説明

車載通報装置および通報方法

【課題】通報を受けた施設側において当該施設と通報元の車両との位置関係を容易に把握することができなかった。
【解決手段】通報指示を取得し、地図情報を取得し、自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得し、前記通報指示と前記地図情報とに基づいて、通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを含む施設情報を設定し、前記通報対象施設の位置情報と前記自車位置情報とに基づいて、前記通報対象施設と前記自車両との位置関係を示す情報を生成し、前記通信用宛先情報を用いて、前記位置関係を示す情報を前記通報対象施設に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通報装置および通報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において緊急事態が発生したとき、車両に搭載された装置によって緊急事態発生を管理センターに通知し、管理センターが当該車両に向けて緊急車両を出動させる救急通報システムが知られている。特許文献1には、予め登録されている、病院やJAF(JAFは社団法人日本自動車連盟の登録商標)などの緊急時の連絡先施設の中から利用者が選択した施設に、携帯電話から自動的にダイヤルし通話できるようにしたシステムについて記載されている。また特許文献1には、GPSから取得した自車両の現在位置を音声に変換して相手先に伝える構成が記載されている。
【特許文献1】特開平10−262125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されているシステムにおいては、緊急事態が発生したときに迅速に通報対象施設に通報することまでは実現できても、通報を受けた後、通報先の施設側から迅速に通報元の車両に到達するための情報を提供することはできない。例えば、通報された施設側では、通報元の車両の緯度経度や住所を知ることは出来ても、当該施設と通報元の車両との位置関係を迅速に正確に把握することは困難である。そのために、通報元の車両へ迅速に到達できないおそれがある。
【0004】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、通報対象施設から通報元の車両への到達を容易にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、通報対象施設の位置情報と自車位置情報とに基づいて、通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報を生成し、生成した情報を通報対象施設に送信する構成を採用している。この構成によると、当該情報を受信した施設側において通報元車両と施設との位置関係を容易に把握させることができる。その結果、通報対象施設側では送信された情報を基に施設から通報元車両に迅速に到達することができる。
【0006】
通報指示取得手段において通報指示は、ユーザによる指示を取得する構成であってもよいし、車両に搭載されている機器からの通報指示信号を取得する構成であってもよい。ユーザによる指示を取得するインタフェースは、例えばタッチパネルの操作や、音声入力等、種々の形態を採用可能である。
【0007】
本明細書において位置情報とは、その地点の緯度経度を示す座標値や、地図情報内で規定されている固有の識別値などを指す。また、本明細書において地図情報とは、ノードデータやリンクデータに加えて、各種施設に関する施設情報(例えば位置情報、通信用宛先情報、利用可能時間帯情報等)も含むものとする。
地図情報取得手段においては、地図情報を取得する形態は特に限定せず、例えば車両に搭載された記憶媒体からであってもよいし、無線通信によって取得するものであってもよい。
【0008】
自車位置情報取得手段は、自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得することができればよく、例えば、GPS衛星からの信号や車両に搭載された各種センサからの出力、地図上での自車両の軌跡、車車間通信、路車間通信等によって位置を取得する構成等を採用可能である。
【0009】
施設情報設定手段は、通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを含む施設情報を設定する。通報対象施設の施設情報は、地図情報から取得可能である。通報対象施設は、通報指示を取得した時点で特定されていてもよいし、通報指示を取得した後に、施設情報設定手段が適切な通報対象施設を地図情報を用いて検索した上で決定してもよい。
【0010】
