説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 ビアホールの微細化及び高アスペクト比化が進むと、銅からなるシード層でビアホールの内面を連続的に覆うことが困難になる。
【解決手段】 半導体基板(10)の上に絶縁膜(20)が形成されている。絶縁膜に凹部(21)が形成されている。凹部の内面を第1の導電膜(22)が覆う。島状組織(25)が、第1の導電膜の表面に離散的に分布する。島状組織は、銅に対して、第1の導電膜の濡れ性よりも高い濡れ性を有する。凹部が、銅または銅合金からなる導電部材(31)で充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜に形成された凹部を、銅または銅合金の導電部材で充填した半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線に用いられる銅は、従来の配線材料であるアルミニウムに比べて加工が困難であることから、銅パターンの形成に、ダマシン法またはデュアルダマシン法が用いられる。ダマシン法またはデュアルダマシン法では、絶縁膜に形成したビアホールや配線溝等の凹部内を充填する銅膜を形成した後、不要な銅膜を除去することにより、銅パターンが形成される。銅膜の形成には、量産性とコストとの観点から、一般的に電解めっき法が用いられる。電解めっきを行う前に、電極として用いる銅からなるシード層がスパッタリング等により形成される。
【0003】
基板全面に形成した銅膜をリフローさせることによって、凹部を銅部材で充填する方法が知られている(特許文献1)。平坦面上から凹部内に銅をリフローさせるために、凹部の内面と銅との濡れ性を、平坦面と銅との濡れ性よりも高くする処理が行われる。例えば、凹部の内面のバリアメタル膜の表面粗さが、平坦面上のバリアメタル膜の表面粗さよりも大きくされる。または、凹部の内面にのみ、銅との濡れ性の高い材料からなる導電膜が形成される。
【0004】
また、配線をAl系材料で形成する場合に、下地となるTiN/Ti系バリアメタル膜の表面粗さを増加させる方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−209159号公報
【特許文献2】特開平9−223736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体集積回路の高集積化及び微細化に伴い、ビアホールの微細化及びアスペクト比の増加が進んでいる。ビアホールの微細化及び高アスペクト比化が進むと、銅からなるシード層でビアホールの内面を連続的に覆うことが困難になる。例えば、ビアホールの内面に付着した銅が平坦な膜にならず、離散的に分布する複数の島状部分が形成される。島状部分が離散的に分布すると、電解めっき用の電極として機能しなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決する半導体装置は、
半導体基板の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された凹部と、
前記凹部の内面を覆う第1の導電膜と、
前記第1の導電膜の表面に離散的に分布し、銅に対して、前記第1の導電膜の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料からなる島状組織と、
前記凹部を充填する銅または銅合金からなる導電部材と
を有する。
【0008】
上述の課題を解決する半導体装置の製造方法は、
半導体基板の上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を第1の導電膜で覆う工程と、
前記導電膜の表面に離散的に分布し、銅に対して、前記第1の導電膜の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料からなる島状組織を形成する工程と、
前記凹部を、銅または銅合金からなる導電部材で埋め込む工程と
を有する。
【0009】
上述の課題を解決する半導体装置の他の製造方法は、
半導体基板の上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を第1の導電膜で覆う工程と、
前記導電膜の表面を、銅に対する前記第1の導電膜の濡れ性よりも、銅に対する濡れ性が高い導電材料からなる第2の導電膜で覆う工程と、
前記第2の導電膜の表面を荒らす工程と、
前記第2の導電膜の表面を荒らした後、前記凹部を、銅または銅合金からなる導電部材で埋め込む工程と
を有する。
【発明の効果】
【0010】
銅または銅合金を堆積させる下地表面の濡れ性が高まり、凹部内を、銅または銅合金で安定して埋め込むことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】実施例1による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図1−2】実施例1による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図1−3】実施例1による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その3)である。
