説明

車両用走行支援装置及び車両用走行支援方法

【課題】本発明は、自車両の周辺車両に応じた適切な走行支援を行うことができる、車両用走行支援装置及び車両用走行支援方法の提供を目的とする。
【解決手段】自車両の進行方向に水溜りが検出された場合において、自車両の後続車両が検出されるときには、後続車両を減速させるため、自車両を制動制御する。自車両の進行方向に水溜りが検出された場合において、自車両の後続車両が検出されないときには、前方の障害物や対向車を回避する経路があって、側方又は後方の周辺車両に衝突するおそれがない場合には、自車両を操舵制御し、回避経路がなく又は周辺車両に衝突するおそれがある場合には、自車両を制動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溜りのある道路を通行する車両の走行を支援する、車両用走行支援装置及び車両用走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車が水溜りを通過する際に水を跳ね上げて歩行者にかけない走行支援制御を行う車両用走行支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用走行支援装置は、物体検出手段が自車の進行方向の歩行者を検出し、雨天検出手段が雨天であるか否かを検出し、この雨天検出手段が雨天であることを検出したときに、安全距離設定手段が安全距離を長く設定し、危険予測手段が物体検出手段により検出した歩行者と自車との最接近時に安全距離が確保されるか否かを予測し、走行支援制御手段が、危険予測手段が歩行者と自車との最接近時に安全距離が確保されないと予測したときに走行支援制御を行うものである。
【特許文献1】特開2006−264466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術の開示内容によると、自車の進行方向の歩行者に基づいて自車の走行を支援する制御を行っており、自車の周辺車両の存在は特に考慮されていない。そのため、周辺車両が存在すると、必ずしも適切な走行支援を行っているとは限らない場合がある。例えば、歩行者と自車との最接近時に安全距離が確保されているとして、走行支援制御が行われない場合には、自車による歩行者への水跳ねを回避できたとしても、自車の後続車による歩行者への水跳ねを回避できないおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、自車両の周辺車両に応じた適切な走行支援を行うことができる、車両用走行支援装置及び車両用走行支援方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る車両用走行支援装置は、
自車両の進行方向の水溜りを検出する水溜り検出手段と、
自車両の周辺車両を検出する周辺車両検出手段と、
自車両の減速を制御する減速制御手段と、
自車両の操舵を制御する操舵制御手段とを備え、
前記水溜り検出手段によって水溜りが検出された場合において、
前記周辺車両検出手段によって後続車両が検出されるときには前記減速制御手段によって自車両の減速が制御され、
前記周辺車両検出手段によって後続車両が検出されないときには前記操舵制御手段によって自車両の操舵が制御される、ことを特徴としている。これにより、水溜りが検出されれば、自車両に後続車両がいたとしても、後続車両の減速を促すように自車両の減速をすることができるので、自車両による水跳ねを防止するだけでなく、後続車両による水跳ねを防止することができる。一方、後続車両がいなければ、検出された水溜りを通行することによる水跳ねを防止するように操舵制御が実行されるようにできる。
【0006】
また、第2の発明は、第1の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記操舵制御手段によって自車両が操舵される方向は、前記周辺車両検出手段によって検出された周辺車両の存在位置に応じて制限されることを特徴としている。これにより、後続車両が検出されなかったとしても、自車両が操舵されることによって周辺車両とのニアミスや衝突を防止することができる。
【0007】
