膜厚で形成される。そして図8(c)に示すようにフッ素添加カーボン膜40の上にSiCN膜43が成膜される。この成膜プロセスは、上述したSiCN膜42の成膜プロセスと同様であり、このSiCN膜42、43は例えば5nm程度の膜厚で形成される。またこの際上層のSiCN膜43は、第1の実施の形態で述べたように、SiC膜92及びSiCN膜93の積層構造であっても良い。
【0051】
さらに続いて図8(d)に示すようにSiCN膜43の上にハードマスク用の薄膜であるSiO2膜44が成膜される。この成膜は例えたモノシランガスと酸素ガスとをプラズマ化し、そのプラズマにより成膜される。そしてSiO2膜44の上には、Si3N4膜45が積層され、更にTEOSとO2とを原料としたSiO2膜46とが成膜される。前記Si3N4膜45の膜厚は例えば50nm程度であり、前記SiO2膜46の膜厚は例えば50nm程度である。その後図示していないが、SiO2膜46の上にレジスト膜を成膜し、前記レジスト膜の所定のパターンに基づいて前記SiO2膜46及びSi3N4膜45に所定のパターンを形成する。
【0052】
図8(e)に示すようにSiO2膜46のパターンは、前記SiO2膜46の中央付近がL2分だけエッチングされたものであり、Si3N4膜45のパターンはSi3N4膜45の中央付近がL1分だけエッチングされたものである。なおエッチング領域はL1<L2の範囲にある。この2つのパターンを用いて点線のようにエッチングする。続いて図8(f)に示すように配線金属である例えば銅47が埋め込まれ、例えばCMP工程により凹部48からはみ出て形成された銅47からSiO2膜44の途中まで除去され、図7に示す構造が得られる。
【0053】
この実施の形態によれば次の効果がある。即ち、層間絶縁膜として異種のCF膜(有機系)40、SiCO膜(無機系)41を用いているので、図8(e)におけるL1領域の点線部をエッチングの後、L2領域の点線部をエッチングする際、有機系のCF膜40をエッチングしている間に無機系であるSiCO膜41の側面部はエッチングされないのでビアホール48a(図7参照)の形状を適正に保つことができる。またC−F結合とSi−O結合とが隣接しているとアニール時にSiF4となって昇華し易くなるが、このようにSiCO膜41とフッ素添加カーボン膜40との間に保護膜であるSiCN膜42を介在させることで、両者の膜が物理的に分離され、上述の不具合が解消される。さらに本実施の形態に基づいて凹部48を形成した後、配線層である銅47を埋め込むときには、ウエハWが一旦大気に曝されることになる。この際、SiCO膜41はポーラス化されているので水分などが吸収され易いが、その場合SiCN膜42がないと吸収した水がフッ素添加カーボン膜40の中に入り込んでCOやHFとなって飛散し、フッ素添加カーボン膜40の膜減りが起こってしまう。ここでSiCO膜41とCF膜40との間にSiCN膜42を介在させることで、ポーラス部位に吸収された水分がフッ素添加カーボン膜40に浸入することを阻止することができる。またフッ素添加カーボン膜40の上段側のSiCN膜43については、SiO2膜44を成膜するときに酸素ラジカルを使用するので、この酸素ラジカルによるフッ素添加カーボン膜40へのアタックを阻止する役割も有している。
【0054】
以上述べてきたように、フッ素添加カーボン膜は優れた特性を備えた絶縁膜であるが、酸素、窒素、水分等によるアタックにより変質してしまう弱点を持っている。一方半導体素子を製造する上で、多層層間絶縁膜を全てフッ素添加カーボン膜でまかなうことが困難な場合も考えられ得る。このような場合、長年に渡って使われてきたシリコン酸化物系絶縁膜、即ちSiOX膜(Xは任意の元素、化合物)とフッ素添加カーボン膜とを積層してなる絶縁膜が考えられるが、この時次のような問題が提起される。
SiOX膜の成膜温度が400℃以下の場合、膜中に微量ながらSiOH構造が形成されるのは避けがたい。SiOH構造は、その後工程において400℃以上のアニール工程(例えばシンタ等)が行われた場合にOH基が切れ、その一部がフッ素添加カーボン膜との界面に移動する。するとフッ素添加カーボン膜のFとOH基とが反応してHFが生成され、さらにHFとSiOX膜とが反応してSiF4が生成され、ひいてはフッ素カーボン膜とSiOX膜との密着性が低下し、これら膜間の膜剥れが発生する。
この問題を解決するためには、第1の実施の形態におけるSiCO膜94、第3の実施の形態におけるSiO2膜44、SiCO膜41のようなSiOX膜と、フッ素添加カーボン膜との間に本願による極薄のSiCN膜を挟んでおけば良い。なおここで言うSiCN膜とは、第1の実施の形態で述べたようにSiC膜92及びSiCN膜93の積層構造も含むものである。SiCN膜はフッ素添加カーボン膜に比べるとその比誘電率は4.5と高い値を持つが、このように極薄化することでトータルとしての比誘電率の上昇を抑えることが出来る。例えばフッ素添加カーボン膜の膜厚が100nm、この上下に各々5nmのSiCN膜が形成された絶縁膜の比誘電率は2.3であり、フッ素添加カーボン膜単体の比誘電率2.2に対し、その上昇分は僅かであり、十分低誘電率膜(Low−k膜)として機能し得る。ここで極薄とは、酸素、窒素、水分等によるアタックを防ぎつつ、トータルとしての比誘電率の上昇を押さえるという意味で、その厚みは3〜10nmであり、より好ましくは5〜8nmである。さらに極薄絶縁膜としてはSiCNに代えて、SiC(シリコンカーバイト)、SiN(シリコンナイトライド)、アモルファスカーボン等を挙げることができる。
【実施例】
【0055】
A.ハードマスク用の薄膜の成膜
(実施例1)