【図1−4】実施例1による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その4)である。
【図2】(2A)は、島状部分の斜視図であり、(2B)は、島状組織の被覆率と、第1の導電膜の露出した表面の面積と、島状組織の露出した表面の面積との関係を示す図表である。
【図3】(3A)は、基板上の液滴及びそれに働く界面張力を示す図であり、(3B)及び(3C)は、それぞれ接触角が90°未満の場合の平坦面上及び粗面上の液滴の断面図であり、(3D)及び(3E)は、それぞれ接触角が90°より大きい場合の平坦面上及び粗面上の液滴の断面図である。
【図4】(4A)〜(4C)は、それぞれTa、Ti、Co上の銅膜を剥離する評価試験の結果を示す写真である。
【図5−1】実施例2による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図5−2】実施例2による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図5−3】実施例2による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、実施例1及び実施例2について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1A〜図1Iを参照して、実施例1による半導体装置の製造方法について説明する。
【0014】
図1Aに示すように、シリコン等の半導体基板10の表層部に、シャロートレンチアイソレーション(STI)等により、素子分離絶縁膜11を形成する。素子分離絶縁膜11で囲まれた活性領域が画定される。活性領域内に、MOSFET12を形成する。
【0015】
MOSFET12を覆うように、半導体基板10の上に、酸化シリコン等からなる層間絶縁膜15を形成する。層間絶縁膜15に複数のビアホールを形成し、このビアホール内をタングステン(W)等で充填することにより、導電プラグ16を形成する。ビアホールの直径は、例えば50nm程度である。導電プラグ16は、それぞれMOSFET12のソース、ドレイン等に接続される。
【0016】
図1Bに示すように、層間絶縁膜15の上に、2層目の層間絶縁膜20を形成する。層間絶縁膜20には、例えばポーラスシリカ等の所謂Low−k材料が用いられる。層間絶縁膜20は、例えば塗布法により形成される。
【0017】
図1Cに示すように、層間絶縁膜20に複数の凹部21を形成する。凹部21の底面に、導電プラグ16の上端が露出する。以下の図1D〜図1Hには、1つの凹部21を拡大した断面図を示す。
【0018】
図1Dに示すように、層間絶縁膜20の上面、及び凹部21の内面を覆うように、第1の導電膜22を形成する。第1の導電膜22は、凹部21内に充填される銅の拡散を防止するバリアメタル膜として機能する。第1の導電膜22には、例えばTaが用いられる。Ta膜の形成には、例えばDCスパッタリング、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)等を用いることができる。
【0019】
DCスパッタリングでTa膜を形成する場合の成膜条件は、例えば下記の通りである。
・DC電力 25kW
・スパッタリングガス Ar
・圧力 0.1Pa
・成膜厚さ 5nm
CVDでTa膜を形成する場合の成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料 ペンタキスジメチルアミノタンタリウム(PDMAT)
・原料容器温度 80℃
・キャリアガス H
・流量 200sccm
・基板温度 150℃〜350℃(典型的には270℃)
・圧力 100Pa
・成膜厚さ 2nm〜10nm(典型的には5nm)
ALDでTa膜を形成する場合には、原料ガスを含むキャリアガスを、流量100sccmで1秒間供給する工程と、キャリアガスのみを、流量100sccmで1秒間供給する工程とを、交互に10周期分繰り返す。成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料 ペンタキスジメチルアミノタンタリウム(PDMAT)
・原料容器温度 80℃
・キャリアガス H
・基板温度 100℃〜300℃(典型的には240℃)
・圧力 100Pa
・成膜厚さ 3nm
なお、Ta原料として、PDMATに代えて、CpTaH、Ta(OC、Ta(i−OC、Ta(OCH、タンタルハロゲン化物(TaCl、TaF、TaBr、TaI)、Ta[NC(CH][N(CH等を用いることも可能である。
【0020】
なお、第1の導電膜22に、Ta以外に、バリアメタルとしての機能を持つ他の材料を用いてもよい。例えばTa、W、Mo、Ti、またはZrを含む金属、合金、窒化物等を用いることができる。
