説明

対象物特定装置

【課題】 ユーザの手や指が指し示している方向に存在する対象物を正確に特定する対象物特定装置を提供する。
【解決手段】 測位部13は、車両の現在位置および車両の方位を検出する。撮像部18は、車両の周囲を撮像する。指差し方向検知部16は、車両内のユーザが自身の手を用いて指し示した指示方向を検知する。対象物抽出部は、指差し方向検知部16が検知した指示方向に存在する対象物を撮像部18が撮像した画像内から抽出する。対象物位置特定部は、車両に対して、対象物抽出部が抽出した対象物の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物特定装置に関し、より特定的には、ユーザの手または指が指し示している方向に基づいて、車両周辺の対象物を特定する対象物特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(ハードディスクドライブ)やDVD(デジタルヴァーサタイルディスク)等の記録媒体に地図情報と共に記憶された車両周辺の情報を、ディスプレイ上で閲覧可能なカーナビゲーション装置が広く普及している。
【0003】
一方、ディスプレイ上の地図に表示されている情報からだけではなく、運転者等の搭乗者が手や指で指し示している指示方向に存在する地図上の地名や施設名を音声にて読上げて、ディスプレイ上に表示するナビゲーション装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、搭乗者が目に付いた建物や湖等の名称や周囲の地名等の情報を、当該搭乗者の手や指で指し示すことで迅速に入手することができる。
【特許文献1】特開2003−106861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているナビゲーション装置は、搭乗者の手や指で指し示している指示方向に存在する対象物までの距離を算出するにあたり、当該指示方向の仰角を用いて対象物までの距離を4段階に分けて対応付けして算出している。したがって、地図情報記憶部にある地図情報からある程度の広範囲を対象にして上記指示方向に存在する対象物を特定する必要があり、対象物特定の精度に課題を残している。また、車両周辺に関する情報だけでなく相対的に遠方にあり、搭乗者が視認困難な距離に存在する対象物(例えば、遠方の標識や看板)を高精度に特定することはできなかった。
【0005】
それ故に、本発明の目的は、ユーザの手や指が指し示している方向に存在する対象物を正確に特定する対象物特定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、車両周辺の対象物の位置を特定する対象物特定装置である。対象物特定装置は、測位部、撮像部、指差し方向検知部、対象物抽出部、および対象物位置特定部を備える。測位部は、車両の現在位置および車両の方位を検出する。撮像部は、車両の周囲を撮像する。指差し方向検知部は、車両内のユーザが自身の手を用いて指し示した指示方向を検知する。対象物抽出部は、指差し方向検知部が検知した指示方向に存在する対象物を撮像部が撮像した画像内から抽出する。対象物位置特定部は、車両に対して、対象物抽出部が抽出した対象物の位置を特定する。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、撮像部は、車両に設置された少なくとも1つのカメラで構成される。対象物特定装置は、座標変換部を、さらに備える。座標変換部は、指差し方向検知部が検知した指示方向をカメラの撮像方向を基準とするカメラ座標系における指示方向に変換する。対象物抽出部は、撮像部が撮像した画像内から座標変換部が変換した指示方向に撮像された被撮像物を対象物として抽出する。
【0008】
第3の発明は、上記第2の発明において、撮像部は、平行等位に車両に設置された複数のカメラで構成される。対象物抽出部は、一方のカメラが撮像した画像から指示方向に撮像された所定サイズの領域を抽出し、その領域の画像と他方のカメラが撮像した画像とのマッチングによってその指示方向に撮像された被撮像物を対象物として抽出する。対象物位置特定部は、複数のカメラが対象物をそれぞれ撮像している方向に基づいて、車両に対する対象物の位置を算出する。
【0009】
第4の発明は、上記第3の発明において、対象物抽出部は、指示方向が時系列的に変化することによってその指示方向に囲まれた空間内に撮像された画像を領域の画像として抽出する。
【0010】
第5の発明は、上記第2の発明において、撮像部は、車両に設置された単一のカメラで構成される。対象物特定装置は、地図情報記憶部を、さらに備える。地図情報記憶部は、少なくとも車両の現在位置付近の3次元地図を格納する。対象物抽出部は、カメラが撮像した画像から指示方向に撮像された被撮像物の輪郭を対象物の輪郭として抽出する。対象物位置特定部は、3次元地図から対象物抽出部が抽出した輪郭と一致する形状のオブジェクトの位置をその3次元地図上で特定して、車両に対する対象物の位置を算出する。
【0011】
第6の発明は、上記第1の発明において、表示部、ポインタ座標決定部、および表示制御部を、さらに備える。表示部は、車両に備えられた少なくとも1つのガラスを表示領域にして画像を投影する。ポインタ座標決定部は、指差し方向検知部が検知した指示方向と表示領域が設定されたガラスとの交点座標を決定する。表示制御部は、ポインタ座標決定部が決定した交点座標上の表示領域にポインタ画像を表示制御する。
【0012】
第7の発明は、上記第1の発明において、表示部、視線検知部、ポインタ座標決定部、および表示制御部を、さらに備える。表示部は、車両に備えられた少なくとも1つのガラスを表示領域にして画像を投影する。視線検知部は、車両内のユーザの視線方向を検知する。ポインタ座標決定部は、対象物位置特定部が特定した対象物の位置とユーザの視線とを結ぶ直線と表示領域が設定されたガラスとの交点座標を決定する。表示制御部は、ポインタ座標決定部が決定した交点座標上の表示領域にポインタ画像を表示制御する。
【0013】
第8の発明は、上記第6または第7の発明において、調整部を、さらに備える。調整部は、ポインタ座標決定部が決定する交点座標をユーザからの指示に応じて調整する。
【0014】
第9の発明は、上記第1の発明において、撮像部は、車両に設置された複数のカメラで構成される。対象物特定装置は、表示部および選択部を、さらに備える。表示部は、車両内に設置される。選択部は、指差し方向検知部が検知した指示方向に応じて、複数のカメラから出力される画像から何れか1つの画像を選択して表示部に表示する。
【0015】
第10の発明は、上記第9の発明において、撮像制御部を、さらに備える。撮像制御部は、対象物位置特定部が特定した対象物が画像の中心に撮像されるように、選択部が選択した画像を撮像するカメラの撮像方向を制御する。
【0016】
第11の発明は、上記第9の発明において、撮像制御部を、さらに備える。撮像制御部は、対象物位置特定部が特定した対象物が画像の中心で拡大または縮小して撮像されるように、選択部が選択した画像を撮像するカメラの撮像倍率を制御する。
【0017】
