説明

半導体集積回路

【課題】発振回路において発振動作が行われているか否かを判定する発振停止検出回路を内蔵した半導体集積回路において、電源電位が立ち上がる際の誤検出を防止する。
【解決手段】この半導体集積回路は、クロック信号又は反転クロック信号がゲートに印加されて交互にオン/オフする複数のトランジスタが直列に接続され、第1の電源電位から正の電荷を移送するトランジスタ列と、複数のトランジスタによって移送される電荷を蓄積する複数のコンデンサと、最終段のコンデンサの端子をプルダウンするプルダウン素子と、最終段のコンデンサの端子の電位がゲートに印加され、第2の電源電位がソースに供給されるNチャネルMOSトランジスタと、該NチャネルMOSトランジスタのドレインをプルアップするプルアップ素子と、該NチャネルMOSトランジスタのドレイン電位に基づいて出力信号を生成する論理回路とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路において発振動作が行われているか否かを判定する発振停止検出回路を内蔵した半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、計時情報を管理するリアルタイムクロック(RTC)用の半導体集積回路(IC)においては、発振回路によって生成され分周回路によって分周されたクロック信号を検出して、発振回路において発振動作が行われているか否かを判定する発振停止検出回路が用いられている。
【0003】
図5は、従来の半導体集積回路における発振停止検出回路周辺の構成を示す回路図である。発振停止検出回路40は、外部から供給される電源電位VDD及び電源電位VSSに基づいて定電圧回路30によって生成される安定化された電源電位VREGが供給されて動作する。発振回路によって生成されたクロック信号は、分周回路によって分周されて、発振停止検出回路40に入力される。発振停止検出回路40において、入力されたクロック信号が、PチャネルMOSトランジスタQP1のゲートに印加されると共に、インバータ41に入力されて反転される。インバータ41から出力される反転クロック信号は、PチャネルMOSトランジスタQP2のゲートに印加される。
【0004】
発振回路において発振動作が行われている場合には、クロック信号によってトランジスタQP1がオン・オフすることにより、コンデンサC1に正の電荷が蓄積され、反転クロック信号によってトランジスタQP2がオン・オフすることにより、コンデンサC2に正の電荷が蓄積される。これにより、ノードAのレベルがハイレベルになるので、インバータ42がローレベルの出力信号を生成する。
【0005】
一方、発振回路において発振動作が停止している場合には、クロック信号がハイレベル又はローレベルに固定される。その結果、トランジスタQP1及びQP2の内の一方が必ずオフ状態となって、コンデンサC2に正の電荷が供給されなくなり、微小定電流源IREF1によってノードAのレベルがローレベルになるので、インバータ42がハイレベルの出力信号を生成する。
【0006】
ここで、発振回路において発振動作が行われている際に、外部から供給される電源電圧(VDD−VSS)が、数μs/V〜数百μs/V程度の割合で、例えば、1Vから5.5Vまで立ち上がることにより、安定化された電源電圧(VREG−VSS)も急峻に立ち上がる場合について考える。
【0007】
図6は、図5に示す発振停止検出回路の各部における電位を示す波形図である。ここでは、電源電位VSSが接地電位(0V)であるものとする。図6に示すように、電源電位VREGが急峻に上昇すると、インバータ42のロジックレベル(入力しきい電位)もそれに伴って急峻に上昇する。一方、ノードAの電位は、電源電位VSSを基準としてコンデンサC2によって保持されているので、電源電位VREGのように急峻には立ち上がらず、電源電位VREGとノードAの電位との間に電位差が生じる。その結果、ノードAの電位がインバータ42のロジックレベルを下回ると、インバータ32の出力信号がハイレベルとなって、発振停止を誤検出してしまう。発振停止検出回路の出力信号は、後段の回路によってラッチされて各部において用いられるので、一瞬でも誤検出が行われた場合には、システム全体の誤動作が生じてしまうという問題がある。
【0008】
関連する技術として、特許文献1には、発振停止検出回路と定電圧発生回路の微小定電流源を共通化することによりチップサイズの小型化と低消費電流化を目的とする半導体集積回路が開示されている。この半導体集積回路は、発振回路と、前記発振回路で発振が正しく行われているか否かを確認する発振停止検出回路と、電源電圧から一定電圧を発生して前記発振回路に前記一定電圧を供給する定電圧発生回路とを有する半導体集積回路であって、前記定電圧発生回路と前記発振停止検出回路が、微小定電流の供給を受ける共通の微小定電流源を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、半導体集積回路において従来は2つ必要だった微小定電流源を1つにすることにより、チップサイズを小型にすることができ、さらに、電流パスが半分になるので低消費電流化が達成される。しかしながら、特許文献1には、電源電位が急峻に立ち上がる際の誤検出を防止することに関しては、特に開示されていない。
