説明

路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラム

【課題】不要な送信を未然に回避して通信負荷を格段と軽減し得ると共に、所望する情報を的確に収集して正確な環境状態を把握することができる路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】車両2とセンター3とが互いに通信可能に接続され、センター3が車両2から送信される車両情報を受信して蓄積する路車間通信システム1であって、車両2の状態を検知する車両状態検知手段21dと、前記車両状態検知手段21dによって検知された検知結果が予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信部21fと、を備える前記車両2に搭載された車載機21と、前記車両情報を送信した車両2の周辺に存在する車両2に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令手段と、を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、運転者が入力した目的地を含む探索条件と、GPS(Global Positioning System:全地球方位システム)により検出した又はINS(Inertial Navigation System:慣性航法システム)により計算した車両の位置とに基づいて走行予定経路を探索して運転者に案内し、利便性を高めるために運転補助を行うシステムとして、カーナビゲーションシステムが搭載される場合が多い。このようなカーナビゲーションシステムにおいては、運転者に経路に関する情報を案内するにあたり、ディスプレイや音声による案内が行われている。
【0003】
一方、地球温暖化が深刻な問題となっている昨今、少しでも温暖化を防止するべく、該温暖化を促進する温室効果ガスの主役である二酸化炭素(CO)の排出量を削減する動きが世界的に広まってきている。そして、近年では、COの排出権の取引などを通じて経済的価値を有するようになってきており、当該COの排出量および削減量をできるだけ正確に算定する手法が望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているカーナビゲーションシステムにおいては、経路案内を受けて目的地まで適切な経路に沿って走行した場合の車両における排気ガス排出量と、経路案内を受けずに目的地まで平均的な移動経路で走行した場合の車両における排気ガス排出量とにおける排気ガス排出量の差異を算定することによって、経路案内を受けて走行した場合の排気ガス中における有害物質の削減量を算定する技術が提案されている。ここで、適切な経路とは、そのときの道路状況(例えば、道路工事や渋滞など)を考慮して選出される目的地まで最短となる走行距離の経路および最短となる走行時間の経路のことを指す。
【0005】
そして、かかるカーナビゲーションシステムでは、個々の車両が排出する排気ガスの排出量を、予め定められた時間又は距離毎に検知(測定)し、この測定結果をセンターに対して送信し、該センターにおいて各車両における実際の排気ガスの排出量に基づいて、車両が経路案内を受けて走行した場合における排気ガス中に含まれる有害物質(とりわけ、CO)の削減量を迅速かつ正確に算定するようになっている。
【特許文献1】特開2003−316884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるカーナビゲーションシステムでは、予め定められた時間または距離毎のタイミングで、排気ガスの排出量を測定してセンターに送信しているため、例えば、交差点や、上り坂または下り坂などの道路事情を考慮した通信を行っていない。従って、交差点同士の間隔が短い市街地と、交差点同士の間隔が長い郊外とのように、ベースとなる環境(道路事情)が異なる場合においても一様に所定の時間や距離毎に測定するため、車両からセンターへ送信される車両情報としては、センターにとって、収集したいデータ以外の情報、言い換えれば不要な情報までもが送信されてしまう。この結果、不要な情報の送信によって通信に負荷が掛かる問題があった。
【0007】
また、かかるカーナビゲーションシステム場合、車両から送信される車両情報に基づいて、地域毎に環境悪化度合いを把握することができるものの、道路事情を配慮することなく、所定時間・所定距離毎に検知結果を送信するように設定されているため、例えば上り坂の道路を走行した際に排出した排気ガス中において、必然的にCO排出量が増してしまうことも、平坦な道路を一般的な状態で走行した場合の上記排出量と一律の条件で判断され、無駄な走行と認識される可能性がある。これでは、正確な環境悪化度合いを把握することが困難である。
【0008】
ところで、車両から送信される車両情報(少なくとも位置情報と、排気ガスに関する情報)に基づいた環境悪化度合いにより、特に市街地では排気ガスの排出量の多い区域を選出することによって、当該区域が交通量の多いポイントであることが推測され、また、ある時刻にある区域において排気ガスの排出量が多い場合、当該区域が当該時点で混雑、すなわち渋滞していることが推測される。つまり、車両から送信される車両情報によって、車両の交通量や渋滞状況および、これら車両による大気汚染度合いなどの状態(以下、これらを総じて環境状態と称する)を把握することができる。そして、このような環境状態は、カーナビゲーションシステムの道路情報として活用することもできると考えられる。
【0009】
ところが、かかるカーナビゲーションシステムでは、上述したタイミングで車両情報の送信を行うため、例えば、送信タイミングを市街地ベースで設定、すなわち市街地における交差点間隔に基づいた時間または距離で設定したとしても、郊外においては、交差点とは無縁な何の変哲も無い直進する道路であったり、曲がりくねった道路、いわゆるワインディングロードであったりする場合もあり、必ずしも交通量や渋滞に関係する情報となるとは限らない、すなわち、センターが所望する情報とはなり難い可能性がある。
【0010】
従って、送信タイミング(情報を送信するための条件、すなわち、送信条件)を、必要に応じて適宜変更するようにして、例えば、ある地域の環境悪化(大気汚染)度合いが高いような場合、車両における排気ガスの排出量が規定値以上となることを送信条件として設定し、且つ周辺に前述した条件を満たす車両が存在する場合、当該条件を満たす車両周辺の他車両からも送信するように設定できれば、当該地域に位置する車両はもとより、周辺に位置する他車両からも環境に関する、すなわち排気ガスに関係する情報を含む車両情報を、上記条件に基づいてセンターに送信することができると考えられる。これにより、当該送信される車両情報の中身としては、センターで掌握したい所望のデータで構成され、この車両情報を検知結果データとして、センター主体で収集することができるため、正確な環境悪化度合いを把握することができると共に、該環境悪化度合いが高い地域ほど交通量が多くひいては渋滞を招く場所であることを把握することができると考えられる。
【0011】
このとき、収集するデータの中身や送信タイミング等を条件で制約するようにすれば、センターの所望するデータを的確に収集することができると考えられる。例えば、データの数を増やしたいときは、検知対象とする車両を増やしたり、送信ポイントを増やしたりする等のように条件を変更すればよい。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、不要な送信を未然に回避して通信負荷を格段と軽減し得ると共に、所望する情報を的確に収集して正確な環境状態を把握することが可能な路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明における一態様は、車両とセンターとが互いに通信可能に接続され、前記センターが前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積する路車間通信システムであって、前記車両の状態を検知する車両状態検知手段と、前記車両状態検知手段によって検知された検知結果が予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信手段と、を備える前記車両に搭載された車載機と、前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令手段と、を有するようにした。
【0014】
これにより、本発明の一態様によれば、車両状態検知手段によって検知される検知結果のうち、所定条件を満たした検知結果のみが車両情報としてセンターに送信されるため、例えば必要な事象が生じた場合、該事象に応じて所定条件を設定することにより、必要な事象に関する情報のみを車両情報として送信させることができる。これにより、必要な事象に関する情報(車両情報)の送信(通信)頻度を高めることができると共に、所定条件を満たさない不要な情報の送信を未然に回避することができる。すなわち、必要な事象が生じない限りは通信頻度が高まらないので、通信負荷を格段と軽減することができる。従って、センターは送信される車両情報を受信することによって、所望する情報を的確に収集することができ、当該収集した車両情報に基づき、正確な環境状態(車両の交通量や渋滞状況および、当該車両による大気汚染度合いなどの状態)を把握することができる。
【0015】
また、所定条件を満たした、すなわち、必要な事象に関する車両情報を送信した車両の周辺に存在する車両(言い換えれば、他車両)からも同様に、必要な事象に関する車両情報を収集することができるため、当該事象に関する車両情報をより一層多く収集することができる上、当初、車両情報を送信した車両における周辺の環境状態をより詳しく把握することができる。