【0021】
図1Eに示すように、第1の導電膜22の表面上に離散的に分布する導電材料からなる島状組織25を形成する。島状組織25には、銅に対して、第1の導電膜22の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料が用いられる。濡れ性は、平坦面上に付着した溶融した銅の接触角を測定することにより評価することができる。具体的には、島状組織25の導電材料が露出した平坦面上に、溶融した銅を付着させたときの接触角が、第1の導電膜22の材料が露出した平坦面上に、溶融した銅を付着させたときの接触角よりも小さい。
【0022】
島状組織25には、例えばCoが用いられる。Co膜は、例えばCVD、交互供給法等により形成することができる。
【0023】
Coの島状組織をCVDで形成する場合の成長条件は、例えば下記の通りである。
・原料 ジコバルトヘキサカルボニルt−ブチルアセチレン(CCTBA)
・原料容器温度 60℃
・キャリアガス H
・基板温度 220℃
・圧力 100Pa
この条件でCoを成長させると、第1の導電膜22の表面において核生成が生じ、その後、核が成長する。核の成長に伴って、核同士が繋がり膜が形成される。島状組織25を形成する際には、核同士が繋がる前に成長を停止させる。すなわち、インキュベーションタイム中に、成長を停止させる。
【0024】
上述の条件で、第1の導電膜22の表面の被覆率が約50%の島状組織25が形成される。島状組織25を構成する粒子の各々は、ほぼ半球状であり、その高さは2nm以下である。
【0025】
Coの島状組織を交互供給法で形成する場合には、原料ガスの供給、原料ガスのパージ、アンモニア(NH)ガスの供給、アンモニアガスのパージをこの順番に12周期分繰り返す。原料ガスの供給時には、ガス流量を250sccmとし、供給時間を0.5秒とする。アンモニアガスの供給時には、ガス流量を200sccmとし、供給時間を1秒とする。パージガスの供給時には、流量を200sccmとし、供給時間を1秒とする。成長条件は、例えば下記の通りである。
・原料 ジコバルトヘキサカルボニルt−ブチルアセチレン(CCTBA)
・原料容器温度 60℃
・キャリアガス Ar
・パージガス H
・基板温度 220℃
・圧力 100Pa
上述の条件で、第1の導電膜22の表面の被覆率が約50%の島状組織25が形成される。交互供給法を採用すると、CVDを採用した場合に比べて、島状組織25を構成する各粒子を微細化させることができる。なお、アンモニアガスに代えて、他の還元性ガスを用いてもよい。
【0026】
図1Fに示すように、島状組織25が形成された基板上に、銅からなるシード層30を、例えばスパッタリングにより形成する。シード層30は、平坦面上における厚さが20〜50nmになるように成膜する。このとき、凹部21の内面において、シード層30の厚さは2〜3nmになる。島状組織25を形成することなく、Taからなる第1の導電膜22の上に、直接、シード層30を形成すると、凹部21の内面では、連続した膜にならず、銅の粒子が離散的に分布する構造が得られる。本実施例では、銅に対する濡れ性の高い島状組織25を形成しているため、凹部21の内面におけるシード層30の厚さが2〜3nmであっても、連続した膜になる。
【0027】
図1Gに示すように、シード層30を電極として用いて、その上に銅または銅合金を電解めっきすることにより、配線膜31を形成する。凹部21内が、配線膜31で充填される。層間絶縁膜22の上面よりも上方に堆積している第1の導電膜22、島状組織25、シード層30、及び配線膜31を、化学機械研磨(CMP)により除去する。
【0028】
図1Hに示すように、凹部21内に、銅または銅合金からなる配線31aが残る。また、凹部21の内面は、第1の導電膜22で覆われたままであり、第1の導電膜22の表面に、島状組織25が分布している。島状組織25は、シード層30で覆われている。シード層30と配線31aとは、共に銅または銅合金で形成されているため、両者を明確に区別することは困難である。従って、シード層30と配線31aとを含む銅部材と、バリアメタル膜として機能する第1の導電膜22との界面に、島状組織25が配置された構造が得られ。
【0029】
図1Iに示すように、配線31aは、例えば、それぞれ導電プラグ16を介して、MOSFET12のソース及びドレインに接続される。
【0030】
次に、図2A、図2B、及び図3A〜図3Eを参照して、島状組織25の効果、及び好ましい被覆率について説明する。
【0031】
図2Aに、島状組織25を構成する1つの島状部分25Aの概略斜視図を示す。島状部分25Aの各々の形状は、ほぼ半球状である。半球状の島状部分25Aの底面の面積をSとすると、島状部分25Aの球状曲面の面積はその2倍の2Sになる。すなわち、島状組織25の露出した表面の面積は、島状組織25が被覆してる下地表面の面積の約2倍になると考えることができる。
【0032】
