説明

誘電体材料、相互接続構造、電子構造、電子センシング構造および該製作方法(改良された靭性および改良されたSi−C結合を有するSiCOH誘電体材料、該誘電体材料を含む半導体デバイスおよび該誘電体材料の製作方法)

【課題】相互接続構造およびセンシング構造を含む電子構造中で使用するための高い皮膜引張強さを有する低k誘電体材料を提供すること。
【解決手段】この低k誘電体材料は、Si、C、OおよびH原子を含み、C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、Si、C、OおよびH原子(SiCOH)を含み、低い誘電率(k)を有する誘電体材料の組、これらの材料の膜を製作するための方法、ならびにこのような膜を含む電子デバイスに関する。このような材料は、C(炭素)ドープ酸化物(C doped oxide:CDO)または有機ケイ酸塩ガラス(organosilicate glass:OSG(オルガノシリケート・ガラス))とも呼ばれている。本発明の材料は、改良された皮膜引張強さ(cohesive strength)(あるいはこれと等価の改良された破壊靭性または低い脆性)を示し、応力腐食割れ、Cuの進入および他の重要な特性などの特性の水による劣化に対する高い抵抗性を示す。本発明は、本発明の材料を製作する方法を含み、超大規模集積(ULSI)回路の後工程(BEOL)相互接続構造および関連電子構造のレベル内またはレベル間誘電体膜、誘電体キャップあるいはハード・マスク/研磨ストップとしての前記誘電体材料の使用に関する。本発明はさらに、少なくとも2つの導体を含む電子デバイスまたは電子センシング構造での本発明の誘電体材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国特許第6,147,009号、米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,437,443号、米国特許第6,541,398号、米国特許第6,479,110 B2号および米国特許第6,497,963号に関する。本出願はさらに、2002年6月19日出願の米国出願番号第10/174,749号、2003年1月23日出願の米国出願番号第10/340,000号および2003年3月18日出願の米国出願番号第10/390,801号に関する。
【0003】
ULSI回路内で利用される電子デバイスの寸法が近年縮小し続けている結果、BEOLメタライゼーションの抵抗ならびに層内および層間誘導体の静電容量は増大した。この両方が組み合わさった効果はULSI電子デバイス内の信号遅延を増大させる。将来のULSI回路のスイッチング性能を向上させるためには、静電容量を低減させるために、低誘電率(k)絶縁体、特に酸化シリコンよりもかなり低いkを有する低k絶縁体が必要となる。
【0004】
超大規模集積(「VLSI」)およびULSIチップの製造ステップの大部分は、プラズマ化学蒸着または物理蒸着技術によって実行される。したがって、以前に設置された使用可能な処理装置を使用したプラズマ化学蒸着(PECVD)技法によって低k材料を製作できれば、製造プロセスにおけるその集積化が単純になり、製造コストが低下し、有害な廃棄物が減る。米国特許第6,147,009号および米国特許第6,497,963号には、Si、C、OおよびH原子からなり、3.6以下の誘電率を有し、非常に低い割れ伝播速度を示す低誘電率材料が記載されている。
【0005】
米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号および米国特許第6,479,110 B2号には、Si、C、OおよびH原子からなるマトリックスと、主にCおよびHからなり3.2以下の誘電率を有する相とからなる多相低k誘電体材料が記載されている。
【0006】
当技術分野では2.7未満(好ましくは2.3未満)の誘電率を有する超低k誘電体材料も知られている。従来技術の超低k SiCOH膜の主要な問題には例えば以下のものが含まれる。(a)これらの膜はもろく(すなわち皮膜引張強さが低く、破壊に至るまでの伸びが小さく、破壊靭性が低く)、(b)液体の水および水蒸気が材料の皮膜引張強さをさらに低下させる。水圧PH2Oまたは湿度(%)に対する皮膜引張強さCS(Cohesive Strength)のプロットは「CS湿度プロット」と呼ばれ、このプロットは、それぞれのk値および材料に対して特徴的な傾きを有する。(c)これらの膜は、引張応力および低い破壊靭性を持つ傾向があり、したがって膜がある臨界の厚さよりも厚いときに水と接触すると割れやすい。(d)多孔質膜であるときこれらの膜は、水および他のプロセス化学物質を吸収し、これらが、電界の下でのCu電気化学腐食の増大を引き起こし、多孔質誘電体に進入し、電気的な漏れおよび導体間の高い導電性をもたらす。(e)CがSi−CH基として結合されているとき、従来技術のSiCOH誘導体は、レジスト・ストリップ(剥離)プラズマ、CMPプロセスおよび他の集積化プロセスと容易に反応して、SiCOH誘電体の「損傷」を引き起こし、その結果、表層がより親水性になる。
【0007】
例えばケイ酸塩および有機ケイ酸塩ガラスの皮膜引張強さは、図1に示す誘電率に対する皮膜引張強さの普遍曲線(universal curve)上にある傾向がある。この図は、従来の酸化物(点A)、従来のSiCOH誘電体(点B)、k=2.6の従来のSiCOH誘電体(点C)、およびkが約2.2の従来のCVD超低k誘電体(点D)を含む。両方の量がSi−O結合の体積密度によって主に決定されることが、両者の比例関係を説明する。極めて低い誘電率(例えばk<2.4)を有するOSG材料の皮膜引張強さは基本的に、完全に乾燥した環境で約3J/m以下に限定されることも示唆される。皮膜引張強さはさらに,湿度が増大するにつれて低下する。
【0008】
従来技術のSiCOH膜の他の問題は、それらの膜の強度がHOによって低下する傾向があることである。従来技術のSiCOH膜の劣化に対するHOの効果は、例えばM. W. Lane, X.H. Liu, T.M. Shaw, "Environmental Effects onCracking and Delamination of Dielectric Films",IEEE Transactions on Device and Materials Reliability, 4, 2004, pp. 142-147に記載されている4点曲げ技法(4−point bend technique)を使用して測定することができる。図2はこの文献からのものであり、これは、約2.9の誘電率kを有する一般的なSiCOH膜の強度に対してHOが有する効果を示すプロットである。データは、水圧(PH2O)が制御、変更された室の中で4点曲げ技法を実施することによって測定されたものである。具体的には、図2は、制御された室内のHO圧力の自然対数(ln)に対してプロットされた皮膜引張強さを示す。このプロットの傾きは使用された単位で約−1である。HOの圧力を増大させると皮膜引張強さは低下する。図2の直線の上側の陰影のついた領域は、従来技術のSiCOH誘電体では達成が難しい皮膜引張強さの領域を表す。
【0009】
図3も、前掲のM. W. Laneらの文献からとったものであり、図2と同様の図である。具体的には、図3は、図2と同じ手順を使用して測定された別のSiCOH膜の皮膜引張強さのプロットである。この従来技術のSiCOH膜は2.6の誘電率を有し、このプロットの傾きは使用された単位で約−0.66である。図3の直線の上側の陰影のついた領域は、従来技術のSiCOH誘電体では達成が難しい皮膜引張強さの領域を表す。
【0010】
Si−C結合はSi−O結合よりも極性が弱いことが知られている。さらに、有機ポリマー誘電体は、有機ケイ酸塩ガラスよりも高い破壊靭性を有し、(Si−Oベースの誘電体に比べて)応力腐食割れを受けにくいことが知られている。このことは、SiCOH誘電体により多くの有機ポリマー含量およびより多くのSi−C結合を追加することによって、先に説明した水による劣化の効果を低減させ、可塑性などの非線形エネルギー散逸機構を増大させることができることを示唆する。SiCOHにより多くの有機ポリマー含量を追加すると、高い破壊靭性(fracture toughness)および低い環境感度(environmental sensitivity)を有する誘電体が得られる。
【0011】
他の分野では、架橋化学結合を誘導し形成する追加された化学種を含むある種の架橋反応によって、ある材料、例えば有機エラストマーの機械特性を向上させることができることが知られている。これによって、材料の弾性率、ガラス転移温度および皮膜引張強さ、場合によっては、酸化に対する抵抗性、水の取込みに対する抵抗性および関連劣化に対する抵抗性を増大させることができる。これらの架橋結合は折りたたみを形成することができ、それによってこれらは引張応力下で、分子を破壊することなく分子主鎖のある量の伸びを支持することができ、材料の破壊靭性を事実上増大させる。最も有名な1つの例は、Charles GoodyearおよびThomas Hancockによってそれぞれ独立に発明されたイオウまたは過酸化物の添加および硬化による天然および合成ゴムの「加硫(vulcanization)」である。イオウまたは過酸化物が、しばしばアニリンまたは他の促進剤とともにゴムに加えられると、熱および圧力の下で材料は硬化し、イオウは、ポリマー鎖間に折りたたまれまたは傾斜したポリマー架橋を形成し、ポリマー鎖を弾力的に1つに結合する。その結果、高い皮膜引張強さならびに水分および他の化学物質に対する高い抵抗性を有する非常に強い材料が得られる。加硫は実質上、世界中の多くの応用および産業におけるゴムの使用を可能にした。
【0012】
従来技術の低kおよび超低k SiCOH誘電体の上記の欠点を考慮すれば、約3.2以下の誘電率値を有し、図1に画定された普遍曲線の上側にあるk曲線に対してかなり高い皮膜引張強さを有する、多孔質(porous)および緻密(dense)SiCOH誘電体を開発する必要がある。図1の特定のケースでは破壊靭性と皮膜引張強さが等価である。さらに、おそらくSi−S、S−SおよびS−CH結合を含む特定のC結合形態を有し、より大きな有機的性質を有し、特に図2および3の陰影のついた領域内で水に対する高い抵抗性を有し、新しい応用においてULSIデバイス内でこのような膜を使用することを可能にする有利な機械的特性を有する、多孔質および緻密SiCOH誘電体を開発する必要がある。
【特許文献1】米国特許第6,147,009号
【特許文献2】米国特許第6,312,793号
【特許文献3】米国特許第6,441,491号
【特許文献4】米国特許第6,437,443号
【特許文献5】米国特許第6,541,398号
【特許文献6】米国特許第6,479,110 B2号
【特許文献7】米国特許第6,497,963号
【特許文献8】米国出願番号第10/174,749号
【特許文献9】米国出願番号第10/340,000号
【特許文献10】米国出願番号第10/390,801号
【特許文献11】米国特許第6,737,727号
【非特許文献1】M. W. Lane, X.H. Liu, T.M. Shaw,"Environmental Effects on Cracking and Delaminationof Dielectric Films", IEEE Transactions on Device and MaterialsReliability, 4, 2004, pp. 142-147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、Si、C、OおよびH原子(以下「SiCOH」)を含み、3.2以下の誘電率を有し、チャネル・クラッキング(channel cracking)またはサンドイッチ4点曲げ破壊力学試験(sandwiched 4 point bend fracture mechanics test)によって測定された約6J/m以上、好ましくは約7J/m以上の高い皮膜引張強さを有する低kまたは超低k誘電率材料を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、Si−CHとして結合されたCおよびSi−R−Siとして結合されたCを含む共有結合性3次元網目構造を有するSiCOH誘電体を提供することにある。Rは、フェニル(すなわち−C−)、−[CH−(nは1以上)、HC=CH(すなわち2重結合)、C=CH、C≡C(すなわち3重結合)または[S]結合(nは先に定義したとおり)である。好ましい一実施形態では、このSiCOH誘電体がSi−[CH−Siを含み、nが1または3である。
