説明

導電性ゴムローラの製造方法

【課題】発泡ゴム層のセルが均一で、周方向の硬度、抵抗ムラが無く更に、低抵抗領域で温度・湿度の環境変化による抵抗値変動が小さく、硬度が安定した導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】原料ゴムとして、エピクロルヒドリンゴム及び/又はNBRと共に、数平均分子量10000以上、AGEの共重合比率が10mol%以上20mol%以下であるEO−PO−AGE三元共重合体を使用し、化学発泡剤を含む原料ゴム組成物をチューブ状に押出し、そのチューブを搬送速度0.5m/min乃至6.0m/minで、近赤外線加硫装置内で0.2kW乃至6kWの赤外線ランプ4本乃至6本で加硫発泡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンタ、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。従来これらの導電性ゴムローラは、導電性ゴムのチューブに導電性の芯金を挿入し、必要により外径をトリミングや表層形成して、作成されている。この導電性ゴムチューブの製造は、原料ゴム組成物を押出し機からチューブ状に押し出し、加熱加硫あるいは加熱発泡加硫することにより行われることが多い。
【0003】
この加熱加硫、加熱発泡加硫の方法として、高圧蒸気による加硫缶により加硫する方法(例えば、特許文献1)、円筒金型等による金型加硫(例えば、特許文献2)、マイクロ波照射によるUHF加硫(例えば、特許文献3)などが知られている。ところで、加硫缶加硫では、加硫状況が不均一になりやすく、特に発泡体ではセルが不均一となりやすいためで、ローラの表面に所望のセルを形成するためには多量の研磨が必要となる。金型加硫では、段取りに時間が掛かることや金型洗浄を行う必要があるため、量を数多く作るには不向きであった。
【0004】
また、UHF加硫では、段取りが良く、セルも均一となるが、ゴムが軟化した時にチューブが潰れ、特に、チューブ内外径の縦横比が不均一となりやすい。そして、このチューブの不均一性が、周方向の硬度や抵抗ムラの原因となる。そこで、チューブの不均一性を解消するために短いUHF装置を複数台連結し、マイクロ波の照射出力に勾配を付ける方法が知られている。そのためには、長大な装置が必要で、結果として加硫時間が長くなり、マイクロ波がかかり過ぎて、ゴム成分の主鎖切断が起き、導電性ゴム層の体積固有抵抗値が高くなったり、軟化劣化や硬化劣化が起きてしまったりすることがある。
【0005】
したがって、これらの加硫方法では、そのまま利用するには複写機、プリンタ等に使用する導電性ゴムローラの製造には不向きであることが多い。また、こうした抵抗値等精細な性能が要求される短径のローラへの技術展開を紹介するものはなかった。
【0006】
従来これらのゴムローラのゴム層に導電性を付与するのに、カーボンブラックなどの導電性充填材を加える方法やアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)に自己導電性ゴムであるエピクロルヒドリンゴムを配合して抵抗値を下げる方法が知られている。しかし、この方法においては、エピクロルヒドリンゴムを多量に配合すると、温度や湿度の僅かの変化(環境変化)により、抵抗値が大きく変動してしまうことが問題となっている。また、エピクロルヒドリンゴムを多量に含むゴム組成物にマイクロ波を照射すると、エピクロルヒドリンゴムの主鎖中のエーテル結合が切断されて、軟化劣化し、ローラの硬度が不安定になることがある。
【0007】
複写機、プリンタ等に使用される導電性ゴムローラには、発泡ゴム層のセルが均一で、周方向の硬度、抵抗ムラが無く更に、低抵抗領域で温度・湿度の環境変化による抵抗値変動が小さく硬度が安定していることが要求される。しかし、こうした背景から、このような要求を満たす、複写機、プリンタ等に使用される導電性ゴムローラの製造方法においては、製造工程における段取り性や生産性の良い製造方法が求められている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開2002−221859号公報
【特許文献3】特開平11−201140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラを、セル分布が均一で、かつ、周方向の硬度ムラ、抵抗ムラが無く、温度・湿度の環境変化による抵抗値変動が小さく硬度が安定して製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討し、ゴム原料として、導電性ゴムと共に、特定の共重合体を用いることにより、発泡ゴム層が安定して製造できることを見出し、ついに本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の構成をとるものである。
【0011】
(1)導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該発泡ゴム層を形成する原料ゴム組成物が、少なくともエピクロルヒドリンゴム及び/又はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、数平均分子量10000以上、アリルグリシジルエーテル(AGE)単位含量10mol%以上20mol%以下のエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体、及び化学発泡剤を含有しており、
