説明

自動変速機の制御装置

【課題】掴み換え変速を行う摩擦係合要素に作用するエンジンのイナーシャトルクを低減することが可能な自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】自動変速機3には、摩擦係合要素同士の掴み換えにより変速を行う自動変速機構50と、エンジン2の出力軸と自動変速機構50の入力軸との間に介在し、少なくとも車輌の発進時に係合制御される発進クラッチを有する発進装置10とが備えられている。この自動変速機の制御装置1にあって、制御部100には、発進クラッチの係合状態を制御自在な係合制御手段101と、自動変速機構50における変速を検出する変速検出手段104とが備えられており、該係合制御手段101が、変速検出手段104が変速を検出した際に、摩擦係合要素に作用するエンジン2のイナーシャトルクが低減するように、発進クラッチの係合状態をスリップ状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車輌に搭載される自動変速機の制御装置に係り、詳しくは、エンジンと摩擦係合要素同士の掴み換え変速を行う自動変速機構との間に介在する発進クラッチを備えた自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動変速機を搭載すると共に内燃エンジンを駆動源とする車輌にあっては、発進時において駆動車輪の回転(自動変速機構の回転)が停止状態でかつエンジンが回転状態であるため、それらの差回転を吸収しつつ駆動力を伝達する発進装置が必要であり、一般にこのような発進装置として、トルクコンバータ等の流体伝動装置が用いられている。また、このようなトルクコンバータには、燃費向上等を図るため、エンジンと自動変速機構とを直結状態にし得るロックアップクラッチを備えたものもある。
【0003】
しかしながら、トルクコンバータ等の流体伝動装置は、その設計により伝達性能が決まってしまい、即ち設計段階において、例えば高いスロットル開度に合せて最適に設定すると低いスロットル開度での発進時に最適な伝達状態とならず、反対に低いスロットル開度に合せて最適に設定すると高いスロットル開度での発進時に最適な伝達状態とならず、また、中程度のスロットル開度に合せて最適に設定しても低いスロットル開度や高いスロットル開度での発進時に最適な伝達状態とはならない。つまり、流体伝動装置を発進装置として用いると、設計段階で設定されたスロットル開度以外でより良い発進が難しいという問題がある。
【0004】
そこで、近年、上述のようなトルクコンバータの代わりに、発進クラッチを備えたものが提案されている(特許文献1参照)。このものは、例えば車輌の発進時に該発進クラッチの係合状態を制御することで、エンジンから自動変速機構に伝達するトルク容量を目標通り制御し、かつ上記差回転を吸収して、それにより車輌をより良く発進させることを可能にしている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−233356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを備えたものにあって、例えば該ロックアップクラッチが係合状態のまま自動変速機構においてアップシフト変速が行われると、自動変速機構とエンジンとが直結状態であるため、エンジンの回転数変化(減速)に伴うイナーシャトルク(慣性力)が自動変速機構に伝達されてしまい、特に変速初期に車輌を突き上げるような変速ショックが生じてしまうという問題がある。そのため、このようなロックアップクラッチ付きのトルクコンバータにあっては、変速時にロックアップクラッチをスリップないし解放し、それによって上述の変速ショックを低減することが行われている。また、このような事情を鑑み、発進クラッチを備えたものにあっても、変速時には、上記ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータと同様なトルク伝達を行うように該発進クラッチのトルク容量を制御し、同様のドライバビリティを確保することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記トルクコンバータは、ロックアップクラッチを解放し、変速初期のエンジンのイナーシャトルクを吸収したとしても、その流体伝動によりエンジンの出力軸と自動変速機構の入力軸とが回転伝達状態であり、つまり変速中にあっても自動変速機構における変速に伴ってエンジン回転数が引き摺られて回転数変化する。そのため、特に摩擦係合要素同士の掴み換え変速(クラッチtoクラッチ変速)を行う有段式の自動変速機構にあっては、その掴み換えを行った摩擦係合要素にエンジンのイナーシャトルクが作用してしまうという問題がある。
【0008】
即ち、トルクコンバータに代えて発進クラッチを用いたものにあっても、上述のようにトルクコンバータと同様なトルク伝達を行うように制御すると、自動変速機構の入力軸の回転に引き摺られてエンジン回転数が変化し、つまりエンジンのイナーシャトルクが掴み換えを行った摩擦係合要素に作用してしまう。このようにエンジンのイナーシャトルクが変速を行う摩擦係合要素に作用することは、当該摩擦係合要素の耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などの妨げになるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、自動変速機構における変速中に発進クラッチの係合状態をスリップ状態に制御することで、掴み換え変速を行う摩擦係合要素に作用するエンジンのイナーシャトルクを低減することが可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図10参照)、複数の摩擦係合要素(例えばC1,C2)を有して、それら摩擦係合要素同士の掴み換えにより変速を行う自動変速機構(50)と、エンジン(2)の出力軸と前記自動変速機構(50)の入力軸(51)との間に介在し、少なくとも車輌の発進時に係合制御される発進クラッチ(C)と、を備えた自動変速機(3)の制御装置(1)において、
前記発進クラッチ(C)の係合状態を制御自在な係合制御手段(101)と、
前記自動変速機構(50)における前記変速を検出する変速検出手段(104)と、を備え、
前記係合制御手段(101)は、前記変速検出手段(104)が前記変速を検出した際に、前記発進クラッチ(C)の係合状態をスリップ状態に制御し、前記摩擦係合要素(例えばC2)に作用する前記エンジン(2)のイナーシャトルク(TIE)を低減する、
ことを特徴とする自動変速機の制御装置(1)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図2、図3、図8乃至図10参照)、前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)を検出する入力軸回転数検出手段(55)を備え、
前記変速検出手段(104)は、前記入力軸回転数検出手段(55)の検出に基づき、前記摩擦係合要素同士の掴み換えの変速におけるイナーシャ相(例えばtCからtE)を検出してなる、
請求項1記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は(例えば図2、図3、図5(a)、図6、図8乃至図10参照)、前記係合制御手段(101)は、前記変速検出手段(104)の検出に基づく少なくとも前記イナーシャ相の間(例えばtCからtE、tCからtE’)、前記エンジン(2)の回転数変化率(ωe)を前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数変化率(ωin)よりも小さい第1変化率(ωe1)に設定する第1変化率設定手段(102)を有し、前記設定された第1変化率(ωe1)に応じて前記発進クラッチ(C)の係合状態を制御してなる、
