変位計測方法及びその装置、ステージ装置並びにプローブ顕微鏡
【課題】
空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で計測対象物の変位量や移動量を安定に計測可能な変位計測方法及びその装置並びにプローブ顕微鏡等を提供することにある。
【解決手段】
パルス光を2つに分離し、一方は計測対象物で反射させた後、1パルス周期に相当する遅延光路に入射させ、他方は同じ光路を逆向きに遅延光路を経由して1パルス周期遅れて計測対象物に到達させ、反射させる。計測対象物の移動に伴って生じた光位相変化を、両パルス光を干渉させることにより求める。
空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で計測対象物の変位量や移動量を安定に計測可能な変位計測方法及びその装置並びにプローブ顕微鏡等を提供することにある。
【解決手段】
パルス光を2つに分離し、一方は計測対象物で反射させた後、1パルス周期に相当する遅延光路に入射させ、他方は同じ光路を逆向きに遅延光路を経由して1パルス周期遅れて計測対象物に到達させ、反射させる。計測対象物の移動に伴って生じた光位相変化を、両パルス光を干渉させることにより求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉を用いて計測対象物の変位を計測する方法及びその装置に係り、特にレーザ光を計測対象物に照射し、その反射光を参照光と干渉させ、得られた干渉信号から計測対象物の変位量を計測する変位計測方法及びその装置、ステージ装置並びにプローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象物の変位量あるいは移動量を計測する方法として、光干渉を用いる方法が広く知られている(Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030)。その一例を図12に示す。図12に示す干渉計において、レーザヘッド301からは、偏光方向が互いに直交し、かつ両者の光周波数が20MHz異なる2周波直交偏光ビーム302が出射される。このビームは偏光ビームスプリッタ303により、2つの偏光成分に分離される。S偏光ビーム304は偏光ビームスプリッタ303で反射された後、直角プリズム305で反射され、参照光として偏光ビームスプリッタ303に入射する。P偏光ビーム306は偏光ビームスプリッタ303を透過し、計測対象物400上に載置された直角プリズム307で反射され、偏光ビームスプリッタ303に入射する。両反射ビームは偏光ビームスプリッタ303で合成され、両反射ビームの偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板308を透過後、ヘテロダイン干渉する。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子309で受光され、電気信号310に変換される。このヘテロダイン干渉信号310の周波数fMは、計測対象物400の移動速度Vに応じたドップラーシフト周波数が加わり、(1)式で与えられる。
【0003】
fM=fB±NV/λ (1)
ここで、fB=20MHz、λはレーザ光の波長である。また、N=2、4、・・・で、光路の往復回数により決まる定数であり、図12の場合、N=2である。一方、レーザヘッド301からは、参照信号としてfB=20MHzのビート信号311が出力されている。測定されたヘテロダイン干渉信号310及び参照信号311は位相検出回路312に入力され、両信号間の位相差から計測対象物400の移動速度V及び移動量400dが求められ、移動量出力信号313として出力される。
【0004】
【非特許文献1】Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す干渉計においては、プローブ光路、即ちプローブ光であるP偏光ビーム306が通過する光路と参照光であるS偏光ビーム304が通過する参照光路とが空間的に分離しているため、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じた場合、両光路間で光路差が変動し、これがナノメートルオーダの測定誤差となってしまう。将来の45nmノードや32nmノード対応の半導体微細パターン製造用露光装置やパターン寸法測定装置用ステージ、あるいは局所的な寸法測定やキャラクタリゼーションに用いられるプローブ顕微鏡のプローブ位置計測・制御にはサブナノメートルオーダ以下の位置決め精度が要求されており、図12に示す従来技術では、この要求に応えることができない。温度、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する方法も考えられうるが、装置コスト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で計測対象物の変位量や移動量を安定に計測可能な変位計測方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で測定用プローブの位置計測・制御を行うプローブ顕微鏡等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成手段で生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0009】
また、本発明は、前記光干渉光学系において、前記時間差をつける手段として前記第1のパルス光と前記第2のパルス光との間において光路差をつけるように構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記光干渉光学系としては、具体的には、4個以上の偏光ビームスプリッタと、遅延光路と、戻り第1のS偏光パルス光と戻り第2のP偏光パルス光とを合成して時間差の間における計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号Is、Ipを生じさせる偏光を用いた光学系とを備えて構成される。
【0011】
また、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成ステップで生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを該第2のパルス光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを該第1のパルス光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0012】
また、本発明は、前記光干渉光学系において、前記第1のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記光干渉光学系における前記時間差を、前記強度変調光生成手段における前記所定の周期と一致させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記算出手段において、前記対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記対象物の単位移動量を積分して求めるように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成手段で生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを該第2のパルス光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを該第1のパルス光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備え、前記光干渉光学系は、前記第1のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記遅延光路を通して前記合成に至るまでの光路と前記第2のパルス光における前記分離されてから前記遅延光路を通して前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0016】
また、本発明は、前記移動可能な計測対象物を設けたステージ装置において、前記変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記ステージ装置を少なくとも一軸方向に位置決め制御するように構成したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記移動可能な計測対象物を設け、プローブを少なくとも一軸方向に走査位置決めするプローブ走査機構を備えたプローブ顕微鏡において、前記変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記プローブ走査機構を少なくとも一軸方向に走査位置決め制御するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布あるいは機械振動といった外乱の影響が、第1のプローブパルス光と第2のプローブパルス光とに等しく作用するので、2つのパルス光が干渉した際に上記外乱の影響を相殺することが可能となる。この結果、上記外乱の影響を受けることなく、干渉光から対象物の変位量あるいは移動量をサブナノメートルからピコメートルの高精度で安定に計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る変位計測装置及びその方法、ステージ装置並びにプローブ顕微鏡の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置及びその方法の第1の実施例について図1を用いて説明する。本第1の実施例の変位計測装置は、図1に示すように、光源ユニット280、干渉計ユニット50から成る。図1に示すように、光源ユニット280においては、直線偏光レーザ1(例えば波長632.8nmの周波数安定化He−Neレーザ)からの直線偏光ビーム2を、音響光学変調素子3(AOM:Acousto-Optic Modulator)に入射する。音響光学変調素子3には、信号発生器4で生成された周波数fの矩形波変調信号5が入力されており、出射する1次回折光6を周波数fで強度変調する。本実施例の場合、f=50MHzとした。この強度変調光6は集光レンズ7により、偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま干渉計ユニット50に伝送される。
【0021】
偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対しP偏光ビーム(P1)とS偏光ビーム(P2)とに偏光分離できるように偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板16を通過後円偏光ビーム17となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板17を透過後S偏光ビーム21となり、偏光ビームスプリッタ13b、13c、13dで反射され、レンズ22で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射する。この偏波面保存ファイバ23は長さ6000mm程度の遅延光路を形成しており、入射したS偏光ビームは6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。このように遅延光路23は、強度変調光の周期の20nsの時間差をつけるものである。そして、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したS偏光ビーム25はレンズ24により平行光となり、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0022】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する(辿る)。いわゆるSagnac干渉計に似た構成となっている。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、レンズ24で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射し、6000mm程度の遅延光路23を通過、即ち20nsの時間経過後、干渉計ユニット50に戻って来る。そして、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したS偏光ビームはレンズ22により平行光26となり、偏光ビームスプリッタ13d、13c、13bで反射され、1/4波長板16を通過後円偏光ビーム27となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板17を透過後P偏光ビーム28となり、該P偏光ビーム28は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aにおいて同じタイミングでS偏光ビーム25と合成されて無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0023】
ここで、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は所定の周波数f=50MHzで強度変調されており、図2(a)に示すように、各ビームは20ns周期の矩形パルス列14p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び15p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0024】
一方、ターゲットミラー18面においては、図2(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)14から円偏光ビーム17に変換されて入射するパルス列17pに対し、S偏光ビーム(P2)15は6000mm程度の遅延光路23を経て20nsの時間経過後(20nsの時間差を持って)、円偏光ビーム27に変換されて入射するため、そのパルス列27pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した(1パルス周期分時間差を持った)形態となっている。
【0025】
更に、図2(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)14はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路23を経て戻って来るので、そのパルス列25pは、遅延光路23、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)15のパルス列28pと同じタイミングで(相対的に時間差を無くして)偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0026】
但し、上述したように、両ビームのパルス列17p、25pは、上記遅延光路23によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってきた両ビームのパルス列25p、28pは、上記遅延光路23によって、同じタイミングで(相対的に時間差をなくして)偏光偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0027】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る合成ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、例えば1/4波長板31を通過することにより、次の(1)式、及び(2)式で示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光33は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(35)に変換される。P偏光成分同士の干渉光36は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(39)に変換される。
【0028】
該変換された2つの干渉信号IS(35)及びIP(39)は次の(1)式及び(2)式で与えられて、単位移動量算出ユニット40に送られる。
【0029】
IS=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (1)
IP=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ−π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (2)