【0016】
しかも、本発明の一態様において、前記情報送信指令手段は、前記センター側に設けられることが望ましい。これにより、必要な事象に関する車両情報をセンター主体で収集することができる。
【0017】
また、本発明の一態様において、前記送信手段は、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両状態検知手段による前記検知結果が前記所定条件を満たしていない状態であっても、当該検知結果を前記車両情報として送信するようにした。これにより、所定の地点毎に車両から車両情報が送信されるため、センターは車両が車両情報を送信した各地点(言わば送信地点)における道路事情を把握することができる。従って、当該送信地点(言い換えれば、送信タイミング)として、例えば交差点(交差点到達時)を選定(設定)すれば、送信される車両情報に基づいて、当該所定の地点である各交差点における交通量、渋滞状況などに関する交通状態を含む道路事情を把握することができる利点がある。
【0018】
さらに、本発明の一態様において、前記車両は、自車両の位置を検出する位置検出手段を有し、前記車両情報は、該位置検出手段の検出結果に基づく位置情報を含み、前記送信手段は、前記センターから前記車両情報を送信するように促す指令を受けた場合、前記車両の位置が前記所定の地点とは異なる地点であっても前記車両情報を送信するようにした。これにより、ある車両が必要な事象に関する車両情報を送信し、センターが当該送信された車両情報に基づき、該車両情報を送信した車両の周辺に位置する車両(他車両)からも車両情報(すなわち、必要な事象に関する情報)を収集したい場合、前記他車両の位置が所定の地点とは異なる地点であっても、つまり、所定の地点に到達していなくても車両情報を送信することができるため、所望する(必要な)事象の情報をより多く収集することができる。言い換えれば、必要な事象の情報の通信頻度をより一段と高めることができる。従って、当初車両情報を送信した車両の位置する周辺地域の環境状態を詳しく把握することが可能となる。
【0019】
しかも、本発明の一態様において、前記車両情報が、前記車両の排出する排気ガスに関する情報を含むことが好ましい。これにより、車両情報を送信した車両の位置する地域の大気汚染度合い(環境悪化度合い)を把握することができる。
【0020】
さらに、本発明の一態様において、前記排気ガスが、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物のいずれかを含むことが好ましい。これにより、排気ガス中に含まれる有害物質(二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物)の排出量を把握することができるため、これら有害物質による環境への影響(大気汚染度合い)も把握することができると共に、これら有害物質の削減量を正確に算出することも可能となる。とりわけ、二酸化炭素(CO)に関しては、COの削減量を正確に算出することが可能となるため、COの排出権の取引など将来的な利用価値を付加することができる。
【0021】
また、本発明の一態様において、センターと通信可能に接続され、前記センターに対し車両情報を送信するために車両に搭載される車載機であって、前記車両の状態を検知する車両状態検知手段と、前記車両状態検知手段によって検知された検知結果が予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を車両情報として送信する送信手段とを有し、前記送信手段は、外部から当該車両情報を送信するように促す情報送信指令を受けると、前記車両情報を送信するようにした。
【0022】
従って、本発明の一態様によれば、車両状態検知手段によって検知される検知結果のうち、所定条件を満たした検知結果のみが車両情報としてセンターに送信されるため、例えば必要な事象が生じた場合、該事象に応じて所定条件を設定することにより、必要な事象に関する情報のみを車両情報として送信させることができる。これにより、必要な事象に関する情報(車両情報)の送信(通信)頻度を高めることができると共に、所定条件を満たさない不要な情報の送信を未然に回避することができる。すなわち、必要な事象が生じない限りは通信頻度が高まらないので、通信負荷を格段と軽減することができる。また、所定条件を満たした、すなわち、必要な事象に関する車両情報を送信した車両の周辺に存在する車両(言い換えれば、他車両)からも同様に、必要な事象に関する車両情報を送信することができるため、センターに対し、当該事象に関する車両情報をより一層多く収集させることができる上、当初、車両情報を送信した車両における周辺の環境状態をより詳しく把握させることができる。
【0023】
しかも、本発明の一態様において、前記送信手段は、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両状態検知手段による前記検知結果が前記所定条件を満たしていない状態であっても、当該検知結果を前記車両情報として送信するようにしたことにより、車両が前記所定の地点に到達する毎に車両情報を送信するため、センターに対し、車両情報を送信した各地点(言わば送信地点)の道路事情に関する情報を提供することができる。従って、当該送信地点(言い換えれば、送信タイミング)として、例えば交差点(交差点到達時)を選定(設定)すれば、送信する車両情報に基づいて、当該送信地点である各交差点における交通量、渋滞状況などに関する交通状態を含む環境情報を提供することができる利点がある。
【0024】
さらに、本発明の一態様において、車両と通信可能に接続され、前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積するセンターであって、前記車両において検知された当該車両の状態の検知結果が、予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果が車両情報として送信されると共に、前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令手段を有するようにした。
【0025】
従って、本発明の一態様によれば、車両にて検知される検知結果のうち、所定条件を満たした検知結果のみが車両情報として送信されるため、例えば必要な事象が生じた場合、該事象に応じて所定条件を設定することにより、必要な事象に関する情報のみを車両情報として受信することができる。これにより、必要な事象に関する情報(車両情報)をより多く受信できる、言い換えれば、所望する車両情報の送信(通信)頻度を高めることができると共に、所定条件を満たさない不要な情報の送信を未然に回避することができる。すなわち、必要な事象が生じない限りは通信頻度が高まらないので、通信負荷を格段と軽減することができる。従って、送信される車両情報を受信することにより、所望する情報を的確に収集することができ、当該収集した車両情報に基づき、正確な環境状態(車両の交通量や渋滞状況および、当該車両による大気汚染度合いなどの状態)を把握することができる。
【0026】
また、情報送信指令手段を有するため、所定条件を満たした、すなわち、必要な事象に関する車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両からも同様に、必要な事象に関する車両情報を収集することができ、当該事象に関する車両情報をより一層多く収集することができる上、当初、車両情報を送信した車両における周辺の環境状態をより詳しく把握することができる。言うなれば、前記情報送信指令手段がセンター側に設けられることにより、必要な事象に関する車両情報をセンター主体で収集することができる。
【0027】
また、本発明の一態様において、車両とセンターとが互いに通信可能に接続され、前記車両が前記センターに車両情報を送信し、前記センターが前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積する路車間通信方法であって、前記車両の状態を検知する車両状態検知工程と、該車両状態検知工程にて検知された検知結果が、予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信工程と、前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令工程と、を有するようにした。
【0028】
従って、本発明の一態様によれば、車両にて検知される検知結果のうち、所定条件を満たした検知結果のみが車両情報として送信されるため、例えば必要な事象が生じた場合、該事象に応じて所定条件を設定することにより、必要な事象に関する情報のみを車両情報として送信させることができる。これにより、必要な事象に関する情報(車両情報)をより多く収集することができる。言い換えれば、所望する車両情報の送信(通信)頻度を高めることができると共に、所定条件を満たさない不要な情報の送信を未然に回避することができる。すなわち、必要な事象が生じない限りは通信頻度が高まらないので、通信負荷を格段と軽減することができる。従って、送信される車両情報を受信することにより、所望する情報を的確に収集することができ、当該収集した車両情報に基づき、正確な環境状態(車両の交通量や渋滞状況および、当該車両による大気汚染度合いなどの状態)を把握することができる。
【0029】
さらには、所定条件を満たした、すなわち、必要な事象に関する車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両からも同様に、必要な事象に関する車両情報を収集することができ、当該事象に関する車両情報をより一層多く収集することができる上、当初、車両情報を送信した車両における周辺の環境状態をより詳しく把握することができる。