図2Bに、島状組織25の被覆率と、露出した下地表面及び島状組織25の表面の面積との関係を示す。島状組織25の被覆率が0%である場合、すなわち島状組織25が形成されていない場合に、下地の第1の導電膜22の露出した表面の面積を正規化して100とする。島状組織25の被覆率が50%である場合には、第1の導電膜22の露出した表面の面積は50になる。島状組織25で被覆されている領域の面積も50であり、島状組織25の露出した表面の面積は、その2倍の100になる。同様に、島状組織25の被覆率が75%のとき、第1の導電膜22の露出した表面の面積は25になり、島状組織25の露出した表面の面積は150になる。
【0033】
島状組織25の被覆率が100%である状態は、第1の導電膜22の全面が連続膜で覆われている状態を意味する。この場合、連続膜の表面の面積は、下地表面の面積と等しくなる。すなわち、島状組織25の露出した表面の面積は100である。
【0034】
図3Aに、基板50の表面に液滴51が付着している状態を示す。液滴51の接触角をθとする。液滴51の縁上の一点である作用点Pに働く界面張力のうち、基板50と液滴51との界面に沿う張力をγLSとし、液滴51と気体との界面に沿う張力をγVLとし、基板50と気体との界面に沿う張力をγVSとする。
【0035】
基板50の表面の凹凸度をrとし、作用点Pが液滴51の外方に向かってdxだけ変位したときのエネルギ変化をdEとし、このときの接触角をθとすると、以下の式が成り立つ。ここで、凹凸度rは、表面が完全な平面であると仮定したときの表面積に対する実際の表面積の割合である。
【0036】
【数1】

【0037】
平衡状態では、dE/dx=0であるから、下記の式が得られる。
【0038】
【数2】

【0039】
基板50の表面が平坦であるときの接触角をθとする。基板50の表面が平坦である場合には、r=1であるから、以下の式が成り立つ。
【0040】
【数3】

【0041】
式2と式3とからγLS、γVS、γVLが消去されて、以下の式が得られる。
【0042】
【数4】

【0043】
基板50の表面が平坦ではない場合、凹凸度rは1より大きい。従って、以下の式が成り立つ。
【0044】
【数5】

【0045】
cosθが正のとき、すなわち平坦面上の接触角θが0°<θ<90°のとき、θ<θとなり、cosθが負のとき、すなわち90°<θ<180°のとき、θ>θとなる。
【0046】
図3Bに示すように、平坦面上における接触角θが0°<θ<90°のとき、図3Cに示すように、表面に凹凸が付されている場合の接触角θは、θよりも小さくなる。これは、濡れ性が高まることを意味する。逆に、図3Dに示すように、平坦面上における接触角θが90°<θ<180°のとき、図3Eに示すように、表面に凹凸が付されている場合の接触角θは、θよりも大きくなる。これは、濡れ性が低下することを意味する。
【0047】
Coの表面に対する銅の接触角は90°未満である。このため、Co膜の表面を粗くすと、表面が平坦な場合に比べて濡れ性が高まる。
【0048】
図2Bに戻って説明を続ける。島状組織25の被覆率が75%の場合と、100%の場合とを比較すると、被覆率が75%の方が、島状組織25の表面の面積が大きいことが分かる。このため、被覆率が75%である場合に、シード層30の下地表面の、銅に対する濡れ性は、平坦なCo膜の表面の、銅に対する濡れ性よりも高いと考えられる。
【0049】
また、島状組織25の被覆率が50%の場合と、100%の場合とを比較すると、島状組織25の表面の面積は等しい。また、被覆率50%の場合には、第1の導電膜22の表面が露出した領域も存在する。このため、島状組織25の被覆率が50%の場合に、シード層30の下地表面の、銅に対する濡れ性は、平坦なCo表面の、銅に対する濡れ性と等しいか、それよりも高いと考えられる。
【0050】
上述の考察から、島状組織25の被覆率を50%以上にすることが好ましいことがわかる。島状組織25は、第1の導電膜22の、銅に対する濡れ性よりも高い濡れ性を有する材料で形成されている。このため、島状組織25の被覆率が50%未満であっても、平坦な第1の導電膜22の上にシード層30を直接成長させる場合に比べると、島状組織25を配置することによって、シード層30の下地表面の、銅に対する濡れ性が高められていることは明白である。
【0051】
島状組織25を構成する各々の島状部分の寸法が、第1の導電膜22の上にシード層30を直接形成する際に生成される銅の島状部分の寸法程度、またはそれよりも大きい場合には、島状組織25を配置することの十分な効果が得られない。一般的に、Ta等のバリアメタル膜上に銅を成長させたときに形成される銅の島状部分の寸法は、5nm〜8nm程度である。従って、島状組織25を構成する各々の粒子の高さを2nm以下、より好ましくは1nm以下とすることが好ましい。
【0052】
次に、図4A〜図4Cを参照して、Ta、Ti、及びCoに対する銅の密着性について評価を行った結果について説明する。
【0053】
