説明

薄膜トランジスタ基板、表示装置、およびそれらの製造方法

【課題】本発明は、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となるフレキシブルディスプレイに用いることができるTFT基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層と、上記平坦化層の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有する金属層と、上記平坦化層の上記金属層側とは反対側の面に形成されたTFT素子および画素電極とを有し、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていることを特徴とするTFT基板を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンス表示装置などに用いることができる薄膜トランジスタ基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、エレクトロルミネッセンスをELと称する場合がある。)等のフラットパネルディスプレイの急速な普及に伴って、これらのディスプレイを構成するディスプレイ用部材の需要が拡大している。
現在のフラットパネルディスプレイは、その用途をテレビやデスクトップモニターのみならず、携帯用ノートパソコン、携帯電話、携帯用ページャー、携帯用ゲーム機等の携帯型電子機器等にまで広く拡大していることから、さらなる軽量化、小型化、薄型化が求められている。
その一方で、近年中に実施化が計画されている地上デジタル放送の本格普及や、今後のユビキタスネットワークのさらなる進化に対応して、モバイルディスプレイの普及拡大が確実に予測されることから、これに備えて現在のフラットパネルディスプレイよりもさらに薄型・軽量であるフレキシブルディスプレイの実用化が求められている。
【0003】
フレキシブルディスプレイは、従来のフラットパネルディスプレイよりもさらに薄型化・軽量化されるという利点を有するのみならず、自在に変形させることも可能になることから、例えば、ローラブル(巻き取り可能な)モバイルディスプレイを実現することもでき、よりモバイルに適したディスプレイを得ることができるという利点もある。また、フレキシブルディスプレイは、長尺の基板を用いて連続プロセスによって製造することも可能になることから、大量生産性に優れるという利点も期待されている。
【0004】
ところで、薄膜トランジスタ素子(以下、薄膜トランジスタをTFTと称する場合がある。)に代表される半導体トランジスタは、近年のディスプレイの発展に伴ってその用途を拡大する傾向にある。半導体トランジスタは、半導体材料を介して電極が接続されていることにより、スイッチング素子としての機能を果たすものである。
【0005】
従来、半導体トランジスタの半導体材料としては、シリコン、化合物半導体、酸化物半導体などの無機半導体材料が用いられてきた。近年、普及が拡大している液晶表示装置にもこのような無機半導体材料を用いたTFT素子が用いられている。一方、半導体材料としては、有機化合物からなる有機半導体材料も知られており、有機半導体材料は無機半導体材料に比べて安価に大面積化が可能であることから、次世代ディスプレイへの応用などを想定した研究が活発に行われている。
【0006】
現在最も広く普及しているフラットパネルディスプレイは液晶表示装置である。液晶表示装置をフレキシブルなものにするには、TFT素子が形成される基板を、フレキシブル性を有する基板に替えることが必要になる。
このような状況において、基板としては、これまで主として用いられてきたガラス基板に替わり、フレキシブル性を有するプラスチック基板が提案されている。
【0007】
しかしながら、TFT素子の製造プロセスでは高温処理が行われるのが一般的であり、最も低温でも200℃程度の温度が必要であるのに対して、汎用プラスチックのガラス転移温度は200℃以下であり、特に廉価なプラスチックであるPENやPETはガラス転移温度が150℃以下であるため、プラスチック基板上にTFT素子を形成することは困難であるという問題があった。
一方で、室温で形成可能なTFT素子として酸化物半導体の開発が進められており、a−IGZOのようなアモルファス酸化物半導体を用いたTFT素子が提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、酸化物半導体を用いたTFT素子は、連続通電時のしきい電圧の変化が非常に大きく安定性に欠けるという問題があり、長時間の駆動においても安定なTFT素子を実現するためには、酸化ガス雰囲気中において200℃以上の熱処理を行う必要があることが報告されている(特許文献1参照)。そのため、やはりプラスチック基板を用いることには課題が残されている。
【0008】
また、プラスチック基板を用いると、基板上に所望の精度でTFT素子を形成することが困難であるという問題もあった。すなわち、TFT素子の製造プロセスにおいて基板に加わる熱や水分等の影響によって基板の寸法が変化してしまい、TFT素子が形成される精度が損なわれるという問題があった。
【0009】
これらの問題点を解決する手法として、特許文献2には、ガラス基板や石英基板、または絶縁膜が形成されたシリコン基板、金属基板、ステンレス基板を用いて、第1の基板上に形成された薄膜デバイスと第2の基板とを接着して固定した後、第1の基板および第2の基板を取り除くことで、可撓性を有する半導体装置を形成する方法が提案されている。
【0010】
ところで、金属箔などのフレキシブル性を有する金属基板は、金属の種類や厚みに関しては多種多様なものが入手でき適宜選択可能であり、フレキシブル性、耐熱性、寸法安定性を満足することができる。しかしながら、金属基板は光透過性を有さないため、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となる表示装置には用いることができないという問題があった。
【0011】
この点、特許文献3には、フレキシブルディスプレイに関するものではないが、半導体素子基板において、Si基板をくりぬいて透光領域を形成する方法が開示されており、さらには、半導体素子および配線部分にSi基板を残して遮光部を形成することで、半導体素子の誤動作を防止する手法が提案されている。
しかしながら、Si基板を用いるとフレキシブル性がないために基板にクラックや割れが発生するという問題があり、特許文献3に記載されているような半導体素子基板をフレキシブルディスプレイに適用することは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−311404号公報
【特許文献2】特開2002−164354号公報
【特許文献3】特開平6−230429号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】K. Nomura et al. Nature Vol. 432, p. 488-492 (2004-11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となるフレキシブルディスプレイに用いることができるTFT基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層と、上記平坦化層の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有する金属層と、上記平坦化層の上記金属層側とは反対側の面に形成されたTFT素子および画素電極とを有し、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていることを特徴とするTFT基板を提供する。
【0016】
本発明においては、耐熱性を有する金属層を用いるので、平坦化層が形成された金属層上にTFT素子を形成可能であり、またTFT素子の製造プロセスにおいて高温処理が可能であることからTFT特性の良好なTFT素子とすることが可能である。したがって、本発明のTFT基板を用いることにより、優れた表示品質の表示装置を得ることができる。
また本発明においては、従来のプラスチック基板と比較して線熱膨張係数が小さく寸法安定性の良い金属層と樹脂を含有する平坦化層とが積層されているので、TFT素子の製造プロセスにおいて加わる熱や水分等の影響により平坦化層の寸法が変化するのを抑制することができ、精度良くTFT素子を形成し、アライメント精度を向上させることができる。したがって、本発明のTFT基板を用いて表示装置を製造する場合には、アライメントを容易に行うことが可能となる。
また、本発明のTFT基板においては、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されており、平坦化層が光透過性を有するので、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となる表示装置に用いることが可能である。さらに、金属層がフレキシブル性を有し、平坦化層が樹脂を含有するので、平坦化層にクラックを生じさせることなく、フレキシブルディスプレイに用いることが可能である。
【0017】
上記発明においては、少なくとも上記TFT素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、上記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されていることが好ましい。少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されていることにより、TFT素子の半導体層への金属層側からの入射光を遮ることができ、光によるTFT素子の誤動作を防止し、TFT素子の信頼性を高めることができるからである。