第12の発明は、上記第1の発明において、地図情報記憶部および情報出力部を、さらに備える。地図情報記憶部は、少なくとも車両の現在位置付近の地図情報およびその地図で表される各領域に対する情報を格納する。情報出力部は、対象物位置特定部が特定した対象物に関する情報を地図情報記憶部に格納されている情報から抽出して、車両内のユーザに報知する。
【0018】
第13の発明は、上記第12の発明において、通信部および表示部を、さらに備える。通信部は、所定のネットワークを介して通信可能である。表示部は、情報出力部が出力する情報を表示する。情報出力部は、地図情報記憶部に格納されている情報がネットワーク上に存在する情報資源の場所を示すとき、通信部を介してその情報資源から情報を取得して表示部に表示する。
【0019】
第14の発明は、上記第1の発明において、地図情報記憶部およびルート検索部を、さらに備える。地図情報記憶部は、少なくとも車両の現在位置付近の地図情報を格納する。ルート検索部は、対象物位置特定部が特定した対象物の位置を経由地または目的地に設定してルート検索する。
【発明の効果】
【0020】
上記第1の発明によれば、ユーザの手や指が指し示している方向に存在する対象物を特定するにあたり、撮像部が撮像した画像を用いて特定されるため高精度に対象物の位置を特定することができる。
【0021】
上記第2の発明によれば、ユーザが指し示した方向がカメラ座標に変換され、その方向の被撮像物が抽出されるため、対象物の認識精度が向上する。
【0022】
上記第3の発明によれば、ステレオカメラの原理を用いて対象物を高精度に特定することができる。
【0023】
上記第4の発明によれば、ユーザが指し示して指定した形状に応じて対象物を抽出することができ、当該形状で囲まれた画像を用いてマッチングすることによってマッチング精度が高まり、結果的に効率よく高精度に対象物を特定することができる。
【0024】
上記第5の発明によれば、撮像部を単一カメラで構成して対象物の特定を実現することができる。
【0025】
上記第6または第7の発明によれば、ユーザは、指し示した方向と視認されている対象物の方向とを、表示されたポインタを見ながら調整することができるので、指し示した方向と対象物との関係を容易に把握することができる。
【0026】
上記第8の発明によれば、指し示した方向に存在する対象物を確実に特定することができる。
【0027】
上記第9の発明によれば、ユーザが指し示した方向に応じて適切な映像を表示部に表示することができる。
【0028】
上記第10および第11の発明によれば、対象物に注目した映像をユーザに提供することができる。
【0029】
上記第12の発明によれば、対象物に関する情報を容易に得ることができる。
【0030】
上記第13の発明によれば、インターネット等に公開されたWebページ等の対象物に関する情報を容易に得ることができる。
【0031】
上記第14の発明によれば、ルート設定が容易に行うことができ、安全性に配慮した入力を行うことができるカーナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る対象物特定装置について説明する。なお、説明を具体的にするために、当該対象物特定装置がカーナビゲーション装置に適用された一例を用いて、図面を参照しながら説明する。なお、以下参照する図面において、本発明に関係のない構成要素は省略している。
【0033】
図1および図2を参照して、第1の実施形態に係るカーナビゲーション装置1について説明する。なお、図1は、第1の実施形態に係るカーナビゲーション装置1の概略の構成を示す構成図である。図2は、ユーザ(例えば、車両のドライバ等の搭乗者)が対象物を手や指で指し示す様子を示す模式図である。
【0034】
図1において、カーナビゲーション装置1は、制御部11、地図情報記憶部12、測位部13、入力部14、音声出力部15、指差し方向検知部16、指差し座標取得部17、撮像部18、画像認識/測距部20、ポインタ座標決定部21、および表示部22から構成されている。また、図2において、車両Cのユーザが手Hによって対象物Mの一部を指し示している。なお、車両C内にはカーナビゲーション装置1が搭載されるが、図2では測位部13および撮像部18のみ図示している。
【0035】
制御部11は、経路探索や案内等のナビゲーション機能等、カーナビゲーション装置1の基本機能を制御するとともに、後述する処理を実行する手段であり、例えば、CPUやMPUで構成される。
【0036】
地図情報記憶部12は、経路案内や探索に必要な地図情報を格納する記憶媒体であり、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)やDVD(デジタルヴァーサタイルディスク)である。また、地図情報記憶部12は、少なくとも車両Cが位置する現在地付近に存在する対象物(例えば、建物等の施設)の位置や名称および当該対象物に関連した情報(例えば、URL(Uniform Resource Locator;ユニフォーム・リソース・ロケータ)、営業時間、広告等)が格納されている。なお、地図情報記憶部12は、図示しない通信手段(例えば、携帯電話)によって情報をセンター設備から適宜ダウンロードして格納してもかまわない。
【0037】
測位部13は、車両の現在位置や方位を測位する手段であり、例えば、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)、INS(Inertial Navigation System;慣性航法システム)、車速センサ等で構成される。INSは、加速度センサやジャイロセンサから構成され、車両Cの現在位置および方位を初期値からの積分によって算出するものである。ここで、図2では測位部13としてINSが車両Cに固定設置された様子を例示している。以下に説明する車両座標系では、車両Cの前後方向をX軸とし、車両Cの前方進行方向をX軸正方向とする。車体Cの左右方向をY軸とし、車両Cの右方向をY軸正方向とする。そして、X−Y平面に対して垂直な方向(つまり、車両Cの上下方向)をZ軸とし、車両Cの上方向をZ軸正方向とする。
【0038】
入力部14は、ユーザが手や指(以下、手のみ記載する)Hで指し示した対象物Mに対して、ユーザ所望の指示を入力する手段であり、例えば、音声入力するマイクや音声認識エンジン等で構成される。
【0039】
音声出力部15は、制御部11が地図情報記憶部12から抽出した対象物Mに関連した情報を読上げるための手段であり、例えば、音声合成エンジンやスピーカ等で構成される。
【0040】
指差し方向検知部16は、ユーザ(運転手等の車両搭乗者)が手Hで指し示した方向を検知するための手段であり、例えば、手Hの画像を撮像する車両C内に固設された複数のカメラによって構成される。また、指差し方向検知部16として、車両C内に所定の電波を放射して手Hが指し示す方向を検知する周知の検知手段を用いてもかまわない。
【0041】
指差し座標取得部17は、指差し方向検知部16が取得した情報を用いて、3軸の座標値(以下、指差し座標(系)と記載する)を取得するための手段であり、例えば、指差し方向検知部16が撮像した複数の画像を画像処理する画像処理回路で構成される。そして、指差し座標取得部17は、取得した指差し座標を制御部11に出力する。
【0042】
