説明

有機半導体装置

【課題】製造工程を簡略化し、占有面積を低減したキャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置の提供。
【解決手段】基板1と、基板1上に形成された凸部の少なくとも上面部を構成する第1の電極2と、第1の電極2上及び凸部の側面2b上に設けられる第1の絶縁膜3と、凸部の上方2aの第1の絶縁膜3上に設けられる第2の電極4と、凸部の側面2bの下方に隣接して基板1上に設けられる第3の電極5と、凸部の側面2b上の第1の絶縁膜3を覆い、第2の電極4及び第3の電極5と接するように設けられる有機半導体層6とを備え、第1の電極2と、第1の絶縁膜3と、第2の電極4とから、キャパシタ部20が構成され、第2の電極4及び第3の電極5からなるソース電極及びドレイン電極と、第1の電極2からなるゲート電極と、第1の絶縁膜3からなるゲート絶縁膜と、有機半導体層6からなる半導体層とから、トランジスタ部21を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ分野を中心に、薄膜容量素子及び薄膜トランジスタを集積化したアクティブマトリクスデバイスの応用が拡がっている。液晶テレビにおいては、現在a−Si(アモルファスシリコン)等の無機系半導体を薄膜トランジスタ部に用いたTFT−LCDあるいはAM−LCDと呼ばれるアクティブマトリクス方式の液晶パネルが標準的に用いられている。
【0003】
このようなアクティブマトリクスデバイスにおいては、各画素に設けられた保持容量(キャパシタ)部に、各画素に設けられた薄膜トランジスタを通してデータが書き込まれ、そのデータに応じた表示を行うことにより、従来のパッシブマトリクスよりも高い階調性でかつ高コントラストな、優れた品質の画像を提供することが可能である。
【0004】
最近では液晶パネルのみならず、有機ELパネルの駆動においても、薄膜容量素子と薄膜トランジスタを集積化したアクティブマトリクスバックプレーンが用いられており、特に有機ELパネルの駆動を行う場合は、液晶パネルよりも大きな電流を必要とするため、a−Siよりも移動度の高い多結晶Siが用いられたり、1画素あたり1Trではなく、2Tr以上のトランジスタが設けられたりしている。
【0005】
薄膜トランジスタについては、従来の無機系材料に替えて、有機材料を活性材料として用いる有機薄膜素子への注目が集まっている。有機薄膜素子の代表例としては、有機薄膜トランジスタや、有機EL素子等が挙げられる。有機薄膜素子は、印刷法で成膜ができ、シリコン系等の無機半導体系素子に比べて低温での膜形成が可能であり、超軽量、薄型でフレキシブルなプラスチック基板上にも形成が可能であるため、新しいデバイスの創出や、低コスト化面での期待が高い。
【0006】
有機薄膜トランジスタの応用として最も期待されているものの1つは、上述したアクティブマトリクス型フラットパネルディスプレイのバックプレーンへの応用である。具体的には、液晶、有機EL素子、電子ペーパー等の表示素子を駆動するための画素トランジスタとして有機薄膜トランジスタを使用できる可能性が示されている。しかしながら、有機材料は、一般的に導電性あるいは移動度が低く、無機半導体に比べ高い抵抗値を示すため、駆動電圧が高くなる傾向にある。高抵抗であるため、取れる電流値が少なく、必要性能を満たすトランジスタを形成すれば、トランジスタの占める面積が大きくなるため、結果的に開口率が高いディスプレイを実現することが難しいという問題があった。
【0007】
有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタの代表例として、高分子系材料であるポリチオフェンを用いた電界効果型トランジスタ(非特許文献1)や、低分子系材料であるペンタセンを用いた電界効果型トランジスタ(非特許文献2)などが報告されている。いずれもチャネル領域が基板に対して水平に設けられた、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)構造が用いられているが、動作電圧が20〜30V程度と高く、十分なドレイン電流も得られていなかった。
【0008】
有機薄膜トランジスタのドレイン電流は、飽和領域において次の式で表される。
【0009】
=Wεεμ(V−Vth/(2dL)
(但し、I:ドレイン電流、W:チャネル幅、ε:真空の誘電率、ε:比誘電率、μ:電界効果移動度、V:ゲート電圧、Vth:しきい値電圧、d:ゲート絶縁膜厚み、L:チャネル長)
【0010】
有機薄膜トランジスタを有機ELパネルの画素駆動用トランジスタとして用いる場合、ドレイン電流と開口率の不足が問題となる。有機EL素子は、電流量に応じた輝度を示すため、画素駆動用トランジスタにおいては、一定以上のドレイン電流を必要とする。ドレイン電流を増加させるためには、チャネル幅Wを増加させることが有効であるが、チャネル幅を増加すれば、その分有機薄膜トランジスタの占有面積が増大し、有機EL素子を形成するための面積が減少し、開口率が減少する。また、低い開口率のままパネル輝度を上げようとすれば、個々の有機EL素子の負荷が増え、パネルの短寿命化をもたらす。
【0011】
そこで、ドレイン電流を増加させるためのもう一つの方法として、チャネル長を短くする方法が考えられた。従来のMOS−FETではリソグラフィー技術の解像度に依存するため、短チャネル化に限界があったが、チャネルを縦方向に設け、膜厚でチャネル長を制御することにより、より短いチャネルを再現性良く形成することが可能となる。例えば、銅フタロシアニンの200nm程度の薄膜を有機半導体として用い、薄膜の上下にソース/ドレイン電極を設け、薄膜の中間に半透明あるいは櫛型のAlゲート電極を設ける方法等が報告されており(非特許文献3)、飛躍的な駆動電圧の低減が図られた。しかしながら、オンオフ比の改善、飽和領域の形成や、配線方法の開発等に課題が残されている。
【0012】
また、四角形または三角形のゲート電極を用い、チャネル領域を縦方向に設けた縦型の電界効果トランジスタが開示されている(特許文献1)。この方法によると、高精度にかつ容易に短いチャネル長を得ることができ、しかも、ソース/ドレイン電極とゲート電極とが自己整合的に形成することができると記載されている。
【0013】
また、ゲート電極とソース/ドレイン電極との間の寄生容量の増加を生じることがないと記載されている。しかしながら、画素駆動用トランジスタとして用いた場合において、開口率を向上させる具体的な開示は記載されていない。