【0018】
また本発明においては、上記平坦化層と上記TFT素子の間に、無機化合物を含む密着層が形成されていることが好ましい。密着層が形成されていることにより、平坦化層とTFT素子との密着性が良好となり、TFT素子に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができるからである。
【0019】
また本発明は、上述のTFT基板を有することを特徴とする表示装置を提供する。
本発明によれば、上述のTFT基板を用いるので、優れた表示品質を得ることが可能であり、また表示装置を製造する際のアライメントを容易にすることが可能である。また本発明によれば、上述のTFT基板を備えるので、TFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置とすることが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイとすることが可能である。
【0020】
本発明の表示装置は、透過型液晶表示装置であることが好ましい。本発明におけるTFT基板では、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されており、平坦化層が光透過性を有するので、TFT基板側が受光面となる透過型液晶表示装置とすることが可能である。
【0021】
さらに本発明は、フレキシブル性を有する金属層上に、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、上記平坦化層上にTFT素子を形成するTFT素子形成工程と、上記TFT素子が形成された上記平坦化層上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記金属層を部分的に除去する金属層除去工程とを有することを特徴とするTFT基板の製造方法を提供する。
【0022】
本発明においては、TFT素子を形成した後に金属層を部分的に除去するので、TFT素子の製造プロセスにおいては平坦化層の全面に金属層が形成されていることになるため、平坦化層の寸法変化を抑制し、精度良くTFT素子を形成することが可能となる。
また本発明によれば、金属層を用いることにより、TFT基板を安定的に製造することができるとともに、TFT特性の良好なTFT素子を得ることができる。また、精度良くTFT素子を形成することができ、アライメント精度を向上させることができる。
また本発明においては、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、金属層を部分的に除去するので、本発明により製造されるTFT基板を用いた表示装置においてはTFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置に適用することが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイに適用することが可能なTFT基板を得ることができる。
【0023】
上記発明においては、上記金属層除去工程では、少なくとも上記TFT素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、上記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されるように、上記金属層を部分的に除去することが好ましい。少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去することにより、TFT素子の半導体層を遮光し、光によるTFT素子の誤動作を防止し、TFT素子の信頼性を高めることができるからである。
【0024】
また本発明は、上述のTFT基板を有する表示装置を作製する表示装置作製工程と、上記TFT基板の画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記TFT基板の金属層を部分的に除去する金属層除去工程とを有することを特徴とする表示装置の製造方法を提供する。
【0025】
本発明においては、TFT基板を有する表示装置を作製した後に金属層を部分的に除去するので、表示装置の製造プロセスにおいては平坦化層の全面に金属層が形成されていることになるため、平坦化層の寸法変化を抑制し、アライメント精度を向上させるとともに、アライメントを容易に行うことが可能となる。
また本発明により製造される表示装置は上述のTFT基板を有するので、表示装置を安定的に製造することができるとともに、TFT特性が良好で表示品質に優れる表示装置を得ることができる。
また本発明によれば、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、金属層を部分的に除去するので、本発明により製造される表示装置においてはTFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置を得ることが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイを得ることができる。
【0026】
上記発明においては、上記金属層除去工程では、少なくとも上記TFT基板のTFT素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、上記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されるように、上記金属層を部分的に除去することが好ましい。上述したように、少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去することにより、TFT素子の半導体層を遮光し、光によるTFT素子の誤動作を防止し、TFT素子の信頼性を高めることができるからである。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されており、平坦化層が光透過性を有するので、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となる表示装置に用いることが可能であるという効果を奏する。さらに、金属層がフレキシブル性を有し、平坦化層が樹脂を含有するので、平坦化層にクラックを生じさせることなく、フレキシブルディスプレイに用いることが可能であるという効果を奏する。また、金属層と平坦化層とが積層されているので、平坦化層の寸法変化を抑制し、アライメント精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のTFT基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のTFT基板の一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明のTFT基板の他の例を示す概略平面図である。
【図4】本発明のTFT基板の他の例を示す概略平面図である。
【図5】本発明のTFT基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明のTFT基板の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明のTFT基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図10】本発明の表示装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のTFT基板、表示装置、TFT基板の製造方法、および表示装置の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.TFT基板
まず、本発明のTFT基板について説明する。
本発明のTFT基板は、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層と、上記平坦化層の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有する金属層と、上記平坦化層の上記金属層側とは反対側の面に形成されたTFT素子および画素電極とを有し、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明のTFT基板について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のTFT基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するTFT基板1は、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層3と、平坦化層3の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有する金属層2と、平坦化層3の金属層2側とは反対側の面に形成されたTFT素子10と、TFT素子10上に形成された層間絶縁膜15と、層間絶縁膜15上に形成された画素電極16とを有している。TFT素子10は、トップゲート・ボトムコンタクト構造を備え、平坦化層3上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11と、ソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。そして、ドレイン電極12Dには画素電極16が接続されている。画素電極16が形成されている画素電極形成領域26と、金属層2が形成されていない金属層非形成領域22bとは重なるように配置されており、また少なくとも半導体層11が形成されている半導体層形成領域21に、金属層2が形成されている金属層形成領域22aが配置されている。
