説明

表面検査装置

【課題】 表面検査装置において、被検面の略全面を検査する場合にも効率的に検査を行うことができるとともに、被検面が粗面の場合にもノイズ成分の重畳を防止する。
【解決手段】 被検面の所定領域P0に対してレーザ光L0′を照射し、所定領域P0内の互いに異なる4つの小領域P1〜P4からの各正反射光L1〜L4を、4つの開口を有する視野絞り53により空間的に分離して通過させるとともに、これら4つの開口に、各正反射光L1〜L4を互いに異なる4つの偏光成分として通過させる偏光素子61〜64が配設され、各小領域P1〜P4に対応した偏光成分M1〜M4が視野絞り53の全ての開口を順次通過するように、xy2次元走査ステージ20がレーザ光L0′に対して被検面を変位させることにより、各小領域P1〜P4ごとにそれぞれ4つの偏光成分M1〜M4の光強度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面検査装置に関し、詳細には、被検面を被膜している所定の薄膜の膜厚等物性を求める表面検査装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検面に形成された被膜の膜厚や、この被膜の光学的物性(屈折率等)などの特性を求める表面検査装置としてエリプソメータが知られている。
【0003】
このエリプソメータは、薄膜が形成された被検面の所定領域に対して光源から出射した光束を照射し、この所定領域で正反射した反射光の光強度を、互いに異なる3つの偏光方向(p偏光面の方向、s偏光面の方向、p偏光面およびs偏光面に対して主軸がそれぞれ+45°傾いた方向)についての下記4つのデータI1,I2,I3,I4として検出する。
【0004】
I1=|Ex|2
I2=|Ey|2
I3=(1/2)|Ex+Ey|2
=(1/2){|Ex|2+|Ey|2}+|Ex||Ey|cosδ
I4=(1/2)|iEx+Ey|2
=(1/2){|Ex|2+|Ey|2}+|Ex||Ey|sinδ
ここで、Exはs偏光成分の強度、Eyはp偏光成分の強度、δはp偏光の反射前後の位相差δyとs偏光の反射前後の位相差δxとの差(=δx−δy)をそれぞれ示し、iは虚数単位であり、I1はs偏光面についての強度、I2はp偏光面についての強度、I3は主軸の方向が45°(方位角45°)の偏光面についての強度、I4は1/4波長板を通過させて直線偏光に変換した後の方位角45°の偏光面についての強度をそれぞれ示す。
【0005】
一方、偏光状態を特定する4つの指標値(ストークスパラメータ)S0,S1,S2,S3は、それぞれ以下のように規定される。
【0006】
S0=|Ex|2+|Ey|2
S1=|Ex|2−|Ey|2
S2=2|Ex||Ey|cosδ
S3=2|Ex||Ey|sinδ
したがって、ストークスパラメータS0〜S3は、検出された4つの光強度データI1〜I4を用いて、以下のように算出することができる。
【0007】
S0=I1+I2
S1=I1−I2
S2=2・I3−(I1+I2)
S3=2・I4−(I1+I2)
そして、このように求められたストークスパラメータに基づいて、薄膜の膜厚dや、薄膜の屈折率nおよび吸収係数(消衰係数)K等の光学定数(以下、これらを総称するときは、薄膜の物性と称するものとする。)を求めることができ、さらに、光学定数と物質名称とを予め対応付けたデータベースとの連係により、薄膜を形成する未知の物質を特定することもできる。
【0008】
しかし、エリプソメータは上述した3つの偏光方向について4つの光強度を各別に測定する必要があるため、単一の光強度検出器しか備えないものでは、検出しようとする反射光の光路上に配置する検光子や1/4波長板を順次切り換えて、光強度I1,I2,I3,I4を各別に得るために4回の測定を行う必要があり、測定時間の短縮化が求められている。
【0009】
そこで、ビームスプリッタを用いて反射光の光路を4つの光路に分割し、これら分割して得られた4つの光路のうち3つには、主軸の方向が互いに異なる3つの検光子を対応させて各別に配置し、他の1つには、1/4波長板と検光子とを配置して、各光路の検光子を通過した反射光を4つの光強度検出器により各別に検出することにより、1回の測定で4つの偏光状態の反射光の強度I1〜I4を同時に検出するエリプソメータが提案されている(特許文献1)。
【0010】
この技術によれば、4つの偏光状態の光強度を同時に測定することができるため、繰返しの測定が不要となり、測定時間の短縮することができる。
【特許文献1】特開平7−159131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した従来のエリプソメータは、被検面の特定の領域について反射光の強度を検出するに際し、偏光方向ごとに複数回繰返しの測定を行うものであったため、被検面のうち一部領域のみを測定対象とする場合には支障がないものの、被検面の略全面を詳細に測定するような多数の領域を測定対象とする場合には、1つの領域の測定が終了する都度、領域を手動で移動させて測定を行う必要があり、多大なる測定時間や手間を要するものとなっている。
【0012】