ここで、I1は戻り光25の検出強度、I2は戻り光28の検出強度、nは空気の屈折率、ΔDは1パルス周期、即ち20nsの間での計測対象物20の移動量、λはレーザ光1の波長である。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る干渉光学系は、偏光ビームスプリッタ13aにおいて偏光分離をするために偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている偏波面保存ファイバ8と、合成ビーム30を反射させるための無偏光ビームスプリッタ11と、例えば1パルス周期分遅延させる遅延光路23を含めて2つの光路を形成すると共に第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離し、それらの偏光光を合成するための偏光ビームスプリッタ13a〜13dと、直線偏光を例えば円偏光にする1/4波長板16と、戻り光25、28から成る合成ビーム30に対して±π/2の位相差を与える例えば1/4波長板31と、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士を干渉させる45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32と、該偏光ビームスプリッタ32で反射されたS偏光成分同士の干渉光33を受光して電気信号(干渉信号)IS(35)に変換する光電変換素子34と、上記偏光ビームスプリッタ32を透過したP偏光成分同士の干渉光36を受光して電気信号(干渉信号)IP(39)に変換する光電変換素子38とを備えて構成される。特に、本発明は、上記光干渉光学系において、偏光ビームスプリッタ13aで偏光分離された第1の偏光光14における分離されてからターゲットミラー18に照射するまでの光路と第2の偏光光15におけるターゲットミラー18から反射して偏光ビームスプリッタ13aでの合成に至るまでの光路とを同じにし、第1の偏光光14におけるターゲットミラー18から反射して遅延光路を通して偏光ビームスプリッタ13aでの合成に至るまでの光路と第2の偏光光における分離されてから上記遅延光路を通してターゲットミラー18に照射するまでの光路とを同じにしたことにより、外乱の影響が上記2つの光に等しく作用し相殺されることとなり、外乱の影響を受けることなく高精度に計測対象物20の移動量を求めることが可能となる。
【0031】
単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号IS(35)及びIP(39)を基に、次の(3)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号41として総移動量積算ユニット42に出力される。
【0032】
ΔD=(λ/4πn)sin−1{(IP−IS)/(IP+IS)} (3)
但し、I1=I2とする。
【0033】
総移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号41を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが次の(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号43として干渉計ユニット50から出力される。
【0034】
【数1】
ここで、Nは計測対象物の移動時間中に含まれる矩形波変調信号5のパルス数である。例えば、図3に示すように、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが10pm、計測対象物20の移動時間が160nsとすると、単位移動量ΔD=10pmを160nsに亘って積算することにより、総移動量D=80pmが得られ、移動量積算ユニット42から測定移動量信号43として出力される。
【0035】
図1から明らかなように、本第1の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量ΔDに応じた光位相差((4πnΔD/λ+π/2)、(4πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(35)及びIP(39))を生じる。
【0036】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路(光の経路)を互いに逆向きに通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第1の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の総移動量D(20d)をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0037】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第2の実施例について図4を用いて説明する。上記第1の実施例では、干渉計ユニット50において、第1及び第2のプローブ光はターゲットミラー18に各々1回ずつ入射・反射する構成となっていた。本発明に係る第2の実施例の変位計測装置では、2つのプローブ光はターゲットミラー18に各々2回ずつ入射・反射する、即ち同じターゲットミラー18の移動量に対して2倍の位相差が生じ、測定感度が2倍になる構成となっている点が異なる。光源ユニット280の構成と機能は第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対し偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム62となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム63となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム64となり、偏光ビームスプリッタ13c、13d、13e通過後、レンズ24で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光され入射する。この偏波面保存ファイバ23は第1の実施例と同様、長さ6000mm程度の遅延光路を形成しており、入射したP偏光ビームは6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13eに戻って来る。偏波面保存ファイバ23の出射端面は入射端面に対し90°回転しており、出射したS偏光ビーム65はレンズ22により平行光66となり、偏光ビームスプリッタ13e、13d、13aで反射され、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0039】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13d、13eで反射された後、レンズ22で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射し、6000mm程度の遅延光路23を通過、即ち20nsの時間経過後、干渉計ユニット50に戻って来る。偏波面保存ファイバ23の出射端面は入射端面に対し90°回転しており、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したP偏光ビームはレンズ24により平行光となり、偏光ビームスプリッタ13e、13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム67となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム68となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム69となり、該P偏光ビーム69は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aにおいて同じタイミングでS偏光ビーム66と合成されて無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0040】
ここで、上記第1の実施例と同様、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は周波数f=50MHzで強度変調されており、図2(a)に示すように、各ビームは20ns周期の矩形パルス列14p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び15p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0041】
一方、ターゲットミラー18面においては、図2(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)14から円偏光ビームに変換されて入射するパルス列17pに対し、S偏光ビーム(P2)15は6000mm程度の遅延光路23を経て20nsの時間経過後(20nsの時間差を持って)、円偏光ビームに変換されて入射するため、そのパルス列27pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した(1パルス周期分時間差を持った)形態となっている。
【0042】
更に、図2(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)14はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路23を経て戻って来るので、そのパルス列25pは、遅延光路23、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)15のパルス列28pと同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0043】
但し、上述したように、両ビームのパルス列17p、27pは、上記遅延光路23によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってくる両ビームのパルス列25p、28pは、上記遅延回路23によって、同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0044】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光66、69は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第1の実施例と同様、戻り光66、69から成る合成ビーム70は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより、次の(5)式及び(6)式に示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光66、69に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光72は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(73)に変換される。P偏光成分同士の干渉光74は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(75)に変換される。2つの干渉信号IS(73)及びIP(75)は次の(5)式及び(6)式で与えられて、単位移動量算出ユニット40に送られる。
【0045】
IS=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(8πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(8πnΔD/λ) (5)
IP=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(8πnΔD/λ−π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(8πnΔD/λ) (6)
ここで、I1は戻り光66の検出強度、I2は戻り光69の検出強度、nは空気の屈折率、ΔDは1パルス周期、即ち20nsの間での計測対象物20の単位移動量20d、λはレーザ光1の波長である。
【0046】
単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号IS(73)及びIP(75)を基に、次の(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号76として移動量積算ユニット42に出力される。
【0047】
ΔD=(λ/8πn)sin−1{(IP−IS)/(IP+IS)} (7)
但し、I1=I2とする。
【0048】
移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号76を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号77として干渉計ユニット50から出力される。
【0049】
図4から明らかなように、本第2の実施例では、上記第1の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差((8πnΔD/λ+π/2)、(8πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(73)及びIP(75))を生じる。
【0050】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路(光の経路)を互いに逆向きに通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第2の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本第2の実施例では、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0051】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第3の実施例について図5を用いて説明する。第3の実施例は、図5に示すように、強度変調光の生成にパルスレーザを用いる変位計測装置である。即ち、光源ユニット290において波長780nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数50MHzのパルスレーザ101からのパルス直線偏光ビーム102を透過率:反射率=96:4のビームスプリッタ103により2つのビームに分離する。透過したパルス直線偏光ビーム105を、偏光光軸を45°回転させた状態で干渉計ユニット50の無偏光ビームスプリッタ11に入射する。45°方向の直線偏光ビーム105は無偏光ビームスプリッタ11を通過した後、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)106は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム108となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム109となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム110となり、遅延光路116に導かれる。第1及び第2の実施例では遅延光路に偏波面保存ファイバ23を用いたが、パルス幅100fsのパルスレーザ光の場合、分散によりパルス波形が大きく崩れてしまうので、光ファイバを用いることはできない。そこで、本第3の実施例では、図5に示すように、対向させたプリズムミラー112a及び112bの間でレーザ光を往復させる形態で遅延光路116を構成した。P偏光ビーム110は中心部に開口を設けたミラー111を通過させた後、対向させたプリズムミラー112a、112b、112c、及びミラー111、115間で繰り返し往復させることにより、6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光117はS偏光に変換されている。このS偏光ビーム117は、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、戻り光118として無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0052】
一方、S偏光ビーム(P2)107は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)107は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、反射S偏光ビーム119として遅延光路116に導かれる。遅延光路116からの戻り光121はP偏光に変換されている。このP偏光ビーム121は偏光ビームスプリッタ13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム122となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム123となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム124となり、偏光ビームスプリッタ13b、13aを通過して、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0053】
ここで、P偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107は繰り返し周波数50MHzのパルス直線偏光ビームであり、図6(a)に示すように、各ビームは20ns周期のパルス列106p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び107p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0054】
一方、ターゲットミラー18面においては、図6(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)106から円偏光ビーム108、109に変換されて入射するパルス列108p、109pに対し、S偏光ビーム(P2)107は6000mm程度の遅延光路116を経て20nsの時間経過後、円偏光ビーム122、123に変換されて入射するため、そのパルス列122p、123pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した形態となっている。
