説明

記憶回路、記憶装置、信号処理回路

【課題】電源電圧の供給が停止した後もデータ保持可能な記憶回路の提供、消費電力の低減可能な信号処理回路を提供する。
【解決手段】記憶回路は、トランジスタと、容量素子と、第1の演算回路と、第2の演算回路と、第3の演算回路と、スイッチと、を有し、第1の演算回路の出力端子は、第2の演算回路の入力端子と電気的に接続され、第2の演算回路の入力端子は、スイッチを介して第3の演算回路の出力端子と電気的に接続され、第2の演算回路の出力端子は、第1の演算回路の入力端子と電気的に接続され、第1の演算回路の入力端子は、トランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続され、トランジスタのソース及びドレインの他方は、容量素子の一対の電極のうちの一方、及び第3の演算回路の入力端子と電気的に接続され、トランジスタのチャネルは酸化物半導体層に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源を切っても記憶している論理状態が消えない記憶回路に関する。また、当該記憶回路を用いた、記憶装置や信号処理回路に関する。更に、当該記憶回路、当該記憶装置、当該信号処理回路の駆動方法に関する。更に当該信号処理回路を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の記憶装置が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算回路とメインメモリの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として設けられている。
【0003】
レジスタやキャッシュメモリ等の記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップ回路が、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電位の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶装置が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データの入出力が行われない期間において信号処理回路への電源電圧の供給を一時的に停止するという方法が提案されている。その方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データをその不揮発性の記憶装置に一時的に記憶させる。こうして、信号処理回路において電源電位の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等はデータを保持する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、信号処理回路において長時間の電源電圧の供給停止を行う際には、電源電圧の供給停止の前に、揮発性の記憶装置内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信号処理回路において電源電圧の供給を停止する間、揮発性の記憶装置の周辺に配置した不揮発性の記憶装置へ揮発性の記憶装置のデータを移して記憶させる方法では、このような不揮発性の記憶装置を構成する記憶回路として主に磁気素子や強誘電体素子が用いられている。強誘電体を用いた記憶回路では、データの書き込みを繰り返すことによって、強誘電体材料が疲労し、書き込み不良となる等の問題があり、書き換え回数が制限される。
【0008】
不揮発性の記憶装置としてフラッシュメモリを用いた場合、各記憶回路において高電圧を印加してトンネル電流により電子を注入または放出する動作を行うため、データの書き換えを繰り返すことによる各記憶回路の劣化が激しい等の問題があり、書き換え回数が制限される。
【0009】
また、信号処理回路において電源電圧の供給を停止する間、外部記憶装置に揮発性の記憶装置のデータを移して記憶させる方法では、外部記憶装置から揮発性の記憶装置にデータを戻すのには時間を要する。よって、外部記憶装置によるデータのバックアップは、消費電力の低減を目的とした頻繁な電源電圧の供給停止には適さない。
【0010】
そこで、上述の課題に鑑み、電源電圧の供給が停止した後もデータを保持することができる、新たな構成の記憶回路及びその駆動方法を提供することを目的の一つとする。
【0011】
また、消費電力を低減することができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。特に、電源電圧の供給停止により消費電力を低減することができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の記憶回路の一態様は、以下のとおりである。
【0013】
(記憶回路の構成)
記憶回路は、オフ電流が極めて小さいトランジスタと、容量素子と、第1の演算回路と、第2の演算回路と、第3の演算回路と、スイッチと、を有する。第1の演算回路の出力端子は、第2の演算回路の入力端子と電気的に接続される。第2の演算回路の入力端子は、スイッチを介して第3の演算回路の出力端子と電気的に接続される。第2の演算回路の出力端子は、第1の演算回路の入力端子と電気的に接続される。第1の演算回路の入力端子は、上記トランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続される。上記トランジスタのソース及びドレインの他方は、容量素子の一対の電極のうちの一方、及び第3の演算回路の入力端子と電気的に接続される。
【0014】
ここで、オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、シリコンよりも広いバンドギャップを有する半導体でなる層や基板中にチャネルが形成されるトランジスタを用いることができる。シリコンよりも広いバンドギャップを有する半導体として化合物半導体があり、例えば、酸化物半導体、窒化物半導体などがある。例えば、オフ電流が極めて小さいトランジスタとして、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いることができる。
【0015】
上記(記憶回路の構成)において、第1の演算回路としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。第2の演算回路としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。第3の演算回路としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。スイッチとしては、例えばアナログスイッチ、トランジスタ等を用いることができる。
【0016】
なお、第3の演算回路としてスイッチの機能を有する回路を採用し、上記スイッチを省略することも可能である。例えば、第3の演算回路として、スリーステートバッファやクロックドインバータを用い、スイッチを省略することも可能である。
【0017】
上記(記憶回路の構成)において、第1の演算回路、第2の演算回路、第3の演算回路、及びスイッチをトランジスタを用いて構成する場合に、当該トランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。
【0018】
上記(記憶回路の構成)において、オフ電流が極めて小さいトランジスタは、チャネルが形成される層(活性層)を挟んで上下に2つのゲートを有するトランジスタとすることができる。一方のゲートに制御信号を入力し、他方のゲートには別の制御信号を入力することができる。別の制御信号は、一定の電位の信号であってもよい。一定の電位は、低電源電位や高電源電位であってもよい。なお、2つのゲートを電気的に接続し、制御信号を入力してもよい。他方のゲートに入力する信号によって、トランジスタのしきい値電圧等を制御することが可能である。また、トランジスタのオフ電流を更に低減することも可能である。トランジスタのオン電流を増大させることも可能である。
【0019】
上記(記憶回路の構成)において容量素子の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位が入力される構成とすることができる。
【0020】
上記(記憶回路の構成)では、電源電圧が供給されている間は、第1の演算回路と第2の演算回路によって帰還ループが形成され、この帰還ループによってデータを保持することができる。第1の演算回路と第2の演算回路とを有し、帰還ループによってデータを保持する回路としては、フリップフロップ回路等が挙げられる。また、フリップフロップ回路等の帰還ループによってデータを保持する回路は、クロック信号やクロック信号の反転信号に同期して、データの入出力を行う構成とすることができる。ここで、フリップフロップ回路はラッチ回路もその範疇に含むとする。例えば、レベルセンシティブラッチ回路や、エッジセンシティブラッチ回路もフリップフロップ回路の範疇に含むものとする。本発明の記憶回路の一態様は、フリップフロップ回路等の帰還ループによってデータを保持する回路において、オフ電流が極めて小さいトランジスタと、容量素子と、演算回路(上記第3の演算回路)と、スイッチとを追加した構成に相当する。よって、上記(記憶回路の構成)を別の表現で表すと以下の通りとなる。
【0021】
記憶回路は、フリップフロップ回路と、オフ電流が極めて小さいトランジスタと、容量素子と、演算回路と、スイッチとを有する。フリップフロップ回路は、第1のノードと第2のノードを有し、電源電圧が供給されている間、第2のノードに保持される信号は、第1のノードに保持された信号の反転信号となる。上記トランジスタのソース及びドレインの一方は、第1のノードと電気的に接続される。上記トランジスタのソース及びドレインの他方は、容量素子の一対の電極のうちの一方、及び演算回路の入力端子と電気的に接続される。演算回路の出力端子は、スイッチを介して第2のノードと電気的に接続される。
【0022】
(記憶回路の駆動方法)
上記記憶回路の駆動方法の一態様について説明する。上記記憶回路において、電源電圧の供給の後、消費電力を削減するために電源電圧の供給を停止し、再び電源電圧を供給する場合の駆動方法は以下のようにすることができる。
【0023】
(電源電圧供給時の動作)
記憶回路へ電源電圧が供給され、且つクロック信号やクロック信号の反転信号は、ハイレベルまたはローレベルにレベル(電位)が周期的に変化する信号とする。このとき、クロック信号やクロック信号の反転信号に同期して、第1の演算回路及び第2の演算回路によって構成される帰還ループがデータに対応する信号(及びその反転信号)を保持する。ここで、スイッチはオフ状態である。こうして、記憶回路は、入力されたデータを帰還ループによって保持し、また帰還ループによって保持されたデータを出力する。ここで、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、シリコン層やシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタと比較して移動度が低い。移動度が低いトランジスタが帰還ループ上に存在すると、帰還ループにおけるデータ入力及び出力のスピードが遅くなる。本発明の記憶回路の一態様では、帰還ループ上に、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ等の移動度が低いトランジスタが存在しない。そのため、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しは高速に行うことができ、記憶回路におけるデータの書き込み及び読み出し速度(動作速度)は速い。なお、このときオフ電流が極めて小さいトランジスタはオフ状態であることが好ましい。仮に、オフ電流が極めて小さいトランジスタが常にオン状態であると、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出し時に、容量素子へもデータに対応する信号電位が常に入力されることとなり、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しの速度が低下してしまう。
【0024】
(電源電圧供給停止前の動作)
記憶回路への電源電圧の供給の停止をする前に、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(電位)を固定する。即ち、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(電位)を、所定のデータが帰還ループによって保持された状態のクロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(電位)のままとする。つまり、通常、クロック信号やクロック信号の反転信号は、ハイレベルまたはローレベルにレベル(電位)が周期的に変化する信号であるが、この変化をさせない期間を設ける。ここで、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(信号電位)を固定する期間を、クロック信号固定期間とも呼ぶ。そして、クロック信号固定期間において、オフ電流が極めて小さいトランジスタをオフ状態とする。例えば、クロック信号固定期間の直前において、オフ電流が極めて小さいトランジスタがオン状態であった場合には、クロック信号固定期間においてオフ電流が極めて小さいトランジスタをオフ状態とする。例えば、クロック信号固定期間の直前において、オフ電流が極めて小さいトランジスタがオフ状態であった場合には、クロック信号固定期間においてオフ電流が極めて小さいトランジスタを一旦オン状態とした後にオフ状態とする。こうして、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)を容量素子に移して保持する。なお、スイッチはオフ状態のままである。
【0025】
このように、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベルを一定に保った状態で、オフ電流が極めて小さいトランジスタをオフ状態とすることによって、帰還ループによって保持されたデータに対応する信号(電位)の変動を抑制した状態で、当該データに対応する信号(電位)を容量素子に移して保持することができる。
【0026】
(電源電圧供給停止の動作)
上記(電源電圧供給停止前の動作)の後、記憶回路への電源電圧の供給を停止する。また、上記(電源電圧供給停止前の動作)の後、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することができる。こうして、電源電圧だけでなく、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することによって、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給するための電力も削減することができる。なお、スイッチはオフ状態のままである。
【0027】
