説明

四輪駆動車およびその制御方法

【課題】4WDモード時におけるアクセルペダル操作のフィーリングを向上可能な四輪駆動車およびその制御方法を提供する。
【解決手段】四輪駆動車は、2WDモードと4WDモードとを切替えて走行可能である。2WDモード時はエンジンにより前輪が駆動され、4WDモード時はモータによりさらに後輪が駆動される。4WDモード時は、エンジンの出力を用いてオルタネータにより発電し、モータへ電力が供給される。そして、エンジンECUは、4WDモード時、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対するエンジンのスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、四輪駆動車およびその制御方法に関し、特に、前輪車軸および後輪車軸の一方のみが駆動される二輪駆動モード(2WDモード)と前輪車軸および後輪車軸の双方が駆動される四輪駆動モード(4WDモード)とを切替えて走行可能な四輪駆動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3985640号公報(特許文献1)は、一方の車輪駆動軸をエンジンにより駆動し、他方の車輪駆動軸をモータにより駆動して走行する四輪駆動車を開示する。この四輪駆動車においては、エンジンによって発電機が駆動され、発電機により発電された電力がモータに供給される。そして、エンジン回転駆動を維持するための回転維持トルクをエンジン発生トルクから減算することによって算出される余剰トルクに基づいて、発電機の駆動トルクが設定される。この四輪駆動車によれば、四輪駆動走行時において、発電機を駆動する際のエンジン負荷によってエンジンストールに至る事態を確実に防止できるとされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3985640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に開示されるような四輪駆動車においては、4WDモード時は、モータ駆動用の電力を発電する発電機がエンジンにより駆動されるので、2WDモード時に対してエンジン出力(エンジントルク)が増加する。このため、4WDモード時は、アクセルペダル操作量が大きくなる(アクセルペダルを踏込む)とエンジン出力(エンジントルク)が頭打ちとなり、アクセルペダル操作のフィーリング悪化を招く。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、4WDモード時におけるアクセルペダル操作のフィーリングを向上可能な四輪駆動車およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、四輪駆動車は、前輪車軸および後輪車軸の一方のみが駆動される二輪駆動モード(2WDモード)と前輪車軸および後輪車軸の双方が駆動される四輪駆動モード(4WDモード)とを切替えて走行可能な四輪駆動車であって、内燃機関と、発電機と、電動機と、制御装置とを備える。内燃機関は、前輪車軸および後輪車軸の一方を駆動する。発電機は、内燃機関の出力を用いて発電可能である。電動機は、4WDモード時、発電機により発電される電力を受けて他方の車軸を駆動する。制御装置は、内燃機関を制御する。そして、制御装置は、4WDモード時、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対する内燃機関のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を変更する。
【0007】
好ましくは、四輪駆動車は、変速機をさらに備える。変速機は、内燃機関に連結される。そして、制御装置は、4WDモード時、2WDモード時に対するスロットル開度の減少に伴なう車両駆動トルクの低下を補うように変速機の変速比を変更する。
【0008】
また、この発明によれば、四輪駆動車の制御方法は、前輪車軸および後輪車軸の一方のみが駆動される二輪駆動モード(2WDモード)と前輪車軸および後輪車軸の双方が駆動される四輪駆動モード(4WDモード)とを切替えて走行可能な四輪駆動車の制御方法である。四輪駆動車は、内燃機関と、発電機と、電動機とを含む。内燃機関は、前輪車軸および後輪車軸の一方を駆動する。発電機は、内燃機関の出力を用いて発電可能である。電動機は、4WDモード時、発電機により発電される電力を受けて他方の車軸を駆動する。そして、制御方法は、4WDモードが選択されているか否かを判定するステップと、4WDモードが選択されているとき、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対する内燃機関のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を変更するステップとを備える。
【0009】
好ましくは、四輪駆動車は、内燃機関に連結される変速機をさらに含む。そして、制御方法は、4WDモード時、2WDモード時に対するスロットル開度の減少に伴なう車両駆動トルクの低下を補うように変速機の変速比を変更するステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
この四輪駆動車およびその制御方法においては、4WDモード時、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対する内燃機関のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係が変更される。これにより、4WDモード時に、アクセルペダル操作量が大きいときのエンジン出力(エンジントルク)の頭打ちがなくなり、アクセルペダル操作の全域にわたってエンジン出力(エンジントルク)を操作できるようになる。
