説明

車両用運転操作補助装置

【課題】運転者による前後方向および左右方向の運転操作を適切にアシストすることができる車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】車両用運転操作補助装置1は、自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段10,20,21,30と、障害物検出手段10,20,21,30による検出状況に基づいて、自車両に対する障害物の存在方向、相対距離および相対速度をそれぞれ検出する障害物認識手段50と、障害物認識手段50からの信号に基づいて、自車両の障害物に対するリスク度を算出するリスク度判定手段50と、リスク度判定手段50からの信号に基づいて、運転者による自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すように、車両機器の作動を制御する車両機器操作量制御手段60,80,90と、車両機器操作量制御手段60,80,90における前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分をそれぞれ調整する配分調整手段50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置として、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点における潜在的リスク度を求めるものが知られている(例えば特許文献1参照)。そして、算出したリスク度に基づいて操舵補助トルクを制御することにより、危急な状況へ至ろうとする操舵操作を抑制する。
【特許文献1】特開平10−211886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような車両用運転操作補助装置は、特定の適切でない状況での操作の禁止を促すものであり、操舵と加減速の両方の操作を必要とするような複雑な状況では、適切な方向へ各操作を促すことは困難であった。
【0004】
本発明は、運転者による前後方向および左右方向の運転操作を適切にアシストすることができる車両用運転操作補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段による検出状況に基づいて、自車両の障害物に対するリスク度を算出するリスク度判定手段と、リスク度判定手段からの信号に基づいて、運転者による自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すように、車両機器の作動を制御する車両機器操作量制御手段と、車両機器操作量制御手段における前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分をそれぞれ調整する配分調整手段とを有し、運転者の操作を補助する。
【発明の効果】
【0006】
障害物に対するリスク度に基づいて前後・左右方向の運転操作を促すための制御量を調整するので、各障害物によるリスク度の分布に応じて、運転者による前後・左右方向の運転操作を適切に補助することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載する車両の構成図である。
【0008】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを操作する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離及び存在方向はコントローラ50へ出力される。なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。なお、レーザレーダ10は、前方車両までの車間距離およびその存在方向だけでなく、自車前方に存在する歩行者等の障害物までの相対距離およびその存在方向を検出する。
【0009】
前方カメラ20は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出し、コントローラ50へと出力する。前方カメラ20による検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0010】
後側方カメラ21は、リアウインドウ上部の左右端付近に取り付けられた2つの小型のCCDカメラ、もしくはCMOSカメラ等である。後側方カメラ21は、自車後方の道路、特に隣接車線上の状況を画像として検出し、コントローラ50へと出力する。
【0011】
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、前方カメラ20および後側方カメラ21から入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を検出する。なお、コントローラ50は、前方カメラ20および後側方カメラ21から入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を検出する。ここで、自車両周囲の障害物状況としては、自車両前方を走行する他車両までの車間距離、隣接車線を自車両後方から接近する他車両の有無と接近度合、および車線識別線(白線)に対する自車両の左右位置、つまり相対位置と角度、さらに車線識別線の形状などである。また、自車両前方を横断する歩行者や二輪車等も障害物状況として検出される。コントローラ50は、検出した障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両のリスク度を算出する。さらに、コントローラ50は、それぞれの障害物に対するリスク度を総合して自車両周囲の総合的なリスク度を算出し、以下のようにリスク度に応じた制御を行う。
【0012】
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1は、アクセルペダル・ブレーキペダルの踏み込み操作やハンドル(ステアリングホイール)操舵操作の際に発生する反力を制御することによって、運転者による自車両の加減速操作や操舵操作を補助し、運転者の運転操作を適切にアシストするものである。そこで、コントローラ50は、自車両周囲の各障害物に対するリスク度を、それぞれ車両前後方向および左右方向に分けて加算し、それぞれの加算結果から車両前後方向の反力制御量および車両左右方向の反力制御量を算出する。コントローラ50は、算出した前後方向の反力制御量をアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90へと出力し、算出した左右方向の反力制御量を操舵反力制御装置60へと出力する。つまり、コントローラ50は、反力制御量を前後方向および左右方向のリスク度に応じて、前後方向および左右方向に配分する配分調整手段として機能する。
【0013】
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50から出力される反力制御量に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がハンドルを操作する際に発生する操舵反力を任意に制御することができる。
【0014】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50から出力される反力制御量に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。
【0015】
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50から出力される反力制御量に応じて、ブレーキブースタ91で発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタ91は、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル92を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル92を踏み込みやすくなる。なお、ここでは、ブレーキブースタ91によってエンジンの負圧を利用してブレーキアシスト力を発生させているが、これには限定されず、例えばコンピュータ制御による油圧力を用いてブレーキアシスト力を発生させることもできる。
【0016】
次に第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。その作用の概略を以下に述べる。
【0017】
コントローラ50により、自車両の走行車速、および自車両と自車前方や後側方に存在する他車両との相対位置やその移動方向と、自車両の車線識別線(白線)に対する相対位置等の自車両周囲の障害物状況を認識する。コントローラ50は、 認識した障害物状況に基づいて、各障害物に対する自車両のリスク度を求める。コントローラ50はさらに、各障害物に対するリスク度を前後・左右方向の成分毎に加算することにより、前後方向の反力制御量および左右方向の反力制御量を算出する。