【0015】
本発明の他の目的は、(固体NMRおよびFTIRによって検出された)Si−CH−Siとして結合されたC原子の割合が従来技術のSiCOH誘電体よりも大きいSiCOH誘電体材料を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、3.2以下の誘電率を有し、湿度(%)に対するCS(皮膜引張強さ)のプロットが湿度に対する弱い依存性を示す、SiCOH誘電体材料を提供することにある。すなわち、本発明のSiCOH誘電体材料は、所与の誘電率で、図2および3に示されたプロットよりも小さな傾きを有し、したがって特定のPH2O値における皮膜引張強さが、図2または3の直線の上側の陰影の領域にある。「弱い依存性」は、本発明のSiCOH誘電体のプロットの傾きが、従来技術の材料のそれよりも小さいことを意味する。本発明ではこれが、反応部位(Si−O−Si)の数を減らすことによって達成される。CS対ln PH2O曲線の傾きは、反応性Si−O−Si部位の密度によって決まる。Si−O−Si部位の数を減らすことは水分に対する感度を減らすことにつながるが、Si−O−Si部位の減少は、Si−O−Si結合密度に直線的に依存する皮膜引張強さも低下させる。しかし、本発明の誘電体材料は、(Si−O−Si結合の密度の低下に起因する)皮膜引張強さのこの初期の低下を、先に述べたようにSi−C型の結合を組み込むことによって克服する。Si−C型の結合は、材料の機械的強度をさらに増大させる非線形変形挙動を示す場合と示さない場合がある。正味の結果は、乾燥した環境で、同じ誘電率を有するSi−Oベースの誘電体に少なくとも等しい皮膜引張強さを有する誘電体、好ましくは同じ誘電率を有するSi−Oベースの誘電体よりも大きな皮膜引張強さを有する誘電体であり、本発明の誘電体材料はかなり低い環境感度を有する。
【0017】
本発明の他の目的は、3.2以下の誘電率を有し、水中での割れ形成に対する抵抗性を含め、HO蒸気(湿度)への暴露に対して非常に安定なSiCOH誘電体材料を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、BEOL配線構造中のレベル内またはレベル間誘導体あるいはその両方として本発明のSiCOH材料を含む電子構造を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、本発明のSiCOH誘電体材料を付着させるPECVD法、および本発明のSiCOH誘電体材料を硬化させる適当な方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、その中に本発明のSiCOH誘電体材料が使用された他の電子構造(回路ボード、受動アナログ・デバイスなど)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
広く言えば、本発明は、Si、C、OおよびHからなり、C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル(すなわち−C−)、−[CH−(nは1以上)、HC=CH(すなわち2重結合)、C=CH、C≡C(すなわち3重結合)または[S]結合(nは先に定義したとおり)である誘電体材料を提供する。本発明によれば、この材料中の全炭素原子のうち、固体NMRによって決定されたSi−R−Siとして結合されている全炭素原子の割合は一般に0.01から0.99である。好ましい一実施形態では、このSiCOH誘電体がSi−[CH−Siを含み、nが1または3である。
【0022】
本発明の第1の実施形態では、誘電率が3.0、引張応力が30MPa以下、弾性率が15GPa超、皮膜引張強さが約6J/mよりもかなり大きく、例えば約6から約12J/m、膜厚3ミクロンでの水中での割れ発達速度が1×10−10m/秒以下である安定な超低k SiCOH誘電体材料が提供され、C原子の一部分が、官能基Si−CH−Si中に結合されており、C固体NMRによって測定された前記メチレンCH炭素の割合が約0.05から約0.5である。
【0023】
本発明の第2の実施形態では、誘電率が約2.5未満、引張応力が約40MPa未満、弾性率が約5GPa超、皮膜引張強さが約3から約6J/m超、膜厚3ミクロンでの水中での割れ発達速度(crack development velocity)が1×10−10m/秒以下の安定な超低k SiCOH誘電体材料が提供され、C原子の一部分が、官能基Si−CH−Si中に結合されており、C固体NMRによって測定されたこの炭素の割合(carbon fraction)が約0.05から約0.5である。
【0024】
本発明の代替実施形態では、Si−CHとして結合された炭素およびSi−R−Siとして結合された炭素が存在し、Rはさまざまな有機基であることができる。
【0025】
本発明の材料の全ての実施形態では、従来技術のSiCOHおよびpSiCOH誘電体に特徴的なSi−CH結合に比べて向上したC−Si結合がこの材料の特徴である。
【0026】
本発明の代替実施形態では、C−S、Si−Sおよび任意選択のS−S結合が存在する。
【0027】
これまでに述べた特性に加えて、本発明の誘電体材料は疎水性であって、水との接触角が70°超、より好ましくは80°超あり、図2および3の陰影のついた領域の皮膜引張強さを示す。図2に示した直線の式は、γ(J/m)=−1.094J/m・X+10.97J/m、XはPH2Oのln、Pの単位はPaである。図3に示した直線の式は、γ(J/m)=−0.662J/m・X+6.759J/m、XはPH2Oのln、Pの単位はPaである。
【0028】
本発明はさらに、本発明のSiCOH誘電体材料を、電子構造中のレベル間もしくはレベル内誘電体、キャッピング層、またはハード・マスク/研磨ストップ層として、あるいはこれらの任意の組合せとして使用することができる電子構造に関する。
【0029】
具体的には、本発明の電子構造は、前処理された半導体基板を含み、この基板が、第1の絶縁材料層に埋め込まれた第1の金属領域と、第2の絶縁材料層に埋め込まれた第1の導体領域とを有し、第2の絶縁材料層が第1の絶縁材料層と密に接触し、第1の導体領域が第1の金属領域と電気的に連絡し、さらに、第1の導体領域と電気的に連絡し、第3の絶縁材料層に埋め込まれた第2の導体領域を有し、第3の絶縁材料層が第2の絶縁材料層と密に接触する。
【0030】
上記の構造では、それぞれの絶縁層が、本発明の改良されたC結合を有する本発明の低kまたは超低k SiCOH誘電体材料を含むことができる。
【0031】
この電子構造はさらに、第1の絶縁材料層と第2の絶縁材料層の間に誘電体キャップ層を含むことができ、第2の絶縁材料層と第3の絶縁材料層の間に誘電体キャップ層を含むことができる。この電子構造はさらに、第2の絶縁材料層と第3の絶縁材料層の間の第1の誘電体キャップ層と、第3の絶縁材料層の上の第2の誘電体キャップ層とを有することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、この誘電体キャップ自体が、本発明の低kまたは超低k SiCOH誘電体材料を含む。
【0033】
この電子構造はさらに、第2の絶縁材料層と第3の絶縁材料層のうちの少なくとも一方の層の上に付着された誘電体材料の拡散障壁層を含むことができる。この電子構造はさらに、RIEハード・マスク/研磨ストップ層として使用される第2の絶縁材料層の上の誘電体層体と、この誘電RIEハード・マスク/研磨ストップ層の上の誘電拡散障壁層とを含むことができる。この電子構造はさらに、第2の絶縁材料層の上の第1の誘電RIEハード・マスク/研磨ストップ層と、第1の誘電研磨ストップ層の上の第1の誘電RIE拡散障壁層と、第3の絶縁材料層の上の第2の誘電RIEハード・マスク/研磨ストップ層と、第2の誘電研磨ストップ層の上の第2の誘電拡散障壁層とを含むことができる。この誘電RIEハード・マスク/研磨ストップ層も本発明のSiCOH誘電体材料からなることができる。
【0034】
本発明はさらに、本発明のSiCOH材料を製作するさまざまな方法に関する。
【0035】
本発明はさらに、少なくとも2つの導体を含む構造および光の検出に使用する光電子センシング構造を含む他の電子構造内での本発明のSiCOH誘電膜の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
先に述べたとおり、本発明は、Si、C、OおよびH元素を含む共有結合性3次元網目の形態の水素化/酸化シリコン炭素材料(SiCOH)のマトリックスを含み、約3.2以下の誘電率を有する、(多孔質または緻密すなわち非多孔質)誘電体材料を提供する。用語「3次元網目」は、本出願全体を通じて、x、yおよびz方向に相互に接続され相互に関係づけられたシリコン、炭素、酸素および水素を含むSiCOH誘電体材料を指示する目的に使用される。
【0037】
本発明は、Si−CHとして結合されたCおよびSi−R−Siとして結合されたCを含む共有結合性3次元網目構造を有するSiCOH誘導体を提供する。Rは、フェニル(すなわち−C−)、−[CH−(nは1以上)、HC=CH(すなわち2重結合)、C=CH、C≡C(すなわち3重結合)または[S]結合(nは先に定義したとおり)である。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の誘電体材料の全炭素原子のうち、固体NMRによって決定されたSi−R−Siとして結合されている炭素原子の割合が0.01から0.99である。好ましい一実施形態では、このSiCOH誘電体がSi−[CH−Siを含み、nが1または3である。この好ましい実施形態では、材料中の炭素原子のうち、固体NMRによって測定されたSi−CH−Siとして結合されている炭素原子の割合が0.05から0.5である。
【0038】
本発明のSiCOH誘電体材料は、Siを約5から約40原子パーセント、より好ましくは約10から約20原子パーセント、Cを約5から約50原子パーセント、より好ましくは約15から約40原子パーセント、Oを0から約50原子パーセント、より好ましくは約10から約30原子パーセント、Hを約10から約55原子パーセント、より好ましくは約20から約45原子パーセント含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明のSiCOH誘電体材料がさらにFまたはNあるいはその両方を含む。本発明の他の実施形態では、任意選択で、SiCOH誘電体材料が、Ge原子によって部分的に置換されたSi原子を有する。本発明の誘電体材料中に存在するこれらの任意選択の元素の量は、付着時に使用されるこれらの任意選択の元素を含む前駆体の量に依存する。
【0040】
本発明のSiCOH誘電体材料は任意選択で、直径約0.3から約10ナノメートル、最も好ましくは直径約0.4から約5ナノメートルの分子規模の空隙(void)(すなわちナノメートルサイズの細孔(pore))を含み、これらの空隙はSiCOH誘電体材料の誘電率をさらに低下させる。これらのナノメートルサイズの細孔は、材料の体積の約0.5%から約50%を占める。これらの空隙が存在するとき、その材料は多孔質SiCOHまたは「pSiCOH」として知られる。
【0041】