【0011】
したがって、この四輪駆動車およびその制御方法によれば、4WDモード時におけるアクセルペダル操作のフィーリングが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1による四輪駆動車の全体構成図である。
【図2】2WDモード時と4WDモード時とで車両駆動トルクが等しいときのエンジントルクの内訳を示す図である。
【図3】アクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係(従来)を示した図である。
【図4】アクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を示した図である。
【図5】実施の形態1におけるアクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係を示した図である。
【図6】図1に示すエンジンECUおよびモータECUの機能ブロック図である。
【図7】エンジンECUおよびモータECUにより実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態2におけるアクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係を示した図である。
【図9】実施の形態2におけるエンジンECUおよびモータECUにより実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による四輪駆動車の全体構成図である。図1を参照して、この四輪駆動車1は、エンジン10と、変速機20と、差動ギヤ30と、前輪車軸40と、前輪50と、プーリ60,62,64と、オルタネータ70,72と、補機バッテリ80とを備える。また、四輪駆動車1は、インバータ90と、モータ100と、後輪車軸110と、後輪120と、エンジンECU130と、モータECU140と、走行モード切替スイッチ150とをさらに備える。
【0015】
エンジン10は、燃料の燃焼による熱エネルギーをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギーに変換し、発生した動力を変速機20へ出力する。エンジン10の燃料としては、ガソリンや軽油、エタノール、液体水素、天然ガスなどの炭化水素系燃料、または、液体もしくは気体の水素燃料が好適である。
【0016】
変速機20は、エンジン10に連結され、エンジン10の出力を変速して差動ギヤ30へ出力する。一例として、変速機20は、無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))である。差動ギヤ30は、変速機20の出力を前輪車軸40へ伝達する。前輪車軸40は、差動ギヤ30から受ける駆動力を前輪50へ伝達する。
【0017】
プーリ60は、エンジン60の出力軸に連結される。プーリ62は、オルタネータ70の回転軸に連結され、プーリ60とベルトで連結される。プーリ64は、オルタネータ72の回転軸に連結され、プーリ60とベルトで連結される。
【0018】
オルタネータ70は、プーリ60,62を介してエンジン10の出力を受ける。そして、オルタネータ70は、エンジンECU130から受ける制御信号に基づいてエンジン10の出力を用いて発電し、発電された電力を補機バッテリ80へ出力する。オルタネータ72は、プーリ60,64を介してエンジン10の出力を受ける。そして、オルタネータ72は、エンジンECU130から受ける制御信号に基づいてエンジン10の出力を用いて発電し、発電された電力をインバータ90へ出力する。補機バッテリ80は、オルタネータ70によって発電された電力を補機用電力として蓄え、図示されない補機へ必要に応じて電力を供給する。
【0019】
インバータ90は、オルタネータ72によって発電された電力を受け、モータECU140から受ける制御信号に基づいてモータ100を駆動する。モータ100は、インバータ90によって駆動され、発生した動力を後輪車軸110へ出力する。後輪車軸110は、モータ100から受ける駆動力を後輪120へ伝達する。
【0020】
エンジンECU130は、図示されないアクセルペダルの操作量や車両速度等に基づいて、エンジン10および変速機20の動作を制御する。また、エンジンECU130は、補機バッテリ80の充電量が低下すると、オルタネータ70が発電を行なうための制御信号を生成してオルタネータ70へ出力する。
【0021】
さらに、エンジンECU130は、走行モード切替スイッチ150により4WDモードが選択されているとき、4WDモード時におけるトルク制御を実行する。詳しくは、エンジンECU130は、前輪分の駆動トルクを発生するようにエンジン10および変速機20を制御する。また、エンジンECU130は、後輪分の駆動トルクをモータ100が発生するようにモータECU140へトルク指令値を出力するとともに、モータ100の要求電力をオルタネータ72が発電するための制御信号を生成してオルタネータ72へ出力する。
【0022】
ここで、エンジンECU130は、走行モード切替スイッチ150により4WDモードが選択されているとき、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対するエンジン10のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を変更する。これにより、4WDモード時に、アクセルペダル操作量が大きいときのエンジン出力(エンジントルク)の頭打ちがなくなり、アクセルペダル操作の全域にわたってエンジン出力(エンジントルク)を操作できる。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