【0018】
算出された前後方向の反力制御量は、前後方向の反力制御指令値として、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90へ出力される。アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90は、それぞれ入力された反力制御指令値に応じて、サーボモータ81およびブレーキブースタ91を制御することにより、アクセルペダル反力特性およびブレーキペダル反力特性を変更する。アクセルペダル・ブレーキペダル反力特性を変更することにより、運転者の実際のアクセルペダル操作量およびブレーキペダル操作量を適切な値に促すように制御する。
【0019】
一方、算出された左右方向の反力制御量は、左右方向の反力制御指令値として、操舵反力制御装置60へ出力される。操舵反力制御装置60は、入力された制御反力指令値に応じて、サーボモータ61を制御することにより、操舵反力特性を変更する。操舵反力特性を変更することにより、運転者の実際の操舵角を適正な操舵角に促すように制御する。
【0020】
上述した制御において、どのように反力特性指令値、すなわち反力制御指令値を決定するかについて、以下に、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態によるコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0021】
−コントローラ50の処理フロー(図3)−
まず、ステップS110で走行状態を読み込む。ここで、走行状態は、自車周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方走行車までの相対距離や相対角度と、前方カメラ20からの画像入力に基づく自車両に対する白線の相対位置、すなわち左右方向の変位と相対角度、白線の形状および前方走行車までの相対距離や相対角度と、後側方カメラ21からの画像入力に基づく隣接車線後方に存在する走行車両までの相対距離や相対角度と、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速を読み込む。さらに、前方カメラ20および後側方カメラ21で検出される画像に基づいて、自車周囲に存在する障害物の種別、つまり障害物が四輪車両、二輪車両、歩行者またはその他であるかを認識する。
【0022】
ステップS120では、ステップS110で読み込み、認識した走行状態データに基づいて、現在の車両周囲状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、不図示のメモリに記憶されている自車両に対する各障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS110で得られた現在の走行状態データとにより、現在の各障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物となる他車両や白線が、自車両の周囲にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
【0023】
ステップS130では、認識された各障害物に対する余裕時間(TTC:Time To Collision)を障害物毎に算出する。ここで、障害物kに対する余裕時間TTCkは、以下の(式1)で求められる。
【数1】

ここで、Dk:自車両から障害物kまでの相対距離、Vrk:自車両に対する障害物kの相対速度、σ(Dk)、σ(Vrk):相対距離、相対速度のばらつき、をそれぞれ示す。
【0024】
相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、検出器の不確定性や不測の事態が発生した場合の影響度合の大きさを考慮して、障害物kを認識したセンサの種類や、認識された障害物kの種別に応じて設定する。レーザレーダ10は、カメラ、例えばCCD等による前方カメラ20や後側方カメラ21による障害物の検出と比べて、検出距離、つまり自車両と障害物との相対距離の大きさによらず正しい距離を検出することができる。そこで、例えば図4(a)に示すように、レーザレーダ10で障害物kまでの相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkによらず、そのばらつきσ(Dk)をほぼ一定値に設定する。一方、カメラ20,21で相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkが大きくなるほどばらつきσ(Dk)が指数関数的に増加するように設定する。ただし、障害物kの相対距離Dkが小さい場合、レーザレーダで相対距離Dkを検出した場合に比べて、カメラによってより正確に相対距離を検出することができるので、相対距離のばらつきσ(Dk)を小さく設定する。
【0025】
例えば図4(b)に示すように、レーザレーダ10で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkのばらつきσ(Vrk)は、相対速度Vrkに比例して大きくなるように設定する。一方、カメラ20,21で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkが大きくなるほど相対速度のばらつきσ(Vrk)が指数関数的に増加するように設定する。なお、図4(a)、(b)は、検出される障害物が四輪車両である場合の例を示している。
【0026】
前方カメラ20,後側方カメラ21によって障害物状況を検出した場合、検出画像に画像処理を行うことによって障害物の種別を認識することができる。そこで、図5(a)、(b)に示すように、認識される障害物の種別に応じて相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を設定する。図5(a)、(b)には、障害物kとして四輪車両、二輪車両、歩行者およびレーンマーカ(白線)が検出された場合のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)をそれぞれ示している。
【0027】
カメラ20,21による相対距離Dkの検出は、障害物kの大きさが大きいほどその検出精度が高いため、例えば図5(a)に示すように、障害物が四輪車両である場合の相対距離のばらつきσ(Dk)を二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Dk)に比べて小さく設定する。一方、相対速度のばらつきσ(Vrk)は、例えば図5(b)に示すように、障害物k毎に想定される移動速度が大きいほど、ばらつきσ(Vrk)が大きくなるように設定する。つまり、四輪車両の移動速度は二輪車両や歩行者の移動速度よりも大きいと想定されるので、相対速度Vrkが同じ場合、障害物kが四輪車両である場合のばらつきσ(Vrk)は、二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Vrk)に比べて大きく設定する。なお、図5(a)、(b)に示すように、レーンマーカに対する相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、その他の障害物に対する相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)σ(Vrk)に比べて小さく設定している。
【0028】
ステップS140では、ステップS130で算出した余裕時間TTCを用いて、各障害物kに対するリスク度RPkを算出する。ここで、各障害物kに対するリスク度RPkは以下の(式2)で求められる。
【数2】

ここで、wk:障害物kの重みを示す。(式2)に示すように、リスク度RPkは余裕時間TTCの逆数を用いて、余裕時間TTCkの関数として表されており、リスク度RPkが大きいほど障害物kへの接近度合が大きいことを示している。
【0029】
障害物k毎の重みwkは、検出された障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みwk=1に設定する。一方、障害物kがレーンマーカである場合、自車両が近接あるいは接触した場合の重要度はその他の障害物に比べて相対的に小さくなるため、例えば重みwk=0.5程度に設定する。また、同じレーンマーカでも、その向こう側に隣接車線が存在する場合と、レーンマーカの向こう側に車線が存在せずガードレールのみの場合では、自車両の近接時の重要度が異なるため、重みwkを異なるように設定することができる。
【0030】
レーンマーカは、自車両に対する存在方向が一つの方向に定まるものではなく、ある存在方向範囲に分布するものである。そこで、レーンマーカについては、微小角度に分割してそれぞれのリスク度を算出し、それを存在方向範囲で積分してリスク度RPlaneを算出する。すなわち、レーンマーカに対するリスク度RPlaneは、以下の(式3)で表される。
