説明

車両用運転支援装置

【課題】適切な時期に、走行状態に応じた正確かつ適切な運転支援を行う車両用運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両位置を測定する車両位置測定手段11と、測定された車両位置に応じて車両の運転を支援する運転支援手段14とを備える車両用運転支援装置1は、車両位置測定手段11より高い精度で車両位置を測定する高精度車両位置測定手段12と、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12の測定状態に基づいて測定精度を判定する測定精度判定手段13と、測定精度判定手段13により判定された測定精度に基づいて運転支援手段14による支援レベルを制御する運転支援レベル制御手段15とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転支援装置に関し、より詳細には、測定精度に基づいて運転支援手段による支援における支援レベルを制御する車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーションシステムは、GPS(Global Positioning System)等の電波を用いた電波航法、車速パルスやジャイロセンサ等の信号を用いた自律航法、電波航法および自律航法を組み合わせたハイブリッド航法を用い、DVD(Digital Versatil Disc)やハードディスク等に記憶された道路地図情報とハイブリッド航法で取得した自車の走行経路とに基づいて正確な車両位置を推定するマップマッチング処理手段、DGPS(Differential GPS)による相対測位手段、RTK(Real Time Kinematic GPS)測位による干渉測位手段、VICS(Vehicle Information and Communication System)情報受信手段等を利用して、車両位置を高精度に把握しながら目的地への誘導を行う。
【0003】
また、車両用運転支援装置は、係るカーナビゲーションシステムで得られた車両位置に関する情報と道路地図情報とに基づいて、自動変速機、サスペンション、ステアリング装置、ブレーキ、アクセル等をカーブの曲率、路面勾配、交差点の有無等に応じて制御しながら運転を支援する。
【0004】
係る車両用運転支援装置には、カーナビゲーションシステムが取得した車両位置の測定精度が、GPS信号の受信状態やジャイロセンサの測定誤差等の影響を受けやすいことを考慮し、現在位置の確からしさ(測定精度)を普遍的に示す指標を算出して、その指標に基づいて車両の現在位置を利用した車両制御を行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−132291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、車両制御の実行の有無を切り替える時期については言及していない。また、基本的にハイブリッド航法におけるGPS信号の受信状態に基づいて車両位置の測定精度を推定し、その推定に基づいて車両制御の実行の有無を切り替えており、測定精度の異なる複数系統の信号に基づいた制御を行っておらず、走行状態に応じた正確かつ適切な車両制御を行うには不十分である。
【0006】
係る問題に鑑み、本発明は、適切な時期に、走行状態に応じた正確かつ適切な運転支援を行う車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、第1の発明に係る車両用運転支援装置は、車両位置を測定する車両位置測定手段と、測定された車両位置に応じて車両の運転を支援する運転支援手段と、を備える車両用運転支援装置であって、前記車両位置測定手段より高い精度で車両位置を測定する高精度車両位置測定手段と、車両位置測定手段および高精度車両位置測定手段の測定状態に基づいて測定精度を判定する測定精度判定手段と、前記測定精度判定手段により判定された測定精度に基づいて前記運転支援手段による支援における支援レベルを制御する運転支援レベル制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明に係る車両用運転支援装置は、車両位置を測定する車両位置測定手段と、測定された車両位置に応じて車両の運転を支援する運転支援手段と、を備える車両用運転支援装置であって、車両位置測定手段の測定状態に基づいて測定精度を判定する測定精度判定手段と、前記測定精度判定手段により判定された測定精度に基づいて前記運転支援手段による支援における支援レベルを制御する運転支援レベル制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明に係る車両用運転支援装置において、前記運転支援レベル制御手段は、前記測定精度判定手段により判定された測定精度が高いほど、前記運転支援手段による支援における支援レベルを高くすることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1または第2の発明に係る車両用運転支援装置において、前記運転支援レベル制御手段は、前記運転支援手段による支援の実行中に、前記測定精度判定手段により判定される測定精度が変化した場合に、前記運転支援手段による支援における支援レベルの変更を制限することを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