説明

基板処理装置及びノズルユニット

【課題】加圧せずに基板を均一に洗浄できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】半導体ウェハ201を表面が上下方向と直交する状態で支持する基板支持部及び支持された半導体ウェハ201をノズルユニット11に対して前方に相対移動させる相対移動機構を有する搬送用ローラ202と、相対移動される半導体ウェハ201の表面に上方から薬液を吐出するノズルユニット11とを有する。ノズルユニット11は、薬液を吐出するスリット101が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、スリット101に同等な左右幅で上方から連通して薬液が流動する流路102が内部に形成されており、流路102が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルユニットから吐出する液体で基板の表面を処理する基板処理装置及びそのノズルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、薬液や純水などの洗浄液を用いて、半導体基板やガラス基板などを洗浄する湿式洗浄が行われている。基板洗浄は、その処理形式に応じて2つに大別される。一つは、基板を1枚ずつ処理する枚葉式であり、もう一つは、基板を複数枚ずつまとめて処理するバッチ式である。
【0003】
枚葉式の基板処理装置においては、搬送用ローラで基板を一枚ずつ送りながら洗浄することができる。液晶表示装置で用いるガラス基板は大きく割れやすいことから、取り扱いの観点で枚葉式の基板処理装置は利点がある。
また、近年では、二次汚染の問題や、多品種少量生産への適応性の観点から、枚葉式の基板処理装置の需要が高まっている。
【0004】
半導体装置の製造工程においては、半導体装置の高性能化、高品質化のためには、基板と薄膜、及び薄膜と薄膜の界面は、理想的に清浄であることが要求される。そこで、半導体ウェハプロセスにおいても、種々の汚染物の付着を取り除くため、枚葉式の基板処理装置が利用されている。
【0005】
通常、枚葉式の基板処理装置のノズルユニットは、直噴のノズルやスプレーノズルがよく使用されている。
図6は、スプレーノズルを備える従来の枚葉式の基板処理装置の一例を示す図である。ノズル601は1点以上の点状の吐出口を有し、吐出口から圧力をかけて流体を吐出する。吐出された流体は円錐状に広がり、基板602上に吹きかかる。吐出口を2点以上組み合わせて利用されることもある。この枚葉式の基板処理装置は、搬送用ローラ603を備えることにより、基板602を一枚ずつ送りながら洗浄することができる。(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、半導体デバイス特性や半導体プロセスに悪影響を与える汚染物を半導体ウェハから除去する方法として、2流体ジェットノズルやカーテンノズルを用いた洗浄方法が提案されている。
【0007】
2流体ジェットノズルを備えた枚葉式の基板処理装置は、気体(乾燥空気または窒素)と液体(純水)を混合してミスト化された微小な水滴を、一つのジェットノズルから半導体ウェハ上に高速に噴射し、半導体ウェハ上の汚染物(特にパーティクルなどの異物)を除去して洗浄を行う。
【0008】
図7は、カーテンノズルを備えた従来の枚葉式の基板処理装置の一例を示す図である。ノズル701はカーテン状(膜状、平板状)に流体を吐出する。ノズル701は幅長全域で安定したスリットを有する。この枚葉式の基板処理装置は、搬送用ローラ703を備えることにより、基板702を一枚ずつ送りながら洗浄することができる。(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−29209
【特許文献2】特開2001−205205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、半導体デバイスの微細化が進むに連れ、多層配線の微細化、レジストやエッチング条件の変化によりドライエッチング後にエッチング時の堆積物を除去することが困難になってきている。また、配線層間膜の膜強度は低誘電率層間膜を用いるようになって低下している。したがって、従来のノズルを用いた洗浄方法ではパターンの破壊などの問題があり、高圧での洗浄が困難になってきている。
【0010】
スプレーノズルは、半導体ウェハ面内を均一に洗浄するノズルである。しかしながら、スプレーノズルは高圧で流体を照射するものであり、パターンの破壊やパーティクル増加の問題がある。
【0011】
また、従来のカーテンノズルの場合、半導体ウェハ面内で均一に処理を行うために吐出圧力を高くしていた。しかし、この吐出圧のために微細パターンの破壊やパーティクル増加の問題が起こった。また、流体の流量を下げたり、スリット幅を広くしたりして吐出圧力を下げると、半導体ウェハ面内で吐出圧力の不均一が生じる問題があった。
【0012】
このような従来のノズルユニットが有する吐出圧力の問題は、半導体ウェハプロセスに限られず、液晶の薄型化が要求される昨今においては、液晶表示装置の製造工程においても同様に生じる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ノズルユニットから吐出する流体で基板の表面を処理する基板処理装置であって、基板を表面が上下方向と直交する状態で支持する基板支持部と、支持された基板をノズルユニットに対して相対移動させる相対移動機構と、相対移動される基板の表面に上方から流体を吐出するノズルユニットとを有し、ノズルユニットは、流体を吐出する吐出口が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、吐出口に同等な左右幅で上方から連通して流体が流動する流路が内部に形成されており、流路が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている基板処理装置が提供される。
【0014】
この発明によれば、流体を吐出する吐出口が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、吐出口に同等な左右幅で上方から連通して流体が流動する流路が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている。したがって、流体が横長の吐出口から吐出されるまでに、曲折した流路を流動することができる。これにより、動圧が左右に充分に分散され、横長の吐出口から均一に流体を吐出することができる。
