説明

車載用制御装置

【課題】ドライブレコーダは、事故処理の円滑化や交通事故の低減のために有効なツールではあるけれども、専用の装置として開発されており、車両に後付けされるのが一般的であって、高価であるという課題があった。
【解決手段】ステアリングECU(コントローラ)10に対してドライブレコーダ機能を組み込む。そのために、コントローラ10に、データロギング部としてのメモリ22、メモリ制御部23、しきい値判定部24およびデータ移動タイミング出力部25を機能実現手段として設ける。車両情報および操舵情報は、時系列的に第1メモリ221に記憶され、車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間の前後数10秒間のデータは、第2メモリ222にロギングされる。そして予め定めるタイミングで、第2メモリ222にロギングされた情報は、ナビユニット30のハードディスクH・Dに移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に既設の電子制御ユニット(ECU)、特に、ステアリングECU、ブレーキECUなどを用いて、いわゆるドライブレコーダとしての機能を実現させる車載用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダは、事故処理の円滑化や交通事故の低減のために、タクシーや運送車両等の業務用車両への搭載普及を目指して開発されている。
ドライブレコーダの一例は、特許文献1に記載されている。この文献に記載のドライブレコーダは、車内に配備された超広角レンズで撮影された車内および車両周辺の画像を事故による衝撃発生前あるいは衝撃発生前後の所定時間にわたって記録するものであり、事故発生時の状況分析等に有効な様々な機能を備えている。
【特許文献1】特開2003−87778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来より提案されているドライブレコーダは、事故処理の円滑化や交通事故の低減のために有効なツールではあるけれども、専用の装置として開発されており、車両に後付けされるのが一般的であって、高価であるという課題があった。
より具体的には、ドライブレコーダは、撮影用の超広角レンズやCPUおよび各種の記憶手段を含む構成であり、通常の車載機器に対して独立した装置となっている。また、車両に万一の事故が発生した場合に、その発生前後にわたって確実に記録動作等ができるように設計および配置しなければならず、自ずと高価な装置となってしまう。
【0004】
そして、高価なドライブレコーダは、車両事故に遭遇しなければ役に立たないから、その普及は進んでいないというのが現状である。
この発明は、このような背景のもとになされたもので、安価で性能が良く、普及率の向上に寄与できる、ドライブレコーダ機能を具備する車載用制御装置を提供することを主たる目的とする。
【0005】
この発明は、また、既設の車両用制御装置、たとえばステアリングECUに対してドライブレコーダ機能を組み込んだ車載用制御装置を提供することを他の目的とする。
この発明は、さらに、ナビゲーション装置が搭載された車両のための車載用制御装置であって、ドライブレコーダ機能を有する車載用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ナビゲーション装置(30)が搭載された車両のための車載用制御装置(10)であって、車両情報および操舵情報を時系列的に記憶するための記憶手段(22)と、前記記憶手段(22)に記憶されている車両情報および操舵情報を、予め定めるタイミングでナビゲーション装置(30)に書き込む書込制御手段(23)と、を有することを特徴とする車載用制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表わす。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、ドライブレコーダとして必要な車両情報および操舵情報は、車載用制御装置に備えられている記憶手段にまず記憶される。そして、記憶手段に記憶された車両情報および操舵情報は、予め定めるタイミング、たとえば車両がアイドリング状態で停車したときであるとか、所定の時間間隔毎に、ナビゲーション装置へと移動される。ナビゲーション装置には、通常、ハードディスクH・D等の大容量メモリが備えられており、送られてくる車両情報および操舵情報は、メモリ領域の不足を招くことなく、ナビゲーション装置に良好に記憶することができる。
【0008】
また、ナビゲーション装置に記憶された情報は、ナビゲーション装置が操作し易い場所に配置されていることが多いので、ユーザにとって、取り出し易い情報となる。