1または第2の発明に係る車両用運転支援装置において、前記運転支援レベル制御手段は、前記運転支援手段による支援の実行中に、前記測定精度判定手段により判定される測定精度が高くなった場合に、前記運転支援手段による支援における支援レベルの変更を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述の手段により、本発明は、適切な時期に、走行状態に応じた正確かつ適切な運転支援を行う車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、いくつかの実施例に分けて、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に従った車両用運転支援装置の構成例を示す図である。車両用運転支援装置1は、道路情報取得手段10、車両位置測定手段11、高精度車両位置測定手段12、測定精度判定手段13、運転支援手段14、運転支援レベル制御手段15、車両状態検出手段16および運転操作状態検出手段17を有し、表示装置2、音声出力装置3、パワートレイン制御装置4、ブレーキ制御装置5およびステアリング制御装置6に接続される。
【0015】
表示装置2は、支援内容に関するメッセージや画像を表示する手段であり、例えば、カーナビゲーションシステムの液晶ディスプレイや、インストルメントパネルに設置されるLED(Light Emitting Diode)等をいう。
【0016】
音声出力装置3は、支援内容に関する音声やアラームを出力するための手段であり、例えば、車両に搭載されるスピーカ、警報用に特別に用意されたサイレン、アラームまたはブザーである。
【0017】
パワートレイン制御装置4は、原動機で発生した動力を伝達する、変速機(トランスミッション)や差動装置(デファレンシャル)等を制御するための手段であり、例えば、エンジンブレーキによる制動力や各車輪へのトルク配分を制御する。
【0018】
ブレーキ制御装置5は、ブレーキによる制動力を自動的に制御する手段であり、例えば、ブレーキペダルの踏み込みに必要な踏力に対する反力をアクチュエータにより変更したり、踏力に対する制動力(アシスト力)を制御したり、ブレーキペダルの踏み込みなしに制動力を発生させたりする。
【0019】
ステアリング制御装置6は、車輪の操舵角や操舵反力を自動的に制御する手段であり、ステアリングの回転に必要な回転力に対する反力をアクチュエータにより変更したり、ステアリングの回転角に対する車輪の操舵角(アシスト力)を制御したり、ステアリングの回転なしに各車輪の操舵角を発生させたりする。
【0020】
次に、車両用運転支援装置1の有する各手段について説明する。
【0021】
道路情報取得手段10は、カーナビゲーションシステムが有するハードディスク等の記憶装置に記憶された地図情報や外部との通信に基づいて車両が走行する道路の周辺環境に関する情報(カーブ、交差点、合流点、信号機若しくは踏切等の運転支援の対象となる地物(以下、「対象地物」という。)の有無、または、市街地、自動車専用道路等の何れであるかといった情報)を取得する手段であり、例えば、走行中の車両の前方に対象地物が存在するか否かに関する情報、故障車両情報、事故情報、気象情報、渋滞情報等を取得する。
【0022】
車両位置測定手段11は、車両位置を測定する手段であり、例えば、カーナビゲーションシステムのGPS受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号に基づいて車両位置を測位・演算する。測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよいが、好ましくは精度の高い相対測位が用いられる。この際、自車位置は、舵角センサ、車速センサ、ジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてもよい。「演算」は、測定した車両位置に関する情報と、地図情報とを対応づける処理であり、この演算により、車両用運転支援装置1は、車両の周辺環境に関する情報と車両位置に関する情報との関係を構築し、例えば、30m先に運転支援の対象地物であるカーブが存在するといった情報を把握することができる。
【0023】
高精度車両位置測定手段12は、車両位置測定手段11よりも高精度に車両位置を測定する手段であり、例えば、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)のAHS(Advanced Cruise−Assist Highway System:走行支援道路システム)におけるDSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)による路車間通信インフラストラクチャで使用される路側機(路側に設置された無線装置)やレーンマーカ(磁気ネイル)等からの信号に基づいて車両位置を測位・演算する。また、高精度車両位置測定手段12は、路面にペイントされた道路標示や、道路周辺に設置された道路標識若しくは距離標をカメラで撮像して車両位置を測位・演算してもよい。
【0024】
