説明

半導体装置

【課題】光劣化を極力抑制し、電気特性が安定したトランジスタ及び該トランジスタを含む半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】トランジスタを形成する為に用いられる膜によって光が反射し、多重干渉が起きていることに着目し、当該反射を起こす膜の光学的膜厚を概略λ/4の奇数倍もしくは偶数倍とすることで、当該膜のトランジスタに対する機能を損ねずに、酸化物半導体が吸収する波長領域の光の反射率を高めることで、酸化物半導体に吸収される光の量を低減させ、光劣化の低減効果を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ、または該トランジスタを少なくとも一部に用いて構成される半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、液晶表示装置などの電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
従来、液晶テレビに代表される表示装置にはシリコン半導体を用いたトランジスタが用いられて来たが、シリコン半導体に代わる材料として酸化物半導体が注目されている。例えば、アクティブマトリクス型の表示装置におけるトランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用い、該非晶質酸化物の電子キャリア濃度が1018/cm未満としたものが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、酸化物半導体を用いたトランジスタには幾つかの問題が指摘されている。その一つは特性の安定性であり、可視光または紫外光を照射することで電気特性が変化することが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属酸化物からなる酸化物半導体はバンドギャップが3eV程度であり、本来、可視光に対しては透光性を有するものである。しかしながら、強い光を照射した際に電気特性が変化(光劣化と呼ぶ)する性質を有していることが知られている。
【0007】
この様な酸化物半導体を用いたトランジスタの光による特性変化に対し、それを改善する方法は何ら示されていないため、新材料と期待されつつも実用化が遅れる原因となっている。
【0008】
本発明の一態様は、光劣化を極力抑制し、電気特性が安定したトランジスタ及び該トランジスタを含む半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿ってチャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、連続している3つの層の屈折率の中で連続している3つの層の中間に位置する層の屈折率が最も大きいか最も小さい場合には、連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の奇数倍であることを特徴とする半導体装置である。
【0010】
本発明の一態様は、酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿ってチャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、連続している3つの層の屈折率の中で最も大きな屈折率を有する層と最も小さな屈折率を有する層に接している場合には、連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の偶数倍であることを特徴とする半導体装置である。
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿ってチャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、連続している3つの層の屈折率の中で連続している3つの層の中間に位置する層の屈折率が最も大きいか最も小さい場合には、連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の奇数倍であり、酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿ってチャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、連続している3つの層の屈折率の中で最も大きな屈折率を有する層と最も小さな屈折率を有する層に接している場合には、連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の偶数倍であることを特徴とする半導体装置である。
【0012】
上記において、連続している3つの層の中間に位置する層は、基板上に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記において、連続している3つの層の中間に位置する層は、絶縁体もしくは導体で形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、上記において、波長λは外光のスペクトル強度と前記酸化物半導体層の光の吸収係数をかけて算出されたスペクトルのピーク波長であることを特徴とする。
【0015】
また、上記において、波長λは、300nmから450nmの範囲に入ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によって、光照射による劣化が非常に少なく、電気特性が安定したトランジスタ、及び該トランジスタを含む半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】酸化物半導体の光吸収係数の一例を示す図。
【図2】太陽光スペクトルの一例を示す図。
【図3】酸化物半導体の光吸収ピークの一例を示す図。
【図4】単膜の場合の反射の一例を示す図。
【図5】光学膜厚に対する反射率の変化の一例を示す図。
【図6】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【図7】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【図8】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【図9】半導体装置の一態様を示す断面図。
【図10】300nmから800nmの光に対する反射率の計算例。
【図11】比較例。
【図12】半導体装置の作製工程の一例を示す図。
【図13】半導体装置の一態様を説明する図。
【図14】半導体装置の一態様を説明する図。
【図15】電子機器の一例を示す図。
【図16】電子機器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
本発明者らは、酸化物半導体に光が照射された際に、図1のように酸化物半導体が300nm〜450nmの波長領域の光を吸収することを見出した。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタのチャネル部がこの波長領域の光を吸収することで光劣化が起きる。そこで、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に300nm〜450nmの波長領域の光を吸収させず、反射させる構造を考えた。すなわち、トランジスタを形成する為に用いられる膜により光が反射し、多重干渉が起きることに着目し、当該反射を起こす膜の膜厚をある特定の膜厚にすることで、特定の波長領域の光の反射率を高めることが出来ることを見いだした。
【0020】
酸化物半導体層で形成されたチャネル部に照射される光としては、太陽光や蛍光灯などの外光がある。ここで太陽光について300nm以下の波長の光については、地表における太陽光のスペクトル強度として300nm以下の波長はほとんど無いことから、影響は少ない。
【0021】
また、酸化物半導体はバンドギャップが3eV程度であり、本来、可視光に対しては透光性を有するものである。しかし、不純物などによるトラップ準位などの影響で、一部可視光領域の光も吸収することがある。その吸収する波長領域は用いる酸化物半導体により異なるが、余裕をみても450nm以下の波長としてよい。
【0022】
光が複数の層を通過してゆく際、反射が発生するのは、屈折率の異なる層と層が積層された界面を通過する場合である。このような積層構造はトランジスタを作製する際にはしばしば見受けられる。例えば、酸化ケイ素膜と、窒化ケイ素膜の積層はその代表的なものである。酸化ケイ素膜と、窒化ケイ素膜程度の屈折率の差があると、光の反射による多重干渉の効果が現れる。
【0023】
なお、本発明においては、接触する複数の膜がそれぞれ異なる工程によって作製されていたとしても、当該複数の膜を構成する材料が同じ材料又は同じ屈折率を有する材料もしくは同様の屈折率を有する材料であれば、光学的には同一の層としてみなすこととする。同様の屈折率とは、屈折率の差が特定の波長における屈折率の2%以内であれば良い。また、物理的厚さ(物理膜厚とも言う。)とは注目する膜が有する実際の厚みのことであり、光学的厚さ(光学膜厚とも言う。)とは、ある波長の光が当該膜を通過することを想定し、物理的厚さにその光の波長における当該膜の屈折率をかけたものを言う。
【0024】
図1では酸化物半導体が吸収する光の吸収係数の波長依存性の一例を示したが、用いる酸化物半導体によって、この吸収係数は固有の値を取る。すなわち、光劣化を誘発する波長領域は用いる酸化物半導体により異なる。よって、本発明で用いる波長λは、実施者が用いる酸化物半導体における光の吸収係数と酸化物半導体に照射される光の波長における劣化の関係から300nmから450nmの範囲から任意に選べばよい。特に外光として地表における太陽光のスペクトル分布と酸化物半導体における光の吸収係数の積から求められるスペクトルのピーク波長をλとすると効果が高い。例えば、太陽光のスペクトル分布としてAM1.5Gを図2に示す。この太陽光のスペクトル分布と図1の吸収係数を掛け合わせて得られるスペクトルを図3に示す。330nm付近にピークが現れていることがわかる。
【0025】