従って、請求項1記載の発明によれば、安価でかつ利用し易いドライブレコーダ機能を具備した車載用制御装置を提供することができる。
請求項2記載の発明は、前記記憶手段(22)は、入力される車両情報および操舵情報を順に記憶する第1記憶手段(221)と、入力される車両情報のうちの予め定める情報が、所定のしきい値を超えたことに応答して、しきい値を超えた瞬間を含むその前後所定期間内の前記第1記憶手段(221)に記憶されている情報を、前記しきい値を超えた瞬間の時刻と関連付けて記憶する第2記憶手段(222)とを含むことを特徴とする、請求項1記載の車載用制御装置である。
【0009】
この構成によれば、ドライブレコーダとして必要な瞬間における情報、たとえば車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間等の車両の挙動が大きく変化した瞬間を含むその前後所定期間内の情報を、効率良く第2記憶手段に記憶することができる。また、第2記憶手段に記憶される情報は、しきい値を超えた瞬間の時刻と関連付けて記憶されており、後述する他の情報とのリンクがし易いという利点がある。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記ナビゲーション装置(30)で検出される車両位置情報を取得する手段と、前記しきい値を超えた瞬間の時刻における車両位置情報を前記取得手段によって得て、前記車両情報および操舵情報と関連付けて前記記憶手段(22)またはナビゲーション装置(30)に記憶させる位置情報書込制御手段と、をさらに有することを特徴とする、請求項2記載の車載用制御装置である。
【0011】
この構成によれば、車両情報および操舵情報と関連付けて、ナビゲーション装置で検出される車両位置情報も合わせて記憶することができ、ドライブレコーダとしての機能をより一層高めることができる。
請求項4記載の発明は、車両の少なくとも外部状況を撮像するための撮像手段(41)と、前記撮像手段(41)で撮像された撮像データであって、前記しきい値を超えた瞬間の時刻における撮像データを、前記車両情報および操舵情報と関連付けて前記記憶手段(22)またはナビゲーション装置(30)に記憶させるための撮像データ書込制御手段(40)と、をさらに有することを特徴とする、請求項2または3記載の車載用制御装置である。
【0012】
この構成によれば、車両位置情報および操舵情報と関連付けて、さらに、その瞬間の撮像データを記憶することができ、ドライブレコーダとしての機能をさらに一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の車載用制御装置がステアリングECU(電子制御ユニット)によって実現されており、そのステアリングECUを具備する電動パワーステアリング装置の構成を説明するための概念図である。この電動パワーステアリング装置は、車両の舵取り車輪W(たとえば前左右輪)を転舵させるための舵取り機構1に対して、操舵アクチュエータとしての電動モータMが発生するトルクを伝達するように構成されている。舵取り機構1は、車両の左右方向に沿うラック軸2と、このラック軸2のラックに噛合するピニオン3とを備えたラック・ピニオン型のものである。ピニオン3には、ステアリングシャフト4の一端が結合されており、このステアリングシャフト4の他端には、ステアリングホイール5が結合されている。従って、ステアリングホイール5を回動操作することによって、この回動がステアリングシャフト4およびピニオン3を介してラック軸2に伝達され、このラック軸2の軸方向変位に変換される。
【0014】
ラック軸2の両端には、一対のタイロッド6の各一端がそれぞれ結合されている。この一対のタイロッド6の各他端は、一対のナックルアーム7の各一端に結合されている。この一対のナックルアーム7は、一対のキングピン8まわりに回動自在にそれぞれ支持されていて、一対の舵取り車輪Wにそれぞれ結合されている。この構成により、ラック軸2が軸方向に変位すると、ナックルアーム7がキングピン8まわりに回動し、これにより、舵取り車輪Wが転舵される。
【0015】
舵取り機構1に対して適切な操舵力を付与するために、電動モータMを制御するためのコントローラ(ステアリングECUとも称される。)10が設けられている。このコントローラ10には、ステアリングホイール5に加えられる操作トルクを検出するトルクセンサ11の出力信号と、ステアリングシャフト4の回転角を検出することによってステアリングホイール5の操作角を検出する操作角センサ17の出力信号と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の車速を検出する車速センサ12の出力信号と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の加速度を検出する加速度センサ13の出力信号と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ14の出力信号とが入力されるようになっている。また、コントローラ10には、ステアリングホイール5に関連して設けられた方向指示器の操作信号が与えられるようになっていてもよい。