この実施例1は、第2の実施の形態に対応するものである。図1に示したプラズマ処理装置を用い、シリコンベアウエハの上にフッ素添加カーボン膜を120nmの膜厚で成膜した。成膜条件については、マイクロ波のパワーを3000W、プロセス圧力を10.6Pa(80mTorr)、ウエハの温度を380℃、C5F8ガス及びArガスの流量を夫々200sccm及び100sccmに設定した。
【0056】
次いでウエハをプラズマ処理装置内に載置したまま前記フッ素添加カーボン膜の上にSiCN膜を50nmの膜厚で成膜した。成膜条件については、マイクロ波のパワーを1500W、プロセス圧力を39.9Pa(300mTorr)、ウエハの温度を380℃に設定し、先ずトリメチルシランガス(蒸気)及びArガスを夫々40sccm及び800sccmの流量で5秒間供給し、その後トリメチルシランガス及びArガスをこの流量で供給したまま窒素ガスを50sccmの流量で供給した。
(実施例2)
この実施例2は、第1の実施の形態に対応するものである。実施例1と同様にしてシリコンベアウエハの上にフッ素添加カーボン膜及びSiCN膜を順次成膜した。ただしこの例ではSiCN膜は保護層としての役目を果たすものであることから、その膜厚は5nmとしてある。次いでウエハをプラズマ処理装置内に載置したまま前記SiCN膜の上にSiCO膜を50nmの膜厚で成膜した。成膜条件については、マイクロ波のパワーを1500W、プロセス圧力を33.3Pa(250mTorr)、ウエハの温度を380℃に設定し、先ずトリメチルシランガス及びArガスを夫々40sccm及び200sccmの流量で5秒間供給し、その後トリメチルシランガス及びArガスをこの流量で供給したまま酸素ガスを10sccmの流量で供給した。
(実施例3)
SiCN膜を成膜するときに、成膜初期時にトリメチルシランガス(及びArガスを供給する工程を行わずに、最初からトリメチルシランガス、Arガス及び窒素ガスをこの流量で供給した他は、実施例2と同様にしてフッ素添加カーボン膜の上にSiCN膜及びSiCO膜をこの順に積層した。
(比較例1)
SiCN膜を成膜するときに、成膜初期時にトリメチルシランガス及びArガスを供給する工程を行わずに、最初からトリメチルシランガス、Arガス及び窒素ガスをこの流量で供給した他は、実施例1と同様にしてフッ素添加カーボン膜の上にSiCN膜を積層した。
(比較例2)
SiCN膜を成膜せずにフッ素添加カーボン膜の上に直接SiCO膜を成膜した他は実施例2と同様にして積層体を得た。
B.薄膜の密着性の考察
実施例1〜3及び比較例1、2のウエハを真空雰囲気で400℃に加熱して30〜60分放置した。これらウエハの表面を目視で観察し、またテープを貼り付けて膜剥がれの状態を調べたところ、比較例1は膜中から気泡が発生したことに基づく変色域(Blister)が多少見られ、また僅かに膜が剥がれた部位が発生した。これに対して実施例1については、比較例1のような変色域は全く見られず、またテープテストについても膜剥がれは全くなかった。従ってフッ素添加カーボン膜の上にSiCN膜を成膜する場合、成膜初期時には窒素ガスを供給せずにトリメチルシランガス及びArガスのみを供給することにより、フッ素添加カーボン膜に対するSiCN膜の密着性が大きくなることが理解される。
【0057】
また実施例2については、上記の変色域は全く見られず、またテープテストについても膜剥がれは全くなかった。これはSiCN膜の成膜手法が実施例1と同じであり、SiCO膜とSiCN膜とは共にSiCをベースとしているのでいわば一体化した膜であることから、当然の結果と思われる。
【0058】
更に実施例3と比較例1及び2との関係について見ると、実施例3は、比較例1と同等の結果であったが、比較例2よりも優れている。即ち、比較例2については、実施例3よりも上記の変色域が多く見られ、またテープテストにおいても大部分の膜が剥がれてしまった。このことから実施例3は、比較例2よりも密着性が高く、従ってSiCO膜をハードマスクとして用いるときには、フッ素添加カーボン膜とSiCO膜との間にSiCN膜を介在させることが好ましく、その場合SiCN膜の成膜は、成膜初期時には窒素ガスを供給せずにトリメチルシランガス及びArガスのみを供給する手法を採用することがより一層望ましいことが分かる。
C.参考実験
実施例1の積層体について、SIMS(二次イオン質量分析装置)により深さ方向における炭素と窒素との濃度を二次イオン強度を指標として調べたところ、図9(a)に示す結果が得られた。一方実施例1において、トリメチルシランガス及びArガスを供給する前に窒素プラズマをフッ素添加カーボン膜に60秒照射して積層体を得、この積層体について同様に調べたところ、図9(b)に示す結果が得られた。図9(a)においてはSiCN膜とフッ素添加カーボン膜との界面に炭素と窒素との濃度が高くなっている部位(点線の円内)が見られ、フッ素添加カーボン膜内の窒素濃度が界面から急激に低くなっており、10分の1以下になっている。一方図9(b)においては前記界面にそのような部位は見られず、またフッ素添加カーボン膜内の窒素濃度がSiCN膜内の窒素濃度とほとんど変わらない。
【0059】
この結果から推測すると、フッ素添加カーボン膜に対するSiCN膜の密着性については、SiCN膜の成膜時にフッ素添加カーボン膜に窒素が侵入しこれが加熱時に脱ガスとして放出され、密着性が低下するのではないか考えられる。これに対して実施例1のように成膜すると、界面に炭素の濃度が多い領域であるいわば炭素リッチ層が形成され、その後に照射される窒素プラズマ中の窒素をこの炭素リッチ層でトラップし、フッ素添加カーボン膜中に侵入するのを防ぎ、この結果SiCN膜の密着性が極めて大きいのではないかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明方法を実施するためのプラズマ処理装置の一例の全体構成を示す断面図である。