【0055】
更に、図6(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)106はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路116を経て戻って来るので、そのパルス列118pは、遅延光路116、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)107のパルス列124pと同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0056】
但し、上述したように、両ビームのパルス列108p、109p;122p、123pは、上記遅延光路116によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってくる両ビームのパルス列118p、124pは、上記遅延回路116によって、同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0057】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107の戻り光118、124は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第2の実施例と同様、戻り光118、124から成る合成ビーム125は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより、上記(5)式及び(6)式に示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光118、124に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光126は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(127)に変換される。P偏光成分同士の干渉光128は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(129)に変換される。2つの干渉信号127及び129は上記(5)式及び上記(6)式で与えられて単位移動量算出ユニット40に送られる。単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号127及び129を基に、上記(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号130として移動量積算ユニット42に出力される。移動量積算ユニット42では、光源ユニット290において、ビームスプリッタ103で反射したパルス直線偏光ビーム104をホトダイオード等の光電変換素子285で受光して得た繰り返し周波数50MHzのパルス信号286に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号131として干渉計ユニット50から出力される。
【0058】
図5から明らかなように、本第3の実施例では、上記第1の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差((8πnΔD/λ+π/2)、(8πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(127)及びIP(129))を生じる。
【0059】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第3の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本第3の実施例では、上記第2の実施例と同様、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0060】
本発明に係る変位計測装置及びその方法の第4の実施例について図7を用いて説明する。第4の実施例は、図7に示すように、強度変調光の生成に上記第1及び第2の実施例と同様、音響光学変調素子を用いる一方、遅延光路に上記第3の実施例と同様、対向させたプリズムミラーを用いる変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。図7に示すように、偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対し偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム62となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム63となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム64となり、遅延光路116に導かれる。本第4の実施例では、上記第3の実施例と同様、対向させたプリズムミラー112a及び112bの間でレーザ光を往復させる形態で遅延光路116を構成した。P偏光ビーム64は、レンズ141で偏波面保存ファイバ142の入射端面に集光され入射し、遅延光路116に導かれる。偏波面保存ファイバ142の出射端面から出射したP偏光ビームはレンズ143により平行光144となり、中心部に開口を設けたミラー111を通過した後、対向させたプリズムミラー112a、112b、112c、及びミラー111、115間で繰り返し往復させることにより、6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、再びレンズ143、偏波面保存ファイバ142、レンズ141を経て、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光はS偏光ビーム146に変換されている。このS偏光ビーム146は、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、戻り光147として無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0061】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、レンズ141、偏波面保存ファイバ142、レンズ143を経て遅延光路116に導かれる。レンズ143により平行光となったS偏光ビーム148は6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、再びレンズ143、偏波面保存ファイバ142、レンズ141を経て、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光はP偏光ビーム150に変換されている。レンズ141により平行光となったP偏光ビーム151は偏光ビームスプリッタ13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム152となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム153となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム154となり、該P偏光ビーム154は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aに入射して戻りS偏光ビーム147と合成され、無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0062】
以降の干渉信号から変位量を得る処理は上記第2の実施例と同様である。P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光147、154は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第1の実施例と同様、戻り光147、154から成る合成ビーム155は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光147、154に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光156は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(157)に変換される。P偏光成分同士の干渉光158は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(159)に変換される。2つの干渉信号IS(157)及びIP(159)は上記(5)式及び上記(6)式で与えられて単位移動量算出ユニット40に送られる。単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号157及び159を基に上記(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号160として移動量積算ユニット42に出力される。移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号160を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号161として干渉計ユニット50から出力される。
【0063】
図7から明らかなように、本第4の実施例では、上記第1及び第2の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0064】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第4の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本実施例では、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0065】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第5の実施例について図8を用いて説明する。第5の実施例は、図8に示すように、位相シフトさせた4つの干渉光から移動量を求める変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。また、2つのプローブ光を生成する光学系と偏波面保存ファイバ23で構成した遅延光路は、上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。2つの戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る直交偏光ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、1/2波長板171透過後、偏光方向が45°回転し、非偏光ビームスプリッタ172で2つのビームに分離される。即ち、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士は、偏光方向を45°回転させる1/2波長板171を透過することによって干渉することになる。そして、非偏光ビームスプリッタ172で反射された直交偏光ビーム173は偏光ビームスプリッタ174に入射し、互いに位相が180°(π)シフトした2つの干渉光175及び177に分離される。干渉光175はホトダイオード等の光電変換素子176で受光され、電気信号(干渉信号)Ia(179)に変換される。位相が180°シフトした干渉光177は光電変換素子178で受光され、電気信号(干渉信号)Ib(180)に変換される。非偏光ビームスプリッタ172を透過した直交偏光ビーム181は1/4波長板182透過後、±90°(±π/2)の位相差が付加されて偏光ビームスプリッタ174に入射し、更に互いに位相が180°(π)シフトした2つの干渉光183及び185に分離される。干渉光183はホトダイオード等の光電変換素子184で受光され、電気信号(干渉信号)Ic(187)に変換される。位相が180°シフトした干渉光185は光電変換素子186で受光され、電気信号(干渉信号)Id(188)に変換される。4つの干渉信号Ia(179)、Ib(180)、Ic(187)、Id(188)は各々(8)〜(11)式で与えられる。
【0066】
Ia=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ) (8)
Ib=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ) (9)
Ic=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (10)
Id=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+3π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (11)
単位移動量算出ユニット189では、(8)〜(11)式より(12)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号190として出力されて移動量積算ユニット191に送られる。
【0067】
ΔD=(λ/4πn)tan−1{(Id−Ic)/(Ia−Ib)} (12)
移動量積算ユニット191は、送られた単位移動量信号190を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号192として干渉計ユニット50から出力される。
【0068】
図8から明らかなように、本第5の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量に応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0069】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第5の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0070】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第6の実施例について図9を用いて説明する。第6の実施例は、図9に示すように、上記第5の実施例と同様、位相シフトさせた4つの干渉光から移動量を求める変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。また、2つのプローブ光を生成する光学系と偏波面保存ファイバ23で構成した遅延光路は、上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。2つの戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る直交偏光ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、ビームエキスパンダ201で拡大される。この拡大ビーム202はDOE203(Diffractive Optical Element:回折光学素子)により4つの直交偏光ビーム204、205、206、207に分割され、複屈折材料で構成された位相シフトマスク208に入射する。この位相シフトマスク208は、4つの直交偏光ビーム204〜207に対応した4つの領域208a、208b、208c、208dに分割されており、各領域を透過する互いに直交する偏光ビームの間に、0°、90°、180°、270°の位相シフトを与える。位相シフトが与えられた4つの直交偏光ビームは、更に両偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板209を透過することにより干渉する。4つの干渉光210〜213は4分割された光電変換素子214で受光され、電気信号215〜218に変換される。4つの干渉信号215〜218は、上記第7の実施例と同様、各々上記(8)〜(11)式で与えられる。単位移動量算出ユニット189では、上記(8)〜(11)式より上記(12)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号220として出力される。単位移動量信号220は移動量積算ユニット191に送られ、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号221として干渉計ユニット50から出力される。
【0071】