図4に、図1に示した従来技術の誘電体および本発明のSiCOH誘電体材料を含む、誘電率に対する皮膜引張強さの普遍曲線を示す。図4のプロットは、本発明のSiCOH誘電体が、同じk値の従来技術の誘電体よりも高い皮膜引張強さを有することを示している。図1および4ではkが比誘電率として表示されている。
【0042】
本発明の第1の実施形態では、誘電率が3.0、引張応力が30MPa以下、弾性率が15GPa超、皮膜引張強さが約6J/m超、膜厚3ミクロンでの水中での割れ発達速度が1×10−10m/秒以下の安定な超低k SiCOH誘電体材料が提供され、C原子の一部分が、官能基Si−CH−Si中に結合されており、前記メチレンCH炭素の割合が約0.1である。先に述べたとおり本発明では、C固体NMRによって測定されるこの割合を約0.05から約0.5とすることができる。
【0043】
本発明の第2の実施形態では、誘電率が2.5未満、引張応力が約30から約40MPa、弾性率が5GPa超、皮膜引張強さが約4J/m超、膜厚3ミクロンでの水中での割れ発達速度が1×10−10m/秒以下の安定な超低k SiCOH誘電体材料が提供され、C原子の一部分が、官能基Si−CH−Si中に結合されており、C固体NMRによって測定されたメチレン炭素の割合が約0.05から約0.5である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、Si−CHとして結合された炭素およびSi−R−Siとして結合された炭素が存在し、Rはさまざまな有機基であることができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の誘電体材料が、(i)緻密または多孔質材料であり、乾燥環境すなわち水が全くない環境で約3J/m超の皮膜引張強さを有し、約2.5未満の誘電率を有し、あるいは(ii)緻密または多孔質材料であり、水圧1570Pa、25℃で約3J/m超の皮膜引張強さを有し、約3.2未満の誘電率を有し(相対湿度50%)、あるいは(iii)緻密または多孔質材料であり、水圧1570Pa、25℃で約2.1J/m超の皮膜引張強さを有し、約2.5未満の誘電率を有することを特徴とする。
【0046】
本発明のSiCOH誘電体は、従来技術のSiCOHおよびpSiCOH誘電体に特徴的なSi−CH結合よりも、2つのSi原子を橋絡する有機基中に結合された炭素を多く有する。
【0047】
本発明の他のいくつかの実施形態では、本発明のSiCOH誘電体中にC−S、Si−Sおよび任意選択のS−S結合が存在する。
【0048】
これまでに述べた特性に加えて、本発明のSiCOH誘電体材料は疎水性であって、水との接触角が70°超、より好ましくは80°超あり、図2および3の陰影のついた領域の皮膜引張強さを示す。
【0049】
本発明のSiCOH誘電体材料は一般に、プラズマ化学蒸着(PECVD)を使用して付着させる。PECVDに加えて本発明はさらに、化学蒸着(CVD)、高密度プラズマ(HDP)、パルスPECVD、スピンオン塗布または他の関連方法を利用してSiCOH誘電体材料を形成できることを予期する。
【0050】
この付着プロセスでは、本発明のSiCOH誘電体材料を、Si、C、OおよびH原子を含む少なくとも1つの第1のカルボシラン(carbosilane)またはアルコキシカルボシラン前駆体(液体、気体または蒸気)およびHe、Arなどの不活性キャリヤを、リアクタ、好ましくはPECVDリアクタに供給し、次いで、前記第1の前駆体に由来する膜を、本発明のSiCOH誘電体材料を形成するのに有効な条件を利用して適当な基板上に付着させることによって形成する。本発明はさらに任意選択で、O、NO、COなどの酸化剤またはこれらの組合せをこの気体混合物に加え、それによってリアクタ内の反応物を安定させ、基板上に付着される誘電膜の特性および均一性を向上させる。第1の前駆体はイオウまたはイオウ誘導体を含むことができる。
【0051】
本発明では第1の前駆体が、以下の化合物のうちの少なくとも1つを含む:1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジシラプロパン、1,5−ジシラペンタン、1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼン、これらの化合物のメトキシおよびエトキシ置換誘導体。
本発明で使用することができる第1の前駆体の他の例は、オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサンを含む環状前駆体である。ただしこれらに限定されるわけではない。本発明はさらに、関連するジシラシクロオクタン、テトラシラシクロオクタン、ジシラシクロヘキサン、シラシクロヘキサンの誘導体および同様の環状カルボシラン前駆体を企図する。
【0052】
先に具体的に述べた好ましい環式化合物の構造は、本発明が企図する環式化合物のタイプを例示するために示したものである(したがって示されたそれらの構造は本発明を一切限定しない)。
【0053】
【化1】

【0054】
【化2】

【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
本発明において先に述べた環式化合物が好ましいのは、それらの前駆体が比較的に低い沸点を有し、それらが、製造規模PECVDプロセスで機能することが分かっている前駆体に似ており、それらが、1つの分子の中に、Si-CH−Si結合基と少なくとも1つのSi−O結合の組合せを含むためである。
【0060】
本発明のSiCOH誘電体を形成する際に使用される好ましい化合物の例には、1,1,3,3−テトラヒドリド−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジヒドリド−1,3−ジシリルシクロブタン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサヒドリド−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,3,5−トリシラン、1,1,1,3,3,3−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラプロパン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1−メチル−1,3−ジシラブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサヒドリド−1,3−ジシラプロパン、3−(1,1−ジメトキシ−1−シラエチル)−1,4,4−トリメトキシ−1−メチル−1,4−ジシルペンタン、メトキシメタン、2−(ジメトキシシラメチル)−1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラブタン、メトキシメタン、1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラ−2−(トリメトキシシリルメチル)ブタン、ジメトキシメタン、メトキシメタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラヘキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシリルブタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサヒドリド−1,4−ジシラブタン、1,1,4,4−テトラメトキシ(エトキシ)−1,4−ジメチル−1,4−ジシラブタン、1,4−ビス−トリメトキシ(エトキシ)シリルベンゼン、1,4−ビス−ジメトキシメチルシリルベンゼンおよび1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼンが含まれる。さらに、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−エン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−イン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシロラン、1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ(エトキシ)−1,3−ジメチル−1,3−ジシラン、1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラン、1,1−ジメトキシ(エトキシ)−3,3−ジメチル−1−プロピル−3−シラブタン、2−シラプロパンなどの対応するメタ置換異性体。
【0061】
これまでに述べた材料に加えて、本発明はさらにそれらのイオウ誘導体を企図する。
【0062】
図5に、本発明においてSiCOH誘電体材料を形成する際に使用することができる好ましい第1の前駆体を示す。図6は、本発明においてSiCOH誘電体材料を形成する際に使用できる追加のCVDカルボシラン前駆体を示す図である。図5および6に示した化合物のイオウ誘導体も企図される。
【0063】
任意選択で、第2のSiCOH前駆体、例えばジエトキシメチルシラン、オクタメチルテトラシロキサン、テトラメチルテトラシロキサン、トリメチルシランまたは他の一般的な任意のアルキルシランまたはアルコキシシラン(環状または線状)分子をリアクタに加えることができる。
【0064】
任意選択で、C−S−CまたはC−[S]−CあるいはSi−S−SiまたはSi−[S]−Si結合を含む前駆体をリアクタに加えることができる。
【0065】
第1の前駆体に加えて、C、H原子を含み、任意選択でO、FまたはN、あるいはこれらの任意の組合せを含む第2の前駆体(気体、液体または蒸気)を使用することができる。任意選択で、Geを含む第3の前駆体(気体、液体または気体)を使用することもできる。
【0066】
第2または第3の前駆体は、米国特許第6,147,009号、米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,437,443号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,541,398号、米国特許第6,479,110 B2号および米国特許第6,497,963号に記載されている炭化水素分子とすることができる。
【0067】
本発明の方法はさらに、基板チャックの導電領域が約85cmから約750cm、基板と上部電極の間の間隔が約1cmから約12cmの平行プレート・リアクタを準備するステップを含むことができる。周波数約0.45MHzから約200MHzの高周波RF電力を1つの電極に加える。任意選択で、第1のRF電力よりも低い周波数の追加のRF電力を、1つの電極に加えることができる。
【0068】
付着ステップに対して使用される条件は、本発明のSiCOH誘電体材料の最終的な所望の誘電率に応じて変更することができる。Si、C、O、H元素を含み、誘電率が約3.2以下、引張応力が45MPa未満、弾性率が約2から約15GPaおよび硬度が約0.2から約2GPaの安定な誘電体材料を提供するために使用される条件には、大まかに、基板温度を約100℃から約425℃にセットすること、高周波RF出力密度を約0.1W/cmから約2.0W/cmにセットすること、第1の液体前駆体流量を約10mg/分から約5000mg/分にセットすること、任意選択で第2の液体前駆体流量を約10mg/分から約5,000mg/分にセットすること、任意選択で第3の液体前駆体流量を約10mg/分から約5000mg/分にセットすること、任意選択でヘリウム(またはアルゴンあるいはその両方)などの不活性キャリヤ・ガス流量を約10sccmから約5000sccmにセットすること、リアクタ圧力を約1000ミリトルから約10,000ミリトルにセットすること、高周波RF電力を約50Wから約1000Wにセットすることが含まれる。任意選択で、約20Wから約400Wの超低周波電力をプラズマに加えることができる。基板チャックの導電領域がX倍に変更されると、基板チャックに加えられるRF電力もX倍に変更される。
