説明

半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法

【課題】ハードマスクとして好適に用いられるアモルファスカーボン膜の製造法を提供する。また、半導体装置における保護膜や封止膜に適したアモルファスカーボン膜の製造法を提供する。
【解決手段】プラズマ雰囲気形成領域を内部に有するチャンバーを備えるCVD装置を用意し、チャンバー内圧を6.66Pa以下、バイアス印加手段を介して成膜用の基体を設置するステージに印加するバイアスを100〜1500W、基体の成膜時の基体温度を200℃以下、成膜用の原料ガスの流量を100〜300cc/min.(0℃、大気圧)、プラズマ雰囲気を形成するための希ガスの流量を50〜400cc/min.(0℃、大気圧)とし、基体をプラズマ雰囲気に対面させ、基体上にアモルファスカーボン膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、例えば、コンタクトホールパターンは、フォトリソグラフィー技術によって形成されるのが一般的である。半導体基体上にコンタクトホールパターンを形成するには、フォトマスクのパターンを最上層のフォトレジスト層に投影した後にエッチング処理を施してフォトレジスト層の下部に設けてある中間層にフォトマスクのパターンを転写し、このフォトマスクのパターンが転写された中間層をマスクとして、中間層の下部にある層領域をエッチングする一連の工程を経るのが通常である。このフォトマスクのパターンが転写された中間層は、最終製品である半導体装置に残す場合もあるし、半導体装置の製造プロセスの適当な段階で取り除かれる場合もある。この中間層を本件の技術分野では、「ハードマスク」用の層と称することもある。中間層の除去には、通常プラズマ処理が適用され、「アッシング処理」と称される。
【0003】
この「ハードマスク」用の中間層に要求される特性としては、該層上に幾つかの層が積層されるので、各層を形成する際のプロセス温度に耐性があり機械的強度があること、マスクとして使用されるので加工性、平滑性、密着性に優れていることが挙げられる。これらの要件を満足する材料として、アモルファスカーボンが特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1では、従前のアモルファスカーボン膜は誘電率は低いが、弾性率が低く熱収縮率が高いので、製造工程時などにおいて配線及び層間絶縁層から剥がれてしまう場合があるということで、弾性率・熱収縮率の点で更なる改善が図られている。
【0005】
特許文献1によれば、その改善は多重結合を有する炭化水素ガスとシリコンを含むガスをプラズマ化して成膜することで達成されている。成膜時にシリコンの添加量を制御しながらアモルファスカーボン膜を成膜しているので、比誘電率を3.3以下の低い値に抑えながら、弾性率が高く、熱収縮率の小さいアモルファスカーボン膜が得られるという。具体的には、多重結合を有する炭化水素ガスに2‐ブチン、シリコンを有するガスにジシランを用いた実施例が記載されている。
【0006】
しかし、コンタクトホールパターンの微細化が進むにつれて、特許文献1のアモルファスカーボン膜をハードマスクとして使用する場合、プラズマエッチングの際のプラズマ耐性が十分でなくなり、高アスペクト比でパターンの形状に優れたコンタクトホールパターンが形成しにくくなるという点で実用上の満足を得ることが出来なくなりつつある。更に耐熱性も精々400℃と低いので、半導体装置の適応範囲が狭く層構造体を構成する各層の選択枝の範囲が限定され、半導体装置の設計の自由度が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−141009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ハードマスクとして好適に用いられるアモルファスカーボン膜の製造法を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、半導体装置における保護膜や封止膜に適したアモルファスカーボン膜の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、一つには本発明の半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法は以下の要件を備える。すなわち、半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法であって、プラズマ雰囲気形成領域を内部に有し、該プラズマ雰囲気形成領域に、アモルファスカーボン膜が形成される基体を設置する基体設置手段を有し前記プラズマ雰囲気形成領域に近接して配されるステージと、前記プラズマ雰囲気を形成するための希ガスを内部に導入するためのガス導入手段と、アモルファスカーボン膜を形成するための原料ガスを内部に導入するための原料ガス導入手段と、膜形成時に前記ステージにバイアスを印加するためのバイアス印加手段と、を有するチャンバーを備えるCVD装置を用意し、該チャンバー内圧を6.66Pa以下、前記バイアス印加手段を介して前記ステージに印加するバイアスを100〜1500W、前記基体の成膜時の基体温度を200℃以下、前記原料ガスの流量を100〜300cc/min.