説明

車両の運転安定性及び/又は快適性を向上させる方法

本発明は、車両の運転安定性及び/又は快適性を向上させる方法に関する。この方法の場合、
−ブレーキ制御装置及び/又は運転動特性制御装置,
−保持システム用の制御装置,
−電子式操舵用の制御装置,
−シャーシ制御装置,
−エンジン制御装置,又は
−快適機能用の制御装置のような安全性を向上させる働きを制御するための車両制御装置又は対応する制御装置のグループが設けられていて、
a)これ/これらの車両制御装置又は対応する制御装置のグループのデータが、ナビゲーションシステムのデータ又は地図データと論理結合され、この場合、このナビゲーションシステムは、地図データを含み、
b)これらの地図データは、センサで直接又は間接に車両内で検出された実際の車両状況に関する情報と共に実際の危険値を算出するために利用され、
c)この危険値に応じて、安全性を向上したタスクによる機能群内への介入が実施され、この場合、特にこの介入に追加して又はこの介入の代わりに、光学的、音響的又は触覚的警告が、車両運転者に対して生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の方法,請求項12の上位概念に記載の方法及び電子式ブレーキ制御装置及び/又は運転動特性制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のナビゲーションシステムが既に公知である。このナビゲーションシステムは、ナビゲーションの目的だけに使用されるのではなくて、さらに交通情報で使用できる。交通情報は、例えば交通標識板又は例えば速度制限のような運転区間のあり得る特徴がナビゲーションシステムの地図学上のデータ内に記憶されている点にある。この運転区間の特徴は、さらに場合によっては季節で変化しうるか(例えば、冬季の閉鎖)又は実際の天候データ(氷,雪等)によって影響されうるか若しくはプリセットされうる。
【0003】
プリセットされている速度を超えた時に車両運転者に警告するために交通情報を利用することが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第197 41 033号明細書から公知である。この場合、音響的なメッセージ又は光学的なメッセージが、運転者に対して生成される。
【0004】
交通標識板内に組み込まれたトランスポンダによる無線式の交通標識板情報の利用が、ドイツ連邦共和国特許第 44 11 125号明細書から公知である。これらのトランスポンダは、車両、特にトラックの運転速度に影響するために利用され得る。非常に似たシステムが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102 48 968号明細書中に記される。ここでも、トランスポンダを装備した交通標識板が、交通情報を車両に転送するために利用される。これに応じて、(例えば、走行制御システムによって)交通情報が表示されるか又は運転速度が制限だけされるか若しくは影響だけされる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第197 41 033号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第44 11 125 号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102 48 968号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、現在のナビゲーションシステムの技術を利用したまま運転安全性及び/又は快適性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。
【0007】
本発明は、安全性を向上させる働きをする車両制御装置内で、特に電子式車両ブレーキ系統の制御装置内で存在する情報に加えてナビゲーションシステムの情報又は適切に固定記憶された若しくはダイナミックに変更された地図学上のデータを実際の危険な状況を評価するために利用するという思想に基づく。このとき、実際の危険値が、この実際の危険な状況及び場合によってはその他に存在する車両データによって算出される。この実際の危険値は、運転者又は乗客がその時にさらされている実際の危険及び場所的な危険の程度を示す。この危険値は、例えばファクターである車両速度,道路の摩擦係数,外部温度,橋の上の運転又はトンネルの通過,カーブの運転,上り若しくは下り,制御されるブレーキの存在等に依存する。
【0008】
好ましくは、算出された危険値に応じて、ブレーキ制御装置(例えば、ABS制御装置)及び/又は運転動的制御装置(例えば、ESP制御装置)への介入が実施される。
−(例えば、ホイールブレーキシリンダの予備充填による)ブレーキ装置のより速い応答のためのブレーキ系統又は運転動的制御の提供、
−運転者の制動なしに車両を減速する独立したブレーキ介入(ACC介入)、又は
−間近に迫るブレーキ操作に対するシャーシ又はその他の車両要素の提供
のグループから成る手段のうちの1つ又は多数の手段が実施されることによって、これらの介入が好ましく実施できる。最初に述べた両手段は、ESP機能を有するブレーキ制御装置内で特に簡単に実施され得る。何故なら、一般に油圧ポンプは、ブレーキ介入なしの圧力上昇に対して提供されているからである。
【0009】
言及した介入又は提供した手段に対してさらに追加して又はこの代わりに、特に車両運転者の領域内の表示要素によって又は運転ペダルの応答特性(ペダルフィーリング)の変化によって、警告が車両運転者に出される。
【0010】
さらに、上述した手段が、交通規則の違反の認識時又は危険時に開始されることが好ましい。
【0011】
さらに、準備手段は、予備充填が存在するホイールブレーキシリンダのうちの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ内で実施される点にあることも好ましい。
【0012】