【0014】
開口率を向上させる手段として、無機系のa−Siトランジスタを用いた液晶駆動用半導体装置において、透明電極と表示電極の積層部をキャパシタとして利用する方法が開示されている(特許文献2)。この方法によれば、表示電極部の下部にキャパシタを備えることができるため、開口率を減少させることなく、保持容量を得ることが可能である。しかしながら、その構造が複雑であり、無機系の半導体においては動作しても、移動度の低い有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタにおいては、十分に低い駆動電圧での動作や、必要でかつ十分なドレイン電流を取ることが困難であるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−349292号公報
【特許文献2】特開平6−9512号公報
【非特許文献1】A. Tsumura, H. Koezuka, and T. Ando, Appl. Phys. Lett., Vol. 49, p. 1210, 1986
【非特許文献2】D. J. Gundlach, Y. Y. Lin, T. N. Jackson, S. F. Nelson, and D. G. Schlom, IEEE Electron Device Lett., Vol. 18, p. 87, 1997
【非特許文献3】K. Kudo, M. Iizuka, S. Kuniyoshi, and K. Tanaka, Thin Solid Films, Vol. 393, p. 362, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、キャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置において、製造工程を簡略化することができ、かつキャパシタ部及びトランジスタ部の専有面積を低減することができる有機半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、キャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置であって、基板と、基板上に形成された凸部の少なくとも上面部を構成する第1の電極と、第1の電極上及び凸部の側面上に設けられる第1の絶縁膜と、凸部の上方の第1の絶縁膜上に設けられる第2の電極と、凸部の側面の下方に隣接して基板上に設けられる第3の電極と、凸部の側面上の第1の絶縁膜を覆い、第2の電極及び第3の電極と接するように設けられる有機半導体層とを備え、第1の電極と、第1の絶縁膜と、第2の電極とから、キャパシタ部が構成され、第2の電極及び第3の電極からなるソース電極及びドレイン電極と、第1の電極からなるゲート電極と、第1の絶縁膜からなるゲート絶縁膜と、有機半導体層からなる半導体層とから、トランジスタ部が構成されていることを特徴としている。
【0017】
本発明においては、基板上に形成された凸部の少なくとも上面部を構成する第1の電極と、この第1の電極の上に第1の絶縁膜を介して設けられる第2の電極との間でキャパシタ部が構成されている。また、トランジスタ部は、第2の電極と、凸部の側面下方に隣接して基板上に設けられる第3の電極との間に有機半導体層を設け、第1の電極をゲート電極とし、第1の絶縁膜をゲート絶縁膜とすることにより構成されている。従って、本願発明においては、キャパシタ部の側面を利用して、縦型のトランジスタを形成しており、製造工程を簡略化することができるとともに、キャパシタ部及びトランジスタ部の占有面積を低減することができる。従って、本発明の有機半導体装置を、有機EL表示パネルなどの画素駆動用回路として用いることにより、開口率を大幅に高めることができる。
【0018】
本発明においては、第1の電極の下方に、第2の絶縁膜を介して、第4の電極を設け、第4の電極を第2の電極と電気的に接続し、第2の絶縁膜を介して設けられる第4の電極と第1の電極間にもキャパシタを形成してもよい。すなわち、凸部が、基板上に設けられる第4の電極と、第4の電極上に設けられる第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上に設けられる第1の電極とから構成されており、第4の電極が第2の電極と電気的に接続され、キャパシタ部が、第2の絶縁膜を介して設けられる第4の電極と第1の電極間にも形成されていてもよい。
【0019】
本発明の有機半導体装置は、有機EL素子などの表示パネルを駆動するためのアクティブマトリクス型回路とすることができる。例えば、本発明におけるトランジスタ部を駆動用トランジスタとして用い、スイッチング用トランジスタをさらに設け、走査線からの走査信号に応じて信号線からの画素信号を駆動用トランジスタのゲート電極に与えることによって画素表示部を駆動することができる。
【0020】
すなわち、本発明の好ましい実施形態における有機半導体装置は、スイッチング用トランジスタと、駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタからの駆動信号により駆動される画素表示部と、走査信号を与える走査線と、画素信号を与える信号線と、画素表示部に印加する電圧を与える電源線とを備え、駆動用トランジスタが、トランジスタ部から構成され、スイッチング用トランジスタのゲート電極に与えられる走査線からの走査信号に応じてスイッチング用トランジスタが、信号線からの画素信号を駆動用トランジスタのゲート電極である第1の電極に与え、これによってキャパシタ部に電荷を蓄積し、第1の電極の電位またはキャパシタ部に蓄積された電荷量に応じて、電源線に電気的に接続された第2電極と、画素表示部に設けられた第3電極との間を流れる電流を制御し、画素表示部に印加する電源線から供給された電流もしくは電圧を制御することを特徴としている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、製造工程を簡略化することができ、かつキャパシタ部及びトランジスタ部の専有面積を低減し、開口率を向上させることができる。
【0022】
上記好ましい実施形態においては、電源線の一部を、第2の電極として用いてもよい。すなわち、電源線の一部が第2の電極を兼ねており、電源線の一部の下方に、第1の絶縁膜及び第2の電極が設けられていてもよい。電源線の一部を、第2の電極として用いることにより、キャパシタ部及びトランジスタ部の専有面積をさらに低減することができ、開口率をさらに向上させることができる。