前記原料ゴム組成物をゴム押出し装置で連続して近赤外線加硫装置内へ、チューブ状に押出して原料ゴム組成物チューブを形成し、該近赤外線加硫装置内を0.5乃至6.0m/minで搬送しながら、近赤外線を、合計照射出力1.0kW乃至36.0kWで、照射して、発泡・加硫することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【0012】
(2)近赤外線の照射が、照射出力0.2kW乃至6.0kWの赤外線ランプを4本乃至6本使用することを特徴とする(1)記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【0013】
(3)更に、近赤外線照射装置で発泡加硫された発泡ゴムチューブが、熱風加熱により100℃乃至300℃で1分乃至12分間加熱加硫されることを特徴とする(1)又は(2)記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【0014】
(4)導電性ゴムローラの抵抗値が、23℃×55%RH環境下で、1×105Ω乃至5×108Ωとなることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【0015】
(5)前記導電性ゴムローラが、電子写真装置用導電性ゴムローラの基層部材であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【0016】
(6)前記電子写真装置用導電性ゴムローラが、転写ローラであることを特徴とする(5)記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、電子写真複写装置、プリンタ、静電記録装置等の画像形成装置に転写ローラ等として好適に使用することができる導電性ゴムローラ及び電子写真装置用ローラが提供される。なお、本発明の製造方法により製造された導電性ゴムローラは、発泡ゴム層のセルが均一で、周方向の硬度、抵抗ムラが無く更に、低抵抗領域で温度・湿度の環境変化による抵抗値変動が小さく硬度が安定しているものであり、その利用価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法に関するものである。
【0019】
該発泡ゴム層を形成する原料ゴム組成物は、少なくともエピクロルヒドリンゴム及び/又はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)と、エチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体を含む。そして、該EO−PO−AGE三元共重合体は、数平均分子量が10000以上であり、かつAGEの共重合比率が10mol%以上20mol%以下であるものである。
【0020】
また、該原料ゴム組成物は、化学発泡剤を含有するものである。
【0021】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法では、まず、未加硫の原料ゴム組成物のチューブをゴム押出し装置から連続して近赤外線加硫装置内へ押出される(押出し工程)。次いで、押し出された未加硫ゴム組成物チューブは0.5m/min乃至6.0m/minの搬送速度で搬送中に、近赤外線が、合計照射出力1.0kW乃至36.0kWで、照射され、発泡・加硫成形される(発泡・加硫工程)。これにより、発泡ゴム層のセルが均一で、周方向の硬度、抵抗ムラが無く、更に、低抵抗領域で温度・湿度の環境変化による抵抗値変動が小さく硬度が安定している導電性ゴムローラが提供可能となる。
【0022】
まず、本発明の製造される導電性ゴムローラを用いる画像形成装置について説明する。
【0023】
図2は、本発明に係る導電性ゴムローラ又は電子写真装置用ローラを備えた画像形成装置の一例の概略構成を示す縦断面図である。本図に示す画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザプリンタである。
【0024】
この画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/sで回転駆動される。
【0025】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面を、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理する。帯電された感光ドラム1表面に、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光で走査露光する。これにより、感光ドラム1表面に、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0026】
その静電潜像は、現像装置4の現像ローラ30に印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0027】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の被転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された被転写材7は、転写バイアス印加電源(不図示)により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、被転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9によって除去される。