請求項2記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0013】
請求項4に係る本発明は(例えば図2、図3、図5(a)、図6、図8参照)、前記エンジン(2)の回転数(Ne)を検出するエンジン回転数検出手段(106)と、
前記イナーシャ相の開始時(tC)における前記エンジン(2)の回転数(Ne)と前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)との開始時速度比(e)及び前記エンジン(2)の回転数(Ne)に応じた、前記イナーシャ相の終了時(tE)における前記エンジン(2)の回転数(Ne)と前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)との終了時速度比(e)が記録された速度比マップ(121)と、を備え、
前記第1変化率設定手段(102)は、前記イナーシャ相の開始時(tC)における前記エンジン回転数検出手段(106)により検出される前記エンジン(2)の回転数(Ne)と、前記イナーシャ相の開始時(tC)における前記入力軸回転数検出手段(55)により検出される前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)と、に基づき前記開始時速度比(e)を算出すると共に、前記速度比マップ(121)を参照して前記イナーシャ相の終了時(tE)における前記終了時速度比(e)を取得し、前記入力軸回転数検出手段(55)により検出される前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)と前記終了時速度比(e)に基づき前記第1変化率(ωe1)を設定してなる、
請求項3記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0014】
請求項5に係る本発明は(例えば図2、図3、図9参照)、前記第1変化率設定手段(102)は、少なくとも前記イナーシャ相の時間(tCからtE)よりも長い所定時間の間(T)、所定の変化率を前記第1変化率(ωe1)として設定してなる、
請求項3記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0015】
請求項6に係る本発明は(例えば図2、図3、図5(b)、図7、図8乃至図10参照)、前記係合制御手段(101)は、前記第1変化率(ωe1)に応じた前記発進クラッチ(C)の係合状態の制御の終了後(tE,tE’)、前記エンジン(2)の回転数変化率(ωe)を前記第1変化率(ωe1)よりも大きい第2変化率(ωe2)に設定する第2変化率設定手段(103)を有し、前記設定された第2変化率(ωe2)に応じて前記発進クラッチ(C)の係合状態を制御してなる、
請求項3ないし5のいずれか記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0016】
請求項7に係る本発明は(例えば図2、図3、図5(b)、図7、図8乃至図10参照)、前記第1変化率(ωe1)に応じた前記発進クラッチ(C)の係合状態の制御の終了時(tE,tE’)における前記エンジン(2)の回転数(Ne)と前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin)との終了時速度比(e,e’)及び前記エンジン(2)の回転数(Ne,Ne’)に応じた、前記発進クラッチ(C)の係合完了までの完了時間(T)が記録された完了時間マップ(122)を備え、
前記第2変化率設定手段(103)は、前記終了時速度比(e,e’)及び前記エンジン(2)の回転数(Ne,Ne’)に基づき前記完了時間マップ(122)を参照して前記完了時間(T)を取得し、前記完了時間(T)に前記エンジン(2)の回転数(Ne,Ne’)及び前記自動変速機構(50)の入力軸(51)の回転数(Nin,Nin’)が同回転となるように前記第2変化率(ωe2)を設定してなる、
請求項6記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0017】
請求項8に係る本発明は(例えば図2、図10参照)、前記係合制御手段(101)による、前記第1変化率(ωe1)に応じた前記発進クラッチ(C)の係合状態の制御、及び前記第2変化率(ωe2)に応じた前記発進クラッチ(C)の係合状態の制御が行われている間、前記エンジン(2)に出力トルク(Te)の抑制を指令するトルクリダクション指令手段(111)を備えてなる、
請求項7記載の自動変速機の制御装置(1)にある。
【0018】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る本発明によると、係合制御手段が、変速検出手段が変速を検出した際に、発進クラッチの係合状態をスリップ状態に制御し、摩擦係合要素に作用するエンジンのイナーシャトルクを低減するので、当該摩擦係合要素が担う熱量を低減することができ、当該摩擦係合要素の耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などを図ることができる。また、摩擦係合要素が担うトルク容量が減少することで、変速ショックの低減を可能とすることができると共に、反対に変速ショックの低減を図ることなく、変速時間の短縮を図ることも可能とすることができる。
【0020】
請求項2に係る本発明によると、変速検出手段が、入力軸回転数検出手段の検出に基づき、摩擦係合要素同士の掴み換えの変速におけるイナーシャ相を検出するので、イナーシャ相においてエンジンの回転数が変化することに伴うエンジンのイナーシャトルクの低減を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によると、第1変化率設定手段が、変速検出手段の検出に基づく少なくともイナーシャ相の間、エンジンの回転数変化率を自動変速機構の入力軸の回転数変化率よりも小さい第1変化率に設定し、係合制御手段が、設定された第1変化率に応じて発進クラッチの係合状態を制御するので、エンジンの回転数が自動変速機構の入力軸の回転数に追従することなく、つまりエンジンのイナーシャトルクの発生を抑えた状態で自動変速機構における変速を完了させることができる。
【0022】
請求項4に係る本発明によると、第1変化率設定手段が、イナーシャ相の開始時におけるエンジン回転数検出手段により検出されるエンジンの回転数と、入力軸回転数検出手段により検出される自動変速機構の入力軸の回転数とに基づき開始時速度比を算出すると共に、エンジンの回転数と該開始時速度比に基づき速度比マップを参照してイナーシャ相の終了時における終了時速度比を取得し、開始時速度比と終了時速度比とに基づき第1変化率を設定するので、速度比マップに基づくエンジンの回転数に応じた適宜な第1変化率を設定することができる。これにより、エンジンのイナーシャトルクが大きく生じることを防ぐことができるものでありながら、エンジンに対する負荷が減少してエンジン吹きを生じることも防ぐことができるような、適宜なエンジン回転数変化率を維持することができる。
【0023】
請求項5に係る本発明によると、第1変化率設定手段が、少なくともイナーシャ相の時間よりも長い所定時間の間、所定の変化率を第1変化率として設定するので、少なくともイナーシャ相の間は、エンジンのイナーシャトルクが大きく生じることを防ぐことができるものでありながら、エンジンに対する負荷が減少してエンジン吹きを生じることも防ぐことができるような、適宜なエンジン回転数変化率を維持することができる。
【0024】