【数3】

【0031】
ステップS150では、ステップS140で算出した障害物k毎のリスク度RPkから、車両前後方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な前後方向リスク度を算出する。前後方向リスク度RPlongitudinalは、以下の(式4)で算出される。なお、各障害物kに対するリスク度RPkは、レーンマーカに対するリスク度RPlaneを含む。
【数4】

ここで、θk:自車両に対する障害物kの存在方向を示し、障害物kが車両前方向、つまり自車正面に存在する場合、θk=0とし、障害物kが車両後方向に存在する場合、θk=180とする。
【0032】
つづくステップS160では、ステップS140で算出した障害物k毎のリスク度RPkから、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスク度を算出する。左右方向リスク度RPlateralは、以下の(式5)で算出される。
【数5】

【0033】
ステップS170では、ステップS150で算出した前後方向リスク度RPlongitudinalから、前後方向制御指令値、すなわちアクセルペダル反力制御装置80へ出力する反力制御指令値FAと、ブレーキペダル反力制御装置90へ出力する反力制御指令値FBとを算出する。前後方向リスク度RPlongitudinalに応じて、リスク度が大きいほど、アクセルペダル82に関しては、アクセルペダル82を戻す方向へ制御反力を発生させ、ブレーキペダル92に関しては、ブレーキペダル92を踏み込みやすい方向へ制御反力を発生させる。
【0034】
図6に、前後方向リスク度RPlongitudinalと、アクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図6に示すように、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxよりも小さい場合、前後方向リスク度RPlongitudinalが大きいほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxより大きい場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大値FAmaxに固定する。
【0035】
図7に、前後方向リスク度RPlongitudinalと、ブレーキペダル反力制御指令値FBとの関係を示す。図7に示すように、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxよりも大きい場合、前後方向リスク度RPlongitudinalが大きいほど、小さなブレーキペダル反力を発生させ、すなわち大きなブレーキアシスト力を発生させるようにブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RP1より大きくなると、最小のブレーキペダル反力を発生させるように反力制御指令値FBをFBminに固定する。前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxよりも小さい場合は、ブレーキペダル反力制御指令値FBをゼロに設定し、ブレーキペダル反力特性は変化させない。
【0036】
このように、図6,図7に示すように、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxより小さい場合は、アクセルペダル反力特性を変更し、前後方向リスク度RPlongitudinalの大きさをアクセルペダル操作反力として運転者に知らせる。一方、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxより大きい場合は、アクセルペダル反力制御指令値を最大として、運転者がアクセルペダル82を開放するように促す。さらに、ブレーキペダル反力制御指令値を小さくして、運転者がブレーキ操作に移行した際にブレーキペダル92を踏み込みやすいように制御する。
【0037】
ステップS180では、ステップS160で算出した左右方向のリスク度RPlateralから、左右方向制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60への操舵反力制御指令値FSを算出する。左右方向のリスク度RPlateralに応じて、リスク度が大きいほど、ハンドル操舵角を戻す方向、つまりハンドルを中立位置へと戻す方向へ大きな操舵反力を発生させる。図8に、左右方向リスク度RPlateralと、操舵反力制御指令値FSとの関係を示す。なお、図8において、左右方向リスク度RPlateralがプラスである場合は、右方向のリスク度であることを示し、左右方向リスク度RPlateralがマイナスである場合は、左方向のリスク度であることを示している。
【0038】
図8に示すように、左右方向リスク度RPlateralの絶対値が所定値RPmaxよりも小さい場合は、リスク度の絶対値が大きくなるほど、ハンドルを中立位置へ戻す方向の操舵反力が大きくなるように操舵反力制御指令値FSを設定する。左右方向リスク度RPlateralの絶対値が所定値RPmaxよりも大きい場合は、ハンドル操舵角を迅速に中立位置に戻すように、最大の操舵反力制御指令値FSmaxを設定する。
【0039】
ステップS190では、ステップS170およびステップS180で求めた前後方向制御指令値および左右方向制御指令値を、それぞれアクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60へ出力し、今回の処理を終了する。
【0040】
以上説明したように、コントローラ50によって、自車前方や後側方に存在する他車両の自車両に対する相対位置やその移動方向、自車両の走行車速、および自車両の車線識別線(白線)に対する相対位置といった走行状況を認識し、認識したデータに基づいて各障害物kに対するリスク度RPkを算出する。各障害物kに対するリスク度RPkの前後方向成分・左右方向成分をそれぞれ加算することにより、自車周囲の障害物状況を考慮した総合的な前後方向へのリスク度および左右方向へのリスク度を算出することができる。さらに、総合的な前後・左右方向へのリスク度に基づいて、運転者による自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すためのアクセルペダル・ブレーキペダルの反力制御指令値FA、FB、および操舵反力制御指令値FSを算出することができる。このように、コントローラ50は、総合的な前後・左右方向へのリスク度に応じて、前後方向制御指令値および左右方向制御指令値を設定し、前後方向の制御量と左右方向の制御量の配分を調整する配分調整手段として機能する。とくに、図3のフローチャートのステップS150〜ステップS180が、配分調整手段に相当する。
【0041】
アクセルペダル・ブレーキペダルの反力制御指令値FA、FBと、操舵反力制御指令値FSの配分は、各障害物kに対する個別のリスク度RPkを全障害物に関して前後・左右方向成分毎に加算した、前後・左右方向の総合的なリスク度に基づいて算出される。そのため、第1の実施の形態の車両用運転操作補助装置1による前後・左右方向からの操作反力の合力、つまりアクセルペダル・ブレーキペダル反力および操舵反力の合力は、各々の障害物kからのリスク度を総合的に加算した方向から発生される。したがって、加減速操作と操舵操作とを組み合わせて、運転者の運転操作をよりリスク度が低い方向へと促すことができる。
【0042】
上述したように、本発明の第1の実施の形態においては、以下の様な効果を奏することができる。
(1)自車両周囲に存在する障害物kを認識して各障害物kに対するリスク度RPkを算出し、リスク度RPkに基づいて、運転者の前後・左右方向の運転操作を適切な方向へ促すために車両機器の制御量の配分を調整する。これにより、各障害物kによって発生するリスク度RPkの分布に応じて、運転者による車両前後方向および車両左右方向の運転操作を適切にアシストすることができる。
(2)算出した前後方向の制御量に応じて、アクセルペダルに発生させる操作反力を制御するので、運転者による加減速操作を適切にアシストすることができる。
(3)自車両から自車両周囲に存在する各障害物kまでの距離を相対距離で割った余裕時間TTCkを算出し、この余裕時間TTCkの関数としてリスク度RPkを算出する。ここでは、リスク度RPkは、余裕時間TTCkの逆数を用いて自車両と障害物kとの接近度合として表されている。これにより、自車両と障害物kとの接近度合に応じて、前後・左右方向の操作量がより適切なものとなるように運転者の操作をアシストすることが可能となる。