また、特許文献1では、反射光の光路を分割することで、1つの領域について1回の測定で同時に4つの検出値を得るようにした技術が記載されているが、被検面が平滑な鏡面である場合においては問題はないが、被検面が鏡面以外の粗面をも含む場合には、信号成分としての正反射光に、粗面で反射したノイズ成分である散乱光が重畳して検出されるため、S/Nが低下し、測定結果の信頼性を低下させるものであった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、被検面の略全面を検査するような多数領域を検査対象とする場合にも、簡易かつ効率的に検査を行うことができるとともに、被検面が粗面の場合にもノイズ成分の重畳を防止または大幅に抑制することができる表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る表面検査装置は、所定の薄膜が形成された被検面の所定領域に対して光源から出射した偏光状態が既知の光束を照射光学系により照射し、前記所定領域で反射した反射光の光強度を互いに異なる複数の偏光成分ごとに検出することにより、前記反射光の偏光状態を検出し、この検出された偏光状態に基づいて前記薄膜の膜厚および該薄膜の物性のうち少なくとも1つを求める表面検査装置において、前記所定領域のうち前記光強度を検出する前記偏光成分の数に応じた互いに異なる複数の小領域からの各反射光を空間的に分離して通過させる、レンズおよび前記小領域の数に対応した数の開口を有する視野絞りと、前記視野絞りの各開口を通過した前記各反射光の光路上にそれぞれ配設された、互いに異なる偏光成分を通過させる偏光素子(1/4波長板を含む)と、前記各偏光素子を通過した各反射光の光強度を各別に検出する光強度検出手段と、前記各小領域からの各反射光が前記視野絞りの全ての開口を順次通過するように、前記光束を前記被検面に対して走査させる走査手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、反射光の光強度を検出する偏光成分としては、例えば、p偏光成分、s偏光成分、およびp偏光成分とs偏光成分とに対して方位角がそれぞれ45°傾いた成分、および1/4波長板を通過した偏光のうち方位角45°の成分(合計4つの偏光成分)などである。
【0016】
これらの偏光成分ごとに光強度を検出するための具体的な構成としては、光源から被検面までの間の出射光の光路上に、被検面への照射光の偏光面を一定の方位角に規制して偏光状態を既知とするための偏光素子(偏光子)を配設した上で、被検面での反射光のうち検出しようとする偏光成分の方向に沿った主軸を有する偏光素子(検光子)を、それぞれ対応する光路上に配設し、方位角45°の成分のうち一方については、さらに検光子の手前(反射光の進行方向の上流側)に1/4波長板を配置した構成とすればよい。
【0017】
また、走査手段は、光束を被検面に対して走査させるものであれば、光束を変位させることにより光束を被検面に対して走査させるものであってもよいし、被検面を変位させることにより光束を被検面に対して走査させるものであってもよいし、光束および被検面の両方を変位させるものであってもよい。
【0018】
走査手段による走査方向としては、xy走査(x軸に沿った主走査とy軸に沿った副走査との組合せ)であってもよいし、回転変位と半径方向への変位とを組み合わせた回転走査等公知の種々の走査を適用することができ、被検面を有する被検体の形状や性状等に応じて適宜選択して適用すればよい。
【0019】
このように構成された本発明に係る表面検査装置によれば、レンズと複数の開口が形成された視野絞りとにより、被検面の所定領域内の複数の小領域からの正反射光のみが、対応する視野絞りを通過し、散乱光は遮断される。
【0020】
そして、視野絞りの各開口を通過した小領域からの正反射光は、対応して設けられた光強度検出手段によってそれぞれ入射して、その光強度が検出されるが、各正反射光は、視野絞りと光強度検出手段の間に配設された偏光素子(1/4波長板を含む)により、光強度検出手段に入射する際には、それぞれ互いに異なる偏光成分とされる。
【0021】
すなわち、例えば視野絞りに4つの開口W1,W2,W3,W4が形成されている構成においては、第1の開口W1を通過する正反射光L1は、所定領域からの正反射光のうち、第1の小領域P1からの正反射光に限定され、第2の開口W2を通過する正反射光L2は、所定領域からの正反射光のうち、第2の小領域P2からの正反射光に限定され、第3の開口W3を通過する正反射光L3は、所定領域からの正反射光のうち第3の小領域P3からの正反射光に限定され、第4の開口W4を通過する正反射光L4は、所定領域からの正反射光のうち、第4の小領域P4からの正反射光に限定される。
【0022】
そして、第1の開口W1を通過した第1の小領域P1からの正反射光L1は、その光路上に配設された第1の偏光素子により、正反射光L1のうち第1の偏光成分M1のみが通過して、その光強度I1が光強度検出手段により検出される。このとき、光強度検出手段は、第1の小領域P1からの正反射光L1が通過する光路上に配置されているため、第1の小領域P1で正反射方向以外に散乱反射したノイズ成分である散乱光がこの光強度検出手段に入射するのを防止・抑制することができる。
【0023】
同様に、第2の開口W2を通過した第2の小領域P2からの正反射光L2は、その光路上に配設された第2の偏光素子により、正反射光L2のうち第2の偏光成分M2のみが通過して、その光強度I2が光強度検出手段により検出され、第3の開口W3を通過した第3の小領域P3からの正反射光L3は、その光路上に配設された第3の偏光素子により、正反射光L3のうち第3の偏光成分M3のみが通過して、その光強度I3が光強度検出手段により検出され、第4の開口W4を通過した第4の小領域P4からの正反射光L4は、その光路上に配設された1/4波長板および第4の偏光素子により、正反射光L4のうち第4の偏光成分M4のみが通過して、その光強度I4が光強度検出手段により検出される。そして、各光強度検出手段には、対応する小領域からの正反射光のみが入射し、散乱光の重畳した正反射光として誤検出するのが防止・抑制される。
【0024】
ここで、小領域P1,P2,P3,P4は同一の領域ではなく、重複している部分がなく互いに独立した領域であるか、あるいは重複しているとしてもその重複は一部のみであるような領域である。したがって、これらの互いに異なる小領域P1,P2,P3,P4からそれぞれ正反射した光は空間的に分離され、互いに異なる偏光成分M1,M2,M3,M4として、光強度検出手段に検出される。
【0025】
そして、走査手段が各小領域P1,P2,P3,P4からの各反射光L1,L2,L3,L4が視野絞りの全ての開口W1,W2,W3,W4を順次通過するように光束を被検面に対して走査させることにより、被検面に対する1回の走査で、各小領域P1,P2,P3,P4ごとに各正反射光の4つの偏光成分を順次検出することができる。