また、第3の発明は、第2の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記操舵制御手段による自車両の操舵が制限される方向は、前記周辺車両検出手段によって検出された側方又は斜め後方の周辺車両が存在する側への方向とすることを特徴としている。これにより、自車両のドライバーが特に視認し難い側方や斜め後方の周辺車両とのニアミスや衝突を防止することができる。ここで、周辺車両が存在する側への操舵とは、自車両の右前方、右側方、右後方に周辺車両が存在する場合、自車両の右方向への操舵を意味する。
【0008】
また、第4の発明は、第2の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記周辺車両検出手段によって側方又は斜め後方を走行する周辺車両が検出されたときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われることを特徴としている。これにより、自車両のドライバーが特に視認し難い側方や斜め後方の周辺車両とのニアミスや衝突を防止することができるとともに、自車両の操舵がされなくても自車両を減速させることによって水溜りを通過することによる水跳ねを防止することができる。
【0009】
また、第5の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記水溜り検出手段によって検出された水溜りを通行することによる水跳ねの回避経路を導出する回避経路導出手段を更に備え、前記操舵制御手段は、前記回避経路導出手段の導出結果に応じて、自車両の操舵を制御することを特徴としている。これにより、水跳ねを適切に防止できる経路で自車両を操舵させることができる。
【0010】
また、第6の発明は、第5の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記回避経路導出手段によって回避経路が導出不能のときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われることを特徴としている。これにより、当該回避経路が無くて操舵による水跳ねを防止することができなくても自車両を減速させることによって水溜りを通過することによる水跳ねを防止することができる。
【0011】
また、第7の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記周辺車両検出手段によって検出された周辺車両と自車両との衝突判定を行う衝突判定手段を更に備え、前記操舵制御手段は、前記衝突判定手段の判定結果に応じて、自車両の操舵を制御することを特徴としている。これにより、水跳ねを防止しつつ、周辺車両とニアミスや衝突をしないように自車両を操舵させることができる。
【0012】
また、第8の発明は、第7の発明に係る車両用走行支援装置であって、
前記衝突判定手段によって衝突するおそれがあると判定されたときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われることを特徴としている。これにより、周辺車両と衝突するおそれがあるとして操舵による水跳ねを防止することができなくても自車両を減速させることによって水溜りを通過することによる水跳ねを防止することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、第9の発明に係る車両用走行支援方法は、
自車両の進行方向の水溜りを検出するステップと、
自車両の後続車両を検出するステップと、
前記水溜りが検出された場合に前記後続車両が検出されるときには自車両を減速制御手段によって減速させるステップと、
前記水溜りが検出された場合に前記後続車両が検出されないときには自車両を操舵制御手段によって操舵させるステップと、を備えることを特徴としている。これにより、水溜りが検出されれば、自車両に後続車両がいたとしても、後続車両の減速を促すように自車両の減速をすることができるので、自車両による水跳ねを防止するだけでなく、後続車両による水跳ねを防止することができる。一方、後続車両がいなければ、検出された水溜りを通行することによる水跳ねを防止するように操舵制御が実行されるようにできる。
【0014】
また、第10の発明は、第9の発明に係る車両用走行支援方法であって、
自車両の側方又は斜め後方の周辺車両を検出するステップと、