【0015】
また、本発明によれば、ノズルユニットから吐出する流体で基板の表面を処理する基板処理装置のノズルユニットであって、流体を吐出する吐出口が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、吐出口に同等な左右幅で上方から連通して流体が流動する流路が内部に形成されており、流路が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されているノズルユニットが提供される。
【0016】
本発明で云う流体とは、流動する物質であればよく、例えば、液体、気体、これらの組み合わせ、の何れでもよい。
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
また、本発明では前後左右上下の方向を規定しているが、これは本発明の構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定したものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体が横長の吐出口から吐出されるまでに、曲折した流路を流動することにより、動圧が左右に充分に分散され、横長の吐出口から均一に流体を吐出することができる。したがって、この均一に吐出される流体により、基板の表面を均等に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
図1及び図3は、本実施形態の基板処理装置が備えるノズルユニットを示す図である。
図2は、本実施形態の基板処理装置を示す図である。
本実施形態の基板処理装置は、ノズルユニット11から吐出する薬液で半導体ウェハ201の表面を処理する半導体ウェハ洗浄装置である。この半導体ウェハ洗浄装置は、半導体ウェハ201を表面が上下方向と直交する状態で支持する基板支持部と、支持された半導体ウェハ201をノズルユニット11に対して前方に相対移動させる相対移動機構とを有する搬送用ローラ202と、相対移動される半導体ウェハ201の表面に上方から薬液を吐出するノズルユニット11とを有する。ノズルユニット11は、薬液を吐出するスリット101が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、スリット101に同等な左右幅で上方から連通して薬液が流動する流路102が内部に形成されており、流路102が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている。
【0020】
図1及び図3で示すように、流路102の先端部は、薬液の注入口103を備える。また、流路の末端は、薬液の吐出口となるスリット101を備える。
【0021】
流路102は、左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている。つまり、流路102は、スリット101に1段以上の段を備えている。
この場合において、流路102に流体が突き当たる壁が形成されていてもよいし、流路102が垂直に曲折されていてもよい。言い換えるとすると、「曲折された形状」とは、薬液が一直線に流れない構造となっていればよい。流路102の長さや曲がり(備える段の数)は、流路102の占有容積が薬液の圧力分散が最大となるよう、洗浄する半導体ウェハ201の性能に併せて適宜設計されるものである。図1に示す流路102の構造は、その一例である。
【0022】
スリット101の幅、スリット101と半導体ウェハ201の間の距離、スリット101と半導体ウェハ201の角度は、半導体ウェハ201の洗浄性の制御を目的として、適宜設計されるものである。
例えば、吐出する薬液と半導体ウェハ201の角度は、20度以上90度以下とすることができる。したがって、スリット101と半導体ウェハ201の角度は、20度以上90度以下とすることができる。
【0023】
また、薬液の流量は、半導体ウェハ201の洗浄性の制御を目的として、適宜設計されるものである。例えば、薬液の流量は、0.1L/分以上2L/分以下とすることができる。
したがって、ノズルユニット11は、目的の薬液の流量が得られるようにスリット101の幅や流路102の構造等について適宜設計されるものである。
【0024】
また、薬液の温度は、高温(例えば、150℃)にすることができる。したがって、ノズルユニット11は、薬液の温度に耐性を有する材質で構成することができる。
【0025】
この半導体ウェハ洗浄装置は、薬液に代えて、リンス水を吐出することができる。リンス水には、純水、還元水、CO水、またはイソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン等の有機溶媒を用いることができる。
【0026】
また、この半導体ウェハ洗浄装置は、薬液に代えて、気体を吐出することができる。気体は、例えば、空気や窒素を用いることができる。
【0027】
よって、ノズルユニット11の材質は、用いる薬液等の流体の特性にあわせて適宜選択されるものである。
【0028】
この半導体ウェハ洗浄装置は、ノズルユニット11を複数備えることもできる。
【0029】
続いて、本実施形態の基板処理装置の動作について説明する。
【0030】
薬液を注入口103から注入すると、薬液は流路102を流動し、スリット101から吐出される。吐出された薬液は半導体ウェハ201に吹きかかる。
半導体ウェハ201は、搬送用ローラ202により1枚ずつ搬送され、1枚ずつ洗浄される。
【0031】
本実施形態の基板処理装置の効果について説明する。
【0032】
図4は、本実施形態の効果を説明する図である。図4(a)は、図1に示すノズルユニット11の点線Aの断面を表す模式図である。図4(b)は、従来のカーテンノズルの断面を表す模式図である。矢印は薬液等の流体の動圧を示す。
【0033】
本実施形態の基板処理装置が備えるノズルユニットは、左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成された流路を備えている。一方、従来のカーテンノズルは、左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成された流路を備えていない。つまり、従来のカーテンノズルの流路の形状は、直線状に形成されていた。