通信制御手段は、車両に搭載されている通信機器を用いて、位置関係を示す情報を通報対象施設に送信することによって通報を行うことができればよく、採用する無線通信、移動体通信のプロトコルは適宜選択してよい。車両に搭載されている通信機器は、例えば携帯電話や、データ通信モジュール(DCM)等である。
【0011】
本発明において、通報指示取得手段は、通報対象施設の指定を受け付け、施設情報設定手段は、地図情報から取得した通報対象施設の施設情報を設定してもよい。この場合、ユーザが指定した施設に対して、通報することができる。
【0012】
また、本発明において、通報指示取得手段は、複数の通報対象施設を含む通報対象施設群の指定を受け付け、施設情報設定手段は、通報対象施設群に含まれる複数の通報対象施設のうち、通報対象施設が保有する保有車両を自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設を地図情報から検索し、当該通報対象施設の施設情報を設定してもよい。この場合、ユーザは通報対象施設群の指定を行うだけで、自車両への到達コストが最も低い施設に対して、通報することができる。
なお、到達コストとしては、例えば自車両との距離が近い、所要時間が短い等が加味される。また例えば、施設の利用可能時間帯や、空き車両の有無等が加味されてもよい。
【0013】
また、本発明において、通報指示取得手段は、自車両の緊急事態発生を示す情報を取得し、施設情報設定手段は、緊急事態発生を示す情報に基づいて、通報対象施設が保有する保有車両を自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設を地図情報から検索し、当該通報対象施設の施設情報を設定してもよい。この場合、緊急事態発生を示す情報を取得すると、自車両への到達コストが低い通報対象施設に対して通報することができる。緊急事態発生を示す情報とは、例えばエアバッグ作動を示す情報等である。盗難や車上荒らし、火災の発生を示す情報等であってもよい。
【0014】
位置関係情報生成手段において生成される、通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報とは、2者の位置関係を示すどのような形式の情報であってもよい。例えば、自車両の現在位置と通報対象施設の位置とを含む地図画像を示す情報であってもよい。この場合、通報対象施設と通報元の車両との位置関係が一見してわかりやすい。
【0015】
また、位置関係を示す情報は、通報対象施設から自車両の現在位置に向かう経路を示す情報であってもよい。自車両を出発地、通報対象施設を目的地として経路探索するのではなく、通報対象施設を出発地、自車両を目的地として経路探索することにより、通報対象施設から自車両に向かうのに適した経路情報を、通報対象施設に送信することができる。なお、経路を示す情報とは、通報対象施設から自車両への道順を示す文字列であってもよいし、地図において経路を強調表示した地図画像であってもよい。また、経路中の例えば交差点の位置情報を経路順に整列させたものであってもよい。
【0016】
さらに、上記の経路を示す情報を生成する構成において、位置関係情報生成手段は、自車両の現在位置を含む道路の上流側の所定区間を回避して経路探索し、前記経路を示す情報を生成してもよい。上流側とは、道路を走行する際の車両の進行方向の逆側(後方側)を指す。自車両が原因で自車両がいる道路の上流側で渋滞が発生する状況を考慮して、通報対象施設の車両がその渋滞に巻き込まれ迅速に自車両まで到達できない状況を未然に回避することができる。
【0017】
さらに、本発明のように通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報を生成し、通報対象施設に送信する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような車載通報装置、通報プログラム、通報方法は、単独の通報装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような通報装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、通報装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)車載通報装置の構成:
(2)通報処理:
(2−1)通報処理1:
(2−2)通報処理2:
(2−3)通報処理3:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)車載通報装置の構成:
図1は、車両に搭載された通報装置の構成を示すブロック図である。本実施形態における通報装置は、車両に設けられた操作部40とエアバッグECU41とGPS受信部42と通信部43とナビゲーション装置10とが協働することによって実現される。
【0020】
操作部40は、ナビゲーション装置10に接続されており、ナビゲーション装置10と各種の信号の授受を行う。操作部40は、例えばタッチパネルディスプレイで構成される。