【0023】
本発明における有機半導体層を形成するための有機材料としては、電子受容性機能を有する材料(n型半導体)と、電子供与性機能を有する材料(p型半導体)を用いる。例えば、以下に例示するような材料が利用できる。
【0024】
上記電子受容性機能を有する材料としては、例えば、ピリジンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、キノリンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ベンゾフェナンスロリン類およびその誘導体によるラダーポリマー、シアノ− ポリフェニレンビニレンなどの高分子、フッ素化無金属フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニン類およびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体(PTCDA、PTCDIなど)、ナフタレン誘導体( NTCDA、NTCDIなど) 、バソキュプロインおよびその誘導体などの低分子有機化合物が利用できる。また、電子供与性機能を有する材料にフッ素基を置換した材料は電子受容性を示すので、これらフッ素基を導入した材料も利用できる。
【0025】
電子供与性機能を有する材料としては、チオフェンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フェニレン− ビニレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フルオレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ベンゾフランおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、チエニレン− ビニレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、トリフェニルアミンなどの芳香族第3級アミンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、カルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ビニルカルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ピロールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、アセチレンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、イソチアナフェンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ヘプタジエンおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマーなどの高分子、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン類およびそれらの誘導体、ジアミン類、フェニルジアミン類およびそれらの誘導体、ルブレン、ペンタセンなどのアセン類およびその誘導体、ポルフィリン、テトラメチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラベンズポルフィリン、モノアゾテトラベンズポルフィリン、ジアゾテトラベンズポルフィン、トリアゾテトラベンズポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、オクタアルキルチオポルフィラジン、オクタアルキルアミノポルフィラジン、ヘミポルフィラジン、クロロフィル等の無金属ポルフィリンや金属ポルフィリンおよびそれらの誘導体、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、キナクリドン色素、アゾ色素、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン系色素などの低分子有機化合物が利用できる。金属フタロシアニンや金属ポルフィリンの中心金属としては、マグネシウム、亜鉛、銅、銀、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、白金、鉛などの金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物などを用いることができる。
【0026】
有機半導体層としては、上記材料を単体で用いてもよいが、上記材料が適当なバインダ材料に分散混合されたものを用いてもよい。また、適当な高分子有機化合物の主鎖中や側鎖に、上記低分子有機化合物を組み込んだ材料を用いてもよい。バインダ材料あるいは主鎖となる高分子有機化合物としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル型ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などや、これらの共重合体や架橋体、あるいは、ポリビニルカルバゾールやポリシランなどの光導電性ポリマーなどが用いられる。
【0027】
有機半導体層の形成方法として、有機半導体層を構成する材料にもよるが、真空蒸着法やスパッタリング法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、各種の化学的気相成長法(CVD法)、スピンコート法; スクリーン印刷法やインクジェット印刷法などの印刷法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法、浸漬法などの各種コーティング法、スプレー法等を挙げることができる。
【0028】