したがって、図4(b)で示すように、従来のカーテンノズルの流路は、注入口が中央などに点状にあったので、薬液等の流体の流動による圧力は注入口に近い位置では高く、遠い位置では低くなっていた。このため、横長の吐出口では両側の圧力が不足したり、中央が高圧となりすぎたりする問題があった。そこで、基板を均一に洗浄するために、加圧してこの問題を解決していた。
一方、本実施形態の基板処理装置が備えるノズルユニットであれば、図4(a)で示すように、中央の点状の注入口に圧入される流体が横長の吐出口から吐出されるまでに、曲折した流路を流動することで動圧が左右に充分に分散され、横長の吐出口から均一に流体を吐出できる。これにより、加圧せずに低吐出圧で均一な流体の吐出が可能となる。
【0034】
そして、本実施形態の基板処理装置によれば、微細パターンの破壊を防ぎつつ、パーティクルを低減することができる。これにより、半導体ウェハの面内を均一に洗浄することができ、半導体プロセスの洗浄工程においてデポ除去性能の向上させることができる。
【0035】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、半導体ウェハを動かすことにかえて、ノズルユニットを移動させてもよい。また、上述の例では半導体ウェハは概ね水平方向になるように支持されているが、半導体ウェハを吸着保持すれば、水平以外の方向、たとえば鉛直方向や、水平方向と鉛直方向の間の斜め方向に支持してもよい。また、洗浄工程が複数ステップになる場合は、ノズルと半導体ウェハの距離を変えることもできる。
【0036】
図5は、本実施形態の変形例を示す図である。この基板処理装置は、複数のノズルユニットを備える。
図5には、薬液を吐出するノズルユニットと、窒素ガスを吐出するノズルユニットと、リンス水を吐出するノズルユニットが示されている。
半導体ウェハは、搬送用ローラによって1枚ずつ搬送され、それぞれのノズルユニットの直下まで移動される。
半導体ウェハは、最初に薬液処理され、その後、リンスされ、乾燥させることができる。また、薬液処理とリンスの間に半導体ウェハ上の薬液を振り切る処理を行うこともできる。また、搬送用ローラに代えて真空チャックやエッジクリップを用いることにより、半導体を回転させて、薬液の振り切りや乾燥を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、半導体ウェハ洗浄装置を例にして説明したが、半導体ウェハに代えてガラス基板とし、液晶表示部の洗浄装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の基板処理装置が備えるノズルユニットを示す図である。
【図2】本実施形態の基板処理装置を示す図である。
【図3】本実施形態の基板処理装置が備えるノズルユニットを示す図である。
【図4】本実施形態の効果を説明する図である。(a)は、図1に示すカーテンノズル11の点線Aの断面を表す模式図である。(b)は、従来のカーテンノズルの断面を表す模式図である。
【図5】本実施形態の変形例を示す図である。
【図6】従来の基板処理装置を示す図である。
【図7】従来の基板処理装置を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11 ノズルユニット
101 スリット
102 流路
103 注入口
201 半導体ウェハ
202 搬送用ローラ
601 ノズル
602 基板
603 搬送用ローラ
701 ノズル
702 基板
703 搬送用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルユニットから吐出する流体で基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記基板を表面が上下方向と直交する状態で支持する基板支持部と、
支持された前記基板を前記ノズルユニットに対して相対移動させる相対移動機構と、
相対移動される前記基板の表面に上方から前記流体を吐出する前記ノズルユニットと
を有し、
前記ノズルユニットは、前記流体を吐出する吐出口が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、前記吐出口に同等な左右幅で上方から連通して前記流体が流動する流路が内部に形成されており、前記流路が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されている基板処理装置。
【請求項2】
前記流路に前記流体が突き当たる壁が形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流路が垂直に曲折されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記流体は、液体であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記液体は、薬液又はリンス水であることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記流体は、気体であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記気体は、窒素であることを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板は、半導体ウェハであることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の基板処理装置。
【請求項9】
ノズルユニットから吐出する流体で基板の表面を処理する基板処理装置のノズルユニットであって、
前記流体を吐出する吐出口が左右方向に細長い線形で下面に形成されており、
前記吐出口に同等な左右幅で上方から連通して前記流体が流動する流路が内部に形成されており、
前記流路が左右方向と直交する面内で少なくとも一回は曲折された形状に形成されているノズルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−288343(P2008−288343A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131018(P2007−131018)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】