【0030】
しかも、本発明の一態様によれば、前記情報送信指令工程は、前記センター側にて実行されることが好ましい。これにより、必要な事象に関する車両情報をセンター主体で収集することができる。
【0031】
また、本発明の一態様において、前記送信工程においては、前記車両状態検知工程にて検知された検知結果が、前記所定条件を満たしていない状態であっても、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両情報を送信することが好ましい。これにより、所定の地点毎に車両から車両情報が送信されるため、センターは車両が前記車両情報を送信した各地点(言うなれば送信地点)における道路事情を把握することができる。従って、当該送信地点(言い換えれば、送信タイミング)として、例えば交差点(交差点到達時)を選定(設定)すれば、送信される車両情報に基づいて、当該送信地点である各交差点における交通量、渋滞状況などに関する交通状態を含む道路事情を把握することができる利点がある。
【0032】
しかも、本発明の一態様において、前記車両の位置を検出する自車両位置検出工程を有し、前記車両情報は当該自車両位置検出工程における検出結果に基づく位置情報を含み、前記送信工程において、前記センターから前記車両情報を送信するように促す指令を受けた場合、前記車両の位置が前記所定の地点とは異なる地点であっても前記車両情報を送信することが好ましい。これにより、ある車両が必要な事象に関する車両情報を送信し、センターが当該送信された車両情報に基づき、該車両情報を送信した車両の周辺に位置する他車両からも車両情報(すなわち、必要な事象に関する情報)を収集したい場合、前記他車両が所定の送信地点に到達していなくても車両情報を送信することができるため、所望する(必要な)事象の情報の通信頻度をより一段と高めることができる。従って、当初車両情報を送信した車両の位置する周辺地域の環境状態を詳しく把握することが可能となる。
【0033】
また、本発明の一態様において、上述した方法のいずれかをコンピュータに実行させることが好ましい。従って、本発明の一態様によれば、上述した作用を有するコンピュータプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、車両状態検知手段によって検知される検知結果のうち、所定条件を満たした検知結果のみが車両情報としてセンターに送信されるため、所定条件を満たさない不要な情報の送信を未然に回避することができる。従って、センターは送信される車両情報を受信することによって、所望する情報を的確に収集することができる。かくして、不要な送信を未然に回避して通信負荷を格段と軽減し得ると共に、所望する情報を的確に収集して正確な環境状態を把握することが可能な路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0036】
〔第1実施例〕
図1は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施例を示す模式図であり、図2は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施例における車両側の構成を示す模式図である。図3は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施形態に適用される測定区間の具体例を示す模式図である。
【0037】
さらに、図4は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施形態におけるデータの具体例を示す模式図であり、図5は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施形態の路側の構成を示す模式図である。図6は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施形態に適用される経路及び測定区間、蓄積される排出量のデータの具体例を示す模式図である。
【0038】
図1に示すように、本実施例における路車間通信システム1は、複数の車両2に備えられる車載機を構成するカーナビゲーションECU(Electronic Control Unit)21と、センター3に備えられた情報送信指令手段であるサーバ31と、基地局4とを備えて構成される。サーバ31と、基地局4とは、ネットワークNWを介して接続されると共に、カーナビゲーションECU21は、ネットワークNWに接続された基地局4と無線または有線で通信可能に構成されている。
【0039】
このネットワークNWは、例えば、公衆電話交換網(PSTN)やデジタル通信ネットワーク(ISDN)、光ファイバ等の有線、または、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、衛星電話、ビーコン等の無線にて構成されるものである。
【0040】
なお、このネットワークNWによる、サーバ31およびカーナビゲーションECU21間の通信は、PPPプロトコル(Point to Point Protocol)に従うものであり、PPPプロトコルによって相互間でデータリンクを確立し、上位層であるTCP/IPプロトコル(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、TCP/IPと上位互換であるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)を実現するものであって、インターネットやWAN(Wide Area Network)を構築して、サーバ31とカーナビゲーションECU21との間におけるデータの送受信を可能とするものである。
【0041】
次に車両2側のカーナビゲーションECU21について図を用いて詳細に説明する。図2は、路車間通信システム1の一部をなすカーナビゲーションECU21の一実施例を示す模式図である。
【0042】
図2に示すように、カーナビゲーションECU21には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)アンテナ5と、ヨーレートセンサ6と、ステアリングセンサ7と、受信機8と、データベース9と、ディスプレイ10と、図示しないエンジンのエギゾーストマニホールド内に設置されてCO、NO、SO等の排気ガス内の有害物質濃度を検出する排気ガスセンサ11が接続されている。ここで、ヨーレートセンサ6と、ステアリングセンサ7と、排気ガスセンサ11とは、当該車両2の状態を検知する車両状態検知手段を構成している。
【0043】
さらに、カーナビゲーションECU21には、エンジンECU12と、ABS(Anti Lock Brake System)13と、送信手段である通信装置14がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続されている。
【0044】
カーナビゲーションECU21は、例えばCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索部21a、表示部21b、設定部21c、測定部21d、演算部21e、送信部21fとして機能するものである。
【0045】
GPSアンテナ5は、地球上空に打ち上げられた複数の衛星のうち3つの衛星からの電波を受信する。そして、これら衛星の電波をもとに、カーナビゲーションECU21の位置検出手段である探索部21aは、例えば三角測量の原理で車両2の位置する現在位置P、つまりは経度と緯度を測定するようになっている。なお、かかる探索部21aは、上記経度と緯度に加え高度も測定する場合には、4つの衛星を用いるようになっている。
【0046】
ここで、ヨーレートセンサ6は、車両2のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ7は、車両2の図示しない操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。データベース9は、CD−ROM、DVD−ROMやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報とを格納し記憶していると共に、測定部21dが測定した排気ガスに関する情報も記憶するようになっている。
【0047】
また、ディスプレイ10は、いわゆるタッチパネル式で構成され、運転者が目的地Pgや、高速道路の使用の有無、最短距離または最短時間などのいずれを選択する場合や、その他種々の探索条件を入力する際の入力装置としても機能するものである。これと共に、ディスプレイ10は、運転者により入力された目的地Pgと探索条件をもとにカーナビゲーションECU21の探索部21aが探索用の地図情報に基づいて探索した経路に関する情報を、カーナビゲーションECU21の表示部21bの指令に基づき表示用の地図情報とともに表示する機能も有している。
【0048】
また、ABS13は、制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから測定しており、測定した車速をABS13からCAN等の通信規格により、カーナビゲーションECU21に対して伝送している。
【0049】
さらに、受信機8は光または電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム(登録商標))から送信される渋滞情報を含む道路情報を受信する。
【0050】