(4)余裕時間TTCを算出する際に、検出された自車両と各障害物との距離および相対速度のばらつきを考慮するので、不測の事態が発生した場合の影響度合を考慮して車両機器の制御量を決定することが可能となる。これにより、運転者に安心感を与えるような運転操作補助制御を行うことができる。また、認識される障害物の種別に応じて相対距離および相対速度のばらつきの大きさを変更するので、障害物の種別による不測の事態が発生する可能性および影響度合の大きさを考慮して制御量を決定することが可能となる。さらに、複数のセンサを用いて自車周囲の障害物を検出し、障害物を検出したセンサの種別に応じて相対距離および相対速度のばらつきの大きさを変更するので、センサ固有の検出性能に応じて、検出の不確定さを考慮した制御量を決定することが可能となる。
(5)認識される障害物kの種別に応じて各障害物kの重みを変更し、各障害物kの重みを考慮した余裕時間を用いてリスク度RPkを算出するので、障害物kの種別による不測の事態の影響度合の大きさを考慮して制御量を決定することができる。これにより、運転者に安心感を与えるような運転操作補助制御を行うことが可能となる。
(6)自車両に対する各障害物kの存在方向に応じてリスク度の前後方向および左右方向の配分を算出し、前後方向制御量および左右方向制御量の配分を決定する。各障害物の存在方向とリスク度の大きさによって前後・左右方向の制御量が決定されるので、障害物の存在方向に応じた操作を適切にアシストすることができる。
(7)算出した左右方向の制御量に応じて、ハンドル操舵力を制御するので、運転者による操舵操作を適切にアシストすることができる。また、算出した前後方向の制御量に応じて、ブレーキペダルに発生させる操作反力を制御するので、運転者による加減速操作を適切にアシストすることができる。
(8)各障害物kに対するリスク度RPkから、前後方向および左右方向の総合的なリスク度を算出し、総合的なリスク度に応じて、運転者の前後・左右方向の運転操作を適切な方向へ促すために車両機器の制御量の配分を調整する。これにより、各障害物kによって発生するリスク度RPkの分布に応じて、運転者による車両前後方向および車両左右方向の運転操作を適切にアシストすることができる。余裕時間TTCkの逆数を用いて自車両と障害物kとの接近度合、すなわちリスク度を算出し、リスク度の前後方向成分および左右方向成分を加算して総合的な前後方向および左右方向のリスク度を算出する。これにより、自車両と障害物kとの接近度合に応じて、前後・左右方向の操作量がより適切なものとなるように運転者の操作をアシストすることが可能となる。
【0043】
なお、上述した第1の実施の形態においては、余裕時間TTCの逆数に重みwを掛けてリスク度RPを算出したが、これに限定されるものではない。リスク度RPは、余裕時間TTCの関数として定義され、余裕時間TTCが小さくなるほどリスク度RPが大きくなるようなものであれば、同様の効果を得ることができる。
【0044】
《第2の実施の形態》
本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、以下に説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1および図2を用いて説明した第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。以下に、第2の実施の形態の作用の概略を説明する。
【0045】
コントローラ50により、自車両の走行車速、および自車両と自車前方や後側方に存在する他車両との相対位置やその移動方向と、自車両の車線識別線(白線)に対する相対位置等の自車両周囲の障害物状況を認識する。コントローラ50は、 認識した障害物状況に基づいて、各障害物に対する自車両のリスク度を求める。コントローラ50はさらに、車両前後の操作量、すなわち加減速操作量の現在の値からの変化、および車両左右の操作量、すなわち操舵操作量の現在の値からの変化に対するリスク度の変化を予測し、前後・左右の各操作量変化に対する前後・左右方向のリスク度変化量を算出する。さらに、算出した各リスク度変化量に基づいて、前後方向の反力制御量および左右方向の反力制御量を算出する。
【0046】
コントローラ50は、現在の車両前後の加減速の操作量として、アクセルペダル82およびブレーキペダル92の踏み込み量を検出する。これは、アクセルペダル82,ブレーキペダル92にそれぞれストロークセンサを設けて踏み込み量を検出してもよいし、サーボモータ81,ブレーキブースタ91の駆動量から踏み込み量を検出してもよい。また、コントローラ50は、車両左右の操作量としてハンドル操舵角を検出する。
【0047】
コントローラ50で算出された前後・左右方向の反力制御量は、反力制御指令値として、アクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60へそれぞれ出力される。アクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60は、反力制御指令値に応じて、サーボモータ81,ブレーキブースタ91およびサーボモータ61をそれぞれ制御して反力特性を変更し、運転者の実際のアクセルペダル・ブレーキペダル操作量およびハンドル操舵角を適切な値に促すように制御する。
【0048】
上述した制御において、どのように反力特性指令値、すなわち反力制御指令値を決定するかについて、以下に、図9を用いて説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態によるコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0049】
−コントローラ50の処理フロー(図9)−
ステップS210からステップS240では、走行状態の読み込み、および各障害物kに対するリスク度RPkの算出の処理を行う。これらの処理は図3を用いて説明した第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0050】
ステップS250では、現在の車両機器の操作量、つまりアクセル/ブレーキペダルの踏み込み量θABと、ハンドル操舵角θSとを読み込む。アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABとしては、アクセルペダル82が操作されたときにはアクセルペダル操作量を、ブレーキペダル92が操作された時にはブレーキペダル操作量を検出する。
【0051】
ステップS260では、ステップS240で算出した現在の各障害物kに対するリスク度RPkと、ステップS250で読み込んだ現在の各操作量とから、各操作量が現在の値から所定値だけ変化した場合のリスク度RPkの変化を予測する。具体的には、図10に示すように、前後方向については、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABが現在の値に対してΔABだけ増加した場合、減少した場合についてそれぞれ自車速の変化を予測し、それによる各障害物kに対するリスク度RPkの変化を算出する。つまり、自車速が変化した後のリスク度を予測する。上述した(式2)に示すように、リスク度RPkは余裕時間TTCkの逆数の関数であり、余裕時間TTCkは自車両と障害物kとの相対速度Vrkを用いて算出される。つまり、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABの変化によって自車速が変化すると、リスク度RPkも変化する。
【0052】
なお、ここでは、リスク度RPkが増加する方向へアクセルペダル82あるいはブレーキペダル92が操作されると、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABが増加すると定義する。例えば、アクセルペダル82の操作量が現在の踏み込み量から増加、あるいはブレーキペダル92の操作量が現在の踏み込み量から減少した場合に、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABが増加したとすることができる。また、走行状況によっては、アクセルペダル操作量が増加した場合、あるいはブレーキペダル操作量が減少した場合に、リスク度RPkが低下することもある。
【0053】
また、左右方向については、図10に示すように、ハンドル操舵角θSが現在の値に対してΔSだけ増加した場合、減少した場合についてそれぞれ自車両の進行方向の変化を予測し、それによる各障害物kに対するリスク度RPkおよび障害物kの自車両に対する方向θkの変化を算出する。ハンドル操舵角θSの変化によって自車両の進行方向が変化すると、自車両と障害物kとの相対位置および相対距離が変化し、これに伴ってリスク度RPkも変化する。なお、図10はハンドルが右方向へ操舵された場合の例を示しており、ハンドル操舵角が中立位置にある場合の左右方向操作量θSを0とする。
【0054】