【0016】
コントローラ10は、通常は、アシストモードに従って電動モータMを制御する。アシストモードとは、トルクセンサ11によって検出される操作トルクと、車速センサ12によって検出される車速とに基づいて、運転者による操舵を補助するための操舵補助力を電動モータMから発生させる制御モードである。
図2は、コントローラ10の電気的構成と、コントローラ10に対して電気的に接続されるナビユニット30および追加ユニット40の接続関係とを説明するためのブロック図である。コントローラ10は、マイクロコンピュータおよびメモリを含むとともに、電動モータMに車載バッテリーからの電力を供給するための駆動回路15を含んでいる。
【0017】
コントローラ10に含まれるマイクロコンピュータおよびメモリにより所定のプログラムが実行されることにより果たされる複数の機能処理手段を、ブロックで示すと、アシストモードに従って電動モータMを制御する操舵制御部21と、ドライブレコーダとして必要なデータをロギングするためのメモリ(データロギング部)22と、メモリ22を制御するためのメモリ制御部23と、メモリ制御部23に対してトリガ信号をそれぞれ与えるためのしきい値判定部24およびデータ移動タイミング出力部25とが含まれている。また、メモリ22は、後述する情報受け入れ用の第1メモリ221と情報保存用の第2メモリ222とに領域が分かれている。
【0018】
コントローラ10には、前述したように、車速センサ12、加速度センサ13およびヨーレートセンサ14の検出信号が、車両情報として与えられる。また、操作角センサ17により検出される操作角およびトルクセンサ11により検出される操作トルクが、操舵情報として与えられる。コントローラ10では、これら与えられる車両情報および操舵情報に基づいて、メモリ制御部23、しきい値判定部24、データ移動タイミング出力部25およびメモリ22が、ドライブレコーダとしての所定の機能を実行する。
【0019】
さらに、コントローラ10は、車両に搭載されたナビユニット30(ナビゲーション装置)および追加ユニット40と電気的に接続されている。また、ナビユニット30および追加ユニット40同士も、電気的に接続されている。これらの接続は、たとえば車載LAN(Local Area Network) によって達成できる。
ナビユニット30は、車両に搭載され、GPSアンテナにより得られる信号等に基づいて、車両の現在位置を検出し、ディスプレイに、地図情報および車両の現在位置を表示する。ナビユニット30は、通常、ハードディスクH・D等の大容量メモリ装置を具備している。
【0020】
追加ユニット40は、車載カメラ41から得られるたとえば車両前方を映した画像データを処理し、必要に応じて保存するためのユニットである。当該追加ユニット40および車載カメラ41は、車両に後付け可能である。追加ユニット40は、コントローラ10およびナビユニット30と電気的に接続されて、信号や情報の授受ができるようにされる。 この実施形態の特徴は、コントローラ(ステアリングECU)10に、ドライブレコーダとしての基本的な機能を持たせるとともに、コントローラ10がドライブレコーダとして機能し、ロギングしたデータを、予め定めるタイミングでナビユニット10のハードディスクH・Dという大容量メモリに移動させるようにしたことである。また、コントローラ10でロギングされた車両情報および操舵情報に関連付けて、ナビユニット30で検出された車両の位置情報をナビユニット30のハードディスクH・Dに記憶するようにしたことである。
【0021】
さらには、追加ユニット40および車載カメラ41を追加搭載した場合には、上記車両情報、操舵情報および位置情報に加えて、車載カメラ41で撮像された画像データを保存可能にされていることである。
以下、図2に示すコントローラ10の制御動作を、図3に示すフローチャートに従って説明をする。
【0022】
図3は、コントローラ10が実行する制御動作であって、メモリ制御部23、しきい値判定部24、データ移動タイミング出力部25およびメモリ22により実行されるドライブレコーダとしての処理内容を表わしている。
コントローラ10には、車両情報(車両加速度、ヨーレート、車両速度等)および操舵情報(操作角、操舵トルク等)が与えられる。与えられる各情報は、それぞれ、バッファメモリ等で構成された情報受け入れ用の第1メモリ221に記憶される(ステップS1)。この第1メモリ221は、FIFOメモリのように、各情報を入力順に記憶していき、メモリ容量が一杯になると、早く記憶したものから順にメモリ領域からオーバーフローさせて消去していくといったタイプのメモリで構成されている。