【0032】
一般的に金属層は耐熱性を有するので、本発明においては金属層を用いることにより、TFT素子の製造プロセスにおいて従来のガラス基板を用いる場合と同等のプロセスを通すことができ、平坦化層が形成された金属層上にTFT素子を形成可能であり、また高温処理が必要なTFT素子であってもTFT特性の良好なTFT素子とすることが可能である。したがって、本発明のTFT基板を用いることにより、優れた表示品質の表示装置を得ることができる。
【0033】
また、一般的に金属層はプラスチック基板と比較して線熱膨張係数が小さいことから、寸法安定性に優れており、本発明においてはアライメント精度を向上させることができる。さらに、金属層上に樹脂を含有する平坦化層が形成されているので、TFT素子の製造プロセスにおいて加わる熱や水分等の影響により平坦化層の寸法が変化するのを抑制することができ、精度良くTFT素子を形成することができる。したがって、本発明のTFT基板を用いて表示装置を製造する場合には、アライメントを容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、本発明のTFT基板においては、画素電極形成領域26と金属層非形成領域22bとが重なるように配置されており、平坦化層3が光透過性を有するので、金属層非形成領域22bおよび平坦化層3を光が透過することができ、TFT基板1を、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの、TFT基板側が受光面または発光面となる表示装置に用いることが可能となる。また本発明によれば、金属層2がフレキシブル性を有し、平坦化層3が樹脂を含有するので、TFT基板1をフレキシブルディスプレイに用いることが可能であり、また平坦化層3でのクラックの発生を防止することができる。さらに、樹脂を含有する平坦化層3は比較的柔軟であり、この平坦化層3上にゲート絶縁膜14および層間絶縁膜15が形成されているので、ゲート絶縁膜14および層間絶縁膜15が無機材料からなる場合であっても、ゲート絶縁膜14および層間絶縁膜15にクラックが発生し難くすることができる。
【0035】
ここで、フレキシブル性を有する金属層が金属箔であり、金属箔が圧延箔の場合には、金属箔表面に圧延筋による微細な凹凸が存在する。また、金属箔が電解箔の場合にも、金属箔表面に微細な凹凸が存在する。そのため、金属箔上にTFT素子を形成した場合には、微細な凹凸によりTFT素子の電気的性能が低下するという問題があった。また、従来のようなSiO2などの無機物からなる絶縁膜では、金属層表面の微細な凹凸を平坦化することは困難であるという問題があった。
これに対し本発明においては、フレキシブル性を有する金属層上に樹脂を含有する平坦化層が形成されているので、金属層表面の微細な凹凸を平坦化することができ、微細な凹凸によるTFT素子の電気的性能の低下を防ぐことができる。
【0036】
また本発明においては、少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されていることが好ましい。図1に例示するように、少なくとも半導体層形成領域21に金属層形成領域22aが配置されていることにより、TFT素子10の半導体層11には金属層2側から光が照射されないので、光によるTFT素子の誤動作を防止することができ、TFT素子の信頼性を高めることが可能である。
【0037】
なお、「画素電極形成領域の少なくとも一部と、金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されている」とは、本発明のTFT基板を平面視したときに、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なっている状態であることをいう。画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なっている状態には、画素電極形成領域と金属層非形成領域とが完全に一致している状態、画素電極形成領域の一部と金属層非形成領域の全部とが重なっている状態、画素電極形成領域の全部と金属層非形成領域の一部とが重なっている状態、および、画素電極形成領域の一部と金属層非形成領域の一部とが重なっている状態が含まれる。
【0038】
また、「少なくとも半導体層形成領域に、金属層形成領域が配置されている」とは、本発明のTFT基板を平面視したときに、金属層形成領域の少なくとも一部が半導体層形成領域の全部に重なっている状態であることをいう。金属層形成領域の少なくとも一部が半導体層形成領域の全部に重なっている状態には、金属層形成領域が半導体層形成領域に完全に一致している状態、および、金属層形成領域の一部が半導体層形成領域の全部と重なっている状態が含まれる。
【0039】
以下、本発明のTFT基板の各構成について説明する。
【0040】
1.平坦化層
本発明における平坦化層は、金属層上に形成され、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有するものであり、金属層表面の微細な凹凸を平坦化するために設けられる層である。
【0041】
平坦化層の光透過性としては、平坦化層の光透過率が80%以上であることが好ましく、中でも85%以上、特に90%以上であることが好ましい。平坦化層の光透過率が低すぎると、表示装置に用いた場合に輝度が低下する場合があるからである。
なお、光透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠した方法で測定することが可能である。
【0042】
平坦化層の絶縁性としては、平坦化層の体積抵抗が1.0×109Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0043】
平坦化層の表面粗さRaとしては、金属層の表面粗さRaよりも小さければよいが、具体的には、25nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下である。
なお、表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)もしくは走査型白色干渉計を用いて測定した値である。例えば、AFMを用いて測定する場合は、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて、タッピングモードで、カンチレバー:MPP11100、走査範囲:50μm×50μm、走査速度:0.5Hzにて、表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。また、走査型白色干渉計を用いて測定する場合は、New View 5000(Zygo社製)を用いて、対物レンズ:100倍、ズームレンズ:2倍、Scan Length:15μmにて、50μm×50μmの範囲の表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。
【0044】
平坦化層においては、寸法安定性の観点から、平坦化層の線熱膨張係数と金属層の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。平坦化層および金属層の線熱膨張係数が近いほど、TFT基板の反りが抑制されるとともに、TFT基板の熱環境が変化した際に、平坦化層と金属層との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、本発明のTFT基板は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では反らないことが好ましいのであるが、平坦化層の線熱膨張係数が大きいために平坦化層および金属層の線熱膨張係数が大きく異なると、TFT基板が熱環境の変化により反ってしまうおそれがある。
なお、TFT基板に反りが発生していないとは、TFT基板を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
【0045】
具体的に、平坦化層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、最も好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。
【0046】
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、平坦化層のみのフィルムを作製する。平坦化層フィルムの作製方法は、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製))やガラス基板上に平坦化層フィルムを作製した後、平坦化層フィルムを剥離する方法や金属層上に平坦化層フィルムを作製した後、金属をエッチングで除去し平坦化層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた平坦化層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0047】
平坦化層は耐熱性を有することが好ましく、具体的には、平坦化層に含有される樹脂のガラス転移温度が150℃以上であることが好ましく、中でも200℃以上、特に300℃以上であることが好ましい。樹脂のガラス転移温度が低すぎると、平坦化層の耐熱性が低すぎて、平坦化層上にTFT素子を形成することが困難となるからである。
【0048】