また、半導体装置においては絶縁性、膜質、ブロッキング性能や半導体層との相性などから、使用される材料は限られており、必然的に2種類程度の材料の繰り返し積層構造となっていることが多い。
【0026】
単純のために、まず、図4のような単層膜の反射率Rをフレネル係数の方法を用いて求める。図4は、順番に屈折率n1を有する層と屈折率n2を有する層と屈折率n3を有する層が積層されており、屈折率n1を有する層から屈折率n2を有する層に光が入射する場合を示している。光はそれぞれの界面において、反射光と透過光に分かれる。
【0027】
より単純化のために垂直入射の場合のみを考えると,反射率Rは、数1で表される。ここで、δは位相変化を表す。
【0028】
【数1】

【0029】
数1において、n1を1、n3を1.5と仮定した場合に、n2の屈折率を5通り条件振りした場合の、屈折率n2を有する層の光学膜厚に対する反射率の変化を図5に示す。図5より、n1はn2より小さく、且つn2はn3より大きい場合のように屈折率が小さい膜と大きい膜を交互に積層させることで、反射率Rはλ/4の奇数倍ごとに極大値をとることが確認できる。一方、n1はn2より小さく、且つn2はn3より小さい場合のように屈折率を階段状に積層させることで、反射率Rはλ/4の偶数倍ごとに極大値をとることが確認できる。今回は図示しないが、n1はn2より大きく、且つn2はn3より小さい場合やn1はn2より大きく、且つn2はn3より大きい場合も、それぞれn1はn2より小さく、且つn2はn3より大きい場合、n1はn2より小さく、且つn2はn3より小さい場合と同様の結果を得ることが出来る。
【0030】
上述のような膜厚による反射率の変化を利用することで特定波長の反射率を高めることが可能となる。酸化物半導体が吸収する光の波長領域の反射率を高めることで、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に吸収される光の量を低減させることが出来る。そのため、光劣化を低減することが可能となる。
【0031】
n1もしくはn3の屈折率を有する層としては、基板上の形成されている膜のみでなく、空気や表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の場合の液晶を想定して計算をすればよい。
【0032】
また、上記のように垂直入射の場合、つまり酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿って、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に照射されうる光の光路にあり光を透過する層について、その層とその層に接する層の屈折率の関係から計算すればよい。また、光の照射は酸化物半導体層の表面及び裏面から行われうるので、それぞれの光の光路について計算を行うこととする。光の光路にあり光を透過する層について、その層を中間に位置する層とする連続している3つの層の屈折率の関係を考えればよい。
【0033】
つまり、本発明において、波長λの光が、屈折率nの大きい、もしくは小さい層を1層通過する場合、すなわち、連続している3つの層の中間に位置する層の屈折率が最も大きいか最も小さい屈折率の関係を有する積層構造を通過する場合は、当該層(上記中間に位置する層)の光学的厚さLをλk/4(kは1以上の奇数)とする。これは物理的厚さdに換算すると当該層を構成する膜の屈折率をn、光の波長をλとして、λk/4nとなる。
【0034】
また、本発明において、波長λの光が、屈折率が階段状に並んだ中間に位置する層を1層通過する場合、すなわち、連続している3つの層の中間に位置する層が、連続している3つの層の屈折率の中で最も大きな屈折率を有する層と最も小さな屈折率を有する層に接している積層構造を通過する場合は、当該層(上記中間に位置する層)の光学的厚さLをλm/4(mは2以上の偶数)とする。これは物理的厚さdに換算すると当該層を構成する膜の屈折率をn、光の波長をλとして、λm/4nとなる。
【0035】
また、酸化物半導体層で形成されたチャネル部の光学的厚さにおいても上述の条件に従い、λ/4の奇数倍もしくは偶数倍とすることが光学的には望ましいが、トランジスタの電気的特性などからの要求により、λ/4の奇数倍もしくは偶数倍とすることが電気特性的には推奨されない場合もある。その場合は、電気的特性を優先させても良い。その場合、本発明の効果は多少落ちるがその他の膜の膜厚を調整することにより効果を得ることが出来る。つまり、酸化物半導体以外の絶縁体や導体で形成された膜の膜厚を調整すればよい。
【0036】
この構成を採ることにより、当該層(上記中間に位置する層)に光が入射する際に起きた反射と、当該層より光が射出する際に起きた反射が互いに増幅し、結果、当該層が存在することによって起こる反射が大きくなる。この反射が大きくなることで、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に到達する波長λの光の量が低減し、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に吸収される光の量が低減され、光劣化の低減効果が得られる。
【0037】
なお、図5のように最大の効果を得るにはλ/4の奇数倍もしくは偶数倍の膜厚であるが、ある膜厚範囲であれば、一定の効果をもたらすことが図5よりわかる。最大の効果の90%以上を効果の高い範囲とすれば、そのような反射率を与える当該層の光学的厚さLはλ/4の奇数倍もしくは偶数倍を中心にマイナスλ/4の24%からプラスλ/4の24%の範囲である。なお、このことから本発明及び本明細書に於いて概略λ/4の奇数倍と言った場合は数2で表されるようにλ/4の±24%の幅を有することとする。同様に、概略λ/4の偶数倍と言った場合は数3で表されるようにλ/4の±24%の幅を有することとする。
【0038】
【数2】

【0039】
【数3】

【0040】
トランジスタを形成するために必要な複数の層のうち、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に法線方向に沿って照射されうる光の光路にあたる層の、それぞれの出来上がりの膜厚を、その層の屈折率と上下の層の屈折率との関係から、本実施の形態に拠って設定すればよい。その構成を採ることによりトランジスタに対する機能を損ねることなく、酸化物半導体層で形成されたチャネル部が吸収する波長領域の光の反射率を高めることが可能となり、酸化物半導体層で形成されたチャネル部に吸収される光の量を低減させ、光劣化の低減効果を高めることが出来る。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の半導体装置の一例について図6乃至図9を参照しながら説明する。
【0042】
図6には、開示する発明の一態様に係る半導体装置の例として、トランジスタ310の平面図及び断面図を示す。図6では、開示する発明の一態様に係るトランジスタとして、ボトムゲート型のトランジスタを示している。ここで、図6(A)は、平面図であり、図6(B)および図6(C)は、それぞれ、図6(A)におけるA−B断面およびC−D断面に係る断面図である。なお、図6(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ310の構成要素の一部(例えば、保護絶縁膜407等)を省略している。
【0043】
図6に示すトランジスタ310は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極401と、ゲート絶縁層402と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、保護絶縁膜407と、を含む。
【0044】
図6に示すトランジスタ310において、保護絶縁膜407は、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極および第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極を覆い、且つゲート絶縁層402および酸化物半導体層409と接して設けられている。また、図6に示すトランジスタ310において、保護絶縁膜407と、ゲート絶縁層402とは、酸化物半導体層409が存在しない領域において接している。つまり、酸化物半導体層409は、ゲート絶縁層402と保護絶縁膜407とに囲まれて設けられている。
【0045】
ここで、酸化物半導体層409は水素や水などの不純物が十分に除去されることにより、且つ、十分な酸素が供給されることにより、高純度化され、且つ酸素欠損が低減されたものであることが望ましい。具体的には、例えば、酸化物半導体層409の水素濃度は5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下とする。なお、上述の酸化物半導体層409中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定されるものである。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層409では、キャリア濃度が1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm未満、より望ましくは1.45×1010/cm未満となる。このように、i型(真性半導体)化された酸化物半導体またはi型に限りなく近い酸化物半導体を用いることで、良好な電気特性のトランジスタを得ることができる。以下、本明細書では、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層を、簡略化して高純度化された酸化物半導体層と呼ぶこともある。
【0046】
また、不純物として、アルカリ金属やアルカリ土類金属の濃度が2×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下であることが望ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属を酸化物半導体から低減することで、良好な電気特性のトランジスタを得ることができる。
【0047】