エアバッグECU41は、車両へのある一定以上の衝撃を検知するとエアバッグを作動させるECUである。エアバッグECU41は、ナビゲーション装置10に接続されており、エアバッグの作動状態をナビゲーション装置10に通知することができる。
【0021】
GPS受信部42は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を特定するためのデータをナビゲーション装置10に出力する。
通信部43は、ナビゲーション装置10に接続された携帯電話やデータ通信モジュール(DCM)などの通信機器で構成され、通信網を経由して情報センタや通信設備を備えたその他の施設と画像・文字など様々な形式のデータを送受信することができる。
【0022】
ナビゲーション装置10は、GPS受信部42における受信信号や記憶媒体30に記憶された地図情報30aを利用して車両を案内するナビゲーション処理を実行するシステムである。ナビゲーション装置10は、図示しないCPU,RAM,ROM等によって上述のナビゲーション処理や、後述する通報処理、その他各種のプログラムを実行可能である。
【0023】
地図情報30aには、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、施設情報などが含まれている。より具体的には例えば、ノードデータには、ノード番号・位置座標・ノード種別・接続リンク本数などが、リンクデータには、リンク番号(起終点ノード番号)・道路種別・車線数・リンクコストを示すデータなどが含まれている。また、施設情報には、施設の位置情報や通信先宛先情報などが含まれている。施設の利用可能時間帯などその他の情報が含まれていても良い。なお、本明細書において位置情報とは、その地点の緯度経度を示す座標値や、地図情報内で規定されている固有の識別値などを指す。
【0024】
通報プログラム21は、後述する通報処理を行うために、通報指示取得部21aと、地図情報取得部21bと、自車位置情報取得部21cと、施設情報設定部21dと、位置関係情報生成部21eと、通信制御部21fとを備えている。
【0025】
通報指示取得部21aは、操作部40またはエアバッグECU41から出力された通報指示を取得するモジュールである。通報指示取得部21aは通報指示を取得すると、通報指示の内容を施設情報設定部21dに受け渡す。
【0026】
地図情報取得部21bは、後述する通報処理を実施するために必要となる地図情報30aを記憶媒体30から取得し、図示しないメモリに格納するモジュールである。通報処理を実施するために必要となる地図情報とは、例えば、通報対象施設の検索のための検索母集団、通報対象施設の施設情報、経路探索や地図描画のためのノードデータ・リンクデータ等である。
【0027】
自車位置情報取得部21cは、自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得するモジュールである。自車位置情報取得部21cは、GPS受信部42からの出力データが示す位置情報を、車両に搭載された図示しない車速センサやジャイロセンサ等の出力データや、地図情報30aを用いて地図上での軌跡を基に補正し、自車両の現在位置を特定する。
【0028】
施設情報設定部21dは、通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを含む施設情報を通報指示と地図情報30aとに基づいて設定するモジュールである。通報対象施設は、通報指示を取得した時点で特定されていてもよいし、通報指示を取得した後に、施設情報設定部21dが適切な通報対象施設を地図情報30aを用いて検索した上で決定してもよい。
【0029】
位置関係情報生成部21eは、通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報を図示しないメモリに生成するモジュールである。通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報とは、2者の位置関係を示すどのような形式の情報であってもよい。例えば、自車両の現在位置と通報対象施設の位置とを含む地図画像を示す情報や、通報対象施設から自車両の現在位置に向かう経路を示す情報であってもよい。経路を示す情報とは、通報対象施設から自車両への道順を示す文字列であってもよいし、地図において経路を強調表示した地図画像であってもよい。また、経路中の例えば交差点の位置情報を経路順に整列させたものであってもよい。
【0030】
通信制御部21fは、車両に搭載されている通信部43を用いて、位置関係情報生成部21eが生成した位置関係を示す情報を通報対象施設に送信するモジュールである。無線通信、移動体通信のプロトコルは適宜選択可能である。
以上、車載通報装置の構成を説明した。
【0031】
(2)通報処理:
次に本発明にかかる通報処理について説明する。図2、図3および図4は、それぞれ通報処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、通報指示の内容に応じた3パターンの通報処理の流れを図2、図3、図4を用いて説明する。
【0032】
(2−1)通報処理1:
図2に示す通報処理1は、運転者が特定の通報対象施設を指定する場合の処理を示している。特定の通報対象施設を指定する状況としては、例えば、運転者が飲酒後に通報対象施設としての運転代行業者を呼び出すような場面を想定可能である。
はじめに、通報指示取得部21aは、通報対象施設の指定を受け付ける(ステップS100)。具体的には例えば、運転者が操作部40を操作して運転代行業者を指定し、当該指定を通報指示取得部21aが受け付ける。
【0033】
次に、施設情報設定部21dは、指定された通報対象施設の施設情報を設定する(ステップS105)。具体的には、地図情報取得部21bが図示しないメモリに取得した地図情報30aを参照して、指定された通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを設定する。
次に、自車位置情報取得部21cは、自車両の現在位置を取得する(ステップS110)。自車位置情報取得部21cは、取得した自車両の現在位置を示す自車位置情報を図示しないメモリに格納する。
【0034】
次に、位置関係情報生成部21eは、自車両の現在位置と通報対象施設とが含まれる地図画像を示す情報を生成する(ステップS115)。具体的には、自車位置情報と通報対象施設の位置情報の両方が含まれる区域の地図情報を取得し、当該地図情報をもとに2地点を含む地図画像を示す情報を図示しないメモリに生成する。
【0035】
最後に、通信制御部21fは、生成された地図画像を示す情報を通報対象施設に送信する(ステップS120)。具体的には、通信用宛先情報と地図画像を示す情報を通信部43に設定し、通報対象施設に送信させる。
以上説明したように、ユーザが指定した通報対象施設に対して通報を行うことができる。また、自車両の現在位置と通報対象施設とが含まれる地図画像によって、受信した通報対象施設側では当該施設と通報元の車両との位置関係を容易に把握することができる。
【0036】
(2−2)通報処理2:
図3に示す通報処理は、運転者が複数の通報対象施設を含む通報対象施設群を指定する場合の処理を示している。通報対象施設群を指定する状況としては、例えば、車両故障のために運転者がレッカー車を呼び出すような場面を想定可能である。なお、図2のフローチャートにおいて説明した処理と具体的処理内容が重複するステップに関しては説明を省略する。
【0037】
はじめに、通報指示取得部21aは、通報対象施設群の指定を受け付ける(ステップS200)。具体的には例えば、運転者が操作部40を操作して通報対象施設群としての「JAF」を指定し、当該指定を通報指示取得部21aが受け付ける。次に、自車位置情報取得部21cは、自車両の現在位置を取得する(ステップS205)。
【0038】
次に、施設情報設定部21dは、通報対象施設群に含まれる複数の通報対象施設のうち、通報対象施設が保有する保有車両を自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設の施設情報を設定する(ステップS210)。到達コストとしては、例えば自車両との距離が近い、到達所要時間が短い等が加味される。また例えば、施設の利用可能時間帯が加味されてもよい。施設情報設定部21dは最も到達コストの低い通報対象施設を、地図情報取得部21bが取得した地図情報30aを参照して検索し、当該通報対象施設の施設情報を設定する。なお、例えば施設に空き車両の有無を問い合わせた後、空き車両がある場合に通報対象施設を決定してもよい。
【0039】
次に、位置関係情報生成部21eは、通報対象施設から自車両の現在位置に向かう経路を示す情報を生成する(ステップS215)。すなわち、通報対象施設を出発地、自車両の現在位置を目的地として経路探索を行う。自車両を出発地、通報対象施設を目的地として経路探索するのではなく、通報対象施設を出発地、自車両を目的地として経路探索することにより、通報対象施設から自車両に向かうのに適した経路を生成することができる。自車両に向かうのに適した経路とは、例えば、自車両に向かう方向からは通行できない一方通行道路等が含まれていない経路を意味する。なお、経路を示す情報とは、例えば、通報対象施設から自車両への道順を示す文字列(「○○交差点を左折し…」等)であってもよいし、地図において経路を強調表示した地図画像であってもよい。また例えば、経路中の例えば交差点の位置情報を経路順に整列させたものを送信し、施設側のナビゲーション装置に入力する構成であってもよい。
【0040】
最後に、通信制御部21fは、生成された経路を示す情報を通報対象施設に送信する(ステップS220)。具体的には、通信用宛先情報と経路を示す情報とを通信部43に設定し、通報対象施設に送信させる。