自車両の側方又は斜め後方の周辺車両が検出された場合、前記操舵制御手段による自車両の操舵を制限するとともに前記減速制御手段による自車両の減速を許可するステップと、を備えることを特徴としている。これにより、自車両のドライバーが特に視認し難い側方や斜め後方の周辺車両とのニアミスや衝突を防止することができるとともに、自車両の操舵が制限されても自車両を減速させることによって水溜りを通過することによる水跳ねを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、自車両の周辺車両に応じた適切な走行支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施形態である車両用走行支援装置の構成図である。本実施形態の車両用走行支援装置は、車両周辺監視装置10、走行支援ECU50、ブレーキ制御システム60、エンジン制御システム70、操舵制御システム80、警報装置90、を備える。
【0017】
車両周辺監視装置10は、ミリ波レーダ、レーザーレーダ、超音波レーダ等の監視センサを備え、自車両周辺の他車両や歩行者の存在を検出する手段である。車両周辺監視装置10は、監視センサによって自車両とその周辺の他車両との車間関係値(相対距離、相対速度、車間時間等)又は、監視センサによって自車両の進行方向の歩行者との相対距離や相対速度を測定することができる。相対距離や車間時間は、レーダが送受信する波の送受信タイミングと波の速さとの関係から容易に算出可能である。算出された相対距離の時間変化から相対速度が求められる。なお、相対速度の時間変化から相対加速度を求めることも可能である。また、レーダが自車両周辺をスキャニングする際の反射範囲の大きさによって、車両の大きさも測定可能である。これにより、例えば、トラックと一般車両とオートバイの区別をすることも可能である。
【0018】
車両周辺監視装置10は、左右に配置された一対の撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)と一対の撮像素子による撮像画像を処理する画像処理用コンピュータとを有する画像処理装置を備えてもよい。画像処理装置は、左右一対の撮像素子の画角の違いを利用する等の画像認識処理を画像処理用コンピュータによって行うことによって、撮像画像内の歩行者や周辺車両を認識する。撮像素子は、車両前方、車両後方、車両側方などの撮像すべき方向に応じて、車両に一つ又は複数設置される。例えば、ルームミラーの背面やバンパーなどに撮像素子は設置される。撮像素子による撮像画像間の視差を画像処理用コンピュータによって求めることによって、相対距離が算出され得る。一方の撮像素子による画像と他方の撮像素子による画像とを重ね合わせると、撮像対象車両が左右横方向にずれる。そして、片方の画像を1画素ずつシフトしながら最も重なり合う位置を求める。このときシフトした画素数をnとする。レンズの焦点距離をf、光軸間の距離をm、画素ピッチをdとすると、自車両から撮像対象物(歩行者や周辺車両)までの相対距離Lは、L=(f・m)/(n・d)という関係式が成立する。なお、(n・d)を視差という。この関係式に基づいて算出された相対距離Lから、上記と同様にして、相対速度や相対加速度が算出可能である。
【0019】
車両周辺監視装置10の画像処理装置は、自車両の進行方向にある水溜りを検出する。例えば、特許文献1に記載されているように、画像処理装置は、垂直偏光フィルタを介して視野像を撮像する第1CCDと、水平偏光フィルタを介して視野像を撮像する第2CCDとを備えるようにするのが好ましい。そして、画像処理装置は、第1および第2CCDによって車両の前方路面の垂直偏光画像と水平偏光画像を撮像し、この垂直偏光画像および水平偏光画像の偏光特性を利用して路面状態を検出する。このとき、垂直偏光画像の輝度情報に基づいた垂直偏光成分の強度と、水平偏光画像の輝度情報に基づいた水平偏光成分の強度とに基づいて路面状態を検出する。この検出結果に基づいて水溜りの位置を検出すればよい。なお、水溜りを検出する方法は上述の検出方法をはじめ様々存在するが、その方法は特に限定しない。
【0020】
車両周辺監視装置10は、車両と車両を無線通信で結ぶいわゆる車車間通信を行う車車間通信装置を備えてもよい。車車間通信装置は、車車間通信によって、ドライバーが自車両の周辺車両の存在を視認できていなくても、自車両の周辺車両の存在を認識することができる。また、車車間通信装置は、車車間通信を介して、車両の特定に必要な自車両のIDや自車両の存在情報を周辺車両に対して送信する一方で、周辺車両のIDや周辺車両の存在情報を受信する。車車間通信装置によって、自車両や周辺車両の存在情報を所定の通信周期でリアルタイムに送受信することができる。
【0021】