図9から明らかなように、本第6の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量に応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0072】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第6の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量D(20d)をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る第1の実施の形態である上記第1〜第6の実施例に示した変位計測装置をステージ位置決め制御に応用した第2の実施の形態について図10を用いて説明する。ステージ装置は、Xステージ231x上にYステージ231yが搭載され、更にその上に試料ホルダ233が搭載された構成となっている。試料ホルダ上に試料234が載置される。また、試料ホルダ233上には面精度1/20波長の棒状ミラー235x、235yが、ターゲットミラーとしてx方向及びy方向に固定されている。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施の形態の第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。強度変調光6は集光レンズ7により、カップリング素子230を介して3本の偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま3つの干渉計ユニット50a、50b、50cに伝送される。本第2の実施の形態では、干渉計ユニット50a、50b、50cの構成は、図4に示した第2の実施例における干渉計ユニット50と同一である。なお、干渉計ユニット50内の単位移動量算出ユニット40、189並びに総移動量積算ユニット42、191は、3つの干渉計ユニット50a、50b、50cで共用してもよい。
【0074】
そして、干渉計ユニット50a、50bにより、棒状ミラー235xの移動量が測定され、x方向移動量信号77a、77bとして出力され、ヨーイングと共にその平均移動量が演算ユニット240で求められ、x方向平均移動量信号77xとしてXステージ制御ユニット241xに送られる。Xステージ制御ユニット241xでは、Xステージ位置設定信号245xとx方向平均移動量信号77xとを比較し、その差分に応じたXステージ制御信号242xをXステージ231xに送り、Xステージ231xを目標位置に位置決めする。一方、干渉計ユニット50cにより、棒状ミラー235yの移動量が測定され、y方向移動量信号77yとしてYステージ制御ユニット241yに送られる。Yステージ制御ユニット241yでは、Yステージ位置設定信号245yとy方向移動量信号77yとを比較し、その差分に応じたYステージ制御信号242yをYステージ231yに送り、Yステージ231yを目標位置に位置決めする。
【0075】
図10から明らかなように、本第2の実施の形態における干渉計ユニットでは、2つのプローブ光が完全に同一の共通光路を通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第2の実施の形態の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、Xステージ231x及びYステージ231yの移動量をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能となり、試料234を高精度に位置決めすることが可能になるという効果を有する。
【0076】
勿論、本発明に係る第2の実施の形態における干渉計ユニット50a、50b、50cとしては、第1の実施の形態で説明した干渉計ユニットを適用することは可能である。
【0077】
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係る第1の実施の形態である上記第1〜第6の実施例に示した変位計測装置をプローブ顕微鏡のプローブ位置決め制御に応用した第3の実施の形態について図11を用いて説明する。プローブ顕微鏡は、プローブ制御ユニット253と、該プローブ制御ユニット253から得られるプローブ制御信号254に基づきプローブ256をxyz方向に走査するプローブ走査機構255と、該プローブ走査機構255によってxyz方向に走査されるプローブ256の位置を測定する干渉計ユニット50d、50e、50fと、周波数fでの強度変調光を各干渉計ユニット50d、50e、50fへ伝送する光源ユニット280とを備えて構成される。干渉計ユニット50d、50e、50fの構成は図1に示した第1の実施例における干渉計ユニット50と同一であるので、説明を省略する。なお、干渉計ユニット50内の単位移動量算出ユニット40、189並びに総移動量積算ユニット42、191は、3つの干渉計ユニット50d、50e、50fで共用してもよい。また、光源ユニット280についても上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0078】
ところで、強度変調光6は集光レンズ7により、カップリング素子230を介して3本の偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま3つの干渉計ユニット50d、50e、50fに伝送される。3つの干渉計ユニット50d、50e、50fでは、各々x、y、z方向のプローブ256の位置を測定し、各測定信号251x、251y、251zがプローブ制御ユニット253に送られる。プローブ制御ユニット253では、目標位置と測定信号とを比較しその差分に応じたプローブ制御信号254をプローブ走査機構255に送り、プローブ256をフィードバック制御して目標位置に位置決めする。
【0079】
勿論、本発明に係る第3の実施の形態における干渉計ユニット50d、50e、50fとしては、第1の実施の形態で説明した干渉計ユニットを適用することは可能である。
【0080】
また、第3の実施の形態では、プローブ顕微鏡として原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を示した。第3の実施の形態によれば、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動といった外乱の影響を受けることなく、測定対象である試料(ウエハ等のシリコン基板)270上に形成された微細パターン271のパターン幅271wやパターン高さ271hがサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能となる。尚、第3の実施の形態におけるプローブ顕微鏡はAFMに限定されるものではなく、STM(Scanning Tunneling Microscope)、MFM(Magnetic Force Microscope)、SCM(Scanning Capacitance Microscope)、KFM(Kelvin Force Microscope)、NSOM(Near-Field Scanning Optical Microscope)といったプローブと測定対象微小場との相互作用に基づいて測定対象の幾何学情報や、物性情報を得るプローブ顕微鏡一般に適用可能である。
【0081】
尚、第1の実施の形態では、2つのプローブ光のパルス列は、図2及び図6に示したように1パルス間隔分時間シフトさせたが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、両パルス列のシフト量は任意に設定可能である。
【0082】
以上説明したように、本発明に係る実施の形態によれば、共通光路形干渉計で構成することにより、変位計測装置を小さくすることができ、計測対象物周辺のスペースが小さい場合にも本装置の適用が可能となる。更に、本発明に係る実施の形態によれば、温度、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する必要が無いため、装置コスト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく向上するという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、対象物の変位量あるいは移動量をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することができる変位計測方法とその装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1の実施例を示す概略装置構成図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の第1、第2、第4、第5及び第6の実施例における2つのプローブ光のパルス列の時間軸上の関係を示す概略図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態において単位移動量を積算して総移動量を求める様子を示す概略図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第2の実施例を示す概略装置構成図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第3の実施例を示す概略装置構成図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の第3の実施例における2つのプローブ光のパルス列の時間軸上の関係を示す概略図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第4の実施例を示す概略装置構成図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第5の実施例を示す概略装置構成図である。
【図9】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第6の実施例を示す概略装置構成図である。
【図10】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1〜第6の実施例をステージ装置の位置決め制御に応用した第2の実施の形態を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1〜第6の実施例をプローブ顕微鏡のプローブ位置決め制御に応用した第3の実施の形態を示す概略構成図である。
【図12】従来の光干渉を用いた変位計測装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1…直線偏光レーザ、3…音響光学変調素子、4…信号発生器、7…集光レンズ、8…偏波面保存ファイバ、9…コリメーティングレンズ、11…無偏光ビームスプリッタ、13a、13b、13c、13d、13e…偏光ビームスプリッタ、14、106…P偏光ビーム(P1)、15、107…S偏光ビーム(P2)、16、31、60…1/4波長板、17…円偏光ビーム、18…ターゲットミラー、20…計測対象物、22、24…レンズ、23、142…偏波面保存ファイバ(遅延光路)、25、66、118、147…戻りS偏光ビーム、28、69、124,154…戻りP偏光ビーム、32、174…偏光ビームスプリッタ、37…プリズムミラー、34、38、176、178、184、186、214…光電変換素子、40、189…単位移動量算出ユニット、42、191…総移動量積算ユニット、50、50a、50b、50c、50d、50e、50f…干渉計ユニット、101…パルスレーザ、111、115…ミラー、112a、112b、112c…プリズムミラー、114…1/4波長板、116…遅延光路、143…レンズ、171…1/2波長板、172…非偏光ビームスプリッタ、182…1/4波長板、201…ビームエキスパンダ、203…DOE、208…位相シフトマスク、231x…Xステージ、231y…Yステージ、234…試料、240…演算ユニット、241x…Xステージ制御ユニット、241y…Yステージ制御ユニット、253…プローブ制御ユニット、255…プローブ走査機構、256…プローブ、270…シリコン基板、271…微細パターン、280、290…光源ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉を用いて計測対象物の変位を計測する方法及びその装置に係り、特にレーザ光を計測対象物に照射し、その反射光を参照光と干渉させ、得られた干渉信号から計測対象物の変位量を計測する変位計測方法及びその装置、ステージ装置並びにプローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象物の変位量あるいは移動量を計測する方法として、光干渉を用いる方法が広く知られている(Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030)。その一例を図12に示す。図12に示す干渉計において、レーザヘッド301からは、偏光方向が互いに直交し、かつ両者の光周波数が20MHz異なる2周波直交偏光ビーム302が出射される。このビームは偏光ビームスプリッタ303により、2つの偏光成分に分離される。S偏光ビーム304は偏光ビームスプリッタ303で反射された後、直角プリズム305で反射され、参照光として偏光ビームスプリッタ303に入射する。P偏光ビーム306は偏光ビームスプリッタ303を透過し、計測対象物400上に載置された直角プリズム307で反射され、偏光ビームスプリッタ303に入射する。両反射ビームは偏光ビームスプリッタ303で合成され、両反射ビームの偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板308を透過後、ヘテロダイン干渉する。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子309で受光され、電気信号310に変換される。このヘテロダイン干渉信号310の周波数fMは、計測対象物400の移動速度Vに応じたドップラーシフト周波数が加わり、(1)式で与えられる。
【0003】
fM=fB±NV/λ (1)
ここで、fB=20MHz、λはレーザ光の波長である。また、N=2、4、・・・で、光路の往復回数により決まる定数であり、図12の場合、N=2である。一方、レーザヘッド301からは、参照信号としてfB=20MHzのビート信号311が出力されている。測定されたヘテロダイン干渉信号310及び参照信号311は位相検出回路312に入力され、両信号間の位相差から計測対象物400の移動速度V及び移動量400dが求められ、移動量出力信号313として出力される。
【0004】
【非特許文献1】Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す干渉計においては、プローブ光路、即ちプローブ光であるP偏光ビーム306が通過する光路と参照光であるS偏光ビーム304が通過する参照光路とが空間的に分離しているため、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じた場合、両光路間で光路差が変動し、これがナノメートルオーダの測定誤差となってしまう。将来の45nmノードや32nmノード対応の半導体微細パターン製造用露光装置やパターン寸法測定装置用ステージ、あるいは局所的な寸法測定やキャラクタリゼーションに用いられるプローブ顕微鏡のプローブ位置計測・制御にはサブナノメートルオーダ以下の位置決め精度が要求されており、図12に示す従来技術では、この要求に応えることができない。温度、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する方法も考えられうるが、装置コスト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で計測対象物の変位量や移動量を安定に計測可能な変位計測方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、空気揺らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精度で測定用プローブの位置計測・制御を行うプローブ顕微鏡等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成手段で生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0009】
また、本発明は、前記光干渉光学系において、前記時間差をつける手段として前記第1のパルス光と前記第2のパルス光との間において光路差をつけるように構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記光干渉光学系としては、具体的には、4個以上の偏光ビームスプリッタと、遅延光路と、戻り第1のS偏光パルス光と戻り第2のP偏光パルス光とを合成して時間差の間における計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号Is、Ipを生じさせる偏光を用いた光学系とを備えて構成される。
【0011】
また、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成ステップで生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを該第2のパルス光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを該第1のパルス光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0012】