平坦化層を構成する樹脂としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、透明ポリイミド、フェノール樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリフタルアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオキサイド、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。中でも、金属層をエッチングして除去する場合にはそのエッチングに耐え得る樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
平坦化層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0050】
平坦化層の厚みとしては、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、後述の金属層形成領域および金属層非形成領域の面積等に応じて適宜選択される。平坦化層の厚みは、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜200μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜100μmの範囲内である。平坦化層の厚みが薄すぎると、絶縁性が維持できなかったり、金属層非形成領域の強度が低下したり、金属層表面の微細な凹凸を平坦化することが困難であったりする。また、平坦化層の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、製膜時の乾燥が困難になったり、材料使用量が増えるためにコストが高くなったりする。
【0051】
平坦化層の形成方法としては、平滑性の良好な平坦化層が得られる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属層上に平坦化層形成用樹脂組成物を塗布する方法、金属層と樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合せる方法、金属層と樹脂フィルムとを加熱圧着する方法を用いることができる。中でも、平坦化層形成用樹脂組成物を塗布する方法が好ましい。平滑性に優れる平坦化層が得られるからである。
【0052】
塗布方法としては、平滑性の良好な平坦化層を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
平坦化層形成用樹脂組成物を塗布する場合、塗布後に樹脂のガラス転移温度以上に加熱することで、膜の流動性を高め、平滑性を良くすることもできる。
【0053】
2.金属層
本発明における金属層は、上記平坦化層の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有するものである。また本発明においては、金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部と、画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されている。
【0054】
なお、金属層のフレキシブル性とは、JIS Z 2248の金属材料曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0055】
金属層の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。
なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、金属層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする以外は、上記平坦化層の線熱膨張係数の測定方法と同様である。
【0056】
また、金属層は耐酸化性を有することが好ましい。通常、TFT素子の製造プロセスにおいて高温処理が施されるからである。特に、TFT素子が酸化物半導体層を有する場合には、酸素の存在下、高温でアニール処理が行なわれることから、金属層は耐酸化性を有することが好ましい。
【0057】
金属層を構成する金属材料としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。中でも、大型の表示装置に適用する場合、SUSが好ましい。SUSは耐酸化性に優れ、また耐熱性にも優れている上、銅などに比べ線熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れる。また、SUS304については特に入手しやすいという利点があり、SUS430については入手しやすく、線熱膨張係数がSUS304より小さいという利点もある。一方、金属層およびTFT素子の線熱膨張係数を考慮すると、線熱膨張係数の観点からは、SUS430よりさらに低線熱膨張係数のチタンやインバーが好ましい。ただし、線熱膨張係数のみでなく、耐酸化性、耐熱性、金属層の展性および延性などに起因する金属層の加工性や、コストも考慮に入れて選択するのが望ましい。
【0058】
金属層が形成されている金属層形成領域および金属層が形成されていない金属層非形成領域の配置としては、金属層非形成領域の少なくとも一部と画素電極形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていればよい。
金属層非形成領域の配置としては、金属層非形成領域の少なくとも一部と画素電極形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていればよく、上述したように、本発明のTFT基板を平面視したときに、金属層非形成領域が画素電極形成領域と完全に一致するように、金属層非形成領域が画素電極形成領域全域に配置されていてもよく、金属層非形成領域の全部が画素電極形成領域の一部と重なるように、金属層非形成領域が画素電極形成領域内に配置されていてもよく、金属層非形成領域の一部が画素電極形成領域の全部と重なるように、金属層非形成領域が画素電極形成領域全域および画素電極形成領域以外の領域に配置されていてもよく、金属層非形成領域の一部が画素電極形成領域の一部と重なるように、金属層非形成領域が画素電極形成領域の一部および画素電極形成領域以外の領域に配置されていてもよい。金属層非形成領域の全部が画素電極形成領域の一部と重なるように、金属層非形成領域が画素電極形成領域内に配置されている場合には、金属層非形成領域の面積を小さくし、金属層形成領域の面積を大きくすることができるので、TFT基板の強度を高めることができる。
【0059】
通常、金属層非形成領域は、画素電極形成領域のうち少なくとも画素領域に配置される。
ここで、「画素領域」とは、本発明のTFT基板を有する表示装置において、画像表示に寄与する領域を意味する。例えば、画素電極形成領域のうち、TFT素子のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、半導体層、蓄積容量等が形成されている領域は、画素領域ではない。
金属層非形成領域は、画素電極形成領域のうち少なくとも画素領域に配置されていればよく、金属層非形成領域の配置については上述のとおりである。
【0060】
また、金属層形成領域および金属層非形成領域の配置としては、中でも、金属層非形成領域が半導体層形成領域に配置されていない、すなわち金属層形成領域が少なくとも半導体層形成領域に配置されていることが好ましい。つまりは、半導体層形成領域には金属層が形成されていることが好ましい。これにより、TFT素子の半導体層に金属層側から光が照射されることがないので、光によるTFT素子の誤動作を防止することができ、TFT素子の信頼性を高めることが可能となるからである。
金属層形成領域が少なくとも半導体層形成領域に配置されている場合、上述したように、本発明のTFT基板を平面視したときに、金属層形成領域が半導体層形成領域に完全に一致するように、金属層形成領域が半導体層形成領域全域のみに配置されていてもよく、金属層形成領域の一部が半導体層形成領域の全部と重なるように、金属層形成領域が半導体層形成領域全域および半導体層形成領域以外の領域に配置されていてもよい。TFT基板の強度の観点から、金属層形成領域の一部が半導体層形成領域の全部と重なっている、すなわち金属層形成領域は半導体層形成領域以外の領域にも配置されていることが好ましい。
【0061】
金属層形成領域および金属層非形成領域の形状、すなわち金属層のパターン形状としては、画素電極の形状、画素領域の形状、TFT素子の半導体層の形状に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、図2に示すように金属層2が格子状に形成されていてもよく、図3に示すように金属層2が線状に形成されていてもよく、図4に示すように金属層2が点状に形成されていてもよい。中でも、TFT基板の強度の観点から、金属層は格子状や線状に形成されていることが好ましい。なお、図2〜図4は本発明のTFT基板の金属層側から見た概略平面図である。
【0062】
金属層の厚みとしては、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜60μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜40μmの範囲内である。金属層の厚みが薄すぎると、TFT基板の強度が低下するおそれがある。また、金属層の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
【0063】
金属層の形態としては、フレキシブル性を有するものであればよいが、金属箔が好ましく用いられる。金属箔は、圧延箔であってもよく電解箔であってもよく、金属材料の種類に応じて適宜選択される。通常、金属箔は圧延により作製される。
【0064】
金属層の表面粗さRaとしては、上記平坦化層の表面粗さRaよりも大きいものであり、例えば50nm〜200nm程度である。なお、上記表面粗さの測定方法については、上記平坦化層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0065】