【0028】
転写部Tを通った被転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ搬送されて、トナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【0029】
このような画像形成装置では、本発明の製造方法で製造された導電性ゴムローラは、必要により表面に機能層が設けられ、帯電ローラ2、転写ローラ6又は現像ローラ30の電子写真装置用導電性ゴムローラとして装着される。
【0030】
本発明にかかる導電性ゴムローラの1例の斜視図を図1に示す。
【0031】
本発明の導電性ゴムローラは、導電性芯材61上に発泡ゴム層62を有する。なお、導電性芯材61としては、外径が、好ましくは4mm乃至10mmである、鉄、銅、ステンレス等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらにこれらの表面には防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理が施されていても構わない。
【0032】
本発明における発泡ゴム層62を形成するための原料ゴム組成物としては、少なくともエピクロルヒドリンゴム及び/又はNBRと、EO−PO−AGE三元共重合体を含むものである。該EO−PO−AGE三元共重合体は、数平均分子量が10000以上であり、かつAGEの共重合比率が10mol%以上20mol%以下である。なお、他にEPDM、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムのいずれかとの混合物を含んでいても良い。なお、該EO−PO−AGE三元共重合体としては、例えば、数平均分子量10000以上、AGE単位含量10mol%以上20mol%以下のものや日本ゼオン(株)ゼオスパン8010を用いることができる。また、エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、ダイソー(株)社製のエピオン301(商品名)を、NBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)社製のDN401(商品名)を好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の原料ゴム組成物には、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を含む。なお、アゾジカルボンアミドを好ましく使用できる。
【0034】
また、必要により、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、カーボンブラック等の補強材、炭酸カルシウム等の充填材、その他の助剤を含む。加硫剤としては、イオウの他に有機過酸化物、トリアジン、ポリアミン等がある。また、加療助剤としては、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系のものがある。
【0035】
上記各成分から原料ゴム組成物を調製する方法は、特に限定されず、例えば、使用する原料、組成等に応じて、公知の方法から適したものを選択すればよい。具体的には、例えば、ゴム成分、発泡剤、導電剤、加硫剤、加硫促進剤等の成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機を用いて混練しゴム組成物を調製すればよい。
【0036】
図3は、本発明において使用する加硫成形装置の一例の模式断面図である。本装置は、押出機11、昇温加熱手段としての近赤外線加硫装置12、必要により使用する熱風加熱手段である熱風加硫装置(HAV加硫装置と表すことがある)13、巻引取機14、冷却槽15及び定尺切断機16で構成されている。
【0037】
バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機で混練して調製した原料ゴム組成物は、オープンロールとリボン成形分出し機(不図示)によりリボン状に成形された後に、押出機11に投入される。近赤外線加硫装置12は、入り口側と出口側にテフロン樹脂を被覆したコロを備えている。押出機11で押出成形された未加硫のゴム組成物チューブはこの上を搬送され、搬送される間に近赤外線が照射され昇温加熱されて発泡・加硫されて発泡ゴムチューブが形成される。この発泡ゴムチューブは、HAV加硫装置13に搬送される。HAV加硫装置13は、テフロン樹脂を被覆したコロを備えており、発泡ゴムチューブはこの上を搬送され、搬送される間熱風に曝されて加熱されてさらに加硫される。発泡ゴムチューブは、引取機14で引き取られ、引取機14より排出された直後に、冷却槽15でチューブを冷却し、定尺切断機16により所望の寸法に切断される。その後続けて自動芯金圧入機17により導電性ゴムチューブに芯金が圧入され、導電性を有する発泡ゴムチューブ成形物が調製される。
【0038】