走行モード切替スイッチ150は、エンジン10および変速機20によって前輪車軸40のみが駆動される2WDモードと、前輪車軸40および後輪車軸110の双方が駆動される4WDモードとを利用者が切替えるためのスイッチである。利用者は、走行モード切替スイッチ150により、好みに応じて走行モード(2WDモード/4WDモード)を切替えることができる。
【0024】
モータECU140は、後輪用のトルク指令値をエンジンECU130から受けると、そのトルク指令値によって指令されるトルクをモータ100が発生するための制御信号を生成し、その生成した制御信号をインバータ90へ出力する。なお、エンジンECU130およびモータECU140の構成についても、後ほど詳しく説明する。
【0025】
図2は、2WDモード時と4WDモード時とで車両駆動トルクが等しいときのエンジントルクの内訳を示す図である。図2を参照して、左側のグラフは、2WDモード時のエンジン10の発生トルク(エンジントルク)の内訳を示し、右側のグラフは、4WDモード時のエンジントルクの内訳を示す。そして、図示されるように、両者において駆動トルクは等しい。
【0026】
2WDモード時、エンジントルクは、駆動トルク(前輪)と補機分(オルタネータ70駆動分)とから成る。一方、4WDモード時は、エンジントルクは、前輪分および後輪分の駆動トルクと補機分(オルタネータ70駆動分)とに加えて、オルタネータ72発電分(電気ロス等含む)が上乗せされる。すなわち、2WDモード時と4WDモード時とで車両駆動トルクが等しい場合、4WDモード時の方が2WDモード時よりもオルタネータ72発電分だけ大きなエンジントルクが要求される。このことは、エンジントルクの上限は走行モードに拘わらず不変であるから、4WDモード時は2WDモード時よりも出力可能な駆動トルクが小さいことを意味する。
【0027】
図3は、アクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係(従来)を示した図である。なお、トータル軸トルクとは、前輪車軸40のトルクと後輪車軸110のトルクとの合計であり、2WDモード時は前輪車軸40のトルクのみである。
【0028】
図3を参照して、2WDモードにおいては、アクセルペダル操作の全域にわたってトータル軸トルクが変化する。すなわち、アクセルペダル操作の全域にわたって車両駆動力を操作できる。なお、アクセルペダル操作量に応じて軸トルクが変化する領域を以下では「非線形領域」とも称する。すなわち、2WDモードにおいては、アクセルペダル操作の全域が非線形領域である。
【0029】
一方、4WDモードにおいては、アクセルペダル操作量が所定値ACC1までは2WDモード時と同等の軸トルクが出力されるが、アクセルペダル操作量が所定値ACC1に達すると、エンジントルクが最大となり、それ以上アクセルペダルを踏込んでも軸トルクは増加しない。すなわち、4WDモードにおいては、アクセルペダル操作量が所定値ACC1までの領域に非線形領域が狭められる。
【0030】
4WDモード時におけるこのようなアクセルペダル操作量と軸トルク(車両駆動トルク)との関係は、運転者に違和感を与える。そこで、この実施の形態1においては、4WDモードにおいてもアクセルペダル操作の全域が非線形領域となるように、4WDモード時は2WDモード時に対して以下に示すようにエンジン10のスロットル開度特性を変更することとしたものである。
【0031】
図4は、アクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を示した図である。図4を参照して、実線は、2WDモード時におけるスロットル開度の特性を示し、点線は、4WDモード時におけるるスロットル開度の特性を示し、横軸は、アクセルペダル操作量を示す。図4に示されるように、この実施の形態1では、4WDモード時、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対するエンジン10のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係が変更される。
【0032】
なお、このアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係は、マップ等により予め規定される。すなわち、この実施の形態1では、図4に示すようなアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を有する、2WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップと4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップとが設けられ、走行モード(2WDモード/4WDモード)に応じてアクセルペダル操作量−スロットル開度マップが切替えられる。
【0033】
図5は、この実施の形態1におけるアクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係を示した図である。図5を参照して、実線は、2WDモード時の関係を示し、点線は、4WDモード時の関係を示す。上述のように4WDモード時に2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を変更することにより、アクセルペダル操作の全域において4WDモード時の軸トルクは2WDモード時の軸トルクよりも小さいけれども、4WDモードにおいてもアクセルペダル操作の全域が非線形領域となる。したがって、4WDモード時においても、アクセルペダル操作の全域にわたって軸トルク(車両駆動トルク)を変化させることができ、図3(従来図)に示したような、4WDモード時にアクセルペダルを踏込んでも軸トルクが増加しないことによる運転者の違和感は発生しない。