ここで、オフ電流が極めて小さいトランジスタはオフ状態のままであり、記憶回路への電源電圧の供給が停止した後においても、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)が容量素子によって保持される。こうして、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いることによって、容量素子によって保持された信号(電位)を長期間保つことができるため、記憶回路は電源電圧の供給が停止した後も、長期間に渡ってデータを保持することができる。
【0028】
なお、本発明の記憶回路の一態様では、オフ電流が極めて小さいトランジスタがオフ状態となり、且つスイッチがオフ状態となっている間は、容量素子の一対の電極のうちの一方と、帰還ループ中の各ノードとは、電気的に遮断されている。それ故、オフ電流が極めて小さいトランジスタがオフ状態となり、且つスイッチがオフ状態となっていれば、記憶回路への電源電圧の供給停止と、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給停止とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給停止のシーケンスに自由度がある。
【0029】
(電源電圧供給再開の動作)
記憶回路への電源電圧の供給を再開する。また、電源電圧の供給停止時におけるレベル(電位)に戻して固定された、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給する。こうして、クロック信号固定期間を開始する。ここで、オフ電流が極めて小さいトランジスタがオフ状態となり、且つスイッチがオフ状態となっていれば、記憶回路への電源電圧の供給再開と、電源電圧の供給停止時におけるレベル(電位)に戻して固定されたクロック信号やクロック信号の反転信号の供給再開とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給再開のシーケンスに自由度がある。
【0030】
その後、スイッチをオン状態とする。なお、オフ電流が極めて小さいトランジスタはオフ状態のままである。容量素子によって保持された信号(電位)は第3の演算回路によって対応する信号に変換され、スイッチがオン状態となると、帰還ループの所定のノードに入力される。こうして、電源電圧の供給停止前に保持していたデータを再び帰還ループによって保持することができる。また、スイッチを再びオフ状態にした後、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(電位)の固定を解除する。即ち、クロック信号やクロック信号の反転信号を、ハイレベルまたはローレベルにレベル(電位)が周期的に変化する通常の信号に戻す。こうして、記憶回路は、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しを再開することができる。その後の動作は、上記(電源電圧供給時の動作)と同様である。
【0031】
上記のとおり、帰還ループに保持されたデータを容量素子に移して書き込むための経路(以下、データ待避経路ともいう)と、容量素子に保持されたデータを帰還ループに戻すための経路(以下、データ復帰経路ともいう)とが異なる。データ復帰経路に配置されるスイッチとして、移動度が高い素子を用いることにより、(電源電圧供給再開の動作)をより高速に行うことができる。
【0032】
以上が、記憶回路の駆動方法の説明である。
【0033】
(記憶装置、信号処理回路)
本発明の記憶装置の一態様は、上記記憶回路を一または複数用いて構成された記憶装置とすることができる。また、本発明の信号処理回路の一態様は、当該記憶装置を用いた信号処理回路とすることができる。例えば、信号処理回路が有するレジスタ、キャッシュメモリ等の記憶装置に上記記憶回路を用いることができる。
【0034】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路等の各種論理回路を有してもよい。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0035】
本発明の信号処理回路の一態様は、CPUと、メモリと、メモリとCPUとのアクセスを制御する周辺制御装置とを有し、CPU、メモリ、及び周辺制御装置はそれぞれ、上記記憶回路を有する構成であってもよい。そして、CPU、メモリ、及び周辺制御装置を有する信号処理回路の全体において、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0036】
電源電圧が供給され、且つハイレベルまたはローレベルにレベル(電位)が周期的に変化するクロック信号やクロック信号の反転信号が入力されている間は、記憶回路は、入力されたデータを帰還ループによって保持し、また帰還ループによって保持されたデータを出力する。ここで、帰還ループ上に、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ等の移動度が低いトランジスタが存在しない。そのため、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しは高速に行うことができ、記憶回路におけるデータの書き込み及び読み出し速度は速い。
【0037】
電源電圧の供給が停止した間も、記憶回路は記憶内容(データ)を長期間にわたり保持することが可能であり、データの書き換えを繰り返すことによる記憶回路の疲労は少なく、データの書き換え可能な回数を多くすることができる。
【0038】
また、帰還ループに保持されたデータを容量素子に書き込むための経路(データ待避経路)と、容量素子に保持されたデータを帰還ループに戻すための経路(データ復帰経路)とが異なる。ここで、データ待避経路には、電源電圧の供給が停止した後も容量素子の一対の電極のうちの一方の電位を保持するために、オフ電流が極めて小さいトランジスタを設ける必要がある。シリコン層やシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタと比較して、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは移動度が低い。しかしながら、データ待避経路とは別にデータ復帰経路が設けられるため、データ復帰経路に配置されるスイッチとして移動度の高い素子を用いることにより、電源電圧供給再開後の動作をより高速に行うことができる。
【0039】
このような記憶回路を信号処理回路に用いることで、電源電圧の供給停止によるデータの消失を防ぐことができ、電源電圧を再供給した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。そのため、必要なときのみ電源電圧を供給する、ノーマリオフの駆動方法を採用することができ、消費電力を大幅に削減することができる。また、信号処理回路の動作速度を高速化することができ、更に信頼性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】記憶回路の回路図。
【図2】記憶回路の動作を示すタイミングチャート。
【図3】記憶回路の回路図。
【図4】記憶回路の動作を示すタイミングチャート。
【図5】記憶回路の作製工程を示す図。
【図6】記憶回路の作製工程を示す図。
【図7】記憶回路の作製工程を示す図。
【図8】記憶回路の構成を示す断面図。
【図9】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの構成を示す断面図。
【図10】携帯用の電子機器のブロック図。
【図11】電子書籍のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0042】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0043】
「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
【0044】
回路図上は独立している構成要素どうしが電気的に接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極や端子としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において「電気的に接続」で表現されるケースは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0045】
「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0046】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0047】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0048】
(実施の形態1)
本発明の記憶回路の一態様について説明する。図1(A)に記憶回路の構成を示す。
【0049】
図1(A)において、記憶回路100は、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101と、容量素子102と、演算回路221と、演算回路222と、演算回路223と、スイッチ224と、を有する。トランジスタ101として、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いる例を示し、OSの符号を付す。演算回路221の出力端子(図中、out)は、演算回路222の入力端子(図中、in)と電気的に接続される。演算回路222の入力端子は、スイッチ224を介して演算回路223の出力端子(図中、out)と電気的に接続される。演算回路222の出力端子(図中、out)は、演算回路221の入力端子(図中、in)と電気的に接続される。演算回路221の入力端子は、トランジスタ101のソース及びドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ101のソース及びドレインの他方は、容量素子102の一対の電極のうちの一方、及び演算回路223の入力端子(図中、in)と電気的に接続される。ここで、容量素子102の一対の電極のうちの一方を、ノードF(図中、F)で示す。
【0050】
演算回路221としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。演算回路222としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。演算回路223としては、インバータ、スリーステートバッファ、クロックドインバータ、NAND回路、NOR回路等を用いることができる。図1(A)では、演算回路223として、インバータ230を用いる例を示す。スイッチとしては、例えばアナログスイッチ、トランジスタ等を用いることができる。図1(A)では、スイッチ224として、トランジスタ103を用いる例を示す。トランジスタ103は、例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。
【0051】
ここで、演算回路223とスイッチ224を合わせた電流駆動能力は、演算回路221の電流駆動能力よりも大きくすることが好ましい。なお、スイッチ224の電流駆動能力が十分に大きい場合には、演算回路223の電流駆動能力を、演算回路221の電流駆動能力よりも大きくすることが好ましい。こうして、ノードMB(図中、MB)の電位を、容量素子102によって保持された信号(電位)に対応する信号とすることが容易となる。
【0052】
例えば、演算回路221はインバータによって構成され、当該インバータと、インバータ230とは相補型のトランジスタを用いた構成である場合に、各トランジスタは次のように設計することが望ましい。インバータ230の有する一導電型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有する前記一導電型とは異なる導電型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。つまり、インバータ230の有するnチャネル型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有するpチャネル型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。または、インバータ230の有するpチャネル型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有するnチャネル型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。ここで、スイッチ224の電流駆動能力が十分に大きい場合とは、例えば、スイッチ224がトランジスタ103によって構成される場合に、トランジスタのチャネル長をL3、チャネル幅をW3、移動度をμ3としたとき、μ3(W3/L3)がμ2(W2/L2)やμ1(W1/L1)と比べて十分に大きいことをいう。μ3(W3/L3)が十分に大きい場合に、上記不等式が成立するように、各回路のトランジスタを設計するのが好ましい。
【0053】
トランジスタ101のゲートは端子SG1と電気的に接続される。トランジスタ101は端子SG1に入力される制御信号によって、オン状態またはオフ状態が選択される。スイッチ224は端子SG2に入力される制御信号によって、オン状態またはオフ状態が選択される。図1(A)では、端子SG2はトランジスタ103のゲートと電気的に接続されている。容量素子102の一対の電極のうちの他方は、端子Cと電気的に接続される。端子Cには、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位が入力される構成とすることができる。
【0054】
演算回路221、演算回路222、演算回路223をトランジスタを用いて構成する場合に、当該トランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。
【0055】
また、トランジスタ101は、酸化物半導体層を挟んで上下に2つのゲートを有するトランジスタとすることができる。一方のゲートに制御信号を入力し、他方のゲートには、別の制御信号を入力することができる。別の制御信号は、一定の電位の信号であってもよい。一定の電位は、低電源電位や高電源電位であってもよい。なお、2つのゲートを電気的に接続し、制御信号を入力してもよい。他方のゲートに入力する信号によって、トランジスタ101のしきい値電圧等を制御することが可能である。また、トランジスタ101のオフ電流を更に低減することも可能である。トランジスタ101のオン電流を増大させることも可能である。
【0056】
図1(A)に示した記憶回路100では、電源電圧が供給されている間は、演算回路221と演算回路222によって帰還ループが形成され、帰還ループによってデータを保持することができる。演算回路221と演算回路222とを有し、帰還ループによってデータを保持する回路としては、フリップフロップ回路が挙げられる。図1(A)に示す構成は、フリップフロップ回路201において、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101と、容量素子102と、演算回路223と、スイッチ224とを追加した構成に相当する。図1(A)においてこの追加した部分を回路202で示す。