Ta、Ti、及びCo膜の上に、銅膜を化学気相成長(CVD)により形成した3種類の評価用試料を作製した。ダイヤモンドのケガキ針で、試料表面に正方格子状のケガキを入れ、粘着テープで銅膜を剥離させる実験を行った。
【0054】
図4A〜図4Cは、それぞれTa膜上、Ti膜上、及びCo膜上に銅膜を形成した試料の銅膜剥離処理後の写真を示す。Ta膜上に銅膜を形成した場合には、図4Aに示すように、ケガキを入れた領域のみならず、それに隣接する領域の銅膜も剥離した。Ti膜上に銅膜を形成した場合には、図4Bに示すように、ケガキを入れた領域の銅膜は剥離したが、それに隣接する領域の銅膜に剥離は生じていない。Co膜上に銅膜を形成した場合には、図4Cに示すように、ケガキを入れた領域の銅膜も剥離していない。
【0055】
この評価結果から、銅膜の密着性は、下地表面がCo、Ti、Taの順に高いことがわかる。密着性が高いということは、濡れ性も高いと考えられる。この評価結果から、島状組織25の導電材料として、濡れ性の観点から、TaよりもTiが適しており、TiよりもCoが適していることがわかる。なお、島状組織25には、Co、Ti、Zr、Mn、またはRuを含む導電材料を用いてもよい。
【0056】
バリアメタル膜として機能する第1の導電膜22と島状組織25とに同一の材料を用いると、島状組織25の成長時に核生成が生じることなく、成長当初から全面を覆う膜が形成されてしまう。島状部分が離散的に分布する島状組織25を形成するためには、島状組織25に、第1の導電膜22とは異なる材料を用いる必要がある。例えば、第1の導電膜22に金属Tiを用いた場合、島状組織25に金属Tiを用いることはできない。ただし、第1の導電膜22にTiの窒化物(TiN)を用いた場合、島状組織25に金属Tiを用いることは可能である。
【0057】
また、シード層30を連続膜にするために、島状組織25の材料として、銅に対して、第1の導電膜22の濡れ性よりも高い濡れ性を有するものを選択することが好ましい。一例として、第1の導電膜22にTaを用いた場合には、島状組織25に、TiやCoを用いることが好ましい。また、第1の導電膜22にTiを用いた場合には、島状組織25にCoを用いることが好ましい。
【0058】
上記実施例1において、図1Dに示した第1の導電膜22を形成した後、図1Eに示した島状組織25を形成する前に、Arプラズマを用いた逆スパッタを行って、第1の導電膜22の表面を粗面化してもよい。さらに、図1Eに示した島状組織25を形成した後、図1Fに示したシード層30を形成する前に、Arプラズマを用いた逆スパッタを行い、表面をさらに粗面化してもよい。表面の粗面化により、銅に対する濡れ性をより高めることができ、かつコンタクト抵抗を低減させることができる。島状組織25の形成にCVD法を用いた場合には、島状組織25の脱酸素、脱炭素処理を兼ねて、水素に代表される還元性プラズマを用いて表面の粗面化を行ってもよい。
【0059】
上記実施例1では、図1Fに示した工程で、スパッタリングによりシード層30を形成し、図1Gに示した工程で、電解めっきにより配線膜31を形成した。電解めっきを行う代わりに、スパッタリングのみによって凹部21内を銅で埋め込んでもよい。また、CVDのみによって凹部21内を銅で埋め込んでもよい。この場合には、島状組織25を配置することにより、銅による埋込特性を向上させることができる。
【0060】
実施例1では、配線用の凹部21内を銅または銅合金で埋め込んだが、銅または銅合金を埋め込む他の工程でも、島状組織25を利用することが可能である。例えば、シングルダマシン法において、層間コンタクト用のビアホール内を埋め込む工程や、デュアルダマシン法において、ビアホールと配線溝とを同時に埋め込む工程に、島状組織25を利用することができる。
【実施例2】
【0061】
次に、図5A〜図5Fを参照して、実施例2による半導体装置の製造方法について説明する。
【0062】
図5Aに示す第1の導電膜22を形成するまでの工程は、図1Dに示した第1の導電膜22を形成するまでの実施例1の工程と共通である。第1の導電膜22の表面を、第2の導電膜40で覆う。第2の導電膜40には、銅に対して、第1の導電膜22の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料が用いられる。一例として、第1の導電膜22にTiやTaを用いた場合、第2の導電膜40にはCoが用いられる。第2の導電膜40は、例えば、スパッタリング、CVD等で形成される。
【0063】
図5Bに示すように、第2の導電膜40を、Arプラズマで逆スパッタする。図5Cに示すように、逆スパッタにより、第2の導電膜40の表面が粗くなる。逆スパッタの条件は、例えば下記の通りである。
・圧力 0.1Pa
・RF電力 1kW
・ウエハバイアス 500W
第2の導電膜40の成膜直後の表面の二乗平均平方根粗さは約0.7nmであったが、Arによる逆スパッタ後の表面の二乗平均平方根粗さは約1.3nmであった。このように、逆スパッタにより第2の導電膜40の表面が粗くなっていることが確認された。第2の導電膜40の成膜にCVD法を用いた場合には、第2の導電膜40の脱酸素、脱炭素処理を兼ねて、水素に代表される還元性プラズマを用いて表面の粗面化を行ってもよい。