(0℃、大気圧)、前記プラズマ雰囲気を形成するための希ガスの流量を50〜400cc/min.(0℃、大気圧)、とし、前記基体設置手段に設けた前記基体を前記プラズマ雰囲気に対面させ、該基体上にアモルファスカーボン膜を形成することで本発明の目的が達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体装置の製造法において用いられるハードマスクとして好適なアモルファスカーボン膜が得られる半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法を提供することができる。
別には、半導体装置における保護膜や封止膜に適したアモルファスカーボン膜が得られる半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例のアモルファスカーボン膜を製造するためのRLSA(Radial Line Slot Antenna)-CVD(Chemical Vapor Deposition)装置の成膜主要部を説明するための模式的説明図である。
【図2】図2は、実施例のアモルファスカーボン膜にコンタクトホールパターンを形成する方法の一例を説明するための模式的工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態の例の一つによれば、耐熱性・平滑性に優れ、機械的強度が高く、高密着性で、高アスペクト比を有し、且、透明性・加工性に優れ、大気中における膜の水分吸収量も極めて少ない、半導体装置及びその製法において優れて用いられるアモルファスカーボン膜が得られる半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法が提供されうる。
【0013】
以下に、本発明に係る半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法の一実施形態例について説明する。本実施形態例におけるアモルファスカーボン膜は、RLSA-CVD装置を用い、基体ステージ温度を従前より低く抑え、半導体基体などの被成膜基体に十分なバイアス電位を印加しながらプラズマ成膜することにより得られる。
【0014】
本発明に係るアモルファスカーボン膜の製造法としては、本実施形態例においては、本発明者らの研究室にあるRLSA-CVD装置を使用し、成膜に関わる種々の製法パラメーターの値をシステマチックに変化させて統計手法とフィードバック手法も導入してデータを体系化し鋭意検討した結果、本発明のアモルファスカーボン膜の製造法を確立することができた。
【0015】
図1にその装置の成膜主要部を説明するための模式的説明図を示す。
【0016】
先ず、図1に示す製造装置の構成及び該装置によってアモルファスカーボン膜を半導体基体であるシリコンウエハ上に成膜する手順の概略を説明する。
【0017】
図1に示す装置は、200mmウエハ用RLSA-CVD装置である。チャンバー内の基体ステージである保持台104上にシリコンウエハ103を設置し、保持台104内部にチラーから所定の温度のガルデンを所定の流量で流して保持台104を十分冷却することでシリコンウエハ103の温度を所定の温度に保持する。保持台104は、シリコンウエハ103を固定する基体設置部を有する。本実施形態例においては、シリコンウエハ103の温度は、通常のPECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)の場合と比べて比較的低温に保持することが望ましい。図1の装置の場合は、通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、最適には20℃である。基体温度を20℃より更に低くしてもアモルファスカーボン膜の特性に変化は無かった。シリコンウエハ103の温度がこの範囲に保持されるために基体ステージである保持台104も同等の温度に保持される。成膜時にシリコンウエハ103を比較的低温に保持すると本発明の緻密なアモルファスカーボン膜が得られると推測される。
【0018】
保持台104は、上下に移動可能に設計されており、シリコンウエハ103表面と下段シャワープレート115との距離を任意に調節できるようになっている。このことは、プラズマ空間の所望の位置で成膜できるので、装置設計の都合による成膜条件の制約を比較的緩やかにすることが出来る。
【0019】
プラズマ励起(雰囲気形成)ガス供給ポート117より上段シャワープレート106へ、例えばAr(アルゴン)ガスを供給し、プラズマ励起ガス放出孔118から処理室102へArガスを放出する。同軸導波管113を通じて2.45GHzのマイクロ波を所定のパワーで導入しArプラズマを処理室102内に発生させる。
【0020】