【0023】
第1メモリ221に各情報が記憶されるのと並行して、しきい値判定部24によって、記憶された情報のうちの、車両加速度の変化が観察され、車両加速度が所定のしきい値を超えたか否かを判別し(ステップS2)、しきい値を超えたときには、メモリ制御部23へデータ保存指令が与えられる(ステップS3)。メモリ制御部23は、データ保存指令を受けて、第1メモリ221に記憶されている情報のうち、データ保存指令が与えられた時刻(車両加速度が所定のしきい値を超えた時刻)ti のたとえば前後数10秒間の情報を、時刻ti と関連付けて保存する。具体的には、第1メモリ221に一時的に記憶されている情報のうち、時刻ti を中心に、その前後数10秒間(この時間は任意であり設計事項である。)の情報を、情報保存用の第2メモリ222に移し、第2メモリ222において、時刻ti と関連付けて記憶する(ステップS4)。
【0024】
なお、ステップS3のデータ保存指令は、後述するように、ナビユニット30および追加ユニット40へも、同時に与えられる。
ステップS1〜S4の処理が継続されることにより、第2メモリ222には、車両加速度が所定のしきい値を超えたときに、その前後数10秒間のデータが、時刻と関連付けて複数個記憶されることになる。たとえば、時刻t1 における情報1、時刻t2 における情報2、…時刻ti における情報iという具合である。
【0025】
一方、データ移動タイミング出力部25は、データ移動のための予め定めるタイミングになったか否かの判別をする(ステップS5)。予め定めるタイミングとは、たとえば、車両がアイドリング状態で停車したとき、または、所定の時間間隔毎であって、データの移動がスムーズに行える時(コントローラ10の制御負担が少なく、データの移動が行える時)等である。データ移動タイミング出力部25から予め定めるタイミングである旨の信号が出力されると、メモリ制御部23は、第2メモリ222に保存されている情報、すなわちステップS4において保存された情報を、車載LAN等によって、電気的に接続されているナビユニット30のハードディスクH・Dへ移動させる(ステップS6)。
【0026】
このように、コントローラ10内に備えられたロギング用の第2メモリ222に、時刻と関連付けて記憶された情報が蓄まると、その蓄まった情報は記憶容量の大きなナビユニット30の記憶手段(ハードディスクH・D)へと移動される。従って、コントローラ10内のメモリ22、特に第2メモリ222の記憶容量は大きくなくてもよく、既設のコントローラ(ステアリングECU)10を利用して、ドライブレコーダとしての情報記録を良好に行うことができる。
【0027】
この実施形態では、しきい値判定部24において、車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間の時刻ti をトリガとして、車両加速度、ヨーレート、車両速度等の車両情報および操作角、操舵トルク等の操舵情報を、その時刻ti の前後数10秒間にわたって記憶する。
一般に、車両が事故に巻き込まれる場合は、車両の挙動が急激に変化し、特に、車両加速度が急激に変化する。そこで、この実施形態では、車両加速度が所定のしきい値を超えたか否かを、情報を記憶するためのトリガとしている。もちろん、運転者が急ブレーキをかけた場合等にも、車両加速度は大きく変化するので、情報の記憶がなされる。つまり、第2メモリ222に記憶される情報は、全てが事故に関した情報ではなく、むしろ、その殆ど(たとえば9割以上)が車両事故とは無関係の情報であろう。しかし、これらの事故と無関係の情報であっても、車両加速度が所定のしきい値を超えて変化したときの、その前後数10秒間のヨーレートの変化、車両速度の変化、操作角の変化、操舵トルクの変化等は、分析することにより、安全運転への寄与等に役立つドライブレコーダ情報といえる。
【0028】
図4は、ナビユニット30における制御動作を表わすフローチャートである。図3を参照して説明したように、データ移動タイミング出力部25により予め定めるタイミングであることが判別されると、メモリ制御部23は、第2メモリ222にロギングしている時刻および情報をナビユニット30へ移動(転送)する。このデータ移動(転送)を受けて、ナビユニット30は、図4に示す制御動作を実行する。
【0029】
ナビユニット30では、通常の動作として、GPS信号等に基づいて、車両の現在位置を検出し、地図情報上に車両の現在位置データを表示させている(ステップP1)。