以上のように、ユーザは通報対象施設群の指定を行うだけで、自車両への到達コストが最も低い施設に対して、通報することができる。また、通報を受けた施設側では、当該施設から通報元の車両に向かう経路を示す情報によって、当該施設と通報元の車両との位置関係、さらには通報元の車両までの道順までも容易に把握することができる。
【0041】
(2−3)通報処理3:
図4に示す通報処理3は、自車両において緊急事態が発生した場合の処理を示している。具体的には例えば、衝突事故が発生したとき、救急車等を呼び出す場面を想定する。なお、図2および図3において説明した処理と具体的処理内容が重複するステップに関しては説明を省略する。
【0042】
はじめに、通報指示取得部21aは、緊急事態発生を示す情報を取得する(ステップS300)。具体的には、エアバッグECU41からエアバッグが作動した旨の情報を取得する。次に、自車位置情報取得部21cは、自車両の現在位置を取得する(ステップS305)。
【0043】
次に、施設情報設定部21dは、緊急事態発生を示す情報に基づいて、通報対象施設が保有する保有車両を前記自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設の施設情報を設定する(ステップS310)。到達コストは上述のように、自車両への距離や到達所要時間が短いことが加味される。施設情報設定部21dは最も到達コストの低い救急医療施設を、地図情報取得部21bが取得した地図情報30aを参照して検索し、当該救急医療施設の施設情報を設定する。なお、例えば、検索した結果、候補となる救急医療施設に救急車出動の可否を問い合わせてから通報対象の救急医療施設を決定してもよい。以上のように通報対象の救急医療施設の決定は自車両において自律的になされてもよいし、例えば救急医療施設の管理センタに選定を依頼する構成であってもよい。
【0044】
次に、位置関係情報生成部21eは、通報対象施設から自車両の現在位置に向かう経路を探索する(ステップS315)。すなわち通報対象施設を出発地、自車両の現在位置を目的地として経路探索を行う。このとき、自車両がいる道路の自車両を基準として上流側の所定区間を回避して経路探索を行う。上流側とは、道路を走行する際の車両の進行方向の逆側(後方側)を指す。
【0045】
経路探索には、ダイクストラ法やA*アルゴリズム、それらの改良型アルゴリズムなどを採用可能である。自車両の上流側の所定区間を回避するために、例えば自車両の現在位置を含むリンクのコストを、緊急事態発生以前よりも高く設定した上で、上記のアルゴリズムを用いて探索を行うようにしてもよい。図5に示す具体例を用いて説明すると、自車両の現在位置Pが含まれるリンクLのコストを高く設定する。さらにリンクLの上流側に隣接するリンクLおよびLのコストを緊急事態発生前より高く設定した上で探索を行うようにしてもよい。コストを変更するリンクの範囲や値は適宜設計してよい。
【0046】
このように、自車両が原因で自車両がいる道路の上流側で渋滞が発生することを考慮して、自車両の上流側の所定区間を回避するように予め探索コストを変更することにより、通報対象施設の車両がその渋滞に巻き込まれ迅速に自車両まで到達できない状況を未然に回避することができる。
【0047】
次に位置関係情報生成部21eは、以上のようにして経路を探索した結果導き出された経路を基に、通報対象施設と自車両とを含む地図上において経路を強調表示した地図画像を生成する(ステップS320)。
最後に、通信制御部21fは、生成された経路を示す情報を通報対象施設に送信する(ステップS325)。
以上説明したように、緊急事態発生時に、自車両への到達コストが最も低い通報対象施設を自動的に検索し、当該施設に対して通報を行うことができる。
【0048】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、通報対象施設と自車両との位置関係を示す情報を生成し、通報対象施設に送信する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の実施形態では車両における緊急事態発生を、エアバッグ作動で検知する構成を説明したが、盗難や車上荒らし、火災の発生を検知する構成であってもよい。この場合、警備会社や交番等、消防署を通報対象施設としてもよい。すなわち、緊急事態発生を示す情報の内容に応じて、通報対象とする施設の種別を選定してもよい。また例えば、衝突事故を衝突センサによって検知する構成や、運転者の状態をカメラや脈拍センサ等を用いて検知する構成を採用してもよい。
【0049】
さらに、通報指示取得手段において通報指示は、ユーザによる指示を取得する構成である場合、その指示を取得するインタフェースは、上述の実施形態で説明したタッチパネルの操作に限らず、音声入力等、種々な形態を採用可能である。