【特許文献1】特開2008−78730号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、発振回路において発振動作が行われているか否かを判定する発振停止検出回路を内蔵した半導体集積回路において、電源電位が急峻に立ち上がる際の誤検出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る半導体集積回路は、クロック信号又は反転されたクロック信号がゲートに印加されて交互にオン/オフする複数のトランジスタが直列に接続され、第1の電源電位から正の電荷を移送するトランジスタ列と、該トランジスタ列に含まれている複数のトランジスタによって移送される電荷をそれぞれ蓄積する複数のコンデンサと、該トランジスタ列によって移送される電荷を蓄積する最終段のコンデンサの端子をプルダウンするプルダウン素子と、最終段のコンデンサの端子の電位がゲートに印加され、第2の電源電位がソースに供給されるNチャネルMOSトランジスタと、該NチャネルMOSトランジスタのドレインをプルアップするプルアップ素子と、該NチャネルMOSトランジスタのドレイン電位に基づいて出力信号を生成する論理回路とを具備する。
【0012】
ここで、プルダウン素子及びプルアップ素子の各々が、定電流源又は抵抗を含むようにしても良い。また、外部から供給される電源電位がソースに供給され、ゲートがドレインに接続されたPチャネルMOSトランジスタと、該PチャネルMOSトランジスタのドレインに接続されたドレインを有し、第2の電源電位がゲート及びソースに供給されるディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタとを含み、ディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタに流れる電流に基づいて第1の電源電位を生成する定電源回路を半導体集積回路がさらに具備し、プルアップ素子が、定電源回路の該PチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成するPチャネルMOSトランジスタを含むようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最終段のコンデンサの端子の電位がゲートに印加され、第2の電源電位がソースに供給されるNチャネルMOSトランジスタと、該NチャネルMOSトランジスタのドレインをプルアップするプルアップ素子とを設け、該NチャネルMOSトランジスタのドレイン電位に基づいて出力信号を生成するようにしたので、電源電位が急峻に立ち上がる際の誤検出を防止して、発振回路において発振動作が行われているか否かを正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路における発振停止検出回路周辺の構成を示す回路図である。定電圧回路10は、外部から供給される電源電位VDD及び電源電位VSSに基づいて、安定化された電源電位VREGを生成する。発振停止検出回路20は、定電圧回路10によって生成される安定化された電源電位VREGが供給されて動作する。
【0015】
発振停止検出回路20は、クロック信号を反転するインバータ21と、クロック信号又は反転されたクロック信号がゲートに印加されて交互にオン/オフする複数のPチャネルMOSトランジスタQP1及びQP2が直列に接続され、電源電位VREGから正の電荷を移送するトランジスタ列と、該トランジスタ列に含まれている複数のトランジスタQP1及びQP2によって移送される電荷をそれぞれ蓄積する複数のコンデンサC1及びC2と、該トランジスタ列によって移送される電荷を蓄積する最終段のコンデンサC2の端子をプルダウンするプルダウン素子(微小定電流源IREF1)と、最終段のコンデンサC2の端子の電位がゲートに印加され、電源電位VSSがソースに供給されるNチャネルMOSトランジスタQN1と、トランジスタQN1のドレインをプルアップするプルアップ素子(微小定電流源IREF2)と、トランジスタQN1のドレイン電位に基づいて出力信号を生成する論理回路(バッファ22)とを有している。
【0016】
ここで、プルダウン素子及びプルアップ素子の各々としては、図1に示す微小定電流源の他に、高抵抗やトランジスタ等を使用することができる。また、論理回路22としては、図1に示すバッファの他に、インバータ等を使用することができる。