【0057】
フリップフロップ回路201は、ノードM(図中、M)とノードMB(図中、MB)を有し、電源電圧が供給されている間、ノードMBに保持される信号は、ノードMに保持された信号の反転信号となる。トランジスタ101のソース及びドレインの一方は、ノードMと電気的に接続される。トランジスタ101のソース及びドレインの他方は、容量素子102の一対の電極のうちの一方、及び演算回路223の入力端子(図中、in)と電気的に接続される。演算回路223の出力端子(図中、out)は、スイッチ224を介してノードMBと電気的に接続される。
【0058】
なお、図1(A)では、演算回路223として入力された信号の反転信号を出力する回路を用い、スイッチ224を介してノードMBに当該出力を入力する構成を示したがこれに限定されない。図1(B)に示すように、演算回路223として入力された信号を反転させずに出力する回路を用い、スイッチ224を介してノードMに当該出力を入力する構成としてもよい。このような演算回路223としては、例えば、インバータを偶数個直列に電気的に接続した構成を用いることができる。図1(B)では、演算回路223として、インバータ230aとインバータ230bが直列に電気的に接続された構成を用いた例を示す。なお、図1(B)においてその他の部分は図1(A)と同様であるため説明は省略する。
【0059】
(記憶回路の駆動方法)
図1(A)の記憶回路100の駆動方法の一態様について説明する。記憶回路100において、電源電圧の供給の後、消費電力を削減するために電源電圧の供給を停止し、再び電源電圧を供給する場合の駆動方法は以下のようにすることができる。なお、フリップフロップ回路201は、クロック信号及びクロック信号の反転信号に同期してデータの入出力を行う回路であるとして、以下の説明を行う。説明には図2のタイミングチャートを用い、図1(A)の符号も参照する。
【0060】
なお、図2において、MはノードMの電位を示し、MBはノードMBの電位を示し、FはノードFの電位を示し、SG1は端子SG1に入力される制御信号の信号電位を示し、SG2は端子SG2に入力される制御信号の信号電位を示し、Vは電源電圧を示し、CLKはクロック信号の信号電位を示し、CLKBはクロック信号の反転信号の信号電位を示す。図2中、斜線部分は、任意の信号電位とすることができる。
【0061】
ここで、図2では、SG1がハイレベルの場合にトランジスタ101がオン状態となり、SG1がローレベルの場合にトランジスタ101がオフ状態となる例を示したがこれに限定されない。以下の説明とトランジスタ101のオン状態及びオフ状態の関係が同様となるようにSG1の信号電位を適宜定めることができる。また、図2では、SG2がハイレベルの場合にトランジスタ103がオン状態となり、SG2がローレベルの場合にトランジスタ103がオフ状態となる例を示したがこれに限定されない。以下の説明とトランジスタ103のオン状態及びオフ状態の関係が同様となるようにSG2の信号電位を適宜定めることができる。
【0062】
(電源電圧供給時の動作)
期間1において、記憶回路100へ電源電圧VとしてVDDが供給され、且つクロック信号の信号電位CLK、及びクロック信号の反転信号の信号電位CLKBは、ハイレベルまたはローレベルに周期的に変化する。このとき、クロック信号やクロック信号の反転信号に同期して、演算回路221及び演算回路222によって構成される帰還ループがデータに対応する信号(及びその反転信号)を保持する。図2では、期間1の最後において、ノードMに信号電位VXが保持され、ノードMBに信号電位VXBが保持されている例を示す。ここで、信号電位VXBは、信号電位VXに対応する信号の反転信号の電位に相当する。期間1では、SG2がローレベルであり、スイッチ224はオフ状態である。こうして、記憶回路100は、入力されたデータを帰還ループによって保持し、また帰還ループによって保持されたデータを出力する。ここで、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101は、シリコン層やシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタと比較して移動度が低い。移動度が低いトランジスタが帰還ループ上に存在すると、帰還ループにおけるデータ入力及び出力のスピードが遅くなる。記憶回路100では、帰還ループ上に、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101が存在しない。そのため、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しは高速に行うことができ、記憶回路100におけるデータの書き込み及び読み出し速度(動作速度)は速い。なお、このとき酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101はオフ状態であることが好ましい。仮に、トランジスタ101が常にオン状態であると、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出し時に、容量素子102へもデータに対応する信号電位が常に入力されることとなり、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しの速度が低下してしまう。
【0063】
(電源電圧供給停止前の動作)
期間2において、クロック信号の信号電位CLK、及びクロック信号の反転信号の信号電位CLKBを固定する。即ち、クロック信号の信号電位CLK、及びクロック信号の反転信号の信号電位CLKBを、所定のデータが帰還ループによって保持された状態のクロック信号の信号電位CLK、及びクロック信号の反転信号の信号電位CLKBのままとする。つまり、通常、クロック信号やクロック信号の反転信号は、ハイレベルまたはローレベルにレベル(信号電位)が周期的に変化する信号であるが、この変化をさせない期間を設ける。ここで、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(信号電位)を固定する期間を、クロック信号固定期間とも呼ぶ。期間2は、クロック信号固定期間に相当する。このため、クロック信号固定期間において、ノードMは信号電位VXのままであり、ノードMBは信号電位VXBのままである。図2では、クロック信号の信号電位CLKがローレベルに固定され、クロック信号の反転信号の信号電位CLKBがハイレベルに固定される例を示したがこれに限定されない。クロック信号の信号電位CLKがハイレベルに固定され、クロック信号の反転信号の信号電位CLKBがローレベルに固定されてもよい。そして、クロック信号固定期間において、SG1をハイレベルからローレベルに変化させることにより、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101をオフ状態とする。例えば、クロック信号固定期間の直前において、SG1がハイレベルでありトランジスタ101がオン状態であった場合には、クロック信号固定期間においてSG1をハイレベルからローレベルに変化させてトランジスタ101をオフ状態とする。例えば、クロック信号固定期間の直前において、SG1がローレベルでありトランジスタ101がオフ状態であった場合には、クロック信号固定期間においてSG1をローレベルからハイレベルに変化させてトランジスタ101を一旦オン状態とした後に、SG1をローレベルとしてオフ状態とする。こうして、容量素子102の一対の電極のうちの一方に対応するノードFの電位はVXとなる。なお、トランジスタ101がオン状態となった後、ノードFの電位がVXとなる迄には、時間がかかる。こうして、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)を容量素子102に移して保持する。なお、SG2はローレベルであり、スイッチ224はオフ状態のままである。
【0064】
このように、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベルを一定に保った状態で、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101をオフ状態とすることによって、帰還ループによって保持されたデータに対応する信号(電位)の変動を抑制した状態で、当該データに対応する信号(電位)を容量素子102に移して保持することができる。
【0065】
(電源電圧供給停止の動作)
期間3において、記憶回路100への電源電圧の供給を停止する(電源電圧Vを0にする)。こうして、期間3において、ノードM及びノードMBの電位は任意となる。また、期間3において、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することができる。ここで、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止するとは、クロック信号の信号電位CLK、及びクロック信号の反転信号の信号電位CLKBを供に同じレベル(例えば、ローレベル)とすることに相当する。こうして、電源電圧だけでなく、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することによって、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給するための電力も削減することができる。なお、SG2はローレベルであり、スイッチ224はオフ状態のままである。
【0066】
ここで、SG1はローレベルであり、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101はオフ状態のままであり、記憶回路100への電源電圧Vの供給が停止した後においても、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)が容量素子102によって保持される。つまり、ノードFの電位はVXのままである。こうして、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101を用いることによって、容量素子102によって保持された信号(電位)を長期間保つことができるため、記憶回路100は電源電圧の供給が停止した後も、長期間に渡ってデータを保持することができる。また、データの書き換えを繰り返すことによる記憶回路100の疲労は少なく、データの書き換え可能な回数を多くすることができる。
【0067】
なお、記憶回路100では、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっている間は、容量素子102の一対の電極のうちの一方と、帰還ループの各ノードとは、電気的に遮断されている。それ故、トランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっていれば、記憶回路100への電源電圧の供給停止と、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給停止とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給停止のシーケンスに自由度がある。
【0068】
(電源電圧供給再開の動作)
期間4において、電源電圧VをVDDとして、記憶回路100への電源電圧の供給を再開する。また、電源電圧の供給停止時におけるレベル(信号電位)に戻して固定された、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給する。こうして、クロック信号固定期間を開始する。図2では、クロック信号の信号電位CLKがローレベルに固定され、クロック信号の反転信号の信号電位CLKBがハイレベルに固定される。ここで、トランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっていれば、記憶回路100への電源電圧の供給再開と、電源電圧の供給停止時におけるレベル(信号電位)に戻して固定されたクロック信号やクロック信号の反転信号の供給再開とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給再開のシーケンスに自由度がある。
【0069】
その後、SG2はハイレベルとして、スイッチ224をオン状態とする。なお、SG1はローレベルであり、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101はオフ状態のままである。容量素子102によって保持された信号(電位)、つまりノードFの電位VXは演算回路223によって対応する信号VXBに変換され、スイッチ224がオン状態となると、帰還ループのノードMBに入力される。こうして、ノードMBの電位はやがてVXBとなる。すると、ノードMの電位もやがてVXとなる。こうして、電源電圧の供給停止前に保持していたデータを再び帰還ループによって保持することができる。その後、SG2はローレベルとして、スイッチ224を再びオフ状態とする。
【0070】
ここで、演算回路223とスイッチ224を合わせた電流駆動能力は、演算回路221の電流駆動能力よりも大きくすることが好ましい。なお、スイッチ224の電流駆動能力が十分に大きい場合には、演算回路223の電流駆動能力を、演算回路221の電流駆動能力よりも大きくすることが好ましい。こうして、ノードMBの電位を、容量素子102によって保持された信号(電位)に対応する信号とすることが容易となる。
【0071】
例えば、演算回路221はインバータによって構成され、当該インバータと、インバータ230とは相補型のトランジスタを用いた構成である場合に、各トランジスタは次にように設計することが望ましい。インバータ230の有する一導電型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有する前記一導電型とは異なる導電型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。つまり、インバータ230の有するnチャネル型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有するpチャネル型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。または、インバータ230の有するpチャネル型のトランジスタのチャネル長をL1、チャネル幅をW1、移動度をμ1とし、演算回路221を構成するインバータの有するnチャネル型のトランジスタのチャネル長をL2、チャネル幅をW2、移動度をμ2とすると、μ1(W1/L1)>μ2(W2/L2)とするのが好ましい。ここで、スイッチ224の電流駆動能力が十分に大きい場合とは、例えば、スイッチを224がトランジスタ103によって構成される場合に、トランジスタのチャネル長をL3、チャネル幅をW3、移動度をμ3としたとき、μ3(W3/L3)がμ2(W2/L2)やμ1(W1/L1)と比べて十分に大きいことをいう。μ3(W3/L3)が十分に大きい場合に、上記不等式が成立するように、各回路のトランジスタを設計するのが好ましい。