撮像部18は、車両C外部に設けられた車両周辺の画像を取得するための手段であり、例えば、単一カメラまたはステレオカメラである。撮像部18は、図2に例示するように、車両Cのルーフ上に設置され、車両Cの前方を撮像する。ここで、撮像部18は前述の車両座標系と原点は異なるが、X軸正方向が撮像方向となるように設置される。以下、撮像部18の撮像方向を基準とした座標系をカメラ座標系と記載する。なお、図2では、車両Cのルーフ上に撮像部18を設置する例を示したが、車両Cの室内(例えば、ルームミラー)にも設置してもかまわない。
【0043】
画像認識/測距部20は、撮像部18が撮像した画像を認識し、制御部11が特定した対象物Mまでの距離を測定するための手段である。そして、画像認識/測距部20は、撮像部18が撮像した画像や距離情報を制御部11に出力する。
【0044】
ポインタ座標決定部21は、ユーザの手Hと対象物Mとの間に存在する車両Cのフロントガラス上の2次元座標であるポインタ座標(図2におけるA点)を決定するための手段である。以下、車両Cのフロントガラス上の2次元座標系をポインタ座標系と記載する。
【0045】
表示部22は、ポインタ座標決定部21で決定したポインタ座標に基づいて、車両Cのフロントガラスの室内側表面にポインタPを投影表示するための手段である。なお、表示部22は、HUD(Head Up Display;ヘッドアップ・ディスプレイ)で構成してもかまわない。
【0046】
次に、図3を参照して、ユーザが手Hを車両C前方のフロントガラスF越しに指し示した状態について説明する。なお、図3は、ユーザが手Hを車両C前方のフロントガラスF越しに指し示したときにポインタPが投影されている様子を示す模式図である。
【0047】
図3において、車両CのフロントガラスFを介して視認できる車両周辺風景に対して、当該フロントガラスFにポインタPが表示されている。このようにポインタPはフロントガラスF上に表示され、その表示位置はユーザの手Hと対象物Mとを結ぶ直線とフロントガラスFとが重なる点(図2で示したA点、すなわちポインタ座標)に表示される。このように、ユーザは、ポインタPを見ながら手Hで指し示した方向と対象物Mに対する方向との調整を行うことができるので、指し示した方向の対象物Mとの対応を容易に把握することができる。なお、撮像部18や表示部22を車両Cの周囲360度を撮像できるように複数設置することで、フロントガラスFだけではなく、車両CのサイドガラスやリヤガラスにもポインタPを投影表示してもかまわない。また、図3では、ポインタPを表示するとしたが、指し示す方向と対象物Mとの対応関係が分かる表示であれば他の表示でもかまわない。例えば、指し示す方向に応じて特定された対象物Mの輪郭に相当する図形を表示したり、当該対象物Mの輪郭の内部を塗りつぶしたりする表示を行ってもかまわない。
【0048】
次に、図4〜図8を参照して、カーナビゲーション装置1の動作の第1の例について説明する。なお、図4は、カーナビゲーション装置1の第1の例における前半部の動作を示すフローチャートである。図5は、カーナビゲーション装置1の第1の例における後半部の動作を示すフローチャートである。図6は、カーナビゲーション装置1の動作で用いる指差し座標系および車両座標系の一例を説明するための図である。図7は、カーナビゲーション装置1の動作で用いるカメラ座標系の一例を説明するための図である。図8は、カーナビゲーション装置1の動作で用いるポインタ座標系の一例を説明するための図である。ここで、撮像部18は、ステレオカメラで構成されているとする。また、地図情報記憶部12には、上記地図情報として2次元地図が格納されている。
【0049】
図4において、カーナビゲーション装置1の起動を促すキーワード(例えば、「指差し入力起動」)がユーザから入力部14に発話入力されると、カーナビゲーション装置1が起動する(ステップS10)。そして、ユーザが車両C前方方向に存在する建物等の対象物Mを指し示すと(ステップS11でYes)、指差し方向検知部16が検知する。そして、指差し方向検知部16が検知した情報を用いて、指差し座標取得部17は指差し座標(Xh、Yh)を取得する(ステップS12)。そして、ポインタ座標決定部21は、ステップS12で取得した指差し座標(Xh、Yh)をポインタ座標(Xp、Yp)に座標変換する(ステップS13)。また、制御部11は、ステップS12で取得した指差し座標(Xh、Yh)をカメラ座標mr(Xr、Yr)に座標変換する(ステップS14)。制御部11およびポインタ座標決定部21は、それぞれフロントガラスFの設置位置や角度、車両C内部および外部に設置したカメラ(すなわち、指差し方向検知部16および撮像部18)の設置位置や方向、さらに、車両Cに設置した測位部13の位置等によって、これらの座標変換で用いる座標変換行列を予め決定する。
【0050】
図6〜図8を用いて、指差し座標系、車両座標系、カメラ座標系、およびポインタ座標系について説明する。なお、制御部11およびポインタ座標決定部21は、それぞれ上記座標変換行列を用いてこれら座標系同士の座標変換が可能となる。
【0051】
図6において、指差し座標系は、手Hの左右方向をX軸(横軸)、手Hの上下方向をY軸(縦軸)と定義し、右方向をX軸正方向、上方向をY軸正方向とする。そして、指差し座標系で指定される座標を指差し座標(Xh、Yh)で示す。また、車両座標系は、測位部13の位置を基準に、車両Cの前後方向をX軸、車体Cの左右方向をY軸、車両Cの上下方向をZ軸と定義し、車両Cの前方進行方向をX軸正方向、車両Cの右方向をY軸正方向、車両Cの上方向をZ軸正方向とする。そして、車両座標系で指定される座標を車両座標(Xv、Yv、Zv)で示す。なお、制御部11は、この車両座標系から、車両Cの緯度、経度、高度(測地座標系)を算出することも可能である。
【0052】
図7において、撮像部18として2台の同一仕様のカメラ(ステレオカメラ)を平行等位に設置する。平行等位とは、2つのカメラの光軸を平行にしてながらそれぞれの撮像面を一致させ、さらにそれぞれの撮像面の横軸(x軸)も一致させたカメラ配置のことである。図7に示すカメラ配置の例では、左右のカメラの間隔をカメラ間隔Bとして焦点距離fのカメラを2台配置している。図7に示すように、右カメラの焦点Oを原点として左右カメラの光軸方向をZ軸、左右カメラの焦点を結ぶ方向をX軸、X軸およびZ軸に垂直な方向をY軸とした実空間の座標系の位置M(Xm、Ym、Zm)に対象物Mが存在するとする。そして、右カメラのカメラ座標系mr(Xr、Yr)および左カメラの座標系ml(Xl、Yl)を、右カメラおよび左カメラの撮像面上でそれぞれ光軸との交点OrおよびOlを原点とした座標系とする。また、実空間の座標系のX軸、右カメラ座標系のXr軸、および左カメラ座標系のXl軸は、全て左カメラの焦点から右カメラの焦点に向かう方向に一致させる。
【0053】
このようなカメラ配置においては、Yl=Yrとなるため、対象物Mの位置M(Xm、Ym、Zm)、右カメラ座標mr(Xr、Yr)、および左カメラ座標ml(Xl、Yl)は、以下の関係式を満たす。
Xm=Zm/f×Xr
Ym=Zm/f×Yr
Zm=B×f/(Xl−Xr)