さらに準備手段は、アンチロックシステム(ABS)及び/又は運転動的制御(ESP)及び/又は衝突回避制御(ACC)で実施されることが好ましい。
【0013】
ナビゲーションシステムは、このナビゲーションシステムが継続して更新可能である種類であることが好ましい。このナビゲーションシステムでは、特に交通目印(道路標識,橋,カーブ等)の座標が、データの形態で記憶されているか、又は、この種類のデータが、例えばカーブ,橋等のような危険な場所自体からすなわち地図上のデータ資料から導出可能である。
【0014】
最後に、データの形態で記憶された交通目印が、送信される交通目印と共に既知であるトランスポンダ技術で利用されることが好ましい。
【0015】
運転者への警告は、好ましくは光学的、音響的又は触覚的な信号によって実施できる。光学的な警告の場合では、例えばランプ又はディスプレイによる表示がある。
【0016】
この場合、交通情報は、ナビゲーションシステムの情報に適切な方法でリンクされることがさらに好ましい。ナビゲーションシステムを利用する場合、すなわち制御装置とナビゲーションシステムとの間のデータ結合がある場合、現時点のデータが、例えば手動又は自動的な更新によってナビゲーションシステムに規則的に供給され得ることが特に好ましい。地図上のデータを使用するナビゲーションシステムが、特に好ましく利用可能である。この代わりに、ナビゲーションシステムが車両ブレーキシステムのハウジング内に既に組み込まれていることが可能であり、それ故に同様に好ましい。この機能に対してはしかしながら地図上のデータの使用可能性だけが必要であるので、データ受信器が、ナビゲーションシステムの場所に設けられていることも目的に合致し得る。現時点の地図上のデータが、このデータ受信器に無線で常に供給される。このことは、例えば一般的にアクセス可能なマップサーバ又は外部のルートプロセッサによって実現可能である。
【0017】
安全性を向上したタスクによる機能群内への介入は、好ましくは存在する電子式ブレーキ装置が目前に迫ったブレーキに対して準備される点にある。例えばこの介入では、油圧式ポンプが起動される。この油圧式ポンプは、ホイールブレーキシリンダに連結しているブレーキ線又は車輪ブレーキシリンダの予備充填を実施する。この場合、制動距離が、ブレーキ系統の低減された応答時間に起因して一般に短くなる。
【0018】
さらに、特にプリセットされている減速度を伴う能動的なブレーキ介入が、介入として実施され、及び/又は、ブレーキアシストの応答閾値が、強まったブレーキ準備に適合されることが好ましい。
【0019】
介入の別の好適な可能性は、ブレーキ系統のより強い応答状況が得られるように、ブレーキアシストの応答閾値を危険時に調整する点にある。
【0020】
介入の別の好適な可能性は、運転者に依存しない車両の能動的な制動、例えばACC制動過程が、危険時にブレーキ系統によって引き起こされる点にある。このACC制動過程は、特に約0.3gの車両減速度で実施される。
【0021】
介入の別の好適な可能性は、電子式に調整可能なシャーシのパラメータ又は能動的に制御されるシャーシの制御パラメータが、上述した方法で認識した危険状況に適合される点にある。
【0022】
介入の別の好適な可能性は、特にアクセルペダルに関連する力フィードバックペダルの場合に、このペダルを危険時により堅く調整し、その結果運転者が警告されている点にある。特に目的に合わせて作用すべきアクセルペダルは、ガスペダルである。何故なら、運転者が、一般に足をこのペダル上にあり、ガスペダルの特徴の影響時にこれに応じて早期に警告されるからである。
【0023】
介入又は警告が実施される状況の場合は、例えば車両のその時の場所で実際の時点に対して許容される速度に比べて高い速度,実際の運転方向が優先権を持たない交差点への接近,その他の交通違反な運転操縦(一方通行道路又は乗り入れが禁止されている道路内への走行),天候の影響に起因して危険にさらされた区間(凍結した橋,暴風雨警報等)又は狭いカーブに向かう速い走行である。
【0024】
この場合、上述した方法が実施される制御装置は、交通情報を車両のセンサによって得られた実際の車両状態に関する交通情報と比較し、これから介入の必要性又は警告に関する別の情報を得ることが好ましい。センサで得られる適切な情報は、例えば車両速度,ヨーレート,外部温度及び別の車両に関する距離信号又は障害物である。
【0025】
さらに本発明は、ナビゲーションシステム地図情報が車道の上り勾配及び/又は車道の下り勾配をより良好に算定するために一緒に利用される特に上述した方法のような方法と結合して、センサで検出した車両内に存在するデータから車道の上り勾配及び/又は車道の下り勾配に対する特性値を算出する方法に関する。
【0026】
最後に本発明は、電子式ブレーキ制御装置及び/又は運転動的制御装置にも関する。この制御装置は、上述したような方法この制御装置内で実施されることを特徴とする。
【0027】
その他の好適な実施形は、従属請求項及び図に基づく実施の形態の以下の説明に記載されている。
【0028】
以下に、本発明を例に基づいて詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
車両5は、道路6上で矢印7の方向に橋1に向かって移動する。氷2が、車道表面上に存在しうるので、橋は、冬季中に危険潜在性を呈する。ナビゲーションシステム10が、近くに離れてある橋1に関する情報をインターフェースを経由してブレーキシステム4に提供する。この代わりに、対応する地図情報が、アンテナ3及び3′によって形成された無線区間を通じてマップサーバ8によって無線式に要求されてもよい。さらに、車輪回転数センサ9のデータのような別のセンサ情報が、ブレーキ系統4内で評価される。特に瞬時の車両速度又は場合によっては起こりうるカーブ走行に関する情報が、車輪回転数センサのデータから導出され得る。さらに、ABS又はESPのような制御機能がアクティブであるかどうかを検査することが好ましい。このとき、これらの運転動的情報は、橋の現在地に関する地図情報と結合され、目前に迫った高まる危険潜在性を考慮して評価される。