ここで、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θAB、ハンドル操舵角θSの変化量ΔAB、ΔSとしては、図9に示すコントローラ50における1回の処理が行われる時間で、通常の運転操作によって考えられる操作の変化幅を所定値として決定すればよい。なお、1回の処理が行われる時間は車種や処理内容によって異なるが、例えば0.1〜0.2secとする。このときのアクセル/ブレーキペダル踏み込み量の変化量ΔAB、ハンドル操舵角の変化量ΔSは、例えば、それぞれ10mm、5度と設定することができる。ただし、この変化幅は予め設定された所定値に限定されず、学習制御により1回の運転、すなわちイグニッションキーをオンにしてからオフにするまでに操作される操作量の平均値を用いて設定してもよい。
【0055】
ステップS270では、ステップS260で算出した各障害物kに対する現在のリスク度RPkおよび予測される変化量から、総合的な前後方向のリスク度RPlongitudinalの変化量を算出する。ここで、現在の前後方向操作量θABにおける総合的な前後方向のリスク度RPlongitudinal(0)と、操作量が現在値に対して変化した場合の総合的な前後方向のリスク度RPlongitudinalとを、総合的な前後方向のリスク度RPlongitudinalの変化量とする。現在の前後方向操作量θABにおける総合的な前後方向のリスク度RPlongitudinal(0)は、上述した(式4)を用いて、以下の(式6)で表される。
【数6】

【0056】
同様に、(式4)を用いて、前後方向操作量が現在の値θABに対してΔABだけ増加した場合(+ΔAB)、および減少した場合(−ΔAB)について、それぞれ前後方向のリスク度(RPlongitudinal(+)、RPlongitudinal(−))を算出する。図11に、現在の前後方向操作量θABに対する前後方向のリスク度RPlongitudinal(0)、および前後方向操作量θABが変化した場合(±ΔAB)の前後方向のリスク度RPlongitudinal(±)を示す。
【0057】
ステップS280では、ステップS260で算出した各障害物kに対する現在のリスク度RPkおよび予測される変化量から、総合的な左右方向のリスク度RPlateralの変化量を算出する。ここで、現在の前後方向操作量θSにおける総合的な左右方向のリスク度RPlateral(0)と、操作量が現在値に対して変化した場合の総合的な左右方向のリスク度RPlateralとを、総合的な左右方向のリスク度RPlateralの変化量とする。現在の左右方向操作量θSにおける総合的な左右方向のリスク度RPlateral(0)は、上述した(式5)を用いて、以下の(式7)で表される。
【数7】

【0058】
同様に、(式5)を用いて、左右方向操作量が現在の値θSに対してΔSだけ増加した場合(+ΔS)、および減少した場合(−ΔS)について、それぞれ左右方向のリスク度(RPlateral(+)、RPlateral(−))を算出する。図12に、現在の左右方向操作量θSに対する左右方向のリスク度RPlateral(0)、および左右方向操作量θSが変化した場合(±ΔS)の左右方向のリスク度RPlateral(±)を示す。なお、図12は、ハンドルが右方向に操作された例を示している。
【0059】
ステップS290では、ステップS270で算出した前後方向のリスク度RPlongitudinalの変化量より、前後方向制御指令値、すなわちアクセルペダル反力制御装置80への反力制御指令値FAと、ブレーキペダル反力制御装置90への反力制御指令値FBとを算出する。ここでは、まず、現在の前後方向リスク度RPlongitudinal(0)に応じて、アクセルペダル82に関しては、リスク度が大きいほどアクセルペダル82を開放する方向へ制御反力を発生させる。また、ブレーキペダル92に関しては、リスク度が大きいほどブレーキペダル92を踏み込みやすい方向へ制御反力を発生させる。したがって、図13に示すように、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxよりも小さい場合は、前後方向リスク度RPlongitudinalが大きいほど大きなアクセルペダル反力が発生するように反力制御指令値FA(0)を算出する。前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxよりも大きい場合は、最大の操作反力を発生させるようにアクセルペダル操作反力制御指令値FAは最大値FAmaxに固定する。
【0060】
図14に示すように、前後方向リスク度RPlongitudinalが所定値RPmaxより大きい場合、前後方向リスク度RPlongitudinalが大きくなるほど小さなブレーキペダル反力が発生するように反力制御指令値FB(0)を算出する。
【0061】
また、前後方向操作量が現在値θABに対して+ΔAB、−ΔABだけ変化した場合の前後方向リスク度RPlongitudinal(+)、RPlongitudinal(−)について、図13、図14に従って、それぞれアクセルペダル反力制御指令値(FA(+)、FA(−))、およびブレーキペダル反力制御指令値(FB(+)、FB(−))を算出する。
【0062】
ステップS300では、ステップS280で算出した左右方向のリスク度RPlateralの変化量より、左右方向制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60への反力制御指令値FSを算出する。ここでは、まず、現在の左右方向リスク度RPlateral(0)の大きさに応じて、リスク度が大きいほど、ハンドル操舵角を中立位置へ戻す方向へ操舵反力を発生させる。したがって、図15に示すように、左右方向リスク度RPlateral(0)に応じて操舵反力制御指令値FS(0)を算出する。また、左右方向操作量が現在値θSに対して+ΔS、−ΔSだけ変化した場合の左右方向リスク度RPlateral(+)、RPlateral(−)について、図15に従って、それぞれ操舵反力制御指令値(FS(+)、FS(−))を算出する。
【0063】
ステップS310では、ステップS290およびステップS300で算出した各反力制御指令値FA、FB、FSを、それぞれアクセルペダル反力制御指令値80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60に出力し、今回の処理を終了する。
【0064】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50から入力された制御指令値に応じて、サーボモータ81を制御し、図16に示すようにアクセルペダル反力特性を変更する。図16において、反力制御を行わない場合の通常のアクセルペダル反力特性を破線で示す。図16に示すように、操作量θABである現在のアクセルペダル反力は、制御指令値に応じて通常よりもFA(0)だけ大きくなっている。さらに、アクセルペダル82が現在の操作量θABから+ΔABあるいは−ΔABだけ操作された場合には、それぞれ通常特性よりもFA(+)、FA(−)だけ大きいアクセルペダル反力を発生させる。これにより、現時点でのリスク度をアクセルペダル反力として発生させて運転者のアクセルペダル操作をアシストするとともに、運転者によってさらにアクセルペダル操作が行われた場合に、リスク度がどのように変化するかをアクセルペダル反力特性の傾きとして運転者に知らせることが可能となる。
【0065】
同様に、ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50から入力された制御指令値に応じて、ブレーキブースタ91を制御し、図17に示すようにブレーキペダル特性を変更する。図17において、反力制御を行わない場合の通常のブレーキペダル反力特性を破線で示す。図17に示すように、操作量θABである現在のブレーキペダル反力は、反力制御指令値FB(0)=0であるので、通常の反力と同じである。ブレーキペダル92が現在の操作量θABから、+ΔABだけ操作された場合には、前後方向リスク度RPlongitudinalが大きくなるので、通常特性よりもFB(+)だけ小さいブレーキペダル反力を発生させる。一方、ブレーキペダル92が現在の操作量θABから−ΔABだけ操作された場合は、反力制御指令値FB(−)=0であるので、ブレーキペダル反力特性は変更しない。これにより、現時点でのリスク度をブレーキペダル反力として発生させて運転者のブレーキペダル操作をアシストするとともに、運転者によってさらにブレーキペダル操作が行われた場合に、リスク度がどのように変化するかをブレーキペダル反力特性の傾きとして運転者に知らせることが可能となる。
【0066】