このように、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、ABS13から測定した車速、ヨーレートセンサ6が検出したヨーレートおよびステアリングセンサ7が検出した操舵角をもとに、車両2の移動距離と方向を計算して車両2の現在位置PをINS(Inertial Navigation System:慣性航法システム)により測定するようになっている。従って、例えば車両2が、高層ビルの合間やトンネル内に位置することに起因して、GPSアンテナ5による衛星からの電波の受信が困難な場合、上記探索部21aが上述のようにして当該車両2の現在位置Pを補完する。
【0051】
そして、カーナビゲーションECU21の表示部21bは、データベース9内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した車両2の位置する現在位置Pと、タッチパネル、すなわちディスプレイ10により入力された目的地Pgと、探索部21aにより探索された経路に関する情報とを併せてディスプレイ10に表示する。
【0052】
ここで、エンジンECU12は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、図示しないエンジンの燃料噴射量、スロットル開度、バルブリフト量、バルブタイミング、エンジン回転数等を制御すると共に、これらの制御情報をカーナビゲーションECU21の測定部21dにCANを介して送信するようになされている。
【0053】
さらに、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、後述するセンター3からの指示に基づき、車両状態検知手段の一つである測定部21dが測定する排気ガスの排出量に予め所定条件として閾値を定める。このとき、センター3からの指示は、センター3において必要な事象が生じた場合に行われ、この指示によって定められる条件により、後にセンター3に送信される車両情報は、センター3の所望する(すなわち、必要な事象に関する)情報に絞り込まれる、言い換えれば、不要な内容の車両情報の送信頻度を下げ、必要な内容の車両情報の送信頻度を高めるようになっている。
【0054】
また、この設定部21cは、例えば車両の現在位置Pが、探索手段21aが探索した経路上の直近の交差点Pxに到達すると、この直近の交差点Pxに対して経路上において隣接する交差点Px+1とを結ぶ道路を、測定区間Zxに設定する。例えば経路が図3に示すようなものであった場合に、交差点P1に到達すると設定部21cは、交差点P1と経路上において隣接する交差点P2とを結ぶ道路を測定区間Z1に設定する。同様に、交差点P2に到達すると、交差点P2と経路上隣接する図示しない交差点P3とを結ぶ道路を測定区間Z2に設定し、交差点Pn−1に到達すると、交差点Pn−1と経路上隣接する交差点Pnとを結ぶ道路を測定区間Zn−1に設定する。
【0055】
これに加えて、カーナビゲーションECU21の測定部21dは、排気ガスセンサ11の検出結果とエンジンECU12がCANにより送信した制御情報を、車両の排出する排気ガスに関する情報として、設定部21cによって設定された測定区間毎に車上において実際にかつ連続的に測定する。
【0056】
さらに、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、排気ガスセンサ11の検出結果すなわち排気ガスの濃度に、予め定められる単位時間内のエンジンの排気量を乗じた値を、該当する測定区間Zxを車両が走行する時間により積分して、それぞれの測定区間における車両の排気ガスの排出量Vxを直接的に演算するとともに、エンジンECU12からCANにより送信された制御情報に基づいて予め定められた理論式により間接的に排気ガスの排出量Vx、より詳しくは、排気ガス中の有害物質である二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)の排出量(とりわけ本実施例では、COの排出量)を演算する。
【0057】
なお、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、排気ガスの排出量Vxとして、排気ガスセンサ11が正常動作である場合には、前者の排気ガスセンサ11の検出結果に基づいて直接的に演算した排気ガスの排出量Vxを用い、排気ガスセンサ11がフェールしている場合には、後者の理論式に基づく排気ガスの排出量Vxを用いる。
【0058】
加えて、カーナビゲーションECU21の送信部21fは、車両毎に定められた送信元IDと、送信先IDと、排気ガスの排出量Vxと、該当する測定区間Zxおよび測定区間を構成する隣接する交差点Px、Px+1のそれぞれの位置、隣接する交差点Px、Px+1、すなわち始端および終端を通過した時刻Tx、Tx+1を含む、図4に示すようなデータを、測定区間の終端に位置する交差点Px+1に車両の現在位置Pが一致して車両が終端に位置する交差点Px+1を通過した時点において、CANおよび通信装置14、並びに、基地局4およびネットワークを介して、センター3のサーバ31に送信する。
【0059】
ここで、上記車両が測定区間の終端に位置する地点Px+1を通過し、上記車両情報を送信するタイミングをより具体的に説明すると、測定区間の終端に位置する地点Px+1に、当該車両の現在位置Pが一致して、該車両が終端に位置する地点Px+1を通過した時点であり、このタイミングで上記車両情報を送信する。このとき、上記車両情報は、上記所定の条件を満たした場合にのみ送信されることにより、センター3において受信する車両情報は、必要な事象に関する内容、言い換えれば、センター3の所望する車両情報となっている。これにより、かかる路車間通信システム1では、必要な事象に関する情報以外の車両情報が送信されることを未然に回避することができるため、通信負荷を格段と軽減することができる。
【0060】
次に、センター3のサーバ31について、図を用いて詳細に説明する。図5は、本発明にかかる路車間通信システム1の一部をなすセンター3のサーバ31を示す模式図である。サーバ31は、本発明にかかる路車間通信システム1の一部を構成するセンター3における制御を実行するようになっている。
【0061】
図5に示すように、サーバ31は、CPU71と、主記憶装置72と、HDDなどの記憶装置73と、表示装置74と、入力装置75と、ドライブ装置76および通信装置77を備え、それぞれバスで相互に接続されて構成されている。
【0062】
ここで、CPU71は、OSやアプリケーションなどのプログラムを記憶装置73から読み込んで実行することで種々の機能を提供すると共に、サーバ31が行う処理を統括的に制御する。主記憶装置72はRAMにより構成され、OSやプログラム、データを一時的に保管する作業領域を構成している。
【0063】
さらに、記憶装置73は、HDDやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、OS、プログラム、車両毎の送信元IDおよびカーナビゲーションECU21から送信され、基地局4、ネットワークおよび通信装置77を介して受信された、各車両の上記測定区間毎における排気ガスの排出量Vxを含む車両情報を蓄積している。
【0064】
なお、HDDにはデータベース9に記憶され、カーナビゲーションECU21が用いる探索用の地図情報と同一の地図情報(道路ネットワークデータ)が予め記憶されており、一定期間内において蓄積された排出量Vxを含むデータを、データの含む測定区間Zxつまりは始端Pxと終端Px+1との照合に基づいて、格納する。
【0065】
具体的に、例えば図6(a)のような経路に対応させて設定された、図6(b)に示すような測定区間Zx(x=1〜n−1)において、道路ネットワーク上の始端がPxであり終端がPx+1であるリンク毎割り当てて、リンク毎に図6(c)に示すような排出量Vxを合計して、一定期間内におけるリンク毎の排出量ΣZxを算出して、又は、車両毎に一定期間内の排出量Vxを合計して、一定期間内におけるリンク毎の排出量ΣVx又は車両毎の排出量ΣVxを示す排出量データベースが記憶される。
【0066】
また、表示装置74は、プログラムが指示する画面情報に基づくCPU71の指令により、所定の解像度や色数等で液晶などの図示しないディスプレイに描画するものであって、例えば、GUI(Graphical User Interface)画面を形成し、操作に必要な各種ウィンドウやデータ等をディスプレイに表示するようになっている。
【0067】
加えて、入力装置75はキーボードやマウスなどで構成され、様々な操作指示を入力するために用いられる。また、ドライブ装置76は記憶媒体78が挿入可能に構成されており、記憶媒体78に記憶されたデータを読み取って主記憶装置72等に送出するようになっている。また、通信装置77は、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続するためのインターフェースであり、例えばモデム、NIC(Network Interface Card)等で構成される。
【0068】
このような構成のもと、CPU71がプログラムを実行することで、サーバ31は、上述したカーナビゲーションECU21の送信部21fが通信装置14を介して送信したデータ(車両情報)を受信して、上記車両2が測定区間Zxの終端に位置する交差点Px+1を通過する時点Tx+1において、
この車両2における測定区間Zx毎の排気ガスの排出量Vxおよび当該車両2の位置情報が含まれるデータを記憶装置73内に測定区間Zx毎に収集して、測定区間Zxに対応する地図情報のリンクに割り当てる。
【0069】
すなわち、サーバ31は、データ(車両情報)を収集する収集機能と、データをリンクに割り当てる割当機能を有している。さらにCPU71は、蓄積されたデータを、一定期間内の車両毎の排出量ΣVxおよび道路毎の排出量ΣVxを統計処理により求めて、排出量データベースを作成し、記憶装置73内に格納するようになっている。