また、酸化物半導体層409はc軸配向性の高いものであることが望ましい。単結晶であってもよいし、多結晶状態であってもc軸の配向性が高いものであればよい。また、アモルファス状態の中に、結晶性の領域があり、その結晶性の領域がc軸の配向性を持っていてもよい。そのようなc軸配向性の高い状態であれば、光劣化が起きにくい。
【0048】
酸化物半導体層409と接するゲート絶縁層402や保護絶縁膜407には、酸素を含む絶縁膜を用いるのが望ましく、化学量論的組成比より酸素が多い領域(酸素過剰領域とも表記する)が含まれる膜であるのがより望ましい。酸化物半導体層409と接するゲート絶縁層402及び保護絶縁膜407が酸素過剰領域を有することにより、酸化物半導体層409からゲート絶縁層402または保護絶縁膜407への酸素の移動を防ぐことができる。また、ゲート絶縁層402または保護絶縁膜407から酸化物半導体層409への酸素の供給を行うこともできる。よって、ゲート絶縁層402および保護絶縁膜407に挟持された酸化物半導体層409を、十分な量の酸素を含有する膜とすることができる。
【0049】
ゲート絶縁層402や保護絶縁膜407は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウムガリウム、またはこれらの混合材料を形成することができる。また、ゲート絶縁層402や保護絶縁膜407は単層に限らず、上記複数の材料の積層であっても良い。
【0050】
なお、ゲート絶縁層402や保護絶縁膜407には、酸化物半導体層と同種の成分を含む絶縁材料を用いることが好ましい。この様な材料は、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。ここで、「酸化物半導体層と同種の成分」とは、酸化物半導体層の構成元素から選択される一つまたは複数の元素を意味する。例えば、酸化物半導体層がIn−Ga−Zn系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分を含む絶縁材料としては酸化ガリウムや酸化アルミニウムガリウムなどがある。
【0051】
本実施の形態において、ゲート絶縁層402の物理的厚さdは、光の波長をλ、波長λにおけるゲート絶縁層402の屈折率をnとするとλ/4n(kは1以上の奇数)とする。
【0052】
また、本実施の形態において、酸化物半導体層409のチャネル部の物理的厚さdは、光の波長をλ、波長λにおける酸化物半導体層409のチャネル部の屈折率をnとするとλ/4n(kは1以上の奇数)とする。
【0053】
また、本実施の形態において、保護絶縁膜407の物理的厚さdは、光の波長をλ、波長λにおける保護絶縁膜407の屈折率をnとするとλm/4n(mは2以上の偶数)とする。
【0054】
このような構成を有する本実施の形態における半導体装置では、基板上方の空気の層(屈折率はほぼ1)から照射された光が、酸化物半導体層409のチャネル部に吸収されるまでに、保護絶縁膜407、酸化物半導体層409、ゲート絶縁層402、を通過し、それぞれの界面にて複数回の反射を繰り返す。そこで上記膜厚の構成とすることで、波長λの光の反射率を高めることが出来、その結果酸化物半導体層409のチャネル部にて吸収される光の量を低減することが出来る。吸収される光の量が低減することで光劣化の低減効果が得られる。
【0055】
図10は本実施の形態の構成の場合の、波長300nmから波長800nmにおける反射率がどのように変化するのかをフレネル係数の方法を用いて計算を行った結果である。ここで示す反射率とは、基板上方の空気の層から照射された光のうち、上記多層膜中で吸収されずに反射光として戻ってくる光の割合を示している。具体的な構成としては、基板400上に、ゲート電極401をタングステンで、ゲート絶縁層402を窒素を含む酸化ケイ素膜で、保護絶縁膜407を酸化ケイ素膜で形成した場合を想定した。酸化物半導体層409はIn−Ga−Zn系の酸化物半導体材料を想定した。それぞれの膜厚としては、反射させたい光の波長領域の中心波長としてλを330nmとして、それぞれの物理的厚さdを上記に従い、ゲート絶縁層402を55nm(光学的厚さとしてはλ/4)、酸化物半導体層409のチャネル部を35nm(光学的厚さとしてはλ/4)、保護絶縁膜407を218nm(光学的厚さとしては4λ/4)と設定した。
【0056】
図10より、330nm付近の波長をピークとして高い反射率を示すことがわかる。
【0057】
図11は、比較例として同様の膜種の構成において、本実施の形態に拠らずにそれぞれの膜厚を設定した場合の、計算結果である。具体的な膜厚としては、ゲート絶縁層402を100nm、酸化物半導体層409のチャネル部を40nm、保護絶縁膜407を300nmと設定した。図11の結果から、波長300nmから波長400nmにおける反射率は低く、その波長領域の光は酸化物半導体に吸収されていることがわかる。
【0058】
このように、本実施の形態による膜厚構成とすることで、特定波長の反射率を高めることが出来、酸化物半導体に吸収される光の量を低減することが可能となる。その結果、光劣化の低減効果が得られる。
【0059】
なお、各々の膜の膜厚は半導体装置として完成した段階での膜厚がそのような膜厚となるように設定する。実際に半導体装置を作成する場合には第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極などを形成する為のエッチングによってその下部に位置する膜に膜減りが生じる場合もある。この場合は当該膜減りを考慮して酸化物半導体層409のチャネル部に光が入射する際の光路に当たる部分において、規定の膜厚となるように調節する必要があるが、これは実施者が適宜なしえることである。また、上記では基板上方からの光に対して計算を行っているが、基板下方からの光についても同様に計算を行い、膜厚を調整しても良い。すなわち本発明は、少なくとも酸化物半導体層409のチャネル部に光が入射する際の光路に当たる部分における各層の膜厚が上記したような膜厚となっていればよい。
【0060】
また、図7にトランジスタ310とは異なる構成のトランジスタ320の平面図及び断面図を示す。図7では、開示する発明の一態様に係るトランジスタとして、トップゲート型のトランジスタを示している。図7(A)は平面図であり、図7(B)及び図7(C)は、図7(A)におけるE−F断面およびG−H断面に係る断面図である。なお、図7(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ320の構成要素の一部(例えば、例えば、ゲート絶縁層402等など)を省略している。
【0061】
図7に示すトランジスタ320は、絶縁表面を有する基板400上に、保護絶縁膜407と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、ゲート絶縁層402と、ゲート電極414と、を含む。
【0062】
図7に示すトランジスタ320において、ゲート絶縁層402は、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極および第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極を覆い、且つ保護絶縁膜407および酸化物半導体層409の一部と接して設けられている。また、図6に示すトランジスタ310と同様に、図7に示すトランジスタ320において、ゲート絶縁層402と、保護絶縁膜407とは、酸化物半導体層409が存在しない領域において接している。つまり、酸化物半導体層409は、ゲート絶縁層402と保護絶縁膜407とに囲まれて設けられている。その他の構成要素については、図6のトランジスタ310と同様である。詳細は、図6に関する記載を参酌することができる。
【0063】
また、図8にトランジスタ310、トランジスタ320とは異なる構成のトランジスタ330の平面図及び断面図を示す。ここで、図8(A)は、平面図であり、図8(B)および図8(C)は、それぞれ、図8(A)におけるI−J断面およびK−L断面に係る断面図である。なお、図8(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ330の構成要素の一部(例えば、保護絶縁膜407等)を省略している。
【0064】
図8に示すトランジスタ330は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極401と、ゲート絶縁層402と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、保護絶縁膜407と、酸化物半導体層409と重畳する領域に設けられた導電層410と、を含む。
【0065】
図8に示すトランジスタ330において、保護絶縁膜407は、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極および第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極を覆い、且つゲート絶縁層402および酸化物半導体層409と接して設けられている。また、図6に示すトランジスタ310と同様に、図8に示すトランジスタ330において、ゲート絶縁層402と、保護絶縁膜407とは、酸化物半導体層409が存在しない領域において接している。つまり、酸化物半導体層409は、ゲート絶縁層402と保護絶縁膜407とに囲まれて設けられている。
【0066】
また、トランジスタ330において導電層410は、第2のゲート電極として機能させることもできる。その場合において、保護絶縁膜407は、ゲート絶縁膜として機能する。その他の構成要素については、図6のトランジスタ310と同様である。詳細は、図6に関する記載を参酌することができる。
【0067】
また、図9(A)乃至図9(C)に、上述のトランジスタとは異なる構成のトランジスタの断面図を示す。なお、図9の構成は、図6乃至図8の構成と適宜組み合わることができるものとする。
【0068】