操舵反力制御装置60は、コントローラ50から入力された制御指令値に応じて、サーボモータ61を制御し、図18に示すように操舵反力特性を変更する。図18において、反力制御を行わない場合の通常の操舵反力特性を破線で示す。図18に示すように、操作量θSである現在の操舵反力は、通常の操舵反力よりFS(0)だけ大きくなっている。さらに、ハンドル操舵角が現在の操作量θSより+ΔS、−ΔSだけ操作された場合には、それぞれFS(+)、FS(−)だけ操舵反力を増加させる。これにより、現時点でのリスク度を操舵反力として発生させて運転者の操舵操作をアシストすることができるとともに、運転者によってさらにハンドル操舵が行われた場合に、どのようにリスク度が変化するかを操舵反力の傾きとして運転者に知らせることが可能となる。
【0067】
このように、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置は、上述した第1の実施の形態と同様に、反力制御指令値FA、FB、FSに応じて、前後・左右からの操作反力の合力が、各々の障害物kからのリスク度を総合的に加算した方向から発生する。これにより、加減速操作と操舵操作とを組み合わせて運転者の運転操作をよりリスク度が低い方向へ促すことが可能となる。
【0068】
また、アクセル/ブレーキペダル操作量およびハンドル操作量の変化に対するリスク度の変化を予測し、総合的なリスク度が、運転者の運転操作によって現状よりも高くなる場合には、制御量、すなわち発生させる操作反力を増加し、現状よりも低くなる場合には、制御量、すなわち発生させる操作反力を減少させるように制御する。なお、ブレーキペダル反力制御については、リスク度が現状よりも高くなる場合には反力を低下させてブレーキペダル92を踏み込みやすくし、現状よりも低くなる場合には反力を増加あるいは固定する。このように、運転者は、現時点でのリスク度に応じて、そのリスク度を低下させるための操作、つまり加減速操作および操舵操作を促されるとともに、自らの運転操作の変化に対するリスク度の変化を反力特性の変化として理解することができ、より適切な操作の方向へと促される。
【0069】
上述したように、本発明の第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
【0070】
現在予測される将来の前後方向および左右方向の操作量変化に対するリスク度の変化を予測し、予測されるリスク度の変化に応じて、前後方向制御量および左右方向制御量の配分を決定する。これにより、現時点でのリスク度だけでなく、運転者による車両機器の操作によって変化するリスク度まで考慮して、適切に前後方向および左右方向の操作をアシストすることができる。
【0071】
《第3の実施の形態》
本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、以下に説明する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1および図2を用いて説明した第1および第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。ここでは、第1および第2の実施の形態との相違点を主に説明する。以下に、第3の実施の形態の作用の概略を説明する。
【0072】
コントローラ50により、自車両の走行車速、および自車両と自車前方や後側方に存在する他車両との相対位置やその移動方向と、自車両の車線識別線(白線)に対する相対位置等の自車両周囲の障害物状況を認識する。コントローラ50は、 認識した障害物状況に基づいて、各障害物に対する自車両のリスク度を求める。コントローラ50はさらに、各障害物に対するリスク度を加算して全リスク度の方向、つまり総合的なリスク度が自車両に対してどの方向から発生しているかを算出し、その方向に応じて前後・左右のリスク度に対するゲインを算出する。さらに、算出したこれらの値に基づいて、前後方向の反力制御量および左右方向の反力制御量を算出する。
【0073】
コントローラ50で算出された前後・左右の反力制御量は、反力制御指令値として、アクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60へそれぞれ出力される。アクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60は、反力制御指令値に応じて、サーボモータ81,ブレーキブースタ91およびサーボモータ61をそれぞれ制御して反力特性を変更し、運転者の実際のアクセルペダル・ブレーキペダル操作量およびハンドル操舵角を適切な値に促すように制御する。
【0074】
上述した制御において、どのように反力特性指令値、すなわち反力制御指令値を決定するかについて、以下に、図19を用いて説明する。図19は、本発明の第3の実施の形態によるコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0075】
−コントローラ50の処理フロー(図19)−
ステップS410〜ステップS460では、走行状態の読み込み、各障害物kに対するリスク度RPkの算出、および算出したリスク度の前後・左右方向毎の加算の処理が行われる。これらの処理は、上述した第1の実施の形態におけるステップS110〜ステップS160での処理(図3参照)と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0076】
ステップS470では、ステップS450,ステップS460で算出された総合的な前後・左右方向のリスク度RPlongitudinal、RPlateralから、全リスク度の方向φALL、すなわち総合的なリスク度が自車両に対してどの方向から発生しているかを算出する。全リスク度の方向φALLは、以下の(式8)を用いて算出される。
【数8】

ここで、障害物からのリスク度が自車正面から発生する場合にφALL=0度、自車後側から発生する場合にφALL=180度とし、リスク度が右側あるいは左側から発生する場合に、|φALL|=90度とする。
【0077】
ステップS480では、ステップS470で算出した全リスク度方向φALLの絶対値に応じて、前後・左右方向制御指令値に対するゲインをそれぞれ算出する。ここで、前後方向ゲインGlongitudinal、左右方向ゲインGlateralは、図20に示すように設定される。なお、図20において、横軸を全リスク度方向φALLの絶対値とし、縦軸を前後方向ゲインGlongitudinalおよび左右方向ゲインGlateralとする。図20に示すように、前後方向ゲインGlongitudinalは、全リスク度方向φALLの絶対値が小さい領域、つまり|φALL|が所定値φ1よりも小さく障害物からの総合的なリスク度がほぼ自車前方から発生するとみなされる場合に、1に設定される。前後方向ゲインGlongitudinalは、全リスク度方向φALLの絶対値が所定値φ1を超えて大きくなるほど、小さくなり、φALLの絶対値が90度以上の領域、つまり障害物からのリスク度が自車後側方および後方から発生するとみなされる場合に、0となる。
【0078】
また、図20に示すように、左右方向ゲインGlateralは、全リスク度方向φALLの絶対値が90度付近、つまり障害物からのリスク度が車両横方向から発生するとみなされる場合に、1となり、φALLの絶対値が0度付近あるいは180度付近でゼロとなる。
【0079】
ステップS480では、まず上述した第1の実施の形態のステップS170(図3参照)と同様に、前後方向リスク度RPlongitudinalから、前後方向制御指令値、すなわちアクセルペダル反力制御装置80への反力制御指令値FAと、ブレーキペダル反力制御装置90への反力制御指令値FBとを算出する。反力制御指令値FA、FBは、それぞれ図6,図7に示すように算出する。さらに、算出した反力制御指令値FA、FBに、ステップS480で算出した前後方向ゲインGlongitudinalをそれぞれ積算し、実際にアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90に出力する指令値とする。
【0080】
ステップS500では、まず、上述した第1の実施の形態と同様に(図3ステップS180参照)、左右方向リスク度RPlateralから、左右方向制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60への反力制御指令値FSを算出する。反力制御指令値FSは、図8に示すように算出する。さらに、算出した反力制御指令値FSに、ステップS480で算出した左右方向ゲインGlateralを積算し、実際に操舵反力制御装置60に出力する指令値とする。
【0081】
ステップS510では、ステップS490およびステップS500で算出した各制御指令値FA、FB、FSを、アクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90および操舵反力制御装置60へとそれぞれ出力し、今回の処理を終了する。
【0082】