請求項6に係る本発明によると、第2変化率設定手段が、第1変化率に応じた発進クラッチの係合状態の制御の終了後、エンジンの回転数変化率を第1変化率よりも大きい第2変化率に設定し、係合制御手段が、設定された第2変化率に応じて発進クラッチの係合状態を制御するので、自動変速機構の変速(イナーシャ相)が終了した後、エンジンの回転数を自動変速機構の入力軸の回転数に適宜に近づけることができる。即ち、エンジンの回転数が大きく変化して該エンジンのイナーシャトルクが生じるが、自動変速機構の摩擦係合要素の係合が終了していることによって、当該摩擦係合要素にスリップが生じず、発進クラッチのスリップ状態によって該エンジンのイナーシャトルクを担持することができ、当該摩擦係合要素の耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などを図ることができる。
【0025】
請求項7に係る本発明によると、第2変化率設定手段が、終了時速度比及びエンジンの回転数に基づき完了時間マップを参照して完了時間を取得し、該完了時間にエンジンの回転数及び自動変速機構の入力軸の回転数が同回転となるように第2変化率を設定するので、該完了時間までに亘って適宜なエンジン回転数変化率を維持することができる。
【0026】
請求項8に係る本発明によると、係合制御手段による第1及び第2変化率に応じた発進クラッチの係合状態の制御が行われている間、エンジンに出力トルクの抑制を指令するトルクリダクション指令手段を備えているので、発進クラッチがスリップ状態である間、エンジンの出力トルクを抑制して、摩擦係合要素や該発進クラッチに対する負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図10に沿って説明する。
【0028】
まず、本発明に係る自動変速機の発進装置10の一例について図1を参照しつつ説明する。なお、図1に示す発進装置10においては、説明の便宜上、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)タイプの車輌において前後方向に搭載されたものとして、図中右方側を「前方側」、左方側を「後方側」というが、勿論これに限らず、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車輌のように左右方向に搭載されるものであっても構わず、つまり搭載される車輌の駆動方式を限定するものではない。
【0029】
発進装置10は、例えば自動変速機構(T/M)50及び油圧制御装置60と共に自動変速機(A/T)3を構成するものであって(図2参照)、図1に示すように、大まかにエンジン2(図2参照)の出力軸(クランク軸)に接続される入力部材11と、自動変速機構50の入力軸51に接続される出力部材40とを備えており、ハウジング15内にあって、それら入力部材11と出力部材40とを接続する伝達系路上に、発進クラッチC及びダンパ部30を備えている。
【0030】
入力部材11は、大まかに、前方側の略中心部分に配置されたフランジ部材12と、該フランジ部材12の外周側に固着されたフロントカバー13と、該フロントカバー13の前方外周部分に固着された隔壁部材14とにより構成されている。該フランジ部材12は、エンジン2の出力軸に嵌合するセンターピース12aと、該センターピース12aにより外周側にフランジ状に延設されたフランジ部12bとに形成されており、該フランジ部12bの外縁にフロントカバー13が固着されている。該フロントカバー13に固着された隔壁部材14の前方側には、エンジン出力軸に形成されたフレキシブルプレート(不図示)と接続されるロックピン45が固着されている。また、該フロントカバー13の外周側には、図示を省略したエンジンスターターに噛合するリングギヤ46が固着されている。
【0031】
該フロントカバー13の後方側にはリヤカバー16が固着されていると共に、該リヤカバー16の内周側に中空スリーブ状のスリーブ部材17が固着されており、該スリーブ部材17が図示を省略した自動変速機構50のミッションケースに対して回転自在に支持されて構成されている。即ち、フランジ部材12、フロントカバー13、リヤカバー16、及びスリーブ部材17により詳しくは後述する発進クラッチC及びダンパ部30を内包するハウジングケース15を構成すると共に、該ハウジングケース15全体がエンジン2の出力軸に連結されて、エンジン2の出力回転と同回転で回転するように構成されている。
【0032】
上記フランジ部材12及びフロントカバー13の背面側には、発進クラッチCが配置されている。該発進クラッチCは、大まかに、外摩擦板21a及び内摩擦板21bからなる摩擦板21と、供給される係合圧に基づき該摩擦板21を押圧する油圧サーボ20とで構成されている。該摩擦板21の外摩擦板21aは、上記フロントカバー13の内側に形成されたスプライン13sにスプライン係合しており、エンジン2の回転が伝達されるように構成されている。
【0033】
上記油圧サーボ20は、上記フランジ部材12の背面側をシリンダ25とした、該フランジ部材12及びフロントカバー13をクラッチドラムとする形で構成されている。また、該油圧サーボ20は、シリンダ部材12に対して前後方向に摺動自在に配置されると共に先端部分が上記摩擦板21に対向配置されたピストン部材22と、該フランジ部材12に対してスナップリング27により固定されたリターンプレート23と、該ピストン部材22とリターンプレート23との間に縮設されたリターンスプリング24とを有しており、上記シリンダ25とピストン部材22との間に油室26を形成する形で構成されている。そして、上記摩擦板21の内摩擦板21bは、ハブ部材28のスプライン28sにスプライン係合しており、油圧サーボ20の油室26に供給される係合圧Pcに基づき発進クラッチCが係合されると、エンジン2の回転がハブ部材28に伝達され、つまり後述のダンパ部20のドライブプレート31にエンジン2の回転が伝達される。
【0034】
上記ダンパ部30は、発進クラッチCの後方側に配設されており、大まかに、2枚のドライブプレート31,32と、ドリブンプレート33と、連結プレート36と、ダンパ34及びダンパ35とを備えて構成されている。ドライブプレート31は、上記発進クラッチCの内摩擦板21bにスプライン係合したハブ部材28に、締結ピン38によって締結されていると共に、もう一方のドライブプレート32に締結ピン37によって締結されている。それら一体的に締結されたドライブプレート31,32は、出力部材40に回転自在に位置決め支持されていると共に、同じく出力部材40に回転自在に支持されたドリブンプレート33を挟持しており、それら両プレートの異なる径の部分に形成された長穴形状の収納空間にコイルスプリングからなるダンパ34及びダンパ35が配設されている。
【0035】
該ドリブンプレート33の外周側には、連結プレート36がスプライン嵌合しており、該連結プレート36の内周側は、締結ピン39によって出力部材40に締結されている。該出力部材40は、スラストベアリング41,42によりフランジ部材12及びスリーブ部材17によって軸方向に対して位置決め支持されていると共に、内周側に形成されたスプライン40sが自動変速機構50の入力軸51に形成されたスプライン51sにスプライン係合し、かつ外周側後端が不図示のミッションケースに固定された中空シャフト52にインロー嵌合しており、つまり入力軸51及び中空シャフト52により支持されていると共に、該入力軸51に回転方向に対して連結されている。
【0036】
以上のような発進装置10において、入力軸12の中心部分には、自動変速機3の油圧制御装置60に接続された油路a1が形成されており、該油路a1に発進クラッチCの係合圧が供給されると、油路a2,a3を介して該係合圧が油圧サーボ20の油室26に供給される。該油室26に係合圧が供給されると、リターンスプリング24の付勢力に反してピストン部材22が後方側に押圧駆動され、摩擦板21が押圧されて、つまり発進クラッチCが係合される。また、油室26の係合圧がドレーン(排出)されると、リターンスプリング24の付勢力によって、ピストン部材22が前方側に押戻され、つまり発進クラッチCが解放される。
【0037】