3.TFT素子
本発明におけるTFT素子は、上記平坦化層の上記金属層側とは反対側の面に形成されるものである。
【0066】
TFT素子の構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、トップゲート構造(正スタガ型)、ボトムゲート構造(逆スタガ型)、コプレーナ型構造を挙げることができる。トップゲート構造およびボトムゲート構造の場合には、さらにトップコンタクト構造、ボトムコンタクト構造を挙げることができる。これらの構造は、TFT素子を構成する半導体層の種類に応じて適宜選択される。
中でも、トップゲート構造、および、コプレーナ型構造のうち半導体層上にゲート電極が配置されているものが好ましい。平坦化層上に半導体層が形成され、半導体層上にゲート電極が配置されている構造の場合、半導体層への平坦化層側からの光照射によるTFT素子の誤動作が懸念されるが、上述したように半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されていることにより、TFT素子の誤動作を防ぐことができる。したがって、このような構造の場合に本発明の構成が有用である。
【0067】
TFT素子を構成する半導体層としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリコン、酸化物半導体、有機半導体が用いられる。
【0068】
シリコンとしては、ポリシリコン、アモルファスシリコンを用いることができる。
酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgZn1−xO)、酸化カドミウム亜鉛(CdZn1−xO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化スズ(SnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZnO系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。
有機半導体としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン、テトラセン、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレン誘導体、フタロシアニン化合物、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シアニン色素等が挙げられる。
【0069】
酸化物半導体の場合、酸化物半導体層上に保護膜や層間絶縁膜をスパッタリング法等により形成すると、酸化物半導体では酸素が欠損するおそれがあるので、酸素欠陥を補うために保護膜や層間絶縁膜の形成後に酸素の存在下でアニール処理を行なうのが一般的である。このアニール処理は数百度と高温で行なわれるため、TFT素子が形成される基板の耐熱性や寸法安定性が懸念されるが、本発明においては平坦化層が形成された金属層をTFT素子が形成される基板として用いるので、耐熱性および寸法安定性を改善することが可能である。
また、有機半導体の場合、光リーク電流が発生しやすいことから、本発明の構成が有用である。
【0070】
半導体層の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0071】
TFT素子を構成するゲート電極、ソース電極およびドレイン電極としては、所望の導電性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にTFT素子に用いられる導電性材料を用いることができる。このような材料の例としては、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、W−Mo合金、ITO、IZO等の無機材料、および、PEDOT/PSS等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0072】
TFT素子を構成するゲート絶縁膜としては、光透過性を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的なTFT素子におけるゲート絶縁膜と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料を用いることができる。
ゲート絶縁膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0073】
TFT素子上には保護膜や層間絶縁膜が形成されていてもよい。保護膜および層間絶縁膜としては、光透過性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料が用いられる。
保護膜および層間絶縁膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0074】
4.画素電極
本発明における画素電極は、上記平坦化層の上記金属層側とは反対側の面に形成されるものであり、光透過性を有している。
【0075】
画素電極の材料としては、透明電極を形成可能な導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
画素電極の形成方法および厚みとしては、一般的な表示装置における電極と同様とすることができる。
【0076】
5.密着層
本発明においては、図5に例示するように、平坦化層3とTFT素子10との間に、無機化合物を含む密着層4が形成されていることが好ましい。密着層が形成されていることにより、TFT素子の密着性を高めることができ、TFT素子の製造プロセスにおいて熱や水分が加わった際に、TFT素子を構成する電極や半導体層に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができる。
【0077】
密着層は平滑性を有することが好ましい。密着層の表面粗さRaは、金属層の表面粗さRaよりも小さければよく、具体的に、25nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下である。密着層の表面粗さRaが大きすぎると、TFT素子の電気的性能が劣化するおそれがあるからである。なお、表面粗さRaの測定方法については、上記平坦化層の表面粗さRaの測定方法と同様である。
【0078】
また、密着層は耐熱性を有することが好ましい。TFT素子の形成時には通常、高温処理が施されるからである。密着層の耐熱性としては、密着層の5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましい。
なお、5%重量減少温度の測定については、熱分析装置(DTG−60((株)島津製作所製))を用いて、雰囲気:窒素雰囲気、温度範囲:30℃〜600℃、昇温速度:10℃/minにて、熱重量・示差熱(TG−DTA)測定を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度(℃)とした。
【0079】
密着層は、通常、絶縁性を有している。
【0080】
また、密着層は、平坦化層に含まれる不純物イオンなどがTFT素子の半導体層に拡散するのを防ぐものであることが好ましい。具体的に、密着層のイオン透過性としては、鉄(Fe)イオン濃度が0.1ppm以下であることが好ましく、あるいはナトリウム(Na)イオン濃度が50ppb以下であることが好ましい。なお、Feイオン、Naイオンの濃度の測定方法としては、密着層上に形成された層をサンプリングして抽出した後、イオンクロマトグラフィー法により分析する方法が用いられる。
【0081】
密着層を構成する無機化合物としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタンを挙げることができる。これらは1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0082】
密着層は、単層であってもよく多層であってもよい。
密着層が多層膜である場合、上述の無機化合物からなる層が複数層積層されていてもよく、上述の無機化合物からなる層と金属からなる層とが積層されていてもよい。この場合に用いられる金属としては、上述の特性を満たす密着層を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素を挙げることができる。
また、密着層が多層膜である場合、密着層の最表層は酸化ケイ素膜であることが好ましい。すなわち、酸化ケイ素膜上にTFT素子が形成されることが好ましい。酸化ケイ素膜は上述の特性を十分に満たすからである。この場合の酸化ケイ素はSiO(Xは1.5〜2.0の範囲内)であることが好ましい。
【0083】
中でも、密着層4は、図6に例示するように、平坦化層3上に形成され、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種からなる第1密着層4aと、第1密着層4a上に形成され、酸化ケイ素からなる第2密着層4bとを有することが好ましい。第1密着層により平坦化層と第2密着層との密着性を高めることができ、第2密着層により平坦化層とTFT素子との密着性を高めることができるからである。また、酸化ケイ素からなる第2密着層は上述の特性を十分に満たすからである。
【0084】