このように、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置は、上述した第1および第2の実施の形態と同様に、反力制御指令値FA、FB、FSに応じて、前後・左右からの操作反力の合力が、各々の障害物kからのリスク度を総合的に加算した方向から発生する。これにより、加減速操作と操舵操作とを組み合わせて運転者の運転操作をよりリスク度が低い方向へ促すことが可能となる。
【0083】
また、各障害物kから発生するリスク度を積算した全リスク度の方向φALLを算出し、全リスク度方向φALLに応じて前後・左右方向ゲインを設定する。そして、前後・左右方向反力制御指令値に、前後・左右方向ゲインをそれぞれ積算することによって実際に出力する反力制御指令値を設定するので、総合的なリスク度の方向に応じて操作反力制御を行うことができる。運転者にとっては、発生する操作反力が前後・左右のいずれの方向からのリスク度によるものかを容易に理解することができ、運転者の操作をより適切な方向へと促すことが可能となる。
【0084】
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態においては、自車両周囲の障害物状況、つまり総合的なリスク度に応じて、前後方向あるいは左右方向に発生させる制御量、すなわち操作反力の重み付けを変更するので、より詳細な操作反力制御を行い、運転者の運転操作をアシストすることができる。なお、操作反力の重み付けだけでなく、自車両周囲の障害物状況に応じて操作反力を発生させるタイミングを変更してもよい。例えば、障害物が車両斜め前方に存在する場合、始めに前後方向の操作反力制御を行い、その後左右方向の操作反力制御を行うようにすることができる。
【0085】
上述したように、本発明の第3の実施の形態においては、上述した第1および第2の実施の形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
【0086】
各障害物kに対するリスク度RPkを積算して総合的なリスク度の発生する方向φALLを算出し、これに基づいて前後方向制御量および左右方向制御量を決定する。これにより、前後・左右のリスク度が互いに影響しあっていることを操作反力として運転者に明確に知らせることができ、運転者による操作を適切にアシストすることができる。
【0087】
なお、上述した本発明の一実施の形態においては、余裕時間TTCの関数としてリスク度RPを算出したが、自車両周囲の障害物状況に応じて障害物に対するリスク度を的確に示すことができれば、余裕時間TTCを用いずにリスク度を算出してもよい。また、余裕時間TTCk、リスク度RPkを算出する際に、各障害物kまでの相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)、および各障害物kの重みwkをそれぞれ考慮したが、これには限定されない。例えば、ばらつきσを考慮せずに余裕時間TTCkを算出してもよいし、重みwkを考慮せずにリスク度RPkを算出してもよい。また、ばらつきσを設定する際に、検出器の種別のみに応じてばらつきσを設定してもよいし、検出器の種別と障害物の種別とを組み合わせてばらつきσを決定してもよい。ただし、検出器の種別および障害物の種別に応じてばらつきσを決定し、ばらつきσと重みwkとを考慮することにより、より精度の高い余裕時間およびリスク度を算出することができる。
【0088】
また、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90を用いて車両の前後方向の運動を制御するように構成したが、これには限定されず、例えばいずれか一方のみを用いてもよい。すなわち、本発明においては、アクセルペダル、ブレーキペダルまたはハンドルに限らず、種々の車両機器の作動を制御して運転者による車両前後方向および左右方向の運転操作を適切な方向へと促すことができればよい。
【0089】
上述した第2の実施の形態においては、アクセル/ブレーキペダル踏み込み量θABとしてアクセルペダル操作量またはブレーキペダル操作量を検出したが、アクセルペダル82とブレーキペダル92とが同時に操作された場合は、両方の操作量を足しあわせたものを踏み込み量θABとしてもよい。
【0090】
以上説明した本発明による車両用運転操作補助装置の一実施の形態においては、障害物検出手段として、レーザレーダ10,前方カメラ20,後側方カメラ21および車速センサ30を用いたが、自車両周囲に存在する一つ以上の障害物を検出することができればこれには限定されず、例えばミリ波レーダを用いてもよい。また、障害物認識手段、リスク度判定手段、配分調整手段、リスク度変化予測手段、全リスク度方向算出手段および総合的リスク度判定手段として、コントローラ50を用いたが、本発明による車両用運転操作補助装置は、これには限定されない。例えば、前方カメラ20および後側方カメラ21から入力される画像信号に画像処理を施す画像処理装置を設け、これを障害物認識手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】図1に示す車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。
【図3】第1の実施の形態の車両用運転操作補助装置における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図4】(a)(b)センサ種別によるばらつきの大きさを示す図。
【図5】(a)(b)障害物種別によるばらつきの大きさを示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の作用を示す説明図。
【図7】本発明の第1の実施の形態の作用を示す説明図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の作用を示す説明図。
【図9】第2の実施の形態の車両用運転操作補助装置における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図11】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図12】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図13】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図14】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図15】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図16】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図17】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図18】本発明の第2の実施の形態の作用を示す説明図。
【図19】第3の実施の形態の車両用運転操作補助装置における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図20】本発明の第3の実施の形態の作用を示す説明図。
【符号の説明】
【0092】
10:レーザレーダ
20:前方カメラ
21:後側方カメラ
30:車速センサ
50:コントローラ
60:操舵反力制御装置
61:サーボモータ
80:アクセルペダル反力制御装置
81:サーボモータ
90:ブレーキペダル反力制御装置
91:ブレーキブースタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出状況に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスク度を算出するリスク度判定手段と、
前記リスク度判定手段からの信号に基づいて、運転者による前記自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すように、車両機器の作動を制御する車両機器操作量制御手段と、
前記車両機器操作量制御手段における前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分をそれぞれ調整する配分調整手段とを有し、運転者の操作を補助することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出状況に基づいて、前記自車両に対する障害物の存在方向、相対距離および相対速度をそれぞれ検出する障害物認識手段と、
前記障害物認識手段からの信号に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスク度を算出するリスク度判定手段と、
前記リスク度判定手段からの信号に基づいて、運転者による前記自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すように、車両機器の作動を制御する車両機器操作量制御手段と、