【0072】
期間5において、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(信号電位)の固定を解除する。即ち、クロック信号やクロック信号の反転信号を、ハイレベルまたはローレベルにレベル(信号電位)が周期的に変化する通常の信号に戻す。こうして、記憶回路は、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しを再開することができる。その後の動作は、上記(電源電圧供給時の動作)と同様である。
【0073】
上記のとおり、帰還ループに保持されたデータを容量素子102に移して書き込むための経路(データ待避経路)と、容量素子102に保持されたデータを帰還ループに戻すための経路(データ復帰経路)とが異なる。データ復帰経路に配置されるスイッチ224として、移動度が高い素子を用いることにより、(電源電圧供給再開の動作)をより高速に行うことができる。例えば、トランジスタ103として、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタを用いることによって、(電源電圧供給再開の動作)をより高速に行うことができる。
【0074】
上述のとおり、図1(A)における回路202は、電源電圧が供給されている間にフリップフロップ回路201に保持されたデータが入力端子(図中、in)から入力され当該データを保持し、電源電圧が供給されない間も当該データを保持し、電源電圧が供給されるとフリップフロップ回路201に出力端子(図中、out)から当該データ(に対応する信号)を提供する動作を行うので、不揮発性の記憶回路と呼ぶこともできる。データの書き換えを繰り返すことによる、当該不揮発性の記憶回路の疲労は少なく、データの書き換え可能な回数を多くすることができる。
【0075】
以上が、記憶回路100の駆動方法の説明である。
【0076】
(記憶装置、信号処理回路)
本発明の記憶装置の一態様は、記憶回路100を一または複数用いて構成された記憶装置とすることができる。また、本発明の信号処理回路の一態様は、当該記憶装置を用いた信号処理回路とすることができる。例えば、信号処理回路が有するレジスタ、キャッシュメモリ等の記憶装置に記憶回路100を用いることができる。
【0077】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路等の各種論理回路を有してもよい。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0078】
本発明の信号処理回路の一態様は、CPUと、メモリと、メモリとCPUとのアクセスを制御する周辺制御装置とを有し、CPU、メモリ、及び周辺制御装置はそれぞれ、記憶回路100を有する構成であってもよい。そして、CPU、メモリ、及び周辺制御装置を有する信号処理回路の全体において、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0079】
記憶回路100を信号処理回路に用いることで、電源電圧の供給停止によるデータの消失を防ぐことができ、電源電圧を再供給した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。そのため、必要なときのみ電源電圧を供給する、ノーマリオフの駆動方法を採用することができ、消費電力を大幅に削減することができる。また、信号処理回路の動作速度を高速化することができ、更に信頼性も高めることができる。
【0080】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
(実施の形態2)
本実施に形態では、本発明の記憶回路の別の一態様を示す。記憶回路100の構成を図3に示す。
【0082】
図3において、記憶回路100は、フリップフロップ回路201a、フリップフロップ回路201b、回路202a、及び回路202bを有する。フリップフロップ回路201aの出力端子(図中、out)は、フリップフロップ回路201bの入力端子(図中、in)と電気的に接続されている。フリップフロップ回路201aの入力端子(図中、in)が記憶回路100の入力端子Dとなり、フリップフロップ回路201bの出力端子(図中、out)が記憶回路100の出力端子Qとなる。
【0083】
回路202a及び回路202bは、図1(A)における回路202と同様の構成とすることができる。
【0084】
フリップフロップ回路201aは、演算回路221a及び演算回路222aを有し、演算回路221a、演算回路222a、及び回路202aの電気的接続関係は、図1(A)における演算回路221、演算回路222、及び回路202の電気的接続関係と同様とすることができる。なお、フリップフロップ回路201aでは、アナログスイッチ226aを有し、アナログスイッチ226aを介して、フリップフロップ回路201aの入力端子はノードMaと電気的に接続されている。アナログスイッチ226a及び演算回路222aには、クロック信号CLK1及びクロック信号CLK1の反転信号CLK1Bが入力されている。ここで、クロック信号CLK1及びクロック信号CLK1の反転信号CLK1Bによって、アナログスイッチ226aがオン状態のときには、演算回路222aの出力はフローティングとなり、アナログスイッチ226aがオフ状態のときには、演算回路222aは入力された信号を反転して出力するものとする。ノードMBaは、フリップフロップ回路201aの出力端子と電気的に接続されている。
【0085】
フリップフロップ回路201bは、演算回路221b及び演算回路222bを有し、演算回路221b、演算回路222b、及び回路202bの電気的接続関係は、図1(A)における演算回路221、演算回路222、及び回路202の電気的接続関係と同様とすることができる。なお、フリップフロップ回路201bは、アナログスイッチ226bを有し、アナログスイッチ226bを介して、フリップフロップ回路201bの入力端子はノードMbと電気的に接続されている。アナログスイッチ226b及び演算回路222bには、クロック信号CLK2及びクロック信号CLK2の反転信号CLK2Bが入力されている。ここで、クロック信号CLK2及びクロック信号CLK2の反転信号CLK2Bによって、アナログスイッチ226bがオン状態のときには、演算回路222bの出力はフローティングとなり、アナログスイッチ226bがオフ状態のときには、演算回路222bは入力された信号を反転して出力するものとする。ノードMBbは、フリップフロップ回路201bの出力端子と電気的に接続されている。
【0086】
クロック信号CLK2は、クロック信号CLK1の反転信号とすることもできるし、クロック信号CLK1の位相をずらした信号とすることもできる。即ち、図3における記憶回路100に単相のクロック信号を供給する構成とすることもできるし、2相のクロック信号を供給する構成とすることもできる。2相のクロックを供給する構成とし、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2それぞれのデユーティー比(1周期におけるハイレベルの期間の割合)を50%未満とし、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2が供にローレベルとなる期間を設けることによって、入力端子Dに入力されたデータがクロック信号(クロック信号CLK1及びクロック信号CLK2)に関係なく出力端子Qから出力されるのを抑制することができる。なお、入力端子Dに入力されたデータがクロック信号(クロック信号CLK1及びクロック信号CLK2)に関係なく出力端子Qから出力される現象は、データの筒抜け、データ・レーシング等と呼ばれる。
【0087】
図3に示した記憶回路100の駆動方法について図4のタイミングチャートを用いて説明する。図1(A)、図3の符号も参照する。
【0088】
なお、図4において、MaはノードMaの電位を示し、MBaはノードMBaの電位を示し、MbはノードMbの電位を示し、MBbはノードMBbの電位を示し、Vは電源電圧を示し、CLK1はクロック信号CLK1の信号電位を示し、CLKB1はクロック信号CLK1の反転信号の信号電位を示し、CLK2はクロック信号CLK2の信号電位を示し、CLKB2はクロック信号CLK2の反転信号の信号電位を示す。また、回路202a及び回路202bそれぞれについて、FはノードFの電位を示し、SG1は端子SG1に入力される制御信号の信号電位を示し、SG2は端子SG2に入力される制御信号の信号電位を示す。図4中、斜線部分は、任意の信号電位とすることができる。
【0089】
ここで、図4では、SG1がハイレベルの場合にトランジスタ101がオン状態となり、SG1がローレベルの場合にトランジスタ101がオフ状態となる例を示したがこれに限定されない。以下の説明とトランジスタ101のオン状態及びオフ状態の関係が同様となるようにSG1の信号電位を適宜定めることができる。また、図4では、SG2がハイレベルの場合にトランジスタ103がオン状態となり、SG2がローレベルの場合にトランジスタ103がオフ状態となる例を示したがこれに限定されない。以下の説明とトランジスタ103のオン状態及びオフ状態の関係が同様となるようにSG2の信号電位を適宜定めることができる。
【0090】
(電源電圧供給時の動作)
期間1において、記憶回路100へ電源電圧VとしてVDDが供給され、且つCLK1、CLK2、CLKB1及びCLKB2は、ハイレベルまたはローレベルに周期的に変化する。ここで、図4に示す期間1では、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2それぞれのデユーティー比(1周期におけるハイレベルの期間の割合)を50%未満とし、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2が供にローレベルとなる期間を設けることによって、入力端子Dに入力されたデータがクロック信号(クロック信号CLK1及びクロック信号CLK2)に関係なく出力端子Qから出力されるのを抑制している。
【0091】
期間1では、クロック信号やクロック信号の反転信号に同期して、演算回路221a及び演算回路222aによって構成される帰還ループ、並びに、演算回路221b及び演算回路222bによって構成される帰還ループそれぞれが、データに対応する信号(及びその反転信号)を保持する。図4では、期間1の終わりにおいて、ノードMaに信号電位VXが保持され、ノードMBaに信号電位VXBが保持され、ノードMbに信号電位VYBが保持され、ノードMBbに信号電位VYが保持されている例を示す。ここで、信号電位VXBは、信号電位VXに対応する信号の反転信号の電位に相当する。信号電位VYBは、信号電位VYに対応する信号の反転信号の電位に相当する。期間1では、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG2がローレベルであり、スイッチ224はオフ状態である。こうして、記憶回路100は、クロック信号CLK1とクロック信号CLK2に同期して、入力端子Dから入力されたデータをフリップフロップ回路201aの帰還ループによって保持し、フリップフロップ回路201aの帰還ループによって保持されたデータをフリップフロップ回路201bに入力し、フリップフロップ回路201bの帰還ループによって保持されたデータを出力端子Qから出力する。ここで、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101は、シリコン層やシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタと比較して移動度が低い。移動度が低いトランジスタが帰還ループ上に存在すると、帰還ループにおけるデータ入力及び出力のスピードが遅くなる。記憶回路100では、帰還ループ上に、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101が存在しない。そのため、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しは高速に行うことができ、記憶回路100におけるデータの書き込み及び読み出し速度(動作速度)は速い。なお、このとき、回路202a及び回路202bにおいて、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタ101はオフ状態であることが好ましい。仮に、回路202a及び回路202bにおいて、トランジスタ101が常にオン状態であると、各帰還ループによるデータの書き込み及び読み出し時に、回路202aの容量素子102及び回路202bの容量素子102へもデータに対応する信号電位が常に入力されることとなり、各帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しの速度が低下してしまう。
【0092】
(電源電圧供給停止前の動作)
期間2において、CLK1、CLK2、CLKB1及びCLKB2を固定する。即ち、CLK1、CLK2、CLKB1及びCLKB2それぞれを、所定のデータが帰還ループによって保持された状態のCLK1、CLK2、CLKB1及びCLKB2のままとする。つまり、通常、クロック信号やクロック信号の反転信号は、ハイレベルまたはローレベルにレベル(信号電位)が周期的に変化する信号であるが、この変化をさせない期間を設ける。ここで、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(信号電位)を固定する期間を、クロック信号固定期間とも呼ぶ。期間2は、クロック信号固定期間に相当する。このため、クロック信号固定期間において、ノードMaは信号電位VXのままであり、ノードMBaは信号電位VXBのままであり、ノードMbは信号電位VYBのままであり、ノードMBbは信号電位VYのままである。図4では、CLK1及びCLK2がローレベルに固定され、CLKB1及びCLKB2がハイレベルに固定される例を示したがこれに限定されない。CLK1及びCLK2がハイレベルに固定され、CLKB1及びCLKB2がローレベルに固定されてもよい。そして、クロック信号固定期間において、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG1をハイレベルからローレベルに変化させることにより、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101をオフ状態とする。例えば、回路202a及び回路202bそれぞれについて、クロック信号固定期間の直前において、SG1がハイレベルでありトランジスタ101がオン状態であった場合には、クロック信号固定期間においてSG1をハイレベルからローレベルに変化させてトランジスタ101をオフ状態とする。例えば、回路202a及び回路202bそれぞれについて、クロック信号固定期間の直前において、SG1がローレベルでありトランジスタ101がオフ状態であった場合には、クロック信号固定期間においてSG1をローレベルからハイレベルに変化させてトランジスタ101を一旦オン状態とした後に、SG1をローレベルとしてオフ状態とする。こうして、回路202aにおいて、容量素子102の一対の電極のうちの一方に対応するノードFの電位はVXとなり、回路202bにおいて、容量素子102の一対の電極のうちの一方に対応するノードFの電位はVYBとなる。なお、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、トランジスタ101がオン状態となった後、ノードFの電位が上記電位となる迄には、時間がかかる。こうして、各帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)を回路202a及び回路202bそれぞれの容量素子102に移して保持する。なお、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG2はローレベルであり、スイッチ224はオフ状態のままである。