【0034】
図6は、図1に示したエンジンECU130およびモータECU140の機能ブロック図である。図6を参照して、エンジンECU130は、4WDトルク制御部200と、CVT制御部210と、エンジン要求出力算出部220と、要求出力修正部230と、要求駆動力修正部240とを含む。また、モータECU140は、モータ制御部300と、要求発電電力計算部310と、発電制御部320と、オルタネータ機械負荷計算部330と、予測トルク計算部340とを含む。
【0035】
4WDトルク制御部200は、走行モード切替スイッチ150によって4WDモードが選択されているとき、4WD走行での要求トルクを算出する。そして、4WDトルク制御部200は、後輪車軸110を駆動するモータ100(図1)の要求トルク(トルク指令値)を算出し、その算出された要求トルク(トルク指令値)をモータECU140へ出力する。なお、走行モード切替スイッチ150によって2WDモードが選択されているときは、モータ100の要求トルクは零である。
【0036】
CVT制御部210は、車両速度やスロットル開度等に基づいて変速機(CVT)20(図1)の変速比を決定し、その決定された変速比に従って変速機20を制御する。エンジン要求出力算出部220は、アクセルペダル操作量や車両速度等に基づいてエンジン10(図1)の要求出力を算出する。ここで、エンジン要求出力算出部220は、走行モード切替スイッチ150によって4WDモードが選択されているときは、4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いて、アクセルペダル操作量ACCに基づいてエンジン10のスロットル開度を決定し、その決定されたスロットル開度を用いてエンジン10の要求出力を算出する。一方、走行モード切替スイッチ150によって2WDモードが選択されているときは、エンジン要求出力算出部220は、2WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いて、アクセルペダル操作量ACCに基づいてスロットル開度を決定し、その決定されたスロットル開度を用いてエンジン10の要求出力を算出する。
【0037】
要求出力修正部230は、走行モード切替スイッチ150によって4WDモードが選択されているとき、モータECU140から受けるオルタネータ72(図1)の機械負荷計算値に基づいて、エンジン要求出力算出部220によって算出されたエンジン10の要求出力を修正する。具体的には、アクセルペダル操作量ACCに基づいてエンジン要求出力算出部220により算出されたエンジン10の要求出力に、オルタネータ72の機械負荷分が上乗せされる。なお、走行モード切替スイッチ150によって2WDモードが選択されているときは、オルタネータ72の発電は行なわれないので、エンジン10の要求出力の修正は行なわれない。
【0038】
要求駆動力修正部240は、走行モード切替スイッチ150によって4WDモードが選択されているとき、モータECU140から受けるモータ100の予測トルク値に基づいて、エンジン10に要求される駆動力を修正する。なお、走行モード切替スイッチ150によって2WDモードが選択されているときは、エンジン要求駆動力の修正は行なわれない。
【0039】
一方、モータECU140のモータ制御部300は、エンジンECU130から受ける要求トルクをモータ100が発生するための制御信号を生成し、その生成された制御信号をインバータ90(図1)出力してモータ100の制御を行なう。
【0040】
要求発電電力計算部310は、上記要求トルクを発生するモータ100へ電力を供給するオルタネータ72の要求発電電力を計算する。発電制御部320は、要求発電電力計算部310によって算出された要求発電電力に基づいて、オルタネータ72を駆動するための制御信号を生成し、その生成された制御信号をオルタネータ72へ出力してオルタネータ72の発電制御を行なう。
【0041】
オルタネータ機械負荷計算部330は、要求発電電力計算部310により計算された要求発電電力をオルタネータ72が発電する際のオルタネータ72の機械負荷を計算し、その算出された機械負荷計算値をエンジンECU130へ出力する。予測トルク計算部340は、モータ100の出力トルクを推定し、その推定されたトルク値(予測トルク値)をエンジンECU130へ出力する。
【0042】
図7は、エンジンECU130およびモータECU140により実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、一定時間毎または所定の条件が成立する毎に実行される。
【0043】
図7を参照して、エンジンECU130は、走行モード切替スイッチ150がオンされているか否かを判定する(ステップS10)。なお、ここでは、走行モード切替スイッチ150がオンされていることは、4WDモードが選択されていることを意味し、反対に、走行モード切替スイッチ150がオフされていることは、2WDモードが選択されていることを意味するものとする。
【0044】
ステップS10において走行モード切替スイッチ150がオンされていると判定されると(ステップS10においてYES)、エンジンECU130は、4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを選択する(ステップS20)。そして、エンジンECU130は、その選択された4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いて、アクセルペダル操作量や車両速度等に基づいてエンジン10(図1)の要求出力を算出する(ステップS30)。