密着層の厚みは、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。中でも、密着層が上述したように第1密着層および第2密着層を有する場合、第2密着層の厚みは第1密着層よりも厚く、第1密着層は比較的薄く、第2密着層は比較的厚いことが好ましい。この場合、第1密着層の厚みは、0.1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。また、第2密着層の厚みは、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲内、さらに好ましくは80nm〜120nmの範囲内である。厚みが薄すぎると、十分な密着性が得られないおそれがあり、厚みが厚すぎると、密着層にクラックが生じるおそれがあるからである。
【0085】
密着層の形成方法としては、上述の無機化合物からなる層や上述の金属からなる層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、DC(直流)スパッタリング法、RF(高周波)マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD(化学気相蒸着)法等を挙げることができる。中でも、上述の無機化合物からなる層を形成する場合であって、アルミニウムやケイ素を含む層を形成する場合には、反応性スパッタリング法を用いることが好ましい。平坦化層との密着性に優れる膜が得られるからである。
【0086】
6.用途
本発明のTFT基板の用途としては、フレキシブルディスプレイが好適である。フレキシブルディスプレイとしては、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー、タッチパネル等が挙げられる。液晶表示装置では、透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、半透過半反射型液晶表示装置のいずれにも本発明のTFT基板を適用することができる。
本発明のTFT基板を反射型液晶表示装置や電子ペーパー等の反射型表示装置に適用する場合には、平坦化層上にカラーフィルタを構成する複数色の着色層が形成され、着色層上にTFT素子および画素電極が形成される。この場合、TFT素子が形成されたTFT基板とカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板とのアライメントを行う必要がないという利点を有する。
【0087】
また、本発明のTFT基板は、表示装置に用いた場合にTFT基板の金属層側の面が受光面または発光面となる表示装置に好適に用いられる。このような表示装置としては、透過型液晶表示装置、半透過半反射型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置、両面発光型有機EL表示装置などが挙げられる。
また、本発明のTFT基板は、シースルー型の有機EL表示装置にも適用でき、意匠性に優れる表示装置を得ることが可能である。
【0088】
さらに、本発明のTFT基板は、互いに異なる波長の光を選択反射するコレステリック液晶層を有する複数の液晶セルが積層された液晶表示装置に適用することもできる。この場合、隣接する液晶セルのうち、液晶表示装置の画像表示側に配置される液晶セルに本発明のTFT基板が用いられる。このような液晶表示装置は、液晶方式の電子ペーパーとして知られており、例えば国際公開第2008/107958号パンフレット等を参照することができる。
【0089】
中でも、光透過性を有し、かつ耐熱性の高いプラスチック基板が少ないことから、本発明のTFT基板は、透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。
【0090】
B.表示装置
次に、本発明の表示装置について説明する。
本発明の表示装置は、上述のTFT基板を備えることを特徴とするものである。
【0091】
本発明によれば、上述のTFT基板を用いるので、優れた表示品質を得ることが可能であり、また表示装置を製造する際のアライメントを容易にすることが可能である。また本発明によれば、上述のTFT基板を備えるので、TFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置とすることが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイとすることが可能である。また本発明においては、上述のTFT基板を有するので、光によるTFT素子の誤動作を防止することもでき、信頼性の高い表示装置とすることが可能となる。
【0092】
本発明の表示装置は、TFT基板を備える表示装置であれば特に限定されるものではないが、中でも、フレキシブルディスプレイであることが好ましい。また、本発明の表示装置は、TFT基板の金属層側の面が受光面または発光面となる表示装置であることが好ましく、特に透過型液晶表示装置が好適である。
なお、表示装置の具体例については、上記「A.TFT基板 6.用途」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0093】
図7は、本発明の表示装置の一例を示す概略断面図であり、透過型液晶表示装置の例である。図7に示す透過型液晶表示装置30においては、TFT基板1の画素電極16上に配向膜35が形成され、対向基板31上に対向電極層32および配向膜33が順に積層され、配向膜35および配向膜33の間に液晶層34が形成されている。TFT基板1は、図1に示すTFT基板1と同様である。この透過型液晶表示装置30では、TFT基板1側の面が受光面となり、TFT基板1側の面から光Lが入射し、対向基板31側の面が観察側となる。
【0094】
図8は、本発明の表示装置の他の例を示す概略断面図であり、ボトムエミッション型有機EL表示装置の例である。図8に示すボトムエミッション型有機EL表示装置40においては、TFT基板1上に隔壁44が形成され、隔壁44間の画素電極16上に発光層43が形成され、隔壁44および発光層43上に対向電極層42が形成され、対向電極層42の上から封止基板41によって封止されている。TFT基板1は、図1に示すTFT基板1と同様である。このボトムエミッション型有機EL表示装置40では、TFT基板1側の面が発光面となり、発光層43からの光LがTFT基板1側の面から取り出される。
【0095】
表示装置の各構成部材については、公知の部材を使用することができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
C.TFT基板の製造方法
次に、本発明のTFT基板の製造方法について説明する。
本発明のTFT基板の製造方法は、フレキシブル性を有する金属層上に、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、上記平坦化層上にTFT素子を形成するTFT素子形成工程と、上記TFT素子が形成された上記平坦化層上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記金属層を部分的に除去する金属層除去工程とを有することを特徴とする。
【0097】
図9(a)〜(d)は、本発明のTFT基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図9(a)に示すように、フレキシブル性を有する金属層2上に、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層3を形成する(平坦化層形成工程)。次いで、図9(b)に示すように、平坦化層3上にTFT素子10を形成し(TFT素子形成工程)、続いて層間絶縁膜15を形成する。TFT素子10については、図1に示すTFT素子10と同様である。次に、図9(c)に示すように、層間絶縁膜15およびゲート絶縁膜14にコンタクトホールを形成して、TFT素子10が形成された平坦化層3上に画素電極16を形成する(画素電極形成工程)。次いで、図9(d)に示すように、画素電極16が形成されている画素電極形成領域26と、金属層2が形成されていない金属層非形成領域22bとが重なるように、またTFT素子10の半導体層11が形成されている半導体層形成領域21に、金属層2が形成されている金属層形成領域22aが配置されるように、金属層2を部分的に除去する(金属層除去工程)。
【0098】
一般的に金属層は耐熱性を有するので、本発明においては金属層を用いることにより、TFT素子の製造プロセスにおいてガラス基板を用いる場合と同等のプロセスを通すことができ、TFT基板を安定的に製造することが可能である。また、高温処理が必要なTFT素子であっても、TFT特性の良好なTFT素子を得ることが可能である。したがって、本発明により製造されるTFT基板を用いることにより、優れた表示品質の表示装置を得ることができる。
【0099】
また、一般的に金属層はプラスチック基板と比較して線熱膨張係数が小さいことから、寸法安定性に優れている。本発明によれば、TFT素子を形成した後に金属層を部分的に除去するので、TFT素子形成時には平坦化層の全面に金属層が形成されており、TFT素子の形成時に加わる熱や水分等の影響により平坦化層の寸法が変化するのを抑制することができ、精度良くTFT素子を形成することができ、アライメント精度を向上させることができる。したがって、本発明により製造されるTFT基板を用いて表示装置を製造する場合には、アライメントを容易に行うことが可能となる。
【0100】
また本発明によれば、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、金属層を部分的に除去するので、本発明により製造されるTFT基板を用いた表示装置においてはTFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置に適用することが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイに適用することが可能なTFT基板を得ることができる。
【0101】