【0093】
このように、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベルを一定に保った状態で、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101をオフ状態とすることによって、各帰還ループによって保持されたデータに対応する信号(電位)の変動を抑制した状態で、当該データに対応する信号(電位)を回路202a及び回路202bそれぞれの容量素子102に移して保持することができる。
【0094】
(電源電圧供給停止の動作)
期間3において、記憶回路100への電源電圧の供給を停止する(電源電圧Vを0にする)。こうして、期間3において、ノードMa、ノードMb、ノードMBa及びノードMBbの電位は任意となる。また、期間3において、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することができる。ここで、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止するとは、CLK1とCLKB1を供に同じレベル(例えば、ローレベル)とし、CLK2とCLKB2を供に同じレベル(例えば、ローレベル)とすることに相当する。こうして、電源電圧だけでなく、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給を停止することによって、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給するための電力も削減することができる。なお、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG2はローレベルであり、スイッチ224はオフ状態のままである。
【0095】
ここで、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG1はローレベルであり、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101はオフ状態のままであり、記憶回路100への電源電圧Vの供給が停止した後においても、各帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号(電位)が回路202a及び回路202bそれぞれの容量素子102によって保持される。つまり、回路202aにおけるノードFの電位はVXのままであり、回路202bにおけるノードFの電位はVYBのままである。こうして、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101を用いることによって、回路202a及び回路202bそれぞれの容量素子102によって保持された信号(電位)を長期間保つことができるため、記憶回路100は電源電圧の供給が停止した後も、長期間に渡ってデータを保持することができる。また、データの書き換えを繰り返すことによる記憶回路100の疲労は少なく、データの書き換え可能な回数を多くすることができる。
【0096】
なお、記憶回路100では、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっている間は、容量素子102の一対の電極のうちの一方と、帰還ループの各ノードとは、電気的に遮断されている。それ故、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、トランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっていれば、記憶回路100への電源電圧の供給停止と、クロック信号及びクロック信号の反転信号の供給停止とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給停止のシーケンスに自由度がある。
【0097】
(電源電圧供給再開の動作)
期間4において、電源電圧VをVDDとして、記憶回路100への電源電圧の供給を再開する。また、電源電圧の供給停止時におけるレベル(信号電位)に戻して固定された、クロック信号やクロック信号の反転信号を供給する。こうして、クロック信号固定期間を開始する。図4では、CLK1及びCLK2がローレベルに固定され、CLKB1及びCLKB2がハイレベルに固定される。ここで、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、トランジスタ101がオフ状態となり、且つスイッチ224がオフ状態となっていれば、記憶回路100への電源電圧の供給再開と、電源電圧の供給停止時におけるレベル(信号電位)に戻して固定されたクロック信号やクロック信号の反転信号の供給再開とは、同時に行うこともできるし、一方を行った後に他方を行うこともできる。つまり、電源電圧供給再開のシーケンスに自由度がある。
【0098】
その後、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG2はハイレベルとして、スイッチ224をオン状態とする。なお、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG1はローレベルであり、オフ電流が極めて小さいトランジスタ101はオフ状態のままである。回路202aにおいて、容量素子102によって保持された信号(電位)、つまりノードFの電位VXは演算回路223によって対応する信号VXBに変換され、スイッチ224がオン状態となると、帰還ループのノードMBaに入力される。こうして、ノードMBaの電位はやがてVXBとなる。すると、ノードMaの電位もやがてVXとなる。回路202bにおいて、容量素子102によって保持された信号(電位)、つまりノードFの電位VYBは演算回路223によって対応する信号VYに変換され、スイッチ224がオン状態となると、帰還ループのノードMBbに入力される。こうして、ノードMBbの電位はやがてVYとなる。すると、ノードMbの電位もやがてVYBとなる。こうして、電源電圧の供給停止前に保持していたデータを再び帰還ループによって保持することができる。その後、回路202a及び回路202bそれぞれにおいて、SG2はローレベルとして、スイッチ224を再びオフ状態とする。
【0099】
期間5において、クロック信号やクロック信号の反転信号のレベル(信号電位)の固定を解除する。即ち、クロック信号やクロック信号の反転信号を、ハイレベルまたはローレベルにレベル(信号電位)が周期的に変化する通常の信号に戻す。こうして、記憶回路は、帰還ループによるデータの書き込み及び読み出しを再開することができる。その後の動作は、上記(電源電圧供給時の動作)と同様である。
【0100】
上記のとおり、帰還ループに保持されたデータを容量素子102に移して書き込むための経路(データ待避経路)と、容量素子102に保持されたデータを帰還ループに戻すための経路(データ復帰経路)とが異なる。データ復帰経路に配置されるスイッチ224として、移動度が高い素子を用いることにより、(電源電圧供給再開の動作)をより高速に行うことができる。例えば、トランジスタ103として、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタを用いることによって、(電源電圧供給再開の動作)をより高速に行うことができる。
【0101】
以上が、記憶回路100の駆動方法の説明である。
【0102】
(記憶装置、信号処理回路)
本発明の記憶装置の一態様は、記憶回路100を一または複数用いて構成された記憶装置とすることができる。また、本発明の信号処理回路の一態様は、当該記憶装置を用いた信号処理回路とすることができる。例えば、信号処理回路が有するレジスタ、キャッシュメモリ等の記憶装置に記憶回路100を用いることができる。
【0103】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路等の各種論理回路を有してもよい。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0104】
本発明の信号処理回路の一態様は、CPUと、メモリと、メモリとCPUとのアクセスを制御する周辺制御装置とを有し、CPU、メモリ、及び周辺制御装置はそれぞれ、記憶回路100を有する構成であってもよい。そして、CPU、メモリ、及び周辺制御装置を有する信号処理回路の全体において、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0105】
記憶回路100を信号処理回路に用いることで、電源電圧の供給停止によるデータの消失を防ぐことができ、電源電圧を再供給した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。そのため、必要なときのみ電源電圧を供給する、ノーマリオフの駆動方法を採用することができ、消費電力を大幅に削減することができる。また、信号処理回路の動作速度を高速化することができ、更に信頼性も高めることができる。
【0106】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0107】
(実施の形態3)
図1に示した記憶回路100の作製方法について説明する。本実施の形態では、記憶回路100を構成する素子のうち、トランジスタ103と、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ101、及び容量素子102を例に挙げて、記憶回路100の作製方法について説明する。ここで、トランジスタ103は、チャネルがシリコン層に形成されるトランジスタである場合を例に挙げる。
【0108】
まず、図5(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0109】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0110】
また、本実施の形態では、半導体膜702が単結晶のシリコンである場合を例に挙げて、以下、トランジスタ103の作製方法について説明する。なお、具体的な単結晶の半導体膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0111】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、所定の形状にエッチング加工する前の半導体膜に対して行っても良いし、所定の形状にエッチング加工した後の半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、所定の形状にエッチング加工する前の半導体膜に対して、又は所定の形状にエッチング加工した後の半導体膜702に対しても行っても良い。
【0112】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプ加熱結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温加熱法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0113】
次に、図5(B)に示すように、半導体膜702を所定の形状に加工し、半導体層704を形成する。そして、半導体層704上にゲート絶縁膜703を形成する。
【0114】
ゲート絶縁膜703は、例えば、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム又は酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0、z>0))等を含む膜を、単層で、又は積層させることで、形成することができる。
【0115】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0116】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0117】
次いで、図5(C)に示すように、ゲート電極707を形成する。
【0118】
ゲート電極707は、導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工することで、形成することができる。上記導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。又は、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0119】
なお、本実施の形態ではゲート電極707を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極707は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0120】
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタル又はタンタルを、2層目にタングステンを用いることができる。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とタングステンシリサイド等も用いることができる。
【0121】
3つの導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0122】
また、ゲート電極707に酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、又は酸化亜鉛ガリウム等の透光性を有する酸化物導電膜を用いることもできる。
【0123】
なお、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極707を形成しても良い。液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出又は噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0124】
また、ゲート電極707は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0125】
次に、図5(D)に示すように、ゲート電極707をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体層704に添加することで、ゲート電極707と重なるチャネル形成領域710と、チャネル形成領域710を間に挟む一対の不純物領域709とが、半導体層704に形成される。