【0070】
これに加えて、本発明にかかる路車間通信システム1では、センター3に上述のように上記車両情報が送信され、当該センター3において、通信装置77によって受信した車両情報が、その時点で必要な事象の車両情報であると、CPU71が当該車両情報を送信した車両の周辺に位置する車両(他車両)に対し、上記車両情報を送信するように促す情報送信指令を与えるようになっている。
【0071】
すなわち、CPU71は、情報送信指令手段として機能するようになっている。これにより、路車間通信システム1は、所定条件である上記閾値を満たした、必要な事象に関する車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両からも同様に、必要な事象に関する車両情報を収集することができるため、当該事象に関する車両情報をより一層多く収集することができる上、当初、車両情報を送信した車両における周辺の環境状態をより詳しく把握することができる利点を有している。
【0072】
しかも、本実施例の場合、情報送信指令手段としてのCPU71は、センター3側のサーバ31に設けられる。これにより、センター3において上記必要な事象に関する車両情報を当該センター3が主体となって収集することができる。
【0073】
以下に、上述した本実施例における路車間通信システム1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図7は、本発明にかかる路車間通信システム1における特有の制御内容のひとつである車両情報送信処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、各ステップS1〜S15を便宜上、単にS1〜S15と称することをご理解願いたい。
【0074】
図7に示すように、かかる車両情報送信処理は、運転者の操作によって車両のイグニッションが「ON」状態になると処理を開始し、S1において、運転者がディスプレイ10により目的地Pgを含む探索条件を入力した後、S2において、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、車両の現在位置Pから目的地Pgまでの経路と、経路上のn個の交差点Px(x=1〜n:nは経路により定まる定数)を探索する。続いて、S3において、カーナビゲーションECU21の探索部21aはx=1に設定する。
【0075】
さらに、S4において、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、車両の現在位置Pを測定し、S5において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、Pxを始端としPx+1を終端とする道路を測定区間として設定Zxとしてする。つまり初回のルーチンにおいてはx=1であるので、P1を始端としP2を終端とする道路を測定区間Z1として設定する。
【0076】
つづいて、S6において、探索部21aは、車両がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Zxの始端Pxに到達して、PがPxに一致したかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Txを記憶して、S7に進み、カーナビゲーションECU21の測定部21dは、Px+1がPxに対して距離Dth以上離隔しているかを判定した上で、肯定である場合には、S8において、排気ガスに関する情報を車上において実際に測定し、否定である場合には、S9において、排気ガスに関する情報を距離Dth毎に分割して車上において実際に測定する。
【0077】
これにより、隣接する交差点Px、Px+1間の距離が長大となる地方や外国等において、排気ガスに関する情報の測定単位を適切なものとして、カーナビゲーションECU21の処理負荷を低減するとともに、長時間にわたり情報を測定し続けることによりノイズ等により測定エラーが発生することを防止している。S6において否定である場合には、S6の手前に戻って、処理を継続する。
【0078】
さらに、S10において、探索部21aは、車両がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Zxの終端Px+1に到達して、PがPx+1に一致したかどうかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Tx+1を記憶してS8又はS9において排気ガスに関する情報を測定部21dが車上において実際に測定することを終了して、S11に進んで、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、これらの情報およびエンジンの単位時間の排気量と時刻Tx+1から時刻Txを引いた測定区間Zxの走行時間を用いて、測定区間Zxにおける排気ガスの排出量Vxを演算して、S12に進む。
【0079】
S12において、カーナビゲーションECU21の送信部21fは、S11で演算部21eが演算した排出量Vxが予め定められた排出量の閾値Vth以上であるかを判定し、肯定の場合には、S13に進んでCAN、通信装置14、基地局4、ネットワークを介してセンター3のサーバ31に対して排出量Vxを含む、図4に示したようなデータを送信し、通信装置77が、このように各車両から送信された排出量Vxを含むデータを受信して、サーバ31はこれらの排出量Vxを含むデータを通信装置77から収集して蓄積し、測定区間Zxに対応するリンク毎に割り当ける。
【0080】
さらに、S14において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、x=nであるかどうかを判定し、否定である場合には、S15に進んで、x=x+1としてインクリメントして、S4からS13までの上述した処理を行い、S14において、x=nであるかの判定が肯定となるまでの間、S15およびS4乃至S13までの処理を繰り返して行う。これにより、経路上の交差点P1〜Pn全てに関して測定区間Zxが交差点Pxを始端とし隣接する交差点Px+1を終端として順次設定される設定ステップが実行される。
【0081】
さらに、それぞれの区間においてS8またはS9により排気ガスに関する情報が車上において実際に測定する測定ステップが実行され、S11において、排気ガスに関する情報と測定区間Zxを車両が走行する時間に基づいて、測定区間Zxにおける車両の排気ガスの排出量Vxを演算する演算ステップが実行される。S13において、測定区間Zxにおける車両の排気ガスの排出量Vxを収集する収集ステップおよびリンク毎に割り当ける割り当てステップが実行される。
【0082】
これらの制御内容により実現される本実施例の路車間通信システム1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、測定区間Zxにおいて各車上において実際に且つ連続的に測定した排気ガスに関する情報と、測定区間Zxを車両が走行する時間とに基づいて、演算部21eが測定区間Zxにおける車両の排気ガスの排出量Vxをより正確に演算することができる。
【0083】
これにより、センター3のサーバ31は、設定部21cにより設定された測定区間Zx毎に、異なる車両からそれぞれの車両の排気ガスの排出量Vxを含む所望のデータ(すなわち、必要な事象に関する情報)を各車両の演算部21eから、送信部21fおよび受信手段を構成する通信装置77を介して収集することができる。
【0084】
さらに、割り当て手段であるサーバ31において、収集されたデータを、道路ネットワーク上のリンク毎に割り当てて測定区間Zx毎に区分した上で、一定期間毎に測定区間Zx毎に合計して、測定区間Zx毎の排気ガスの排出量ΣVxを正確に演算することができる。
【0085】
このように、正確に求められた測定区間Zx毎の排気ガスの排出量ΣVxに基づいて、測定区間Zx毎の排出基準量を、適宜定められた係数を乗じてサーバ31が計算し策定して、この排出基準量に基づいて、目標排出削減量を定めることができる。なお、排出基準量の策定に用いられる係数は、測定区間Zx毎に個別具体的に決定される。
【0086】
また、測定区間Zx毎の排出量ΣVxを求めるにあたり、測定区間Zx毎の異なる車両の排気ガスの排出量Vxは、予めそれぞれの車両2の演算部21eにより既に求められており、収集手段であるサーバ31においては、これらの排出量Vxを測定区間Zx毎に区分して単に合計する処理を行えばよいので、従来技術のように、それぞれの車両2において測定された排出量の測定区間の始端と終端がそれぞれの車両2毎に異なることを回避することができる。これにより、排出量ΣVxを求めるにあたっての、路車間通信システム1の処理の煩雑化を招くことを防止することができる。
【0087】
さらに、カーナビゲーションECU21の演算部21eから、測定区間Zxにおける車両2の排気ガスの排出量Vxを収集する収集手段を路側のサーバ31に備えることにより、車両2が複数である場合において、それぞれ車両2に搭載されたカーナビゲーションECU21の測定部21dが測定したそれぞれの車両2の排出する排気ガスに関する情報に基づいて、演算部21eにより演算されたそれぞれの車両2の排気ガスの排出量Vxを、測定区間Zx毎に割り当てた上で、収集することができる。
【0088】
このため、測定区間Zx毎の排出量ΣVxをより正確に求めることができる。これにより、これらの測定区間Zx毎の排出量ΣVxをセンター3のサーバ31からそれぞれの車両2のカーナビゲーションECU21に伝送して、データベース9の探索用の地図情報に含まれるリンクに紐付けて、探索部21aが経路探索する場合において、排出量ΣVxがなるべく少ない経路を優先的に探索して、運転者にディスプレイ10により表示することができる。これにより、地域全体としての排気ガスの排出量のバランスを良好なものとし、排出量の地域全体としての総量を適宜低減することができる。つまり、当該地域の空気汚染(環境悪化)を改善することができる。