また、本発明における電極を構成する材料としては、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)等の金属、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、あるいは、これらの金属を含む合金の導電性粒子を挙げることができる。また、透明電極に形成する場合、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)やフッ素ドープされた酸化スズ、酸化亜鉛および酸化錫などの金属酸化物が用いられる。更には、上述した各種の導電性高分子を挙げることもできる。電極材料は、半導体層との間の電気的性質(オーミック性やショットキー性など)によっても選択される。電極は、電極を構成する材料にもよるが、真空蒸着法やスパッタリング法に例示されるPVD法とエッチング技術との組合せ、各種のCVD法とエッチング技術との組合せ、スピンコート法とエッチング技術との組合せ、導電性ペーストや上述した各種の導電性高分子の溶液を用いたスクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法、リフトオフ法、シャドウマスク法、上述した各種コーティング法とエッチング技術との組合せ及び、スプレー法とエッチング技術との組合せを挙げることができる。
【0029】
本発明における絶縁膜は、無機材料または有機材料から形成することができる。絶縁膜を形成するための無機材料としては、金属酸化物や金属窒化物などを用いることができる。
【0030】
絶縁膜を形成するための有機材料としては、例えばパリレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル型ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルフェノール樹脂及びポリビニルアルコール樹脂などの有機材料や、これらの共重合体や架橋体などが利用できる。
【0031】
また、絶縁膜の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法などのPVD法、各種のCVD法、スピンコート法、スクリーン印刷法及びインクジェット印刷法などの印刷法、各種コーティング法、浸漬法、キャスティング法、スプレー法などが挙げられる。
【0032】
本発明における基板としては、各種ガラス基板や、表面に絶縁層が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁層が形成された石英基板、表面に絶縁層が形成されたシリコン基板を挙げることができる。さらには、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドに例示される高分子材料から構成されたプラスチックフィルムやプラスチックシート、プラスチック基板を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基板を使用すれば、例えば曲面形状を有するディスプレイ装置や電子機器への電界効果型トランジスタの組込みあるいは一体化が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、キャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置において、製造工程を簡略化することができ、かつキャパシタ部及びトランジスタ部の占有面積を低減することができる。
【0034】
従って、本発明を、画素駆動用の回路として用いた場合、画素における開口率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
図1は、本発明に従う一実施形態の有機半導体装置を示す断面図である。本実施形態の有機半導体装置は、有機EL素子を用いた画素を駆動するためのアクティブマトリクスデバイスである。図1に示す断面図は、図2に示す平面図のA−A線に沿う断面図である。
【0037】
図2は、アクティブマトリクスデバイスの画素部分を示す平面図であり、図3は等価回路図である。
【0038】
図2及び図3に示すように、縦方向には信号線23及び電源線24が設けられており、横方向には走査線8が設けられている。信号線23及び電源線24と、走査線8により囲まれる部分が、1つの画素を構成している。走査線8は、スイッチング用トランジスタ22のゲート電極として用いられており、スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極の一方の電極9は、信号線23に接続されている。図1に示すように、スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極の他方の電極10は、キャパシタ部20の一方の電極2に接続されており、キャパシタ部20の他方の電極4は電源線24に接続されている。図3に示すように、電源線24は、キャパシタ部20の他方の電極4に接続されるとともに、駆動用トランジスタ21のソース/ドレイン電極の一方に接続されており、駆動用トランジスタ21の他方のソース/ドレイン電極は有機EL素子25に接続されている。有機EL素子25は、図2に示す透明電極14の上に形成されている。
【0039】
図3を参照して、走査線8からの走査信号がスイッチング用トランジスタ22のゲート電極に与えられ、この走査信号に応じて、スイッチング用トランジスタ22が、信号線23からの画素信号を、駆動用トランジスタ21のゲート電極に与えるとともに、キャパシタ部20に電荷が蓄積される。スイッチング用トランジスタ22がオン状態のときは、スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極から与えられる電圧により駆動用トランジスタ21がオン状態となり、電源線24からの電圧が有機EL素子25に印加される。
【0040】
また、スイッチング用トランジスタ22がオフ状態になっても、キャパシタ部20に蓄積された電荷による電圧で、駆動用トランジスタ21がオン状態を保ち、電源線24からの電圧が有機EL素子25に与え続けることができる。このため、画素をほぼ1フレーム期間にわたって発光させ続けることができ、高い輝度を得ることができる。
【0041】
図1を参照して、基板1の上には第1の電極2が形成されており、第1の電極2により、基板1の上に凸部が形成されている。第1の電極2の上には、第1の絶縁膜3が設けられている。第1の絶縁膜3は、第1の電極2の上面2a及び側面2bの上を覆うように設けられている。
【0042】
第1の電極2の上面2aの上方には、第1の絶縁膜3を介して、第2の電極4が設けられている。第1の電極2の側面2bの下方に隣接して、基板1の上に第3の電極5が設けられている。第1の電極2の側面2b上の第1の絶縁膜3は露出した状態となっている。この露出した側面2b上の第1の絶縁膜3を覆い、第2の電極4及び第3の電極5と接するように、有機半導体層6が設けられている。従って、第2の電極4の端部と、第3の電極5の端部との間がチャネル領域となる。