【0126】
本実施の形態では、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する場合を例に挙げる。
【0127】
次いで、図6(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極707を覆うように、絶縁膜712、絶縁膜713を形成する。具体的に、絶縁膜712、絶縁膜713は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜712、絶縁膜713に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜712、絶縁膜713に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0128】
本実施の形態では、絶縁膜712として酸化窒化珪素、絶縁膜713として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極707上に絶縁膜712、絶縁膜713を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極707上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0129】
次いで、図6(B)に示すように、絶縁膜713にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、絶縁膜713の上面を平坦化する。なお、後に形成されるトランジスタ101の特性を向上させるために、絶縁膜713の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0130】
以上の工程により、トランジスタ103を形成することができる。
【0131】
次いで、トランジスタ101の作製方法について説明する。まず、図6(C)に示すように、絶縁膜713上に酸化物半導体層716を形成する。
【0132】
酸化物半導体層716は、絶縁膜713上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0133】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁膜713の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行ってもよい。
【0134】
酸化物半導体層としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系酸化物半導体、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0135】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0136】
また、酸化物半導体層は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0137】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0138】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、又はIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0139】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0140】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源電力0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0141】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0142】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0143】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜712及び絶縁膜713までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。また、この予備加熱は、後に行われるゲート絶縁膜721の成膜前に、導電層719、導電層720まで形成した基板700にも同様に行ってもよい。
【0144】
なお、酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0145】
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0146】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0147】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0148】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0149】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線方向または表面の法線方向に平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0150】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0151】
なお、酸化物半導体層716を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0152】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0153】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0154】
酸化物半導体層716を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0155】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層716及び絶縁膜713の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0156】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体層716に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体層716に加熱処理を施す。
【0157】
酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体層716中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化又は脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0158】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0159】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0160】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0161】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体層に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体層内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタの特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体層中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体層中の水素濃度が1×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1017atoms/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、更に好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。
【0162】
以上の工程により、酸化物半導体層716中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処理で、キャリア密度が極端に少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体層を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体層を用いることで、耐圧性が高く、オフ電流の著しく低いトランジスタを作製することができる。上記加熱処理は、酸化物半導体層の成膜以降であれば、いつでも行うことができる。
【0163】
次いで、図7(A)に示すように、酸化物半導体層716と接する導電層719と、酸化物半導体層716と接する導電層720とを形成する。導電層719及び導電層720は、ソース電極又はドレイン電極として機能する。
【0164】
具体的に、導電層719及び導電層720は、スパッタ法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工することで、形成することができる。
【0165】
導電層719及び導電層720となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側もしくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウム又は銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0166】
また、導電層719及び導電層720となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電層719及び導電層720に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電層719及び導電層720との密着性を高めることができる。
【0167】
また、導電層719及び導電層720となる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛又は前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0168】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0169】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層716がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体層716の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0170】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と水とを、体積比5:2:2で混合したアンモニア過水を用いる。或いは、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0171】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0172】
また、酸化物半導体層716と、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層719及び導電層720との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0173】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのエッチング加工と、導電層719及び導電層720を形成するためのエッチング加工とを一括で行うようにしても良い。
【0174】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体層716と導電層719及び導電層720の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。また、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、トランジスタの耐圧を高めることができる。
【0175】
次いで、NO、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0176】
なお、プラズマ処理を行った後、図7(B)に示すように、導電層719及び導電層720と、酸化物半導体層716とを覆うように、ゲート絶縁膜721を形成する。そして、ゲート絶縁膜721上において、酸化物半導体層716と重なる位置にゲート電極722を形成する。
【0177】
そして、ゲート電極722が形成された後にゲート電極722をマスクとして酸化物半導体層716にn型の導電性を付与するドーパントを添加し、一対の高濃度領域908を形成する。なお、酸化物半導体層716のうち、ゲート絶縁膜721を間に挟んでゲート電極722と重なる領域がチャネル形成領域となる。酸化物半導体層716では、一対の高濃度領域908の間にチャネル形成領域が設けられている。高濃度領域908を形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族原子などを用いることができる。例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域908中の窒素原子の濃度は、5×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが望ましい。n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域908は、酸化物半導体層716中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域908を酸化物半導体層716に設けることで、ソース電極とドレイン電極(導電層719と導電層720)の間の抵抗を下げることができる。
【0178】