【0045】
次いで、エンジンECU130は、4WD走行での要求トルクを算出する(ステップS40)。さらに、エンジンECU130は、その算出された要求トルクに基づいて、後輪120を駆動するモータ100(図1)の要求トルクを算出する(ステップS50)。算出されたモータ100の要求トルクは、モータECU140へ送信され、モータECU140は、そのモータ100の要求トルクに基づいて、オルタネータ72(図1)の要求発電電力を算出する(ステップS60)。そして、モータECU140は、算出された要求発電電力に基づいてオルタネータ72への制御出力を算出する(ステップS70)。
【0046】
次いで、モータECU140は、モータ100の出力トルクを推定する(ステップS80)。たとえば、モータ100に供給される電力およびモータ100の回転数に基づいてモータ100の出力トルクを推定することができる。あるいは、トルクセンサを用いてモータ100の出力トルクを推定してもよい。さらに、モータECU140は、オルタネータ72が発電する際のオルタネータ72の機械負荷を算出する(ステップS90)。
【0047】
なお、ステップS80において推定されたモータ100の出力トルク(予測トルク)およびステップS90において算出されたオルタネータ72の機械負荷の各算出値は、モータECU140からエンジンECU130へ送信される。そして、エンジンECU130は、モータECU140から受けるオルタネータ72の機械負荷計算値に基づいて、ステップS30において算出されたエンジン10の要求出力を修正する(ステップS100)。さらに、エンジンECU130は、モータ100の予測トルク値に基づいて、エンジン10に要求される駆動力を修正する(ステップS110)。
【0048】
一方、ステップS10において走行モード切替スイッチ150がオフされていると判定されると(ステップS10においてNO)、エンジンECU130は、2WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを選択する(ステップS120)。そして、エンジンECU130は、その選択された2WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いて、アクセルペダル操作量や車両速度等に基づいてエンジン10の要求出力を算出する(ステップS130)。
【0049】
以上のように、この実施の形態1においては、4WDモード時、2WDモード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対するエンジン10のスロットル開度が小さくなるように、2WDモード時に対してアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係が変更される。これにより、4WDモード時に、アクセルペダル操作量が大きいときのエンジン出力(エンジントルク)の頭打ちがなくなり(図5)、アクセルペダル操作の全域にわたってエンジン出力(エンジントルク)を操作できる。したがって、この実施の形態1によれば、4WDモード時におけるアクセルペダル操作のフィーリングが向上する。
【0050】
[実施の形態2]
実施の形態1では、図5に示したように、4WDモードにおいてアクセルペダル操作の全域を非線形領域にできるけれども、アクセルペダル操作の全域において、4WDモード時のトルクは2WDモード時のトルクに比べて小さい。そこで、実施の形態2においては、4WDモードの選択時、実施の形態1と同様に4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いるとともに、4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを選択したことによる駆動力の低下を補うために変速機(CVT)20(図1)の変速比が変更される。
【0051】
図8は、実施の形態2におけるアクセルペダル操作量とトータル軸トルクとの関係を示した図である。図8を参照して、実線は、2WDモード時の関係を示し、点線は、4WDモード時の関係であって2WDモード時と変速機20の変速比が同一の場合を示し、一点鎖線は、4WDモード時の関係であって変速比を変更した場合を示す。4WDモード時、図4に示した4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを用いるとともに、駆動力の低下を補うように変速機20の変速比を変更することによって、4WDモード時に2WDモード時と同等のトルク特性が得られる。
【0052】
図9は、実施の形態2におけるエンジンECU130およびモータECU140により実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、一定時間毎または所定の条件が成立する毎に実行される。図9を参照して、このフローチャートは、図7に示したフローチャートにおいて、ステップS95をさらに含む。
【0053】
すなわち、ステップS90においてモータECU140によりオルタネータ72(図1)の機械負荷が算出されると、エンジンECU130は、4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを選択したことによる駆動力の低下を補うために変速機20の変速比を変更する(ステップS95)。なお、トルク増大側に変速機20の変速比を変更できない場合には、変速比の変更は行なわれない。そして、変速機20の変速比が変更されると、ステップS100へ処理が移行される。なお、ステップS95以外のその他の処理は、実施の形態1と同じである。