【0030】
危険潜在性の算出結果に応じて、ブレーキ制御装置4が、車両及び運転者を目前に迫った危険な状況に対して準備する。このブレーキ制御装置4内では、表示が計器板内で現れ、同時にブレーキ設備が予備充填され、さらに受動的な安全システムが起動される。この安全システムは、特にシートベルトを引き締める。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】道路交通内の乗用自動車を概略的に示す。
【符号の説明】
【0032】
1 橋
2 氷
3 アンテナ
3′ アンテナ
4 ブレーキ制御装置
5 車両
6 道路
7 矢印
8 マップサーバ
9 車輪回転数センサ
10 ナビゲーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転安定性及び/又は快適性を向上させる方法において、例えば、
−ブレーキ制御装置及び/又は運転動特性制御装置,
−保持システム用の制御装置,
−電子式操舵用の制御装置,
−シャーシ制御装置,
−エンジン制御装置,又は
−快適機能用の制御装置のような安全性を向上させる働きを制御するための車両制御装置又は対応する制御装置のグループが設けられていて、
a)これ/これらの車両制御装置又は対応する制御装置のグループのデータが、ナビゲーションシステムのデータ又は地図データと論理結合され、この場合、このナビゲーションシステムは、地図データを含み、
b)これらの地図データは、センサで直接又は間接に車両内で検出された実際の車両状況に関する情報と共に実際の危険値を算出するために利用され、
c)この危険値に応じて、安全性を向上したタスクによる機能群内への介入が実施され、この場合、特にこの介入に追加して又はこの介入の代わりに、光学的、音響的又は触覚的警告が、車両運転者に対して生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
安全性を向上したタスクによる機能群内への介入は、
−ブレーキ装置のより速い応答のためのブレーキ系統又は運転動的制御の提供、
−運転者の制動なしに車両を減速する独立したブレーキ介入、又は
−間近に迫るブレーキ操作に対するシャーシ又はその他の車両要素の提供
のグループから成る手段のうちの1つ又は多数の手段が実施される点にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサによる情報は、地図データに依存して算出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
距離センサの優先するセンサ方向は、地図データに依存してプリセットされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
電子式ブレーキ系統又は運転動的制御システム用のパラメータは、地図データに依存して生成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ナビゲーションシステム又は地図データに関する別の計算システムが、記憶されたルートの危険度に関する実際の情報によって更新される及び/又は更新され得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
実際の危険値を算出するため、無線式に伝達された交通目印の交通情報が、トランスポンダ技術に基づいて利用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
車両運転者の領域内の表示要素によって又は運転ペダルの応答特性(ペダルフィーリング)の変化によって、警告が車両運転者に出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
介入は、ブレーキ設備の無駄な変位が低減され、このことは油圧式ブレーキ設備の場合には特に1つ又は多数のブレーキシリンダの予備充填によって実現される点にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
介入は、アンチロックシステム(ABS)及び/又は運転動的制御(ESP)する装置及び/又は衝突回避制御(ACC)で実施されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
呼び出しのような無線通知が、特定の危険値以降に車両から送信されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
特に請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法と結合して、車両内に存在するセンサで検出したデータから車道の上り及び/又は車道の下りに対する特性値を算出する方法において、ナビゲーションシステムの地図情報は、例えばカーブ,上り坂及び下り坂のような地形の詳細を車両に提供するために利用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
電子式ブレーキ制御装置及び/又は運転動的制御装置において、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法は、電子式ブレーキ制御装置及び/又は運転動的制御装置内で実施されることを特徴とする電子式ブレーキ制御装置及び/又は運転動的制御装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−521664(P2008−521664A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538420(P2007−538420)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055585
【国際公開番号】WO2006/045826
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】