そして、ソース電極とドレイン電極(導電層719と導電層720)の間の抵抗を下げることで、トランジスタ101の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ101の微細化により、当該トランジスタを用いたメモリセルアレイの占める面積を縮小化し、メモリセルアレイにおいて単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0179】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を酸化物半導体層716に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下で1時間程度加熱処理を施すことにより、高濃度領域908中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域908中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域908の導電性を高め、ソース電極とドレイン電極(導電層719と導電層720)の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極とドレイン電極(導電層719と導電層720)の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域908中の窒素原子の濃度を、1×1020atoms/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0180】
ゲート絶縁膜721は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜721は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜721に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層716へ侵入し、又は水素が酸化物半導体層716中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層716が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜721はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記ゲート絶縁膜721には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体層716に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電層719及び導電層720及び酸化物半導体層716と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層716内、ゲート絶縁膜721内、或いは、酸化物半導体層716と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体層716に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接、酸化物半導体層716に接するのを防ぐことができる。
【0181】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜721を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0182】
なお、ゲート絶縁膜721を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、又は希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電層719及び導電層720を形成する前に、水分又は水素を低減させるための酸化物半導体層に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜721が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体層716に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体層716に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜721から酸化物半導体層716に酸素が供与される。そして、酸化物半導体層716に酸素が供与されることで、酸化物半導体層716において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。酸化物半導体層716には、化学量論的組成比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。その結果、酸化物半導体層716をi型に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜721の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体層716をi型に近づけることができる。
【0183】
また、酸素雰囲気下で酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸素を添加し、酸化物半導体層716中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0184】
或いは、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体層716に酸素を添加することで、ドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体層716に添加すれば良い。
【0185】
また、ゲート電極722は、ゲート絶縁膜721上に導電膜を形成した後、該導電膜をエッチング加工することで形成することができる。ゲート電極722は、ゲート電極707、或いは導電層719及び導電層720と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0186】
ゲート電極722の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いたスパッタ法により150nmのゲート電極用の導電膜を形成した後、該導電膜をエッチングにより所望の形状に加工することで、ゲート電極722を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0187】
以上の工程により、トランジスタ101が形成される。
【0188】
トランジスタ101は、ソース電極及びドレイン電極(導電層719及び導電層720)と、ゲート電極722とが重なっていない。すなわち、ソース電極及びドレイン電極(導電層719及び導電層720)とゲート電極722との間には、ゲート絶縁膜721の膜厚よりも大きい間隔が設けられている。よって、トランジスタ101は、ソース電極及びドレイン電極とゲート電極との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができるので、高速動作を実現することができる。
【0189】
なお、トランジスタ101として、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタに限定されず、シリコンよりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度がシリコンよりも低い半導体材料を、チャネル形成領域に含むトランジスタを用いることもできる。このような半導体材料としては、酸化物半導体の他に、例えば、炭化シリコン、窒化ガリウムなどが挙げられる。このような半導体材料をチャネル形成領域に含むことで、オフ電流が極めて低いトランジスタを実現することができる。
【0190】
また、トランジスタ101はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0191】
なお、酸化物半導体層716に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜721が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0192】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0193】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0194】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0195】
例えば、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0196】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0197】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0198】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、又は酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0199】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層716に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層716に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体層716を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0200】
また、酸化物半導体層716の上層又は下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0201】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層716の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層716の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層716の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0202】
次に、図7(C)に示すように、ゲート絶縁膜721、ゲート電極722を覆うように、絶縁膜724を形成する。絶縁膜724は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜724には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜724の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜724を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0203】
次に、ゲート絶縁膜721、絶縁膜724に開口部を形成し、導電層720の一部を露出させる。その後、絶縁膜724上に、上記開口部において導電層720と接する配線726を形成する。
【0204】
配線726は、PVD法や、CVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜をエッチング加工することによって形成される。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、又はこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0205】
より具体的には、例えば、絶縁膜724の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、PVD法によりチタン膜を薄く(5nm程度)形成した後に、開口部に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは導電層720)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0206】
次に、図7(D)に示すように、配線726を覆うように絶縁膜727を形成する。更に絶縁膜727上に導電膜を形成し、当該導電膜をエッチング加工することによって導電層7301を形成する。その後、導電層7301を覆うように絶縁膜7302を形成し、絶縁膜7302上に導電膜7303を形成する。こうして容量素子102を形成することができる。容量素子102の一対の電極のうちの一方が導電層7301に対応し、一対の電極のうちの他方が導電膜7303に対応し、誘電体層が絶縁膜7302に対応する。ここで、絶縁膜727、導電層7301、絶縁膜7302、導電膜7303の材料は、その他絶縁膜や導電層と同様の材料を用いることができる。
【0207】
上述した一連の工程により、記憶回路100を作製することができる。
【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0209】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3とは異なる構造を有した、酸化物半導体層を用いたトランジスタについて説明する。なお、図7と同じ部分は同じ符号を用いて示し、説明は省略する。
【0210】
図8(A)に示すトランジスタ101は、ゲート電極722が酸化物半導体層716の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極及びドレイン電極(導電層719及び導電層720)が酸化物半導体層716の下に形成されているボトムコンタクト型である。
【0211】
また、酸化物半導体層716は、ゲート電極722が形成された後に酸化物半導体層716にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域918を有する。また、酸化物半導体層716のうち、ゲート絶縁膜721を間に挟んでゲート電極722と重なる領域がチャネル形成領域919である。酸化物半導体層716では、一対の高濃度領域918の間にチャネル形成領域919が設けられている。
【0212】
高濃度領域918は、実施の形態4において説明した高濃度領域908と同様に形成することができる。
【0213】
図8(B)に示すトランジスタ101は、ゲート電極722が酸化物半導体層716の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極及びドレイン電極(導電層719及び導電層720)が酸化物半導体層716の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、ゲート電極722の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール930を有する。
【0214】