【0026】
すなわち、薄膜の膜厚や薄膜の物性等を特定するこの種の従来の表面検査装置は、被検面の一部領域のみを検査対象としており、しかも、その検査対象である一部領域からの反射光について異なる複数の偏光成分を取得する必要により繰返しの複数回の検査を行う必要性から、走査光学系(走査手段)を組み合せた構成は採用されていなかったが、本発明の表面検査装置は、この走査手段との組合せにより、被検面の一部領域のみならず略全面に亘って検査対象とすることができるとともに、ある瞬間において光束が照射されている走査領域からの反射光の偏光成分の検出と、その瞬間から時系列的に進んだ後のある瞬間における走査領域からの反射光の偏光成分の検出とを、空間的に対応付けたことにより、複数回の走査を要することなく、1回の走査で、被検面の略全面について各小領域からの反射光の複数の偏光成分を得ることができ、効率的な表面検査を行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明の表面検査装置は、走査手段が満たすべき条件と視野絞りにおける複数の開口の配置とは、これらの間の相対的な関係が満たされれば足りるため、視野絞りにおける複数の開口の配置が規定されている場合には、走査条件は視野絞りにおける複数の開口の配置に応じて設定されるが、これとは反対に、走査条件が規定されている場合には、この走査条件に応じて、視野絞りにおける複数の開口の配置が設定されればよく、これら2つの条件の関係は、いずれを主とし、いずれを従としてもよい。
【0028】
本発明に係る表面検査装置においては、前記走査手段による走査は、平行移動または回転移動による主走査と、前記主走査方向に略直交する方向への平行移動による副走査との組合せであり、前記視野絞りにおける前記複数の開口は、前記副走査の方向に対応した方向に沿って配列されていることが好ましい。
【0029】
主走査と副走査との組合せによって被検面に光束を走査させる走査手段は、他の種類の装置において利用される場合、被検面を走査する光束の進行方向(照射方向)が主走査方向に対して略直交するように構成されるのが一般的である。この場合、断面略円形の光束は、入射した被検面において、主走査方向に短径を有し副走査方向に長径を有する楕円形状の走査スポットを形成する。
【0030】
したがって、本発明の表面検査装置においても、光源、照射光学系および走査手段の配置や走査方向等を一般的な配置に設定すると、主走査方向よりも副走査方向に長い楕円形状の走査スポットが形成されることとなる。
【0031】
そして、このように副走査方向に長径を有する楕円形状の走査スポットを形成した場合、この走査スポット(所定領域)を視野絞りの複数個の開口によって複数の小領域に分解するには、その長径方向について分解するのが、分解精度を高めるうえで好ましい。
【0032】
よって、走査スポットを空間的に複数の小領域に分解する方向を規定する開口の配列方向を、光束の副走査方向に対応した方向に沿ったものとすることにより、小領域の空間的な分解精度すなわち正反射光の空間的な弁別精度を高めることができ、測定精度を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の表面検査装置は、各偏光素子は、それぞれの光路に対応する前記視野絞りの前記開口を塞ぐように配設されて、前記視野絞りと一体的に形成されていることが好ましい。
【0034】
視野絞りと各偏光素子とが一体的に形成されているため、これらの取扱いを容易にすることができ、また、照射野絞りの開口という空間に各偏光子が配設されているため、空間利用効率を向上させることができ、装置全体の小型化にも資することができる。
【0035】
また、本発明の表面検査装置は、光源から出射され前記所定領域に到達した光束の光量分布が全ての前記小領域について均一となるように、前記光量分布を調整する光量分布調整手段を備えていることが好ましい。
【0036】
所定領域内の各小領域は、相異なる偏光成分の検出が行われる都度、光束の走査によって、所定領域内における相対的な位置が変化する。すなわち、例えば所定領域内の第1の小領域P1は、第1の偏光成分M1が検出される際には、その所定領域内の第1の小領域P1として位置しているが、走査によって走査スポットの位置が移動していることにより、第2の偏光成分M2が検出される際には、その第1の小領域P1は、走査スポットの領域(所定領域)内における第2の小領域P2に位置することになる。
【0037】
さらに走査が進み、第3の偏光成分M3が検出される際には、元の第1の小領域P1は、走査スポットの領域(所定領域)内における第3の小領域P3に位置し、第4の偏光成分M4が検出される際には、元の第1の小領域P1は、走査スポットの領域(所定領域)内における第4の小領域P4に位置することとなる。
【0038】
したがって、走査スポットの領域内の光強度分布が均一でないときは、第1の偏光成分M1が検出されたとき、第2の偏光成分M2が検出されたとき、第3の偏光成分M3が検出されたとき、第4の偏光成分M4が検出されたときとでは、そもそも照射光量が異なるため、これらの偏光成分M1〜M4に基づいて偏光状態を特定するストークスパラメータを精度よく算出することはできないが、光量分布調整手段によって、少なくとも全ての小領域について、照射光量の分布が均一となるように調整することにより、精度よく算出することが可能となる。
【0039】
ここで、光量分布調整手段は、例えば、光源自体を複数の光源を配列したアレイ光源として構成してもよいし、照射光学系の一部として組み込んだ構成としてもよい。
【0040】
なお、光量分布調整手段を備えないために走査スポット内の光量分布が均一でないものであっても、少なくとも全ての小領域について照射光量の分布が均一であれば、小領域以外の領域の光量分布が均一であることまでは要しない。
【0041】