また、本発明は、前記光干渉光学系において、前記第1のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記光干渉光学系における前記時間差を、前記強度変調光生成手段における前記所定の周期と一致させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記算出手段において、前記対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記対象物の単位移動量を積分して求めるように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、所定の周期で強度変調したパルス光を生成する強度変調光生成手段と、該強度変調光生成手段で生成されたパルス光を第1のパルス光と第2のパルス光とに分離し、該分離された第1のパルス光と第2のパルス光とを該第2のパルス光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1のパルス光に基づく反射光と前記第2のパルス光に基づく反射光とを該第1のパルス光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして(同じタイミングで)合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備え、前記光干渉光学系は、前記第1のパルス光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2のパルス光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記遅延光路を通して前記合成に至るまでの光路と前記第2のパルス光における前記分離されてから前記遅延光路を通して前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする変位計測装置及びその方法である。
【0016】
また、本発明は、前記移動可能な計測対象物を設けたステージ装置において、前記変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記ステージ装置を少なくとも一軸方向に位置決め制御するように構成したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記移動可能な計測対象物を設け、プローブを少なくとも一軸方向に走査位置決めするプローブ走査機構を備えたプローブ顕微鏡において、前記変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記プローブ走査機構を少なくとも一軸方向に走査位置決め制御するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布あるいは機械振動といった外乱の影響が、第1のプローブパルス光と第2のプローブパルス光とに等しく作用するので、2つのパルス光が干渉した際に上記外乱の影響を相殺することが可能となる。この結果、上記外乱の影響を受けることなく、干渉光から対象物の変位量あるいは移動量をサブナノメートルからピコメートルの高精度で安定に計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る変位計測装置及びその方法、ステージ装置並びにプローブ顕微鏡の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置及びその方法の第1の実施例について図1を用いて説明する。本第1の実施例の変位計測装置は、図1に示すように、光源ユニット280、干渉計ユニット50から成る。図1に示すように、光源ユニット280においては、直線偏光レーザ1(例えば波長632.8nmの周波数安定化He−Neレーザ)からの直線偏光ビーム2を、音響光学変調素子3(AOM:Acousto-Optic Modulator)に入射する。音響光学変調素子3には、信号発生器4で生成された周波数fの矩形波変調信号5が入力されており、出射する1次回折光6を周波数fで強度変調する。本実施例の場合、f=50MHzとした。この強度変調光6は集光レンズ7により、偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま干渉計ユニット50に伝送される。
【0021】
偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対しP偏光ビーム(P1)とS偏光ビーム(P2)とに偏光分離できるように偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板16を通過後円偏光ビーム17となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板17を透過後S偏光ビーム21となり、偏光ビームスプリッタ13b、13c、13dで反射され、レンズ22で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射する。この偏波面保存ファイバ23は長さ6000mm程度の遅延光路を形成しており、入射したS偏光ビームは6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。このように遅延光路23は、強度変調光の周期の20nsの時間差をつけるものである。そして、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したS偏光ビーム25はレンズ24により平行光となり、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0022】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する(辿る)。いわゆるSagnac干渉計に似た構成となっている。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、レンズ24で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射し、6000mm程度の遅延光路23を通過、即ち20nsの時間経過後、干渉計ユニット50に戻って来る。そして、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したS偏光ビームはレンズ22により平行光26となり、偏光ビームスプリッタ13d、13c、13bで反射され、1/4波長板16を通過後円偏光ビーム27となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板17を透過後P偏光ビーム28となり、該P偏光ビーム28は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aにおいて同じタイミングでS偏光ビーム25と合成されて無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0023】
ここで、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は所定の周波数f=50MHzで強度変調されており、図2(a)に示すように、各ビームは20ns周期の矩形パルス列14p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び15p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0024】
一方、ターゲットミラー18面においては、図2(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)14から円偏光ビーム17に変換されて入射するパルス列17pに対し、S偏光ビーム(P2)15は6000mm程度の遅延光路23を経て20nsの時間経過後(20nsの時間差を持って)、円偏光ビーム27に変換されて入射するため、そのパルス列27pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した(1パルス周期分時間差を持った)形態となっている。
【0025】
更に、図2(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)14はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路23を経て戻って来るので、そのパルス列25pは、遅延光路23、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)15のパルス列28pと同じタイミングで(相対的に時間差を無くして)偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0026】
但し、上述したように、両ビームのパルス列17p、25pは、上記遅延光路23によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってきた両ビームのパルス列25p、28pは、上記遅延光路23によって、同じタイミングで(相対的に時間差をなくして)偏光偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0027】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る合成ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、例えば1/4波長板31を通過することにより、次の(1)式、及び(2)式で示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光33は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(35)に変換される。P偏光成分同士の干渉光36は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(39)に変換される。
【0028】
該変換された2つの干渉信号IS(35)及びIP(39)は次の(1)式及び(2)式で与えられて、単位移動量算出ユニット40に送られる。
【0029】
IS=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (1)
IP=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ−π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (2)
ここで、I1は戻り光25の検出強度、I2は戻り光28の検出強度、nは空気の屈折率、ΔDは1パルス周期、即ち20nsの間での計測対象物20の移動量、λはレーザ光1の波長である。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る干渉光学系は、偏光ビームスプリッタ13aにおいて偏光分離をするために偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている偏波面保存ファイバ8と、合成ビーム30を反射させるための無偏光ビームスプリッタ11と、例えば1パルス周期分遅延させる遅延光路23を含めて2つの光路を形成すると共に第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離し、それらの偏光光を合成するための偏光ビームスプリッタ13a〜13dと、直線偏光を例えば円偏光にする1/4波長板16と、戻り光25、28から成る合成ビーム30に対して±π/2の位相差を与える例えば1/4波長板31と、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士を干渉させる45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32と、該偏光ビームスプリッタ32で反射されたS偏光成分同士の干渉光33を受光して電気信号(干渉信号)IS(35)に変換する光電変換素子34と、上記偏光ビームスプリッタ32を透過したP偏光成分同士の干渉光36を受光して電気信号(干渉信号)IP(39)に変換する光電変換素子38とを備えて構成される。特に、本発明は、上記光干渉光学系において、偏光ビームスプリッタ13aで偏光分離された第1の偏光光14における分離されてからターゲットミラー18に照射するまでの光路と第2の偏光光15におけるターゲットミラー18から反射して偏光ビームスプリッタ13aでの合成に至るまでの光路とを同じにし、第1の偏光光14におけるターゲットミラー18から反射して遅延光路を通して偏光ビームスプリッタ13aでの合成に至るまでの光路と第2の偏光光における分離されてから上記遅延光路を通してターゲットミラー18に照射するまでの光路とを同じにしたことにより、外乱の影響が上記2つの光に等しく作用し相殺されることとなり、外乱の影響を受けることなく高精度に計測対象物20の移動量を求めることが可能となる。
【0031】
単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号IS(35)及びIP(39)を基に、次の(3)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号41として総移動量積算ユニット42に出力される。
【0032】
ΔD=(λ/4πn)sin−1{(IP−IS)/(IP+IS)} (3)
但し、I1=I2とする。
【0033】
総移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号41を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが次の(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号43として干渉計ユニット50から出力される。
【0034】
【数1】
ここで、Nは計測対象物の移動時間中に含まれる矩形波変調信号5のパルス数である。例えば、図3に示すように、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが10pm、計測対象物20の移動時間が160nsとすると、単位移動量ΔD=10pmを160nsに亘って積算することにより、総移動量D=80pmが得られ、移動量積算ユニット42から測定移動量信号43として出力される。
【0035】
図1から明らかなように、本第1の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量ΔDに応じた光位相差((4πnΔD/λ+π/2)、(4πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(35)及びIP(39))を生じる。
【0036】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路(光の経路)を互いに逆向きに通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第1の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の総移動量D(20d)をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0037】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第2の実施例について図4を用いて説明する。上記第1の実施例では、干渉計ユニット50において、第1及び第2のプローブ光はターゲットミラー18に各々1回ずつ入射・反射する構成となっていた。本発明に係る第2の実施例の変位計測装置では、2つのプローブ光はターゲットミラー18に各々2回ずつ入射・反射する、即ち同じターゲットミラー18の移動量に対して2倍の位相差が生じ、測定感度が2倍になる構成となっている点が異なる。光源ユニット280の構成と機能は第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対し偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム62となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム63となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム64となり、偏光ビームスプリッタ13c、13d、13e通過後、レンズ24で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光され入射する。この偏波面保存ファイバ23は第1の実施例と同様、長さ6000mm程度の遅延光路を形成しており、入射したP偏光ビームは6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13eに戻って来る。偏波面保存ファイバ23の出射端面は入射端面に対し90°回転しており、出射したS偏光ビーム65はレンズ22により平行光66となり、偏光ビームスプリッタ13e、13d、13aで反射され、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0039】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13d、13eで反射された後、レンズ22で偏波面保存ファイバ23の入射端面に集光されて入射し、6000mm程度の遅延光路23を通過、即ち20nsの時間経過後、干渉計ユニット50に戻って来る。偏波面保存ファイバ23の出射端面は入射端面に対し90°回転しており、偏波面保存ファイバ23の出射端面から出射したP偏光ビームはレンズ24により平行光となり、偏光ビームスプリッタ13e、13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム67となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム68となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム69となり、該P偏光ビーム69は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aにおいて同じタイミングでS偏光ビーム66と合成されて無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0040】