プラズマ励起ガスとしては、Arガスの他、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)などのガス、特に希ガスを使用してもよく、特に、これらのガスは適当量Arガスに混合して使用してもよい。プラズマ雰囲気を形成する希ガスの流量は、通常は50〜400cc/min.(0℃、大気圧)、好ましくは50〜200cc/min.(0℃、大気圧)、最適には100cc/min.(0℃、大気圧)とするのが望ましい。
【0021】
プロセスガス供給ポート119から下段シャワープレート115へ、成膜用の原料ガスを含むプロセスガス、例えば、好ましい例として2-ブチンガスとN2(窒素)ガスをそれぞれ250cc/min.(0℃、大気圧)、100cc/min.(0℃、大気圧)の流量比で混合したプロセスガスを供給し、プロセスガス放出孔116から内部がArプラズマ雰囲気になっている処理室102内へプロセスガスを放出させる。
【0022】
原料ガスの2-ブチンガスの流量としては、通常100〜300cc/min.(0℃、大気圧)、好ましくは200〜300cc/min.(0℃、大気圧)、最適には250cc/min.(0℃、大気圧)とするのが望ましい。またN2(窒素)ガス流量としては、通常0〜200cc/min.(0℃、大気圧)、好ましくは50〜150cc/min.(0℃、大気圧)、最適には100cc/min.(0℃、大気圧)とするのが望ましい。
【0023】
また処理室102の圧力は、通常6.66Pa以下、好ましくは4.00Pa以下、最適には3.33Paとするのが望ましい。さらに、保持台104には、バイアス印加手段221により、バイアスを印加することが好ましい。バイアスは、好ましくは100〜1500W、より好ましくは600〜1300W、最適には1000Wであることが望ましい。また、バイアスの周波数は任意であり、例えば13.56MHzでありうる。これらのようなプロセス条件にすることによってN(窒素)含有のアモルファスカーボン膜を成膜することができる。
【0024】
このようにして図1の装置で成膜されるN(窒素)含有のアモルファスカーボン膜は、スルーホールや配線パターン等の配線形成の加工時に必要なプラズマ耐性(本願では、Ar/C5F8/O2プラズマ耐性で評価)の指標であるSiO/アモルファスカーボン膜選択比は、例えば6.8と高選択比のものが得られる。この値は、同条件で比較した現行のArFレジストのSiO2/レジスト膜選択比の1.7よりも高く、プラズマ耐性に優れたアモルファスカーボン膜であることが分かる。
【0025】
更に、図1の装置と上記手法で成膜したアモルファスカーボン膜は、膜密度が1.73g/cm3以上と従来の膜と比べて膜密度が遥かに高い。本実施例のアモルファスカーボン膜は、その膜密度が上記の値を有すると同時に、H(水素)とC(炭素)の比、H/Cの値が0.35以下であることが好ましい。ここでH(水素)とC(炭素)の量とは、atomic%量である。このことによって、本実施例のアモルファスカーボン膜は、脱ガス特性に優れ比較的高温領域においても脱ガス現象が観察されず、耐熱性に優れている。例えば、膜密度1.75g/cm3と膜密度の高いものは、450℃程度の温度にも耐えられることが分かっている。また、応力及びアッシングの視点からは、本発明のアモルファスカーボン膜の密度は1.90g/cm3以下であることが好ましい。膜密度が1.90g/cm3を超えるとハードマスクとして半導体装置に用いる場合、アッシング特性が低下して残渣が生じてしまい実用性に乏しくなる。
【0026】
又、化学組成分析に拠れば、例えば、膜密度の高い膜は、H(水素)とC(炭素)の比、H/Cの値が0.33とC量が極めて多いことも分かっている。
【0027】
本発明の実施形態例に係るアモルファスカーボン膜は、膜中に必ずしもNを含有しなくても、本願の目標とする膜特性は得られるが、Nを膜中に適当量含有させることにより、膜密度をより高めることができる。化学組成比からすると、H/Cの値が0.33程度のN含有アモルファスカーボン膜では、N(窒素)とC(炭素)の比、N/Cの値が、0.05程度である。ここでH(水素)とC(炭素)とN(窒素)量とは、atomic%量である。本実施例において、Nを含有させる場合は、N/Cの値を0.1以下とするのがより好ましい。
【0028】
又、透明性においても、例えば、膜厚200nmにおいて波長633nmの波長の光で測定する(測定装置として「n&k Technology,inc.製n&k Analyzer1512RT」を使用)と、消衰係数kが0.25のものが得られている。機械的強度(押し込み強度)に関しては、「NEC三栄(株)製薄膜物性評価装置MH4000」を用いて評価した。測定方法は測定試料にダイヤモンド圧子を押し込んでいき、押し込んでいる時の荷重を電子天秤で測定し、検出した荷重と押し込み深さから押し込み強度を算出した。本発明に係るアモルファスカーボン膜の押し込み強度は、例えば、151Gpaというものが得られており、現行レジストの0.5GPaよりも非常に高い機械的強度(押し込み強度)を有していることが分かる。更に本実施形態例から得られるアモルファスカーボン膜はAr/O2プラズマを用いてアッシングが可能か検討した結果、例えば、アッシング速度が46nm/minのものが得られている。又アッシング後に、アモルファスカーボン膜が完全に無くなっていることをSEM(Scanning Electron Microscope)で確認している。