【0089】
これと共に、それぞれの車両2が測定区間Zxを異なる時刻又は日付において走行してそれぞれのタイミングにおいて演算部21eが演算して求めた排出量Vxを、サーバ31が一定期間において収集することにより、収集したデータを各車両の送信元ID毎に区分して一定期間毎に合計する統計処理を行って、車両2毎の測定区間Zxにおける一定期間における排出量ΣVxを正確に求めることができる。
【0090】
このように、異なる車両2毎の測定区間Zxにおける一定期間における排出量ΣVxを正確に求めることができるので、異なる車両2がそれぞれ異なる事業者に属するものである場合に、事業者間において排出量ΣVxを排出する権利すなわち排出権を売買することを容易なものとすることができる。
【0091】
また、車両の送信元IDによりサーバ31が車種を判定することができるので、車種毎の測定区間Zx毎の排出量ΣVxを個別に求めることができ、これにより、車種毎の測定区間Zx毎の排出量ΣVxを、車種毎の車両の設計にフィードバックして反映させることもできる。
【0092】
さらに、上述した本実施例の路車間通信システム1においては、車両2が測定区間Zxの終端に位置する交差点Px+1を通過する時点Tx+1において、収集手段であるサーバ31が、カーナビゲーションECU21の演算部21eから、測定区間Zxにおける車両2の排気ガスの排出量Vxを収集することとしているが、これによれば以下のような有利な作用効果を得ることができる。
【0093】
すなわち、測定区間ZxにおいてカーナビゲーションECU21の測定部21dが排気ガスに関する情報を測定し終わるタイミングTx+1毎において、サーバ31が演算部21eから、測定区間Zxにおける車両2の排気ガスの排出量Vxを収集するので、隣接する交差点Px及びPx+1を結ぶ道路を測定区間Zxに設定する場合においては、市街地においては交差点Px、Px+1の密集度が高いため、それに応じて収集ひいてはカーナビゲーションECU21とサーバ31との通信のタイミングの頻度を高くし、郊外においては交差点の密集度が低いため、それに応じて通信のタイミングの頻度を低くすることができる。
【0094】
なお、演算部21eを車載機であるカーナビゲーションECU21に含むことにより、図7のフローチャートのS12の処理に示したように、異なる車両毎に排気ガスの排出量Vxを演算して、排出量Vxが予め定められた閾値Vth以上である場合のみに、センター3のサーバ31により排出量Vxを収集させることができる。
【0095】
これにより、例えば、測定区間Zxが極端に短く設定される等の理由により、測定区間Zxにおける排気ガスの排出量Vxが極端に少なく、収集して有用でないデータである場合には、送信部21fによる送信を取り止めて、車載機であるカーナビゲーションECU21とセンター3のサーバ31との間の通信負荷および通信頻度を軽減させることができる。これとともに、有用でないデータをサーバ31の記憶装置73に格納することを防止して、サーバ31の処理負荷を軽減し、記憶装置73の記憶容量を確保することができる。
【0096】
また、異なる車両2毎に測定区間Zxにおける排気ガスの排出量Vxを演算するにあたっては、車両2毎に固有の排気ガスセンサ11の検出結果およびエンジンの単位時間の排気量または主にエンジン系統の制御情報および理論式を用いることになるので、これらの情報を含むデータを車両2からサーバ31に伝送することは、データを構成するデータフレームの数の増加を招き、通信負荷が増大する。
【0097】
このため、本実施例の路車間通信システム1に示したように、演算部21eを車両2側に備え、車両2毎の演算部21eが排出量Vxを演算した後に、送信部21fが排出量Vxを含むデータを、CAN、通信装置14、基地局4、ネットワークNWを介して送信し、センター3のサーバ31が通信装置77によって、排出量Vxを含むデータを受信して収集することにより、通信するデータを構成するデータフレームのフィールドの数を低減して、通信負荷を軽減することができる。
【0098】
なお、上述した第1実施例に示した路車間通信システム1においては、自宅または事業所を出発地点、すなわち測定開始地点Psとして、ある目的地Pgを想定した経路を車両2が走行する場合に、経路の最初の交差点P1と出発地を結ぶ道路および、経路の最後の交差点Pnと目的地とを結ぶ道路を測定区間Zxから除外しているが、これらの道路を含めることもできる。以下、それについての実施の形態を第2実施例として述べる。
【0099】
〔第2実施例〕
図8は、本発明に係わる路車間通信システムの他の実施形態の制御内容を示すフローチャートである。また、図9は、本発明にかかる路車間通信システムの一実施形態に適用される経路および測定区間、蓄積される排出量のデータの具体例を示す模式図である。なお、路車間通信システムを構成する個々の構成要素については、上述した第1実施例に示したものと同様であるため、同一の符号を付して、重複する説明については割愛する。
【0100】
ここでも、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、車両2の現在位置Pが、探索部21aが探索した経路上の直近の交差点Pxに到達すると、この直近の交差点Pxに対して経路上において隣接する交差点Px+1とを結ぶ道路を、測定区間Zxに設定する。
【0101】
これに加えて、本実施例においては、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、車両2の現在位置Pが出発地に隣接する道路の出口Psである場合には、出発地に隣接する道路に対する出口Psから経路上の最初の交差点P1を結ぶ道路を測定区間Z0に設定し、車両2の現在位置Pが経路上の最後の交差点Pnである場合には、最後の交差点Pnと目的地Pgを結ぶ道路を、測定区間Znに設定する。
【0102】
例えば、経路が図9(a)に示すようなものであった場合に、出発地の道路への出口Psにおいては、設定部21cは、図9(b)に示すように出口Psと最初の交差点P1を結ぶ道路を測定区間Z0に設定し、交差点P1に到達すると設定部21cは、これも図9(b)に示すように、交差点P1と経路上において隣接する交差点Bとを結ぶ道路を測定区間Z1に設定する。
【0103】
同様に、図9(b)に示すように、交差点P2に到達すると、交差点P2と経路上隣接する交差点P3とを結ぶ道路を測定区間Z2に設定し、さらに図9(b)に示すように、交差点Pn−1に到達すると、交差点Pn−1と経路上隣接する交差点Pnとを結ぶ道路を測定区間Zn−1に設定し、交差点Pnに到達すると交差点Pnと目的地Pgを結ぶ道路を測定区間Znに設定する。
【0104】
これらのことにより、図9(c)に示すように、始端Px終端Px+1の測定区間Zxのそれぞれにおいて、排出量Vx(x=0〜n)を含むデータが記憶装置73内に記憶された道路ネットワークデータのリンク毎に割り当てられて、リンク毎に合計されてΣZxが計算され、または、車両2毎に合計されてΣVxが計算されて、記憶装置73内に格納されて蓄積される。
【0105】
以下、上述した本実施例の路車間通信システム1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図8に示すように、S21において、運転者がディスプレイ10により目的地Pgを含む探索条件を入力した後、S22において、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、道路に最初に出た時の車両の位置Ps、すなわち自宅または事業所の出口を測定する。
【0106】
さらに、S23において、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、車両位置Psから目的地Pgまでの経路と、経路上のn個の基準点Px(x=0〜n:nは経路により定まる定数、x=0においては基準点P0=道路に最初に出た時の車両位置Ps、x=1〜nにおいては、基準点Px=交差点Pxを意味する。)を探索する。つづいて、S24において、カーナビゲーションECU21の探索部21aはx=0に設定する。
【0107】
さらに、S25において、カーナビゲーションECU21の探索部21aは、車両2の現在位置Pを測定し、S26において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、x=0であるかを判定し、肯定である場合にはS27に進み、否定である場合にはS32に進む。
【0108】
S27において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、出発地の出口Psを始端とし、最初の交差点P1を終端とする道路を測定区間Z0として設定する、続いて、S28において、探索手段2aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Z0の始端Psに到達して、PがPsに一致したかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Tsを記憶して、S29に進み、カーナビゲーションECU21の測定部21dは、排気ガスに関する情報を車上において実際に測定する。S28において否定である場合には、S28の手前に戻って、処理を継続する。
【0109】