また本発明においては、金属層を部分的に除去するので、従来のように半導体素子を形成した後に基板を全て取り除く方法に比べて歩留まりを良くすることができる。特に、ガラス基板を剥がす方法に対して歩留まりを向上させることが可能である。
【0102】
なお、「画素電極形成領域の少なくとも一部と、金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように」とは、金属層および画素電極を平面視したときに、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なっている状態であることをいう。画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なっている状態には、画素電極形成領域と金属層非形成領域とが完全に一致している状態、画素電極形成領域の一部と金属層非形成領域の全部とが重なっている状態、画素電極形成領域の全部と金属層非形成領域の一部とが重なっている状態、および、画素電極形成領域の一部と金属層非形成領域の一部とが重なっている状態が含まれる。
【0103】
以下、本発明のTFT基板の製造方法における各工程について説明する。
【0104】
1.平坦化層形成工程
本発明における平坦化層形成工程は、フレキシブル性を有する金属層上に、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層を形成する工程である。
平坦化層およびその形成方法、ならびに金属層については、上記「A.TFT基板」の平坦化層および金属層の項にそれぞれ記載したので、ここでの説明は省略する。
【0105】
2.TFT素子形成工程
本発明におけるTFT素子形成工程は、上記平坦化層上にTFT素子を形成する工程である。
TFT素子およびその形成方法については、上記「A.TFT基板」のTFT素子の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0106】
3.画素電極形成工程
本発明における画素電極形成工程は、上記TFT素子が形成された上記平坦化層上に画素電極を形成する工程である。
画素電極およびその形成方法については、上記「A.TFT基板」の画素電極の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0107】
4.金属層除去工程
本発明における金属層除去工程は、上記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記金属層を部分的に除去する工程である。
【0108】
金属層を部分的に除去する方法としては、例えば、金属層上にレジストを積層し、レジストパターンを形成し、そのレジストパターンに沿って金属層をエッチングした後、レジストパターンを除去する方法、金属層上にメタルマスクを用いて金属膜を成膜してエッチングマスクとし、そのエッチングマスクに沿って金属層をエッチングした後、エッチングマスクを除去する方法が挙げられる。金属層のエッチング方法としては、通常、ウェットエッチングが用いられる。
【0109】
金属層をエッチングする場合には、画素電極側の面をドライフィルムレジスト等で保護することが好ましい。
【0110】
金属層を部分的に除去する際には、画素電極形成領域の少なくとも一部と金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように金属層を部分的に除去すればよい。通常、画素電極形成領域のうち少なくとも画素領域に金属層非形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去する。
この際、画素電極形成領域のうち少なくとも画素領域に金属層非形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去すればよく、例えば、金属層非形成領域が画素電極形成領域と完全に一致するように、画素電極形成領域全域の金属層を除去してもよく、金属層非形成領域の全部が画素電極形成領域の一部と重なるように、画素電極形成領域内の金属層を除去してもよく、画素電極形成領域の全部と金属層非形成領域の一部とが重なるように、画素電極形成領域全域および画素電極形成領域以外の領域の金属層を除去してもよく、金属層非形成領域の一部が画素電極形成領域の一部と重なるように、画素電極形成領域の一部および画素電極形成領域以外の領域の金属層を除去してもよい。金属層非形成領域の全部が画素電極形成領域の一部と重なるように、画素電極形成領域内の金属層を除去する場合には、金属層非形成領域の面積を小さくし、金属層形成領域の面積を大きくすることができるので、TFT基板の強度を高めることができる。
【0111】
金属層を部分的に除去する際には、中でも、少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去することが好ましい。すなわち、半導体層形成領域の金属層は除去しないことが好ましい。これにより、TFT素子の半導体層に金属層側から光が照射されることがないので、光によるTFT素子の誤動作を防止することができ、TFT素子の信頼性を高めることが可能となるからである。
【0112】
なお、「少なくとも半導体層形成領域に、金属層形成領域が配置されるように」とは、金属層および半導体層を平面視したときに、金属層形成領域の少なくとも一部が半導体層形成領域の全部に重なっている状態であることをいう。金属層形成領域の少なくとも一部が半導体層形成領域の全部に重なっている状態には、金属層形成領域が半導体層形成領域に完全に一致している状態、および、金属層形成領域の一部が半導体層形成領域の全部と重なっている状態が含まれる。
【0113】
少なくとも半導体層形成領域に金属層形成領域が配置されるように金属層を部分的に除去する際には、金属層形成領域が半導体層形成領域に完全に一致し、半導体層形成領域全域のみに金属層が残存するように金属層を部分的に除去してもよく、金属層形成領域の少なくとも一部が半導体層形成領域の全部に重なり、半導体層形成領域全域および半導体層形成領域以外の領域に金属層が残存するように金属層を部分的に除去してもよい。TFT基板の強度の観点から、半導体層形成領域全域および半導体層形成領域以外の領域に金属層が残存するように金属層を部分的に除去することが好ましい。
【0114】
金属層形成領域および金属層非形成領域の配置、形状、面積等については、上記「A.TFT基板」の金属層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0115】
D.表示装置の製造方法
次に、本発明の表示装置の製造方法について説明する。
本発明の表示装置の製造方法は、上述のTFT基板を有する表示装置を作製する表示装置作製工程と、上記TFT基板の画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記TFT基板の金属層を部分的に除去する金属層除去工程とを有することを特徴とする。
【0116】
図10(a)〜(b)は、本発明の表示装置の製造方法の一例を示す工程図であり、透過型液晶表示装置を製造する例である。まず、図10(a)に示すように、TFT基板1を有する表示装置を作製する(表示装置作製工程)。次に、図10(b)に示すように、画素電極16が形成されている画素電極形成領域26と、金属層2が形成されていない金属層非形成領域22bとが重なるように、またTFT素子10の半導体層11が形成されている半導体層形成領域21に、金属層2が形成されている金属層形成領域22aが配置されるように、金属層2を部分的に除去する(金属層除去工程)。
【0117】
本発明においては、TFT基板を有する表示装置を作製した後に金属層を部分的に除去するので、表示装置の製造プロセスにおいては平坦化層の全面に金属層が形成されており、表示装置の製造時に加わる熱や水分等の影響により平坦化層の寸法が変化するのを抑制することができ、アライメント精度を向上させるとともに、アライメントを容易に行うことが可能となる。
【0118】
また本発明により製造される表示装置は上述のTFT基板を有するので、従来のガラス基板を用いる場合と同等のプロセスを通すことができ、表示装置を安定的に製造することができるとともに、TFT特性が良好で表示品質に優れる表示装置を得ることができる。
【0119】
また本発明によれば、画素電極形成領域と金属層非形成領域とが重なるように、金属層を部分的に除去するので、本発明により製造される表示装置においてはTFT基板側を受光面または発光面とすることができ、透過型液晶表示装置、ボトムエミッション型有機EL表示装置などの表示装置を得ることが可能であり、さらにフレキシブルディスプレイを得ることができる。
【0120】
さらに本発明においては、金属層を部分的に除去するので、従来のように半導体素子を形成した後に基板を全て取り除く方法に比べて歩留まりを良くすることができ、特に、ガラス基板を剥がす方法に対して歩留まりを向上させることが可能である。
【0121】
以下、本発明の表示装置の製造方法における各工程について説明する。
【0122】
1.表示装置作製工程
本発明における表示装置作製工程は、上述のTFT基板を有する表示装置を作製する工程である。
表示装置については、上記「B.表示装置」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。表示装置の各構成部材の形成方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0123】
2.金属層除去工程
本発明における金属層除去工程は、上記TFT基板の画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、上記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、上記TFT基板の金属層を部分的に除去する工程である。