また、光量分布調整手段を備えないために走査スポット内の全ての小領域の光量分布が均一でないものであっても、そのような不均一な光量分布の状態で実際に検出された反射光の光強度の検出値に対して、走査スポット内の全ての小領域の光量分布が均一であったとすれば得られる補正値に補正処理する補正手段を備えたものであれば好ましい。
【0042】
そのような補正手段を有するものであれば、全ての小領域の光量分布が均一でない状態で検出された検出値に対して、検出の後に演算処理等の補正処理を施すことによって、均一な光量分布の状態で検出されたものと見なすことができ、そのように補正された検出値(補正値)を用いることにより、ストークスパラメータを精度よく算出することが可能となる。
【0043】
なお、補正手段としては、例えば、補正用パラメータや補正用演算式あるいは補正用関数等を記憶させたメモリと、このメモリに記憶された補正用パラメータ等を用いて、実際の検出値に補正処理を施す補正演算処理手段等とからなるものなどを適用することができる。
【0044】
これら補正パラメータ等は、薄膜の膜厚やその薄膜の物性等が予め既知のテストピースに、本発明に係る表面検査装置による走査スポットを形成し、この走査スポットの領域内の光量分布と正反射光の各偏光成分の光強度等との関係を、既知の膜厚や物性等に基づいて予め実験的に求めておき、一方、同一のテストピースに光量分布が均一な走査スポットを照射したときの正反射光の各偏光成分の光強度等を予め実験的に求め、両実験結果の対応関係に基づいて求めることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る表面検査装置によれば、正反射方向以外に散乱反射したノイズ成分である散乱光の重畳を防止・抑制することができ、検出精度を向上させることができる。
【0046】
しかも、被検面の一部領域のみならず略全面に亘って検査対象とすることができるとともに、簡易かつ効率的な表面検査を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明に係る表面検査装置についての最良の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る表面検査装置100の構成を示す図、図2は照射光と反射光との関係を示す図であり、図2(a)は斜視図、(b)は光路に沿った断面を示す図をそれぞれ表す。
【0048】
図示の表面検査装置100は、所定の薄膜210が形成された被検面220を有する被検体200が載置されるxy2次元走査ステージ20(走査手段)と、照射光であるレーザ光L0を出射するレーザ光源10と、この光源10から出射されたレーザ光L0を、ステージ20上に載置された被検体200の被検面220の所定領域P0に、所定の入射角度αで入射させる照射光学系30と、光強度(光量)I1,I2I3,I4を検出する4つの受光素子41,42,43,44(光強度検出手段)と、上記所定領域P0で反射した正反射光をこの所定領域P0内の互いに異なる4つの小領域P1,P2,P3,P4でそれぞれ反射した4つの正反射光L1,L2,L3,L4に空間的に分離して、それぞれを対応する受光素子41〜44に各別に導く、対物レンズ51、集光レンズ52および4つの開口53a,53b,53c,53dが形成された視野絞り53を有する検出光学系50と、この検出光学系50を通過して得られた4つの正反射光L1〜L4の各光路上に各別に配置されて、各正反射光L1〜L4を互いに異なる偏光成分M1,M2,M3,M4として通過させる偏光素子60と、各受光素子41〜44によって検出された光強度I1〜I4に基づいて各小領域P1〜P4ごとの偏光状態を特定し、特定された偏光状態に基づいて薄膜210の膜厚dおよび薄膜を構成する材料の種別を特定する光学定数(屈折率や消衰定数等)を算出する演算処理手段70とを備えた構成である。
【0049】
ここで、照射光学系30は、集光レンズ31と、この集光レンズ31を通過したレーザ光L0を所定の偏光成分に規制する偏光子32とを備えており、偏光子32を通過して被検面220に到達するレーザ光L0′の偏光状態は既知とされている。
【0050】
また、偏光素子60は、詳しくは図3に示すように、4つの検光子61,62,63,64および検光子64の光の入射面側に貼り合わされた1/4波長板65からなり、検光子61は視野絞り53の開口53aを、検光子62は開口53bを、検光子63は開口53cを、1/4波長板65および検光子64は開口53dを、それぞれ塞ぐように配設されて、視野絞り53と一体化されている。なお、開口53a,53b,53c,53dは等間隔Δy′に形成されている。
【0051】
検光子61は、対応する開口53aを通過する小領域P1(図2)からの正反射光L1のうちs偏光成分M1(以下、第1の偏光成分M1という。)を通過させるように、検光子62は、対応する開口53bを通過する小領域P2からの正反射光L2のうちp偏光成分M2(以下、第2の偏光成分M2という。)を通過させるように、検光子63は、対応する開口53cを通過する小領域P3からの正反射光L3のうちp偏光面およびs偏光面に対してそれぞれ45°傾いた方向の偏光成分M3(以下、第3の偏光成分M3という。)を通過させるように、検光子64は、1/4波長板65によって直線偏光化された偏光成分のうちp偏光面およびs偏光面に対してそれぞれ45°傾いた方向の偏光成分M4(以下、第4の偏光成分M4という。)を通過させるように、それぞれの主軸方向が設定されている。
【0052】
したがって、受光素子41には小領域P1からの正反射光L1のうち第1の偏光成分M1が入射し、受光素子42には小領域P2からの正反射光L2のうち第2の偏光成分M2が入射し、受光素子43には小領域P3からの正反射光L3のうち第3の偏光成分M3が入射し、受光素子44には小領域P4からの正反射光L4のうち第4の偏光成分M4が入射する。
【0053】
