説明

表面検査装置

【課題】照明光を短波長化しないで、繰り返しピッチの微細化に対応できる検査装置を提供する。
【解決手段】被検査基板20を照明するための直線偏光の発散光束を射出する光源手段Lsと、前記直線偏光の発散光束を、その光束の主光線が所定の入射角を有するように入射して、前記被検基板に導く光学部材35と、前記被検基板からの光束のうち前記直線偏光と偏光方向が直交する直線偏光成分を受光する受光手段38、39と、前記光源手段と前記受光手段との間の光路中に配置される補正部材に、応力歪を設定することにより、前記光学部材に起因して発生する偏光面の乱れを解消する補正手段10と、前記受光手段で受光した光に基づいて前記被検査基板の表面の欠陥を検出する検出手段15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の基板表面の検査を行う表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路素子等の製造工程におけるウエハの表面に形成された繰り返しパターンの欠陥の検査装置として、従来から、回折を利用したものが知られている。回折を利用した装置では、パターンのピッチによりステージのチルト角の調整が必要になる。また、より微細なパターンへの対応のためには照明光の波長の短波長化が必要である。
【特許文献1】特開平10−232122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、繰り返しピッチの微細化(すなわち配線パターンなどのライン・アンド・スペースの微細化)に対応するために、照明光の短波長化を行おうとすると、光源の種類が限定され、高価で大掛かりな光源となってしまう。また、更に照明系や受光系を構成する光学素子の材料も高価なものに限定され、好ましくない。
【0004】
本発明の目的は、照明光を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決のため、請求項1の発明は、
被検査基板を照明するための直線偏光の発散光束を射出する光源手段と、
前記直線偏光の発散光束を、その光束の主光線が所定の入射角を有するように入射して、前記被検基板に導く光学部材と、
前記被検基板からの光束のうち前記直線偏光と偏光方向が直交する直線偏光成分を受光する受光手段と、
前記光源手段と前記受光手段との間の光路中に配置される補正部材に、応力歪を設定することにより、前記光学部材に起因して発生する偏光面の乱れを解消する補正手段と、
前記受光手段で受光した光に基づいて前記被検査基板の表面の欠陥を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明は、
被検査基板を照明するための直線偏光の発散光束を射出する光源手段と、
前記直線偏光の発散光束を、その光束の主光線が所定の入射角を有するように入射して、前記被検基板に導く光学部材と、
前記被検基板からの光束のうち前記直線偏光と偏光方向が直交する偏光成分を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された光により前記被検基板を像を結像する結像手段と、
前記光源手段と前記検出手段との間の光路中に配置される補正部材に、応力歪を設定することにより、前記光学部材に起因して発生する偏光面の乱れを解消する補正手段と、
結像された前記像に基づいて、前記被検基板の表面の欠陥を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
なた、請求項3の発明は、
請求項1または2に記載の表面検査装置において、
前記補正手段は、前記応力歪を任意の値に固定可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、照明光を短波長化しなくても、繰り返しピッチが微細化された基板の検査に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態の表面検査装置の構成を示す図である。図1において、表面検査装置は、被検基板である半導体ウエハ20を支持するステージ11と、アライメント系12と、照明光学系13と、受光光学系14と、画像処理装置15とで構成されている。表面検査装置は、半導体回路素子の製造工程において、半導体ウエハ20の表面の検査を自動的に行う装置である。半導体ウエハ20は、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウエハカセットまたは現像装置から運ばれ、ステージ11に吸着される。
【0010】
図1において、ランプハウスLSの内部には、不図示のハロゲンランプやメタルハライドランプ、水銀ランプなどの光源と、波長選択フィルタ、光量調整用のNDフィルタ等が内蔵されており、一部の波長の光のみが照明光L1として抽出され、ライトガイドファイバ33に入射している。照明光学系13はライトガイドファイバ33と偏光板34と偏光補償板9と凹面反射鏡35とで構成されている。ライトガイドファイバ33から射出された発散光束である照明光L1は球面形状の凹面反射鏡35によりほぼ平行な光に変換され、ステージ11上に載置されたウエハ20を照明する。