金属層除去工程については、上記「C.TFT基板の製造方法」の金属層除去工程と同様とすることができる。
【0124】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0125】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0126】
(絶縁性の平坦化層の形成)
まず、透明ポリイミド系樹脂溶液(イミド化された樹脂溶液)を脱気した。超音波洗浄機UT−106(シャープマニファクチャリングシステム株式会社製)を用いて、100W 37kHzで室温で10分間超音波処理をした。次いで、透明ポリイミド系樹脂溶液を検体乾燥機に入れ、真空ポンプを用いて減圧し、圧力が300Pa未満に到達後15分間減圧処理を行った。この際、最終到達圧力は230Paであった。
【0127】
次いで、厚さ20μmの基材SUS430基板上に、脱気後の透明ポリイミド系樹脂溶液を膜厚が2μmになるようにスピンコーターでコーティングし、100℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、160℃で15分加熱し、250℃で30分熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、平坦化層を形成した。この平坦化層の可視光領域における光透過率は85%以上であった。
【0128】
(密着層の形成)
次に、平坦化層上に、第1密着層としてのアルミニウム膜をDCスパッタリング法(成膜圧力0.2Pa(アルゴン)、投入電力1kW、成膜時間10秒)により厚さ5nmで形成した。次いで、第2密着層としての酸化シリコン膜をRFマグネトロンスパッタリング法(成膜圧力0.3Pa(アルゴン:酸素=3:1)、投入電力2kW、成膜時間30分)により厚さ100nmで形成した。これにより、薄膜素子用基板を得た。
【0129】
(TFT素子の形成)
ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFT素子を上記薄膜素子用基板上に作製した。まず、厚さ100nmのアルミニウム膜をゲート電極膜として成膜した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に燐酸溶液でウェットエッチングし、アルミニウム膜を所定パターンにパターニングしてゲート電極を形成した。次に、そのゲート電極を覆うように厚さ300nmの酸化ケイ素をゲート絶縁膜として全面に形成した。このゲート絶縁膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、6インチのSiOターゲットに投入電力:1.0kW(=3W/cm)、圧力:1.0Pa、ガス:アルゴン+O(50%)の成膜条件で形成した。この後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施し、コンタクトホールを形成した。次に、ゲート絶縁膜上の全面に厚さ100nmのチタン膜、アルミニウム膜、IZO膜をソース電極及びドレイン電極とするために蒸着した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に過酸化水素水溶液、燐酸溶液で連続的にウェットエッチングし、チタン膜を所定パターンにパターニングしてソース電極及びドレイン電極を形成した。このとき、ソース電極及びドレイン電極は、ゲート絶縁膜上であってゲート電極の中央部直上以外に離間したパターンとなるように形成した。
【0130】
次に、ソース電極及びドレイン電極を覆うように、全面に、In:Ga:Znが1:1:1のInGaZnO系アモルファス酸化物薄膜(InGaZnO)を厚さ25nmとなるように形成した。アモルファス酸化物薄膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、室温(25℃)、Ar:Oを30:50とした条件下で、4インチのInGaZnO(In:Ga:Zn=1:1:1)ターゲットを用いて形成した。その後、アモルファス酸化物薄膜上にレジストパターンをフォトリソグラフィーで形成した後、シュウ酸溶液でウェットエッチングし、そのアモルファス酸化物薄膜をパターニングし、所定パターンからなるアモルファス酸化物薄膜を形成した。こうして得られたアモルファス酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜上であってソース電極及びドレイン電極に両側で接触するとともに該ソース電極及びドレイン電極を跨ぐように形成されていた。続いて全体を覆うように、厚さ100nmの酸化ケイ素を保護膜としてRFマグネトロンスパッタリング法で形成した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施した。その後、大気中300℃1時間のアニールを施し、TFT素子を作製した。
【0131】
(SUS基板のパターニング)
TFT素子形成後、裏面のSUS基板上にレジストを形成し、画素部分をエッチングできるようにパターニングを行った。塩化第2鉄液および硝酸を混合したものを用いてSUS基板をエッチングし、フレキシブル透過型液晶表示装置用のTFT基板(バックプレーン)を作製した。
【符号の説明】
【0132】
1 … TFT基板
2 … 金属層
3 … 平坦化層
4 … 密着層
4a … 第1密着層
4b … 第2密着層
10 … TFT素子
11 … 半導体層
12S … ソース電極
12D … ドレイン電極
13G … ゲート電極
14 … ゲート絶縁膜
15 … 層間絶縁膜
16 … 画素電極
21 … 半導体層形成領域
22a … 金属層形成領域
22b … 金属層非形成領域
26 … 画素電極形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層と、
前記平坦化層の一方の面にパターン状に形成され、フレキシブル性を有する金属層と、
前記平坦化層の前記金属層側とは反対側の面に形成された薄膜トランジスタ素子および画素電極と
を有し、前記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、前記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように配置されていることを特徴とする薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
少なくとも前記薄膜トランジスタ素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、前記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項3】
前記平坦化層と前記薄膜トランジスタ素子の間に、無機化合物を含む密着層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の薄膜トランジスタ基板を有することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
透過型液晶表示装置であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
フレキシブル性を有する金属層上に、光透過性および絶縁性を有し、樹脂を含有する平坦化層を形成する平坦化層形成工程と、
前記平坦化層上に薄膜トランジスタ素子を形成する薄膜トランジスタ素子形成工程と、
前記薄膜トランジスタ素子が形成された前記平坦化層上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、
前記画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、前記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、前記金属層を部分的に除去する金属層除去工程と
を有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属層除去工程では、少なくとも前記薄膜トランジスタ素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、前記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されるように、前記金属層を部分的に除去することを特徴とする請求項6に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の薄膜トランジスタ基板を有する表示装置を作製する表示装置作製工程と、
前記薄膜トランジスタ基板の画素電極が形成されている画素電極形成領域の少なくとも一部と、前記金属層が形成されていない金属層非形成領域の少なくとも一部とが重なるように、前記薄膜トランジスタ基板の金属層を部分的に除去する金属層除去工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記金属層除去工程では、少なくとも前記薄膜トランジスタ基板の薄膜トランジスタ素子の半導体層が形成されている半導体層形成領域に、前記金属層が形成されている金属層形成領域が配置されるように、前記金属層を部分的に除去することを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195449(P2012−195449A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58285(P2011−58285)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】