説明

車両走行制御装置及び車両走行制御方法

【課題】定速クルーズ走行中、運転者に違和感を覚えさせない車両走行制御装置及び車両走行制御方法を提供する。
【解決手段】アクセルペダル12に対する反力Frを急増させるペダル操作量Pを、車両100が走行している際の目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1、D2に応じて変化させる。これにより、車両100が坂道に差し掛かった等、車両100に対する外的負荷が変わったため、クルーズ速度Vcrを維持するためにエンジン30の出力を増減させる場合、前記外的負荷に応じてペダル操作量Pを変化させることができる。その結果、エンジン30の出力とペダル操作量Pのずれに起因する違和感が運転手に発生することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のクルーズ速度と車速とを一致させる定速クルーズ制御を行う車両走行制御装置及び車両走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者によるアクセルペダルの操作とは別に自動的にスロットル弁開度を制御し、車速を目標速度に一致させる定速クルーズ制御が知られている(特許文献1)。特許文献1において定速クルーズ制御を行う際には、アクセルペダルへの反力付与を用いながら、定速クルーズ走行の設定速度(以下、「クルーズ速度」とも称する。)をアクセルペダルの操作により調整することができる。すなわち、定速クルーズ走行時、アクセルペダルに対する反力を急増させ、運転者が右足をアクセルペダル上に自然に載置できる領域(「フットレスト化領域」)と、運転者の加速意思を検出するための領域(「加速検出領域」)と、運転者の減速意思を検出するための領域(「減速検出領域」)とを設けておき、アクセルペダルがフットレスト化領域を越えて加速検出領域まで踏み込まれたとき、車速を増加させ、アクセルペダルがフットレスト化領域を越えて減速検出領域まで踏み込まれたとき、車速を減少させる。そして、アクセルペダルが加速検出領域又は減速検出領域から出ると、その時点での車速を新たなクルーズ速度として設定する。新たなクルーズ速度の設定後は、アクセルペダルがフットレスト化領域に戻される(特許文献1の段落[0026]〜[0037]、図2及び図3参照)。
【0003】
特許文献1における定速クルーズ走行は、運転者が右足をアクセルペダルに置いたままの状態で行うものであるが、アクセルペダルに足を置かずに定速クルーズ走行を行うことができる技術も存在する(特許文献2、3)。特許文献2では、ペダル反力付与手段によりアクセルペダルの踏込み位置を制御することで定速クルーズ走行を実現する(特許文献2の段落[0037]参照)。特許文献3では、速度センサにより検出された車速が、クルーズ速度となるようにスロットルアクチュエータの作動をフィードバック制御することにより、運転者がアクセルペダルの操作を行わない状態で、車両をクルーズ速度で走行させる(特許文献3の段落[0013]参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−143120号公報
【特許文献2】特開2003−291682号公報
【特許文献3】特開平10−315801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、定速クルーズ走行中、アクセルペダルはクルーズ速度の設定に用いられ、アクセルペダルの操作量と、スロットル弁の開度とは独立に制御され、クルーズ速度の変更を行うとき以外、アクセルペダルはフットレスト化領域に維持される(特許文献1の段落[0026]〜[0037]、図2及び図3参照)。また、特許文献2では、クルーズコントロール用スイッチをオンにした時点のスロットル弁の開度及びアクセルペダルの操作量を維持し、定速クルーズ走行中、アクセルペダルの操作量は自動的に変化しない(特許文献2の段落[0036]〜[0038])。さらに、特許文献3では、運転者がアクセルペダルの操作を行わない状態で、車両をクルーズ速度で走行させるとの記載は存在するものの(特許文献3の段落[0013]参照)、定速クルーズ走行時のアクセルペダルの動作には触れられていない。
【0006】
従って、いずれの特許文献においても、定速クルーズ走行時にアクセルペダルのフットレスト化領域の位置(フットレスト化領域が発生するペダル操作量)は変化しない。このため、平坦な道から急な坂道に差し掛かった場合等、車速をクルーズ速度に維持するためにスロットル弁の開度が大幅に変更される場合でもアクセルペダルの操作量(踏込み位置)が変わらず、運転者が違和感を覚えることがある。