また、上記入力軸51と中空シャフト52との間には、油圧制御装置60に接続された油路a5が形成されており、出力部材40の内周側(スプライン40s,51s)及び油路a6を通って、ハウジングケース15の内部空間15aに連通されている。即ち、上記油路a5より潤滑油が供給されると、油路a6を介して該内部空間15aに潤滑油が供給され、発進クラッチCの摩擦板21やダンパ部40を潤滑する。また、該内部空間15aに供給された潤滑油は、ダンパ部40の後方側から中空シャフト52とスリーブ部材17との間に形成された油路a7に排出され、上記油圧制御装置60の下方に設けられたオイルパンに導かれる。
【0038】
以上説明した発進装置10において、入力部材11にエンジン2から駆動力(回転)が伝達されると、フロントカバー13及び発進クラッチCの外摩擦板21aがエンジン2の出力軸と一体的に回転する。ここで、油圧サーボ20の油室26に係合圧が供給されると、ピストン部材22が摩擦板21を徐々に押圧し、該摩擦板21がスリップしつつ徐々に係合され、つまり発進クラッチCが徐々に係合していく。すると、ハブ部材28に連結されているドライブプレート31,32にエンジン2からの駆動回転が伝達され、ドライブプレート31,32とドリブンプレート33との間のダンパ34,35によりトルク変動を吸収しつつ、ドリブンプレート33に駆動回転を伝達し、出力部材40を介して入力軸51に駆動力を伝達する。そして、更に係合圧が強くされ、発進クラッチCが完全に係合した状態となると、入力部材11と出力部材40とが略々一体状態となり、つまりエンジン2の出力軸と自動変速機構60の入力軸51とが略々直結状態とされる。
【0039】
なお、フロントカバー13の外周前方側と隔壁部材14との間には、該隔壁部材14が溶接等で固着されることで閉塞された空間47が形成されている。この空間47は、空のままでもよいが、必要に応じて所定重量物を充填して、ハウジング15のフライホイール効果を高めるようにしてもよく、また、該空間47部分に、モータ・ジェネレータを配置して、ハイブリッド(アイドリングストップ装置も含む)車用の駆動装置とすることも可能である。
【0040】
つづいて、本発明に係る自動変速機の制御装置1について図2に沿って説明する。
【0041】
本自動変速機の制御装置1は、図2に示すように、詳しくは後述するエンジン(ENG)2からの信号、自動変速機3(自動変速機構50)の入力軸回転数センサ(入力軸回転数検出手段)55及び出力軸回転数センサ56からの信号、アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)70からの信号を入力する制御部(ECU)100を備えており、該制御部100には、第1変化率設定手段102及び第2変化率設定手段103を有する係合制御手段101、イナーシャ相検出手段105を有する変速検出手段104、エンジン回転数検出手段106、エンジントルク検出手段107、変速制御手段110、トルクリダクション指令手段111、速度比マップ121、完了時間マップ122、エンジントルクマップ123、変速マップ124、が備えられて構成されている。
【0042】
また、自動変速機構50には、図示を省略したプラネタリギヤ等からなる歯車機構と、それらの伝達経路を選択的に変更するためのクラッチ及びブレーキ(摩擦係合要素)とが備えられており、変速制御手段110が油圧制御装置60に備えられたソレノイドバルブ(不図示)に電気的指令を行うことで、それらクラッチやブレーキの油圧サーボに供給する係合圧を制御し、該自動変速機構60における摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)同士の掴み換え変速を行うように構成されている。
【0043】
ついで、本自動変速機の制御装置1の制御について図2乃至図10に沿って説明する。本自動変速機の制御装置1おける制御は、図3に示すように、例えばイグニッションがONされ、エンジン2がONされている状態で制御が開始され(S1)、変速制御手段104により自動変速機構50においてパワーオンアップシフト変速中であることを検出するまで待機する(S2のNo、S10)。
【0044】
このパワーオンアップシフト変速においては、図2に示すように、変速制御手段110が、例えば出力軸回転数センサ56により検出される自動変速機構50の出力軸(不図示)の回転数より算出される車速Vと、アクセル開度センサ70により検出されるアクセル開度θとに基づき変速マップ124を参照し、アクセル開度θが所定開度以上の場合にあってアップシフト変速点を判断した際に、上述のように油圧制御装置60のソレノイドバルブ(不図示)に指令することで、自動変速機構50において摩擦係合要素同士の掴み換えが行われ、これによりパワーオンアップシフト変速が行われる。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、このアップシフト変速において掴み換えを行う2つの摩擦係合要素をクラッチとして説明し、特に解放される側をクラッチC1、係合される側をクラッチC2として説明する。
【0045】
変速制御手段110が変速マップ124に基づきパワーオンアップシフト変速を判断すると、油圧制御装置60に対して指令を行い、図8に示すように、時点tAにおいて変速が開始され、係合側のクラッチC2の係合圧PC2を一旦上昇して油圧サーボにおけるガタ詰め動作を行うと共に、解放側のクラッチC1の係合圧PC1を下降させ、時点tBにおいて、クラッチC1が徐々に解放されていくと共にクラッチC2が徐々に係合されていくトルク相が開始される。そのため、自動変速機構50からの出力トルクToutは、時点tBから時点tCの間において下降されていき、クラッチC1からクラッチC2トルクを伝達する分担が移行される。また、この間は、発進クラッチCの油圧サーボ20の油室26に、油圧制御装置60におけるライン圧Pが供給されており、つまり発進クラッチCが完全な係合状態(スリップしない状態)とされている。そして、この時点tCにおいてトルク相が終了すると、自動変速機構50の入力軸51の回転数が変速後の回転数に向かうイナーシャ相が開始される。
【0046】
この時点tAから時点tCまでの間は、図3に示すように、変速検出手段のイナーシャ相検出手段105が、入力軸回転数センサ55による自動変速機構50の入力軸51の回転数(以下、「入力軸回転数」という)Ninの加速度変化に基づき(自動変速機構50における入力軸回転数と出力軸回転数とに基づくギヤ比の変化を検出してもよい)、イナーシャ相の開始を検出するまで待機しており(S3のNo、S10)、時点tCにおいて入力軸回転数Ninが変化を開始すると、該イナーシャ相検出手段105によりイナーシャ相の開始が判定される(S3のYes)。
【0047】
イナーシャ相が開始されると、イナーシャ相が終了したか否かを判定し(S4)、ここではイナーシャ相が開始された直後であるので(S4のNo)、ステップS5に進み、第1変化率設定手段102がエンジン回転数Neの目標を第1変化率に設定する演算を開始する。
【0048】
詳細には、図2及び図4に示すように、まず、エンジン回転数検出手段106が、エンジン2より出力される信号に基づきエンジン2の回転数(以下、「エンジン回転数」という)Neを検出する。また、エンジントルク検出手段107が、上記エンジン回転数Neとアクセル開度センサ70の検出に基づくアクセル開度θとを取得し、エンジン回転数Neとアクセル開度θとに基づくエンジントルクTeが記録されているエンジントルクマップ123を参照して、エンジントルクTeを検出する(図4のB3)。
【0049】
ここで、イナーシャ相の開始時におけるエンジン回転数を「Ne」、入力軸回転数を「Nin」、エンジン回転数と入力軸回転数との速度比(以下、「開始時速度比」という)を「e」、ギヤ比を「gear」とし、イナーシャ相の終了時におけるエンジン回転数を「Ne」、入力軸回転数を「Nin」、エンジン回転数と入力軸回転数との速度比(以下、「終了時速度比」という)を「e」、ギヤ比を「gear」とすると、
イナーシャ相の終了時における入力軸回転数「Nin」は、
【数1】

であり、
イナーシャ相の終了時におけるエンジン回転数「Ne」は、
【数2】

であり、
入力軸回転数の変化率「ωin」は、