【0069】
本発明において酸化剤を使用するときには、酸化剤を、約10sccmから約1000sccmの流量でPECVDリアクタに流入させる。
【0070】
上記の例では液体前駆体を使用したが、(トリメチルシランなどの)気相有機シリコン前駆体もこの付着に使用できることは当技術分野で知られている。
【0071】
上記のプロセスによって生み出された膜を本明細書では「付着膜」と呼ぶ。
【0072】
本発明によれば、本発明の安定なSiCOH誘電体材料の製作に、以下のいくつかのステップの組合せが必要となることがある。
【0073】
−第1のステップでは、後述するプロセス実施形態において与えられる特定の値域の付着ツール・パラメータを使用して基板上に材料を付着させて、付着膜を形成する。
【0074】
−熱、UV光、電子ビーム照射、化学エネルギーまたはこれらのうちの2つ以上の組合せを使用してこの材料を硬化させまたは処理して、所望の機械特性または本明細書に記載された他の特性を有する最終的な膜を形成する。例えば、付着後に、(熱エネルギーおよび第2のエネルギー源を使用した)SiCOH膜の処理を実行して、膜を安定させ、改良された特性を得ることができる。この第2のエネルギー源は、電磁放射(UV、マイクロ波など)、荷電粒子(電子またはイオンビーム)または化学源(水素原子またはプラズマ内に形成される他の反応性気体を使用)とすることができる。
【0075】
好ましい1つの処理では、(上記のプロセスに従って付着させた膜を含む)基板を、制御された環境(真空または低いOおよびHO濃度を有する極めて純粋な不活性気体)を有する紫外線(UV)処理ツールの中に入れる。パルスまたは連続UV源を使用することができる。
【0076】
本発明では、このUV処理ツールを付着ツールに接続し(「クラスター化(clustered)」)、またはUV処理ツールを別個のツールとすることができる。
【0077】
当技術分野で知られているとおり、本発明ではこれらの2つのプロセス・ステップが、単一のプロセス・ツール上にクラスター化することができる2つの別個のプロセス室で実施され、またはこれらの2つのプロセス室を別個のプロセス・ツール内に配置する(「非クラスター化(declustered)」)ことができる。多孔質SiCOH膜では、硬化ステップが、本発明の誘電体材料と一緒に付着させた犠牲炭化水素(ポーロゲン(porogen))成分の除去を含むことができる。本発明で使用することができる適当な犠牲炭化水素成分には、米国特許第6,147,009号、米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,437,443号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,541,398号、米国特許第6,479,110 B2号および米国特許第6,497,963号に記載されている第2の前駆体が含まれる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0078】
以下は、本発明の材料実施形態およびプロセス実施形態を例示する実施例である。
【実施例1】
【0079】
SiCOH材料A
この実施例では、SiCOH膜Aと呼ぶ本発明に従って製作されたSiCOH誘電体が、図8および下表1のデータによって特徴づけられた。比較のため、図8および表1には、約2.7〜2.8の誘電率を有する従来技術の「一般的」なSiCOH膜であるSiCOH膜BおよびCも示されている。
【0080】
図8を参照すると、この図は、SiCOH膜Aの13C核の固体NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示している。ピーク33は、Siに結合したメチル基CH13Cに対応し、ピーク33に幅があるのは、CH基がさまざまな磁気環境にあるためである。ピーク32は、2つのSi原子間の架橋Si−CH−Siを与える−CH−種の13Cに起因した。ピーク32の高さを基にすると、膜の全Cのうち、メチレン架橋基−CH−として存在するCの割合は約0.1であった。ピーク33と32は重なっていたため、これは推定値でしかない。面積は測定しなかった。図8にはさらに、SiCOH膜Bから測定された曲線35およびSiCOH膜Cから測定された曲線37が示されている。従来技術の「一般的」なSiCOH膜である他のSiCOH膜からのスペクトル35および37(NMRスペクトル)はCH基に起因するピーク33を含んでいることが分かった。スペクトル35および37はピーク32を含まない。
【0081】
下表1は、SiCOH膜A、BおよびCから測定されたFTIR(フーリエ変換赤外分光)スペクトルを要約したものである。表の数値はFTIRピークの積分面積であり、最後の欄はこれらの2つのFTIRピークの面積比である。この比(CH+CH)/SiCHは、本発明のSiCOH膜Aでは、(CH+CH)FTIRピーク面積に対するCH種の寄与が高いことを示すために計算したものである。この比は本発明のSiCOH膜Aでは約0.9、SiCOH膜B、Cなどの一般的なSiCOH膜では約0.6であることが分かった。さらに、SiCOH膜Aは、膜BまたはCよりも多くのCH種を含んでいた。NMR分析によれば、これらは、本発明のSiCOH膜AのSi−CH−Siに起因するものであった。
【0082】
【表1】

【実施例2】
【0083】
第1のプロセス実施形態
【0084】
PECVDリアクタの中の350℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。300〜425℃の温度を使用してもよい。本発明では任意のPECVDリアクタを使用することができる。次いで、0.1〜10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から約500秒間、RF放射を当てた。
【0085】
具体的には、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素(前述)を含む本発明のSiCOH誘電体材料Aを成長させるために、単一のSiCOH前駆体を、流量2500mg/分にセットされたOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン)とし、酸素O流量を220sccm、ヘリウムHeガス流量を2000sccmにセットし、5トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックを350℃にセットし、周波数13.6MHz、400Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加え、周波数13.6MHz、60Wの低周波RF電力を基板に加えた。膜付着速度は2025オングストローム/分であった。
【実施例3】
【0086】
第2のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、0.1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0087】
具体的には、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素(前述)を含む本発明のSiCOH誘電体を成長させるために、使用される条件は以下のものを含み:1,1,1,3,3,3−ヘキサメトキシ−1,3−ジシラプロパン流量2500mg/分、酸素O流量220sccm、ヘリウムHeガス流量2000sccm、5トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックを350℃にセットし、周波数13.6MHz、500Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加え、周波数13.6MHz、160Wの低周波RF電力を基板に加えた。膜付着速度は10〜100オングストローム/秒であった。
【0088】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、先に記載した本発明の範囲内で調整することができる。例えば、本発明では、0.26、0.35、0.45MHzを含むさまざまなRF周波数を使用することができる。ただし使用できる周波数はこれらに限定されるわけではない。さらに例えば、O流量をゼロとすることができ、Oの代わりにNO、COまたはCOを含む代替の酸化剤を使用することができる。さらに、前駆体1,1,1,3,3,3−ヘキサメトキシ−1,3−ジシラプロパンにおいて、メトキシ置換基を、ヒドリド、メチルまたはエトキシ基に置き換えることができる。さらに、代替実施形態では、前駆体1、3−ジシラブタン(HSi−CH−Si(H)−CH)を使用することができ、当技術分野で知られているとおり、Oおよび他の気体の流量は調整される。
【0089】
他の代替実施形態では、図5〜7に示した任意のカルボシラン前駆体を使用することができる。
【実施例4】
【0090】
第3のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0091】
1.8以上のkを有し、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素を有するSiCOH材料を成長させるために、2つの前駆体、具体的には1,3−ジシラシクロブタンおよびDEMS(ジエトキシメチルシラン)を使用した。本発明では、DEMSの代わりに、OMCTS、TMCTSまたはジメチルジメトキシシランを含む任意のアルコキシシラン前駆体を使用することができる。ただし使用できるアルコキシシラン前駆体これらに限定されるわけではない。さらに、本発明では、(DEMSの代わりに使用される)アルコキシシラン前駆体を、内蔵ポーロゲンを有する有機シリコン前駆体とすることができ、このアルコキシシラン前駆体は、任意選択で、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペント−3−エン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エポキシヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサビニルジシロキサン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、ビニルメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルペンタメチルジシロキサン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランのうちの1つを含むことができる。
【0092】
当技術分野で知られているとおり、Oなどの気体を加えることができ、Heを、Ar、CO、他の希ガスなどの気体に置き換えることができる。
【0093】
使用される条件には、DEMS流量2000mg/分、1,3−ジシラシクロブタン流量100から1000mg/分、Heガス流量1000sccmが含まれ、6トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックを350℃にセットし、470Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加え、低周波RF(LRF)電力は0Wとし、そのため基板にはLRFを加えなかった。膜付着速度は2,000〜4,000オングストローム/秒であった。
【0094】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、先に記載した本発明の範囲内で調整することができる。例えば、本発明では、0.26、0.35、0.45MHzを含むさまざまなRF周波数を使用することができる。ただし使用できる周波数はこれらに限定されるわけではない。さらに例えば、Oなどの酸化剤、あるいはNO、COまたはCOを含む代替酸化剤を使用することができる。具体的には、ウェーハ・チャック温度を低くすることができ、例えば150〜350℃にすることができる。