自車両の周辺を監視するに際し、監視センサ、画像処理装置及び車車間通信装置は、独立して使用しても併用してもよい。併用すれば、自車両の周囲を監視する精度を向上させることができる。また、車両周辺監視装置10によって検出される歩行者には、自転車をはじめとする軽車両や原動機付自転車などの自動二輪車に乗車する人も含まれる。
【0022】
走行支援ECU50は、水溜りのある道路を通行する車両の走行を支援するための走行支援プログラムを記憶するROMと、走行支援プログラムを処理するCPUと、走行支援プログラムの作業領域であるRAMと、各部とのインターフェースとを有する電子制御装置である。CPUは、走行支援プログラムの実行を指示する割り込みが発生すると、ROMから走行支援プログラムを読み出し、走行支援プログラムの実行を開始する。走行支援プログラムによる処理は、後述の図3のフローによって表すことができる。
【0023】
走行支援ECU50は、走行支援プログラムの実行によって、車両周辺監視装置10の監視結果に基づき、自車両の進行方向の歩行者と水溜りの位置を認識し、水溜りを通過することによる歩行者への水跳ねを防止するように車両の走行を支援する、走行支援制御を実行する。
【0024】
図2は、歩行者への水跳ね判定を説明するための図である。現在地点Bに位置する自車両の走行支援ECU50は、車両周辺監視装置10の画像処理装置によって検出された自車両進行方向の水溜りWの上を自車両が通過するか否かを予測する。走行支援ECU50は、例えば、車輪速センサから入力した各車輪速度に基づいて演算される自車両の車両速度V、地図データベース内の地図情報、GPS装置によって検出される自車両の位置情報などに基づいて予測される自車両の進路Cpが、画像処理装置によって検出された水溜りWの範囲を通過する場合には、水溜りWの上を自車両が通過すると予測し判断する。
【0025】
地図データベース内の地図情報には、直線路、カーブ、分岐路、法定速度、路面傾斜及びカント等の道路形状や地形に関する情報や、トンネル、交差点、踏切、駐車場、有料道路の料金所(ETCレーン)などのノードの情報がそのノードの座標データとともに含まれている。また、各道路上の車線数、各車線の座標データや車線幅、右折レーン/左折レーン等の車線形態などの車線情報が含まれてもよい。地図データベース内の地図情報は、車車間通信や路車間通信や所定の管理センターなどの外部との通信を介してリアルタイムに更新可能にしてもよく、あるいは、CDやDVDなどの媒体を介して更新可能にしてもよい。したがって、走行支援ECU50は、GPS装置により検出された車両位置と地図データベース内の地図情報に基づいて、車両が地図上のどのような地点に位置しているのかを把握する自車位置検出手段である。例えば、走行支援ECU50は、GPS装置により検出された自車両位置の座標データと地図情報に含まれる車線情報の座標データとに基づいて、自車両が現在走行中の車線を特定することができる。
【0026】
走行支援ECU50は、画像処理装置によって検出された水溜りWの上を自車両が通過すると予測した場合には、画像処理装置によって検出された水溜りW上の任意の点B(図2の場合、予測進路Cp上の点)を中心とする水跳ね判定範囲X内に、画像処理装置等によって検出された歩行者Aが存在するか否かを判断する。走行支援ECU50は、水跳ね判定範囲X内に歩行者Aが位置する場合には(点A)、歩行者Aに水を跳ね上げるおそれがあるとして、走行支援制御の実行が必要と判断し、水跳ね判定範囲X内に歩行者Aが位置しない場合には(点A)、歩行者Aに水を跳ね上げるおそれがないとして、走行支援制御の実行が不要と判断する。
【0027】
水跳ね判定範囲Xの大きさは、自車両の車両速度Vに応じて変化し、車両速度Vが速くなるほど大きくなる。これにより、車両速度Vが可変しても、歩行者に水を跳ね上げるおそれがあるか否かを適切に判断することができる。また、水跳ね判定範囲Xの大きさは、所定速度で走行する自車両が水溜りを通過することにより跳ね上げた水が歩行者に届かない距離を事前シミュレーションや学習等によって算出しておくことによって、適切な値に設定される。
【0028】
走行支援ECU50は、走行支援制御の実行が必要と判断した場合、車両周辺監視装置10による周辺車両の位置情報に応じて、走行支援制御の内容を決定する。走行支援ECU50は、その決定内容に応じた走行支援をさせる指令信号を、ブレーキ制御システム60、エンジン制御システム70、操舵制御システム80、警報装置90に対して送信する。
【0029】