【0011】
ライトガイドファイバ33の射出部付近には偏光板34が配置されていて、ライトガイドファイバ33から射出された照明光L1を直線偏光にする。偏光板34によって直線偏光となった光は、偏光補償板9を経て凹面反射鏡35によってコリメートされ、直線偏光のコリメート光がウエハ20を照明する。
【0012】
スループットを向上させるためには、ウエハ面全面の画像を一括で取ることが極めて有利であるので、本実施形態では、上述のように、光源からの光束を拡大して、凹面反射鏡35によりコリメートし、ウエハ全面を照明できる構成となっている。
【0013】
ウエハ20に入射した直線偏光のコリメート光L1はウエハ表面で反射されて、受光光学系14に入射する。受光光学系14は、凹面反射鏡36と偏光補償板10と偏光板38と集光レンズ37とで構成されている。ウエハ20で反射された光束L2は、凹面反射鏡36に入射して集光作用を受ける。凹面反射鏡36で反射した集光光束は、偏光補償板10と、偏光板34とはクロスニコルの関係に配置された偏光板38とを経て、結像レンズ37によりウエハ20の表面と共役な位置に配置された撮像素子39の撮像面上にウエハ20表面の像を形成する。
【0014】
半導体ウエハ20の表面には、図2に示すように、複数のチップ領域21がXY方向に配列され、各チップ領域21の中に繰り返しパターン22が形成されている。繰り返しパターン22のライン部の配列方向(X方向)を「繰り返しパターン22の繰り返し方向」という。
【0015】
また、本実施形態では、繰り返しパターン22に対する照明光の波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さいとする。このため、繰り返しパターン22から回折光が発生することはない。本実施形態における欠陥検査の原理は、本出願人がすでに出願した特願2003-366255号に記載されているので、ここでは原理に関しては詳しく説明しない。
【0016】
ステージ11の表面には、上述のパターンが形成されたウエハ20が載置され、真空吸着等により固定保持される。さらに、ステージ11はステージ回転機構16によってステージ面に直交する所定の回転軸周りに回転可能に構成されている。このステージ回転機構16により、ウエハ20を照明する光束L1の直線偏光の振動面に対するウエハ20表面の形成された繰り返しパターンの長手方向とのなす角度を任意の角度に設定することができる。
【0017】
また、図1の表面検査装置において、凹面反射鏡35と凹面反射鏡36との間には、ステージ11に載置されたウエハ20の表面に形成されたパターンの向きを検知するためのアライメント系12が配設され、予め設定された光束L1の直線偏光の振動面と繰り返しパターン22の長手方向Yとのなす角度を検知して、ステージ回転機構16により照明光学系13及び受光光学系14に対する繰り返しパターンの長手方向Yの向きを調整することができる。
【0018】
アライメント系12は、ステージ11が回転しているときに、半導体ウエハ20の外縁部を照明し、外縁部に設けられた外形基準(例えばノッチ)の回転方向の位置を検出し、所定位置でステージ11を停止させる。その結果、半導体ウエハ20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(図2のX方向)を、後述の照明光の入射面3A(図3参照)に対して、45度の角度に傾けて設定することができる。
【0019】
本実施形態では、直線偏光の光束L1がP偏光である。つまり、図4(a)に示すように、直線偏光L1の進行方向とベクトルの振動方向とを含む平面(直線偏光L1の振動面)が、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれる。直線偏光L1の振動面は、凹面反射鏡35の前段に配置された偏光板34の透過軸により規定される。
【0020】
本実施形態では、半導体ウエハ20に入射する直線偏光L1がP偏光(図4(a))であるため、図5に示す通り、半導体ウエハ20の繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)が直線偏光L1の入射面(3A)に対して45度の角度に設定された場合、半導体ウエハ20の表面における直線偏光L1の振動面の方向(図5のV方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との成す角度も、45度に設定される。
【0021】
換言すると、直線偏光L1は、半導体ウエハ20の表面における振動面の方向(図5のV方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して45度に傾いた状態で、繰り返しパターン22を斜めに横切るような状態で、繰り返しパターン22に入射する。
【0022】
このような直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は、半導体ウエハ20の表面全体において均一である。なお、45度を135度,225度,315度の何れかに言い換えても、直線偏光L1と繰り返しパターン22との角度状態は同じである。また、図5の振動面の方向(V方向)と繰り返し方向(X方向)との成す角度を45度に設定するのは、繰り返しパターン22の欠陥検査の感度を最も高くするためである。