【0095】
Si−CH−Si架橋メチレン炭素の割合を高めるための好ましいカルボシランは1,3−ジシラシクロブタンだが、図5〜7に示した前駆体を含む前述の他のカルボシランまたはアルコキシカルボシラン前駆体を使用することができる。ただし使用できる前駆体はこれらに限定されるわけではない。
【0096】
代替実施形態では、1.8から2.7までの誘電率を有するSiCOH膜を製作するために条件が調整される。
【0097】
代替実施形態では、選択されたカルボシラン前駆体を使用して、SiとSiの間の架橋基として他の官能基を加えることができる。ここではいくつかの例を示す。Si原子を橋絡する−CH−CH−CH−官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシロランまたは1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロランから選択することができる。
【0098】
Si原子を橋絡するフェニル官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,4−ビス−トリメトキシ(エトキシ)シリルベンゼン、1,4−ビス−ジメトキシメチルシリルベンゼン、1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼンまたは関連するSi含有ベンゼン誘導体から選択することができる。
【0099】
Si原子を橋絡する(bridging)HC=CH官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−エンまたは他のSi含有エチレン誘導体から選択することができる。
【0100】
Si原子を橋絡するC≡C(3重結合)官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ−1,4−ジシラブト−2−イン、1,1,1,4,4,4−ヘキサエトキシ−1,4−ジシラブト−2−インまたは他のSi含有アセチレン誘導体とすることができる。
【0101】
以上の実施例では、メトキシおよびエトキシ置換基を有する前駆体を記載したが、これらの置換基はヒドリドまたはメチル基に置き換えることができ、本発明では、メトキシ、エトキシ、ヒドリドおよびメチル置換基の混合物を含むカルボシラン分子を使用することができる。
【実施例5】
【0102】
第4のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、0.1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0103】
1.8以上のkを有し、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素を有するSiCOH材料を成長させるために、単一のアルコキシカルボシラン前駆体を使用した。図5に示した線状前駆体が好ましい。
【0104】
使用される条件には、単一の前駆体流量2000mg/分、Heガス流量1000sccmが含まれ、6トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックは350℃にセットし、470Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加え、低周波RF(LRF)電力は0Wとし、そのため基板にはLRFを加えなかった。膜付着速度は1,000〜5,000オングストローム/秒であった。
【0105】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、本発明の範囲内で調整することができる。具体的には、ウェーハ・チャック温度を低くすることができ、例えば150〜350℃にすることができる。当技術分野で知られているとおり、Oなどの気体を加えることができ、Heを、Ar、CO、他の希ガスなどの気体に置き換えることができる。
【0106】
代替実施形態では、1.8から2.7までの誘電率を有するSiCOH膜を製作するために条件が調整される。
【0107】
Si−CH−Si架橋メチレン炭素の割合を高めるための好ましいアルコキシカルボシランは図5の線状前駆体だが、発明を実施するための最良の形態の項で先に述べた任意のアルコキシカルボシランを使用することができる。選択されたカルボシラン前駆体を使用して他の官能基を加えることができる。ここではいくつかの例を示す。Si原子を橋絡する−CH−CH−CH−官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシロランまたは1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロランから選択することができる。
【0108】
Si原子を橋絡するフェニル官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,4−ビス−トリメトキシ(エトキシ)シリルベンゼン、1,4−ビス−ジメトキシメチルシリルベンゼン、1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼンまたは関連するSi含有ベンゼン誘導体から選択することができる。
【0109】
Si原子を橋絡するHC=CH官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−エンまたは他のSi含有エチレン誘導体から選択することができる。
【0110】
Si原子を橋絡するC≡C(3重結合)官能基を加えるためには、選択のカルボシラン前駆体を、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ−1,4−ジシラブト−2−イン、1,1,1,4,4,4−ヘキサエトキシ−1,4−ジシラブト−2−インまたは他のSi含有アセチレン誘導体とすることができる。
【0111】
以上の実施例では、メトキシおよびエトキシ置換基を有する前駆体を記載したが、これらの置換基はヒドリドまたはメチル基に置き換えることができ、本発明では、メトキシ、エトキシ、ヒドリドおよびメチル置換基の混合物を含むカルボシラン分子を使用することができる。
【実施例6】
【0112】
第5のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0113】
この実施例では、1.8以上のkを有し、2つのSi原子を橋絡する高められたSi-CH−Si架橋メチレン炭素または他の有機官能基を有する多孔質SiCOH材料を成長させるために、当技術分野で知られている方法に従ってポーロゲンが加えられる。ポーロゲンは、ビシクロヘプタジエン(BCHD)、または例えば米国特許第6,147,009号、米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,437,443号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,541,398号、米国特許第6,479,110 B2号および米国特許第6,497,963号に記載されている他の分子とすることができる。
【0114】
このSiCOH前駆体に対しては、図5に示した線状アルコキシシラン前駆体が好ましい。
【0115】
使用される条件には、前駆体流量100〜2000mg/分、Heガス流量10〜500sccm、ポーロゲン(porogen)流量約50〜2000mg/分が含まれ、7トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックは225℃にセットし、300Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加え、低周波RF(LRF)電力は0Wとし、そのため基板にはLRFを加えなかった。膜付着速度は1,000から5,000オングストローム/秒であった。
【0116】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、本発明の範囲内で調整することができる。例えば、ウェーハ・チャック温度は150〜350℃とすることができる。
【0117】
図5の好ましい線状アルコキシカルボシランが有用だが、本発明では先に述べた任意のアルコキシカルボシランを使用することができる。さらに本発明では、2つのSiCOH前駆体、例えばDEMSおよび先に述べたカルボシランまたはアルコキシカルボシランを使用することができる。当技術分野では知られているとおり、O、NOなどの気体または他の酸化剤(oxidizer)を加えることができ、Heを、Ar、CO、他の希ガスなどの気体に置き換えることができる。この場合も、以上の実施例に記載された他の官能基を使用して、2つのSi原子間に架橋基を形成することができる。
【実施例7】
【0118】
第6のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0119】
具体的には、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素(前述)を含む本発明のSiCOH誘電体を成長させるために、使用される条件は、前駆体オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタンを選択し、この前駆体の流量を2500mg/分にセットし、O流量を200sccm、ヘリウム・ガス流量を2000sccmにセットすることを含み、5トルのリアクタ圧力に達するように前記流量を安定させた。ウェーハ・チャックを350℃にセットし、周波数13.6MHz、500Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加えた。膜付着速度は10〜100Å/秒であった。
【0120】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、本発明の範囲内で調整することができる。例えば、本発明では、0.26、0.35、0.45MHzを含むさまざまなRF周波数を使用することができる。ただし使用できる周波数はこれらに限定されるわけではない。さらに例えば、O流量をゼロとし、または1から500sccmとすることができ、Oの代わりにNO、COまたはCOを含む代替の酸化剤を使用することができる。さらに、カルボシラン前駆体の流量を100〜5000mg/分とすることができる。さらに、膜を改良するためにRF電力を調整することができ、一般的な範囲は10から1000ワットであり、圧力は0.1から50トルとすることができる。
【0121】
他の代替実施形態ではさらに、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサン、およびジシラシクロオクタン、テトラシラシクロオクタン、ジシラシクロヘキサン、シラシクロヘキサンの誘導体、ならびに同様の環状カルボシラン前駆体のうちの任意の1つの前駆体を本発明の範囲内で使用することができる。
【実施例8】
【0122】
第7のプロセス実施形態
PECVDリアクタの中の300〜425℃、好ましくは350〜400℃に加熱されたウェーハ・チャックの上に300mmまたは200mm基板を置いた。本発明では任意のPECVD付着リアクタを使用することができる。次いで、1から10トルの範囲の圧力に達するように気体および液体前駆体流を安定させ、リアクタのシャワーヘッドに約5から500秒間、RF放射を当てた。
【0123】