ブレーキ制御システム60は、車両の各車輪を制動させるブレーキ装置62と、ブレーキ装置62による制動を制御するブレーキECU61を備える。ブレーキ装置62は、各車輪に制動力を発生させるブレーキアクチュエータを有している。ブレーキアクチュエータは、ブレーキECU61に電気的に接続されており、ブレーキECU61から指令される指令信号に応じた制動力を各車輪に発生させる。つまり、ブレーキ制御システム60は、自車両の減速を制御する手段として、機能する。
【0030】
エンジン制御システム70は、車両の動力源であるエンジン72と、エンジン72を制御するエンジンECU71とを備える。エンジンECU71は、車速センサ、エンジン回転数センサ及びアクセルセンサ等による検出値や他のECUからの制御信号に基づいて、車両のエンジン72に接続される吸気管に配設されたスロットルバルブを制御する。スロットルバルブには、アクチュエータとしてのスロットルモータが連結されている。このスロットルモータは、エンジンECU71の指令に従って駆動制御され、スロットルバルブの開度(制御量)を調整する。スロットルバルブは、電子スロットルとして、スロットルモータの駆動に応じた開度に調整され、エンジン72に供給される空気量を調整する。つまり、エンジン制御システム70は、スロットルバルブの開度調整によって自車両の減速を制御する手段として、機能する。
【0031】
操舵制御システム80は、車輪を操舵する操舵装置82と、操舵装置82による操舵を制御する操舵ECU81とを備える。操舵制御システム80は、電動パワーステアリング装置であって、走行状態に応じてステアリング操作のアシストトルクを任意に変化させることができ、ステアリング操作に必要な操舵トルクを調整することができるものである。操舵ECU81は、ドライバーがステアリングホイールを操舵したときの操舵角の大きさと操舵方向を検出する操舵角センサと、ドライバーがステアリングホイールを操舵したときのトーションバーのねじれの大きさと方向を検出するトルクセンサと接続される。操舵ECU81は、操舵角センサやトルクセンサなどによる検出値とアシストトルクとの関係を規定するマップ値などに応じて、所望のアシストトルクとなるように操舵装置82の一つである操舵モータを駆動制御する。すなわち、ドライバーによるステアリングホイールの操舵操作による操舵トルクと操舵ECU81によって制御される操舵モータによるアシストトルクとの両方がラックバーに作用することによって、ラックバーはストロークする。そのストロークによってタイロッドを介して左右車輪が転舵し、車両の操舵が行われる。つまり、操舵制御システム80は、自車両の操舵を制御する操舵制御手段として、機能する。また、操舵制御システム80は、ドライバーの操舵操作を無効にして、ドライバーの操舵操作によらずに自車両を自動操舵する手段として、機能させることもできる。
【0032】
警報装置90は、走行支援ECU60からの指令信号に基づいて、ディスプレイやランプによる警告表示やスピーカによる警告音によって、ドライバーに対して走行支援制御が行われることの注意を喚起する。また、警報装置90は、警告音や警告表示だけではなく、ステアリングに操舵力を強制的に短時間加えたり、ステアリングやシートに設けた振動機構を作動させたりすることによって、ドライバーに注意を喚起してもよい。また、警報装置90は、自車両の方向指示状態が示す方向に車両周辺監視装置10によって検出された周辺車両が走行する車線への車線変更をさせない運転操作内容(例えば、逆方向に車線変更する運転、現車線を維持させる運転)を運転者に推奨案内してもよい。また、警報装置90は、自車両のドライバーに限らず、車両周辺監視装置10によって検出された周辺車両のドライバーに対して、ディスプレイやランプによる警告表示やスピーカによる警告音によって注意を喚起してもよい。
【0033】
続いて、本実施形態の車両用走行支援装置の詳細動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態である車両用走行支援方法であって、本実施形態の車両用走行支援装置の動作を示すフローである。車両用走行支援装置の走行支援ECU50は、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンのとき、走行支援制御の実行が許可状態であるときに、図3に示されるフローに従った動作を開始する。
【0034】