ここで、上記第1の実施例と同様、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は周波数f=50MHzで強度変調されており、図2(a)に示すように、各ビームは20ns周期の矩形パルス列14p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び15p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0041】
一方、ターゲットミラー18面においては、図2(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)14から円偏光ビームに変換されて入射するパルス列17pに対し、S偏光ビーム(P2)15は6000mm程度の遅延光路23を経て20nsの時間経過後(20nsの時間差を持って)、円偏光ビームに変換されて入射するため、そのパルス列27pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した(1パルス周期分時間差を持った)形態となっている。
【0042】
更に、図2(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)14はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路23を経て戻って来るので、そのパルス列25pは、遅延光路23、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)15のパルス列28pと同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0043】
但し、上述したように、両ビームのパルス列17p、27pは、上記遅延光路23によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってくる両ビームのパルス列25p、28pは、上記遅延回路23によって、同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0044】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光66、69は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第1の実施例と同様、戻り光66、69から成る合成ビーム70は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより、次の(5)式及び(6)式に示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光66、69に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光72は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(73)に変換される。P偏光成分同士の干渉光74は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(75)に変換される。2つの干渉信号IS(73)及びIP(75)は次の(5)式及び(6)式で与えられて、単位移動量算出ユニット40に送られる。
【0045】
IS=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(8πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(8πnΔD/λ) (5)
IP=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(8πnΔD/λ−π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(8πnΔD/λ) (6)
ここで、I1は戻り光66の検出強度、I2は戻り光69の検出強度、nは空気の屈折率、ΔDは1パルス周期、即ち20nsの間での計測対象物20の単位移動量20d、λはレーザ光1の波長である。
【0046】
単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号IS(73)及びIP(75)を基に、次の(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号76として移動量積算ユニット42に出力される。
【0047】
ΔD=(λ/8πn)sin−1{(IP−IS)/(IP+IS)} (7)
但し、I1=I2とする。
【0048】
移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号76を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号77として干渉計ユニット50から出力される。
【0049】
図4から明らかなように、本第2の実施例では、上記第1の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差((8πnΔD/λ+π/2)、(8πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(73)及びIP(75))を生じる。
【0050】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路(光の経路)を互いに逆向きに通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第2の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本第2の実施例では、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0051】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第3の実施例について図5を用いて説明する。第3の実施例は、図5に示すように、強度変調光の生成にパルスレーザを用いる変位計測装置である。即ち、光源ユニット290において波長780nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数50MHzのパルスレーザ101からのパルス直線偏光ビーム102を透過率:反射率=96:4のビームスプリッタ103により2つのビームに分離する。透過したパルス直線偏光ビーム105を、偏光光軸を45°回転させた状態で干渉計ユニット50の無偏光ビームスプリッタ11に入射する。45°方向の直線偏光ビーム105は無偏光ビームスプリッタ11を通過した後、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)106は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム108となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム109となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム110となり、遅延光路116に導かれる。第1及び第2の実施例では遅延光路に偏波面保存ファイバ23を用いたが、パルス幅100fsのパルスレーザ光の場合、分散によりパルス波形が大きく崩れてしまうので、光ファイバを用いることはできない。そこで、本第3の実施例では、図5に示すように、対向させたプリズムミラー112a及び112bの間でレーザ光を往復させる形態で遅延光路116を構成した。P偏光ビーム110は中心部に開口を設けたミラー111を通過させた後、対向させたプリズムミラー112a、112b、112c、及びミラー111、115間で繰り返し往復させることにより、6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光117はS偏光に変換されている。このS偏光ビーム117は、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、戻り光118として無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0052】
一方、S偏光ビーム(P2)107は、上記と全く同じ光路(光の経路)を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)107は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、反射S偏光ビーム119として遅延光路116に導かれる。遅延光路116からの戻り光121はP偏光に変換されている。このP偏光ビーム121は偏光ビームスプリッタ13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム122となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム123となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム124となり、偏光ビームスプリッタ13b、13aを通過して、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0053】
ここで、P偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107は繰り返し周波数50MHzのパルス直線偏光ビームであり、図6(a)に示すように、各ビームは20ns周期のパルス列106p(P10、P11、P12、P13、P14・・・・)及び107p(P20、P21、P22、P23、P24・・・・)で構成されており、両パルス列は同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。
【0054】
一方、ターゲットミラー18面においては、図6(b)に示すように、P偏光ビーム(P1)106から円偏光ビーム108、109に変換されて入射するパルス列108p、109pに対し、S偏光ビーム(P2)107は6000mm程度の遅延光路116を経て20nsの時間経過後、円偏光ビーム122、123に変換されて入射するため、そのパルス列122p、123pは、20ns、即ち1パルス周期分遅延した形態となっている。
【0055】
更に、図6(c)に示すように、P偏光ビーム(P1)106はターゲットミラー18で反射した後、6000mm程度の遅延光路116を経て戻って来るので、そのパルス列118pは、遅延光路116、ターゲットミラー18の順で戻って来るS偏光ビーム(P2)107のパルス列124pと同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射する。即ち、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107は、全く同じ光路(光の経路)を互いに逆向きに伝播して(通過して)、再び偏光ビームスプリッタ13aに戻って来て合成される。
【0056】
但し、上述したように、両ビームのパルス列108p、109p;122p、123pは、上記遅延光路116によって、移動するターゲットミラー18面に対して、20ns、即ち1パルス分の時間差を伴って入射することになる。そして、逆に戻ってくる両ビームのパルス列118p、124pは、上記遅延回路116によって、同じタイミングで偏光ビームスプリッタ13aに入射することになる。
【0057】
更に、上記で説明した通り、P偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107の戻り光118、124は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第2の実施例と同様、戻り光118、124から成る合成ビーム125は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより、上記(5)式及び(6)式に示すように、±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光118、124に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光126は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(127)に変換される。P偏光成分同士の干渉光128は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(129)に変換される。2つの干渉信号127及び129は上記(5)式及び上記(6)式で与えられて単位移動量算出ユニット40に送られる。単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号127及び129を基に、上記(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号130として移動量積算ユニット42に出力される。移動量積算ユニット42では、光源ユニット290において、ビームスプリッタ103で反射したパルス直線偏光ビーム104をホトダイオード等の光電変換素子285で受光して得た繰り返し周波数50MHzのパルス信号286に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号131として干渉計ユニット50から出力される。
【0058】
図5から明らかなように、本第3の実施例では、上記第1の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)106とS偏光ビーム(P2)107が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差((8πnΔD/λ+π/2)、(8πnΔD/λ−π/2))に基づく2つの干渉信号(IS(127)及びIP(129))を生じる。
【0059】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第3の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本第3の実施例では、上記第2の実施例と同様、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0060】
本発明に係る変位計測装置及びその方法の第4の実施例について図7を用いて説明する。第4の実施例は、図7に示すように、強度変調光の生成に上記第1及び第2の実施例と同様、音響光学変調素子を用いる一方、遅延光路に上記第3の実施例と同様、対向させたプリズムミラーを用いる変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。図7に示すように、偏波面保存ファイバ8は、干渉計ユニット50に対し偏光光軸を45°回転させた状態で装着されている。偏波面保存ファイバ8の出射端面から出射した直線偏光ビームはコリメーティングレンズ9により平行光10となり、無偏光ビームスプリッタ11に入射する。無偏光ビームスプリッタ11を通過した45°方向の直線偏光ビーム12は、偏光ビームスプリッタ13aによりP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15に、偏光分離される。P偏光ビーム(P1)14は偏光ビームスプリッタ13b及び1/4波長板60を通過後円偏光ビーム62となり、第1のプローブ光として計測対象物20上に載置されたターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13b、13cで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム63となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム64となり、遅延光路116に導かれる。本第4の実施例では、上記第3の実施例と同様、対向させたプリズムミラー112a及び112bの間でレーザ光を往復させる形態で遅延光路116を構成した。P偏光ビーム64は、レンズ141で偏波面保存ファイバ142の入射端面に集光され入射し、遅延光路116に導かれる。偏波面保存ファイバ142の出射端面から出射したP偏光ビームはレンズ143により平行光144となり、中心部に開口を設けたミラー111を通過した後、対向させたプリズムミラー112a、112b、112c、及びミラー111、115間で繰り返し往復させることにより、6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、再びレンズ143、偏波面保存ファイバ142、レンズ141を経て、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光はS偏光ビーム146に変換されている。このS偏光ビーム146は、偏光ビームスプリッタ13d、13aで反射され、戻り光147として無偏光ビームスプリッタ11に入射する。
【0061】