ここで、Bはカメラ間隔、fは焦点距離であるため、共に定数となる。これらの式で明らかなように、Xl−Xr(視差)を計測すればZmが求まり、右カメラでの像の位置(Xr、Yr)を用いれば、対象物Mの座標(Xm、Ym、Zm)を算出することができる。
【0054】
ここで、上記視差(Xl−Xr)は、右画像の小領域(所定サイズ画素×所定サイズ画素)と同じパターンを左画像から探し、一致したそれらの位置の相対的なずれを抽出するステレオマッチング処理を用いて求めることができる。より具体的には、パターンの一致度を示す評価関数を導入し、探索範囲を1画素ずつずらしながら一致度を判定し、最も一致度合いが高い小領域を左画像から求めることで視差を求めることができる。
【0055】
図8において、ポインタ座標系は、フロントガラスFの左上隅を原点として、横方向をX軸、縦方向をY軸と定義し、右方向をX軸正方向、下方向をY軸正方向とする。そして、ポインタ座標系で指定される座標をポインタ座標(Xp、Yp)で示す。
【0056】
図4に戻り、上記ステップS13で座標変換されたポインタ座標(Xp、Yp)を用いて、表示部22は、ポインタPをフロントガラスF上に投影表示する(ステップS15;図3参照)。そして、カーナビゲーション装置1は、処理を次のステップS20(図5)に進める。
【0057】
なお、ステップS15におけるポインタPの表示は、カーナビゲーション装置1の起動中に常時表示していてもいいし、一定時間のみ表示してもいいし、地図情報記憶部12に対象物Mに関連する情報が格納されている場合にだけ表示するようにしてもよい。情報の有無に応じて表示有無を対応させることによって、指し示した方向に存在する対象物Mに関連する情報が格納されていないことを容易に理解でき、ユーザの混乱を招くことを防止できる。
【0058】
一方、上記ステップS15の処理と並行して、上記ステップS14で座標変換されたカメラ座標mr(Xr、Yr)を用いて、ユーザが指し示した対象物Mの3次元位置を特定する処理が行われる。画像認識/測距部20は、撮像部18の右カメラが撮像した画像から、座標変換されたカメラ座標mr(Xr、Yr)を中心とする小領域(図7参照)を抽出する(ステップS16)。そして、画像認識/測距部20および制御部11は、ステレオマッチング処理を用いて、対象物Mの位置M(Xm、Ym、Zm)を算出する(ステップS17)。具体的には、画像認識/測距部20は、上記小領域と同じパターンを撮像部18の左カメラで撮像した画像から探し、一致したそれらの位置の相対的なずれから視差(Xl−Xr)を求める。そして、カメラ間隔B、焦点距離f、および上述したXm、Ym、Zmを求める式を用いて、位置M(Xm、Ym、Zm)が算出される。
【0059】
次に、制御部11は、位置M(Xm、Ym、Zm)を車両座標系における位置M(Xv、Yv、Zv)に座標変換する(ステップS18)。これは、位置M(Xm、Ym、Zm)が右カメラの焦点Oを原点とする位置であるため、車両座標系における位置(Xv、Yv、Zv)に変換する処理である。そして、制御部11は、車両座標系における位置M(Xv、Yv、Zv)を車両Cの緯度、経度、高度(測地座標系)に座標変換することによって、対象物Mの3次元位置を特定する(ステップS19)。そして、カーナビゲーション装置1は、処理を次のステップS20(図5)に進める。
【0060】
図5において、対象物Mが特定されている場合(ステップS20でYes)、制御部11は、入力部14を介してユーザからの入力指示があるかを判断する(ステップS21)。そして、制御部11は、対象物Mが特定されていない場合(ステップS20でNo)または入力指示がない場合(ステップS21でNo)、上記ステップS11に戻って処理を繰り返す。一方、入力指示がある場合(ステップS21でYes)、制御部11は、その入力指示内容に応じた処理を行う(ステップS22〜S27)。
【0061】
例えば、ユーザの発話が「読上げ」と認識された場合には、上記ステップS19で特定した対象物Mの3次元位置に関連する情報を制御部11が地図情報記憶部12から取得し、音声出力部15によって当該情報が音声で読上げられる(ステップS22)。ユーザの発話が「表示」と認識された場合には、上記ステップS19で特定した対象物Mの3次元位置に関連する情報を制御部11が地図情報記憶部12から取得し、表示部22によって当該情報が表示される(ステップS23)。ユーザの発話が「ルート設定」と認識された場合には、制御部11が上記ステップS19で特定した対象物Mまでの経路を計算し、表示部22に計算したルートを表示して案内を実施する(ステップS24)。この場合、対象物Mは、上記ルートにおける経由地や目的地のいずれに設定されてもかまわない。ユーザの発話が「ホームページ表示」と認識された場合には、上記ステップS19で特定した対象物MのURL情報を制御部11が地図情報記憶部12から取得し、図示しない通信手段を介して、当該対象物Mのホームページがサーバからダウンロードされて、表示部22に当該ホームページが表示される(ステップS25)。なお、ステップS24およびS25の場合、フロントガラスFではなく、別途設けられた車載ディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)を表示部22として表示してもかまわない。ユーザの発話が「地図へ反映」と認識された場合には、制御部11は、上記通信手段を介して上記ステップS19で特定した対象物Mに関して地図情報記憶部12が格納していない情報(差分情報)をセンター側からダウンロードし、地図情報記憶部12に当該差分情報を反映させて格納する(ステップS26)。すなわち、ステップS26によって、地図や対象物に関連する情報の更新を行うことができる。そして、これらステップS22〜S26の動作の後、カーナビゲーション装置1は、上記ステップS11に戻って処理を繰り返す。
【0062】
一方、ユーザの発話が「停止」と認識された場合には、表示部22がフロントガラスF上に表示しているポインタPを消去し(ステップS27〜、カーナビゲーション装置1の指差し入力機能に関する動作を停止して(ステップS28)、当該フローチャートによる処理を終了する。
【0063】
このように、対象物Mの特定を行った後、音声入力で所定の動作が完了するので、運転時の安全性等に配慮した入力を行うことができるカーナビゲーション装置を提供することができる。
【0064】
なお、カーナビゲーション装置1は、上述した入力指示以外に対する機能も備えることができる。例えば、ユーザが指し示した方向に存在する車両を対象物Mとして、自車との間の車々間通信で情報の送受を行う際の動作、車両のプレートナンバーを読み取る動作、車両を追随する動的なルート検索および案内を行う動作等をカーナビゲーション装置1が行ってもかまわない。また、ユーザが指し示した方向に存在する対象物Mに設置されている電話を通話対象とする動作や対象物Mのメールアドレスにメールを送る動作等をカーナビゲーション装置1が行ってもかまわない。
【0065】
なお、上述した説明では、ユーザが指し示す方向にポインタPが表示されている状態で、ユーザからの指示があった場合の動作について説明したが、これに限定するものではない。例えば、ユーザからの入力指示がなくても自動的に施設名称等の対象物Mに関連する情報を同時に表示してもかまわない。また、ポインタPは表示せず、施設名称等の対象物Mに関連する情報だけを表示してもかまわない。これによって、フロントガラスF越しに対象物Mを指差すだけで、対象物Mの施設名称等を瞬時に表示することが可能となる。