【数3】

であり、
エンジン回転数の変化率「ωe」は、
【数4】

である。
【0050】
そのため、このイナーシャ相におけるエンジン回転数の第1変化率「ωe1」を入力軸回転数の変化率「ωin」との関係で示すと、
【数5】

が成立する。
【0051】
また、あらかじめ、速度比マップ121として(図2参照)、図6に示すように、上記開始時速度比eとエンジン回転数Neとの関係から上記終了時速度比eを設定して記録しておく。なお、エンジン回転数の値の大きさの一例を示す「Ne1」「Ne2」「Ne3」「Ne4」は、回転数の低い方から高い方へ順に「Ne1」「Ne2」「Ne3」「Ne4」である。
【0052】
そして、第1変化率設定手段102は、図4に示すブロックB1において、図5(a)に示すように、まず、入力軸回転数センサ55により検出される入力軸回転数Ninを微分して入力軸回転数の変化率ωinを算出し(B1−1)する。つづいて、ブロックB1−3において、エンジン回転数検出手段106の検出によりイナーシャ相開始時におけるエンジン回転数Neと、入力軸回転数センサ55の検出によりイナーシャ相開始時における入力軸回転数Ninと、イナーシャ相開始時のギヤ比gearと、イナーシャ相終了時のギヤ比gearとを取得すると共に、開始時速度比eを算出し、該開始時速度比eとエンジン回転数Ninとにより速度比マップ121より終了時速度比eを取得し、上記数式5にそれらの値を与えてエンジン回転数の第1変化率ωe1を算出する。
【0053】
また、ここで、第1変化率設定手段102は、エンジン回転数検出手段106の検出に基づき実際のエンジン回転数Neを微分して実際のエンジン回転数の変化率ωeを算出し(B1−2)、上記算出した第1変化率ωe1と実際の変化率ωeとの差分に基づきPID制御(比例動作P、積分動作I、微分動作Dによる制御)して(B1−4)、つまり実際の変化率に基づくフィードバック制御を行って正確な目標値としての第1変化率ωe1を算出し、該第1変化率ωe1の設定を行う。
【0054】
このように第1変化率ωe1が設定されると、図3のステップS7に進み、係合制御手段101は、図4に示すように、該第1変化率ωe1をエンジンイナーシャIeに応じて積分してエンジンイナーシャトルクTωe1を算出し(B2)、続いてステップS8に進んで、上述のように検出したエンジントルクTeから該エンジンイナーシャトルクTωe1を減算して、発進クラッチCが伝達すべき目標クラッチトルクTctを算出する。
【0055】
このように目標クラッチトルクTctが算出されると、ステップS9に進み、係合制御手段101が油圧制御装置60の不図示のソレノイドバルブに指令する電流値Icの算出を行う。詳細には、まず、油圧制御装置60から現在の発進クラッチCの油圧サーボ20の油室26に供給している係合圧Pcを検出し、該係合圧Pcに基づき発進クラッチCが伝達している実トルクTcrに換算する(図4のB4)。つづいて、上記算出された目標クラッチトルクTctと実トルクTcrとの偏差Eに基づきPID制御(比例動作P、積分動作I、微分動作Dによる制御)して(B5)、ソレノイドバルブに出力する電流値Icを演算し(B6)、油圧制御装置60のソレノイドバルブに該電流値Icを指令として出力する。つまり、係合制御手段101により、目標クラッチトルクTctに基づく発進クラッチCの伝達トルク容量のフィードバック制御を行う。
【0056】
以上のようにイナーシャ相におけるエンジン回転数Neの第1変化率ωe1を算出し、それに基づき発進クラッチCの係合油圧Pを電流値Icとして指令して発進クラッチCの係合状態を制御することで、図8に示すように、時点tCから時点tEの間において、発進クラッチCの係合油圧Pが降下されて該発進クラッチCが上記目標クラッチトルクTctを伝達するようなスリップ状態に制御され、これによってエンジン回転数Neが第1変化率ωe1による勾配で推移する。
【0057】
この間は、つまりエンジン回転数Neが略々変化しないことに基づきエンジン回転数変化によるエンジンイナーシャトルクが自動変速機構50の入力軸51に対して作用しない、若しくはその作用が大幅に低減されることになる。即ち、例えば図11に示すように、発進クラッチCの係合を維持したまま変速を行った場合には、エンジン回転数Neが入力軸回転数Ninに追従されて、自動変速機構50にエンジンイナーシャトルクTωe1が作用し、出力トルクTout’が大きくなると共に、特に係合側のクラッチC2にエンジンイナーシャトルクが作用して、クラッチC2には熱量QC2’(図中における総面積が熱量となる)が生じてしまうが、本制御のように自動変速機構50にエンジンイナーシャトルクTωe1の作用が低減されることで、係合側のクラッチC2には、略々エンジントルクTeと自動変速機構60におけるイナーシャトルク(即ち、伝達経路における発進クラッチCから係合側のクラッチC2までの伝達部材の慣性力)とだけが作用する状態となり、図8に示すように、出力トルクToutが従来よりも小さくなると共に、クラッチC2には熱量QC2だけしか生じないことになる。これにより、イナーシャ相における変速ショックが低減されると共に(即ち出力トルクToutの低減)、クラッチC2に対する負荷が低減される。
【0058】
なお、このようにイナーシャ相においてエンジンイナーシャトルクが自動変速機構50に略々作用しない状態となり、出力トルクToutが低減されることになるが、クラッチC2の係合圧PC2の上昇を早めて該クラッチC2の係合を早め、イナーシャ相の時間を短縮するようにしてもよい。この際は、自動変速機構50における回転変化が早まり、該自動変速機構50のイナーシャトルクが大きくなって変速ショックが大きくなることになるが、当該該自動変速機構50のイナーシャトルクの増加分を加えた出力トルクToutが従来の出力トルクTout’と同程度になるように制御することで、変速ショックとしてのドライバビリティが悪化することはない。また、この場合、クラッチC2の熱量は、時間が短縮されるため、従来の変速により発生していた熱量QC2’よりも大きくなることはない。
【0059】
つづいて、イナーシャ相の終了後における変速の完了制御について説明する。上述の図8に示す時点tEとなり、イナーシャ相検出手段105が入力軸回転数センサ55の検出による入力軸回転数Ninの加速度変化に基づき(同様に自動変速機構50における入力軸回転数と出力軸回転数とに基づくギヤ比の変化を検出してもよい)、イナーシャ相の終了を検出すると(図3のステップS4のYes)、第1変化率設定手段102による第1変化率の設定を終了すると共に、第2変化率設定手段103がエンジン回転数Neの目標を第2変化率に設定する演算を開始する(S6)。
【0060】
ここで、イナーシャ相の終了時におけるエンジン回転数「Ne」が、時点tGとなる所定時間「T2」後において、エンジン回転数と入力軸回転数との速度比「e」となるため(即ちエンジン回転数と入力軸回転数とが略々同回転となるため)の第2変化率「ωe2」は、
【数6】

の関係が成立する。
【0061】
また、あらかじめ、完了時間マップ122として(図2参照)、図7に示すように、上記開始時速度比eとエンジン回転数Neとの関係から上記完了時間Tを設定して記録しておく。なお、エンジン回転数の値の大きさの一例を示す「Ne1」「Ne2」「Ne3」「Ne4」は、回転数の低い方から高い方へ順に「Ne1」「Ne2」「Ne3」「Ne4」である。
【0062】
そして、第2変化率設定手段103は、図4に示すブロックB1において、図5(b)に示すように、まず、入力軸回転数センサ55により検出される入力軸回転数Ninを微分して入力軸回転数の変化率ωinを算出(B1−5)する。つづいて、ブロックB1−7において、エンジン回転数検出手段106の検出によりイナーシャ相終了時におけるエンジン回転数Neと、入力軸回転数センサ55の検出によりイナーシャ相終了時における入力軸回転数Ninとを取得すると共に、上記終了時速度比eとエンジン回転数Neとにより完了時間マップ122より完了時間Tを取得し、変速の完了時の速度比eをエンジン回転数と入力軸回転数とが略々同回転となるため「1」として、上記数式6にそれらの値を与えてエンジン回転数の第2変化率ωe2を算出する。