【図2】前記プラズマ処理装置に設けられる第1のガス供給部の一部を示す平面図である。
【図3】前記プラズマ処理装置に設けられるアンテナ部を示す斜視図である。
【図4】本発明方法の実施の形態において半導体装置が段階的に製造されていく様子を示す工程図である。
【図5】本発明方法の実施の形態において半導体装置が段階的に製造されていく様子を示す工程図である。
【図6】本発明方法の実施の形態において半導体装置が段階的に製造されていく様子を示す工程図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に用いられる半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る製造方法を段階的に示す工程図である。
【図9】フッ素添加カーボン膜上にSiCN膜を成膜するときに初めに窒素プラズマを照射した場合としない場合とにおいて、積層体の炭素及び窒素の濃度を示す特性図である。
【符号の説明】
【0061】
1 処理容器
10 制御部
11 同軸導波管
12 マイクロ波発生手段
2 載置台
3 第1のガス供給部(シャワーヘッド)
33 ガス供給路
36 開口部
4 第2のガス供給部(ガス供給路)
35、51、53、55 ガス供給機器群
6 誘電体
7 アンテナ部
71 平面アンテナ部材
74 スロット部
81、91 フッ素添加カーボン膜
93 SiCN膜
94 SiCO膜
95 SiO2膜
97 銅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を成膜する工程と、
前記フッ素添加カーボン膜の上に、窒素添加炭化ケイ素膜からなる保護層を成膜する工程と、
前記保護層の表面をシリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマに曝して酸素添加炭化ケイ素膜からなるハードマスク用の薄膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板上にフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を成膜する工程と、
前記絶縁膜の表面をシリコン及び炭素の活性種を含むプラズマに曝す工程と、
次いで基板の表面をシリコン及び炭素の活性種に加えて窒素の活性種を更に含むプラズマに曝して窒素添加炭化ケイ素膜からなるハードマスク用の薄膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板が載置される気密な処理容器内に、炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に、窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するための雰囲気を形成する手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に、シリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させてフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を前記基板に成膜するステップと、次いで当該基板に窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、続いてシリコン、炭素及び酸素の活性種を含むプラズマを発生させて、当該基板に酸素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、を実行するように各手段を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする成膜システム。
【請求項4】
基板が載置される気密な処理容器内に、炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させる手段と、
基板が載置される気密な処理容器内に供給されるシリコン及び炭素を含む第1の処理ガスと窒素を含む第2の処理ガスとを夫々供給制御するための第1のガス供給機器及び第2のガス供給機器と、
前記処理容器内に供給された前記処理ガスをプラズマ化するためのプラズマ発生手段と、
炭素及びフッ素の活性種を含むプラズマを発生させてフッ素添加カーボン膜からなる絶縁膜を前記基板に成膜するステップと、次に第1の処理ガスをプラズマ化して、前記基板の表面をシリコン及び炭素の活性種を含むプラズマに曝すステップと、続いて第1の処理ガス及び第2の処理ガスをプラズマ化して前記基板の表面をシリコン、炭素及び窒素の活性種を含むプラズマに曝して窒素添加炭化ケイ素膜を成膜するステップと、を実行するように各手段及び各ガス供給機器を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする成膜システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−56579(P2010−56579A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277902(P2009−277902)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【分割の表示】特願2005−6206(P2005−6206)の分割
【原出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「マイクロ波励起高密度プラズマ技術を用いた半導体製造装置の技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】