【0007】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、定速クルーズ走行中、運転者に違和感を覚えさせない車両走行制御装置及び車両走行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両走行制御装置は、車速を検出する車速検出部と、アクセルペダルのペダル操作量を検出するペダル操作量検出部と、車両のクルーズ速度を設定し、このクルーズ速度と前記車速とが一致するように、前記ペダル操作量とは独立してスロットル弁の開度を自動調整する定速クルーズ制御を行う定速クルーズ制御部と、前記クルーズ速度が設定されたときのペダル操作量で前記アクセルペダルに対する反力を急増させる反力付与部と、前記反力付与部を制御する反力制御部と、を備えるものであって、前記反力制御部は、前記反力を急増させるペダル操作量を、前記車両の動力源が作動している際に前記車両にかかる外的負荷に応じて変化させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、アクセルペダルに対する反力を急増させるペダル操作量を、車両の動力源が作動している際に前記車両にかかる外的負荷に応じて変化させる。これにより、車両が坂道に差し掛かった等、車両に対する外的負荷が変わったため、クルーズ速度を維持するために動力源の出力を増加又は減少させる場合、外的負荷に応じてペダル操作量を変化させることができる。その結果、動力源の出力とペダル操作量のずれに起因する違和感が運転手に発生することを防止することができる。
【0010】
上記において、前記クルーズ速度と前記車速とを一致させるための前記スロットル弁の目標開度又は前記目標開度に追従する実際の開度が所定値以上変化した場合、前記反力制御部は、前記反力を急増させる前記ペダル操作量を変更してもよい。
【0011】
これにより、アクセルペダルに対する反力を急増させるペダル操作量の変更は、スロットル弁の目標開度又はこの目標開度に追従する実際の開度が所定値以上変化した場合のみ行われ、当該所定値以上変化しない場合、行われない。従って、反力を急増させるペダル操作量の変更が起こる頻度を、所定値を適宜設定することで調整することができる。その結果、反力を急増させるペダル操作量が常に変更されることを回避し、前記目標開度又は前記実際の開度の変化が小さい場合に当該変更が起こることによって生ずる運転者の違和感をなくすことができる。
【0012】
前記車両走行制御装置は、さらに、前記車両を減速させる減速機構を備え、前記外的負荷が減少したことにより前記車両が加速する場合、前記減速機構は、前記車両を自動的に減速させてもよい。これにより、車両が走行する際の外的負荷が減少したことにより車両が加速し始めても、クルーズ速度を維持することが容易となる。
【0013】
この発明に係る車両走行制御方法は、車両のクルーズ速度と車速を一致させる定速クルーズ制御を行うものであって、アクセルペダルに対して可変的に付与する反力を急増させるペダル操作量を、車両が走行している際の外的負荷に応じて変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、アクセルペダルに対する反力を急増させるペダル操作量を、車両の動力源が作動している際に前記車両にかかる外的負荷に応じて変化させる。これにより、車両が坂道に差し掛かった等、車両に対する外的負荷が変わったため、クルーズ速度を維持するために動力源の出力を増加又は減少させる場合、外的負荷に応じてペダル操作量を変化させることができる。その結果、動力源の出力とペダル操作量のずれに起因する違和感が運転手に発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.一実施形態
以下、この発明に係る車両走行制御装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
1.車両走行制御装置10の構成
図1は、この実施形態に係る車両走行制御装置10のブロック図である。車両走行制御装置10は、四輪車等の車両に搭載可能であり、基本的には、アクセルペダル12と、操作量センサ14(ペダル操作量検出部)と、スロットル弁16と、開度センサ18と、車速センサ20(車速検出部)と、クルーズスイッチ22と、ECU(electric control unit)24(反力制御部、定速クルーズ制御部)と、反力付与機構26(反力付与部)と、ブレーキシステム28(減速機構)とを備える。
【0017】