具体的には、高められたSi−CH−Si架橋メチレン炭素(前述)を含む本発明のSiCOH誘電体を成長させるために、使用される条件は、前駆体オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタンおよびポーロゲン分子を選択し、この環状前駆体およびポーロゲンの流量を100から5000mg/分にセットすることを含む。ポーロゲンは、当技術分野で知られている方法に従って選択することができる。ポーロゲンは、例えば米国特許第6,147,009号、米国特許第6,312,793号、米国特許第6,441,491号、米国特許第6,437,443号、米国特許第6,541,398号、米国特許第6,479,110 B2号および米国特許第6,497,963号に記載されている任意の分子とすることができる。
【0124】
流量は200sccmにセットし、ヘリウム・ガス流量は2000sccmにセットした。本発明に従って、5トルのリアクタ圧力に達するようにこれらの流量を安定させた。ウェーハ・チャックを350℃にセットし、周波数13.6MHz、500Wの高周波RF電力をシャワーヘッドに加えた。膜付着速度は10〜100Å/秒であった。
【0125】
当技術分野で知られているとおり、上記のそれぞれのプロセス・パラメータは、本発明の範囲内で調整することができる。例えば、本発明では、0.26、0.35、0.45MHzを含むさまざまなRF周波数を使用することができる。ただし使用できる周波数はこれらに限定されるわけではない。さらに例えば、O流量をゼロとし、または1から500sccmとすることができ、Oの代わりにNO、COまたはCOを含む代替の酸化剤を使用することができる。さらに、カルボシラン前駆体の流量を100〜5000mg/分とすることができる。さらに、膜を改良するためにRF電力を調整することができ、一般的な範囲は10から1000ワットであり、圧力は0.1から50トルとすることができる。
【0126】
他の代替実施形態ではさらに、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサン、およびジシラシクロオクタン、テトラシラシクロオクタン、ジシラシクロヘキサン、シラシクロヘキサンの誘導体、ならびに同様の環状カルボシラン前駆体のうちの任意の1つの前駆体を本発明の範囲内で使用することができる。
【0127】
本発明のSiCOH誘電体を含むことができる電子デバイスを図9〜12に示す。図9〜12に示したデバイスは本発明の例にすぎず、本発明の新規の方法によって他の無数のデバイスを形成することができることに留意されたい。
【0128】
図9には、シリコン基板32上に構築された電子デバイス30が示されている。最初にシリコン基板32の上に絶縁材料層34を形成し、その中に第1の金属領域36を埋め込む。第1の金属領域36にCMPプロセスを実施した後、第1の絶縁材料層34および第1の金属領域36の上に、本発明のSiCOH誘電膜38を付着させる。適当には第1の絶縁材料層34は、酸化シリコン、窒化シリコン、ドープされたこれらの材料、または他の適当な絶縁材料から形成することができる。次いで、フォトリソグラフィ・プロセスおよびそれに続くエッチングによってSiCOH誘電膜38をパターニングし、その上に導体層40を付着させる。第1の導体層40にCMPプロセスを実施した後、第1のSiCOH誘電膜38および第1の導体層40の上に、本発明の第2のSiCOH膜層44をプラズマ化学蒸着プロセスによって付着させる。導体層40は、金属材料または非金属導電材料の付着によって形成することができる。例えば、アルミニウムまたは銅の金属材料、あるいは窒化物またはポリシリコンの非金属材料。第1の導体40は、第1の金属領域36と電気的に連絡している。
【0129】
次いで、SiCOH誘電膜44にフォトリソグラフィ・プロセスを実施した後に、これをエッチングし、第2の導体材料の付着プロセスを実施することによって、第2の導体領域50を形成する。第2の導体領域50も、第1の導体層40を付着させる際に使用した材料と同様の金属材料または非金属材料の付着によって形成することができる。第2の導体領域50は第1の導体領域40と電気的に連絡しており、第2の導体領域50は、第2のSiCOH誘電膜層44の中に埋め込まれている。この第2のSiCOH誘電膜層は第1のSiCOH誘電体材料層38と密に接触している。この例では、第1のSiCOH誘電体材料層38がレベル内誘電体材料であり、第2のSiCOH誘電膜層44がレベル内およびレベル間誘電体である。本発明のSiCOH誘電膜の低い誘電率を基にして、第1の絶縁層38および第2の絶縁層44によって優れた絶縁特性を達成することができる。
【0130】
図10に、第1の絶縁材料層38と第2の絶縁材料層44の間に追加の誘電体キャップ層62が付着されている以外は図9に示した電子デバイス30と同様の本発明の電子デバイス60を示す。適当には誘電体キャップ層62は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、炭窒化シリコン(SiCN)、炭酸化シリコン(SiCO)、これらの水素化化合物などの材料から形成することができる。追加の誘電体キャップ層62は、第2の絶縁材料層44への、または下層、特に層34および32への第1の導体層40の拡散を防ぐ拡散障壁層として機能する。
【0131】
本発明の電子デバイス70の他の代替実施形態を図11に示す。電子デバイス70には、RIEマスクおよびCMP(化学機械研磨)研磨ストップ層の働きをする2つの追加の誘電体キャップ層72および74が使用されている。第1の誘電体キャップ層72は、第1の超低k絶縁材料層38の上に付着され、RIEマスクおよびCMPストップとして使用され、そのため、CMPの後、第1の導体層40と層72はほぼ共面となる。第2の誘電体層74の機能は層72と同様だが、層74は、第2の導体層50を平坦化する際に利用される。研磨ストップ層74は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、炭酸化シリコン(SiCO)、これらの水素化化合物などの適当な誘電体材料の付着によって形成することができる。層72または74向けの好ましい研磨ストップ層組成はSiCHまたはSiCOHである。同じ目的で第2のSiCOH誘電膜44の上に第2の誘電体層を追加することができる。
【0132】
本発明の電子デバイス80の他の代替実施形態を図12に示す。この代替実施形態では、追加の誘電体材料層82が付着されており、したがってこれが、第2の絶縁材料層44を2つの別個の層84および86に分割する。したがって本発明の超低k材料から形成されたレベル内およびレベル間誘電体層44は、バイア92と相互接続94の間の境界で、層間誘電体層84とレベル内誘電体層86とに分割されている。上誘電体層74の上にはさらに追加の拡散障壁層96が付着されている。この代替実施形態の電子構造80によって提供される追加の利益は、誘電体層82が、優れた相互接続深さ制御を提供するRIEエッチング・ストップの働きをすることである。したがって、層82の組成は、層86に対するエッチング選択性を提供するように選択される。
【0133】
他の代替実施形態は、配線構造のレベル内またはレベル間誘電体として絶縁材料層を有する電子構造であって、前処理された半導体基板を含み、この基板が、第1の絶縁材料層に埋め込まれた第1の金属領域と、第2の絶縁材料層に埋め込まれた第1の導体領域とを有し、第2の絶縁材料層が第1の絶縁材料層と密に接触し、第1の導体領域が第1の金属領域と電気的に連絡し、さらに、第1の導体領域と電気的に連絡し、第3の絶縁材料層に埋め込まれた第2の導体領域を有し、第3の絶縁材料層が第2の絶縁材料層と密に接触し、さらに、第2の絶縁材料層と第3の絶縁材料層の間の第1の誘電体キャップ層と、第3の絶縁材料層の上の第2の誘電体キャップ層とを有し、第1および第2の誘電体キャップ層が、Si、C、OおよびH原子を含む材料、または好ましくは本発明のSiCOH誘電膜から形成されている電子構造を含む。
【0134】
本発明の他の代替実施形態は、配線構造のレベル内またはレベル間誘電体として絶縁材料層を有する電子構造であって、前処理された半導体基板を含み、この基板が、第1の絶縁材料層に埋め込まれた第1の金属領域と、第1の絶縁材料層と密に接触した第2の絶縁材料層に埋め込まれた第1の導体領域とを有し、第1の導体領域が第1の金属領域と電気的に連絡し、さらに、第1の導体領域と電気的に連絡し、第3の絶縁材料層に埋め込まれた第2の導体領域を有し、第3の絶縁材料層が第2の絶縁材料層と密に接触し、さらに、第2の絶縁材料層と第3の絶縁材料層のうちの少なくとも一方の層の上に付着された本発明の誘電膜から形成された拡散障壁層とを有する電子構造を含む。
【0135】
他の代替実施形態は、配線構造のレベル内またはレベル間誘電体として絶縁材料層を有する電子構造であって、前処理された半導体基板を含み、この基板が、第1の絶縁材料層に埋め込まれた第1の金属領域と、第1の絶縁材料層と密に接触した第2の絶縁材料層に埋め込まれた第1の導体領域とを有し、第1の導体領域が第1の金属領域と電気的に連絡し、さらに、第1の導体領域と電気的に連絡し、第3の絶縁材料層に埋め込まれた第2の導体領域を有し、第3の絶縁材料層が第2の絶縁材料層と密に接触し、さらに、第2の絶縁材料層の上の反応性イオン・エッチング(RIE)ハード・マスク/研磨ストップ層と、このRIEハード・マスク/研磨ストップ層の上の拡散障壁層とを有し、RIEハード・マスク/研磨ストップ層および拡散障壁層が本発明のSiCOH誘電膜から形成されている電子構造を含む。
【0136】
他の代替実施形態は、配線構造のレベル内またはレベル間誘電体として絶縁材料層を有する電子構造であって、前処理された半導体基板を含み、この基板が、第1の絶縁材料層に埋め込まれた第1の金属領域と、第1の絶縁材料層と密に接触した第2の絶縁材料層に埋め込まれた第1の導体領域とを有し、第1の導体領域が第1の金属領域と電気的に連絡し、さらに、第1の導体領域と電気的に連絡し、第3の絶縁材料層に埋め込まれた第2の導体領域を有し、第3の絶縁材料層が第2の絶縁材料層と密に接触し、さらに、第2の絶縁材料層の上の第1のRIEハード・マスク/研磨ストップ層と、第1のRIEハード・マスク/研磨ストップ層の上の第1の拡散障壁層と、第3の絶縁材料層の上の第2のRIEハード・マスク/研磨ストップ層と、第2のRIEハード・マスク/研磨ストップ層の上の第2の拡散障壁層とを有し、RIEハード・マスク/研磨ストップ層および拡散障壁層が本発明のSiCOH誘電膜から形成されている電子構造を含む。
【0137】
本発明の他の代替実施形態は、配線構造のレベル内またはレベル間誘電体として絶縁材料層を有する、直前の段落に記載した構造と同様の電子構造であって、レベル間誘電体層とレベル内誘電体層の間に位置する本発明のSiCOH誘電体材料から形成された誘電体キャップ層をさらに含む電子構造を含む。
【0138】
例えば図13に示すようないくつかの実施形態では、少なくとも2つの金属導体要素(参照符号97および101として標識されている)と、SiCOH誘電体材料(参照符号98として標識されている)とを含む電子構造。任意選択で、導体97および101に電気的に接触するために金属コンタクト95および102が使用される。本発明のSiCOH誘電体98は、これらの2つの導体間の電気的な分離および低静電容量を提供する。この電子構造は、米国特許第6,737,727号に記載されている技法などの当業者によく知られている従来の技法を使用して製作される。
【0139】
これらの少なくとも2つの金属導体要素は、例えばインダクタ、抵抗器、コンデンサまたは共振器を含む受動または能動回路要素の機能のために必要な形状にパターニングされる。
【0140】