【0043】
従って、本実施形態の有機半導体装置においては、第1の電極2と、第1の絶縁膜3と、第2の電極4とから、キャパシタ部20が構成されている。また、第2の電極4及び第3の電極5からなるソース電極及びドレイン電極と、第1の電極2からなるゲート電極と、第1の絶縁膜3からなるゲート絶縁膜と、有機半導体層6からなる半導体層とから、トランジスタ部21が構成されている。トランジスタ部21は、図2及び図3に示す駆動用トランジスタ21となる。
【0044】
図1に示すように、基板1の上には、もう1つのトランジスタが形成されており、このトランジスタがスイッチング用トランジスタ22となる。このスイッチング用トランジスタ22は、図2及び図3に示すように、基板1上に形成された走査線8をゲート電極として用いている。ゲート電極である走査線8の上を覆うように、ゲート絶縁膜11が形成されており、凸部であるゲート電極8上のゲート絶縁膜11の上には、フローティング電極12が形成されている。また、ゲート電極8の両側の基板上のゲート絶縁膜11の上には、ソース/ドレイン電極9及び10がそれぞれ形成されている。
【0045】
ゲート電極8の両側の側面のゲート絶縁膜11は露出しており、この露出したゲート絶縁膜11を覆うように、有機半導体層13が形成されている。従って、ソース/ドレイン電極9とフローティング電極12との間、及びフローティング電極12とソース/ドレイン電極10との間の領域が、チャネル領域となる。
【0046】
スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極10は、基板1上に形成された電極パッド7に接続されており、この電極パッド7は、第1の電極2と接続されている。これにより、スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極10が、駆動用トランジスタ21のゲート電極(第1の電極)2に接続されている。
【0047】
図4及び図5は、図1に示す本実施形態の有機半導体装置を製造する工程を示す断面図である。また、図6及び図7は平面図である。図4(a)〜(d)は図6(a)〜(d)に対応し、図5(e)〜(h)は図7(e)〜(h)に対応している。
【0048】
図4(a)に示すように、基板1の上に、電極パッド7を形成する。電極パッド7は、蒸着法またはスパッタリング法などにより、例えば、クロム/金の積層膜からなる金属膜を形成し、これをレジストマスクを用いウェットエッチングすることによりパターニングして形成することができる。また、基板1の上に、透明電極14を形成する。透明電極14は、インジウム酸化スズ(ITO)などの透明導電性金属酸化物から、蒸着法またはスパッタリング法などにより形成した後、パターニングして形成する。また、図6(a)に示すように、縦方向にアルミニウムなどの金属膜からなる信号線23及び電源線24を形成する。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、アルミニウムからなる走査線8及び第1の電極2を蒸着法またはスパッタリング法などにより形成し、これをウェットエッチングなどでパターニングして形成する。図6(b)に示すように、走査線8が信号線23及び電源線24と交叉する部分には、層間絶縁膜17を形成し、層間絶縁膜17の上に走査線8を形成する。図4(b)に示すように、第1の電極2は、電極パッド7と電気的に接続するように形成する。
【0050】
次に、図4(c)に示すように、第1の電極2の上面及び側面を覆うように、第1の絶縁膜(ゲート絶縁膜)3を形成する。また、走査線8(ゲート電極)を覆うように、ゲート絶縁膜11を形成する。ゲート絶縁膜11及び第1の絶縁膜3は、例えば、パリレンCを蒸着重合することにより形成することができる。図6(c)は、ゲート絶縁膜11及び第1の絶縁膜3を形成した状態を示している。
【0051】
次に、図4(d)及び図6(d)に示すように、第1の電極2の上方の第1の絶縁膜3の上に第2の電極4を形成し、第1の電極2の側面2bの下方に隣接して、基板1上に第3の電極5を形成する。この第3の電極5は、透明電極14に電気的に接続されている。
【0052】
また、走査線8の上方のゲート絶縁膜11の上にフローティング電極12を形成するとともに、ソース/ドレイン電極9及び10をそれぞれ形成する。ソース/ドレイン電極10は、電極パッド7に接続されており、電極パッド7を介して、第1の電極2に電気的に接続されている。
【0053】
走査線(ゲート電極)8の側面のゲート絶縁膜11上に付着した金属膜、及び第1の電極2の側面2b上の第1の絶縁膜3上に付着した金属膜は、金属膜の蒸着後、エッチングすることにより除去することができる。
【0054】
次に、図5(e)及び図7(e)に示すように、走査線(ゲート電極)8の側面上のゲート絶縁膜11、及び第1の電極2の側面2b上の第1の絶縁膜3の上を覆うように、有機半導体層13及び有機半導体層6をそれぞれ形成する。有機半導体層13及び6は、例えば、ペンタセンを用い蒸着法により形成することができる。
【0055】
次に、図5(f)及び図7(f)に示すように、透明電極14以外の領域の上を覆うように、保護絶縁膜30を形成する。保護絶縁膜30は、例えば、パリレンCから形成することができる。
【0056】
次に、図5(g)及び図7(g)に示すように、透明電極14及び保護絶縁膜30を含む画素全体を覆うように、ホール輸送層31、発光層32、電子輸送層33、及び陰極34をこの順序で蒸着法により形成する。
【0057】
次に、図5(h)及び図7(h)に示すように、陰極34の上に、全体を封止するための封止膜35を形成する。封止膜35は、例えば、パリレン等の樹脂膜と、AlあるいはSiON等の無機膜との積層膜から形成することができる。
【0058】
以上のようにして、本発明に従う有機半導体装置であるアクティブマトリクス型駆動回路を形成することができる。
【0059】
50mm角、0.7mmの厚みのガラス基板の中央に、7.2mm×7.2mmの表示エリアを設け、その中に16×16の画素の表示素子を形成した。各画素の大きさは、0.45mm×0.45mm(面積約0.2mm)である。キャパシタ部20の大きさは、0.28mm×0.07mm(面積約0.02mm)であり、有機EL素子部の大きさは、0.31mm×0.33mm(面積約0.1mm)であり、開口率は50%であった。