【0066】
また、各座標系間の座標変換に用いる座標変換行列に誤差があり、指し示した方向とポインタPとが一直線上にならない場合、ポインタ座標を微調整することでキャリブレーションを実施することが望ましい。これにより、座標変換行列のパラメータを補正することができる。
【0067】
次に、図9および図10を参照して、カーナビゲーション装置1の動作の第2の例について図面を参照し説明する。なお、図9は、カーナビゲーション装置1の第2の例における前半部の動作を示すフローチャートである。図10は、3次元コンピュータグラフィック(CG)地図を用いて対象物を特定する動作を模式的に示した図である。なお、カーナビゲーション装置1の第2の例における後半部の動作については、図5と同様であるため詳細な説明を省略する。ここで、撮像部18は、単一カメラで構成されているとする。また、地図情報記憶部12には、上記地図情報の少なくとも1つとして3次元CG地図が格納されている。
【0068】
図9において、カーナビゲーション装置1の起動を促すキーワード(例えば、「指差し入力起動」)がユーザから入力部14に発話入力されると、カーナビゲーション装置1が起動する(ステップS30)。そして、ユーザが車両C前方方向に存在する建物等の対象物Mを指し示すと(ステップS31でYes)、指差し方向検知部16が検知する。そして、指差し方向検知部16が検知した情報を用いて、指差し座標取得部17は指差し座標(Xh、Yh)を取得する(ステップS32)。そして、ポインタ座標決定部21は、ステップS32で取得した指差し座標(Xh、Yh)をポインタ座標(Xp、Yp)に座標変換する(ステップS33)。また、制御部11は、ステップS32で取得した指差し座標(Xh、Yh)をカメラ座標c(Xc、Yc)に座標変換する(ステップS34)。制御部11およびポインタ座標決定部21は、それぞれフロントガラスFの設置位置や角度、車両C内部および外部に設置したカメラ(すなわち、指差し方向検知部16および撮像部18)の設置位置や方向、さらに、車両Cに設置した測位部13の位置等によって、これらの座標変換で用いる座標変換行列を予め決定する。
【0069】
ここで、図9に示す動作において用いる指差し座標系、車両座標系、カメラ座標系、およびポインタ座標系については、カメラ座標系が単一カメラに対して設定されていることを除いて図6〜図8を用いて説明した座標系と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、ステレオカメラにおけるカメラ座標系mr(Xr、Yr)およびml(Xl、Yl)と区別するために、単一カメラにおけるカメラ座標系をc(Xc、Yc)と記載する。
【0070】
上記ステップS33で座標変換されたポインタ座標(Xp、Yp)を用いて、表示部22は、ポインタPをフロントガラスF上に投影表示する(ステップS35;図3参照)。そして、カーナビゲーション装置1は、処理を次のステップS20(図5)に進める。
【0071】
一方、上記ステップS35の処理と並行して、上記ステップS34で座標変換されたカメラ座標c(Xc、Yc)を用いて、ユーザが指し示した対象物Mの3次元位置を特定する処理が行われる。図9および図10において、画像認識/測距部20は、撮像部18の単一カメラが撮像した車両前方映像を画像処理して、指し示した方向に撮像されている対象物の輪郭を取得する(ステップS36)。次に、測位部13が測位している車両Cの現在位置および車両Cの方位に基づいて、制御部11は、当該車両Cに搭載された撮像部18が撮像する景観と仮想的に対応する3次元CG地図を地図情報記憶部12から取得する(ステップS37)。そして、制御部11は、取得した3次元CG地図の画像から上記ステップS36で取得した輪郭と一致する形状の画像を抽出し、当該画像に対応する対象物Mの3次元位置を特定する(ステップS38)。そして、カーナビゲーション装置1は、処理を次のステップS20(図5)に進める。このような処理によって、指し示す対象物Mの3次元位置が特定できる。
【0072】
次に、図11および図12を参照して、カーナビゲーション装置1の動作の第3の例について図面を参照し説明する。なお、図11は、カーナビゲーション装置1の第3の例における前半部の動作を示すフローチャートである。図12は、カーナビゲーション装置1の動作の第3の例について捕捉するための図である。なお、カーナビゲーション装置1の第1の例における後半部の動作については、図5と同様であるため詳細な説明を省略する。ここで、撮像部18は、ステレオカメラで構成されているとする。また、地図情報記憶部12には、上記地図情報として2次元地図が格納されている。
【0073】
図11において、カーナビゲーション装置1の起動を促すキーワード(例えば、「指差し入力起動」)がユーザから入力部14に発話入力されると、カーナビゲーション装置1が起動する(ステップS40)。そして、ユーザが車両C前方方向に存在する建物等の対象物Mを指し示すと(ステップS41でYes)、指差し方向検知部16が検知する。そして、指差し方向検知部16が検知した情報を用いて、指差し座標取得部17は指差し座標(Xh、Yh)を取得する(ステップS42)。そして、ポインタ座標決定部21は、ステップS42で取得した指差し座標(Xh、Yh)をポインタ座標(Xp、Yp)に座標変換する(ステップS43)。なお、第3の例における動作で用いる指差し座標系、車両座標系、カメラ座標系、およびポインタ座標系は、図6〜図8を用いて説明した座標系と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、第3の例のおいても、制御部11およびポインタ座標決定部21は、それぞれフロントガラスFの設置位置や角度、車両C内部および外部に設置したカメラ(すなわち、指差し方向検知部16および撮像部18)の設置位置や方向、さらに、車両Cに設置した測位部13の位置等によって、これらの座標変換で用いる座標変換行列を予め決定する。
【0074】
次に、上記ステップS43で座標変換されたポインタ座標(Xp、Yp)を用いて、表示部22は、ポインタPをフロントガラスF上に投影表示する(ステップS44;図3参照)。そして、制御部11は、ポインタPが囲み曲線の始点と終点とが一致するような軌跡を描いたか否かを判断する(ステップS45;図12)。カーナビゲーション装置1は、始点と終点とが一致するまで上記ステップS41〜S44の処理を繰り返し、始点と終点とが一致した場合(ステップS45でYes)、処理を次のステップS46に進める。
【0075】
ステップS46において、制御部11は、ステップS43で座標変換され囲み曲線を描いたポインタ座標(Xp、Yp)群をカメラ座標mr(Xr、Yr)にそれぞれ座標変換する。画像認識/測距部20は、撮像部18の右カメラが撮像した画像から、座標変換されたカメラ座標mr(Xr、Yr)群に囲まれた小領域(図12参照)を抽出する(ステップS47)。そして、画像認識/測距部20および制御部11は、ステレオマッチング処理を用いて、囲まれたエリアに存在する対象物Mの位置M(Xm、Ym、Zm)を算出する(ステップS48)。具体的には、画像認識/測距部20は、上記小領域と同じパターンを撮像部18の左カメラで撮像した画像から探し、一致したそれらの位置の相対的なずれから視差(Xl−Xr)を求める。そして、カメラ間隔B、焦点距離f、および上述したXm、Ym、Zmを求める式を用いて、位置M(Xm、Ym、Zm)が算出される。