【0063】
また、ここで、第2変化率設定手段103は、エンジン回転数検出手段106の検出に基づき実際のエンジン回転数Neを微分して実際のエンジン回転数の変化率ωeを算出し(B1−6)、上記算出した第2変化率ωe2と実際の変化率ωeとの差分に基づきPID制御(比例動作P、積分動作I、微分動作Dによる制御)して(B1−8)、つまり実際の変化率に基づくフィードバック制御を行って正確な目標値としての第2変化率ωe2を算出し、該第2変化率ωe2の設定を行う。
【0064】
このように第2変化率ωe2が設定されると、上記第1変化率の際の制御と同様に、図3のステップS7に進み、係合制御手段101は、図4に示すように、該第2変化率ωe2をエンジンイナーシャIeに応じて積分してエンジンイナーシャトルクTωe2を算出し(B2)、続いてステップS8に進んで、上述のように検出したエンジントルクTeから該エンジンイナーシャトルクTωe2を減算して、発進クラッチCが伝達すべき目標クラッチトルクTctを算出する。
【0065】
その後も同様に、ステップS9に進み、係合制御手段101が、目標クラッチトルクTctに基づく実際のクラッチトルクTcrに応じた発進クラッチCの伝達トルク容量のフィードバック制御を行って(B4〜B6)、油圧制御装置60の不図示のソレノイドバルブに指令する電流値Icの算出を行う。
【0066】
以上のようにイナーシャ相終了後におけるエンジン回転数Neの第2変化率ωe2を算出し、それに基づき発進クラッチCの係合油圧Pを電流値Icとして指令して発進クラッチCの係合状態を制御することで、図8に示すように、時点tEから上記完了時間マップ122に基づく完了時間T後の時点tGまでの間において、発進クラッチCの係合油圧Pが上記第1変化率ωe1の制御における係合油圧よりも上昇されて該発進クラッチCが上記目標クラッチトルクTctを伝達するようなスリップ状態に制御され、これによってエンジン回転数Neが第2変化率ωe2による勾配で推移する。
【0067】
この間は、つまりエンジン回転数Neが低下することに基づきエンジン回転数変化によるエンジンイナーシャトルクTωe2が自動変速機構50の入力軸51に対して作用するため、自動変速機構50の出力トルクToutとしてエンジントルクTeとエンジンイナーシャトルクTωe2が出力されるが、係合側のクラッチC2は完全な係合状態にあってスリップせず、つまり該クラッチC2に熱量が発生することはない。
【0068】
なお、この完了時間Tを上記完了時間マップ122に基づき設定し、それによって目標通りにエンジン回転数Neを第2変化率ωe2で制御しているため、この完了時間マップ122の設定によっては、完了時間Tを長くして、つまりエンジン回転数Neの降下の勾配を緩やかにして、エンジンイナーシャトルクTωe2の発生を分散させることができ、これにより変速ショックの低減を図ることも可能であり、反対に、完了時間Tを短くして、つまりエンジン回転数Neの降下の勾配を急にして、変速時間の短縮を図ることも可能である。また、変速時間の短縮を図る場合には、エンジンイナーシャトルクTωe2の発生が大きくなるため、出力トルクToutが従来の出力トルクTout’と同程度に納まるように設定することが好ましい。
【0069】
以上のように時点tGまでにパワーオンアップシフト変速が完了すると、係合制御手段101が油圧制御装置60に指令し、発進クラッチCの油圧サーボ20の油室26にライン圧Pが供給され、再度発進クラッチCが完全な係合状態とされる。
【0070】
つづいて、上述した第1変化率ωe1の設定手法を変更した別の実施の形態について主に図9に沿って説明する。上述の実施の形態においては、第1変化率設定手段102が上記数式5に基づきイナーシャ相の開始時速度比と速度比マップより得られる終了時速度比とによって第1変化率ωe1を設定するものについて説明したが、本実施の形態においては、第1変化率設定手段102が、少なくともイナーシャ相の時間よりも長い所定時間Tを設定し、その所定時間Tの間、所定の変化率を第1変化率ωe1として設定するものである。
【0071】
即ち、図9に示すように、イナーシャ相の開始時である時点tCにおいて、第1変化率設定手段102が、例えばタイマー等を設定することにより所定時間Tの間、一定の値として決められた第1変化率ωe1を設定することで、係合制御手段101がイナーシャ相の終了時である時点tEよりも後の時点tE’までエンジン回転数Neが第1変化率ωe1で推移するように発進クラッチCの係合状態を制御する。これにより、イナーシャ相の間(時点tCから時点tEまでの間)においては、同様に係合側のクラッチC2にエンジンイナーシャトルクTωe1が作用することを低減することが可能となる。また、これにより、出力トルクToutにおいてエンジンイナーシャトルクTωe1の低減された分が減少し、変速ショックとして低減されると共に、クラッチC2に発生する熱量QC2も従来の熱量QC2’より低減することが可能となる。
【0072】
イナーシャ相の終了時である時点tEから第1変化率ωe1による制御が終了する時点tE’までは、自動変速機構50におけるイナーシャトルクが発生せず、エンジンイナーシャトルクTωe1が自動変速機構50に僅かに伝達される状態であるので、出力トルクToutは、エンジントルクTeと僅かに伝達されるエンジンイナーシャトルクTωe1とだけとなる。
【0073】
その後は、上述の実施の形態と同様に、第1変化率ωe1による制御が終了する時点tE’におけるエンジン回転数Ne’及び入力軸回転数Nin’に基づく速度比e’と、該エンジン回転数Ne’とに基づき完了時間マップ122(図7参照)から完了時間Tが設定され、同様に第2変化率ωe2が設定されて、該エンジン回転数Neが該第2変化率ωe2で推移するように発進クラッチCの係合状態が制御される。これにより、同様に自動変速機構50にエンジンイナーシャトルクTωe2が作用し、出力トルクToutの上昇が生じるが、係合側のクラッチC2がスリップすることはなく、該クラッチC2に熱量が生じることはない。
【0074】
ついで、上記実施の形態を更に変更した別の実施の形態について主に図10に沿って説明する。上述の2つの実施の形態においては、エンジン2はアクセル開度θに基づき略々一定のエンジントルクTeを出力しているものとして説明したが、本実施の形態においては、トルクリダクション指令手段111を備えてエンジン2に変速中においてトルクリダクションの指令を行うものである。
【0075】
即ち、パワーオンアップシフト変速にあっては、従来から変速中におけるイナーシャ相において、エンジン2に対してトルクリダクション指令を行って、エンジントルクTeを減少させることによりエンジン回転数Neの上昇力を抑えると共に、エンジンイナーシャトルクの発生分をエンジントルクTeの減少させることによって出力トルクTout’を低減することが行われている。
【0076】
また、例えば図12に示すように、エンジントルクTeの減少によりエンジンイナーシャトルクの増加を可能とし、つまりエンジントルクTeを減少させた分、エンジンイナーシャトルクが増加されるようにイナーシャ相における変速(クラッチC2の係合)を早めて時点tJで終了させ(トルクリダクションは該変速の終了に合せて時点tIから徐々に解除する)、出力トルクTout”で示すように、トルクリダクションを行わなかった場合の出力トルクTout’よりも短い時間でイナーシャトルクによる変速ショックを終わらせることが可能となる。それにより、トルクリダクションを行わなかった場合にクラッチC2に生じる熱量QC2’が熱量QC2”で示すように減少される。
【0077】
本実施の形態においては、トルクリダクション指令手段111が、係合制御手段101が第1及び第2変化率ωe1,ωe2を設定して発進クラッチCの係合状態を制御する間、つまり変速制御手段110がパワーオンアップシフト変速を行う間、エンジン2にトルクリダクションを行うものである。