【0060】
または、駆動用トランジスタ21は、チャネル幅W=330μm、チャネル長L=1μmの大きさで形成した。キャパシタ部20の上部電極である第2の電極4に対し、V=−5V、V=−5Vを印加した場合、ドレイン電流値として、4μAが得られた。これは、画素内の有機EL素子を200cd/m以上の実用輝度で光らせるのに十分な値である。また、V=−5V、V=0Vの場合のドレイン電流は、約0.04μAであり、オンオフ比として約100が得られた。
【0061】
(比較例1)
比較の有機半導体装置として、図15に示すアクティブマトリクス型回路を形成した。図15に示すように、駆動用トランジスタ21として、スイッチング用トランジスタ22と同様の縦型トランジスタを形成した。スイッチング用トランジスタ22のソース/ドレイン電極10は、第1の電極2に接続されており、第1の電極2は、有機EL素子を形成する透明電極14に隣接して形成されている。第1の電極2には、駆動用トランジスタ21のゲート電極16が接続されている。第1の電極2の上には、層間絶縁膜17が設けられ、層間絶縁膜17の上に、キャパシタ用電極15が形成されている。キャパシタ用電極15は、電源線24に接続されている。
【0062】
従って、この比較例のアクティブマトリクス型回路においては、透明電極14に隣接した領域に、第1の電極2、層間絶縁膜17、及びキャパシタ用電極15からなるキャパシタが設けられている。このため、有機EL素子を形成する領域が狭くなっている。
【0063】
上記実施例1と同様に各画素の大きさを0.45mm×0.45mm(面積約0.2mm)としたところ、キャパシタ部の大きさは、0.28mm×0.07mm(面積約0.02mm)となり、有機EL素子部の大きさは、0.28mm×0.24mm(面積約0.066mm)となった。従って、開口率は33%であった。
【0064】
駆動用トランジスタ21は、チャネル幅W=240μm、チャネル長L=1μmの大きさで形成した。ソース電極に対し、V=−5V、V=−5Vを印加した場合、ドレイン電流値として3μA、オンオフ比として約100が得られた。
【0065】
以上のように、実施例1では開口率が50%であったのに対し、比較例1では開口率が33%となった。このため、比較例1においては、有機EL素子の部分の輝度が同じであっても、パネルの平均輝度は3分の2に低下する。液晶パネルの場合も同様であり、開口率が低いとバックライトの光の利用効率が悪くなり、輝度が低下する。
【0066】
また、有機ELパネルにおいて、開口率が高いパネルと同じパネル平均輝度を得ようとすると、有機EL素子の部分の輝度を上げる必要があり、有機EL素子にかかる負担が高くなり、パネルの寿命に悪影響を及ぼす。液晶パネルにおいても、開口率の小さいパネルで高い輝度を得ようとすると、バックライトの輝度を上げる必要があり、消費電力が増大する等の問題を生じる。従って、開口率を高めることにより、パネルの平均輝度を高めることができ、パネルの寿命を長くしたり、消費電力を低減したりすることが可能となる。
【0067】
(実施例2)
図8は、本発明に従う他の実施形態の有機半導体装置を示す断面図である。図8に示す断面図は、図9に示すB−B線に沿う断面図である。図9は、本実施形態の有機半導体装置を示す平面図である。
【0068】
本実施形態においては、図8に示すように、基板1の上に第4の電極19が設けられ、第4の電極19の上に第2の絶縁膜18を形成し、第2の絶縁膜18の上に第1の電極2が形成されている。第2の電極4と第4の電極19は、電源線24に接続されている。従って、本実施形態においては、第1の電極2と第2の電極4との間、及び第1の電極2と第4の電極19との間にキャパシタが形成され、より大きな保持容量を形成することができる。
【0069】
図10は、図8及び図9に示す本実施形態の有機半導体装置を製造する工程を説明するための平面図である。
【0070】
図10(a)に示すように、基板上に電極パッド7及び透明電極14を形成する。また、信号線23及び電源線24を形成する。電源線24には、図10(a)に示すように、信号線23側に向かって電源線24から連続して延びる第4の電極19を有している。
【0071】
次に、図10(b)に示すように、第4の電極19、信号線23の一部、及び電源線24の一部を覆うように、第2の絶縁膜18を形成する。第2の絶縁膜18には、電極パッド7の上にスルーホール18aが形成されている。また、電源線24の上方の一部にも、スルーホール18bが形成されている。
【0072】
次に、図10(c)に示すように、第4の電極19の上方の第2の絶縁膜18の上に、第1の電極2を形成する。この第1の電極2は、スルーホール18aを通り下方の電極パッド7に電気的に接続されている。また、第2の絶縁膜18の上に横方向に走査線8が形成される。
【0073】
次に、図10(d)に示すように、走査線8及び第1の電極2の上を覆うように第1の絶縁膜3を形成する。電極パッド7上方の第1の絶縁膜3では、スルーホール3aが形成されている。また、スルーホール18bの上にも、スルーホール3bが形成されている。
【0074】
次に、図10(e)に示すように、第1の絶縁膜3の上に、第2の電極4が形成されている。第2の電極4は、スルーホール3b及びスルーホール18bを通して、その下方の電源線24と電気的に接続されている。また、透明電極14と接続される第3の電極5が形成されている。
【0075】
さらに、スイッチング用トランジスタを形成するためのソース/ドレイン電極9及び10並びにフローティング電極12が形成される。ソース/ドレイン電極10は、スルーホール3aを介して第1の電極2と電気的に接続されている。
【0076】
次に、図9に示すように、第2の電極4及び第3の電極5と接するように、有機半導体層6が形成される。これにより、駆動用トランジスタとなるトランジスタ部が形成される。また、同時に、フローティング電極12を覆い、ソース/ドレイン電極9及び10と接するように有機半導体層13が形成される。これにより、スイッチング用トランジスタが形成される。
【0077】
以上のようにして、スイッチング用トランジスタ、駆動用トランジスタであるトランジスタ部及びキャパシタ部を形成した後、実施例1と同様にして、保護絶縁膜を形成し、保護絶縁膜を形成した後、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、陰極をこの順で形成し、さらに全体を封止膜で封止することにより、有機EL素子を画素部に用いたアクティブマトリクス型回路を形成することができる。