図9(A)に示すトランジスタ340は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極401と、ゲート絶縁層402と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、保護絶縁膜407と、を含む点で、トランジスタ310と共通している。トランジスタ340とトランジスタ310との相違は、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極が接続する位置である。すなわち、トランジスタ340では、酸化物半導体層409の下部において、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極とが接している。その他の構成要素については、図6のトランジスタ310と同様である。詳細は、図6に関する記載を参酌することができる。
【0069】
図9(B)に示すトランジスタ350は、絶縁表面を有する基板400上に、保護絶縁膜407と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、ゲート絶縁層402と、ゲート電極414と、を含む点で、トランジスタ320と共通している。トランジスタ350とトランジスタ320との相違は、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極が接続する位置である。すなわち、トランジスタ350では、酸化物半導体層409の下部において、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極とが接している。その他の構成要素については、図7のトランジスタ320と同様である。詳細は、図7及び図6に関する記載を参酌することができる。
【0070】
図9(C)に示すトランジスタ360は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極401と、ゲート絶縁層402と、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極と、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極と、保護絶縁膜407と、酸化物半導体層409と重畳する領域に設けられた導電層410と、を含む点で、トランジスタ330と共通している。トランジスタ360とトランジスタ330との相違は、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極が接続する位置である。すなわち、トランジスタ360では、酸化物半導体層409の下部において、酸化物半導体層409と、第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極や第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極とが接している。その他の構成要素については、図8のトランジスタ330と同様である。詳細は、図8及び図6に関する記載を参酌することができる。
【0071】
(実施の形態2)
以下、図12を用いて、本実施の形態に係るトランジスタの作製工程の例について説明する。
【0072】
図12(A)乃至図12(E)を用いて、図6に示すトランジスタ310の作製工程の一例について説明する。なお、その他のトランジスタ構造の場合も同様の材料や方法(工程の入れ替えを含む。)を用いて形成することができる。
【0073】
各層における膜厚に関しては、酸化物半導体層409のチャネル部に光が入射する際の光路に当たる部分における各層の膜厚は本発明に示す規定の膜厚になるように調整を行う。各層の屈折率を考慮にし、出来上がりの膜厚が規定の膜厚となるように、成膜時の膜厚の調整を適宜行うものとする。
【0074】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート電極401を形成した後、レジストマスクを除去する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0075】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの基板を用いることができる。また、絶縁表面を有していれば、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられていてもよい。
【0076】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体層を含むトランジスタを直接作製する方法と、他の基板に酸化物半導体層を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に転置する方法があり、どちらを用いても良い。なお、可撓性基板に転置する方法では、トランジスタを作製する基板上に剥離層を設けると良い。
【0077】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または酸化ガリウムアルミニウム(GaAl2−x3+y(xは0以上2以下、yは0より大きい))膜から選ばれた膜で形成することができる。また、該下地膜は単層に限らず、上記の複数の膜の積層であっても良い。
【0078】
また、ゲート電極401は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、ゲート電極401は、透光性を有する導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0079】
次いで、ゲート電極401上にゲート絶縁層402を形成する(図12(A)参照)。ゲート絶縁層402は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウムガリウム、またはこれらの混合材料をプラズマCVD法、またはスパッタ法等により形成することができる。また、ゲート絶縁層402は単層に限らず、上記複数の材料の積層であっても良い。
【0080】
なお、ゲート絶縁層402には、酸化物半導体層と同種の成分を含む絶縁材料を用いることが好ましい。この様な材料は、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。ここで、「酸化物半導体層と同種の成分」とは、酸化物半導体層の構成元素から選択される一つまたは複数の元素を意味する。例えば、酸化物半導体層がIn−Ga−Zn系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分を含む絶縁材料としては酸化ガリウムや酸化アルミニウムガリウムなどがある。
【0081】
ゲート絶縁層402は、水素、水などの不純物を混入させない方法を用いて成膜することが好ましい。ゲート絶縁層402に水素、水などの不純物が含まれると、後に形成される酸化物半導体層に水素、水などの不純物の侵入や、水素、水などの不純物による酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、などによって酸化物半導体層が低抵抗化(n型化)してしまい、オフ電流が大きくなったり、しきい値電圧がシフトするおそれがあるためである。よって、ゲート絶縁層402はできるだけ水素、水などの不純物が含まれないように作製することが好ましい。例えば、スパッタリング法によって成膜するのが好ましい。成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0082】
スパッタリング法としては、直流電源を用いるDCスパッタリング法、パルス的に直流バイアスを加えるパルスDCスパッタリング法、又は交流電源を用いるACスパッタリング法などを用いることができる。
【0083】
なお、ゲート絶縁層402として、酸化アルミニウムガリウム膜を形成する際には、スパッタリング法に用いるターゲットとして、アルミニウムパーティクルが添加された酸化ガリウムターゲットを適用してもよい。アルミニウムパーティクルが添加された酸化ガリウムターゲットを用いることにより、ターゲットの導電性を高めることができるため、スパッタリング時の放電を容易なものとすることができる。このようなターゲットを用いることで、量産化に適したゲート絶縁層を作製することができる。
【0084】
次いで、ゲート絶縁層402に酸素を供給する処理を行うことが望ましい。酸素を供給する処理としては、酸素雰囲気における熱処理、酸素ドープ処理等がある。または、電界で加速した酸素イオンを照射して、酸素を添加しても良い。なお、本明細書等において、酸素ドープ処理とは、酸素をバルクに添加することをいい、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。
【0085】
ゲート絶縁層402に対して、酸素ドープ処理等の酸素を供給する処理を行うことにより、ゲート絶縁層402には化学量論的組成比より酸素が多い領域が形成される。このような領域を備えることにより、後に成膜される酸化物半導体層に酸素を供給し、酸化物半導体層中または酸化物半導体層とゲート絶縁層402との界面の酸素欠損を低減することができる。
【0086】
または、スパッタリング法を用いてゲート絶縁層402を成膜する際に、酸素ガスまたは、不活性気体(例えば、アルゴン等の希ガス、または、窒素)と酸素の混合ガスを導入することで、ゲート絶縁層402に酸素過剰領域を形成することもできる。
【0087】
例えば、ゲート絶縁層402として酸化アルミニウムガリウム膜を用いた場合、酸素ドープ処理等の酸素を供給する処理を行うことにより、GaAl2−x3+α(0<x<2、0<α<1)とすることができる。
【0088】
次いで、第1の酸化物半導体層を成膜し、第1の熱処理によって少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を含む領域を結晶化させて、第1の酸化物半導体層403を形成する。なお、ゲート絶縁層402および第1の酸化物半導体層は、大気に触れさせることなく連続して成膜するのが好ましい。
【0089】
第1の酸化物半導体層に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その化学量論比はとくに問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0090】
また、第1の酸化物半導体層は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0091】