測定精度判定手段13は、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12の測定状態に基づいて測定精度を判定する手段であり、「測定状態」とは、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12のそれぞれの動作状態をいい、車両位置測定手段11のGPS信号受信状態や高精度車両位置測定手段12の路側機との通信状態等をいう。例えば、高精度車両位置測定手段12が路側機から所定の信号を受信して測位・演算を行っていると判定した場合には、測定精度が第1水準(例えば、誤差が±1m未満の精度。)にあるとし、高精度車両位置測定手段12が路側機等から所定の信号を受信しておらず、車両位置測定手段11のみがGPS信号を受信して測位・演算を行っていると判定した場合には、測定精度が第2水準(例えば、誤差が±10m未満の精度。)にあるとする。さらに、高精度車両位置測定手段12が路側機等から所定の信号を受信しておらず、車両位置測定手段11のみがGPS信号を受信しているが、通常より少ないGPS衛星(例えば2つ)からの信号のみを受信している場合には、測定精度は第3水準(例えば、誤差が±10m以上の精度。)にあるとしてもよい。通信可能なGPS衛星の数が減少すると、測定精度が低下するからである。
【0025】
このように、測定精度判定手段13は、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12の測定状態に基づいて測定精度が何れの水準にあるかを判定する。なお、測定精度の水準は、2段階であってもよく、4以上の水準が設定されてもよい。
【0026】
運転支援手段14は、道路情報取得手段10による対象地物に関する情報と、車両位置測定手段11や高精度車両位置測定手段12による車両位置に関する情報とに基づいて、表示装置2、音声出力装置3、パワートレイン制御装置4、ブレーキ制御装置5およびステアリング制御装置6を対象地物に応じて制御しながら運転支援を行う手段である。
【0027】
例えば、運転支援手段14は、車両がカーブに接近しているのを検出した場合に、表示装置2にその旨表示し、音声出力装置3により音声によるその旨の通知を行い、パワートレイン制御装置4により、変速機を制御してエンジンブレーキを作動させ、ブレーキ制御装置5によりブレーキによる制動力を増加させ、或いは、ステアリング制御装置6により車輪の操舵角を自動的に調整したりして、車両がカーブを円滑に通過するのを支援する。
【0028】
また、運転支援手段14は、車両が一時停止する必要のある交差点や踏切に接近しているのを検出した場合に、車両が確実に一時停止できるよう、速度を減速させる運転支援を行うようにしてもよい。
【0029】
このように、運転支援手段14は、対象地物に応じて運転支援の内容を変更し、対象地物に応じた最適な運転支援を行うようにする。
【0030】
運転支援レベル制御手段15は、測定精度判定手段13の判定結果に基づいて運転支援手段14が行う支援レベルを制御する手段である。
【0031】
ここで、「支援レベル」とは、運転支援制御手段14による運転への介入度合いをいい、例えば、前方にカーブが存在することを表示装置2に表示させる支援内容に比べ、ステアリング制御装置6により車輪の操舵角を調整する支援内容は、支援レベルが高い。このように、支援レベルは、運転への影響度に基づいて設定される。
【0032】
例えば、運転支援レベル制御手段15は、測定精度判定手段13により測定精度が第1水準(例えば、誤差が±1m未満の精度。)にあると判定された場合に、支援レベルを最高レベルとし、表示装置2、音声出力装置3、パワートレイン制御装置4、ブレーキ制御装置5およびステアリング制御装置6等の全ての手段を駆使して運転の支援を行うようにする。
【0033】
一方、運転支援レベル制御手段15は、測定精度判定手段13により測定精度が第2水準(例えば、誤差が±10m未満の精度。)にあると判定された場合に、支援レベルをより低いレベルとし、表示装置2および音声出力装置3のみを用いて運転の支援を行うようにする。測定精度の低い水準で高い支援レベルの運転支援を行うと、例えば、カーブが接近していないにもかかわらずエンジンブレーキを作動させしまう等、運転者に違和感を与える場合があるからである。
【0034】
このように、運転支援手段14は、対象地物に応じた運転支援内容毎に複数の支援レベルを設定し、対象地物および測定精度に応じた最適な運転支援を行うようにする。
【0035】
車両状態検出手段16は、車両姿勢や車両速度等の車両状態を検出するための手段であり、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサ等からの信号を受信して、車両状態を検出し、その車両状態に関する情報を運転支援手段14に提供する。運転支援手段14は、車両状態検出手段16からの信号を受信して、例えば、目標とする速度に減速するために必要なエンジンブレーキを発生させるシフト位置を現在の車速に基づいて制御する等、最適な運転支援を行うようにする。
【0036】
運転操作状態検出手段17は、車両操作者による車両の運転操作状態を検出するための手段であり、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ステアリング操作量等の情報を取得して、運転操作状態を検出し、その運転操作状態に関する情報を運転支援手段14に提供する。運転支援手段14は、運転操作状態検出手段17からの信号を受信して、例えば、過去のブレーキ操作量に基づいてブレーキのアシスト力を制御する等、最適な運転支援を行うようにする。
【0037】