【0078】
詳細には、図10に示すように、例えば上述したようにイナーシャ相検出手段105がイナーシャ相の開始を検出し、変速制御手段110がクラッチC1の係合圧PC1を下降させると共にクラッチC2の係合圧PC2を上昇させる際に、トルクリダクション指令手段111に指令し、エンジン2に対するトルクリダクション指令を行う。
【0079】
そして、本実施の形態においては、イナーシャ相の開始時である時点tCからイナーシャ相の終了時である時点tEまでは、第1変化率設定手段102が例えば初めに説明したエンジン回転数Neと入力軸回転数Ninと速度比とに基づく第1変化率ωe1を設定し、エンジン回転数Neを第1変化率ωe1で推移するように、係合制御手段101が発進クラッチCの係合状態を制御する。これにより、従来のトルクリダクションを行い、かつ変速を早めた場合に比しても、自動変速機構50に伝達されるエンジンイナーシャトルクTωe1が低減され、出力トルクToutが従来の出力トルクTout”よりも低減される。このようにトルクリダクションを行った場合にあっても、変速ショックとして低減されると共に、クラッチC2に発生する熱量QC2も従来の熱量QC2”より低減することが可能となる。またこの際は、発進クラッチCが伝達するエンジントルクTeがトルクリダクションにより低減されているため、上述したトルクリダクションを行わない場合に比して該発進クラッチCに生じる負荷も低減することが可能となる。
【0080】
また、イナーシャ相の終了時である時点tEから、第2変化率設定手段103により完了時間Tで変速が完了するように第2変化率ωe2を設定し、エンジン回転数Neを第2変化率ωe2で推移するように、係合制御手段101が発進クラッチCの係合状態を制御する。これにより、従来のトルクリダクションを行った場合の出力トルクTout”に比して、自動変速機構50にエンジンイナーシャトルクTωe2が作用し、出力トルクToutの上昇が生じるが、係合側のクラッチC2がスリップすることはなく、該クラッチC2に熱量が生じることはない。またこの際も同様に、発進クラッチCが伝達するエンジントルクTeがトルクリダクションにより低減されているため、上述したトルクリダクションを行わない場合に比して該発進クラッチCに生じる負荷も低減することが可能となる。
【0081】
なお、以上説明した実施の形態においては、自動変速機構50の変速中に発進クラッチCがスリップすることになるが、自動変速機構50における摩擦係合要素だけでエンジントルク、エンジンイナーシャトルク、自動変速機構50のイナーシャトルクの全てを負担するよりも、これらのトルクを発進クラッチCと該摩擦係合要素とで分担することができるので、自動変速機全体として、耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などに対して有用であることは言うまでもない。また、発進クラッチCは、ディッピング構造で構成することも可能であるので、自動変速機構の摩擦係合要素よりも耐久性に対して有利な構造とすることが可能である。
【0082】
以上説明したように本発明に係る自動変速機の制御装置1よると、係合制御手段101が、変速検出手段104が変速を検出した際に、発進クラッチCの係合状態をスリップ状態となるように係合状態を制御し、摩擦係合要素に作用するエンジン2のイナーシャトルクを低減するので、当該摩擦係合要素が担う熱量を低減することができ、当該摩擦係合要素の耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などを図ることができる。また、摩擦係合要素が担うトルク容量が減少することで、変速ショックの低減を可能とすることができると共に、反対に変速ショックの低減を図ることなく、変速時間の短縮を図ることも可能とすることができる。
【0083】
また、変速検出手段104が、入力軸回転数センサ55の検出に基づき、摩擦係合要素同士の掴み換えの変速におけるイナーシャ相を検出するので、イナーシャ相においてエンジン回転数Neが変化することに伴うエンジン2のイナーシャトルクの低減を図ることができる。
【0084】
詳細には、第1変化率設定手段102が、変速検出手段104の検出に基づく少なくともイナーシャ相の間、エンジン回転数Neの変化率ωeを自動変速機構50の入力軸回転数Ninの変化率ωinよりも小さい第1変化率ωe1に設定し、係合制御手段101が、設定された第1変化率ωe1に応じて発進クラッチCの係合状態を制御するので、エンジン回転数Neが自動変速機構50の入力軸回転数Ninに追従することなく、つまりエンジン2のイナーシャトルクの発生を抑えた状態で自動変速機構50における変速を完了させることができる。
【0085】
また、第1変化率設定手段102が、イナーシャ相の開始時tCにおけるエンジン回転数検出手段106により検出されるエンジン回転数Neと、入力軸回転数センサ55により検出される自動変速機構50の入力軸回転数Ninとに基づき開始時速度比eを算出すると共に、該エンジン回転数Neと該開始時速度比eに基づき速度比マップ121を参照してイナーシャ相の終了時における終了時速度比eを取得し、開始時速度比eと終了時速度比eとに基づき第1変化率ωe1を設定するので、速度比マップ121に基づくエンジン回転数Neに応じた適宜な第1変化率ωe1を設定することができる。これにより、エンジン2のイナーシャトルクが大きく生じることを防ぐことができるものでありながら、エンジン2に対する負荷が減少してエンジン吹きを生じることも防ぐことができるような、適宜なエンジン回転数変化率ωeを維持することができる。
【0086】
また、第1変化率設定手段102が、少なくともイナーシャ相の時間である時点tCから時点tEの間よりも長い所定時間Tの間、所定の変化率を第1変化率ωe1として設定するので、少なくともイナーシャ相の間は、エンジン2のイナーシャトルクが大きく生じることを防ぐことができるものでありながら、エンジン2に対する負荷が減少してエンジン吹きを生じることも防ぐことができるような、適宜なエンジン回転数変化率ωeを維持することができる。
【0087】
また、第2変化率設定手段103が、第1変化率ωe1に応じた発進クラッチCの係合状態の制御の終了後(即ち時点tE又は時点tE’の後)、エンジン回転数変化率ωeを第1変化率ωe1よりも大きい第2変化率ωe2に設定し、係合制御手段101が、設定された第2変化率ωe2に応じて発進クラッチCの係合状態を制御するので、自動変速機構50の変速におけるイナーシャ相が終了した後、エンジン回転数Neを自動変速機構50の入力軸回転数Ninに適宜に近づけることができる。即ち、エンジン回転数Neが第1変化率ωe1で推移していた状態よりも大きく変化して該エンジン2のイナーシャトルクが生じるが、自動変速機構50の摩擦係合要素の係合が終了していることによって、当該摩擦係合要素にスリップが生じず、発進クラッチCのスリップ状態によって該エンジン2のイナーシャトルクを担持することができ、当該摩擦係合要素の耐久性の向上、潤滑油量の低減、摩擦材のコンパクト化などを図ることができる。
【0088】
更に、第2変化率設定手段103が、終了時速度比e及びエンジン回転数Ne(又はエンジン回転数Ne’)に基づき完了時間マップ122を参照して完了時間Tを取得し、該完了時間Tにエンジン回転数Ne及び自動変速機構50の入力軸回転数Ninが同回転となるように第2変化率ωe2を設定するので、該完了時間Tまでに亘って適宜なエンジン回転数変化率ωeを維持することができる。
【0089】
そして、係合制御手段101による第1及び第2変化率ωe1,ωe2に応じた発進クラッチCの係合状態の制御が行われている間、エンジントルクTeの抑制を指令するトルクリダクション指令手段111を備えているので、少なくとも発進クラッチCがスリップ状態である間、エンジントルクNeを抑制して、摩擦係合要素や該発進クラッチCに対する負荷を軽減することができる。
【0090】