前記車両機器操作量制御手段における前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分をそれぞれ調整する配分調整手段とを有し、運転者の操作を補助することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスク度判定手段は、前記自車両から障害物までの相対距離を相対速度で割った余裕時間を算出し、その余裕時間の関数として障害物に対するリスク度を算出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスク度判定手段は、検出される前記相対距離および前記相対速度のばらつきを考慮して前記余裕時間を算出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記障害物検出手段は、障害物を検出する際にその種別を検出し、
前記リスク度判定手段は、前記障害物の種別に応じて、前記相対距離および前記相対速度のばらつきの大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記障害物検出手段は、複数の異なる検出器を用いて障害物を検出し、
前記リスク度判定手段は、前記障害物を検出した前記検出器の種別に応じて、前記相対距離および前記相対速度のばらつきの大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項3、請求項4または請求項6のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記障害物検出手段は、障害物を検出する際にその種別を検出し、
前記リスク度判定手段は、前記障害物の種別に応じて障害物の重みを決定し、この重みを考慮した障害物の余裕時間を用いて前記リスク度を算出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項5に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスク度判定手段は、前記障害物の種別に応じて、さらに障害物の重みを決定し、この重みをも考慮した障害物の余裕時間を用いて前記リスク度を算出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記配分調整手段は、前記障害物認識手段によって検出される障害物への方向に応じて、前記リスク度判定手段によって算出されるリスク度の前後方向および左右方向の配分を算出し、算出したリスク度の前後方向および左右方向の配分に基づいて、前後方向制御量および左右方向制御量の配分を決定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
現在予測される将来の前後方向および左右方向の操作量変化による、障害物に対するリスク度の変化を予測するリスク度変化予測手段をさらに有し、
前記配分調整手段は、前記リスク度変化予測手段によって予測される、障害物に対するリスク度変化量に応じて前後方向制御量および左右方向制御量の配分を決定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記障害物検出手段によって検出される障害物は複数であり、
前記リスク度判定手段で算出された各障害物に対するリスク度を積算し、総合的なリスク度の発生する方向を算出する全リスク度方向算出手段をさらに有し、
前記配分調整手段は、前記リスク度算出手段によって算出された全リスク度方向を考慮して、前後方向制御量および左右方向制御量の配分を決定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両機器操作量制御手段は、少なくとも、アクセルペダルに発生させる操作反力を制御するアクセルペダル反力制御手段備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両機器操作量制御手段は、少なくとも、ブレーキペダルに発生させる操作反力を制御するブレーキペダル反力制御手段を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車両機器操作量制御手段は、少なくとも、ハンドルの操舵反力を制御する操舵反力制御手段を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出状況に基づいて、前記自車両に対する障害物の存在方向、相対距離および相対速度をそれぞれ検出する障害物認識手段と、
前記障害物認識手段からの信号に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスク度を算出するリスク度判定手段と、
アクセルペダルに発生させる操作反力を制御するアクセルペダル反力制御手段、ブレーキペダルに発生させる操作反力を制御するブレーキペダル反力制御手段、およびハンドルの操舵反力を制御する操舵反力制御手段を備え、前記リスク度判定手段からの信号に基づいて、運転者による前記自車両の前後運動および左右運動に関わる運転操作を促すように、前記アクセルペダル、前記ブレーキペダルおよび前記ハンドルの作動をそれぞれ制御する車両機器操作量制御手段と、
前記車両機器操作量制御手段における前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分をそれぞれ調整する配分調整手段とを有し、運転者の操作を補助することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
自車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出状況に基づいて、前記自車両に対する障害物の存在方向、相対距離および相対速度をそれぞれ検出する障害物認識手段と、
前記障害物認識手段からの信号に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスク度を算出し、前後方向および左右方向の総合的なリスク度をそれぞれ算出する総合的リスク度判定手段と、
前記総合的リスク度判定手段によって算出される前後方向および左右方向の総合的なリスク度に応じて、前記自車両の前後運動および左右運動に関わる車両機器の前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分を調整する配分調整手段と、
前記配分調整手段からの信号に基づいて、運転者による前後方向および左右方向の運転操作を促すように、前記車両機器の作動を制御する車両機器操作量制御手段とを有し、運転者の操作を補助することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項17】
請求項16に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記総合的リスク度判定手段は、前記自車両から障害物までの相対距離を相対速度で割った余裕時間を算出し、その余裕時間の関数として障害物に対するリスク度を算出し、算出したリスク度の前後方向成分および左右方向成分をそれぞれ加算して前後方向および左右方向の総合的なリスク度をそれぞれ算出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項18】
自車両の周囲に存在する障害物を検出し、
検出される障害物状況に基づいて、前記自車両に対する障害物の存在方向、相対距離および相対速度をそれぞれ検出し、
検出される障害物の存在方向、相対距離および相対速度に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスク度を算出し、前後方向および左右方向の総合的なリスク度をそれぞれ算出し、
算出される前後方向および左右方向の総合的なリスク度に応じて、前記自車両の前後運動および左右運動に関わる車両機器の前後方向の制御量および左右方向の制御量の配分を調整し、
前記前後方向の制御量および前記左右方向の制御量に基づいて、運転者による前後方向および左右方向の運転操作を促すように、前記車両機器の作動を制御し、運転者の操作を補助することを特徴とする車両用運転操作補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−204044(P2007−204044A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37839(P2007−37839)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2002−138266(P2002−138266)の分割
【原出願日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】