次に、図2のフローチャートを用いて、車両用運転支援装置1が車両位置の測定精度に基づいて運転支援手段14による支援レベルを変更する処理の流れについて説明する。ここでは、例えば、片側2車線の道路において、前方のカーブを曲がり終えた地点の第1車線(車両が走行している車線と同じ車線)に故障車両があるとの情報を道路情報取得手段10により取得した場合について説明する。
【0038】
最初に、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12は、それぞれが受信した信号に基づいて車両位置の測定を行う(ステップS1)。
【0039】
次に、測定精度判定手段13は、車両位置の測定精度が何れの水準にあるかを判定する(ステップS2)。高精度車両位置測定手段12が路側機等から所定の信号を受信して測位・演算を行っており、測定精度が第1水準(例えば、誤差が±1m未満の精度。)であると判定された場合(ステップS2の高精度)、運転支援レベル制御手段15は、支援レベルを最高レベルの第1支援レベルとし、運転支援手段14をして、表示装置2により「第1車線に故障車両があります。第2車線に進路変更してください」とのメッセージを表示させ、音声出力装置3からはアラームと共にその旨の音声メッセージを出力させ、かつ、パワートレイン制御装置4により変速機を制御してエンジンブレーキを作動させ、または、ブレーキ制御装置5により制動力を発生させて自動的に車速を減速させるといった、第1支援レベルの運転支援を実行させる(ステップS3)。
【0040】
或いは、高精度車両位置測定手段12が路側機等から所定の信号を受信しておらず、車両位置測定手段11のみがGPS信号を受信して測位・演算を行っており、測定精度が第2水準(例えば、誤差が±10m未満の精度。)であると判定された場合(ステップS2の通常精度)、運転支援レベル制御手段15は、運転支援手段14をして、表示装置2により「第1車線に故障車両があります。第2車線に進路変更してください」とのメッセージを表示させ、音声出力装置3からはアラームと共にその旨の音声メッセージを出力させるといった、第2支援レベルの運転支援を実行させる(ステップS4)。第2支援レベルの運転支援において、パワートレイン制御装置4による制御を行わないのは、車両位置の測定精度が十分に高くなく、不自然な運転支援(カーブに差し掛かっていないのに減速を開始するといった運転支援等)を行ってしまう場合があるからである。
【0041】
さらに、高精度車両位置測定手段12が路側機等から所定の信号を受信しておらず、車両位置測定手段11のみがGPS信号を受信しているが、通常より少ない数(例えば2つ)のGPS衛星からの信号のみを受信しており、測定精度が第3水準(例えば、誤差が±10m以上の精度。)であると判定された場合(ステップS2の低精度)、運転支援レベル制御手段15は、第3支援レベルの運転支援として、運転支援手段14が如何なる運転支援をも行わないようにする(ステップS5)。不適切な注意メッセージを出力すると、運転者に違和感を与えてしまう場合もあるからである。
【0042】
以上の構成により、車両用運転支援装置1は、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12のそれぞれ測定精度の異なる測定手段の測定状態を利用して測定精度を判定し、その測定精度に基づいて運転支援手段14による支援レベルを制御するので、対象地物に応じた高い支援レベルの運転支援を適切な時期に確実に実行しながら、高い支援レベルの運転支援を不適切な時期に実行するのを防止することができる。
【0043】
また、車両用運転支援装置1は、上述の効果に加え、車両位置測定手段11のように測定精度が変化する測定手段の測定状態を利用して測定精度を判定し、その測定精度に基づいて運転支援手段14による支援レベルを制御するので、より詳細な支援レベルの設定を可能とする。
【0044】
また、車両用運転支援装置1は、測定精度が低い場合であっても、測定精度に応じた支援レベルの運転支援を実行するので、高い支援レベルの運転支援を不適切な時期に実行するのを防止しながらも、車両操作者に違和感を与えない適切な支援レベルの運転支援を実行することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、運転支援手段14により運転支援が実行されている最中に、車両位置の測定精度が変化した場合に、車両用運転支援装置1が支援レベルを制御する処理について説明する。
【0046】
図3は、車両用運転支援装置1の稼働状態の遷移を示す状態遷移図であり、第1稼働状態21は、車両位置の測定精度が第1水準(例えば、誤差が±1m未満の精度。)であり、第1支援レベルの運転支援が行われる状態を示し、同様に、第2稼働状態22は、車両位置の測定精度が第2水準(例えば、誤差が±10m未満の精度。)であり、第2支援レベルの運転支援が行われる状態、第3稼働状態23は、車両位置の測定精度が第3水準(例えば、誤差が±10m以上の精度。)であり、第3支援レベルの運転支援が行われる状態を示す。稼働状態間の太線U1、U2、U3は、測定精度が向上した場合の状態遷移を示し、稼働状態間の破線D1、D2、D3は、測定精度が低下した場合の状態遷移を示す。
【0047】