本実施の形態では、第1の酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、第1の酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0092】
第1の酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物ターゲットを用いることができる。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0093】
また、酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した第1の酸化物半導体層は緻密な膜とすることができる。
【0094】
第1の酸化物半導体層を成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0095】
第1の酸化物半導体層の成膜は、減圧状態に保持された成膜室内に基板400を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下として行うことが好ましい。基板400を加熱しながら成膜することにより、成膜した第1の酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に第1の酸化物半導体層を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段は、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した第1の酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0096】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0097】
その後、第1の酸化物半導体層に対して、熱処理(第1の熱処理)を行い、少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を含む領域を結晶化させ、第1の酸化物半導体層403を形成する。また、この第1の熱処理によって第1の酸化物半導体層中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、第1の酸化物半導体層の構造を整えることができる。さらに、この第1の熱処理によって、ゲート絶縁層402中の過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することも可能である。第1の熱処理の温度は、450℃以上850℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。
【0098】
表面を含む領域に形成される結晶領域は、表面から内部に向かって結晶成長することで形成される。当該結晶領域は、平均厚さが2nm以上10nm以下の板状結晶である。また、当該結晶領域は、該表面に平行にa−b面を有し、該表面に対して略垂直な方向にc軸が配向する結晶を有する領域である。ここで、略垂直とは、垂直方向から±10°以内の状態を言うものとする。
【0099】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、第1の酸化物半導体層は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0100】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0101】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0102】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0103】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。
【0104】
また、第1の酸化物半導体層403に接するゲート絶縁層402は、酸素ドープ処理等によって酸素を供給されており、酸素過剰領域を有する。したがって、第1の酸化物半導体層403から、ゲート絶縁層402への酸素の移動を抑制することができる。また、酸素を供給されたゲート絶縁層402と接して第1の酸化物半導体層403を積層することで、ゲート絶縁層402から第1の酸化物半導体層403へ酸素を供給することができる。
【0105】
なお、酸素過剰領域を有するゲート絶縁層402からの第1の酸化物半導体層403への酸素の供給は、ゲート絶縁層402と、第1の酸化物半導体層403とが接した状態で熱処理を行うことにより、より促進される。また、ゲート絶縁層402に添加され、第1の酸化物半導体層403へ供給される酸素の少なくとも一部は、酸素の不対結合手を酸化物半導体中で有することが好ましい。不対結合手を有することにより、酸化物半導体層中に残存しうる水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0106】
次に、少なくとも表面を含む領域に結晶領域を有する第1の酸化物半導体層403上に、第2の酸化物半導体層を形成する。
【0107】
なお、第2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層403と同一主成分の材料を用いること、あるいは同一の結晶構造かつ近接した格子定数(ミスマッチが1%以下)を有することが好ましい。または異なる主成分の材料を用いて形成しても良い。
【0108】
同一主成分の材料を用いる場合、後に行われる第2の酸化物半導体層の結晶化において、第1の酸化物半導体層403の結晶領域を種として結晶成長を行いやすくなる。また、膜厚を増加させることができるため、パワーデバイスなどの用途には好適である。さらに、同一主成分材料である場合には、密着性などの界面物性や電気的特性も良好である。
【0109】
本実施の形態では、第2の酸化物半導体層を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体ターゲットを用いて、スパッタ法により成膜する。第2の酸化物半導体層のスパッタ法による成膜は、上述した第1の酸化物半導体層のスパッタ法による成膜と同様に行えばよい。ただし、第2の酸化物半導体層の厚さは、第1の酸化物半導体層403の厚さより厚くすることが好ましい。また、第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層の厚さの和が3nm以上50nm以下となるように、第2の酸化物半導体層を形成することが好ましい。第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層の厚さの和を大きくしすぎると(例えば、合計膜厚を50nm以上とすると)、トランジスタがノーマリーオンとなってしまうおそれがあるため、上述の膜厚とするのが好ましい。上述の膜厚範囲では、光学的膜厚において望ましい範囲外になる可能性もあるが、電気特性を優先してもかまわない。酸化物半導体以外の膜の膜厚調整により、効果を得ることが出来るからである。
【0110】
次に、第2の酸化物半導体層に第2の熱処理を行い、第1の酸化物半導体層403の結晶領域を種として結晶成長させて、第2の酸化物半導体層404を形成する(図12(B)参照)。
【0111】
第2の熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下とする。第2の熱処理の加熱時間は1分以上100時間以下とし、好ましくは5時間以上20時間以下とし、代表的には10時間とする。
【0112】
第2の熱処理を行うことにより、第2の酸化物半導体層と第1の酸化物半導体層403の界面に形成された結晶領域から第2の酸化物半導体層の全体を結晶化させ、第2の酸化物半導体層404を形成することができる。また、第2の熱処理によって、さらに高い配向性を有する結晶層からなる第1の酸化物半導体層403とすることができる。
【0113】
例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料を第2の酸化物半導体層404に用いる場合、InGaO(ZnO)(m:整数)で表される結晶や、InGaZnO(In:Ga:Zn:O=2:2:1:7)で表される結晶などを含み得る。このような結晶は、第2の熱処理によって、そのc軸が、第2の酸化物半導体層404の表面と略垂直な方向をとるように配向する。
【0114】
ここで、上述の結晶は、In、Ga、Znのいずれかを含有し、a軸(a−axis)およびb軸(b−axis)に平行なレイヤーの積層構造として捉えることができる。具体的には、上述の結晶は、Inを含有するレイヤーと、Inを含有しないレイヤー(GaまたはZnを含有するレイヤー)が、c軸方向に積層された構造を有する。
【0115】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体結晶では、Inを含有するレイヤーの、a軸およびb軸に平行な方向に関する導電性は良好である。これは、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体結晶では電気伝導が主としてInによって制御されること、および、一のInの5s軌道が、隣接するInの5s軌道と重なりを有することにより、キャリアパスが形成されることによる。
【0116】
また、第1の酸化物半導体層403がゲート絶縁層402との界面に非晶質領域を有するような構造の場合、第2の熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層403の表面に形成されている結晶領域から第1の酸化物半導体層の下面に向かって結晶成長が行われ、該非晶質領域が結晶化される場合もある。なお、ゲート絶縁層402を構成する材料や、熱処理の条件などによっては、該非晶質領域が残存する場合もある。
【0117】