操作量センサ14は、アクセルペダル12の原位置からの操作量(ペダル操作量P)[度]を検出し、ECU24に出力する。スロットル弁16は、エンジン30に接続された吸気管32の内部に設けられ、車両が通常走行をしているとき、ECU24によりペダル操作量Pに応じてその開度(スロットル弁開度θ)[度]が制御される。すなわち、本実施形態では、いわゆるスロットル・バイ・ワイヤ方式が採用され、スロットル弁16は、ECU24からの制御信号Stによりスロットル弁開度θが制御される。スロットル弁開度θは、開度センサ18により検出されてECU24に出力される。なお、アクセルペダル12とスロットル弁16が機械的に連結された方式を採用することもできる。
【0018】
車速センサ20は、図示しない車両の車速V[km/h]を測定し、ECU24に出力する。クルーズスイッチ22は、定速クルーズ制御を始めるかどうかの判定の開始を命ずる判定開始指令を運転者が入力するものである。すなわち、運転者がクルーズスイッチ22をオンにすると、クルーズスイッチ22から前記判定開始指令を伝えるクルーズ信号ScがECU24に送信される。
【0019】
ECU24は、ペダル操作量P、車速V及びクルーズ信号Scに基づいて、スロットル弁16及び反力付与機構26の動作を制御する。制御方法の詳細については後述する。なお、ECU24は、メモリ34を備えている。
【0020】
反力付与機構26は、アクセルペダル12に連結された図示しないモータ等からなり、ECU24からの制御信号Srに応じた反力Frをアクセルペダル12に対して可変的に付与する。これにより、アクセルペダル12には、ばね等によるアクセルペダル12自体の原位置復帰力(原位置に復帰しようとする力)に加えて反力付与機構26からの反力Frが付加される。
【0021】
2.車両走行制御方法
図2には、本実施形態における車両走行制御方法のフローチャートが示されている。
【0022】
ステップS1において、ECU24は、今回が初めての処理であるかどうか(今回が、図2のフローチャートの実行の初回であるかどうか)を判定する。この判定は、例えば、判定フラグFLGを用いることで行うことができる。すなわち、判定フラグFLGが「0」のとき、今回が初めての処理であることを示し、判定フラグFLGが「1」のとき、2回目以降であることを示す。また、判定フラグFLGの初期値(クルーズスイッチ22からクルーズ信号Scを初めて受信したときの値)は「0」とする。さらに、図2のフローチャートの終了時には、判定フラグFLGを「1」に設定する。このようにすることで上記の判定を行うことができる。
【0023】
今回が2回目以降の処理である場合(S1:No)、ステップS6に進む。今回が初めての処理である場合(S1:Yes)、ステップS2において、ECU24は、クルーズ速度Vcr[km/h]を設定する。クルーズ速度Vcrの初期値は、メモリ34から読み出す。続くステップS3において、ECU24は、目標ペダル操作量Pt[度]を設定する。目標ペダル操作量Ptの設定は、例えば、クルーズ速度Vcrと目標ペダル操作量Ptとの関係を予めメモリ34に記憶しておき、設定されたクルーズ速度Vcrに基づいて行うことができる。或いは、クルーズ制御を開始した際の車速Vをクルーズ速度Vcrとする場合、クルーズ制御を開始した際のペダル操作量Pを目標ペダル操作量Ptとすることもできる。
【0024】
続くステップS4において、ECU24は、目標ペダル操作量Ptに応じて基準スロットル弁開度θr[度]を設定する。基準スロットル弁開度θrの設定は、例えば、目標ペダル操作量Ptと基準スロットル弁開度θrの関係を予めメモリ34に記憶しておき、設定された目標ペダル操作量Ptに基づいて行うことができる。或いは、クルーズ制御を開始した際のスロットル弁開度θを基準スロットル弁開度θrとすることもできる。
【0025】
ステップS5において、ECU24は、目標ペダル操作量Ptに応じて反力付与機構26により付与される付加的な反力Frを設定する。反力Frの設定は、例えば、目標ペダル操作量Ptと反力Frの関係を予めメモリ34に記憶しておき、設定された目標ペダル操作量Ptに基づいて行うことができる。或いは、クルーズ制御を開始した際のペダル操作量Pの位置を基準として反力Frを急増させることもできる。
【0026】
ステップS6において、ECU24は、クルーズ速度Vcrを変更すべきかどうかについて判定する。この判定は、例えば、実際のペダル操作量Pと、クルーズ速度Vcrに対応する目標ペダル操作量Ptとの差が所定の閾値よりも大きい状態が所定時間続いているかどうかにより行うことができる。クルーズ速度Vcrを変更すべきである場合(S6:Yes)、ステップS7において、ECU24は、実際のペダル操作量Pで維持することのできるクルーズ速度Vcrを新たなクルーズ速度Vcrに変更(更新)する。クルーズ速度Vcrを変更すべきでない場合(S6:No)、ステップS8に進む。