【0078】
(実施例3)
図11は、本発明に従うさらに他の実施形態であるアクティブマトリクス型回路を製造する工程を示す平面図である。
【0079】
図11(a)に示すように、基板1上に、第1の電極2、走査線8、及び透明電極14を形成する。走査線8には、下方に延びるゲート電極部8aが形成されており、第1の電極2からは、ゲート電極部8aに向かって延びる延長部2cが形成されている。
【0080】
次に、図11(b)に示すように、透明電極14以外の領域の上に第1の絶縁膜3を形成する。延長部2cの端部の上の第1の絶縁膜3には、スルーホール3aが形成されている。
【0081】
次に、図11(c)に示すように、第1の絶縁膜3の上に、信号線23及び電源線24を形成する。信号線23からは、ソース/ドレイン電極9を連続して形成する。または、ゲート電極部8a上の第1の絶縁膜3の上にはフローティング電極12を形成する。また、ゲート電極部8aの反対側には、ソース/ドレイン電極10を形成し、このソース/ドレイン電極10をスルーホール3aを通して第1の電極2に電気的に接続する。
【0082】
第1の電極2の上方の第1の絶縁膜3の上には、電源線24を形成する。または、同時に透明電極14と電気的に接続された第3の電極5を形成する。
【0083】
次に、図11(d)に示すように、電源線24と第3の電極5に接するように、有機半導体層6を形成する。従って、本実施形態においては、電源線24の一部を第2の電極として用いている。有機半導体層6を形成することにより、駆動用トランジスタを形成する。
【0084】
また、図11(c)に示すフローティング電極12及びソース/ドレイン電極9及び10の上に、有機半導体層13を形成する。これによりスイッチング用トランジスタを形成する。
【0085】
図12は、図11(d)に示すC−C線に沿う断面図である。図12に示すように、基板1の上には第1の電極2が形成されており第1の電極2の上に、第1の絶縁膜3を介して第2の電極としての電源線24が形成されている。従って、本実施形態においては、第2の電極として機能する電源線24の一部と、第1の電極2との間にキャパシタ部が形成されている。
【0086】
本実施形態のように、電源線24の一部を用いて第2の電極とすることにより、さらにキャパシタ部及びトランジスタ部が占有する面積を小さくすることができ、さらに開口率を向上させることができる。
【0087】
(実施例4)
図13は、本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体装置である、有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型回路の製造工程を示す平面図である。
【0088】
図13(a)に示すように、基板の上に、電極パッド7、透明電極14、信号線23、及び電源線24を形成する。電源線24は、図13(a)に示すように、信号線23側に向かって延びる第4の電極部19aを有している。
【0089】
次に、図13(b)に示すように、層間絶縁膜17を形成する。層間絶縁膜17は、電源線24の部分を覆い、さらに信号線23の一部を覆うように形成されている。電極パッド7の上方の層間絶縁膜17には、スルーホール17aが形成されている。また、電源線24の上方の一部にもスルーホール17bが形成されている。
【0090】
次に、図13(c)に示すように、層間絶縁膜17の上に、第1の電極2を形成する。第1の電極2は、スルーホール17aを介して電極パッド7と接続されるように形成する。また、電源線24に沿うように形成する。横方向には、走査線8を形成する。
【0091】
次に、図13(d)に示すように、第1の電極2及び走査線8を覆うように、第1の絶縁膜3を形成する。第1の絶縁膜3の電極パッド7上方には、スルーホール3aを形成する。また、スルーホール17bの上方にも、スルーホール3bを形成する。
【0092】
次に、図13(e)に示すように、第1の絶縁膜3の上に、第2の電極4を形成する。第2の電極4は、スルーホール3b及びスルーホール17bを通して、電源線24と電気的に接続されている。また、透明電極14と接続される第3の電極5を形成する。また、走査線8をゲート電極とするスイッチング用トランジスタのソース/ドレイン電極9及び10及びフローティング電極12を形成する。
【0093】
次に、図13(f)に示すように、第2の電極4と第3の電極5と接するように、有機半導体層6を形成し、この有機半導体層6を形成することにより、駆動用トランジスタを形成する。
【0094】
また、ソース/ドレイン電極9及び10と接し、フローティング電極12を覆うように、有機半導体層13を形成する。この有機半導体層13の形成により、スイッチング用トランジスタを形成する。
【0095】
図14は、図13(f)に示すD−D線に沿う断面図である。
【0096】
図14に示すように、電源線24の上には、層間絶縁膜17が形成され、層間絶縁膜17の上に、第1の電極2が形成されている。また、第1の電極2の上には、第1の絶縁膜3を介して第2の電極4が形成されている。第2の電極4は、スルーホール3b及びスルーホール17bを介して電源線24と接続されている。従って、本実施形態においては、第1の電極2と第2の電極4との間、及び第1の電極2と電源線24との間にキャパシタが形成されている。従って、キャパシタ部における保持容量を大きくすることができる。
【0097】
また、電源線24の上に第1の電極2及び第2の電極4を形成しているので、本実施形態においては、キャパシタ部及びトランジスタ部が占有する面積をより小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、開口率をさらに高めることができる。
【0098】
上記各実施例においては、有機EL素子を駆動するアクティブマトリクス型回路を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶パネルなどその他の画素の駆動回路としても用いることができるものである。
【0099】
また、本発明の有機半導体装置は、上記のようなアクティブマトリクス型回路に限定されるものではなく、キャパシタ部及びトランジスタ部を有する有機半導体装置に広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に従う一実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を示す断面図。