また、ステージ20は、ステージ20上に載置された被検体200の被検面220に対してレーザ光L0′が相対的に、図1におけるx方向に主走査しy方向に副走査して被検面220の略全面をレーザ光L0′が順次照射するように、−x方向への移動と−y方向への移動とを組み合わせて駆動するように構成されている。
【0054】
ここで、ステージ20の−y方向への副走査のピッチΔyは、レーザ光L0′が被検面220上で照射する所定領域P0すなわち走査スポットの、y方向に沿った径の略3/4に設定されている。すなわち、図4に示すように、任意の主走査ライン(y=j)上のx=iにおける所定領域(走査スポット)P0(i,j)に対して、副走査方向に1段ずれた次の主走査ライン(y=j+1)上のx=iにおける走査スポットP0(i,j+1)は、y方向にΔyだけずれる。
【0055】
そして、この副走査方向のピッチΔyは、走査スポットP0(i,j)内の小領域P2(i,j),P3(i,j),P4(i,j)が、副走査方向に1行ずれた次の主走査ライン上の走査スポットP0(i,j+1)内においてそれぞれ小領域P1(i,j+1),P2(i,j+1),P3(i,j+1)に対応するように設定されている。
【0056】
すなわち、レーザ光L0′の副走査ピッチΔyは、視野絞り53の開口53a,53b間、開口53b,53c間、開口53c,53d間の各ピッチΔy′に対応して設定されている。
【0057】
この結果、小領域P4からの反射光L4は、副走査が進むにしたがって、具体的には副走査方向(y方向)に隣接する4本の主走査ライン(y=j,j+1,j+2,j+3)内で、視野絞り53の全ての開口53d,53c,53b,53aをこの順序で順次通過する。
【0058】
他の小領域P1,P2,P3からの各反射光L1,L2,L3についても、反射光L4と同様に、4本の主走査ライン内で、視野絞り53の全ての開口53d,53c,53b,53aを順次通過するため、走査開始直後および走査終了直前の端部領域を除いて、走査範囲の全ての小領域ごとに、4つの偏光成分M1〜M4の全てを時間差を以て得ることができる。
【0059】
また、演算処理手段70は、各受光素子41〜44にそれぞれ各別に接続され、各受光素子41〜44によって各別に検出された各小領域P1〜P4からの正反射光L1〜L4の偏光成分M1〜M4を増幅するアンプ73a,73b,73c,73dと、各アンプ73a〜73dに各別に接続されて、ステージ20の走査に同期した所定のサンプリング周期でA/D変換するA/Dコンバータ74a,74b,74c,74dと、各A/Dコンバータ74a〜74dに各別に接続されて、デジタル化された偏光成分M1〜M4の光強度I1〜I4を記憶するメモリ75a,75b,75c,75dと、メモリ75a〜75dに接続されて、これらメモリ75a〜75dに記憶された各小領域P1〜P4ごとの偏光成分M1〜M4の光強度I1〜I4について各小領域P1〜P4を対応させた演算により、各小領域P1〜P4ごとのストークスパラメータS0,S1,S2,S3を算出し、このストークスパラメータS0,S1,S2,S3に基づいて薄膜210の膜厚や薄膜210の物性データを求める演算部72と、これらアンプ73a〜73d、A/Dコンバータ74a〜74d、メモリ75a〜75dおよび演算部72を制御する制御部71とを備えた構成である。
【0060】
なお、演算処理手段70に、物性データと物質名等とが予め対応付けられたデータ群が格納されたデータベース80を接続して、演算処理手段70の演算部70が求めた物性データを、データベース80のデータ群と比較参照することにより、演算処理手段70が薄膜210の物質名等を特定するようにしてもよい。
【0061】
また、レーザ光源10から出射されるレーザ光L0は、単一のビームのみを出射するものであってもよいが、ビームの強度分布は一般にガウス分布を呈するため、単一のビームであると走査スポットP0内の光量分布(光強度Iの分布)が均一ではない状態となる。
【0062】
そこで、本実施形態の表面検査装置100における光源10は、図5に示すように、例えば10本(2本以上のビームであれば、何本のビームであってもよい。)のビームLa,Lb,Lc,Ld,Le,Lf,Lg,Lh,Li,Ljを出射するものとし、これらのビームLa〜Ljが走査スポットP0内において一部分同士が重畳してy方向に並ぶことにより、レーザ光L0′全体のy方向についての光強度Iの分布が略均一となるものが用いられている。
【0063】
このように構成された光源10は、所定領域P0に到達したレーザ光L0′の光量分布が全ての小領域P1〜P4について均一となるように光量分布を調整する光量分布調整手段として機能する。
【0064】
なお、単一のビームのみを出射する光源10であっても、光強度Iの分布が略一定となるようなビームの中心部のみが所定領域P0となるように、太径の走査スポットを開口絞り等によって絞るようにしてもよく、そのような開口絞りは、光量分布調整手段として機能する。
【0065】
次に、本実施形態の表面検査装置100の作用について説明する。
【0066】
まず、光源10から、ステージ20上に載置された被検体200の被検面220上において略均一の強度分布となるレーザ光L0が出射され、このレーザ光L0は集光レンズ31を通過し、偏光子32により、その主軸に沿った偏光面のレーザ光L0′として、被検面220の所定領域P0を走査スポットとして照射する。
【0067】
被検面220の所定領域P0からは、入射したレーザ光L0′の正反射光が出射し、対物レンズ51および集光レンズ52を通過して、視野絞り53に到達する。
【0068】
ここで、視野絞り53に形成された開口53aを通過するのは、図2(b)に示すように、所定領域P0内の小領域P1からの正反射光L1のみであり、同様に、開口53b,53c,53dを通過するのは、それぞれ所定領域P0内の小領域P2,P3,P4からの各正反射光L2,L3,L4のみである。
【0069】
そして、開口53aに入射した小領域P1からの正反射光L1は、この開口53aに設けられた検光子61により、正反射光L1のうち第1の偏光成分M1として通過を許容され、この第1の偏光成分M1は、この開口53aに対応して配設された受光素子41に入射してその強度I1が検出される。