最初に、第1稼働状態21からの状態遷移について説明する。第1稼働状態21において、測定精度が第1水準から第2水準に低下した場合(破線D2参照。)、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第1稼働状態21から第2稼働状態22に遷移させず、第1稼働状態21を維持する。高い測定精度に基づいた高い支援レベルの運転支援を突然中止すると、却って車両操作者に違和感を与えてしまうからであり、現時点までは高精度の測定を行っていたため、高い支援レベルの運転支援をそのまま続行しても弊害はないと考えられるからである。
【0048】
また、測定精度が第1水準から第3水準に低下した場合(破線D3参照。)も同様に、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第1稼働状態21から第3稼働状態23に遷移させず、第1稼働状態21を維持する。なお、車両用運転支援装置1は、運転支援を行っている対象地物を通過した後、それぞれの測定精度の水準に応じた稼働状態に遷移する。
【0049】
例えば、車両用運転支援装置1が高精度車両位置測定手段12により高精度に車両位置を測定していると判定し、車両が運転支援の対象となる地物であるコーナーに進入する直前に、車速を低減させる運転支援を実行している場合に、路側機からの通信が断絶し高精度車両位置測定手段12による測定が不可能となったときでも、車両用運転支援装置1は、車速を低減させる運転支援を継続し、コーナーを通過した後に車両位置測定手段11の測定精度に基づいた運転支援に切り替えるようにする。
【0050】
次に、第2稼働状態22からの状態遷移について説明する。第2稼働状態22において、測定精度が第2水準から第1水準に向上した場合(太線U2参照。)、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第2稼働状態22から第1稼働状態21に遷移させる。測定精度に基づいた支援レベルの運転支援を実行するためであり、現時点まで第2水準で規定される測定精度の測定を行っていたため、より高い第1支援レベルの運転支援に切り替えても弊害はないと考えられるからである。
【0051】
例えば、車両用運転支援装置1が車両位置測定手段11により第2水準で車両位置を測定していると判定し、車両が運転支援の対象となる地物であるコーナーに進入する直前に、車速を低減させるよう表示装置2に注意メッセージを表示する運転支援を実行している場合に、路側機からの通信を捉え高精度車両位置測定手段12による測定が可能となったときには、車両用運転支援装置1は、運転支援を第1支援レベルに切り替え、パワートレイン制御装置4により車速を低減させる運転支援を実行する。
【0052】
また、第2稼働状態22において、測定精度が第2水準から第3水準に低下した場合(破線D1参照。)、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第2稼働状態22から第3稼働状態23に遷移させる。測定精度に基づいた支援レベルの運転支援を実行するためである。なお、第2支援レベルの運転支援には、好適には、突然中止された場合であっても運転者に違和感を与えるような支援内容を設定しないようにする。
【0053】
例えば、車両用運転支援装置1が車両位置測定手段11により第2水準で車両位置を測定していると判定し、車両が運転支援の対象となる地物であるコーナーに進入する直前に、車速を低減させるよう表示装置2に注意メッセージを表示する運転支援を実行している場合に、1つのGPS衛星からの信号が途絶え、車両位置測定手段12による測定が第3水準となったときには、車両用運転支援装置1は、運転支援を第3支援レベルに切り替え、車速を低減させるよう表示装置2に注意メッセージを表示する運転支援を中止する。
【0054】
最後に、第3稼働状態23からの状態遷移について説明する。第3稼働状態23において、測定精度が第3水準から第2水準に向上した場合(太線U1参照。)、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第3稼働状態23から第2稼働状態22に遷移させる。測定精度に基づいた支援レベルの運転支援を実行するためである。
【0055】
また、第3稼働状態23において、測定精度が第3水準から第1水準に向上した場合(太線U3参照。)、車両用運転支援装置1は、稼働状態を第3稼働状態23から第1稼働状態21に遷移させず、第2稼働状態22に遷移させるようにする。低い測定精度に基づいた低い支援レベルの運転支援を突然、高い支援レベルの運転支援に切り替えると、車両位置の測定に誤りがあった場合には、却って車両操作者に違和感を与えてしまうからであり、少なくとも最初の地物を通過する迄は1つ上の支援レベルで車両位置の確認を行うほうが適切と考えられるからである。
【0056】
例えば、車両用運転支援装置1が車両位置測定手段11により第3水準で車両位置を測定していると判定し、車両が運転支援の対象となる地物であるコーナーに進入する直前に、一切の運転支援を実行していない場合に、十分な数のGPS衛星からの信号を捉え、車両位置測定手段11による測定が第2水準となったときには、車両用運転支援装置1は、運転支援を第2支援レベルに切り替え、車速を低減させるよう表示装置2に注意メッセージを表示する運転支援を実行する。また、路側機からの通信を捉え高精度車両位置測定手段12による測定が可能となったときであっても、車両用運転支援装置1は、運転支援を第1支援レベルではなく第2支援レベルに切り替え、パワートレイン制御装置4により車速を低減させる運転支援を行わずに、車速を低減させるよう表示装置2に注意メッセージを表示させる運転支援に留めるようにする。