【0027】
ステップS8において、ECU24は、現在の車速Vがクルーズ速度Vcrと等しいかどうかを判定する。現在の車速Vとクルーズ速度Vcrとが等しい場合(S8:Yes)、今回の処理を終える。現在の車速Vとクルーズ速度Vcrとが異なる場合(S8:No)、ステップS9に進む。
【0028】
ステップS9において、ECU24は、現在の車速Vとクルーズ速度Vcrの差に基づいて、スロットル弁開度θの目標値(目標スロットル弁開度θt)[度]を算出する。続くステップS10において、ECU24は、目標スロットル弁開度θtが増加しているかどうかを判定する。なお、目標スロットル弁開度θtの初期値はゼロであるため、初回の処理の場合、常に、目標スロットル弁開度θtは増加しているものと判定される。目標スロットル弁開度θtが増加している場合(S10:Yes)、車両走行制御装置10を搭載した車両は、クルーズ速度Vcrを一定に保つためにより高い出力を要する状況(走行開始時や上り坂の走行時等)であると考えられる。一方、目標スロットル弁開度θtが減少している場合(S10:No)、車両走行制御装置10を搭載した車両は、クルーズ速度Vcrを一定に保つためにより低い出力で足りる状況(減速時や下り坂の走行時等)であると考えられる。そこで、目標スロットル弁開度θtが増加している場合(S10:Yes)、ステップS11において、ECU24は、高出力要求時処理(詳細は後述)を実行する。また、目標スロットル弁開度θtが減少している場合(S10:No)、ステップS12において、ECU24は、低出力要求時処理(詳細は後述)を実行する。ステップS11の高出力要求時処理又はステップS12の低出力要求時処理が実行されると、今回の処理を修了し、ステップS1に戻る。
【0029】
図3には、本実施形態における高出力要求時処理のフローチャートが示されている。ステップS21において、ECU24は、目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1(D1=θt−θr)が、正の値である第1閾値THθup[度]未満であるかどうかを判定する。この第1閾値THθupは、現在の基準スロットル弁開度θr(目標ペダル操作量Ptに対応。図2のS4)に対する目標スロットル弁開度θtの乖離度合を判定することにより、運転者に違和感が生じていないかどうかを判定するための閾値である。第1閾値THθupの値は、実験等により決定することができる。
【0030】
差D1が第1閾値THθup未満である場合(S21:Yes)、ステップS22において、ECU24は、直接スロットル弁制御を継続する。直接スロットル弁制御とは、アクセルペダル12の操作にかかわらず、クルーズ速度Vcrを制御目標値として、ECU24が、スロットル弁16のスロットル弁開度θを自動的に調整する制御である。すなわち、現在の車速Vがクルーズ速度Vcrを下回っている場合、ECU24は、スロットル弁開度θを増加させ、現在の車速Vがクルーズ速度Vcrを上回っている場合、ECU24は、スロットル弁開度θを減少させる。直接スロットル弁制御においては、比例・積分・微分制御(PID制御)等の制御技術を用いることができる。
【0031】
ステップS21において、目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1が第1閾値THθup以上である場合(S21:No)、ステップS23において、ECU24は、反力付与機構26が付与する付加的な反力Frを減少させる。この反力Frの減少については後述する。
【0032】
続くステップS24において、ECU24は、スロットル弁開度θの単位時間当たりの変化量[度/s](以下、「スロットル弁開度変化量Δθ」とも称する。)が所定の閾値(第2閾値THΔθup)よりも小さいかどうかを判定する。なお、この判定は、目標スロットル弁開度θtを基準に判定してもよい。また、反力Frの変化に従って運転者がペダル操作量Pを変化させている場合、ペダル操作量Pを基準に判定してもよい。第2閾値THΔθupは、車両の走行環境(道路の傾斜や材質等)の変化がある程度収束したかどうかを判定するためのものであり、スロットル弁開度変化量Δθが第2閾値THΔθupよりも小さい場合、車両の走行環境が略一定であると考えることができる。そして、ステップS24において、スロットル弁開度変化量Δθが閾値THΔθupよりも小さい場合(S24:Yes)、ステップS25に進む。ステップS24において、スロットル弁開度変化量θが第2閾値THΔθup以上である場合(S24:No)、処理を終了する。
【0033】