【0017】
発振回路によって生成され分周回路によって分周されたクロック信号が、発振停止検出回路20に入力される。発振停止検出回路20において、入力されたクロック信号が、PチャネルMOSトランジスタQP1のゲートに印加されると共に、インバータ21に入力されて反転される。インバータ21から出力される反転クロック信号は、PチャネルMOSトランジスタQP2のゲートに印加される。
【0018】
発振回路において発振動作が行われている場合には、クロック信号によってトランジスタQP1がオン・オフすることにより、コンデンサC1に正の電荷が蓄積され、反転クロック信号によってトランジスタQP2がオン・オフすることにより、コンデンサC2に正の電荷が蓄積される。これにより、ノードAのレベルがハイレベルになるので、トランジスタQN1がオン状態となって、バッファ22がローレベルの出力信号を生成する。
【0019】
一方、発振回路において発振動作が停止している場合には、クロック信号がハイレベル又はローレベルに固定される。その結果、トランジスタQP1及びQP2の内の一方が必ずオフ状態となって、コンデンサC2に正の電荷が供給されなくなり、微小定電流源IREF1によってノードAのレベルがローレベルになる。これにより、トランジスタQN1がオフ状態となり、微小定電流源IREF2によってノードBのレベルがハイレベルになり、バッファ22がハイレベルの出力信号を生成する。
【0020】
図2は、図1に示す定電圧回路の構成を示す回路図である。図2に示すように、定電圧回路10は、外部から供給される電源電位VDDがソースに供給され、ノードCにおいてゲートがドレインに接続されたPチャネルMOSトランジスタQP11と、トランジスタQP11のドレインに接続されたドレインを有し、電源電位VSSがゲート及びソースに供給されるディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタQN11と、トランジスタQP11とカレントミラー回路を構成するPチャネルMOSトランジスタQP12と、トランジスタQP12に直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタQN12とを含んでいる。
【0021】
さらに、定電圧回路10は、PチャネルMOSトランジスタQP21及びQP22、及び、NチャネルMOSトランジスタQN21〜QN23によって構成される差動増幅器と、この差動増幅器の出力信号がゲートに印加される出力段のPチャネルMOSトランジスタQP31と、トランジスタQP31に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタQP32及びNチャネルMOSトランジスタQN31とを含んでいる。トランジスタQN12、QN23、及び、QN31は、カレントミラー回路を構成している。また、トランジスタQP31のゲート・ドレイン間には、位相補償用のコンデンサC3が接続されている。なお、ディプリーションタイプのトランジスタQN11以外は、エンハンスメントタイプのトランジスタである。
【0022】
ディプリーションタイプのトランジスタQN11は、負のしきい値を有しており、デート電圧VGSが0Vでもドレイン電流が流れる。定電圧回路10は、トランジスタQN11に流れるドレイン電流と同じ大きさのドレイン電流をトランジスタQN12にも流すことにより、トランジスタQN12のドレイン・ソース間に発生する電圧に基づいて、安定化された電源電位VREGを生成する。
【0023】
再び図1を参照すると、発振回路において発振動作が行われている際に、外部から供給される電源電圧(VDD−VSS)が、数μs/V〜数百μs/V程度の割合で、例えば、1Vから5.5Vまで立ち上がることにより、安定化された電源電圧(VREG−VSS)も急峻に立ち上がる場合について考える。
【0024】
図3は、図1に示す発振停止検出回路の各部における電位を示す波形図である。ここでは、電源電位VSSが接地電位(0V)であるものとする。図3に示すように、電源電位VREGが急峻に上昇しても、トランジスタQN1のしきい値は上昇しない。ノードAの電位は、電源電位VSSを基準としてコンデンサC2によって保持されているので、電源電位VREGのように急峻には立ち上がらず、電源電位VREGとノードAの電位との間に電位差が生じるが、ノードAの電位がトランジスタQN1のしきい値よりも低くなることはない。従って、トランジスタQN1がオン状態を維持し、ノードBのレベルがローレベルのままとなるので、バッファ22の出力信号がローレベルを維持する。