そのような現在位置検出および表示制御の実行と並行して、データ保存指令があるか否かの判別をする(ステップP2)。データ保存指令とは、前述したように、コントローラ10のしきい値判定部24から与えられる指令である。しきい値判定部24は、車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間に、メモリ制御部23にデータ保存指令を出力するとともに、ナビユニット30に対してもデータ保存指令を与える。
【0030】
ナビユニット30では、与えられたデータ保存指令に応答して、その時刻ti における位置データをメモリに記憶して保存する。位置データは、たとえば緯度および経度、座標軸の値等で表現された数値データであってもよいし、地図データ上における車両位置を示す画像データであってもよい。
位置データは、データ保存指令がある毎に、データ保存指令のあった時刻と関連付けて記憶される(ステップP3)。
【0031】
次いで、コントローラ10から情報が移動されてくる(情報の転送処理がなされる)と(ステップP4でYES)、ナビユニット30では、送られてくる入力情報を、時刻データでリンクさせることにより、ステップP3で保存した位置データと関連付けてハードディスクH・D等に記憶する(ステップP5)。
この結果、ナビユニット30には、車両加速度が所定のしきい値を超えたとき、その前後数10秒間における各種車両情報、操舵情報および車両の位置データが、ドライブレコーダ用の情報として保存される。
【0032】
ところで、一般に、ナビユニット30は、電子地図が記憶されたディスクを挿入したり、ユーザが必要な操作を行えるように、車両室内の、ユーザが操作し得る場所に取り付けられている。
一方、コントローラ(ステアリングECU)10は、パワーステアリング装置に組み込まれており、通常、ユーザの手が届かない操作しにくい場所に配置されている。
【0033】
そこで、ドライブレコーダ用の情報が、ナビユニット30へ転送され、ナビユニット30のハードディスクH・D等に保存されるようにすると、ドライブレコーダ用の情報を取り出す際に、ナビユニット30から当該情報を取り出せるという利点がある。
図5は、図2における追加ユニット40における制御動作を表わすフローチャートである。追加ユニット40では、通常、車載カメラ41から与えられる画像データを処理し、必要に応じて、ディスプレイ等にその画像データを表示させる(ステップQ1)。
【0034】
そして、追加ユニット40は、コントローラ10のしきい値判定部24からデータ保存指令を受領すると(ステップQ2でYES)、データ保存指令を受けた瞬間(時刻ti )における画像データを時刻ti と合わせて記憶する(ステップQ3)。
すなわち、追加ユニット40では、車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間における画像データを、順次記憶し保存する。
【0035】
なお、追加ユニット40のメモリ容量が大きいときは、時刻ti の画像データのみでなく、時刻ti の前後所定時間(数10秒)の画像データを記憶するようにしてもよい。
そして、追加ユニット40は、データの移動指令(転送指令)を受けると(ステップQ4でYES)、保存している時刻および画像データをナビユニット30へ移動(転送)させる(ステップQ5)。
【0036】
ステップQ4のデータ移動指令(データ転送指令)は、たとえば、データ移動タイミング出力部25から与えられる。追加ユニット40では、このデータ移動指令に応じて、保存している画像データを、ナビユニット30へ転送し、ナビユニット30では、転送されてくる画像データを、時刻データに基づいて、位置データおよび与えられる情報とリンクさせ、記憶する。
【0037】
これによって、ナビユニット30には、車両加速度が所定のしきい値を超えた瞬間ti の前後数10秒間の車両加速度の変化、車両速度の変化、ヨーレートの変化、操作角の変化、操舵トルクの変化等の情報と、その瞬間の車両位置と、その瞬間の車載カメラで捉えられた外部状況の画像データとが、関連付けられて記憶されることになる。
従って、このナビユニット30に記憶されている情報およびデータは、ドライブレコーダ情報として有効に利用することができる。
【0038】
上述の実施形態では、全ての情報およびデータは、最終的にナビユニット30に記憶される例を説明したが、これに代え、追加ユニット40が、ハードディスク等の大容量メモリを有している場合には、追加ユニット40に情報およびデータが記憶される構成であってもよい。
また、コントローラ10のメモリ22の記憶容量が大きい場合に、ナビユニット30に車両情報、操舵情報および車両位置情報を記憶させるのに代えて、コントローラ10のメモリ22にこれら情報を記憶させるようにすることもできる。
【0039】
また、上述の実施形態では、情報記憶のためのトリガを、車両加速度が所定のしきい値を超えたこととしたが、それ以外の信号をトリガとして、情報を記憶するようにしてもよい。たとえば、車両速度の変化が所定のしきい値を超えたとき、ヨーレートの変化が所定のしきい値を超えたとき、操作角の変化が所定のしきい値を超えたとき、操舵トルクの変化が所定のしきい値を超えたとき等をトリガとして、情報を記憶するようにしてもよい。