【0054】
以上のように、この実施の形態2においては、4WDモードの選択時、実施の形態1と同様に4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップが用いられる。そして、この実施の形態2においては、4WDモード用のアクセルペダル操作量−スロットル開度マップを選択したことによる駆動力の低下を補うために変速機20の変速比が変更される。したがって、この実施の形態2によれば、4WDモードにおいて、アクセルペダル操作の全域にわたってエンジン出力(エンジントルク)を操作できるとともに、2WDモード時と同等の駆動トルク特性を得ることができる。その結果、4WDモード時におけるアクセルペダル操作のフィーリングがさらに向上する。
【0055】
なお、上記の各実施の形態においては、変速機20は無段変速機(CVT)としたが、この発明は、変速機20がCVTのものに限定されるものではなく、有段式の自動変速機であってもよい。また、実施の形態1においては、変速機20は手動変速機であってもよい。
【0056】
また、上記においては、エンジンECU130とモータECU140とに機能分担して制御を行なうものとしたが、エンジンECU130が有する機能とモータECU140が有する機能とを1つのECUで構成してもよい。
【0057】
また、上記においては、エンジン10によって前輪車軸40を駆動し、モータ100によって後輪車軸110を駆動するものとしたが、エンジン10によって後輪車軸110を駆動し、モータ100によって前輪車軸40を駆動してもよい。
【0058】
なお、上記において、エンジン10は、この発明における「内燃機関」の一実施例に対応し、オルタネータ72は、この発明における「発電機」の一実施例に対応する。また、モータ100は、この発明における「電動機」の一実施例に対応し、エンジンECU130は、この発明における「制御装置」の一実施例に対応する。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 四輪駆動車、10 エンジン、20 変速機、30 差動ギヤ、40 前輪車軸、50 前輪、60,62,64 プーリ、70,72 オルタネータ、80 補機バッテリ、90 インバータ、100 モータ、110 後輪車軸、120 後輪、130 エンジンECU、140 モータECU、150 走行モード切替スイッチ、200 4WDトルク制御部、210 CVT制御部、220 エンジン要求出力算出部、230 要求出力修正部、240 要求駆動力修正部、300 モータ制御部、310 要求発電電力計算部、320 発電制御部、330 オルタネータ機械負荷計算部、340 予測トルク計算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪車軸および後輪車軸の一方のみが駆動される二輪駆動モードと前記前輪車軸および前記後輪車軸の双方が駆動される四輪駆動モードとを切替えて走行可能な四輪駆動車であって、
前記前輪車軸および前記後輪車軸の一方を駆動する内燃機関と、
前記内燃機関の出力を用いて発電可能な発電機と、
前記四輪駆動モード時、前記発電機により発電される電力を受けて他方の車軸を駆動する電動機と、
前記内燃機関を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記四輪駆動モード時、前記二輪駆動モード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対する前記内燃機関のスロットル開度が小さくなるように、前記二輪駆動モード時に対して前記アクセルペダル操作量と前記スロットル開度との関係を変更する、四輪駆動車。
【請求項2】
前記内燃機関に連結される変速機をさらに備え、
前記制御装置は、前記四輪駆動モード時、前記二輪駆動モード時に対する前記スロットル開度の減少に伴なう車両駆動トルクの低下を補うように前記変速機の変速比を変更する、請求項1に記載の四輪駆動車。
【請求項3】
前輪車軸および後輪車軸の一方のみが駆動される二輪駆動モードと前記前輪車軸および前記後輪車軸の双方が駆動される四輪駆動モードとを切替えて走行可能な四輪駆動車の制御方法であって、
前記四輪駆動車は、
前記前輪車軸および前記後輪車軸の一方を駆動する内燃機関と、
前記内燃機関の出力を用いて発電可能な発電機と、
前記四輪駆動モード時、前記発電機により発電される電力を受けて他方の車軸を駆動する電動機とを含み、
前記制御方法は、
前記四輪駆動モードが選択されているか否かを判定するステップと、
前記四輪駆動モードが選択されているとき、前記二輪駆動モード時よりも同一のアクセルペダル操作量に対する前記内燃機関のスロットル開度が小さくなるように、前記二輪駆動モード時に対して前記アクセルペダル操作量と前記スロットル開度との関係を変更するステップとを備える、四輪駆動車の制御方法。
【請求項4】
前記四輪駆動車は、前記内燃機関に連結される変速機をさらに含み、
前記制御方法は、前記四輪駆動モード時、前記二輪駆動モード時に対する前記スロットル開度の減少に伴なう車両駆動トルクの低下を補うように前記変速機の変速比を変更するステップをさらに備える、請求項3に記載の四輪駆動車の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−247748(P2010−247748A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101109(P2009−101109)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】