【0023】
そして、上記の直線偏光L1を用いて繰り返しパターン22を照明すると、繰り返しパターン22から正反射方向に楕円偏光L2が発生する(図1,図4(b))。この場合、楕円偏光L2の進行方向が正反射方向に一致する。正反射方向とは、直線偏光L1の入射面(3A)内に含まれ、ステージ11の法線1Aに対して直線偏光L1の入射角度等しい角度だけ傾いた方向である。なお、上記の通り、繰り返しパターン22のピッチPが照明波長と比較して十分小さいため、繰り返しパターン22から回折光が発生することはない。
【0024】
次に、受光光学系14の説明を行う。受光系14は、図1に示すように、凹面反射鏡36と結像レンズ37と偏光板38と偏光補償板10と撮像素子39とで構成されている。
凹面反射鏡36は、上記した照明光学系13の凹面反射鏡35と同様の反射鏡であり、楕円偏光L2を反射して結像レンズ37の方に導き、結像レンズ37と協働して撮像素子39の撮像面に集光する。
【0025】
ただし、結像レンズ37と凹面反射鏡36との間には、偏光板38が配置されている。偏光板38の透過軸の方位は、上記した照明光学系13の偏光板34の透過軸に対して直交するように設定されている(クロスニコル(直交ニコル)の状態)。したがって、偏光板38により、楕円偏光L2の図4(c)の偏光成分L3に相当する偏光成分のみを抽出して、撮像素子39に導くことができる。その結果、撮像素子39の撮像面には、図4(c)の偏光成分L3に相当する偏光成分による半導体ウエハ20の反射像が形成される。
【0026】
撮像素子39は、例えばCCD撮像素子などであり、撮像面に形成された半導体ウエハ20の反射像を光電変換して、画像信号を画像処理装置15に出力する。半導体ウエハ20の反射像の明暗は、図4(c)の偏光成分L3の大きさに略比例し、半導体ウエハ20の反射像が最も明るくなるのは、繰り返しパターン22が理想的な形状の場合である。なお、半導体ウエハ20の反射像の明暗は、ショット領域ごとに現れる。
【0027】
画像処理装置15は、撮像素子39から出力される画像信号に基づいて、半導体ウエハ20の反射画像を取り込む。なお、画像処理装置15は、比較のため、良品ウエハの反射画像を予め記憶している。良品ウエハとは、繰り返しパターン22が理想的な形状で表面全体に形成されたものである。良品ウエハの反射画像の輝度情報は、最も高い輝度値を示すと考えられる。
【0028】
したがって、画像処理装置15は、被検基板である半導体ウエハ20の反射画像を取り込むと、その輝度情報を良品ウエハの反射画像の輝度情報と比較する。そして、半導体ウエハ20の反射画像の暗い箇所の輝度値の低下量に基づいて、繰り返しパターン22の欠陥を検出する。例えば、輝度値の低下量が予め定めた閾値(許容値)より大きければ「欠陥」と判定し、閾値より小さければ「正常」と判断すればよい。
【0029】
上記したように、本実施形態の表面検査装置によれば、直線偏光L1を用い、図5の振動面の方向(V方向)が繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)に対して傾いた状態で、繰り返しパターン22を照明すると共に、正反射方向に発生した楕円偏光L2のうち、図4(c)の偏光成分L3の大きさに基づいて、繰り返しパターン22の欠陥を検出するため、照明波長と比較して繰り返しパターン22のピッチPが十分小さくても、確実に欠陥検査を行うことができる。つまり、照明光である直線偏光L1を短波長化しなくても、確実に繰り返しピッチの微細化に対応できる。
【0030】
さらに、本実施形態においては、照明光学系13には、偏光板34と凹面反射鏡35との間に、偏光補償板9が配置されている。また、受光光学系14には、偏光板38と凹面反射鏡36との間に、偏光補償板10が配置されている。
【0031】
まず、これらの偏光補償板を有さない場合に、凹面反射鏡35に入射し、反射した光束の偏光状態について説明する。
図1において、凹面反射鏡35に関して、凹面反射鏡に入射する直線偏光L1の主光線AX1を含み凹面反射鏡の光軸O35に平行な平面が、凹面反射鏡に入射する直線偏光L1の入射面である。一方、ライトガイドファイバ33の開口数に応じて発散された照明光L1は上述のように偏光板34で所定の直線偏光に変換され、発散光束の主光線AX1は凹面反射鏡35の光軸O35に対してずれた部位に入射する所謂軸外しの光学系となっている。
【0032】
従って、凹面反射鏡35に入射する光線は、凹面反射鏡35に対して垂直ではない。このためFrenelの反射の式に従って、偏光のP成分とS成分との間に透過率の差が発生し、その結果偏光面の回転が発生する。
【0033】