【0064】
図5Dに示すように、表面が粗くなった第2の導電膜40の上に、銅からなるシード層30を形成する。シード層30の形成は、図1Fに示した実施例1のシード層30の形成方法と同一である。
【0065】
図5Eに示すように、シード層30を電極として銅または銅合金を電解めっきすることにより、配線膜31を形成する。その後、層間絶縁膜22の上面よりも上方に堆積している第1の導電膜22、第2の導電膜40、シード層30、及び配線膜31を、CMPにより除去する。
【0066】
図4Fに示すように、凹部21内に、銅または銅合金からなる配線31aが残る。
【0067】
第2の導電膜40の材料の平坦な表面上の銅の接触角が90°未満である場合には、図3B〜図3Cを参照して説明したように、表面を粗面化することによって濡れ性を高めることができる。このため、シード層30が薄い場合でも、シード層30が島状に分断されることなく、膜状に形成することが可能である。第2の導電膜40の、銅に対する濡れ性が、第1の導電膜22の、銅に対する濡れ性よりも高い。このため、第1の導電膜22の表面を粗面化してその上にシード層30を直接形成する場合に比べて、シード層30の下地表面の、銅に対する濡れ性をより高めることができる。
【0068】
第2の導電膜40の表面を粗くする処理は、配線用の凹部21内を銅または銅合金で埋め込む工程以外に、銅を埋め込む他の工程にも適用することが可能である。例えば、シングルダマシン法において、ビアホール内を埋め込む工程や、デュアルダマシン法において、ビアホールと配線溝とを同時に埋め込む工程に、第2の導電膜40の表面を粗くする処理を適用することができる。
【0069】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0070】
10 半導体基板
11 素子分離絶縁膜
12 MOSFET
15 層間絶縁膜
16 導電プラグ
20 層間絶縁膜
21 凹部
22 第1の導電膜
25 島状組織
30 シード層
31 配線膜
31a 配線
40 第2の導電膜
50 基板
51 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された凹部と、
前記凹部の内面を覆う第1の導電膜と、
前記第1の導電膜の表面に離散的に分布し、銅に対して、前記第1の導電膜の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料からなる島状組織と、
前記凹部を充填する銅または銅合金からなる導電部材と
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1の導電膜が、Ta、W、Mo、Ti、Zrからなる群より選択された少なくとも1つの金属元素を含み、
前記島状組織が、Co、Ti、Zr、Mn、Ruからなる群より選択された少なくとも1つの金属元素を含む請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板の上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を第1の導電膜で覆う工程と、
前記導電膜の表面に離散的に分布し、銅に対して、前記第1の導電膜の濡れ性よりも高い濡れ性を有する導電材料からなる島状組織を形成する工程と、
前記凹部を、銅または銅合金からなる導電部材で埋め込む工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記島状組織を形成する工程において、原料ガスと、還元性ガスとを交互に前記第1の導電膜上に供給することにより、前記島状組織を形成する請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板の上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、
前記凹部の内面を第1の導電膜で覆う工程と、
前記導電膜の表面を、銅に対する前記第1の導電膜の濡れ性よりも、銅に対する濡れ性が高い導電材料からなる第2の導電膜で覆う工程と、
前記第2の導電膜の表面にArプラズマ処理または還元性プラズマ処理を施す工程と、
前記第2の導電膜の表面にArプラズマ処理または還元性プラズマ処理を施した後、前記凹部を、銅または銅合金からなる導電部材で埋め込む工程と
を有する半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【図3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−177305(P2010−177305A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16106(P2009−16106)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】