さらに、S30において、探索部21aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Z0の終端P1に到達して、PがP1に一致したかどうかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻T1を記憶してS29において排気ガスに関する情報を測定部21dが車上にて実際に測定することを終了して、S31に進み、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、これらの情報と時刻T1から時刻T0を引いた測定区間Z0の走行時間を用いて、測定区間Z0における排気ガスの排出量Vx(x=0)を演算して、S43に進む。
【0110】
S43において、カーナビゲーションECU21の送信部21fは、S31で演算手段2eが演算した排出量Vx(x=0)を含む図4に示したデータを、CAN、通信装置14、基地局4、ネットワークを介してセンター3のサーバ31に対して送信し、通信装置77はこれらのデータを受信して、サーバ31は、このように各車両2から送信された排出量を含むデータを通信装置77から収集して蓄積する。
【0111】
さらに、S44において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、x=nであるかどうかを判定し、否定である場合には、S45に進んで、x=x+1としてインクリメントして、S25からS26までの上述した処理を行い、この場合においてはx=1であるので、S26において、設定手段2cは否定と判定し、S32に進み、0<x<nであるかを判定し、この場合は肯定であるので、S33に進む。
【0112】
S33において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、交差点Pxを始端とし隣接する交差点Px+1を終端とする道路を測定区間Zxとして設定する。続いて、S34において探索部21aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Zxの始端Pxに到達して、PがPxに一致したかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Txを記憶して、S35に進み、カーナビゲーションECU21の測定部21dは、排気ガスに関する情報を車上において実際に測定する。S34において否定である場合には、S34の手前に戻って、処理を継続する。
【0113】
さらに、S36において探索部21aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Zxの終端Px+1に到達して、PがPx+1に一致したかどうかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Tx+1を記憶してS37において排気ガスに関する情報を測定部21dが車上にて実際に測定することを終了して、S37に進み、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、これらの情報と時刻Tx+1から時刻Txを引いた測定区間Zxの走行時間を用いて、測定区間Zxにおける排気ガスの排出量Vxを演算して、S43に進む。
【0114】
S43において、送信部21fは、排出量Vxを含むデータをサーバ31に対して送信し、S44に進んで、S44において設定部21cは、x=nであるかを判定し、x=n−1となるまでは、S44の否定処理、S45のインクリメント処理、S25、S26の否定処理、S32の肯定処理が継続して行われて、測定区間Zxの排出量VxがS37においてx=1〜n−1の順番に演算部21eにより演算され、S43においてその都度、排出量Vxを含むデータが、送信部21fからサーバ31に対して送信される。
【0115】
S44において、x=n−1となっている場合においては、S44の否定処理、S45のインクリメント処理を経て、x=nとなり、S25、S26の否定処理、S32の否定処理を経て、S38の処理が実行される。
【0116】
S38において、カーナビゲーションECU21の設定部21cは、交差点Pnを始端とし目的地Pgを終端とする道路を測定区間Znとして設定する。続いて、S39において、探索部21aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Znの始端Pnに到達して、PがPnに一致したかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Tnを記憶して、S40に進んで、カーナビゲーションECU21の測定部21dは、排気ガスに関する情報を車上において実際に測定する。S39において否定である場合には、S39の手前に戻って、処理を継続する。
【0117】
さらに、S41において、探索部21aは、車両2がさらに経路上を進行した場合の現在位置Pが測定区間Znの終端Pgに到達して、PがPgに一致したかどうかを判定し、肯定である場合には、一致した時刻Tgを記憶してS40において排気ガスに関する情報を測定部21dが車上において実際に測定することを終了して、S42に進み、カーナビゲーションECU21の演算部21eは、これらの情報と時刻Tgから時刻Tn引いた測定区間Znの走行時間を用いて、測定区間Znにおける排気ガスの排出量Vx(x=n)を演算して、S43に進む。
【0118】
S43において、送信手段2fは、排出量Vx(x=n)を含むデータをサーバ31に対して送信し、S44に進んで、S44において設定部21cは、x=nであるかを判定し、x=nであるので、S44の否定処理により、制御は終了される。
【0119】
これらの制御内容により実現される本実施例の路車間通信システム1によれば、上述した第1実施例に示したものと同様の作用効果を得ることができることに加えて、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、経路上の最初の交差点P1と出発点の出口Psとを結ぶ道路における排出量Vx(x=0)と、経路上の最後の交差点Pnと目的地Pgとを結ぶ道路における排出量V(x=n)を求めることができる。
【0120】
このような処理を行うことにより、特に該当する車両2がある程度規模の大きい事業者に属する複数の車両2である場合には、隣接する交差点を結ぶ道路における排出量Vx(x=1〜n−1)のデータに加えて、経路上の最初の交差点P1と出発点の出口Psとを結ぶ道路における排出量Vx(x=0)と、経路上の最後の交差点Pnと目的地Pgとを結ぶ道路における排出量Vx(x=n)についても、有用なデータであるとみなしてセンター3のサーバ31において収集し、蓄積することができる。これに伴って、サーバ31がこれらのデータを、一定期間毎に車両毎に合計して、排出量ΣVx(x=0)、排出量ΣVx(x=n)についても統計処理により求めることにより、以下のような有利な作用効果が得られる。
【0121】
すなわち、このような経路上の最初に位置する測定区間Z0における排出量ΣVx(x=0)や、最後に位置する測定区間Znにおける排出量ΣVx(x=n)をセンター3で集計して求めることにより、この事業者に属する車両の運転者のアクセルワークが排気ガスの排出量の削減の観点状好ましくないかどうかを、排出量ΣVx(x=0)および排出量ΣVx(x=n)を一定期間毎に求めて、予め定められた基準値と比較することにより判定して、適宜削減目標量を定めて、この事業者に通知することにより、地域の排気ガスの排出量を抑制することができる。
【0122】
なお、第1および第2実施例においては、カーナビゲーションECU21の測定部21dが排気ガスに関する情報を車上において実際に測定するタイミング毎に、演算された排出量Vxを含むデータをサーバ31に送信したが、サーバ31におけるデータを車上において新たに実際に測定したデータに更新する要求が低い、または、データに求められるリアルタイム性が低い場合には、図10のS46に示すように、測定区間Zx毎に排気ガスの排出量VxをカーナビゲーションECU21がEEPROMまたはデータベース9に記憶した後、S43の処理を、S44よりも後に位置させて、車両が経路を走行した後に一時にまとめて送信することとしても良い。あるいは、図11のS47、S43に示すように、IGOFFを検出した場合に、一時にまとめて送信することとしても良い。
【0123】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0124】
例えば、上述した第1および第2実施例においては、車両2の現在位置を測定するにあたりGPSアンテナ5を用いたが、車両2の現在位置を測定することが可能であれば、例えば携帯電話端末等を応用することも可能である。また、路車間通信を用いて車両2の現在位置を測定することも可能である。
【0125】
また、上述した第1および第2実施例においては、排気ガスに関する情報に基づいて排出量を演算する演算手段を、カーナビゲーションECU21内部に備えたが、これをセンター3のサーバ31に備えることももちろん可能である。
【0126】
この場合においては、送信手段2fの送信するデータは、図4に示した排出量Vxに換えて排気ガスに関する情報を含んだデータとなり、受信手段を構成する通信装置14がこのデータを受信した後、このデータを収集手段であるサーバ31が収集して、測定区間Zxに対応する地図情報のリンク毎に、同じく割り当て手段であるサーバ31が割り当てて記憶装置73に記憶する。
【0127】
なお、上述した第1および第2の実施例においては、カーナビゲーションECU21を車載機における排出量演算ECUとして用いる場合について述べたが、例えば図12に示すように、当該カーナビゲーションECU21とは別途専用の排出量演算ECU15を車載機として、設定部15c、測定部15d、演算部15e、送信部15fを構成して、GPSアンテナ5、ヨーレートセンサ6、ステアリングセンサ7の替わりに、専用の路車間通信機16を接続する構成とすることもできる。また、これを車車間通信機として利用することも可能である。