【0050】
さらに、地図情報取得手段においては、地図情報を取得する構成は、車両に搭載された記憶媒体から取得する構成に限らず、無線通信によってセンタから取得する構成であってもよい。
さらに、自車位置情報取得手段は、自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得することができればよく、車車間通信、路車間通信等によって位置を取得する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】車両に搭載された通報装置の構成を示すブロック図である。
【図2】通報処理1のフローチャートである。
【図3】通報処理2のフローチャートである。
【図4】通報処理3のフローチャートである。
【図5】経路探索時のコスト変更を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0052】
10:ナビゲーション装置、21:通報プログラム、21a:通報指示取得部、21b:地図情報取得部、21c:自車位置情報取得部、21d:施設情報設定部、21e:位置関係情報生成部、21f:通信制御部、30:記憶媒体、30a:地図情報、40:操作部、41:エアバッグECU、42:GPS受信部、43:通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通報指示を取得する通報指示取得手段と、
地図情報を取得する地図情報取得手段と、
自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得手段と、
前記通報指示と前記地図情報とに基づいて、通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを含む施設情報を設定する施設情報設定手段と、
前記通報対象施設の位置情報と前記自車位置情報とに基づいて、前記通報対象施設と前記自車両との位置関係を示す情報を生成する位置関係情報生成手段と、
前記通信用宛先情報を用いて、前記位置関係を示す情報を前記通報対象施設に送信する通信制御手段と、
を備える車載通報装置。
【請求項2】
前記通報指示取得手段は、前記通報対象施設の指定を受け付け、
前記施設情報設定手段は、前記地図情報から取得した前記通報対象施設の施設情報を設定する、
請求項1に記載の車載通報装置。
【請求項3】
前記通報指示取得手段は、複数の前記通報対象施設を含む通報対象施設群の指定を受け付け、
前記施設情報設定手段は、前記通報対象施設群に含まれる複数の前記通報対象施設のうち、前記通報対象施設が保有する保有車両を前記自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設を前記地図情報から検索し、当該通報対象施設の施設情報を設定する、
請求項1又は2に記載の車載通報装置。
【請求項4】
前記通報指示取得手段は、前記自車両の緊急事態発生を示す情報を取得し、
前記施設情報設定手段は、前記緊急事態発生を示す情報に基づいて、前記通報対象施設が保有する保有車両を前記自車両の現在位置に到達させるのに最も到達コストの低い通報対象施設を前記地図情報から検索し、当該通報対象施設の施設情報を設定する、
請求項1に記載の車載通報装置。
【請求項5】
前記位置関係を示す情報は、前記自車両の現在位置と前記通報対象施設の位置とを含む地図画像を示す情報である、
請求項1〜4のいずれかに記載の車載通報装置。
【請求項6】
前記位置関係を示す情報は、前記通報対象施設から前記自車両の現在位置に向かう経路を示す情報である、
請求項1〜5のいずれかに記載の車載通報装置。
【請求項7】
前記位置関係情報生成手段は、前記自車両の現在位置を含む道路の上流側の所定区間を回避して経路探索し、前記経路を示す情報を生成する、
請求項6に記載の車載通報装置。
【請求項8】
通報指示を取得する通報指示取得工程と、
地図情報を取得する地図情報取得工程と、
自車両の現在位置を示す自車位置情報を取得する自車位置情報取得工程と、
前記通報指示と前記地図情報とに基づいて、通報対象施設の位置情報と通信用宛先情報とを含む施設情報を設定する施設情報設定工程と、
前記通報対象施設の位置情報と前記自車位置情報とに基づいて、前記通報対象施設と前記自車両との位置関係を示す情報を生成する位置関係情報生成工程と、
前記通信用宛先情報を用いて、前記位置関係を示す情報を前記通報対象施設に送信する通信制御工程と、
を含む通報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−232700(P2008−232700A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70108(P2007−70108)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】