走行支援ECU50は、図2に従って上述したように、自車両の進行方向の歩行者への水はね判定処理を実行する(ステップ10)。走行支援ECU50は、水跳ね判定範囲X内に歩行者Aが位置する場合には、歩行者Aに水を跳ね上げるおそれがあるとして、走行支援制御の実行による水跳ね回避動作が必要と判断する(ステップ12;Yes)。一方、走行支援ECU50は、水跳ね判定範囲X内に歩行者Aが位置しない場合には、歩行者Aに水を跳ね上げるおそれがないとして、走行支援制御の実行による水跳ね回避動作が不要と判断する(ステップ12;No)。走行支援ECU50は、走行支援制御の実行による水跳ね回避動作が必要と判断した場合(ステップ12;Yes)、車両周辺監視装置10によって自車両の後続車両の検出動作を行う(ステップ14)。
【0035】
走行支援ECU50は、自車両後方の所定距離範囲内に自車両と同一車線上の車両の存在が検出された場合には、当該車両を後続車両とみなして(ステップ16;Yes)、図4(a)に示されるように、ブレーキ制御システム60やエンジン制御システム70による自車両の制動制御(減速制御)を実行する(ステップ18)。ステップ18において制動制御を実行する場合には、走行支援制御を行うことや水溜りを通行することをドライバーに注意喚起するために、警報装置90による警告を行ってもよい。
【0036】
一方、走行支援ECU50は、自車両後方の所定距離範囲内に自車両と同一車線上の車両の存在が検出されない場合には、後続車両は存在しないと判断する(ステップ16;No)。後続車両は存在しないと判断した走行支援ECU50は、車両周辺監視装置10によって、自車両の進行を妨げる障害物や対向車の認識処理を行う(ステップ20)。走行支援ECU50は、車両周辺監視装置10によって自車両の進行方向の障害物や対向車両が検出された場合、その検出された障害物や対向車両を回避可能な回避経路を導出する(ステップ22)。走行支援ECU50は、例えば、自車両の隣接車線上に障害物や対向車が車両周辺監視装置10によって検出されない場合には、当該隣接車線に車線変更する経路を回避経路として導出する。走行支援ECU50は、対向車両や障害物等の存在により回避経路が導出不能となった場合には(ステップ22;No)、図4(a)に示されるように、ブレーキ制御システム60やエンジン制御システム70による自車両の制動制御を実行する(ステップ18)。一方、走行支援ECU50は、回避経路が導出された場合には(ステップ22;Yes)、車両周辺監視装置10によって自車両の側方又は斜め後方の車両の検出処理を行う(ステップ26)。
【0037】
走行支援ECU50は、側方又は後方に周辺車両が存在しないと判断した場合には(ステップ26;No)、図4(b)に示されるように、上記導出された回避経路に従って、操舵制御システム80による自車両の操舵制御を実行する(ステップ32)。ステップ32において操舵制御を実行する場合には、走行支援制御を行うことをドライバーに注意喚起するために、警報装置90による警告を行ってもよい。
【0038】
一方、走行支援ECU50は、側方又は後方に周辺車両が存在すると判断した場合には、その周辺車両との衝突判定を行う(ステップ28)。走行支援ECU50は、例えば、車両周辺監視装置10によって検出された側方又は後方の周辺車両と自車両との相対距離や車間時間が所定値以下である場合には、当該周辺車両と衝突するおそれがあると判定する。走行支援ECU50は、衝突判定処理により周辺車両と衝突するおそれがあると判断した場合には(ステップ30No)、図4(c)に示されるように、ブレーキ制御システム60やエンジン制御システム70による自車両の制動制御を実行する(ステップ18)。走行支援ECU50は、衝突判定処理により周辺車両と衝突するおそれがないと判断した場合には(ステップ30Yes)、図4(b)に示されるように、上記導出された回避経路に従って、操舵制御システム80による自車両の操舵制御を実行する(ステップ32)。
【0039】
したがって、上述の実施例によれば、水溜りが検出されれば、自車両に後続車両がいたとしても、後続車両の減速を促すように自車両の減速をすることができるので、自車両による水跳ねを防止するだけでなく、後続車両による水跳ねを防止することができる。一方、後続車両がいなければ、検出された水溜りを通行することによる水跳ねを防止するように操舵制御が実行されるようにできる。また、対向車や後方車両等の周辺車両の存在状況に応じた適切な水跳ねを防止する走行支援を行うことができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0041】