近赤外線加硫装置12、HAV加硫装置13及び巻引取機14の長さは、本実施形態では、順に、0.4m、6m、1mとなっている。近赤外線加硫装置12とHAV加硫装置13間及びHAV加硫装置13と引取機14間の間隙は0.1m乃至1.0mとなるように設定されている。なお、近赤外線加硫装置には、1本あたりの出力0.2kW乃至6.0kWの赤外線ランプが4本又は6本配置されている、また、該赤外線ランプによる近赤外線の照射区域の長さが0.4m以下とすることが好ましい。なお、赤外線ランプは、所定の出力のものを用いることであっても、電流量を調整することで出力を調整できるものであっても良い。
【0039】
上記においては、原料ゴム組成物は押出機11でチューブ状に押出され、その未加硫の原料ゴム組成物チューブは、近赤外線加硫装置12内に搬送され、該近赤外線加硫装置内を、0.5m/min乃至6.0m/minの搬送速度で搬送される。なお、該未加硫の原料ゴム組成物チューブの搬送速度は、1.0m/min乃至3.0m/minとするのがより好ましい。搬送速度を0.5m/min以上とすると、より安定した加硫状態が得られ、3.0m/min以下とすると、より安定した発泡状態が得られ均一な内径寸法となる。該近赤外線加硫装置内において、近赤外線を照射する区域の長さが0.4m以下近赤外線加硫装置内を用い近赤外線を照射し、該ゴム組成物チューブを発泡し、加硫して発泡ゴムチューブを形成する。
【0040】
近赤外線照射装置は1本あたりの照射出力0.2kW乃至6.0kWの赤外線ランプを4本乃至6本使用するのが好ましく、6本とするのがより好ましい。照射出力0.2kW乃至6.0kWの赤外線ランプを1本や3本とすると、装置内で近赤外線のムラが発生し、均一な加硫と発泡を行うことが困難となる。一方、該赤外線ランプを7本以上とすると、近赤外線が過剰にかかる箇所が発生し、不均一な発泡状態となり、更には、所望の抵抗値より高い抵抗値になる不具合が生じることがある。なお、合計の照射出力を1.0kW乃至36.0kWとすることが肝要であり、この範囲の赤外線を照射することにより、均一な発泡セルが達成できる。
【0041】
なお、赤外線ランプとしては、1本あたりの出力が0.2kW乃至6.0kWであることが好ましく、1.0kW乃至4.0kWとするのがより好ましい。赤外線ランプの1本あたりの出力を0.2kW以上とすると、短い装置構成であっても充分な照射を行うことができる。一方、6.0kW以下とすると、過剰な加熱を容易に避けることができ、均一な発泡を必要とする導電性ゴムローラを製造する場合において、制御が非常に容易となる。
【0042】
また、近赤外線を照射する区域の長さを0.4m以下とするのが好ましく、0.3m以下とするのがより好ましい。近赤外線を照射する区域の長さを0.4m以下とすると、均一で安定した発泡状態が得られ均一な内径寸法となる。
【0043】
上記赤外線ランプによる照射で原料ゴム組成物チューブは十分に発泡完了するのであるが、所望の場合には、続いて、発泡ゴムチューブをHAV加硫装置13に搬送し、発泡ゴムチューブを搬送しながらHAV加硫装置13の熱風炉中で加熱して加硫を完了させる。HAV加硫装置13の熱風炉における加熱条件は、特に限定されないが、通常、100℃乃至300℃で1分乃至12分間加熱加硫するのが好ましい。なお、HAV加硫装置13の熱風炉は、ガス炉を熱源とする熱風炉とするのが好ましい。
【0044】
加硫を完了させて得られた上記発泡ゴムチューブは引取機14で引き取られ、引取機14より排出された直後に、冷却槽15でチューブを冷却し、定尺切断機16により所定の寸法に切断される。その後続けて外径4mm乃至10mmの導電性芯材を自動芯金圧入機17により前記導電性ゴムチューブに圧入し導電性を有する発泡ゴムチューブ成形物を調製する。このときの導電性芯材はホットメルト接着剤、又は加硫接着剤等の接着剤を所望の領域に塗布したもの又は、接着剤が塗布していないものどちらであってもよい。
【0045】
次いでこのローラ状成形体は、研磨機(不図示)にセットされて研磨され、所定の外径を有する導電性ゴムローラとされる。
【0046】
なお、上記で得られた導電性ゴムローラは、そのままで、導電性が要求される、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の電子写真装置用ローラとして使用できる。また、得られた導電性ゴムローラを基層部材とし、さらに該発泡ゴム層の表面に、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等として必要な機能層を設けることによって電子写真装置用ローラとする。
【0047】
例えば、現像ローラや帯電ローラでは、上記導電性ゴムローラの発泡ゴム層の外周面には所望の機能を付与するための層が必要に応じて設けられる。なお、係る機能層として、発泡ゴム層から低分子量含有物がしみ出すのを防止するしみ出し防止層、電極層や電気特性を制御する抵抗制御層、感光体等に傷や汚染を与えないために設けられる被覆層等がある。なお、しみ出し防止層、電極層や抵抗制御層、被覆層等を設ける方法としては、公知の方法、例えば、ディップコート法又はロールコート法等の塗工液を用いる方法や、同時成形多層シームレスチューブを被覆する方法等を採用することができる。
【0048】
また、転写ローラでは、発泡ゴム層から低分子量含有物のしみ出しを防止するしみ出し防止層、電気特性を制御する抵抗制御層、被転写材の搬送性を改良するため表面性状を制御する表面性状制御層等の機能を付与するための層を必要に応じて設ければよい。これらの層は、上記現像ローラや帯電ローラの場合と同様の方法で形成作製できる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
【0050】