【0076】
次に、制御部11は、位置M(Xm、Ym、Zm)を車両座標系における位置M(Xv、Yv、Zv)に座標変換する(ステップS49)。これは、位置M(Xm、Ym、Zm)が右カメラの焦点Oを原点とする位置であるため、車両座標系における位置(Xv、Yv、Zv)に変換する処理である。そして、制御部11は、車両座標系における位置M(Xv、Yv、Zv)を車両Cの緯度、経度、高度(測地座標系)に座標変換することによって、対象物Mの3次元位置を特定する(ステップS50)。そして、カーナビゲーション装置1は、処理を次のステップS20(図5)に進める。
【0077】
以上のように、カーナビゲーション装置1の動作について第1〜第3の例を説明したが、何れの例においてもユーザが指し示す対象物Mの3次元位置の特定を高精度に行うことができる。
【0078】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る対象物特定装置について説明する。なお、説明を具体的にするために、当該対象物特定装置がカーナビゲーション装置に適用された一例を用いて、図面を参照しながら説明する。なお、以下参照する図面において、本発明に関係のない構成要素は省略している。
【0079】
図13は、第2の実施形態に係るカーナビゲーション装置2の概略の構成を示す構成図である。カーナビゲーション装置2は、第1の実施形態で説明したカーナビゲーション装置1に対して、視線方向検知部23および視線座標取得部24が追加されている。それ以外の構成要素は、第1の実施形態と同様であるため、同一の構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
視線方向検知部23は、ユーザ(例えば、車両のドライバ等の搭乗者)の視線を検知するための手段であり、例えば、車内に設置された近赤外線照射装置またはカメラ等で構成される。視線座標取得部24は、視線方向検知部23で取得した情報を用いて、3軸の座標値(以下、視線座標(系)と記載する)を取得するための手段であり、例えば、視線方向検知部23が近赤外線をユーザの眼に照射し、その瞳孔と角膜反射像との動きを検出することによって、ユーザの視線を検知する。他にも視線方向検知部23が撮像したユーザの眼を含む画像を画像処理することによって、ユーザの視線を検知してもかまわない。
【0081】
次に、図14を参照して、ユーザが対象物Mを手Hで指し示す方向と当該ユーザの視線との関係を説明する、なお、図14は、ユーザが対象物Mを手Hで指し示す方向と当該ユーザの視線を示す模式図である。
【0082】
図14において、フロントガラスFのA点を介して、ユーザが手Hによって対象物Mの一部を指し示している。このA点は、図2を用いて説明したA点と同じである。
【0083】
このとき、ポインタ座標決定部21は、ユーザの手Hで指し示した対象物Mとユーザの眼Eとを結ぶ直線(ユーザが対象物Mを見ている場合は視線)と交差するフロントガラスF上の2次元座標(図14におけるB点)をポインタ座標(Xp、Yp)に決定する。その後、表示部22は、第1の実施形態と同様に、ポインタ座標決定部21で決定したポインタ座標(Xp、Yp)にポインタPを投影表示する。
【0084】
例えば、第1の実施形態のように点AにポインタPを投影表示するとき、ユーザの視線上に手Hを挙げて当該視線上にある対象物Mを指し示すと、ポインタPと対象物Mとが一致して表示される。一方、第2の実施形態では、図14に示すようにユーザの視線上に手Hを挙げなくても、ポインタPがユーザの視線方向と完全に一致する。すなわち、手Hをユーザの視界に近づける必要なく、対象物Mを違和感なく視認することができる。例えば、手Hを車両Cのハンドル上に置いた状態でも、対象物Mを指し示すことができ、安全運転に寄与できる。
【0085】
なお、視線方向と点Bに表示されたポインタPとが図14で示したように一直線上にならない場合、ポインタ座標(Xp、Yp)に座標変換する関数を微調整することによってキャリブレーションを実施することが望ましい。
【0086】
また、ユーザの手Hで指し示す方向の対象物と当該ユーザの視線方向に存在する対象物とは、絶えず一致しているとは限らない。例えば、ユーザは、手Hで特定したい対象物Mを指し示していても、当該対象物Mとは異なった車両前方を視認していることがある。このようなときには、ポインタPを表示しないようにしてもかまわない。図15は、手Hで指し示した対象物と視線方向にある対象物とが一致している場合にのみ、ポインタPを表示する様子を示す模式図である。
【0087】
図15において、フロントガラスFを介した景観に対して、ユーザの視線が軌跡CEに沿って移動している。一方、フロントガラスFを介した景観に対して、ユーザの手Hで指し示す方向が軌跡CHに沿って移動している。このとき、ポインタPは、同一時刻でユーザの視線方向および手Hで指し示す方向が同じ対象物上で一致する箇所(同一時刻で軌跡CEおよびCHが交わる交点)にのみ、フロントガラスF上に表示される。また、軌跡CEやCHに対応する曲線は、フロントガラスF上には表示されないことが望ましい。これにより、手Hによって指し示す方向に存在する対象物と視線方向に存在する対象物とが一致していないときには、ポインタPが表示されずユーザからの入力指示も受付けないように設定することによって、安全運転に寄与することができる。
【0088】
なお、手Hで指し示す方向を表すポインタと視線方向を示すポインタとをそれぞれ同時に両方表示させて、どちらのポインタを使用するかをユーザが選択可能に構成してもかまわない。
【0089】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る対象物特定装置について説明する。なお、説明を具体的にするために、当該対象物特定装置がカーナビゲーション装置に適用された一例を用いて、図面を参照しながら説明する。なお、以下参照する図面において、本発明に関係のない構成要素は省略している。
【0090】
図16は、第3の実施形態に係るカーナビゲーション装置3の概略の構成を示す構成図である。カーナビゲーション装置3は、第1の実施形態で説明したカーナビゲーション装置1に対して、撮像制御部25が追加で構成され、ポインタ座標決定部21を選択部26に置き換えている。また、当該実施形態における表示部22は、典型的には車載ディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)であり、本装置の起動をトリガとして撮像部18で撮像する映像を表示する。それ以外の構成要素は、第1の実施形態と同様であるため、同一の構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0091】