さらに、本発明のSiCOHを、図14または15に示す光電子センシング要素(検出器)が本発明のSiCOH誘電体材料の層によって取り囲まれた電子センシング構造中で使用することができる。この電子構造は、当業者によく知られている従来の技法を使用して製作される。図14を参照すると、IR信号用のSiベースの高速光検出器とすることができるp−i−nダイオード構造が示されている。n+基板が110であり、その上に真性半導体領域112があり、領域112の中にp+領域114が形成されており、これらがp−i−n層シーケンスを完成させる。層116は、金属コンタクト118を基板から分離するために使用される(SiOなどの)誘電体である。コンタクト118はp+領域への電気的接続を提供する。この構造は全体が、本発明のSiCOH誘電体材料120によって覆われている。この材料はIR領域において透明であり、パッシベーション層の役目を果たす。
【0141】
第2の光センシング構造が図15に示されており、これは、高速IR光検出器とすることができる単純なp−n接合フォトダイオードである。図15を参照すると、基板への金属コンタクトが122であり、その上にn型半導体領域124があり、この領域の中にp+領域126が形成されており、これらがpn接合構造を完成させる。層128は、金属コンタクト130を基板から分離するために使用される(SiOなどの)誘電体である。コンタクト130はp+領域への電気的接続を提供する。この構造は全体が、本発明のSiCOH誘電体材料132によって覆われている。この材料はIR領域において透明であり、パッシベーション層の役目を果たす。
【0142】
本発明を例示的に説明してきたが、使用した用語は説明を意図したものであって、限定を意図したものではないことを理解されたい。また、好ましいいくつかの代替実施形態に関して本発明を説明したが、当業者なら、これらの教示を、本発明の他の可能な変形形態に容易に適用できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】従来技術の誘電体を示す、誘電率に対する皮膜引張強さの普遍(universal)曲線である。
【図2】制御された室内のHO圧力の自然対数(ln)に対してプロットされた従来技術のSiCOH誘電体の皮膜引張強さを示す図である。
【図3】制御された室内のHO圧力の自然対数(ln)に対してプロットされた従来技術のSiCOH誘電体の皮膜引張強さを示す図である。
【図4】図1に示した従来技術の誘電体および本発明のSiCOH誘電体材料を含む、誘電率に対する皮膜引張強さの普遍曲線である。
【図5】本発明においてSiCOH誘電体材料を形成する際に使用することができる好ましい第1の前駆体を示す図である。
【図6】使用できる追加のCVDカルボシラン前駆体を示す図である。
【図7】使用できる追加のCVDカルボシラン前駆体を示す図である。
【図8】本発明のSiCOH膜A(曲線31)、従来技術のSiCOH膜B(曲線35)および従来技術の他のSiCOH膜C(曲線37)の13C核の固体NMR(核磁気共鳴)スペクトルである。
【図9】本発明のSiCOH誘電膜をレベル内誘電体層およびレベル間誘電体層として含む本発明の電子デバイスの拡大断面図である。
【図10】本発明のSiCOH誘電膜の上に付着された追加の拡散障壁誘電体キャップ層を有する図9の電子構造の拡大断面図である。
【図11】追加のRIEハード・マスク/研磨ストップ誘電体キャップ層およびこの研磨ストップ層の上に付着された誘電体キャップ拡散障壁層を有する図10の電子構造の拡大断面図である。
【図12】本発明のSiCOH誘電膜の上に付着された追加のRIEハード・マスク/研磨ストップ誘電体層を有する図11の電子構造の拡大断面図である。
【図13】少なくとも2つの導体と本発明のSiCOH誘電体材料とを含む電子構造を示す図(断面図)である。
【図14】センシング要素と本発明のSiCOH誘電体材料とを含む電子構造を示す図(断面図)である。
【図15】センシング要素と本発明のSiCOH誘電体材料とを含む電子構造を示す図(断面図)である。
【符号の説明】
【0144】
30 電子デバイス
32 シリコン基板
34 第1の絶縁材料層
36 第1の金属領域
38 第1のSiCOH誘電膜層
40 第1の導体領域
44 第2のSiCOH誘電膜層
50 第2の導体領域
60 電子デバイス
62 誘電体キャップ層
70 電子デバイス
72 第1の誘電体キャップ層
74 第2の誘電体キャップ層
80 電子デバイス
82 誘電体材料層
84 層間誘電体層
86 レベル内誘電体層
92 バイア
94 相互接続
95 金属コンタクト
96 拡散障壁層
97 金属導体要素
98 SiCOH誘電体材料
101 金属導体要素
102 金属コンタクト
110 n+基板
112 真性半導体領域
114 p+領域
116 誘電体層
118 金属コンタクト
120 SiCOH誘電体材料
122 金属コンタクト
124 n型半導体領域
126 p+領域
128 誘電体層
130 金属コンタクト
132 SiCOH誘電体材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si、C、OおよびH原子を含み、共有結合性3次元ランダム網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である誘電体材料。
【請求項2】
F、NおよびGeのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項3】
前記材料中の全炭素原子のうちSi−R−Siとして結合されている炭素原子の割合が0.01から0.99である、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項4】
緻密(dense)または多孔質材料であり、乾燥した環境で約6J/m超の皮膜引張強さを有し、約3.2未満の誘電率を有する、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項5】
緻密または多孔質材料であり、乾燥した環境で約3J/m超の皮膜引張強さを有し、約2.5未満の誘電率を有する、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項6】
緻密または多孔質材料であり、水圧1570Pa、25℃で約3J/m超の皮膜引張強さを有し、約3.2未満の誘電率を有する、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項7】
緻密または多孔質材料であり、水圧1570Pa、25℃で約2.1J/m超の皮膜引張強さを有し、約2.5未満の誘電率を有する、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項8】
図2または3の陰影のついた領域にある皮膜引張強さを有する、請求項1に記載の誘電体材料。
【請求項9】
基板上に位置し、少なくとも1つの誘電体材料を含む相互接続構造であって、前記少なくとも1つの誘電体材料が、少なくともSi、C、O、H原子を含み、共有結合性3次元網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である相互接続構造。
【請求項10】
前記誘電体材料が、F、NおよびGeのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項11】
前記誘電体材料中の全炭素原子のうちSi−R−Siとして結合されている炭素原子の割合が0.01から0.99である、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項12】
前記誘電体材料が多孔質または緻密材料であり、約6J/m超の皮膜引張強さおよび約3.2未満の誘電率を有する、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項13】
前記誘電体材料が多孔質または緻密材料であり、約3J/m超の皮膜引張強さおよび約2.5未満の誘電率を有する、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項14】
前記誘電体材料が多孔質または緻密材料であり、水圧1570Pa、25℃で約3J/m超の皮膜引張強さを有し、約3.2未満の誘電率を有する、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項15】
前記誘電体材料が緻密または多孔質材料であり、水圧1570Pa、25℃で約2.1J/m超の皮膜引張強さを有し、約2.5未満の誘電率を有する、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項16】
前記誘電体材料が、図2または3の陰影のついた領域にある皮膜引張強さを有する、請求項9に記載の相互接続構造。
【請求項17】
少なくとも2つの金属導体要素と絶縁誘電体とを含む電子構造であって、前記誘電体が、少なくとも原子Si、C、O、Hからなり、共有結合性3次元網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である電子構造。
【請求項18】
前記少なくとも2つの金属導体要素が、受動または能動回路要素の機能のために必要な形状にパターニングされている、請求項17に記載の電子構造。
【請求項19】
前記受動または能動回路要素が、インダクタ、抵抗器、コンデンサおよび共振器のうちの1つを含む、請求項18に記載の電子構造。
【請求項20】
絶縁誘電体によって取り囲まれた電子センシング構造であって、前記誘電体が、少なくとも原子Si、C、O、Hからなり、共有結合性3次元網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である電子センシング構造。
【請求項21】
SiCOH誘電体材料を製作する方法であって、
基板をリアクタの中に置くステップと、
Si、C、OおよびH原子を含み、カルボシランまたはアルコキシカルボシラン分子を含む少なくとも1つの第1の前駆体を準備するステップと、
3.2以下の誘電率を有するSiCOH誘電体を形成するのに有効な条件を選択することによって、前記第1の前駆体に由来する誘電膜を前記基板上に付着させるステップと
を含み、前記誘電膜が、少なくともSi、C、O、H原子を含み、共有結合性3次元網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である
方法。
【請求項22】
前記第1の前駆体が環状カルボシラン分子であり、前記分子の環状部分を形成する結合が、Si−CH−Si結合と少なくとも1つのSi結合を両方ともに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の前駆体が、ジシラシクロオクタン、テトラシラシクロオクタン、ジシラシクロヘキサンまたはシラシクロヘキサンの誘導体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の前駆体が、オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサンのうちの1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の前駆体にポーロゲン前駆体を加えるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記付着させた誘電膜を、熱エネルギー源、UV光、電子ビーム、化学物質、マイクロ波またはプラズマを含む、少なくとも1つのエネルギー源で処理するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つのエネルギー源が、パルス光でもまたは連続光でもよいUV光であり、前記処理ステップが、300〜450℃の基板温度で、150〜370nmの少なくとも1つのUV波長を含む光を用いて実行される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記供給ステップと前記付着ステップの間に前記リアクタにエネルギー源を適用するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