ステップS25において、ECU24は、現在の目標スロットル弁開度θtに応じて新たな目標ペダル操作量Ptを設定する。この設定は、目標スロットル弁開度θtと目標ペダル操作量Ptとの関係を予めメモリ34に記憶しておくことにより行うことができる。或いは、現在のペダル操作量Pを新たな目標ペダル操作量Ptとして設定してもよい。
【0034】
続くステップS26において、ECU24は、現在の目標スロットル弁開度θtを新たな基準スロットル弁開度θrとして設定する(θr←θt)。
【0035】
図4には、本実施形態における低出力要求時処理のフローチャートが示されている。ステップS31において、ECU24は、基準スロットル弁開度θrと目標スロットル弁開度θtとの差D2(D2=θr−θt)が、正の値である第3閾値THθdown[度]未満であるかどうかを判定する。この第3閾値THθdownは、第1閾値THθupと同様、現在の基準スロットル弁開度θr(目標ペダル操作量Ptに対応。図2のS4)に対する目標スロットル弁開度θtの乖離度合を判定することにより、運転者に違和感が生じていないかどうかを判定するための閾値である。第3閾値THθdownの値は、実験等により決定することができる。
【0036】
差D2が第3閾値THθdown未満である場合(S31:Yes)、ステップS32において、ECU24は、上述した直接スロットル弁制御を継続する。差D2が第3閾値THθdown以上である場合(S31:No)、ステップS33において、ECU24は、反力付与機構26が付与する付加的な反力Frを増加させる。この反力Frの増加については後述する。
【0037】
続くステップS34において、ECU24は、アクセルペダル12が戻されているかどうかを判定する。具体的には、操作量センサ14で検出したペダル操作量Pの所定時間当たりの変化量ΔP[θ/秒]が、所定時間、負の値であるかどうかを判定する。アクセルペダル12が戻されている場合(S34:Yes)、ステップS35において、ECU24は、ブレーキ信号Sbを送信してブレーキシステム28を作動させ、車両の減速を補助する。ステップS35の後、又は、アクセルペダル12が戻されていない場合(S34:No)、ステップS36に進む。
【0038】
ステップS36において、ECU24は、スロットル弁開度変化量Δθが所定の閾値(第4閾値THΔθdown)よりも小さいかどうかを判定する。この第4閾値THΔθdownは、車両の走行環境(道路の傾斜や材質等)の変化がある程度収束したかどうかを判定するためのものであり、スロットル弁開度変化量Δθが第4閾値THΔθdownよりも小さい場合、車両の走行環境が略一定であると考えることができる。そして、ステップS36において、スロットル弁開度変化量θが第4閾値THΔθdownよりも小さい場合(S36:Yes)、ステップS37に進む。ステップS37、S38は、図3のステップS25、S26と同様である。ステップS36において、スロットル弁開度変化量Δθが第4閾値THΔθdown以上である場合(S36:No)、処理を終了する。
【0039】
図5は、本実施形態の車両走行制御装置10を搭載した車両100が上り坂を走行する場合の目標スロットル弁開度θtと、ペダル操作量Pと、反力Frとの変化の一例を示す説明図である。
【0040】
車両100が未だ上り坂に到達せず、平坦な道を走行しているとき{図5の(A)の状態}、道路の状態等の走行条件が一定であれば、目標スロットル弁開度θtは、略一定の値(図5では、目標スロットル弁開度θt1)を取り続けることにより、現在の車速Vがクルーズ速度Vcrと等しくなるように制御される。このとき、ペダル操作量PはP1で一定であり、これに伴い、アクセルペダル12に付与される反力Frの特性(反力付与特性C)も一定である{(A)の状態における反力付与特性Cを「反力付与特性C1」と称する。}。なお、この場合、図5の目標スロットル弁開度θt1は、その時点での基準スロットル弁開度θr(基準スロットル弁開度θr1)と第3閾値THθdownの差より大きく、基準スロットル弁開度θr1と第1閾値THθupの和より小さい(θr1−THθdown<θ1<θr1+THθup)。
【0041】
車両100が平坦な道から上り坂に移動するとき{図5の(B)の状態}、車速Vはクルーズ速度Vcrに対して減少する。そこで、ECU24は、目標スロットル弁開度θtを増加させることで、車速Vとクルーズ速度Vcrとの差をゼロとするように制御する。
【0042】