【0040】
この発明によれば、車両に既設の電子制御ユニット、たとえばステアリングECUを利用し、ステアリングECUにドライブレコーダとしての機能を付加することにより、安価で、かつ、汎用性のあるドライブレコーダを構築することができる。
上述の実施形態では、ステアリングECUをドライブレコーダとして利用する例を示したが、エンジンECUその他にそのような機能を持たせてもよい。
【0041】
いずれにしろ、車両に既設の電子制御ユニット(ECU)にドライブレコーダとしての基本機能を持たせ、そこで記憶される情報は、最終的にナビユニット30または追加ユニット40に転送され、ナビユニット30や追加ユニット40から情報を取り出せる構成とすることにより、情報の取り出しが容易になり、利用し易いドライブレコーダ機能を実現することができる。
【0042】
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の車載用制御装置がステアリングECUによって実現されており、そのステアリングECUを具備する電動パワーステアリング装置の構成を説明するための概念図である。
【図2】コントローラ10の電気的構成と、コントローラ10に対して電気的に接続されるナビユニット30および追加ユニット40の接続関係とを説明するためのブロック図である。
【図3】コントローラ10が実行する制御動作であって、メモリ制御部23、しきい値判定部24、データ移動タイミング出力部25およびメモリ22により実行されるドライブレコーダとしての処理内容を表わすフローチャートである。
【図4】ナビユニット30における制御動作を表わすフローチャートである。
【図5】追加ユニット40における制御動作を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10…コントローラ(ステアリングECU)、11…トルクセンサ、12…車速センサ、13…加速度センサ、14…ヨーレートセンサ、17…操作角センサ、22…メモリ、221…第1メモリ、222…第2メモリ、23…メモリ制御部、24…しきい値判定部、25…データ移動タイミング出力部、30…ナビユニット、40…追加ユニット、41…車載カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置が搭載された車両のための車載用制御装置であって、
車両情報および操舵情報を時系列的に記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている車両情報および操舵情報を、予め定めるタイミングでナビゲーション装置に書き込む書込制御手段と、
を有することを特徴とする車載用制御装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、
入力される車両情報および操舵情報を順に記憶する第1記憶手段と、
入力される車両情報のうちの予め定める情報が、所定のしきい値を超えたことに応答して、しきい値を超えた瞬間を含むその前後所定期間内の前記第1記憶手段に記憶されている情報を、前記しきい値を超えた瞬間の時刻と関連付けて記憶する第2記憶手段とを含むことを特徴とする、請求項1記載の車載用制御装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション装置で検出される車両位置情報を取得する手段と、
前記しきい値を超えた瞬間の時刻における車両位置情報を前記取得手段によって得て、前記車両情報および操舵情報と関連付けて前記記憶手段またはナビゲーション装置に記憶させる位置情報書込制御手段と、
をさらに有することを特徴とする、請求項2記載の車載用制御装置。
【請求項4】
車両の少なくとも外部状況を撮像するための撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された撮像データであって、前記しきい値を超えた瞬間の時刻における撮像データを、前記車両情報および操舵情報と関連付けて前記記憶手段またはナビゲーション装置に記憶させるための撮像データ書込制御手段と、
をさらに有することを特徴とする、請求項2または3記載の車載用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−52328(P2008−52328A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224998(P2006−224998)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】