【0029】
図2には、本発明に係るアモルファスカーボン膜をハードマスクとして使用して、例えば、SiO2やSi3N4などからなる被加工膜202にコンタクトホールパターンを形成する場合の典型的な工程の一例が示される。
【0030】
半導体ディバイスが形成された半導体基板201の上にプラズマCVD法などにより被加工膜202を予め形成し、この被加工膜202上に、図1に示されるRLSA-CVD装置を使用してプラズマCVD法によりアモルファスカーボン膜203を形成する。プロセスガスとして2-ブチンを用いることで透明なアモルファスカーボン膜203を形成することが出来る。次いで、プロセスガスをSiH4やSi2H6などのシラン系ガスに切り換えることでSi系の中間層204を形成し、そのSi系中間層204上にレジスト膜205を積層する(工程図2(A))。その後、積層したレジスト膜205をパターニングして(工程図2(B))、レジスト膜205をドライエッチング用のマスクにする。パターニングされたレジスト膜205をマスクにして中間層204にドライエッチング処理を施して中間層204にレジスト層205のパターンを転写する(工程図2(C))。次いで、パターンを転写された中間層204をマスクとしてアモルファスカーボン層203に中間層204のパターンを転写しつつレジスト膜205を除去する(工程図2(D))。パターン転写されたアモルファスカーボン膜203をマスクにして被加工膜202をパターニングしつつ中間層204を除去し(工程図2(E))、アッシング処理によってアモルファスカーボン膜203を除去する(工程図2(F))。その結果、被加工膜202にコンタクトホールパターンを形成することが出来る。
【実施例1】
【0031】
図1に示す200mmウエハ用RLSA-CVD装置を用い、以下に示す手順と条件で、アモルファスカーボン膜を形成し、その膜の特性を評価した。
【0032】
先ず、チャンバー100内の保持台104上にSi(シリコン)ウエハ103を設置した。保持台104の位置を上下させて、シリコンウエハ103の表面と下段シャワープレート115との距離を80mmに調節した。保持台104内部にチラーから20℃のガルデンを流し、シリコンウエハ103の温度を20℃まで下げて後その温度に保持した。プラズマ励起ガス供給ポート117より上段シャワープレート106へArガスを100cc/min.(0℃、大気圧)供給し、プラズマ励起ガス放出孔218から処理室202へArガスを放出させた。同軸導波管113を通じて2.45GHzのマイクロ波を1500Wのパワーで導入しArプラズマ雰囲気を処理室102内に形成した。そこへプロセスガス供給ポート119から下段シャワープレート115へ2-ブチンガスとN2ガスをそれぞれ250cc/min.(0℃、大気圧)、100cc/min.(0℃、大気圧)で混合したプロセスガスを供給し、プロセスガス放出孔116より処理室102内へプロセスガスを放出させた。その際に処理室102の圧力を3.33Pa、13.56MHzの基板バイアス121を1000Wの条件にすることでアモルファスカーボン膜をシリコンウエハ103上に成膜した。
【0033】
このようにしてシリコンウエハ103上に得た膜は、以下の各測定用の試料に分割して各測定をした(試料A1、A2、A3、A4、A5、A6)。
【0034】
化学組成分析の結果(試料A1)では、Nが膜中に含有されていることが分かった。その膜中のNの含有量は、N/Cの値で、0.05であった。H/Cの値は、0.33であった。Oは含有されていなかった。
【0035】
又、本実施例に係る膜について、Ar/C5F8/O2プラズマ耐性試験でプラズマ耐性の評価をした。スルーホールや配線パターン等の配線形成の加工時に必要なプラズマ耐性の指標であるSiO2/アモルファスカーボン膜選択比は、6.8と高選択比のものであることがわかった(試料A2)。
【0036】
更に、膜密度を測定してみると、膜密度1.75g/cm3と膜密度が極めて高く、耐熱試験では450℃程度の温度にも耐えられることが分かった(試料A3)。
【0037】
又、透明性においても、膜厚200nmにおいて波長633nmの波長の光で測定する(測定装置は、n&k Technology,inc.製 n&k Analyzer1512RT)と、消衰係数kは、0.25であった(試料A4)。
【0038】
機械的強度(押し込み強度)に関しては、NEC三栄(株)製薄膜物性評価装置MH4000を用いて評価した。測定方法は測定試料にダイヤモンド圧子を押し込んでいき、押し込んでいる時の荷重を電子天秤で測定し、検出した荷重と押し込み深さから押し込み強度を算出した。本実施例に係るアモルファスカーボン膜の押し込み強度は、151Gpaであった(試料A5)。現行レジストの0.5GPaよりも非常に高い機械的強度(押し込み強度)を有していることが分かる。