具体的には、図5の時点t1において、目標スロットル弁開度θtが、基準スロットル弁開度θr1と第1閾値THθupの和以上になると(図3のS21:No)、反力付与特性C1の代わりに、別の反力付与特性C(反力付与特性C2)が用いられる。この反力付与特性C2は、時点t1におけるペダル操作量P1を基準にペダル操作量Pが増加するに連れて反力Frが基準反力特性Crまで下がるように設定された特性である。なお、基準反力特性Crは、ペダル操作量Pの増加に応じて反力Frを一次関数的に増加させるようにした特性である。基準反力特性Crは、フットレスト化時に運転者の踏込み力と釣り合う反力Frとして設定されたフットレスト基準反力Fr_r[N]よりも常に低い値を取るように設定される。このため、反力付与特性C1から反力付与特性C2に切り替わると、運転者は、自然にアクセルペダル12を踏み込むこととなる。
【0043】
次いで、時点t2においてスロットル弁開度変化量Δθが第2閾値THΔθup以下となると(S24:Yes)、時点t2における目標スロットル弁開度θtに対応するペダル操作量P(ペダル操作量P2)が、基準ペダル操作量Pt(ここでは、「基準ペダル操作量Pt2」と称する。)として設定される(図3のステップS25)。また、時点t2における目標スロットル弁開度θt(目標スロットル弁開度θt2)が、新たな基準スロットル弁開度θr(ここでは、「基準スロットル弁開度θr2」と称する。)として設定される(図3のステップS26)。さらに、基準ペダル操作量Pt2を基準として過渡的な反力付与特性C3を介した後、反力付与特性C4を生成し、この反力付与特性C4に基づいて反力Frを付与する。
【0044】
車両100が上り坂を登り終え、再び平坦な道に戻るとき{図5の(C)の状態}、車速Vはクルーズ速度Vcrに対して増加する。そこで、ECU24は、目標スロットル弁開度θtを減少させることで、車速Vとクルーズ速度Vcrとの差をゼロとするように制御する。
【0045】
具体的には、図5の時点t3において、基準スロットル弁開度θr2と目標スロットル弁開度θtとの差D2が、第3閾値THθdown以上になると(図4のS31:No)、反力付与特性C4の代わりに、別の反力付与特性C(反力付与特性C5)が用いられる。この反力付与特性C5は、ペダル操作量P2と現時点のペダル操作量Pcurとの差に応じて反力Frを増大する特性である。このため、反力付与特性C4から反力付与特性C5に切り替わると、運転者は、アクセルペダル12を戻すように促される。
【0046】
また、時点t3以降では、アクセルペダル12が戻されているかどうかが判断される(S34)。時点t4において、アクセルペダル12が戻されていると(S34:Yes)、ブレーキシステム28が作動し、車速Vとクルーズ速度Vcrとの差をゼロとするように制動力Fb[N]を発生させる(S35)。さらに、時点t4においてスロットル弁開度変化量Δθが第4閾値THΔθdown以下となると(S36:Yes)、時点t5における目標スロットル弁開度θtに対応するペダル操作量P(ペダル操作量P3)が、目標ペダル操作量Pt(ここでは、「目標ペダル操作量Pt3」と称する。)として設定される(図4のステップS37)。また、時点t5における目標スロットル弁開度θtが、新たな基準スロットル弁開度θr(ここでは、「基準スロットル弁開度θr3」と称する。)として設定される(図4のステップS38)。さらに、目標ペダル操作量Pt3を基準として過渡的な反力付与特性C6を介した後、反力付与特性C7を生成し、この反力付与特性C7に基づいて反力Frを付与する。
【0047】
図6は、本実施形態の車両走行制御装置10を搭載した車両100が下り坂を走行する場合の目標スロットル弁開度θtと、ペダル操作量Pと、反力Frとの変化の一例を示す説明図である。
【0048】
基本的に、図6の(A)の状態(車両100が未だ下り坂に到達せず、平坦な道を走行しているとき)における制御は、図5の(A)の状態(未だ上り坂に到達せず、平坦な道を走行しているとき)における制御と同様である。図6の(B)の状態(平坦な道から下り坂に移動するとき)は、図5の(C)の状態(上り坂から平坦な道に戻るとき)における制御と同様である。図6の(C)の状態(下り坂から平坦な道に戻るとき)は、図5の(B)の状態(平坦な道から上り坂に移動するとき)における制御と同様である。
【0049】
より具体的には、図6において、目標スロットル弁開度θt11及び基準スロットル弁開度θr11は、図6の(A)の状態において平坦な道を走行しているとき等の目標スロットル弁開度θt及び基準スロットル弁開度θrである。目標スロットル弁開度θt12は、図6の(B)の状態において下り坂を下っているときの目標スロットル弁開度θtであり、新たな基準スロットル弁開度θr12に等しい。目標スロットル弁開度θt13は、図6の(C)の状態において下り坂から平坦な道に戻ったとき等の目標スロットル弁開度θtであり、新たな基準スロットル弁開度θr13に等しい。
【0050】