撮像制御部25は、制御部11の指令により撮像部18の撮像方向(パン、チルト)やズームを制御する手段である。また、選択部26は、撮像部18が複数のカメラで構成されている場合にそれらの映像から適切な映像を選択するための手段であり、選択された映像が表示部22に表示される。
【0092】
次に、図17および図18を参照して、カーナビゲーション装置3の動作について説明する。なお、図17は、カーナビゲーション装置3における前半部の動作を示すフローチャートである。図18は、カーナビゲーション装置3における後半部の動作を示すフローチャートである。ここで、カーナビゲーション装置3で行う対象物特定処理は、第1の実施形態で説明した第1の例(図4)を用いる一例で説明する。したがって、撮像部18はステレオカメラで構成され、地図情報記憶部12には上記地図情報として2次元地図が格納される。
【0093】
図17において、ステップS60〜S67の処理は、図4で示したステップS10〜12、S14、およびステップS14〜S19と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、第3の実施形態における動作で用いる指差し座標系、車両座標系、およびカメラ座標系は、図6〜図8を用いて説明した座標系と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、第3の実施形態においても、制御部11は、それぞれ車両C内部および外部に設置したカメラ(すなわち、指差し方向検知部16および撮像部18)の設置位置や方向、さらに、車両Cに設置した測位部13の位置等によって、これらの座標変換で用いる座標変換行列を予め決定する。
【0094】
ステップS67で対象物の3次元位置が特定された後、選択部26は、撮像部18のステレオカメラのうち、何れのカメラで撮像した映像を選択する(ステップS68)。例えば、選択基準としては、撮像部18が車両Cの進行方向右側および左側にそれぞれカメラを有している場合、搭乗者の指差し方向に対応して当該指差し方向が車両Cの進行方向右側なら当該右側のカメラからの映像を選択し、進行方向左側なら当該左側のカメラからの映像を選択することとする。そして、撮像制御部25は、特定された対象物の3次元位置に基づいて、当該対象物が表示部22の画面中央に配置されるように、選択されたカメラの撮像方向を制御する(ステップS69)。これにより、所定の方向に存在する対象物を確実に表示部に表示することができる。そして、制御部11は、処理を次のステップS70(図18)に進める。
【0095】
図18において、対象物Mが特定されている場合(ステップS70でYes)、制御部11は、入力部14を介してユーザからの入力指示があるかを判断する(ステップS71)。そして、制御部11は、対象物Mが特定されていない場合(ステップS70でNo)または入力指示がない場合(ステップS71でNo)、上記ステップS61に戻って処理を繰り返す。一方、入力指示がある場合(ステップS71でYes)、制御部11は、その入力指示内容に応じた処理を行う(ステップS72〜S75)。
【0096】
例えば、ユーザの発話が「拡大」と認識された場合には、上記ステップS68で選択した映像を撮像制御部25が拡大するようズーム制御する(ステップS72)。これにより、車両Cの遠方に存在する対象物の映像が拡大されるため、対象物を視認して得られる情報を容易に得ることが可能となる。例えば、少し遠方にあり、運転手が目を細めないと確認できないような距離に存在する対象物(例えば、標識や看板)を指差して「拡大」と発話することにより、容易に情報を得ることができる。なお、このとき標識や看板を優先して認識するようにしても良い。一方、ユーザの発話が「縮小」と認識された場合には、上記ステップS68で選択した映像を撮像制御部25が縮小するようズーム制御する(ステップS73)。また、ユーザの発話が「記録」と認識された場合には、制御部11は、表示部22に表示している映像を静止画や動画等として、記録部(図示せず)に記録する(ステップS74)。例えば、このステップS74で記録した映像は、後で呼出すことによってルート案内等に利用することができる。そして、これらステップS72〜S74の動作の後、カーナビゲーション装置3は、上記ステップS61に戻って処理を繰り返す。
【0097】
一方、ユーザの発話が「停止」と認識された場合には、撮像制御部25が撮像部18のカメラ方向やズームを初期値に戻し消去し(ステップS75)、カーナビゲーション装置3の指差し入力機能に関する動作を停止して(ステップS76)、当該フローチャートによる処理を終了する。
【0098】
なお、上記ステップS72〜S75の処理は、主に撮像部18に関する動作を制御する一例を取りあげて説明したが、ユーザからの他の入力指示に対する機能を備えることもできる。例えば、図5で説明したステップS22〜S27の処理や、第1の実施形態で説明した他の処理についても同様に、カーナビゲーション装置3で実現することも可能である。
【0099】
また、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。特に、本対象物特定装置を車両だけでなく、列車や船舶、航空機等の移動体に設置して利用できる。例えば、列車に応用する場合では指差す方向に存在する駅の名称を前面ガラス上に投影することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る対象物特定装置は、ユーザの手や指が指し示している方向に存在する対象物を正確に特定することができ、車両内に設置される車載用入力装置、カーナビゲーション装置、車載情報端末等として有用であり、車両の他、列車、船舶、航空機等の移動体に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1の実施形態に係るカーナビゲーション装置1の概略の構成を示す構成図
【図2】ユーザが対象物を手や指で指し示す様子を示す模式図
【図3】ユーザが手Hを車両C前方のフロントガラスF越しに指し示したときにポインタPが投影されている様子を示す模式図
【図4】図1のカーナビゲーション装置1の第1の例における前半部の動作を示すフローチャート
【図5】図1のカーナビゲーション装置1の第1の例における後半部の動作を示すフローチャート
【図6】図1のカーナビゲーション装置1の動作で用いる指差し座標系および車両座標系の一例を説明するための図
【図7】図1のカーナビゲーション装置1の動作で用いるカメラ座標系の一例を説明するための図
【図8】図1のカーナビゲーション装置1の動作で用いるポインタ座標系の一例を説明するための図
【図9】図1のカーナビゲーション装置1の第2の例における前半部の動作を示すフローチャート
【図10】3次元コンピュータグラフィック地図を用いて対象物を特定する動作を模式的に示した図
【図11】図1のカーナビゲーション装置1の第3の例における前半部の動作を示すフローチャート
【図12】図11のカーナビゲーション装置1の動作の第3の例について捕捉するための図
【図13】第2の実施形態に係るカーナビゲーション装置2の概略の構成を示す構成図
【図14】ユーザが対象物Mを手Hで指し示す方向と当該ユーザの視線を示す模式図