例えば、走行支援として操舵制御を実行する場合、制動制御を実行してもよい。このように併用することによって、より安定的な回避操舵を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態である車両用走行支援装置の構成図である。
【図2】歩行者への水跳ね判定を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態である車両用走行支援方法であって、本実施形態の車両用走行支援装置の動作を示すフローである。
【図4】走行支援制御の内容を示した図である。
【符号の説明】
【0043】
10 車両周辺監視装置
50 走行支援ECU
60 ブレーキ制御システム
70 エンジン制御システム
80 操舵制御システム
90 警報装置
A 歩行者
B 自車両
X 水跳ね判定範囲
W 水溜り
Cp 予測進路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向の水溜りを検出する水溜り検出手段と、
自車両の周辺車両を検出する周辺車両検出手段と、
自車両の減速を制御する減速制御手段と、
自車両の操舵を制御する操舵制御手段とを備え、
前記水溜り検出手段によって水溜りが検出された場合において、
前記周辺車両検出手段によって後続車両が検出されるときには前記減速制御手段によって自車両の減速が制御され、
前記周辺車両検出手段によって後続車両が検出されないときには前記操舵制御手段によって自車両の操舵が制御される、ことを特徴とする、車両用走行支援装置。
【請求項2】
前記操舵制御手段によって自車両が操舵される方向は、前記周辺車両検出手段によって検出された周辺車両の存在位置に応じて制限される、請求項1に記載の車両用走行支援装置。
【請求項3】
前記操舵制御手段による自車両の操舵が制限される方向は、前記周辺車両検出手段によって検出された側方又は斜め後方の周辺車両が存在する側への方向とする、請求項2に記載の車両用走行支援装置。
【請求項4】
前記周辺車両検出手段によって側方又は斜め後方を走行する周辺車両が検出されたときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われる、請求項2に記載の車両用走行支援装置。
【請求項5】
前記水溜り検出手段によって検出された水溜りを通行することによる水跳ねの回避経路を導出する回避経路導出手段を更に備え、
前記操舵制御手段は、前記回避経路導出手段の導出結果に応じて、自車両の操舵を制御する、請求項1又は2に記載の車両用走行支援装置。
【請求項6】
前記回避経路導出手段によって回避経路が導出不能のときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われる、請求項5に記載の車両用走行支援装置。
【請求項7】
前記周辺車両検出手段によって検出された周辺車両と自車両との衝突判定を行う衝突判定手段を更に備え、
前記操舵制御手段は、前記衝突判定手段の判定結果に応じて、自車両の操舵を制御する、請求項1又は2に記載の車両用走行支援装置。
【請求項8】
前記衝突判定手段によって衝突するおそれがあると判定されたときには、前記操舵制御手段による自車両の操舵は行われず、前記減速制御手段による自車両の減速が行われる、請求項7に記載の車両用走行支援装置。
【請求項9】
自車両の進行方向の水溜りを検出するステップと、
自車両の後続車両を検出するステップと、
前記水溜りが検出された場合に前記後続車両が検出されるときには自車両を減速制御手段によって減速させるステップと、
前記水溜りが検出された場合に前記後続車両が検出されないときには自車両を操舵制御手段によって操舵させるステップと、を備える、車両用走行支援方法。
【請求項10】
自車両の側方又は斜め後方の周辺車両を検出するステップと、
自車両の側方又は斜め後方の周辺車両が検出された場合、前記操舵制御手段による自車両の操舵を制限するとともに前記減速制御手段による自車両の減速を許可するステップと、を備える、請求項9に記載の車両用走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−179251(P2008−179251A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14137(P2007−14137)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】