例えば、偏光板34により、この入射面に対して平行な振動面(P偏光)を有する直線偏光が生成されるとする。この場合、主光線AX1と光軸O35とで形成される入射面を基準入射面とすると、光軸O35を含み前記入射面に対して垂直な面と凹面反射鏡35との交点付近においては、偏光面の回転は起こらないが、凹面反射鏡35の他の部位では回転が起こる。偏光の振動面は、凹面反射鏡35の面内のうち基準入射面を挟んで線対称に回転する。この回転量は凹面反射鏡の光軸O35から離れた部位ほど大きい。これは、凹面反射鏡35に入射する発散光束が、凹面反射鏡35の光軸O35からずれた位置から入射するため、図1において、凹面反射鏡35に入射する光束の最も左側の光は最も入射角度が小さく、最も右側の光は最も入射角度が大きくなるような傾斜を有するからである(入射角度は入射光と、凹面反射鏡面の法線との角度である)。
【0034】
このように凹面反射鏡に対する光の入射角度が面内で異なる(傾斜を有する)ため、面内で偏光面の回転にわずかの差が生じ、クロスニコルでの消光比のムラが発生する。
さらに、受光光学系14で発生する消光比のムラについて説明する。図1において、凹面反射鏡36に関して、凹面反射鏡36から射出する直線偏光L2の主光線AX2を含み凹面反射鏡の光軸O36に平行な平面が、凹面反射鏡36から射出する直線偏光L2の入射面を基準入射面である。一方、ウエハ20を反射した平行光束L2は、凹面反射鏡36のうち光軸O36から外れた部位に入射して収束作用を受けるので、受光光学系14は、所謂軸外しの光学系となっている。
【0035】
凹面反射鏡36から射出する収束光束の偏光面の回転は、前述の照明光学系13の場合と同様である。凹面反射鏡36において、凹面反射鏡36の面内のうち、前記基準入射面を挟んで線対称に、偏光の振動面が回転する。この回転量は凹面反射鏡の光軸O36から離れた部位ほど大きい。これは、凹面反射鏡36を射出する収束光束L2が、凹面反射鏡36の光軸O36からずれた位置から射出するため、図1において、凹面反射鏡36から射出する光束の最も右側の光は最も入射角度が小さく、最も左側の光は最も射出角度が大きくなるような傾斜を有するからである(入射角度は入射光と、凹面反射鏡面の法線との角度である)。このように凹面反射鏡に対する光の射出角度が面内で異なる(傾斜を有する)ため、面内で偏光面の回転にわずかの差が生じ、クロスニコルでの消光比のムラが発生する。
【0036】
本実施形態のように、クロスニコルに配置した2枚の偏光板34、38によって、構造複屈折による偏光の変化を検出する場合は、このような、装置に起因する僅かの偏光の乱れがノイズとなり検出精度を劣化させる。
【0037】
このような、傾斜を有して分布する微小な偏光面の回転による、照明光の面内での偏光面の回転ムラを解消するために、本実施形態では、偏光補償板9、10をそれぞれ偏光板34と凹面反射鏡35との間、偏光板38と凹面反射鏡36との間に配置する。しかしながら、どちらか一方だけに偏光補償板を配置しても偏光面の回転ムラの解消に効果がある。
【0038】
図6は、偏光補償板9、10の構成を示す図である。偏光補償板9,10は、例えばガラスの平行平板であり、支持部材40a、40bによって両端を固定されている。支持部材40a、40bは、それぞれ軸41a、41bを中心として回動可能に構成されており、支持部材40a、40bの一方あるいは両方を回動させることにより、偏光補償板9,10に応力を加えることができる。偏光補償板9,10は、応力が加わることにより形状が歪む。例えば偏光補償板9は、応力が加わっていない状態では、その入射面(出射面の同じ)が照明光L1の光軸AX1に対して垂直になるように配置されている。しかし、応力が加わり、表面形状が歪むことにより、入射面(出射面)の少なくとも一部が光軸AX1に対して傾斜した状態となる。
【0039】
ライトガイドファイバ11から射出され、偏光板34を経て直線偏光となった光束L1は偏光補償板9に入射する。ここで、光束L1は発散光束であり、かつ偏光補償板9は光軸AX1に対して傾いた入射面が存在するので、偏光補償板9に入射する光束の入射角度の大きさは光束の断面方向で傾斜を有する。したがって、偏光補償板9を透過した照明光L1は、入射光の入射角度に応じて、P成分とS成分の位相差が変化し偏光面が回転する。
【0040】
ウエハ20を照明する時点での照明光L1の偏光面は、偏光補償板9で生じた偏光面の回転と凹面反射鏡35で生じた偏光面の回転量との足し合わせとなる。従って、凹面反射鏡35で生じる偏光面の回転量の傾斜とは反対の傾斜を有する偏光面の回転を生じるように、偏光補償板9を照明光学系の光軸AX1に対して傾斜を生じさせるように歪ませれば、偏光面の回転量の値を揃えることができる。受光光学系14に設けられた偏光補償板10においても同様のことが言えるので、2つの偏光補償板をそれぞれ歪ませることにより、偏光面の回転量の値をより均一に揃えることが可能となる。
【0041】
偏光補償板9、10を固定している支持部材40a、40bは、回動させた状態で、その状態に固定することができる。したがって、任意の回動位置(すなわち任意の応力を加えた状態)で固定させておくことができる。
【0042】
次に、偏光面の回転量の値を揃えた状態にするための調整のしかたについて説明する。