【0057】
以上の構成により、車両用運転支援装置1は、運転支援実行中であっても、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12のそれぞれ測定精度の異なる測定手段の測定状態を利用して測定精度を判定し、その測定精度に基づいて運転支援手段14による支援レベルをより詳細に制御するので、対象地物に応じた高い支援レベルの運転支援を適切な時期に確実に実行しながら、高い支援レベルの運転支援を不適切な時期に実行するのを防止することができる。
【0058】
また、車両用運転支援装置1は、高いレベルの運転支援を実行中に測定精度が低下しても、その高いレベルの運転支援を継続するので、その高いレベルの運転支援を突然中止させて車両操作者に違和感を与えるのを防止することができる。
【0059】
また、車両用運転支援装置1は、低いレベルの運転支援を実行中に測定精度が著しく向上した場合であっても、すぐ上のレベルを超えてより高いレベルの運転支援を実行するのを制限するので、対象地物に応じた適切な支援レベルの運転支援を適切な時期に確実に実行しながら、誤った車両位置に基づいて、高い支援レベルの運転支援を不適切な時期に実行するのを防止することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば、上述の実施例では、車両位置測定手段11および高精度車両位置測定手段12のそれぞれ測定精度の異なる測定手段の測定状態を利用して測定精度を判定し、その測定精度に基づいて運転支援手段14による運転支援の支援レベルを制御するが、高精度車両位置測定手段12を省略し、測定精度の変化する車両位置測定手段11の測定状態のみに基づいて、支援レベルを制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に従った車両用運転支援装置の構成例を示す図である。
【図2】車両用運転支援装置が車両位置の測定精度に基づいて運転支援手段による支援における支援レベルを変更する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】車両用運転支援装置の稼働状態の遷移を示す状態遷移図である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用運転支援装置
2 表示装置
3 音声出力装置
4 パワートレイン制御装置
5 ブレーキ制御装置
6 ステアリング制御装置
10 道路情報取得手段
11 車両位置測定手段
12 高精度車両位置測定手段
13 測定精度判定手段
14 運転支援手段
15 運転支援レベル制御手段
16 車両状態検出手段
17 運転操作状態検出手段
21 第1稼働状態
22 第2稼働状態
23 第3稼働状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両位置を測定する車両位置測定手段と、測定された車両位置に応じて車両の運転を支援する運転支援手段と、を備える車両用運転支援装置において、
前記車両位置測定手段より高い精度で車両位置を測定する高精度車両位置測定手段と、
車両位置測定手段および高精度車両位置測定手段の測定状態に基づいて測定精度を判定する測定精度判定手段と、
前記測定精度判定手段により判定された測定精度に基づいて前記運転支援手段による支援における支援レベルを制御する運転支援レベル制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
車両位置を測定する車両位置測定手段と、測定された車両位置に応じて車両の運転を支援する運転支援手段と、を備える車両用運転支援装置において、
車両位置測定手段の測定状態に基づいて測定精度を判定する測定精度判定手段と、
前記測定精度判定手段により判定された測定精度に基づいて前記運転支援手段による支援における支援レベルを制御する運転支援レベル制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援レベル制御手段は、前記測定精度判定手段により判定された測定精度が高いほど、前記運転支援手段による支援における支援レベルを高くする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記運転支援レベル制御手段は、前記運転支援手段による支援の実行中に、前記測定精度判定手段により判定される測定精度が変化した場合に、前記運転支援手段による支援における支援レベルの変更を制限する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記運転支援レベル制御手段は、前記運転支援手段による支援の実行中に、前記測定精度判定手段により判定される測定精度が高くなった場合に、前記運転支援手段による支援における支援レベルの変更を制限する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−182198(P2007−182198A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2939(P2006−2939)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】