第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層とに同一主成分の酸化物半導体材料を用いる場合、第1の酸化物半導体層403を結晶成長の種として、第2の酸化物半導体層の表面に向かって上方に結晶成長し、第2の酸化物半導体層404が形成され、第1の酸化物半導体層403と、第2の酸化物半導体層404とが、同一結晶構造を有する。そのため、図12(B)〜(E)では点線で示したが、第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層404の境界が判別できなくなり、第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層404を同一の層と見なせることもある。そのため、第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層404を合わせて、酸化物半導体層409と示す。
【0118】
なお、第2の熱処理に用いる熱処理装置も第1の熱処理と同様の条件を用いる。
【0119】
次いで、酸化物半導体層409を第2のフォトリソグラフィ工程により酸化物半導体層409上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って島状の酸化物半導体層409を形成した後、レジストマスクを除去する(図12(C))。また、島状の酸化物半導体層409を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。ここでの酸化物半導体層409のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0120】
次いで、ゲート絶縁層402及び酸化物半導体層409上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成する。ソース電極及びドレイン電極に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極及びドレイン電極に用いる導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。特に、酸化物半導体層409と上述の金属膜や金属窒化物膜との間に、上述の導電性の金属酸化物を挟んだ構造とすることで、界面特性が良好となり、より抵抗を下げることが出来る。
【0121】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極、第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極を形成した後、レジストマスクを除去する(図12(D))。第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。酸化物半導体層409上で隣り合う第1の導電層406aと第2の導電層405aで形成されたソース電極の下端部と第1の導電層406bと第2の導電層405bで形成されたドレイン電極の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、例えば、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを微細化することが可能であり、回路の動作速度を高速化できる。
【0122】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0123】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層409がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体層409を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体層409は一部のみがエッチングされ、例えば、酸化物半導体層409の膜厚の5%乃至50%がエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層409となることもある。
【0124】
また、導電膜が積層構造を有している場合、段差状の形態としても良い。
【0125】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体層409の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。プラズマ処理を行った場合、当該プラズマ処理に続けて大気に触れることなく、酸化物半導体層409に接する保護絶縁膜407を形成することが望ましい(図12(E))。
【0126】
保護絶縁膜407は、ゲート絶縁層402と同様の材料、同様の工程で形成することができる。なお、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つためには、保護絶縁膜407としてゲート絶縁層402と同様の材料を適用するのがより好ましい。また、保護絶縁膜として、屈折率の異なる複数の材料の積層構造としても良い。
【0127】
次いで、保護絶縁膜407に酸素ドープ等の酸素を供給する処理を行うことが望ましい。なお、スパッタリング法を用いて保護絶縁膜407を成膜する際に、酸素ガス、または、不活性気体(例えば、アルゴン等の希ガス、または、窒素)と酸素の混合ガスを導入することで、保護絶縁膜407に酸素を供給してもよい。
【0128】
次に酸化物半導体層409が、保護絶縁膜407と一部(チャネル形成領域)が接した状態で第3の熱処理を行うのが好ましい。第3の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0129】
第3の熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0130】
第3の熱処理においては、酸化物半導体層409と、ゲート絶縁層402および保護絶縁膜407と、が接した状態で加熱される。したがって、上述の脱水化(または脱水素化)処理によって同時に減少してしまう可能性のある酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含むゲート絶縁層402および保護絶縁膜407より酸化物半導体層409へ供給することができる。これによって、酸化物半導体層409中の電荷捕獲中心を低減することができる。以上の工程で高純度化され、且つ電気的にi型(真性)化された酸化物半導体層409を形成することができる。
【0131】
上述のように、第3の熱処理を適用することで、酸化物半導体層409を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体層409中にはドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0132】
以上の工程でトランジスタ310が形成される。トランジスタ310は、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体層409より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体層409を含むトランジスタである。さらに、光路にあたる部分の各層の膜厚を本発明による規定の膜厚に調整することにより、光劣化の原因となる波長領域の反射率の高い構成とすることが出来る。その結果、酸化物半導体層409のチャネル部に吸収される光の量が低減し、光劣化の低減効果が得られる。よって、トランジスタ310は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0133】
また、トランジスタ310上に平坦化絶縁膜を設けても良い。平坦化絶縁膜としては、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させてもよい。
【0134】
以上、本実施の形態において示すように、酸化物半導体層409のチャネル部に光が入射する際の光路に当たる部分における各層の膜厚を、出来上がりにおいて規定の膜厚となるように調整を行うことにより、酸化物半導体層409のチャネル部が吸収する光の量を低減することが可能となり、光劣化の低減効果が得られる。
【0135】
また、酸化物半導体層と接する絶縁膜が化学量論的組成比より酸素が多い領域を含むことにより、酸化物半導体層の脱水化(または脱水素化)処理によって同時に減少してしまう可能性のある酸素を、酸化物半導体層へ供給することができる。これによって、酸化物半導体層中の酸素欠損を低減することができるため、酸化物半導体層中の電荷捕獲中心を低減することができる。以上の工程で高純度化し、電気的にi型(真性)化された酸化物半導体層を形成することができる。
【0136】
本発明の一態様に係る半導体装置では、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層を活性層として用いることで、トランジスタのオフ電流密度を、ソース電極とドレイン電極間の電圧によっては、10zA/μm以下、好ましくは1zA/μm以下、更に好ましくは1yA/μm以下にすることができる。従って、高純度化された酸化物半導体層を活性層として用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。
【0137】
また、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層では、キャリア濃度が十分に少なく、このような酸化物半導体層を活性層として用いることで、しきい値電圧のシフトを抑制し、トランジスタをノーマリーオフとすることができる。
【0138】
以上示したように、本発明の一態様によって、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0139】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0140】
(実施の形態3)
実施の形態1及び実施の形態2で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0141】
図13(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図13(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0142】