まず、偏光補償板9、10に応力が加えられていない状態で、ベアウエハ(表面に何も処理が施されていないウエハ)をステージ11上に載置する。このベアウエハは、表面にパターンが形成されていないので、直線偏光L1はベアウエハに照射されても楕円偏光成分が発生しない。したがって、理論的には、直線偏光L1と偏光方向が同一の光束が偏光板38に入射することになり、偏光板38を透過する偏光成分はなく、撮像素子39には光が入射しないことになる。しかしながら、前述のように、凹面反射鏡35,36で偏光面が回転することにより、撮像素子39にはその偏光面が回転した部分の偏光成分が入射して、その部分が明るく見えることになる。図7は、撮像されたベアウエハの像を示す図であり、黒い帯状領域51aと、領域51aより明るく見える領域51b、51cがある。領域51b、51cは、偏光面が回転した部分である。このように明るさにムラ(消光比のムラ)ができている。
【0043】
この状態で、偏光補償板9、10の支持部材40a、40bを回動させることにより、偏光補償板9、10に応力を加え歪ませる。そして、撮像素子39で撮像されたベアウエハの像を見ながら、図7のような明るさのムラがなくなるような、支持部材40a、40bの回動位置を探す。そして、明るさのムラがなくなった位置で支持部材40a、40bを固定する。
【0044】
このような状態で、パターンが形成されたウエハをステージ11に載置して検査を行う。
本実施形態では、偏光補償板9、10に平行平板を用いたが、応力を加えることにより歪ませることができ、明るさのムラを補正できるのであれば、他の形状の部材であってもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、偏光補償板9、10により、凹面反射鏡35,36による光束の断面方向での偏光面の回転量の傾斜を補正することができるのでウエハ面全面で偏光面の回転方向の揃えることができる。そのため、ウエハの欠陥検出の検出精度を劣化させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態による表面検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】半導体ウエハ20の表面の外観図である。
【図3】直線偏光L1の入射面(3A)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図4】直線偏光L1と楕円偏光L2の振動方向を説明する図である。
【図5】直線偏光L1の振動面の方向(V方向)と、繰り返しパターン22の繰り返し方向(X方向)との傾き状態を説明する図である。
【図6】偏光補償板9、10の構成を示す図である。
【図7】撮像されたベアウエハの像であり、消光ムラを示す図である。
【符号の説明】
【0047】
9,10:偏光補償板、11:ステージ、12:アライメント系、13:照明光学系、14:受光光学系、15:画像処理装置、16:ステージ回転機構、20:半導体ウエハ、21:チップ領域、22,25,26:繰り返しパターン、33:ライトガイドファイバ、34,38:偏光板、35,36:凹面反射鏡、37:結像レンズ、39:撮像素子、40a、40b:支持部材、L1:照明光、L2:反射光、LS:ランプハウス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査基板を照明するための直線偏光の発散光束を射出する光源手段と、
前記直線偏光の発散光束を、その光束の主光線が所定の入射角を有するように入射して、前記被検基板に導く光学部材と、
前記被検基板からの光束のうち前記直線偏光と偏光方向が直交する直線偏光成分を受光する受光手段と、
前記光源手段と前記受光手段との間に配置される補正部材に、応力歪を設定することにより、前記光学部材に起因して発生する偏光面の乱れを解消する補正手段と、
前記受光手段で受光した光に基づいて前記被検査基板の表面の欠陥を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
被検査基板を照明するための直線偏光の発散光束を射出する光源手段と、
前記直線偏光の発散光束を、その光束の主光線が所定の入射角を有するように入射して、前記被検基板に導く光学部材と、
前記被検基板からの光束のうち前記直線偏光と偏光方向が直交する偏光成分を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された光により前記被検基板を像を結像する結像手段と、
前記光源手段と前記検出手段との間の光路中に配置される補正部材に、応力歪を設定することにより、前記光学部材に起因して発生する偏光面の乱れを解消する補正手段と、
結像された前記像に基づいて、前記被検基板の表面の欠陥を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面検査装置において、
前記補正手段は、前記応力歪を任意の値に固定可能であることを特徴とする表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266817(P2006−266817A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84290(P2005−84290)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】