一方、S偏光ビーム(P2)15は、上記と全く同じ光路を逆向きに通過する。即ち、S偏光ビーム(P2)15は偏光ビームスプリッタ13dで反射された後、レンズ141、偏波面保存ファイバ142、レンズ143を経て遅延光路116に導かれる。レンズ143により平行光となったS偏光ビーム148は6000mm程度の距離を通過、即ち20nsの時間経過後、再びレンズ143、偏波面保存ファイバ142、レンズ141を経て、偏光ビームスプリッタ13dに戻って来る。尚、遅延光路中の1/4波長板114を往復することにより、戻り光はP偏光ビーム150に変換されている。レンズ141により平行光となったP偏光ビーム151は偏光ビームスプリッタ13d、13cを通過して1/4波長板60を通過後円偏光ビーム152となり、第2のプローブ光としてターゲットミラー18に入射し、反射され、再び1/4波長板60を透過後S偏光ビームとなり、偏光ビームスプリッタ13c、13bで反射され、1/4波長板60を通過後円偏光ビーム153となりターゲットミラー18に再度入射し、反射され、1/4波長板60を透過後P偏光ビーム154となり、該P偏光ビーム154は偏光ビームスプリッタ13bを通過して偏光ビームスプリッタ13aに入射して戻りS偏光ビーム147と合成され、無偏光ビームスプリッタ11に入射される。
【0062】
以降の干渉信号から変位量を得る処理は上記第2の実施例と同様である。P偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15の戻り光147、154は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。上記第1の実施例と同様、戻り光147、154から成る合成ビーム155は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後1/4波長板31を通過することにより±π/2の位相差が与えられ、更に45°に傾けられた偏光ビームスプリッタ32により、戻り光147、154に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士が干渉する。S偏光成分同士の干渉光156は偏光ビームスプリッタ32で反射され、ホトダイオード等の光電変換素子34で受光され、電気信号(干渉信号)IS(157)に変換される。P偏光成分同士の干渉光158は偏光ビームスプリッタ32を透過後、プリズムミラー37で反射されホトダイオード等の光電変換素子38で受光され、電気信号(干渉信号)IP(159)に変換される。2つの干渉信号IS(157)及びIP(159)は上記(5)式及び上記(6)式で与えられて単位移動量算出ユニット40に送られる。単位移動量算出ユニット40は、送られた2つの干渉信号157及び159を基に上記(7)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号160として移動量積算ユニット42に出力される。移動量積算ユニット42は、送られた単位移動量信号160を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号161として干渉計ユニット50から出力される。
【0063】
図7から明らかなように、本第4の実施例では、上記第1及び第2の実施例と同様、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して(通過して)、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の単位移動量ΔDに応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0064】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第4の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。更に、本実施例では、2つのプローブ光が各々2回ずつターゲットミラー18に入射するので、上記(5)式及び上記(6)式に示すように、同じ単位移動量ΔDに対し光位相差は2倍となり、測定感度が2倍になるという効果を有する。
【0065】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第5の実施例について図8を用いて説明する。第5の実施例は、図8に示すように、位相シフトさせた4つの干渉光から移動量を求める変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。また、2つのプローブ光を生成する光学系と偏波面保存ファイバ23で構成した遅延光路は、上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。2つの戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る直交偏光ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、1/2波長板171透過後、偏光方向が45°回転し、非偏光ビームスプリッタ172で2つのビームに分離される。即ち、戻り光25、28に含まれるS偏光成分同士、及びP偏光成分同士は、偏光方向を45°回転させる1/2波長板171を透過することによって干渉することになる。そして、非偏光ビームスプリッタ172で反射された直交偏光ビーム173は偏光ビームスプリッタ174に入射し、互いに位相が180°(π)シフトした2つの干渉光175及び177に分離される。干渉光175はホトダイオード等の光電変換素子176で受光され、電気信号(干渉信号)Ia(179)に変換される。位相が180°シフトした干渉光177は光電変換素子178で受光され、電気信号(干渉信号)Ib(180)に変換される。非偏光ビームスプリッタ172を透過した直交偏光ビーム181は1/4波長板182透過後、±90°(±π/2)の位相差が付加されて偏光ビームスプリッタ174に入射し、更に互いに位相が180°(π)シフトした2つの干渉光183及び185に分離される。干渉光183はホトダイオード等の光電変換素子184で受光され、電気信号(干渉信号)Ic(187)に変換される。位相が180°シフトした干渉光185は光電変換素子186で受光され、電気信号(干渉信号)Id(188)に変換される。4つの干渉信号Ia(179)、Ib(180)、Ic(187)、Id(188)は各々(8)〜(11)式で与えられる。
【0066】
Ia=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ) (8)
Ib=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ) (9)
Ic=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+π/2)
=I1+I2−2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (10)
Id=I1+I2+2(I1・I2)1/2cos(4πnΔD/λ+3π/2)
=I1+I2+2(I1・I2)1/2sin(4πnΔD/λ) (11)
単位移動量算出ユニット189では、(8)〜(11)式より(12)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号190として出力されて移動量積算ユニット191に送られる。
【0067】
ΔD=(λ/4πn)tan−1{(Id−Ic)/(Ia−Ib)} (12)
移動量積算ユニット191は、送られた単位移動量信号190を基に、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号192として干渉計ユニット50から出力される。
【0068】
図8から明らかなように、本第5の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量に応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0069】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第5の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量20dをサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0070】
次に、本発明に係る変位計測装置及びその方法の第6の実施例について図9を用いて説明する。第6の実施例は、図9に示すように、上記第5の実施例と同様、位相シフトさせた4つの干渉光から移動量を求める変位計測装置である。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。また、2つのプローブ光を生成する光学系と偏波面保存ファイバ23で構成した遅延光路は、上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。2つの戻り光25、28は、各々S偏光及びP偏光であり、そのままでは両者は干渉しない。戻り光25、28から成る直交偏光ビーム30は、無偏光ビームスプリッタ11で反射された後、ビームエキスパンダ201で拡大される。この拡大ビーム202はDOE203(Diffractive Optical Element:回折光学素子)により4つの直交偏光ビーム204、205、206、207に分割され、複屈折材料で構成された位相シフトマスク208に入射する。この位相シフトマスク208は、4つの直交偏光ビーム204〜207に対応した4つの領域208a、208b、208c、208dに分割されており、各領域を透過する互いに直交する偏光ビームの間に、0°、90°、180°、270°の位相シフトを与える。位相シフトが与えられた4つの直交偏光ビームは、更に両偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板209を透過することにより干渉する。4つの干渉光210〜213は4分割された光電変換素子214で受光され、電気信号215〜218に変換される。4つの干渉信号215〜218は、上記第7の実施例と同様、各々上記(8)〜(11)式で与えられる。単位移動量算出ユニット189では、上記(8)〜(11)式より上記(12)式に基づいて、単位時間、即ち1パルス周期=20nsあたりの計測対象物20の単位移動量ΔDが算出されて、単位移動量信号220として出力される。単位移動量信号220は移動量積算ユニット191に送られ、周波数f=50MHzの矩形波変調信号5に基づいて、1パルス周期=20ns毎の単位移動量ΔDが上記(4)式に基づいて逐次積算され、計測対象物20の総移動量D(20d)が求められ、総移動量信号221として干渉計ユニット50から出力される。
【0071】
図9から明らかなように、本第6の実施例では、偏光ビームスプリッタ13aで分離されたP偏光ビーム(P1)14とS偏光ビーム(P2)15が、2つのプローブ光として全く同じ光路を互いに逆向きに伝播して、1パルス分の時間差で異なる時刻にターゲットミラー18面に入射した後、再び偏光ビームスプリッタ13aに同じ時刻に戻って来て合成され、上記時間差の間のターゲットミラー18の移動量に応じた光位相差に基づく干渉信号を生じる。
【0072】
以上説明したように、2つのプローブ光は完全に同一の共通光路を互いに逆方向に通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第6の実施例の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、計測対象物20の移動量D(20d)をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る第1の実施の形態である上記第1〜第6の実施例に示した変位計測装置をステージ位置決め制御に応用した第2の実施の形態について図10を用いて説明する。ステージ装置は、Xステージ231x上にYステージ231yが搭載され、更にその上に試料ホルダ233が搭載された構成となっている。試料ホルダ上に試料234が載置される。また、試料ホルダ233上には面精度1/20波長の棒状ミラー235x、235yが、ターゲットミラーとしてx方向及びy方向に固定されている。光源ユニット280の構成と機能は上記第1の実施の形態の第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。強度変調光6は集光レンズ7により、カップリング素子230を介して3本の偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま3つの干渉計ユニット50a、50b、50cに伝送される。本第2の実施の形態では、干渉計ユニット50a、50b、50cの構成は、図4に示した第2の実施例における干渉計ユニット50と同一である。なお、干渉計ユニット50内の単位移動量算出ユニット40、189並びに総移動量積算ユニット42、191は、3つの干渉計ユニット50a、50b、50cで共用してもよい。
【0074】
そして、干渉計ユニット50a、50bにより、棒状ミラー235xの移動量が測定され、x方向移動量信号77a、77bとして出力され、ヨーイングと共にその平均移動量が演算ユニット240で求められ、x方向平均移動量信号77xとしてXステージ制御ユニット241xに送られる。Xステージ制御ユニット241xでは、Xステージ位置設定信号245xとx方向平均移動量信号77xとを比較し、その差分に応じたXステージ制御信号242xをXステージ231xに送り、Xステージ231xを目標位置に位置決めする。一方、干渉計ユニット50cにより、棒状ミラー235yの移動量が測定され、y方向移動量信号77yとしてYステージ制御ユニット241yに送られる。Yステージ制御ユニット241yでは、Yステージ位置設定信号245yとy方向移動量信号77yとを比較し、その差分に応じたYステージ制御信号242yをYステージ231yに送り、Yステージ231yを目標位置に位置決めする。
【0075】
図10から明らかなように、本第2の実施の形態における干渉計ユニットでは、2つのプローブ光が完全に同一の共通光路を通るため、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。従って、本第2の実施の形態の干渉計の構成によれば、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、Xステージ231x及びYステージ231yの移動量をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能となり、試料234を高精度に位置決めすることが可能になるという効果を有する。
【0076】
勿論、本発明に係る第2の実施の形態における干渉計ユニット50a、50b、50cとしては、第1の実施の形態で説明した干渉計ユニットを適用することは可能である。
【0077】
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係る第1の実施の形態である上記第1〜第6の実施例に示した変位計測装置をプローブ顕微鏡のプローブ位置決め制御に応用した第3の実施の形態について図11を用いて説明する。プローブ顕微鏡は、プローブ制御ユニット253と、該プローブ制御ユニット253から得られるプローブ制御信号254に基づきプローブ256をxyz方向に走査するプローブ走査機構255と、該プローブ走査機構255によってxyz方向に走査されるプローブ256の位置を測定する干渉計ユニット50d、50e、50fと、周波数fでの強度変調光を各干渉計ユニット50d、50e、50fへ伝送する光源ユニット280とを備えて構成される。干渉計ユニット50d、50e、50fの構成は図1に示した第1の実施例における干渉計ユニット50と同一であるので、説明を省略する。なお、干渉計ユニット50内の単位移動量算出ユニット40、189並びに総移動量積算ユニット42、191は、3つの干渉計ユニット50d、50e、50fで共用してもよい。また、光源ユニット280についても上記第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0078】
ところで、強度変調光6は集光レンズ7により、カップリング素子230を介して3本の偏波面保存ファイバ8の入射端面に集光され、直線偏光を維持したまま3つの干渉計ユニット50d、50e、50fに伝送される。3つの干渉計ユニット50d、50e、50fでは、各々x、y、z方向のプローブ256の位置を測定し、各測定信号251x、251y、251zがプローブ制御ユニット253に送られる。プローブ制御ユニット253では、目標位置と測定信号とを比較しその差分に応じたプローブ制御信号254をプローブ走査機構255に送り、プローブ256をフィードバック制御して目標位置に位置決めする。
【0079】
勿論、本発明に係る第3の実施の形態における干渉計ユニット50d、50e、50fとしては、第1の実施の形態で説明した干渉計ユニットを適用することは可能である。
【0080】
また、第3の実施の形態では、プローブ顕微鏡として原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を示した。第3の実施の形態によれば、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動といった外乱の影響を受けることなく、測定対象である試料(ウエハ等のシリコン基板)270上に形成された微細パターン271のパターン幅271wやパターン高さ271hがサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能となる。尚、第3の実施の形態におけるプローブ顕微鏡はAFMに限定されるものではなく、STM(Scanning Tunneling Microscope)、MFM(Magnetic Force Microscope)、SCM(Scanning Capacitance Microscope)、KFM(Kelvin Force Microscope)、NSOM(Near-Field Scanning Optical Microscope)といったプローブと測定対象微小場との相互作用に基づいて測定対象の幾何学情報や、物性情報を得るプローブ顕微鏡一般に適用可能である。