【0070】
同様に、開口53aに入射した小領域P2からの正反射光L2は、検光子62により正反射光L2のうち第2の偏光成分M2として通過を許容され、この第2の偏光成分M2は、開口53bに対応して配設された受光素子42に入射してその強度I2が検出され、開口53cに入射した小領域P3からの正反射光L3は、検光子63により正反射光L3のうち第3の偏光成分M3として通過を許容され、この第3の偏光成分M3は、開口53cに対応して配設された受光素子43に入射してその強度I3が検出され、開口53dに入射した小領域P4からの正反射光L4は、1/4波長板65により位相がずらされて直線偏光とされ、検光子64により、この直線偏光のうち第4の偏光成分M4として通過を許容され、この第4の偏光成分M4は、この開口53dに対応して配設された受光素子44に入射してその強度I4が検出される。
【0071】
そして、これら各受光素子41〜44により検出された光強度I1〜I4はそれぞれ、対応するアンプ73a〜73dに入力されて増幅され、次いで対応するA/Dコンバータ74a〜74dに入力されて、ステージ20の走査に同期してサンプリングされ、対応するメモリ74a〜75dに記憶される。
【0072】
一方、この間も、ステージ20が−x方向に平行移動することにより、被検面220におけるレーザ光L0′の照射部分がx方向に連続的に変位して、レーザ光L0′が被検面220を主走査し、この順次変位した走査スポットP0内における各小領域P1〜P4についても、上述した作用により、偏光成分M1〜M4の強度I1〜I4がその走査位置に対応して、A/Dコンバータのサンプリング周期にしたがい、メモリ75a〜75dにそれぞれ記憶されていく。
【0073】
x方向への主走査が終了すると、ステージ20はx方向については元の位置まで戻されるとともに、−y方向にピッチΔyだけ変位して副走査が行われた後、再度−x方向に変位することにより、2行目の主走査が行われる。
【0074】
ここで、図4に示すように、1行目の主走査の際には、小領域P4であった被検面220上の部位(P4(i,j))は、2行目の主走査の際には、小領域P3(P3(i,j+1)に一致する。
【0075】
同様に、1行目の主走査の際には、小領域P3であった被検面220上の部位(P3(i,j))は、2行目の主走査の際には、小領域P2(P2(i,j+1)に一致し、1行目の主走査の際には、小領域P2であった被検面220上の部位(P2(i,j))は、2行目の主走査の際には、小領域P1(P1(i,j+1)に一致する。なお、1行目の主走査の際には、小領域P1であった被検面220上の部位(P1(i,j))は、2行目の主走査の際には、走査スポットP0の範囲外となるため、対応する小領域は存在しない。
【0076】
このように、2行目の主走査における作用は1行目の主走査における作用の繰返しとなるが、1行目の主走査の際に例えば小領域P4であった部位からは、1行目の主走査においては正反射光L4の第4の偏光成分M4の光強度I4が検出されたが、この部位(P4(i,j))は、2行目の主走査においては小領域P3(P3(i,j+1))として振る舞うため、正反射光L3の第3の偏光成分M3として光強度I3が検出されることになる。
【0077】
さらに、次の副走査後は、小領域P2(P2(i,j+2))として振る舞うため、正反射光L2の第2の偏光成分M2として光強度I2が検出され、次々副走査後は、小領域P1(P1(i,j+3))として振る舞うため、正反射光L1の第1の偏光成分M1として光強度I1が検出されることになる。
【0078】
このように、走査が進むにしたがって、レーザ光L0′の走査範囲における端部を除く被検面220上の全ての各小領域P1〜4からは、各小領域P1〜P4ごとに、第1〜第4の4つの偏光成分M1〜M4が検出されて、それらの各強度I1〜I4がメモリ75a〜75dに記憶されることになる。
【0079】
そして、走査スポットP0内の光強度分布は均一であるため、1行目の主走査の際に検出された光強度と、2行目以後の主走査の際に検出された光強度とは、レーザ光L0′の照射条件は同一視することができ、被検面220上の同一部位(小領域)について、副走査ごとに順次取得された4つの光強度I1〜I4は、同時に取得されたものとして取り扱っても弊害はない。
【0080】
したがって、被検面220上の走査範囲の端部を除く全ての各小領域について、各小領域に対応して取得され、メモリ75a〜75dにそれぞれ記憶された各光強度I1〜I4に対して、制御部71により制御された演算部72が、被検面220の部位を対応させて、それぞれ下記演算を施すことにより、各部位ごとのストークスパラメータS0,S1,S2,S3が算出される。
【0081】
S0=I1+I2
S1=I1−I2
S2=2・I3−(I1+I2)
S3=2・I4−(I1+I2)
そして、このように求められた部位ごとのストークスパラメータS0〜S3は、その部位における偏光状態を特定するものであり、これらに基づいて演算部72は、エリプソメトリックの手法により、薄膜210の膜厚や薄膜210の物性等(薄膜210の屈折率nおよび吸収係数(消衰係数)K等)を算出する。
【0082】
なお、演算処理手段70に、物性データと物質名等とが予め対応付けられたデータ群が格納されたデータベース80が接続されているものにあっては、演算処理手段70の演算部72が求めたこれらの光学特性を、データベース80のデータ群と比較参照して、演算処理手段70が薄膜210の物質名等を特定する。
【0083】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の表面検査装置100によれば、走査ステージ20との組合せにより、被検面220の一部領域のみならず略全面に亘って検査対象とすることができるとともに、1回の走査で、被検面220の略全面について各小領域からの正反射光の複数種類の偏光成分(偏光状態を特定するに足る数の偏光成分)の光強度を得ることができ、効率的な表面検査を行うことが可能となる。