また、酸化物半導体層716は、ゲート電極722が形成された後に酸化物半導体層716にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域928と、一対の低濃度領域929とを有する。また、酸化物半導体層716のうち、ゲート絶縁膜721を間に挟んでゲート電極722と重なる領域がチャネル形成領域931である。酸化物半導体層716では、一対の高濃度領域928の間に一対の低濃度領域929が設けられ、一対の低濃度領域929の間にチャネル形成領域931が設けられている。そして、一対の低濃度領域929は、酸化物半導体層716中の、ゲート絶縁膜721を間に挟んでサイドウォール930と重なる領域に設けられている。
【0215】
高濃度領域928及び低濃度領域929は、実施の形態4において説明した高濃度領域908と同様に形成することができる。
【0216】
図8(C)に示すトランジスタ101は、ゲート電極722が酸化物半導体層716の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極及びドレイン電極(導電層719及び導電層720)が酸化物半導体層716の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、ゲート電極722の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール950を有する。
【0217】
また、酸化物半導体層716は、ゲート電極722が形成された後に酸化物半導体層716にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域948と、一対の低濃度領域949とを有する。また、酸化物半導体層716のうち、ゲート絶縁膜721を間に挟んでゲート電極722と重なる領域がチャネル形成領域951である。酸化物半導体層716では、一対の高濃度領域948の間に一対の低濃度領域949が設けられ、一対の低濃度領域949の間にチャネル形成領域951が設けられている。そして、一対の低濃度領域949は、酸化物半導体層716中の、ゲート絶縁膜721を間に挟んでサイドウォール950と重なる領域に設けられている。
【0218】
高濃度領域948及び低濃度領域949は、実施の形態4において説明した高濃度領域908と同様に形成することができる。
【0219】
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度領域をセルフアラインプロセスにて作製する方法の一つとして、酸化物半導体層の表面を露出させて、アルゴンプラズマ処理をおこない、酸化物半導体層のプラズマにさらされた領域の抵抗率を低下させる方法が開示されている(S. Jeon et al. ”180nm Gate Length Amorphous InGaZnO Thin Film Transistor for High Density Image Sensor Applications”, IEDM Tech. Dig., pp.504−507, 2010.)。
【0220】
しかしながら、上記作製方法では、ゲート絶縁膜を形成した後に、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分を露出するべく、ゲート絶縁膜を部分的に除去する必要がある。よって、ゲート絶縁膜が除去される際に、下層の酸化物半導体層も部分的にオーバーエッチングされ、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分の膜厚が小さくなってしまう。その結果、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加し、また、オーバーエッチングによるトランジスタの特性不良が起こりやすくなる。
【0221】
トランジスタの微細化を進めるには、加工精度の高いドライエッチング法を採用する必要がある。しかし、上記オーバーエッチングは、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の選択比が十分に確保できないドライエッチング法を採用する場合に、顕著に起こりやすい。
【0222】
例えば、酸化物半導体層が十分な厚さであればオーバーエッチングも問題にはならないが、チャネル長を200nm以下とする場合には、短チャネル効果を防止する上で、チャネル形成領域となる部分の酸化物半導体層の厚さは20nm以下、好ましくは10nm以下であることが求められる。そのような薄い酸化物半導体層を扱う場合には、酸化物半導体層のオーバーエッチングは、上述したような、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加、トランジスタの特性不良を生じさせるため、好ましくない。
【0223】
しかし、本発明の一態様のように、酸化物半導体層へのドーパントの添加を、酸化物半導体層を露出させず、ゲート絶縁膜を残したまま行うことで、酸化物半導体層のオーバーエッチングを防ぎ、酸化物半導体層への過剰なダメージを軽減することができる。また、加えて、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の界面も清浄に保たれる。従って、トランジスタの特性及び信頼性を高めることができる。
【0224】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0225】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態3や実施の形態4とは異なる構造を有した、酸化物半導体層を用いたトランジスタについて説明する。なお、図7と同じ部分は同じ符号を用いて示し、説明は省略する。本実施の形態において示すトランジスタ101は、ゲート電極722が導電層719及び導電層720と重なる様に設けられている。また、実施の形態3や実施の形態4に示したトランジスタ101とは異なり、酸化物半導体層716に対して、ゲート電極722をマスクとした導電型を付与する不純物元素の添加が行われていない点が異なる。
【0226】
図9(A)に示すトランジスタ101は、導電層719及び導電層720の下方に酸化物半導体層716が設けられる例であり、図9(B)に示すトランジスタ101は、導電層719及び導電層720の上方に酸化物半導体層716が設けられる例である。なお、図9(A)及び図9(B)において、絶縁膜724の上面が平坦化されていない構成を示したがこれに限定されない。絶縁膜724の上面が平坦化されていてもよい。
【0227】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0228】
(実施の形態6)
一般に、不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。一方、上記実施の形態で示す不揮発性の記憶回路は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを利用したものであって、原理が全く異なっている。表1はMTJ素子(表中、「スピントロニクス(MTJ素子)」で示す。)と、上記実施の形態で示す酸化物半導体を用いた不揮発性の記憶回路(表中、「OS/Si」で示す。)との対比を示す。
【0229】
【表1】

【0230】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0231】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0232】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、MTJ素子のプロセスを金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0233】
一方、上記実施の形態で示す不揮発性の記憶回路が有する、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、チャネルが形成される領域が金属酸化物でなること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【実施例1】
【0234】
本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることで、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間が長くなるといったメリットが得られる。
【0235】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【0236】
本発明の一態様に係る信号処理回路を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯用の電子機器に応用した場合について説明する。
【0237】
図10は、携帯用の電子機器のブロック図である。図10に示す携帯用の電子機器はRF回路421、アナログベースバンド回路422、デジタルベースバンド回路423、バッテリー424、電源回路425、アプリケーションプロセッサ426、フラッシュメモリ430、ディスプレイコントローラ431、メモリ回路432、ディスプレイ433、タッチセンサ439、音声回路437、キーボード438などより構成されている。ディスプレイ433は表示部434、ソースドライバ435、ゲートドライバ436によって構成されている。アプリケーションプロセッサ426はCPU427、DSP428、インターフェース429を有している。上記実施の形態で示した信号処理回路を、例えばCPU427、デジタルベースバンド回路423、メモリ回路432、DSP428、インターフェース429、ディスプレイコントローラ431、音声回路437のいずれかまたは全てに採用することによって、消費電力を低減することができる。
【0238】
図11は電子書籍のブロック図である。電子書籍はバッテリー451、電源回路452、マイクロプロセッサ453、フラッシュメモリ454、音声回路455、キーボード456、メモリ回路457、タッチパネル458、ディスプレイ459、ディスプレイコントローラ460によって構成される。マイクロプロセッサ453はCPU461、DSP462、インターフェース463を有している。上記実施の形態で示した信号処理回路を、例えばCPU461、音声回路455、メモリ回路457、ディスプレイコントローラ460、DSP462、インターフェース463のいずれかまたは全てに採用することで、消費電力を低減することが可能になる。
【0239】
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0240】
100 記憶回路
101 トランジスタ
102 容量素子
103 トランジスタ
201 フリップフロップ回路
202 回路
221 演算回路
222 演算回路
223 演算回路
224 スイッチ
230 インバータ
421 RF回路
422 アナログベースバンド回路
423 デジタルベースバンド回路
424 バッテリー
425 電源回路
426 アプリケーションプロセッサ
427 CPU
428 DSP
429 インターフェース
430 フラッシュメモリ
431 ディスプレイコントローラ
432 メモリ回路
433 ディスプレイ
434 表示部
435 ソースドライバ
436 ゲートドライバ
437 音声回路
438 キーボード
439 タッチセンサ
451 バッテリー
452 電源回路
453 マイクロプロセッサ
454 フラッシュメモリ
455 音声回路
456 キーボード
457 メモリ回路
458 タッチパネル
459 ディスプレイ
460 ディスプレイコントローラ
461 CPU
462 DSP
463 インターフェース
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 半導体層
707 ゲート電極
709 不純物領域
710 チャネル形成領域
712 絶縁膜
713 絶縁膜
716 酸化物半導体層
719 導電層
720 導電層
721 ゲート絶縁膜
722 ゲート電極
724 絶縁膜
726 配線
727 絶縁膜
908 高濃度領域
918 高濃度領域
919 チャネル形成領域
928 高濃度領域
929 低濃度領域
930 サイドウォール
931 チャネル形成領域
948 高濃度領域
949 低濃度領域
950 サイドウォール
951 チャネル形成領域
201a フリップフロップ回路
201b フリップフロップ回路
202a 回路
202b 回路
221a 演算回路
221b 演算回路
222a 演算回路
222b 演算回路
226a アナログスイッチ
226b アナログスイッチ
230a インバータ
230b インバータ
7301 導電層
7302 絶縁膜
7303 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、容量素子と、第1の演算回路と、第2の演算回路と、第3の演算回路と、スイッチと、を有し、
前記第1の演算回路の出力端子は、前記第2の演算回路の入力端子と電気的に接続され、
前記第2の演算回路の入力端子は、前記スイッチを介して前記第3の演算回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第2の演算回路の出力端子は、前記第1の演算回路の入力端子と電気的に接続され、
前記第1の演算回路の入力端子は、前記トランジスタのソース及びドレインの一方と電気的に接続され、
前記トランジスタのソース及びドレインの他方は、前記容量素子の一対の電極のうちの一方、及び前記第3の演算回路の入力端子と電気的に接続され、
前記トランジスタのチャネルは酸化物半導体層に形成されることを特徴とする記憶回路。
【請求項2】
フリップフロップ回路と、トランジスタと、容量素子と、演算回路と、スイッチとを有し、
前記フリップフロップ回路は、第1のノードと第2のノードを有し、電源電圧が供給されている間、前記第2のノードに保持される信号は、前記第1のノードに保持された信号の反転信号となり、
前記トランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第1のノードと電気的に接続され、
前記トランジスタのソース及びドレインの他方は、前記容量素子の一対の電極のうちの一方、及び前記演算回路の入力端子と電気的に接続され、
前記演算回路の出力端子は、前記スイッチを介して前記第2のノードと電気的に接続され、
前記トランジスタのチャネルは、酸化物半導体層に形成されることを特徴とする記憶回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記記憶回路を一または複数用いたことを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
CPUと、メモリと、前記メモリと前記CPUとのアクセスを制御する周辺制御装置とを有し、
前記CPU、前記メモリ、及び前記周辺制御装置はそれぞれ、前記記憶回路を有することを特徴とする信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217158(P2012−217158A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64909(P2012−64909)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】