【図2】本発明に従う一実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を示す平面図。
【図3】本発明に従う一実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を示す等価回路図。
【図4】図1に示す実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を製造する工程を示す断面図。
【図5】図1に示す実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を製造する工程を示す断面図。
【図6】図1に示す実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を製造する工程を示す平面図。
【図7】図1に示す実施形態の有機半導体装置であるアクティブトランジスタ型回路を製造する工程を示す平面図。
【図8】本発明に従う他の実施形態の有機半導体装置であるアクティブマトリクス型回路を示す断面図。
【図9】本発明に従う他の実施形態の有機半導体装置であるアクティブマトリクス型回路を示す平面図。
【図10】本発明に従う他の実施形態の有機半導体装置であるアクティブマトリクス型回路を製造する工程を示す平面図。
【図11】本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体装置であるアクティブマトリクス型回路の製造工程を示す平面図。
【図12】図11(d)に示すC−C線に沿う断面図。
【図13】本発明に従うさらに他の実施形態の有機半導体装置であるアクティブマトリクス型回路の製造工程を示す平面図。
【図14】図13(f)に示すD−D線に沿う断面図。
【図15】比較例のアクティブマトリクス型回路を示す平面図。
【符号の説明】
【0101】
1…基板
2…第1の電極(ゲート電極)
3…第1の絶縁膜(ゲート絶縁膜)
4…第2の電極(ソース/ドレイン電極)
5…第3の電極(ソース/ドレイン電極)
6…有機半導体層
7…電極パッド
8…走査線(ゲート電極)
9…ソース/ドレイン電極
10…ソース/ドレイン電極
11…ゲート絶縁膜
12…フローティング電極
13…有機半導体層
14…透明電極
15…キャパシタ用電極
16…ゲート電極
17…層間絶縁膜
18…第2の絶縁膜
19…第4の電極
20…キャパシタ部
21…トランジスタ部(駆動用トランジスタ)
22…スイッチング用トランジスタ
23…信号線
24…電源線
25…有機EL素子
30…保護絶縁膜
31…ホール輸送層
32…発光層
33…電子輸送層
34…陰極
35…封止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ部とトランジスタ部を有する有機半導体装置であって、
基板と、
前記基板上に形成された凸部の少なくとも上面部を構成する第1の電極と、
前記第1の電極上及び前記凸部の側面上に設けられる第1の絶縁膜と、
前記凸部の上方の前記第1の絶縁膜上に設けられる第2の電極と、
前記凸部の前記側面の下方に隣接して前記基板上に設けられる第3の電極と、
前記凸部の前記側面上の前記第1の絶縁膜を覆い、前記第2の電極及び前記第3の電極と接するように設けられる有機半導体層とを備え、
前記第1の電極と、前記第1の絶縁膜と、前記第2の電極とから、前記キャパシタ部が構成され、
前記第2の電極及び前記第3の電極からなるソース電極及びドレイン電極と、前記第1の電極からなるゲート電極と、前記第1の絶縁膜からなるゲート絶縁膜と、前記有機半導体層からなる半導体層とから、前記トランジスタ部が構成されていることを特徴とする有機半導体装置。
【請求項2】
前記凸部が、前記基板上に設けられる第4の電極と、前記第4の電極上に設けられる第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に設けられる前記第1の電極とから構成されており、
前記第4の電極が前記第2の電極と電気的に接続され、前記キャパシタ部が、前記第2の絶縁膜を介して設けられる前記第4の電極と前記第1の電極間にも形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体装置。
【請求項3】
スイッチング用トランジスタと、駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタからの駆動信号により駆動される画素表示部と、走査信号を与える走査線と、画素信号を与える信号線と、前記画素表示部に印加する電圧を与える電源線とを備え、
前記駆動用トランジスタが前記トランジスタ部から構成され、
前記スイッチング用トランジスタのゲート電極に与えられる前記走査線からの前記走査信号に応じて前記スイッチング用トランジスタが、前記信号線からの前記画素信号を前記駆動用トランジスタの前記ゲート電極である前記第1の電極に与え、これによって前記キャパシタ部に電荷を蓄積し、前記第1の電極の電位または前記キャパシタ部に蓄積された電荷量に応じて、前記電源線に電気的に接続された前記第2の電極と、前記画素表示部に設けられた前記第3の電極との間を流れる電流を制御し、前記画素表示部に印加する前記電源線から供給された電流もしくは電圧を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体装置。
【請求項4】
前記電源線の一部が前記第2の電極を兼ねており、前記電源線の前記一部の下方に、前記第1の絶縁膜及び前記第1の電極が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の有機半導体装置。


【図3】
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【図4】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−260127(P2009−260127A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109033(P2008−109033)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】