図13(B)及び図13(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図13(B)及び図13(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図13(B)及び図13(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0143】
また図13(B)及び図13(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0144】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図13(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図13(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図13(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0145】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0146】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0147】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1及び実施の形態2で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0148】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0149】
半導体装置の一形態について、図14を用いて説明する。図14は、図13(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0150】
図14で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0151】
接続端子電極4015は、第1の電極層(第1の電極)4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、トランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0152】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図14では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
【0153】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1及び実施の形態2で示したトランジスタを適用することができる。なお、図14においては、実施の形態1及び実施の形態2で示したトランジスタ310を用いる例を示しているが、本実施の形態はこれに限られるものではなく、トランジスタ320、330、340、350または360等を適宜用いることが可能である。また、トランジスタ4010とトランジスタ4011とを必ずしも同じ構造のトランジスタとしなくともよい。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図14で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0154】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0155】
図14に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図14において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層(第2の電極)4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0156】
また4035は絶縁膜で形成されたスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0157】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0158】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0159】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0160】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間、電荷を保持できるように設定される。高純度化された酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0161】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0162】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0163】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0164】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super−View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0165】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0166】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0167】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0168】
なお、図14において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0169】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0170】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0171】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0172】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0173】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体またはその誘導体などがあげられる。
【0174】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0175】
以上のように実施の形態1及び実施の形態2で例示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。なお、実施の形態1及び実施の形態2で例示したトランジスタは上述の表示機能を有する半導体装置のみでなく、電源回路に搭載されるパワーデバイス、LSI等の半導体集積回路、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置など様々な機能を有する半導体装置に適用することが可能である。
【0176】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0177】
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に用いることができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した液晶表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0178】
図15(A)は電子書籍(E−bookともいう)であり、筐体9630、表示部9631、操作キー9632、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有することができる。図15(A)に示した電子書籍は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作または編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。なお、図15(A)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ(以下、コンバータと略記)9636を有する構成について示している。他の実施の形態で示した半導体装置を表示部9631に用いることにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0179】
図15(A)に示す構成では、表示部9631を半透過型、または反射型の液晶表示装置とすることで、比較的明るい環境下でも認識性良く使用することができる。また、その様な環境下では、太陽電池9633による発電及びバッテリー9635への充電を効率よく行うことができる。なお、太陽電池9633は、図示した領域に限らず、筐体9630の空きスペース(表面や裏面)に適宜設けることができる。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0180】
また、図15(A)に示す充放電制御回路9634の構成及び動作について、図15(B)のブロック図を用いて説明する。図15(B)には、太陽電池9633、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示している。ここで、充放電制御回路9634に対応する箇所は、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3である。
【0181】