【0039】
更に本実施例に係るアモルファスカーボン膜はAr/O2プラズマを用いてアッシングが可能か検討した結果、アッシング速度が46nm/minであった。またアッシング後にアモルファスカーボン膜が無くなっていることをSEMで確認できた(試料A6)。
【0040】
本実施例に係るアモルファスカーボン膜は、0.11μmの設計ルールにおいて、従来のものと比較して高アスペクト比であることも確認された(別途、本実験例に従って0.11μmの設計ルールに適った、アスペクト比測定用の試料を作成した)。
【実施例2】
【0041】
実施例1で使用した装置で実施例1と同条件、同手順で以下の測定用の試料を作成した(但、N2ガスは使用しなかった)。
【0042】
本実施例に係るアモルファスカーボン膜は450℃と高い耐熱性を有すること、平均面粗さ(Ra)が0.17と平坦性に優れていること(AFM(Atomic Force Microscope)測定)、又、上記のように膜の機械的強度・透明性に優れていることが判った。
【0043】
又、大気圧イオン化質量分析装置(日立テクノロジー(株)社製)を使用して大気中における膜の水分吸収量を測定したところ、従来のアモルファスカーボン膜と比較して1/10程度であり、非水分吸収性に随分と優れていることが判った。
【0044】
以上の特性から、膜積層構造体の作成も十分可能であり保護膜用途としても実用性が十分ある。
【実施例3】
【0045】
半導体ディバイスとして、簡単なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーを作り込んだ未封止の半導体装置をセラミック製のパッケージに納入し、実施例1のRLSA-CVD装置を使用し、実施例1と同条件、同手順でアモルファスカーボン膜を作成してパッケージ内にCMOSセンサーを密封した。
【0046】
一方、耐熱性(試料B1)、平滑性(試料B2)、機械的強度(試料B3)、透明性(試料B4)、非水分吸収性(試料B5)の測定用に各試料を作成して、実施例1,2と同様に各特性を測定した結果、同様の結果を得た。
【0047】
平滑性は、AFM測定法を用いて測定した結果、平均面粗さ(Ra)が0.17と平坦性に優れることが判った。
【0048】
これのことから、本実施例に係るアモルファスカーボン膜は実施例2に挙げられる特性に加え、従来のアモルファスカーボン膜よりも平滑性・密封性に優れており封止膜用途として実用性があることが示された。
【符号の説明】
【0049】
101 排気ポート
102 処理室
103 処理基板
104 保持台
105 プラズマ励起ガス放出孔
106 上段シャワープレート
107 シールリング
108 カバープレート
109 シールリング
110 プラズマ励起ガスを充填する空間
111 ラジアルラインスロットアンテナのスロット板
112 マイクロ波を径方向に伝播させるための遅波板
113 同軸導波管
114 冷却用流路
115 下段シャワープレート
116 プロセスガス放出孔
117 プラズマ励起ガス供給ポート
118 プラズマ励起ガス供給孔
119 プロセスガス供給ポート
120 プロセスガス流路
121 基板バイアス電源
201 半導体基体
202 被加工膜
203 アモルファスカーボン膜
204 中間層
205 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法であって、プラズマ雰囲気形成領域を内部に有し、該プラズマ雰囲気形成領域に、アモルファスカーボン膜が形成される基体を設置する基体設置手段を有し前記プラズマ雰囲気形成領域に近接して配されるステージと、前記プラズマ雰囲気を形成するための希ガスを内部に導入するためのガス導入手段と、アモルファスカーボン膜を形成するための原料ガスを内部に導入するための原料ガス導入手段と、膜形成時に前記ステージにバイアスを印加するためのバイアス印加手段と、を有するチャンバーを備えるCVD装置を用意し、
該チャンバー内圧を6.66Pa以下、
前記バイアス印加手段を介して前記ステージに印加するバイアスを100〜1500W、
前記基体の成膜時の基体温度を200℃以下、
前記原料ガスの流量を100〜300cc/min.(0℃、大気圧)、
前記プラズマ雰囲気を形成するための希ガスの流量を50〜400cc/min.(0℃、大気圧)、とし、
前記基体設置手段に設けた前記基体を前記プラズマ雰囲気に対面させ、該基体上にアモルファスカーボン膜を形成することを特徴とする半導体装置及びその製法において用いられるアモルファスカーボン膜の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−212706(P2012−212706A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76277(P2011−76277)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】