まず、発泡ゴム層用原料について示す。
【0051】
・NBR:「ニポールDN401」(商品名)、日本ゼオン株式会社製
・エピクロルヒドリンゴム:「エピオン301」(商品名)、ダイソー株式会社製
・EO−PO−AGE三元共重合体:「ゼオスパン8010」(商品名)、日本ゼオン株式会社製
・化学発泡剤:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC」(商品名)、永和化成工業株式会社製
・ステアリン酸:「ルナックS20」(商品名)、花王株式会社製
・酸化亜鉛:亜鉛華1号、白水化学株式会社製
・カーボン:「旭35」(商品名)、旭カーボン株式会社製
【0052】
実施例1
(原料ゴム組成物の調製)
NBR 75.0質量部
エピクロルヒドリンゴム 24.9質量部
EO−PO−AGE三元共重合体 0.1質量部
化学発泡剤 4質量部
ステアリン酸 1質量部
酸化亜鉛 5質量部
カーボン 10質量部
以上の成分をバンバリーミキサーで混練し、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形して、原料ゴム組成物をリボン状で得た。
【0053】
(導電性ゴムローラの作成)
このリボン状に成形したゴム組成物を、図3の加硫成形装置の押出機11(株式会社三葉製作所社製)に投入し、未加硫の原料ゴム組成物チューブを、近赤外線加硫装置内12(アルバック理工株式会社製)へ押出した。なお、本実施例では、加硫成形装置は、HAV装置13は使用せず、取り外して、近赤外線加硫装置12と引取機14を直接つないである。また、近赤外線加硫装置12は、照射出力0.2kWの赤外ランプ6本により、照射長さ0.4mで近赤外線が照射できるようになっている。
【0054】
この未加硫のチューブは、近赤外線照射領域を搬送速度0.5m/minで搬送され、発泡・加硫し、得られ発泡チューブを巻引取機14で引き取り、引取機14より排出された直後に、冷却槽15でチューブを冷却し、定尺切断機16により切断して、外径16.0mm、内径4.2mm、長さ250mmの発泡ゴムチューブ成形物を得た。その後続けて自動芯金圧入機17により外径6mmの導電性芯材(Niメッキの鉄棒)を発泡ゴムチューブ成形物の内径部に圧入し、発泡ゴムチューブ成形物を発泡ゴム層とするローラ状の成形体を得た。このローラ状の成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にて、研磨条件(回転速度2000rpm、送り速度500mm/分)で、外径が13mmになるように研磨して、導電性ゴムローラを得た。
【0055】
上記発泡ゴムチューブ成形物の内外径縦横比及びセル径分布を下記により測定した。また、得られた導電性ゴムローラについて、硬度ムラ、抵抗値とそのムラ及び抵抗値の環境変化を下記により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0056】
(発泡ゴムチューブ成形物の内外径縦横比)
発泡ゴムチューブ成形物を切断した断面を投影機(株式会社ニコン製、プロファイルプロジェクターV−12B(商品名))にて、径の最大部(tmax)と最小部(tmin)を内径外径それぞれ測定する。そして、その比(tmax/tmin)を求め、当該発泡ゴムチューブの内径外外径それぞれ縦横比とする。この比は1に近いほどが好ましい。
【0057】
(発泡ゴムチューブ成形物のセル径分布)
発泡ゴムチューブ成形物を切断した断面をビデオマイクロ(株式会社キーエンス製、デジタルマイクロスコープVH−8000(商品名))にて観察し、外径側のセル径と内径側のセル径の大きさを該装置のモニター中に表示のゲージにて計測した。このとき、外径側のセル径(Dou)と内径側のセル径(Din)から、下記基準でセル形分布を評価した。なお、外径側のセル径(Dou)と内径側のセル径(Din)に差がないことが好ましい。
○:(│Dou-Din│/Dou)≦1.5又は(│Dou-Din│/Din)≦1.5(差がない)
△:(1.5<│Dou-Din│/Dou)≦2.0又は(1.5<│Dou-Din│/Din)≦2.0(やや差がある)
×:(│Dou-Din│/Dou)>2.0又は(│Dou-Din│/Din)>2.0(差がある)
【0058】
(導電性ゴムローラの硬度ムラ)
硬度計(アスカーC型、4.9N荷重)を用い、導電性ゴムローラの発泡ゴム層の任意の場所を周方向に90°毎4箇所測定し、その最大値と最小値の差を硬度ムラとした。なお、硬度ムラは0に近いことが好ましい。
【0059】
(導電性ゴムローラの抵抗値及びその環境変動量)
導電性ゴムローラの抵抗値は、ローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛けて、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で、軸体とドラムとの間に2kVの電圧を印加してローラ1周分を測定し、平均した。この測定をL/L(15℃×10%RH)、N/N(23℃×55%RH)、H/H(35℃×85%RH)の各環境下にて、それぞれ48時間の放置後に行った。
【0060】
このときのN/N環境における抵抗値RNNが当該導電性ゴムローラの抵抗値であり、L/L環境における抵抗値RLLとH/H環境における抵抗値RHHの比(RLL/RHH)を桁〔log(RLL/RHH)〕で表したものを環境変動量とした。なお、抵抗値は1×105Ω乃至5×108Ωであることが好ましく、環境変動量は1.2桁未満であることが好ましい。