まず、外光により太陽電池9633が発電する場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための好適な電圧となるよう、コンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0182】
次いで、外光が乏しく、太陽電池9633による発電がされない場合の動作の例について説明する。バッテリー9635に蓄電された電力は、スイッチSW3をオンにすることでコンバータ9637により昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作にバッテリー9635からの電力が用いられることとなる。
【0183】
なお、充電手段の一例として太陽電池を用いる例を示したが、他の手段、または他の手段との組み合わせによりバッテリー9635を充電する構成であってもよい。
【0184】
図16(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0185】
図16(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0186】
図16(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0187】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図16(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図16(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0188】
また、図16(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0189】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0190】
図16(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0191】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図16(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0192】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図16(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また筐体2800は筐体2801の背面に格納可能であり、通話時などに適している。
【0193】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0194】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0195】
図16(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0196】
図16(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至実施の形態3で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0197】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0198】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0199】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0200】
310 トランジスタ
320 トランジスタ
330 トランジスタ
340 トランジスタ
350 トランジスタ
360 トランジスタ
400 基板
401 ゲート電極
402 ゲート絶縁層
403 第1の酸化物半導体層
404 第2の酸化物半導体層
405a 第2の導電層
405b 第2の導電層
406a 第1の導電層
406b 第1の導電層
407 保護絶縁膜
409 酸化物半導体層
410 導電層
414 ゲート電極
2700 電子書籍
2701 筐体
2703 筐体
2705 表示部
2707 表示部
2711 軸部
2721 電源
2723 操作キー
2725 スピーカー
2800 筐体
2801 筐体
2802 表示パネル
2803 スピーカー
2804 マイクロフォン
2805 操作キー
2807 カメラ用レンズ
2808 外部接続端子
2810 太陽電池セル
2811 外部メモリスロット
3001 本体
3002 筐体
3003 表示部
3004 キーボード
3021 本体
3022 スタイラス
3023 表示部
3024 操作ボタン
3025 外部インターフェイス
3051 本体
3054 操作スイッチ
3055 表示部(B)
3056 バッテリー
3057 表示部(A)
4001 第1の基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 第2の基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電膜
4030 第1の電極層
4031 第2の電極層
4032 絶縁膜
4033 絶縁膜
4035 スペーサ
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9603 表示部
9605 スタンド
9630 筐体
9631 表示部
9632 操作キー
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 コンバータ
9637 コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、
前記複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、
前記酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿って前記チャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、前記波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、前記連続している3つの層の屈折率の中で前記連続している3つの層の中間に位置する層の屈折率が最も大きいか最も小さい場合には、前記連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の奇数倍であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、
前記複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、
前記酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿って前記チャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、前記波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、前記連続している3つの層の屈折率の中で最も大きな屈折率を有する層と最も小さな屈折率を有する層に接している場合には、前記連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の偶数倍であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
酸化物半導体層で形成されたチャネル部を含む複数の層を有し、
前記複数の層のうち連続している3つの層の中間に位置する層が、
前記酸化物半導体層の膜面に対して法線方向に沿って前記チャネル部に照射されうる波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、前記波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、前記連続している3つの層の屈折率の中で前記連続している3つの層の中間に位置する層の屈折率が最も大きいか最も小さい場合には、前記連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の奇数倍であり、
前記酸化物半導体層の前記膜面に対して法線方向に沿って前記チャネル部に照射されうる前記波長λの光の光路にあたる層であり、且つ、前記波長λの光に対する透光性を有する層であり、且つ、前記連続している3つの層の屈折率の中で最も大きな屈折率を有する層と最も小さな屈折率を有する層に接している場合には、前記連続している3つの層の中間に位置する層の光学的厚さが概略λ/4の偶数倍であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3おいて、
前記連続している3つの層の中間に位置する層は、基板上に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4おいて、
前記連続している3つの層の中間に位置する層は、絶縁体もしくは導体で形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5おいて、
前記波長λは外光のスペクトル強度と前記酸化物半導体層の光の吸収係数をかけて算出されたスペクトルのピーク波長であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6おいて、
前記波長λは、300nmから450nmの範囲に入ることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−64932(P2012−64932A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178196(P2011−178196)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】