【0084】
しかも、視野絞り53に形成された開口53a〜53dが、正反射光L1〜L4以外の、被検面220からの散乱光すなわちノイズ成分の受光素子41〜44への到達を阻止するため、検出値のS/Nを向上させることができる。
【0085】
このことは、被検面220が平坦で滑らかな鏡面として仕上げられている被検体200を検査する場合のみならず、被検面220が粗面であるような被検体200を検査対象とした場合にも、精度のよい検出結果を得ることができることを意味し、検査対象の種別を拡充することができるという効果が発揮される。
【0086】
さらに、被検面220上における走査スポットP0内を4つの小領域P1〜P4に分けて、これら小領域の単位で薄膜210の膜厚や物性等を検出することができるため、空間的に高分解能の検出結果を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態の表面検査装置100は、各偏光素子60が、小領域P1〜P4の各正反射光L1〜L4の光路となる開口53a〜53dを塞ぐように配設されて、視野絞り53と一体化されているため、これらの取扱いを容易にすることができ、また、空間利用効率を向上させることができ、表面検査装置100の小型化に資することができる。
【0088】
さらに、本実施形態の表面検査装置100は、視野絞りにおける4つの開口53a〜53dが、副走査の方向(y方向)に対応した方向に沿って配列されているため、小領域P1〜P4の空間的な分解精度すなわち正反射光L1〜L4の空間的な弁別精度を高めることができ、測定精度を向上させることができる。
【0089】
すなわち、主走査と副走査との組合せによって被検面220に走査スポットP0を走査させる場合、被検面220を走査する走査スポットP0の進行方向(照射方向)が主走査方向(x方向)に対して略直交するように構成されるのが一般的であり、本実施形態の表面検査装置100もそのように構成されている。
【0090】
この場合、断面略円形のレーザ光L0′は、入射した被検面220において、主走査方向(x方向)に短径を有し副走査方向(y方向)に長径を有する楕円形状の走査スポットP0を形成する。
【0091】
そして、このように副走査方向に長径を有する楕円形状の走査スポットP0を形成した場合、この走査スポットP0(所定領域)を視野絞りの4つの開口53a〜53dによって4つの小領域P1〜P4に空間的に分解するには、その長径方向(y方向)について分解する方が、短径方向(x方向)について分解するよりも、分解精度を高めることができる。
【0092】
ただし、本発明に係る表面検査装置はこの態様に限定されるものではなく、開口53a〜53dの配列方向を、副走査の方向に対応した方向ではなく、主走査の方向に対応した方向に沿って配列されているものであってもよいし、主走査方向および副走査方向に対してそれぞれ傾いた方向に沿って配列されたものであってもよい。
【0093】
特に、図7に示すように、4つの開口53a,53b,53c,53dが、主走査方向(x方向)および副走査方向(y方向)に対してそれぞれ45°傾いた方向に沿って配列されたものでは、主走査方向についてはA/Dコンバータ73a〜73dのサンプリング周期をさらに高周波とし、副走査方向についてはピッチをΔyよりも小さくする(略1/21/2倍)ことができ、より高分解能の検査結果を得ることができる。
【0094】
なお、本実施形態の表面検査装置100は、走査手段として−y方向への平行移動および−x方向への平行移動による並進走査を行うxy2次元走査ステージ20を適用したものであるが、本発明に係る表面検査装置は、この態様の走査手段に限定されるものではなく、例えば図6に示すように、走査手段として、−R方向への回転移動による主走査と、この主走査方向に略直交する−y方向(半径方向)への平行移動による副走査とを組み合せた回転走査を行う回転2次元走査ステージ20を適用することもできる。
【0095】
このような回転走査は、被検体200が半導体ウエハなど円形の輪郭を有する場合に、有効に広い走査範囲を確保することができる点で、特に有用である。
【0096】
また、図1に示した実施形態における走査手段および図6に示した走査手段はいずれも、主走査方向および副走査方向の2方向とも2次元走査ステージ20側が変位し、レーザ光L0′は変位しないものであるが、主走査方向および副走査方向のうち少なくとも一方の方向については、回転多面鏡およびfθレンズ等の公知の走査光学系を適用して、レーザ光L0′を走査させるものとしてもよい。
【0097】
なお、前記並進走査や回転走査による走査スポットの、被検面上における位置は、リニアセンサやエンコーダ等の各走査手段に適した位置検出手段からの出力に基づいて、演算処理手段70により求めるものとして、光強度検出手段により検出された結果と走査スポットの被検面上における位置とを関連付けられるように構成してもよい。
【0098】
本実施形態の表面検査装置100は、光源10がマルチビームを出射して光量分布調整手段としての機能も果たし、光源10から出射され所定領域P0に到達したレーザ光L0′の光量分布を全ての小領域P1〜P4について均一としたものであるが、このような光量分布調整手段を用いずに、所定領域P0に到達したレーザ光L0′の光量分布が全ての小領域P1〜P4について均一でないものであってもよい。
【0099】
この場合には、所定領域P0からの各正反射光L1〜L4の偏光成分M1〜M4の光強度I1〜I4の検出値に対して、所定領域P0の光量分布が全ての小領域P1〜P4について均一であったとすれば得られるであろう補正値に補正処理する補正手段を備えたものとすればよい。
【0100】
すなわち、図8に示した表面検査装置100は、図1に示した表面検査装置100に対して、光源10が単一ビームのレーザ光L0を出射するものであり、また、演算処理手段70が、上述した補正手段としての補正部76を備えた点において相違する。