時点t11は、基準スロットル弁開度θr11と目標スロットル弁開度θt11の差D2が、第3閾値THθdown以上となった時であり、時点t12は、アクセルペダル12が戻されたことにより、ブレーキシステム28が作動した時であり、時点t13は、スロットル弁開度変化量Δθが第4閾値THΔθdown以下になった時である。時点t14は、基準スロットル弁開度θ12と目標スロットル弁開度θt12との差D1が、第1閾値THθup以上になった時であり、時点15は、スロットル弁開度変化量Δθが第2閾値THΔθup以下になった時である。
【0051】
反力付与特性C11は、目標スロットル弁開度θtがθt11で略一定のときの反力付与特性Cであり、反力付与特性C12は、時点t11以降時点t13までの反力付与特性Cである。反力付与特性C13は、時点t13における過渡的な反力付与特性Cであり、反力付与特性C14は、時点t13以降時点t14までの反力付与特性Cである。反力付与特性C15は、時点t14以降時点t15までの反力付与特性Cであり、反力付与特性C16は、時点t15における過渡的な反力付与特性Cであり、反力付与特性C17は、時点t15以降の反力付与特性Cである。
【0052】
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態では、アクセルペダル12に対する反力Frを急増させるペダル操作量Pを、車両100のエンジン30が作動している際の目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1、D2に応じて変化させる。これにより、車両100が坂道に差し掛かった等、車両100に対する外的負荷が変わったため、クルーズ速度Vcrを維持するためにエンジン30の出力を増加又は減少させる場合、外的負荷に応じてペダル操作量Pを変化させることができる。その結果、エンジン30の出力とペダル操作量Pのずれに起因する違和感が運転手に発生することを防止することができる。
【0053】
本実施形態では、アクセルペダル12に対する反力Frを急増させるペダル操作量Pの変更は、目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1、D2が第1閾値THθup、第3閾値THθdownを超える場合のみ行われ、当該閾値を超えない場合、行われない。従って、反力Frを急増させるペダル操作量Pの変更が起こる頻度を、第1閾値THθup、第3閾値THθdownを適宜設定することで調整することができる。その結果、反力Frを急増させるペダル操作量Pが常に変更されることを回避し、目標スロットル弁開度θtの変化が小さい場合に当該変更が起こることによって生ずる運転者の違和感をなくすことができる。
【0054】
本実施形態では、車両100が上り坂から平坦な道に戻り、又は平坦な道から下り坂に差し掛かることで車両100に対する外的負荷が減少したことにより車両100が加速する場合、ブレーキシステム28は、車両100を自動的に減速させる。これにより、車両100が走行する際の外的負荷が減少したことにより車両100が加速し始めても、クルーズ速度Vcrを維持することが容易となる。
【0055】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0056】
上記実施形態では、車両100が平坦な道から坂道への移動又は坂道から平坦な道への移動により車両100に対する外的負荷が変化する場合について述べたが、これに限られない。例えば、道路の材質(アスファルト、砂利等)が変わったことにより車両100に対する外的負荷が変化する場合であってもよい。
【0057】
上記実施形態では、目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1、D2が第1閾値THθup、第3閾値THθdownを越えたかどうかにより、反力Frを急増させるペダル操作量Pを変更したが、これに限られない。例えば、スロットル弁開度θと基準スロットル弁開度θrとの差が第1閾値THθup、第3閾値THθdownを越えたかどうかにより変更してもよい。
【0058】
上記実施形態では、車両100が上り坂から平坦な道に戻ったとき又は平坦な道から下り坂に移ったとき、ブレーキシステム28を自動的に作動可能としたが、これに限られず、例えば、車両100が上り坂から平坦な道に戻ったとき又は平坦な道から下り坂に移ったときシフトダウンする構成を用いてもよい。
【0059】