不活性気体と酸化剤のうちの少なくとも一方を前記第1の前駆体に加えるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の前駆体が、オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラヒドリド−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジヒドリド−1,3−ジシリルシクロブタン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサヒドリド−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,3,5−トリシラン、1,1,1,3,3,3−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラプロパン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1−メチル−1,3−ジシラブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサヒドリド−1,3−ジシラプロパン、3−(1,1−ジメトキシ−1−シラエチル)−1,4,4−トリメトキシ−1−メチル−1,4−ジシルペンタン、メトキシメタン、2−(ジメトキシシラメチル)−1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラブタン、メトキシメタン、1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラ−2−(トリメトキシシリルメチル)ブタン、ジメトキシメタン、メトキシメタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラヘキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシリルブタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサヒドリド−1,4−ジシラブタン、1,1,4,4−テトラメトキシ(エトキシ)−1,4−ジメチル−1,4−ジシラブタン、1,4−ビス−トリメトキシ(エトキシ)シリルベンゼン、1,4−ビス−ジメトキシメチルシリルベンゼン、1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼン,1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−エン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−イン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシロラン、1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロラン、1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ(エトキシ)−1,3−ジメチル−1,3−ジシラン、1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラン、1,1−ジメトキシ(エトキシ)−3,3−ジメチル−1−プロピル−3−シラブタンおよび2−シラプロパンからなるグループから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の前駆体が、1,1,3,3−テトラヒドリド−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジシラシクロブタン、1,3−ジメチル−1,3−ジヒドリド−1,3−ジシリルシクロブタン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシラシクロブタン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサヒドリド−1,3,5−トリシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,3,5−トリシラン、1,1,1,3,3,3−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラプロパン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1−メチル−1,3−ジシラブタン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジシラプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサヒドリド−1,3−ジシラプロパン、3−(1,1−ジメトキシ−1−シラエチル)−1,4,4−トリメトキシ−1−メチル−1,4−ジシルペンタン、メトキシメタン、2−(ジメトキシシラメチル)−1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラブタン、メトキシメタン、1,1,4−トリメトキシ−1,4−ジシラ−2−(トリメトキシシリルメチル)ブタン、ジメトキシメタン、メトキシメタン、1,1,1,5,5,5−ヘキサメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラヘキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,5−ジシラペンタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシリルブタン、1,1,1,4,4,4−ヘキサヒドリド−1,4−ジシラブタン、1,1,4,4−テトラメトキシ(エトキシ)−1,4−ジメチル−1,4−ジシラブタン、1,4−ビス−トリメトキシ(エトキシ)シリルベンゼン、1,4−ビス−ジメトキシメチルシリルベンゼン、1,4−ビス−トリヒドロシリルベンゼン,1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−エン、1,1,1,4,4,4−ヘキサメトキシ(エトキシ)−1,4−ジシラブト−2−イン、1,1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシロラン、1,3−ジシロラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロラン、1,3,3−テトラメトキシ(エトキシ)−1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ(エトキシ)−1,3−ジメチル−1,3−ジシラン、1,3−ジシラン、1,3−ジメトキシ−1,3−ジシラン、1,1−ジメトキシ(エトキシ)−3,3−ジメチル−1−プロピル−3−シラブタンおよび2−シラプロパンからなるグループから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記付着させた誘電膜を、熱エネルギー源、UV光、電子ビーム、化学物質、マイクロ波またはプラズマを含む、少なくとも1つのエネルギー源で処理するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのエネルギー源が、パルス光でもまたは連続光でもよいUV光であり、前記ステップが、300〜450℃の基板温度で、150〜370nmの少なくとも1つのUV波長を含む光を用いて実行される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの第1の前駆体を供給する前に前記基板の温度を調整するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記供給ステップと前記付着ステップの間に前記リアクタにエネルギー源を適用するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
C、H原子を含み、任意選択でO、FまたはNおよびGeのうちの少なくとも1つを含む第2の前駆体を提供するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
付着の前にポーロゲン前駆体を前記第1の前駆体に加えるステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
付着の前に不活性気体と酸化剤のうちの少なくとも一方を前記第1の前駆体に加えるステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
Si、C、OおよびH原子からなり、ジエトキシメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペント−3−エン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エポキシヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサビニルジシロキサン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、ビニルメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルペンタメチルジシロキサン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランからなるグループから選択された第2の前駆体を提供するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
SiCOH誘電体材料を製作する方法であって、
基板をリアクタの中に置くステップと、
Si、C、OおよびH原子を含む少なくとも1つの第1の前駆体を準備するステップであって、前記第1の前駆体が環状カルボシラン分子を含み、前記環を形成する結合が、Si-CH−Si結合と少なくとも1つのSi結合を両方ともに含むステップと、
3.2以下の誘電率を有するSiCOH誘電体を準備するのに有効な条件を選択することによって、前記第1の前駆体に由来する誘電膜を前記基板上に付着させるステップと
を含み、前記誘電膜が、少なくともSi、C、O、H原子を含み、共有結合性3次元網目構造を有し、前記C原子の一部分がSi−CH官能基として結合されており、前記C原子の別の部分がSi−R−Siとして結合されており、Rが、フェニル、−[CH−(nは1以上)、HC=CH、C=CH、C≡Cまたは[S]結合(nは先に定義したとおり)である
方法。
【請求項41】
前記第1の前駆体が、オクタメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,5−ジシロキサン−3,7−ジシラシクロオクタン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラシラシクロオクタン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1,3−ジシロキサン−5−シラシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチル−1−シロキサン−3,5−ジシラシクロヘキサンのうちの1つを含む、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−216541(P2006−216541A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13182(P2006−13182)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】