このように、電源電圧が急峻に立ち上がっても、発振停止を誤検出することがないので、発振回路において発振動作が行われているか否かを正確に判定することができる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路における発振停止検出回路周辺の構成を示す回路図である。第2の実施形態においては、発振停止検出回路20aのプルアップ素子として、PチャネルMOSトランジスタQP3が用いられる。トランジスタQP3のゲートは、図2に示す定電源回路10のトランジスタQP11のゲート及びドレイン(ノードC)に接続されている。これにより、トランジスタQP3がトランジスタQP11とカレントミラー回路を構成するので、微小定電流源としてのディプリーションタイプのトランジスタQN11によって規定される定電流と同じ大きさのドレイン電流が、トランジスタQP3にも流れることになる。
【0026】
本実施形態によれば、プルアップ素子として通常のトランジスタが使用され、このトランジスタを流れるドレイン電流の大きさが、定電源回路10の微小定電流源によって規定されるので、プルアップ素子に専用の微小定電流源を用いる場合と比較して、微小定電流源の数を削減することができる。特に、微小定電流源として用いられるディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタは、ゲート幅が数μmでゲート長が数千μmであり、レイアウト面積が大きいので、微小定電流源の数を削減することによってチップサイズを小型化することが可能となる。また、電流経路の数も減少するので、半導体集積回路の消費電流が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示す回路図。
【図2】図1に示す定電圧回路の構成を示す回路図。
【図3】図1に示す発振停止検出回路の各部における電位を示す波形図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路の構成を示す回路図。
【図5】従来の半導体集積回路における発振停止検出回路周辺の構成を示す回路図。
【図6】図5に示す発振停止検出回路の各部における電位を示す波形図。
【符号の説明】
【0028】
10 定電圧回路、 20、20a 発振停止検出回路、 21 インバータ、 22 バッファ、 QP1〜QP32 PチャネルMOSトランジスタ、QN1〜QN31 NチャネルMOSトランジスタ、 C1〜C3 コンデンサ、 IREF1、IREF2 微小定電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号又は反転されたクロック信号がゲートに印加されて交互にオン/オフする複数のトランジスタが直列に接続され、第1の電源電位から正の電荷を移送するトランジスタ列と、
前記トランジスタ列に含まれている前記複数のトランジスタによって移送される電荷をそれぞれ蓄積する複数のコンデンサと、
前記トランジスタ列によって移送される電荷を蓄積する最終段のコンデンサの端子をプルダウンするプルダウン素子と、
前記最終段のコンデンサの端子の電位がゲートに印加され、第2の電源電位がソースに供給されるNチャネルMOSトランジスタと、
前記NチャネルMOSトランジスタのドレインをプルアップするプルアップ素子と、
前記NチャネルMOSトランジスタのドレイン電位に基づいて出力信号を生成する論理回路と、
を具備する半導体集積回路。
【請求項2】
前記プルダウン素子及び前記プルアップ素子の各々が、定電流源又は抵抗を含む、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
外部から供給される電源電位がソースに供給され、ゲートがドレインに接続されたPチャネルMOSトランジスタと、前記PチャネルMOSトランジスタのドレインに接続されたドレインを有し、第2の電源電位がゲート及びソースに供給されるディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタとを含み、前記ディプリーションタイプのNチャネルMOSトランジスタに流れる電流に基づいて前記第1の電源電位を生成する定電源回路をさらに具備し、
前記プルアップ素子が、前記定電源回路の前記PチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成するPチャネルMOSトランジスタを含む、請求項1記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−93688(P2010−93688A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263768(P2008−263768)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】