【0101】
ここで、光源10から出射された単一ビームのレーザ光L0は、集光レンズ31および偏光子32を通過してレーザ光L0′として被検面220上に到達し、この被検面220上の所定領域P0を走査スポットとして照射するが、この走査スポットP0における光強度分布は、例えば図9に示すようなガウス分布を呈し、中心部が最も強い光強度I0、周辺部が最も弱い光強度I0/e2を示す。
【0102】
この結果、周辺部に位置する小領域P1およびP4からの正反射光L1,L4は、中心部に位置する小領域P2およびP3からの正反射光L2,L3よりも、当然に弱いものとなり、最終的な検出値である偏光成分Mの光強度Iも、走査スポットP0における光強度分布に依存して小さくなる。
【0103】
ここで、補正部76が、小領域P1〜P4の光強度分布が均一でない状態で検出された検出値に対して、所定領域P0の光強度分布が全ての小領域P1〜P4について均一であったとすれば得られるであろう補正値に補正処理することにより、ストークスパラメータS0〜S3を精度よく算出することが可能となる。
【0104】
このような補正処理としては、例えば図10に示すように、所定領域P0内の小領域P1〜P4の各光強度Ia,Ib,Ic,Idを、それぞれ所定値I0とするために要する演算上の補正パラメータ等を予め求め、この求められた補正パラメータを補正部76に予め記憶させて、検出された偏光成分M1〜M4の光強度I1〜I4に対して、補正部76がこの補正パラメータを用いた補正演算処理を施すようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面検査装置を示すブロック図である。
【図2】図1に示した表面検査装置によるレーザ光(照射光)と正反射光との関係を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は光路に沿った断面を示す図をそれぞれ表す。
【図3】各開口に偏光素子が組み込まれた視野絞りを示す図である。
【図4】走査にしたがって小領域の対応関係が変化する様子を示す模式図である。
【図5】光源からの出射光の略均一な光強度分布を示す図である。
【図6】回転走査の走査手段の一例を示す図である。
【図7】視野絞りにおける開口の他の配列態様を示す図である。
【図8】不均一な光強度分布に基づいて検出された検出値に対して補正する補正部を有する実施形態の表面検査装置を示すブロック図である。
【図9】所定領域における不均一な光強度分布を示す図である。
【図10】不均一な光強度分布を均一な光強度分布に補正する概念を説明する図である。
【符号の説明】
【0106】
10 レーザ光源(光源、光量調整手段)
20 2次元走査ステージ(走査手段)
30 照射光学系
41〜44 受光素子
50 検出光学系
53 視野絞り
53a〜53d 開口
60 偏光素子
61〜64 検光子(偏光素子)
65 1/4波長板(偏光素子)
70 演算処理手段
71 制御部
72 演算部
100 表面検査装置
200 被検体
220 被検面
L0,L0′ レーザ光
P0 走査スポット(所定領域)
P1〜P4 小領域
L1〜L4 正反射光
M1〜M4 偏光成分
Δy′ 開口のピッチ
Δy 副走査のピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の薄膜が形成された被検面の所定領域に対して光源から出射した偏光状態が既知の光束を照射光学系により照射し、前記所定領域で反射した反射光の光強度を互いに異なる複数の偏光成分ごとに検出することにより、前記反射光の偏光状態を検出し、この検出された偏光状態に基づいて前記薄膜の膜厚および該薄膜の物性のうち少なくとも1つを求める表面検査装置において、
前記所定領域のうち前記光強度を検出する前記偏光成分の数に応じた互いに異なる複数の小領域からの各反射光を空間的に分離して通過させる、レンズおよび前記小領域の数に対応した数の開口を有する視野絞りと、前記視野絞りの各開口を通過した前記各反射光の光路上にそれぞれ配設された、互いに異なる偏光成分を通過させる偏光素子と、前記各偏光素子を通過した各反射光の光強度を各別に検出する光強度検出手段と、前記各小領域からの各反射光が前記視野絞りの全ての開口を順次通過するように、前記光束を前記被検面に対して走査させる走査手段とを備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記走査手段による走査は、平行移動または回転移動による主走査と、前記主走査方向に略直交する方向への平行移動による副走査との組合せであり、前記視野絞りにおける前記複数の開口は、前記副走査の方向に対応した方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記各偏光素子は、それぞれの光路に対応する前記視野絞りの前記開口を塞ぐように配設されて、前記視野絞りと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記光源から出射され前記所定領域に到達した光束の光量分布が全ての前記小領域について均一となるように、前記光量分布を調整する光量分布調整手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記光源から出射され前記所定領域に到達した光束の光量分布が全ての前記小領域について不均一であり、前記反射光の光強度の検出値に対して、前記光量分布が全ての前記小領域について均一であったとすれば得られる補正値に補正処理する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−145305(P2006−145305A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333858(P2004−333858)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】