上記実施形態では、ECU24は、目標スロットル弁開度θtと基準スロットル弁開度θrとの差D1、D2が第1閾値THθup、第3閾値THθdownの範囲内にあるか当該範囲外にあるかにかかわらず、直接スロットル弁制御を継続可能としたが、差D1、D2が第1閾値THθup、第3閾値THθdownを超えたとき、目標スロットル弁開度θtに基づいて、反力Frを急増させるペダル操作量Pを変更しつつ、直接スロットル弁制御を中止してもよい。このようにすることで運転者のペダル操作に追従したスロットル弁制御ができる。従って、運転者に車速Vを維持する意思がある場合には、反力Frを急増させるペダル操作量Pの変更に追従するようにアクセルペダル12を操作すればよく、運転者がアクセルペダル12を操作せずにスロットル弁開度θが大幅に変更される場合に感じる違和感を無くすことができる。
【0060】
上記実施形態では、図2の各ステップを1つのECU24で行ったが、各ステップを複数の演算装置に分担して行わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両走行制御装置のブロック図である。
【図2】図1の車両走行制御装置における車両走行制御方法のフローチャートである。
【図3】前記実施形態における高出力要求時処理のフローチャートである。
【図4】前記実施形態における低出力要求時処理のフローチャートである。
【図5】本実施形態の車両走行制御装置を搭載した車両が上り坂を走行する場合の目標スロットル弁開度と、ペダル操作量と、反力付与機構が付与する反力との変化の一例を示す説明図である。
【図6】本実施形態の車両走行制御装置を搭載した車両が下り坂を走行する場合の目標スロットル弁開度と、ペダル操作量と、反力付与機構が付与する反力との変化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10…車両走行制御装置 12…アクセルペダル
14…操作量センサ(ペダル操作量検出部)
16…スロットル弁 18…開度センサ
20…車速センサ(車速検出部) 22…クルーズスイッチ
24…ECU(反力制御部、定速クルーズ制御部)
26…反力付与機構 28…ブレーキシステム(減速機構)
30…エンジン(動力源) 32…吸気管
34…メモリ Fr…反力
THθup…第1閾値 THΔθup…第2閾値
THθdown…第3閾値 THΔθdown…第4閾値
V…車速 Vcr…クルーズ速度
P…ペダル操作量 θ…スロットル弁解度
θr…基準スロットル弁解度 θt…目標スロットル弁解度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速を検出する車速検出部と、
アクセルペダルのペダル操作量を検出するペダル操作量検出部と、
車両のクルーズ速度を設定し、このクルーズ速度と前記車速とが一致するように、前記ペダル操作量とは独立してスロットル弁の開度を自動調整する定速クルーズ制御を行う定速クルーズ制御部と、
前記クルーズ速度が設定されたときのペダル操作量で前記アクセルペダルに対する反力を急増させる反力付与部と、
前記反力付与部を制御する反力制御部と、
を備える車両走行制御装置であって、
前記反力制御部は、前記反力を急増させるペダル操作量を、前記車両の動力源が作動している際に前記車両にかかる外的負荷に応じて変化させる
ことを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両走行制御装置において、
前記クルーズ速度と前記車速とを一致させるための前記スロットル弁の目標開度又は前記目標開度に追従する実際の開度が所定値以上変化した場合、前記反力制御部は、前記反力を急増させる前記ペダル操作量を変更する
ことを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両走行制御装置において、
さらに、前記車両を減速させる減速機構を備え、
前記外的負荷が減少したことにより前記車両が加速する場合、前記減速機構は、前記車両を自動的に減速させる
ことを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項4】
車両のクルーズ速度と車速を一致させる定速クルーズ制御を行う車両走行制御方法であって、
アクセルペダルに対して可変的に付与する反力を急増させるペダル操作量を、車両が走行している際の外的負荷に応じて変化させる
ことを特徴とする車両走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−286180(P2009−286180A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138236(P2008−138236)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】