【0081】
尚、第1の実施の形態では、2つのプローブ光のパルス列は、図2及び図6に示したように1パルス間隔分時間シフトさせたが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、両パルス列のシフト量は任意に設定可能である。
【0082】
以上説明したように、本発明に係る実施の形態によれば、共通光路形干渉計で構成することにより、変位計測装置を小さくすることができ、計測対象物周辺のスペースが小さい場合にも本装置の適用が可能となる。更に、本発明に係る実施の形態によれば、温度、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する必要が無いため、装置コスト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく向上するという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、対象物の変位量あるいは移動量をサブナノメートルからピコメートルの精度で安定に計測することができる変位計測方法とその装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1の実施例を示す概略装置構成図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の第1、第2、第4、第5及び第6の実施例における2つのプローブ光のパルス列の時間軸上の関係を示す概略図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態において単位移動量を積算して総移動量を求める様子を示す概略図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第2の実施例を示す概略装置構成図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第3の実施例を示す概略装置構成図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の第3の実施例における2つのプローブ光のパルス列の時間軸上の関係を示す概略図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第4の実施例を示す概略装置構成図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第5の実施例を示す概略装置構成図である。
【図9】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第6の実施例を示す概略装置構成図である。
【図10】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1〜第6の実施例をステージ装置の位置決め制御に応用した第2の実施の形態を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態である変位計測装置の第1〜第6の実施例をプローブ顕微鏡のプローブ位置決め制御に応用した第3の実施の形態を示す概略構成図である。
【図12】従来の光干渉を用いた変位計測装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1…直線偏光レーザ、3…音響光学変調素子、4…信号発生器、7…集光レンズ、8…偏波面保存ファイバ、9…コリメーティングレンズ、11…無偏光ビームスプリッタ、13a、13b、13c、13d、13e…偏光ビームスプリッタ、14、106…P偏光ビーム(P1)、15、107…S偏光ビーム(P2)、16、31、60…1/4波長板、17…円偏光ビーム、18…ターゲットミラー、20…計測対象物、22、24…レンズ、23、142…偏波面保存ファイバ(遅延光路)、25、66、118、147…戻りS偏光ビーム、28、69、124,154…戻りP偏光ビーム、32、174…偏光ビームスプリッタ、37…プリズムミラー、34、38、176、178、184、186、214…光電変換素子、40、189…単位移動量算出ユニット、42、191…総移動量積算ユニット、50、50a、50b、50c、50d、50e、50f…干渉計ユニット、101…パルスレーザ、111、115…ミラー、112a、112b、112c…プリズムミラー、114…1/4波長板、116…遅延光路、143…レンズ、171…1/2波長板、172…非偏光ビームスプリッタ、182…1/4波長板、201…ビームエキスパンダ、203…DOE、208…位相シフトマスク、231x…Xステージ、231y…Yステージ、234…試料、240…演算ユニット、241x…Xステージ制御ユニット、241y…Yステージ制御ユニット、253…プローブ制御ユニット、255…プローブ走査機構、256…プローブ、270…シリコン基板、271…微細パターン、280、290…光源ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成ステップと、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉ステップと、
該光干渉ステップで生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出ステップとを有することを特徴とする変位計測方法。
【請求項2】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成ステップと、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉ステップと、
該光干渉ステップで生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出ステップとを有することを特徴とする変位計測方法。
【請求項3】
前記光干渉ステップにおいて、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じにし、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項4】
前記強度変調光生成ステップは、前記所定の周期で強度変調した光を音響光学変調素子を用いて生成することを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項5】
前記強度変調光生成ステップは、前記所定の周期で強度変調した光をパルスレーザを用いて生成することを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項6】
前記光干渉ステップにおける前記時間差を、前記強度変調光生成ステップにおける前記所定の周期と一致させることを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項7】
前記算出ステップにおいて、前記計測対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記計測対象物の単位移動量を積分して求めることを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項8】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成手段で生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置。
【請求項9】
前記光干渉光学系において、前記時間差をつける手段として前記第1の光と前記第2の光との間において光路差をつけるように構成したことを特徴とする請求項8記載の変位計測装置。
【請求項10】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置。
【請求項11】
前記光干渉光学系において、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項12】
前記強度変調光生成手段は、前記強度変調した光を音響光学変調素子を用いて生成するように構成することを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項13】
前記強度変調光生成手段は、前記所定の周期で強度変調した光をパルスレーザを用いて生成するように構成することを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項14】
前記光干渉光学系における前記時間差を、前記強度変調光生成手段における前記所定の周期と一致させることを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項15】
前記算出手段において、前記計測対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記計測対象物の単位移動量を積分して求めるように構成したことを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項16】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備え、
前記光干渉光学系は、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記遅延光路を通して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記遅延光路を通して前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする変位計測装置。
【請求項17】
前記移動可能な計測対象物を設けたステージ装置において、
請求項8乃至16の何れか一つに記載の変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記ステージ装置を少なくとも一軸方向に位置決め制御するように構成したことを特徴とするステージ装置。
【請求項18】
前記移動可能な計測対象物を設け、プローブを少なくとも一軸方向に走査位置決めするプローブ走査機構を備えたプローブ顕微鏡において、
請求項8乃至16の何れか一つに記載の変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記プローブ走査機構を少なくとも一軸方向に走査位置決め制御するように構成したことを特徴とするプローブ顕微鏡。
【請求項1】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成ステップと、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉ステップと、
該光干渉ステップで生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出ステップとを有することを特徴とする変位計測方法。
【請求項2】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成ステップと、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉ステップと、
該光干渉ステップで生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出ステップとを有することを特徴とする変位計測方法。
【請求項3】
前記光干渉ステップにおいて、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じにし、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項4】
前記強度変調光生成ステップは、前記所定の周期で強度変調した光を音響光学変調素子を用いて生成することを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項5】
前記強度変調光生成ステップは、前記所定の周期で強度変調した光をパルスレーザを用いて生成することを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項6】
前記光干渉ステップにおける前記時間差を、前記強度変調光生成ステップにおける前記所定の周期と一致させることを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項7】
前記算出ステップにおいて、前記計測対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記計測対象物の単位移動量を積分して求めることを特徴とする請求項1又は2記載の変位計測方法。
【請求項8】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成手段で生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置。
【請求項9】
前記光干渉光学系において、前記時間差をつける手段として前記第1の光と前記第2の光との間において光路差をつけるように構成したことを特徴とする請求項8記載の変位計測装置。
【請求項10】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする変位計測装置。
【請求項11】
前記光干渉光学系において、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項12】
前記強度変調光生成手段は、前記強度変調した光を音響光学変調素子を用いて生成するように構成することを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項13】
前記強度変調光生成手段は、前記所定の周期で強度変調した光をパルスレーザを用いて生成するように構成することを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項14】
前記光干渉光学系における前記時間差を、前記強度変調光生成手段における前記所定の周期と一致させることを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項15】
前記算出手段において、前記計測対象物の総移動量は、前記時間差の間の前記計測対象物の単位移動量を積分して求めるように構成したことを特徴とする請求項8又は10記載の変位計測装置。
【請求項16】
所定の周期で強度変調した光を生成する強度変調光生成手段と、
該強度変調光生成ステップで生成された光を第1の光と第2の光とに分離し、該分離された第1の光と第2の光とを該第2の光を遅延光路を通すことによって相対的に時間差をつけて移動可能な計測対象物に設けられたターゲットミラーに照射し、該照射されたターゲットミラーから得られる前記第1の光に基づく反射光と前記第2の光に基づく反射光とを該第1の光に基づく反射光を前記遅延光路を通すことによって相対的に前記時間差を無くして合成して前記時間差の間における前記計測対象物の単位移動量に応じた光位相差に基づいて干渉させて複数の干渉光信号を生じさせる光干渉光学系と、
該光干渉光学系で生じさせた複数の干渉光信号に基づいて前記計測対象物の単位移動量を算出する算出手段とを備え、
前記光干渉光学系は、前記第1の光における前記分離されてから前記ターゲットミラーに照射するまでの光路と前記第2の光における前記ターゲットミラーから反射して前記合成に至るまでの光路とを同じに構成し、前記第1の光における前記ターゲットミラーから反射して前記遅延光路を通して前記合成に至るまでの光路と前記第2の光における前記分離されてから前記遅延光路を通して前記ターゲットミラーに照射するまでの光路とを同じに構成したことを特徴とする変位計測装置。
【請求項17】
前記移動可能な計測対象物を設けたステージ装置において、
請求項8乃至16の何れか一つに記載の変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記ステージ装置を少なくとも一軸方向に位置決め制御するように構成したことを特徴とするステージ装置。
【請求項18】
前記移動可能な計測対象物を設け、プローブを少なくとも一軸方向に走査位置決めするプローブ走査機構を備えたプローブ顕微鏡において、
請求項8乃至16の何れか一つに記載の変位計測装置を備え、前記算出手段で算出された前記計測対象物の単位移動量に基づいて前記プローブ走査機構を少なくとも一軸方向に走査位置決め制御するように構成したことを特徴とするプローブ顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−51900(P2007−51900A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236292(P2005−236292)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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