なお、以上説明した本発明に係る実施の形態においては、イナーシャ相の開始を検出して発進クラッチCをスリップさせる係合状態に制御するものについて説明したしたが、例えばトルク相の後半から徐々にスリップさせても構わず、勿論、トルク相からイナーシャ相までの変速中の全ての間にて発進クラッチCをスリップさせても構わない。
【0091】
また、本実施の形態においては、エンジンの回転数の変化率を設定するものについて説明したが、例えばエンジン回転数変化の勾配を設定するものであってもよく、つまり摩擦係合要素に作用するエンジンイナーシャが低減できる目標設定を行うものであれば、どのような手法を用いても構わない。
【0092】
更に、本実施の形態において、発進装置10を主に発進クラッチC及びダンパ部30で構成したものについて説明したが、これに限らず、例えば補助的に駆動力の伝達を行う流体伝動装置を設けたものであってもよく、更に、例えばハイブリッド駆動用のモータを備えたような発進装置であってもよく、つまり伝達経路としてエンジンと自動変速機構との間の動力伝達を調整し得るものであれば、どのようなものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る発進装置を示す断面図。
【図2】本発明に係る発進装置の制御装置を示すブロック図。
【図3】変速中発進クラッチ制御を示すフローチャート。
【図4】変速中発進クラッチ制御における演算を説明するブロック線図。
【図5】エンジン回転数変化率の設定における演算を説明するブロック線図で、(a)は第1変化率設定の演算を示す図、(b)は第2変化率設定の演算を示す図。
【図6】速度比マップを示す図。
【図7】完了時間マップを示す図。
【図8】第1の実施の形態に係る変速中発進クラッチ制御の各状態を示すタイムチャート。
【図9】第2の実施の形態に係る変速中発進クラッチ制御の各状態を示すタイムチャート。
【図10】第3の実施の形態に係る変速中発進クラッチ制御の各状態を示すタイムチャート。
【図11】従来の変速中における各状態を示すタイムチャート。
【図12】従来のトルクリダクションを行った変速中における各状態を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0094】
1 自動変速機の制御装置
2 エンジン
3 自動変速機
50 自動変速機構
51 自動変速機構の入力軸
55 入力軸回転数検出手段(入力軸回転数センサ)
101 係合制御手段
102 第1変化率設定手段
103 第2変化率設定手段
104 変速検出手段
106 エンジン回転数検出手段
111 トルクリダクション指令手段
121 速度比マップ
122 完了時間マップ
C 発進クラッチ
Nin 自動変速機構の入力軸の回転数(入力軸回転数)
Ne エンジンの回転数(エンジン回転数)
IE エンジンのイナーシャトルク
Te エンジンの出力トルク(エンジントルク)
所定時間
完了時間
開始時速度比
終了時速度比
tC イナーシャ相の開始時
tE イナーシャ相の終了時
ωe エンジンの回転数変化率
ωe1 第1変化率
ωe2 第2変化率
ωin 自動変速機構の入力軸の回転数変化率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素を有して、それら摩擦係合要素同士の掴み換えにより変速を行う自動変速機構と、エンジンの出力軸と前記自動変速機構の入力軸との間に介在し、少なくとも車輌の発進時に係合制御される発進クラッチと、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記発進クラッチの係合状態を制御自在な係合制御手段と、
前記自動変速機構における前記変速を検出する変速検出手段と、を備え、
前記係合制御手段は、前記変速検出手段が前記変速を検出した際に、前記発進クラッチの係合状態をスリップ状態に制御し、前記摩擦係合要素に作用する前記エンジンのイナーシャトルクを低減する、
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記自動変速機構の入力軸の回転数を検出する入力軸回転数検出手段を備え、
前記変速検出手段は、前記入力軸回転数検出手段の検出に基づき、前記摩擦係合要素同士の掴み換えの変速におけるイナーシャ相を検出してなる、
請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記係合制御手段は、前記変速検出手段の検出に基づく少なくとも前記イナーシャ相の間、前記エンジンの回転数変化率を前記自動変速機構の入力軸の回転数変化率よりも小さい第1変化率に設定する第1変化率設定手段を有し、前記設定された第1変化率に応じて前記発進クラッチの係合状態を制御してなる、
請求項2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記イナーシャ相の開始時における前記エンジンの回転数と前記自動変速機構の入力軸の回転数との開始時速度比及び前記エンジンの回転数に応じた、前記イナーシャ相の終了時における前記エンジンの回転数と前記自動変速機構の入力軸の回転数との終了時速度比が記録された速度比マップと、を備え、
前記第1変化率設定手段は、前記イナーシャ相の開始時における前記エンジン回転数検出手段により検出される前記エンジンの回転数と、前記イナーシャ相の開始時における前記入力軸回転数検出手段により検出される前記自動変速機構の入力軸の回転数と、に基づき前記開始時速度比を算出すると共に、前記速度比マップを参照して前記イナーシャ相の終了時における前記終了時速度比を取得し、前記入力軸回転数検出手段により検出される前記自動変速機構の入力軸の回転数と前記終了時速度比とに基づき前記第1変化率を設定してなる、
請求項3記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記第1変化率設定手段は、少なくとも前記イナーシャ相の時間よりも長い所定時間の間、所定の変化率を前記第1変化率として設定してなる、
請求項3記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記係合制御手段は、前記第1変化率に応じた前記発進クラッチの係合状態の制御の終了後、前記エンジンの回転数変化率を前記第1変化率よりも大きい第2変化率に設定する第2変化率設定手段を有し、前記設定された第2変化率に応じて前記発進クラッチの係合状態を制御してなる、
請求項3ないし5のいずれか記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
前記第1変化率に応じた前記発進クラッチの係合状態の制御の終了時における前記エンジンの回転数と前記自動変速機構の入力軸の回転数との終了時速度比及び前記エンジンの回転数に応じた、前記発進クラッチの係合完了までの完了時間が記録された完了時間マップを備え、
前記第2変化率設定手段は、前記終了時速度比及び前記エンジンの回転数に基づき前記完了時間マップを参照して前記完了時間を取得し、前記完了時間に前記エンジンの回転数及び前記自動変速機構の入力軸の回転数が同回転となるように前記第2変化率を設定してなる、
請求項6記載の自動変速機の制御装置。
【請求項8】
前記係合制御手段による、前記第1変化率に応じた前記発進クラッチの係合状態の制御、及び前記第2変化率に応じた前記発進クラッチの係合状態の制御が行われている間、前記エンジンに出力トルクの抑制を指令するトルクリダクション指令手段を備えてなる、
請求項7記載の自動変速機の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−270926(P2007−270926A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96076(P2006−96076)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】