【0061】
(導電性ゴムローラの電気抵抗ムラ)
上記N/Nの環境下での抵抗値の測定で、ローラ一周分の抵抗値の最大値Rmaxと最小値Rminを求め、その比(Rmax/Rmin)を桁〔log(Rmax/Rmin)〕で表したものを当該導電性ゴムローラの抵抗値ムラとした。なお、抵抗値ムラは1.2桁未満であることが好ましい。
【0062】
実施例2〜5、比較例1〜5
原料ゴム組成物のNBR、エピクロルヒドリンゴム及びEO−PO−AGE三元共重合体の使用量、発泡加硫の条件(近赤外線ランプの照射出力と数、チューブの搬送速度)を表1又は表2の様に変更した他は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを得た。発泡ゴムチューブ及び導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1又は表2に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1に示したように、EO−PO−AGE三元共重合体をエピクロルヒドリンゴム及び/又はNBRと共に用い、近赤外線加硫装置内の近赤外線照射条件、搬送速度を本願範囲内とすると、発泡チューブの内外径縦横比、セル径の分布が均一であることがわかる。更に導電性ゴムローラの周方向の硬度ムラも小さく、所望の抵抗値も得られ、かつ抵抗ムラ、環境変動量も1.2桁以下と小さいことがわかる。
【0066】
これに対して、表2に示したように、EO−PO−AGE三元共重合体を使用しないと、比較例1では搬送速度が遅いにかかわらず、発泡ゴムチューブ成形物が加硫、発泡せず導電性ゴムローラとして成形できなかった。合計赤外線照射出力が本発明の範囲外では、比較例4、5に見られるように、チューブの成形はできたが形状及び抵抗値にムラがあり、環境変動も大きかった。さらに、EO−PO−AGE三元共重合体を使用しているにかかわらず、搬送速度が外れると、比較例2、3に見られるように、硬度ムラ、抵抗ムラ、環境変動量が大きく、セル径分布、内外径縦横比も悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態の導電性ゴムローラの斜視図である。
【図2】本発明の導電性ゴムローラ(電子写真装置用導電性ゴムローラ)を備えた画像形成装置の一例の断面概略図である。
【図3】本発明における加硫成形装置の一例の断面概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 レーザ光
4 現像装置
5 トナー
6 転写ローラ
7 被転写材
8 クリーニングブレード
9 クリーニング装置
10 定着装置
11 押出機
12 近赤外線加硫装置
13 熱風加硫装置(HAV加硫装置)
14 引取機
15 冷却槽
16 定尺切断機
17 自動芯金圧入機
30 現像ローラ
61 導電性芯材
62 発泡ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該発泡ゴム層を形成する原料ゴム組成物が、少なくともエピクロルヒドリンゴム及び/又はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、数平均分子量10000以上、アリルグリシジルエーテル(AGE)単位含量10mol%以上20mol%以下のエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体、及び化学発泡剤を含有しており、
前記原料ゴム組成物をゴム押出し装置で連続して近赤外線加硫装置内へ、チューブ状に押出して原料ゴム組成物チューブを形成し、該近赤外線加硫装置内を0.5m/min乃至6.0m/minで搬送しながら、近赤外線を、合計照射出力1.0kW乃至36.0kWで、照射して、発泡・加硫することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
近赤外線の照射が、照射出力0.2kW乃至6.0kWの赤外線ランプを4本乃至6本使用することを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
更に、近赤外線照射装置で発泡加硫された発泡ゴムチューブが、熱風加熱により100℃乃至300℃で1分乃至12分間加熱加硫されることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
導電性ゴムローラの抵抗値が、23℃×55%RHの環境下で、1×105Ω乃至5×108Ωとなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記導電性ゴムローラが、電子写真装置用導電性ゴムローラの基層部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
前記電子写真装置用導電性ゴムローラが、転写ローラであることを特徴とする請求項5に記載の導電性ゴムローラの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−58368(P2010−58368A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225982(P2008−225982)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】