【図15】手Hで指し示した対象物と視線方向にある対象物とが一致している場合にのみ、ポインタPを表示する様子を示す模式図
【図16】第3の実施形態に係るカーナビゲーション装置3の概略の構成を示す構成図
【図17】図16のカーナビゲーション装置3における前半部の動作を示すフローチャート
【図18】図16のカーナビゲーション装置3における後半部の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0102】
1、2、3…カーナビゲーション装置
11…制御部
12…地図情報記憶部
13…測位部
14…入力部
15…音声出力部
16…指差し方向検知部
17…指差し座標取得部
18…撮像部
20…画像認識/測距部
21…ポインタ座標決定部
22…表示部
23…視線方向検知部
24…視線座標取得部
25…撮像制御部
26…選択部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の対象物の位置を特定する対象物特定装置であって、
車両の現在位置および車両の方位を検出する測位部と、
前記車両の周囲を撮像する撮像部と、
前記車両内のユーザが自身の手を用いて指し示した指示方向を検知する指差し方向検知部と、
前記指差し方向検知部が検知した指示方向に存在する対象物を前記撮像部が撮像した画像内から抽出する対象物抽出部と、
前記車両に対して、前記対象物抽出部が抽出した対象物の位置を特定する対象物位置特定部とを備える、対象物特定装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記車両に設置された少なくとも1つのカメラで構成され、
前記対象物特定装置は、前記指差し方向検知部が検知した指示方向を前記カメラの撮像方向を基準とするカメラ座標系における指示方向に変換する座標変換部を、さらに備え、
前記対象物抽出部は、前記撮像部が撮像した画像内から前記座標変換部が変換した指示方向に撮像された被撮像物を対象物として抽出することを特徴とする、請求項1に記載の対象物特定装置。
【請求項3】
前記撮像部は、平行等位に前記車両に設置された複数のカメラで構成され、
前記対象物抽出部は、一方の前記カメラが撮像した画像から前記指示方向に撮像された所定サイズの領域を抽出し、当該領域の画像と他方の前記カメラが撮像した画像とのマッチングによって当該指示方向に撮像された被撮像物を対象物として抽出し、
前記対象物位置特定部は、複数のカメラが対象物をそれぞれ撮像している方向に基づいて、前記車両に対する対象物の位置を算出することを特徴とする、請求項2に記載の対象物特定装置。
【請求項4】
前記対象物抽出部は、前記指示方向が時系列的に変化することによって当該指示方向に囲まれた空間内に撮像された画像を前記領域の画像として抽出することを特徴とする、請求項3に記載の対象物特定装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記車両に設置された単一のカメラで構成され、
前記対象物特定装置は、少なくとも前記車両の現在位置付近の3次元地図を格納する地図情報記憶部を、さらに備え、
前記対象物抽出部は、前記カメラが撮像した画像から前記指示方向に撮像された被撮像物の輪郭を対象物の輪郭として抽出し、
前記対象物位置特定部は、前記3次元地図から前記対象物抽出部が抽出した輪郭と一致する形状のオブジェクトの位置を当該3次元地図上で特定して、前記車両に対する対象物の位置を算出することを特徴とする、請求項2に記載の対象物特定装置。
【請求項6】
前記対象物特定装置は、
前記車両に備えられた少なくとも1つのガラスを表示領域にして画像を投影する表示部と、
前記指差し方向検知部が検知した指示方向と前記表示領域が設定されたガラスとの交点座標を決定するポインタ座標決定部と、
前記ポインタ座標決定部が決定した交点座標上の表示領域にポインタ画像を表示制御する表示制御部とを、さらに備える、請求項1に記載の対象物特定装置。
【請求項7】
前記対象物特定装置は、
前記車両に備えられた少なくとも1つのガラスを表示領域にして画像を投影する表示部と、
前記車両内のユーザの視線方向を検知する視線検知部と、
前記対象物位置特定部が特定した対象物の位置とユーザの視線とを結ぶ直線と前記表示領域が設定されたガラスとの交点座標を決定するポインタ座標決定部と、
前記ポインタ座標決定部が決定した交点座標上の表示領域にポインタ画像を表示制御する表示制御部とを、さらに備える、請求項1に記載の対象物特定装置。
【請求項8】
前記対象物特定装置は、前記ポインタ座標決定部が決定する交点座標をユーザからの指示に応じて調整する調整部を、さらに備える、請求項6または7に記載の対象物特定装置。
【請求項9】
前記撮像部は、前記車両に設置された複数のカメラで構成され、
前記対象物特定装置は、
前記車両内に設置される表示部と、
前記指差し方向検知部が検知した指示方向に応じて、前記複数のカメラから出力される画像から何れか1つの画像を選択して前記表示部に表示する選択部とを、さらに備える、請求項1に記載の対象物特定装置。
【請求項10】
前記対象物位置特定部が特定した対象物が画像の中心に撮像されるように、前記選択部が選択した画像を撮像するカメラの撮像方向を制御する撮像制御部を、さらに備える、請求項9に記載の対象物特定装置。
【請求項11】
前記対象物位置特定部が特定した対象物が画像の中心で拡大または縮小して撮像されるように、前記選択部が選択した画像を撮像するカメラの撮像倍率を制御する撮像制御部を、さらに備える、請求項9に記載の対象物特定装置。
【請求項12】
前記対象物特定装置は、
少なくとも前記車両の現在位置付近の地図情報および当該地図で表される各領域に対する情報を格納する地図情報記憶部と、
前記対象物位置特定部が特定した対象物に関する情報を前記地図情報記憶部に格納されている情報から抽出して、前記車両内のユーザに報知する情報出力部とを、さらに備える、請求項1に記載の対象物特定装置。
【請求項13】
前記対象物特定装置は、
所定のネットワークを介して通信可能な通信部と、
前記情報出力部が出力する情報を表示する表示部とを、さらに備え、
前記情報出力部は、前記地図情報記憶部に格納されている情報が前記ネットワーク上に存在する情報資源の場所を示すとき、前記通信部を介して当該情報資源から情報を取得して前記表示部に表示することを特徴とする、請求項12に記載の対象物特定装置。
【請求項14】
前記対象物特定装置は、
少なくとも前記車両の現在位置付近の地図情報を格納する地図情報記憶部と、
前記対象物位置特定部が特定した対象物の位置を経由地または目的地に設定してルート検索するルート検索部とを、さらに備える、請求項1に記載の対象物特定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−80060(P2007−80060A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268535(P2005−268535)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.INS
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】