【0128】
さらに、上述した第1および第2実施例においては、車両情報を送信する送信タイミング(送信条件)として、排気ガスの排出量が規定値(予め設定される閾値)になった場合や、所定の送信地点に車両が到達した場合、について述べたが、本発明はこれに限らず、送信条件としては、センター3において必要とする事象に関する情報に絞って送信するように設定するものであれば、この他、種々の条件を送信条件として適宜設定することができる。
【0129】
また、本発明の路車間通信システム1によれば、自車両において、車両情報を送信するタイミングに達していない場合であっても、ある車両が上記条件を満たして車両情報を送信した場合には、当該送信した車両の周辺に位置する他車両からも車両情報を収集することができるようになっている。これにより、かかる路車間通信システム1によれば、当該車両情報が送信された地域において、センター3が必要とする事象に関する情報をより多く収集することができ、ひいては当該地域における大気汚染度合い(環境汚染度合い)を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の路車間通信システム、車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムによれば、不要な送信を未然に回避して通信負荷を格段と軽減し得ると共に、所望する情報を的確に収集して正確な環境状態を把握することができる車載機、センター、路車間通信方法及びプログラムを提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の一部を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態が適用される経路を示す模式図である。
【図4】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態が適用されるデータを示す模式図である。
【図5】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の一部を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態が適用される経路と対応する測定区間及び蓄積されるデータを示す模式図である。
【図7】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態が適用される経路と対応する測定区間及び蓄積されるデータを示す模式図である。
【図10】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る路車間通信システムの一実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0132】
1…路車間通信システム
2…車両
21…カーナビゲーションECU
21c…設定手段
21d…測定手段
21e…演算手段
21f…送信手段
3…センター
31…サーバ(収集手段、割り当て手段)
4…基地局
5…GPSアンテナ
6…ヨーレートセンサ
7…ステアリングセンサ
8…受信機
9…データベース
10…ディスプレイ
11…排気ガスセンサ
12…エンジンECU
13…ABS
14…通信装置
15…排出量演算ECU
71…CPU
72…主記憶装置
73…記憶装置
74…表示装置
75…入力装置
76…ドライブ装置
77…通信装置(受信手段)
78…記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とセンターとが互いに通信可能に接続され、前記センターが前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積する路車間通信システムであって、
前記車両の状態を検知する車両状態検知手段と、
前記車両状態検知手段によって検知された検知結果が予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信手段と、
を備える前記車両に搭載された車載機と、
前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令手段と、
を有することを特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
前記情報送信指令手段は、前記センター側に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
前記送信手段は、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両状態検知手段による前記検知結果が前記所定条件を満たしていない状態であっても、当該検知結果を前記車両情報として送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の路車間通信システム。
【請求項4】
前記車両は、自車両の位置を検出する位置検出手段を有し、
前記車両情報は、該位置検出手段の検出結果に基づく位置情報を含み、
前記送信手段は、前記センターから前記車両情報を送信するように促す指令を受けた場合、前記車両の位置が前記所定の地点とは異なる地点であっても前記車両情報を送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の路車間通信システム。
【請求項5】
前記車両情報が、当該車両の排出する排気ガスに関する情報を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の路車間通信システム。
【請求項6】
前記排気ガスが、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物のいずれかを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の路車間通信システム。
【請求項7】
センターと通信可能に接続され、前記センターに対し車両情報を送信するために車両に搭載される車載機であって、
前記車両の状態を検知する車両状態検知手段と、
前記車両状態検知手段によって検知された検知結果が予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信手段とを有し、
前記送信手段は、外部から当該車両情報を送信するように促す情報送信指令を受けると、前記車両情報を送信する
ことを特徴とする車載機。
【請求項8】
前記送信手段は、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両状態検知手段による前記検知結果が前記所定条件を満たしていない状態であっても、当該検知結果を前記車両情報として送信する
ことを特徴とする請求項7に記載の車載機。
【請求項9】
車両と通信可能に接続され、前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積するセンターであって、
前記車両において検知された当該車両の状態の検知結果が、予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果が前記車両情報として送信されると共に、
前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令手段を有する
ことを特徴とするセンター。
【請求項10】
車両とセンターとが互いに通信可能に接続され、前記車両が前記センターに車両情報を送信し、前記センターが前記車両から送信される車両情報を受信して蓄積する路車間通信方法であって、
前記車両の状態を検知する車両状態検知工程と、
該車両状態検知工程にて検知された検知結果が、予め設定される所定条件を満たした場合、当該検知結果を前記車両情報として送信する送信工程と、
前記車両情報を送信した車両の周辺に存在する他車両に対し、当該車両情報を送信するように促す情報送信指令工程と、
を有することを特徴とする路車間通信方法。
【請求項11】
前記情報送信指令工程は、前記センター側にて実行される
ことを特徴とする請求項10に記載の路車間通信方法。
【請求項12】
前記送信工程においては、
前記車両状態検知工程にて検知された検知結果が、前記所定条件を満たしていない状態であっても、前記車両が所定の地点に到達した場合、前記車両情報を送信する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の路車間通信方法。
【請求項13】
前記車両の位置を検出する自車両位置検出工程を有し、
前記車両情報は当該自車両位置検出工程における検出結果に基づく位置情報を含み、
前記送信工程において、前記センターから前記車両情報を送信するように促す指令を受けた場合、当該車両の位置が前記所定の地点とは異なる地点であっても前記車両情報を送信する
ことを特徴とする請求項12に記載の路車間通信方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載された方法をコンピュータに実行させる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−20484(P2010−20484A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179422(P2008−179422)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】